説明

エポキシ接着剤を有するフルオロポリマーフィルム

フルオロポリマーフィルムと、前記フルオロポリマーフィルムの少なくとも1つの表面上にあるエポキシ接着剤と、を含む、保護物品を提供する。前記保護物品は、a)フルオロプラスチック層と、b)前記フルオロプラスチック層と接触している少なくとも1つの硬化性接着剤層であって、未硬化エポキシド樹脂と、ジシアンジアミド、4,4−アミノフェニルジスルフィド、炭酸グアニジン、チオ尿素、及びこれらの混合物からなる群から選択した硬化剤との混合物を含む硬化性接着層と、を含む、多層物品を含む。最も典型的には、前記硬化剤はジシアンジアミドを含み、いくつかの実施形態では、ジシアンジアミドから本質的になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年12月15日に出願された米国特許仮出願第61/286420号の利益を主張し、その開示内容の全体を参照として本明細書に援用する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、フルオロポリマーフィルムと、このフルオロポリマーフィルムの少なくとも1つの表面上にあるエポキシ接着剤と、を含む、保護物品に関する。
【背景技術】
【0003】
塗装は長期にわたり、コーティングを表面、特に複雑な湾曲を有する表面に塗布する際に選択される方法であった。塗装法は周知であり、表面が複雑な湾曲を有するときでも、均一な特性を有する良質なコーティングをもたらす。しかしながら、塗装は、添加剤を保持するために揮発性溶剤を用いること、添加剤そのもの、表面を洗浄及び調製する目的で用いる表面化学物質、又は表面から塗料を除去する目的で用いる化学物質が原因で、より綿密な環境的調査を受けている。
【0004】
塗料の代わりに表面に貼付するテープ及びフィルムに、塗料を置き換える試みが数多くなされてきている。多くの建造物には、テープとして貼付するか、又は表面に貼られたフィルムによって保護される外装処理(羽目板、屋根ふき又はトリムなど)が用いられている。
【0005】
適合性シート材、デカール又はアップリケを用いて、複雑な湾曲の表面を覆うことを報告する研究者もいる。参照文献の米国特許第4,986,496号(Marenticら)、及び米国特許第5,660,667号(Davis)は、このような技術に関連する場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡潔には、本開示は、a)フルオロプラスチック層と、b)このフルオロプラスチック層と接触している少なくとも1つの硬化性接着剤層であって、未硬化エポキシド樹脂と、ジシアンジアミド、4,4−アミノフェニルジスルフィド、炭酸グアニジン、チオ尿素、及びこれらの混合物からなる群から選択した硬化剤との混合物を含む硬化性接着剤層と、を含む、多層物品を提供する。典型的には、上記の硬化剤はジシアンジアミドを含む。いくつかの実施形態では、硬化剤はジシアンジアミドから本質的になる。いくつかの実施形態では、上記のフルオロプラスチックは、非ペルフルオロ化フルオロポリマーを含み、典型的には、非ペルフルオロ化フルオロポリマーは、少なくとも部分的に二フッ化ビニリデンモノマーに由来する。いくつかの実施形態では、フルオロプラスチックは、表面処理済みの非ペルフルオロ化フルオロポリマーを含む。いくつかの実施形態では、エポキシド樹脂はフェノール化合物である。いくつかの実施形態では、エポキシド樹脂は2つを超える官能基を有する。いくつかの実施形態では、硬化部位は、窒素含有硬化部位、臭素含有硬化部位、塩素含有硬化部位、又はヨウ素含有硬化部位、オレフィン、及びこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、エポキシド樹脂は、クレゾールノボラック、エピクロロヒドリン/テトラフェニロールエタン、ビスフェノールA/エピクロロヒドリン、ノボラック/ビスフェノールA、エピクロロヒドリン/フェノール−ホルムアルデヒド、9,9−ビス−2,3−エポキシプロピルフェニルフルオリン、エポキシプロピルフェニルフルオレン、ビスフェノールAF/エピクロロヒドリン、ノボラック/ビスフェノールAF、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、フルオロポリマーフィルムと、このフルオロポリマーフィルムの少なくとも1つの表面上の接着剤と、を含む、保護物品に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのフルオロポリマー層と、少なくとも1つの硬化性層と、を含む、保護物品であって、その硬化性層が高温で硬化可能である保護物品を提供する。
【0008】
別の態様では、フルオロポリマー層は非ペルフルオロ化フルオロポリマーである。
【0009】
別の態様では、硬化性層は、ジシアンジアミドを含む硬化剤によって硬化するエポキシである。
【0010】
別の態様では、保護物品は、硬化済み樹脂マトリックスを含む繊維強化樹脂マトリックスの少なくとも1つの層に付着されている。
【0011】
別の態様では、保護物品は、硬化性樹脂マトリックスを含む繊維強化樹脂マトリックスの基材に貼付すると共に、高温で硬化する。
【0012】
本開示の保護物品は、コーティング、フィルム、及び基材の表面全体、表面の一部又は縁部を保護する用途、並びにコーティング、フィルム及び基材を修復する用途を含む多種多様な用途を有する。このような保護物品は、飛行機、列車、自動車、ボート、及び船のような輸送手段で有用である。このような保護物品は、塗装した表面上、(例えば、エポキシプライマーによって)下塗りした表面上、又は露出表面上で用いることができる。このような保護物品は、金属表面上、炭素繊維強化プラスチックのような複合材の表面上、又は複合材の構造内で用いることができる。本開示の保護物品は、様々な形、サイズ、及び厚みであることができる。本開示の保護物品は、シート材の形状であることもできれば、形成ブーツのような三次元の形をした物品に形成することもできれば、三次元取付具として成形することもできる。
【0013】
本開示の保護物品の裏張りは、1つ以上のフッ素化ポリマー、典型的には、フルオロエラストマーポリマーではなくフルオロプラスチックを含む。本明細書では、ポリマーにはホモポリマーとコポリマーが含まれる。コポリマーには、ターポリマー、テトラポリマーなどを含め、2種以上の異なるモノマーを含むポリマーが含まれる。フッ素化ポリマーは、オレフィン性不飽和モノマーから調製するのが好ましい。更に、フッ素化ポリマーはペルフルオロ化されていないのが好ましい。すなわち、フッ素化ポリマーはペルフルオロ化モノマーから作製してもよいが、得られるポリマーは、例えば、C−H結合及びC−F結合の両方を有する。加えて、裏張りで用いるフッ素化ポリマーは、官能化する必要はない。本開示の保護物品用の裏張りを作製する際に用いるのに適したフッ素化ポリマーは、適合可能な耐流体性シート材を形成させるものであるのが好ましい。本明細書で使用する場合、「適合可能な」裏張りは、様々な輪郭の表面及び/又は複雑な表面に貼付することができると共に、所望の用途に必要な時間にわたり、表面全体と密接な接触を保持する裏張りである。適合可能な裏張りは、国際公開特許第99/64235号に記載されている適合性試験に合格するのが好ましい。耐流体性裏張りは、炭化水素流体(例えば、ジェット燃料)、若しくはリン酸エステル系作動油(例えば、SKYDROLという作動油)に14日間、又は塗料除去剤(例えば、塩化メチレン若しくはベンジルアルコールに2日間、室温で浸した後、約10重量パーセントを超えて変化しない裏張りである。
【0014】
有用なフッ素化ポリマーの1つのクラスとしては、フッ化ビニリデン(「VF2」又は「VDF」とも称される)に由来する共重合単位が挙げられる。このような物質は、典型的には、VF2(ホモポリマーであっても、他のエチレン性不飽和モノマー、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)、テトラフルオロエチレン(「TFE」)、クロロトリフルオロエチレン(℃TFE)、2−クロロペンタフルオロプロペン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロジアリルエーテル、ペルフルオロ−1,3−ブタジエンなどとのコポリマーであってもよい)に由来する共重合単位を少なくとも約3重量パーセントを含む。このようなフッ素含有モノマーは、フッ素非含有の末端不飽和オレフィン系コモノマー(例えば、エチレン又はプロピレン)と共重合させることもできる。好ましいこのようなフルオロポリマーとしては、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのターポリマー、及びヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのコポリマーが挙げられる。このタイプの市販のフルオロポリマー材としては、例えば、THV 200、THV 400、及びTHV 500というフルオロポリマー(Dyneon LLC(Oakdale、MN)から入手可能)と、SOLEF 11010(Solvay Polymers Inc.(Houston,TX)から入手可能)が挙げられる。
【0015】
有用なフッ素化ポリマーの別のクラスとしては、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)モノマー、テトラフルオロエチレン(「TFE」)モノマー、クロロトリフルオロエチレン(℃TFE)モノマー、及び/又はその他のペルハロゲン化モノマーのうちの1つ以上に由来すると共に、1つ以上の水素含有モノマー、及び/又は非フッ化オレフィン性不飽和モノマーに更に由来する共重合単位が挙げられる。有用なオレフィン性不飽和モノマーとしては、アルキレンモノマー、例えば、エチレン、プロピレン、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、2−ヒドロペンタフルオロプロペンなどが挙げられる。好ましいこのようなフルオロポリマーは、ポリ(テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene))とエチレンとのコポリマーである。このタイプの市販のフルオロポリマー材としては、例えば、TEFZEL LZ300というフルオロポリマー(DuPont Films(Buffalo,NY)から入手可能)が挙げられる。
【0016】
他の有用なフッ素化ポリマー、好ましくは非ペルフルオロ化ポリマーとしては、ポリ(フッ化ビニル)、例えば、TEDLAR TAWI5AHS(DuPont Films(Buffalo,NY)から入手可能)が挙げられる。フルオロポリマーのブレンドを用いて、本開示の保護物品用の裏張りを作製することもできる。例えば、非ペルフルオロ化フルオロポリマーのペルフルオロ化フルオロポリマーとのブレンドと同様に、2つの異なるタイプの非ペルフルオロ化フルオロポリマーのブレンドも用いることができる。更には、そのブレンド中のポリマーの1つがフルオロポリマーであると共に、非フルオロポリマーを少量で用いるならば、フルオロポリマーと非フルオロポリマー、例えば、ポリウレタン及びポリエチレンとのブレンドも用いることができる。本開示で用いるフッ素化ポリマーの裏張りは、キャスティング法及び押出成形法を含む様々な方法を用いて作製することができるが、押出成形するのが好ましい。
【0017】
裏張りは透明かつ無色であっても、用途で所望されるのに応じて、顔料又は染料のような着色剤を含んでもよい。着色料は、米国特許第5,132,164号に開示されているような無機顔料であるのが好ましい。顔料は、1つ以上の非フッ素化ポリマーに組み込んでもよく、これを1つ以上のフッ素化ポリマーとブレンドすることができる。裏張りは、仕上げであってもよく、及び/又は既存のアップリケ若しくは塗料のカラースキームに色が適合していてもよい。裏張りは、典型的には、2つの主表面を有するシート材の形状であってよい。裏張りは、光沢、色、反射性、又はこれらの組み合わせのような所望の物理的特性を表面にもたらす添加物も含んでよい。裏張りは、摩擦を高めるか、摩擦を低減するか、又は氷、汚物、汚れ、若しくは他の汚染物の蓄積を低減する添加物又は特徴も含んでよい。
【0018】
任意により、表面の少なくとも1つを処理して、接着剤又はオーバーコーティングの固着を可能にしてよい。このような処理方法としてはコロナ処理が挙げられ、特に、米国特許第5,972,176号(Kirkら)に開示されるような、窒素と、水素、アンモニア、及びこれらの混合物からなる群より選択される約0.1〜約10体積%の添加ガスと、を含む雰囲気におけるコロナ放電が挙げられる。別の有用な処理方法としては、ナトリウムナフタレニドを使用する化学エッチングが挙げられる。このような処理方法は、Polymer Interface and Adhesion,Souheng Wu,Ed.,Marcel Dekker,Inc.,NY and Basel,pp.279〜336(1982)、及びEncyclopedia of Polymer Science and Engineering,Second Edition,Supplemental Volume,John Wiley & Sons,pp.674〜689(1989)に開示されている。別の有用な処理方法は、Acton Industries,Inc.(Pittston,PA)で利用可能なFLUOROETCH法である。フルオロポリマーの表面改質に有用なその他の処理としては、米国特許第6,630,047号(Jingら)及び同第6,685,793号(Jing)に開示されているもののような、フルオロポリマーの存在下で光吸収性の電子供与体を化学線に曝露する方法が挙げられる。その他の処理方法としては、プライマーなどの材料の使用が挙げられる。これらは、前述の表面処理法の代わりに使用したり併用したりすることができる。有用なプライマーの一例は、ADHESION PROMOTER #86A(液体プライマー、Minnesota Mining and Manufacturing Company(St.Paul,MN)から入手可能)である。
【0019】
本開示の硬化性層は、裏張りの少なくとも1つの表面上に熱硬化性又は湿気硬化性接着剤を含む。このような硬化性接着剤の例としては、エポキシ樹脂(エポキシ樹脂+硬化剤)、アクリレート、シアノアクリレート、及びウレタンが挙げられる。本開示のプロセスで使用される硬化性接着剤は、硬化後に触れてもねばねばせず、熱、触媒、紫外線等の作用により硬化する熱硬化性である。本開示の保護物品に有用なエポキシド樹脂は、少なくとも1つのオキシラン環を有する、すなわち、開環反応によって重合可能である、任意の有機化合物である。広くエポキシドと称されるこのような材料は、モノマー及びポリマーエポキシドの両方を含み、脂肪族、複素環式、脂環式、又は芳香族であってよく、更にこれらの組み合わせであってよい。これらは、液体、固体、又はこれらのブレンドであってよく、ブレンドは、硬化前に粘着性接着フィルムを提供する際に有用である。これらの材料は、一般に、平均で1分子当たり少なくとも2つのエポキシ基を有し、「ポリエポキシド」とも称される。ポリマーエポキシドには、末端エポキシ基を有する線状ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格オキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、及びペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)が挙げられる。エポキシ樹脂の分子量は、約74〜約100,000又はそれ以上にわたって変化してもよい。有用なエポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロへキセンカルボキシレート、3、4−エポキシ−2−n−エチルシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、及びビス−(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジパートに代表されるエポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどのシクロヘキセンオキシド基を含有するエポキシ樹脂が挙げられる。この特性の有用なエポキシドの、より詳細な一覧に関しては、米国特許第3,117,099号を参照することができる。本開示の実施で特に有用である更なるエポキシド樹脂としては、次の式のグリシジルエーテルモノマーが挙げられる。
【0020】
【化1】

【0021】
式中、R’は脂肪族、例えばアルキル、芳香族、例えばアリール、又はこれらの組み合わせであり、nは1〜6の整数である。例としては、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェノール)プロパン(ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、及び(クロロメチル)オキシラン及び4,4’(1−n1et1〜イルエチリデン)−ビスフェノールのコポリマー等の多価フェノールのグリシジルエーテル類である。本開示の実施で使用することができるこのタイプのエポキシドの更なる例は、米国特許第3,018,262号に記載されている。
【0022】
本開示で用いることができる市販のエポキシド樹脂は多数存在する。特に、容易に入手可能なエポキシドとしては、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、Shell Chemical Companyから「EPON S28、」、「EPON 1004」、5及び「EPON 1001F」の商品名で入手可能、並びにDow Chemical Companyから「DER−332」及び「DER−334」の商品名で入手可能なもの)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、Ciba−Geigy Corporationから「ARALDITE GY28 1」の商品名で、及びShell Chemical Companyから「EPON 862」の商品名で)、ビニルシクロヘキサンジオキサイド(例えば、Union Carbide Corporationから「ERL−4206」の商品名を有する)、3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(例えば、Union Carbide Corporationから「ERL−4221」の商品名を有する)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4エポキシ)シクロヘキサンメタジオキサン(例えば、Union Carbide Corporationから「ERL−4234」の商品名を有する)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジパート(例えば、Union Carbide Corporationから「ERL−4299」の商品名を有する)、ジペンテンジオキサイド(例えば、Union Carbide Corporationから「ERL−4269」の商品名を有する)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、FMC Corporationから「OXIRON 2001」の商品名を有する)、難燃剤エポキシド樹脂(例えば、Dow Chemical Companyから「DER−542」の商品名で入手可能な臭素化ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、Ciba−Geigy Corporationから「ARALDITE RD−2」の商品名を有する)、水素添加ビスフェノールA系エポキシド樹脂のジグリシジルエーテル(例えば、Shell Chemical Companyから「EPONEX 1510の商品名を有する)、及びフェノールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル(例えば、Dow Chemical Companyから「DEN−43 1」及び「DEN−438」の商品名を有する)が挙げられる。
【0023】
用語「硬化剤」は、従来的に硬化剤として認識される物質のみではなく、エポキシの重合を触媒する物質、加えて硬化剤及び触媒の両方として作用し得る物質もまた含むものとして広範に使用される。エポキシド樹脂の好適な硬化剤としては、例えば、室温硬化剤、熱活性化硬化剤、及びこれらの混合物、並びに光分解によって活性化された硬化剤が挙げられる。室温硬化剤、及び熱活性化硬化剤としては、例えば、エポキシ単独重合タイプの硬化剤のブレンド、及び追加タイプの硬化剤が挙げられる。硬化剤は、好ましくは、ほぼ室温〜約200℃、より好ましくは、ほぼ室温〜150℃、更により好ましくは、ほぼ室温〜約115℃の温度で反応する。硬化剤が、複合物品を作るプリプレグを作るために使用されるエポキシ樹脂で使用されるのであれば、硬化剤は、好ましくは約200°F(93℃)〜約450°F(230℃)の範囲の温度で反応する。
【0024】
この温度範囲で硬化する複合材物品用の好ましい硬化剤としては、唯一の硬化剤として、又は複数の硬化剤の1つとしてのジシアンジアミドが挙げられる。ジシアンジアミドと組み合わせた硬化前のエポキシド樹脂は室温で高い安定性を有するので、非常に安定した材料と期待されるものと組み合わせて、周囲温度における長い貯蔵寿命と、高温での好適な硬化をもたらすことができる。ジシアンジアミドで硬化させたエポキシ樹脂は、他の方法によって硬化させたエポキシ樹脂よりも黄色くないことが既知であると共に、他の方法によって硬化させたエポキシ樹脂よりも酸化に耐えることが既知である。いくつかの実施形態では、硬化剤にはアミン硬化剤は含まれない。
【0025】
硬化性接着剤の市販の例としては、3M(商標)Scotch−Weld(商標)Structural Adhesive Film AF 555(ジシアンジアミド硬化剤を含む)、3M(商標)Scotch−Weld(商標)Structural Adhesive Film AF 191(ジシアンジアミド硬化剤を含む)、及び3M(商標)Scotch−Weld(商標)Structural Adhesive Film AF 163−2(全て3M Company(St.Paul,Minnesota)から入手可能)が挙げられる。
【0026】
本開示の保護物品中で用いる硬化性接着剤組成物は、粘着付与剤、可塑剤、流動性改良剤、中和剤、安定剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤などのような従来の添加物を含むことができる。ただし、これらが接着剤の性能を阻害しないことを条件とする。硬化性接着剤組成物は、耐食添加物又は耐食物質も含んでよい。このような添加物は、様々な組み合わせで用いることができる。このような添加物を用いる場合、添加物は、硬化した接着剤の所望の特性に実質的に悪影響を及ぼさない量で組み込まれる。典型的には、これらの添加物は、エポキシド組成物の総量に対して約0.05重量パーセント〜約25重量パーセントの量で上記組成物の系に組み込むことができる。
【0027】
任意により、本開示の保護物品はトップコートを有してよい。トップコートは、保護物品のフルオロポリマーフィルムの上に配置して、保護性を高め、及び/又は保護物品の外観を変えることができる。例えば、フルオロエラストマーのトップコートを塗布して、追加的な耐熱性及び耐降雨性を保護物品に付与してもよい。このようなフルオロエラストマーの例は、CAAP Companyから入手可能で、適切な色、及び適切な添加物によるロールコーティングに適した変性CAAPCOAT TYPE III又はTYPE IVというフルオロエラストマーである。トップコートの別の例は、硬化済みのウレタンのトップコートである。硬化済みのウレタンのトップコートは、ヒドロキシ含有物質(母材)とイソシアネート含有物質(活性剤)、例えば、ポリイソシアネートとの反応生成物から作製することができる。ヒドロキシ含有物質とイソシアネート含有物質とを有するこのような硬化性組成物は、着色剤を更に含んでもよい。硬化性組成物は一般に溶媒を含み、UV安定剤、酸化防止剤、腐食防止剤、硬化触媒などのような他の添加物も更に含んでもよい。
【0028】
塗料のプライマーのコーティング
本開示の保護物品は、標準的なフィルム形成技法及び接着剤コーティング技法を用いて調製することができる。典型的には、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの支持材(光沢のある裏張り用に滑らかであることも、マットフィニッシュの裏材用に粗い状態であることもできる)の上にフルオロポリマーを押し出して、裏張りを形成させる。続いて、この裏張りを冷やして凝固させる。次いで、任意により、裏張りの露出面を処理する。次に、硬化性接着剤の層を裏張りの表面に塗布する。フッ素化ポリマーの裏張りの表面全体を完全又は部分的に硬化性接着剤で覆ってよい。硬化性接着剤の厚みには制限はなく、最適な厚みは、固着対象の基材の種類と、表面の幾何学形状又は仕上げとに左右される可能性が高い。非常に薄い硬化性接着剤の厚み、例えば、約0.0025cmを用いると、基材への接着性が良好であることが示されている。しかしながら、選択した基材上で所望の接着レベルを得られる場合には、もっと薄い硬化性接着剤層を用いることができる。ナイフコーティング、ロールコーティングなどのような多種多様なコーティング技法を用いることができる。硬化性接着剤は、例えば、溶媒キャスト技法を用いて塗布することもできる。あるいは、硬化性接着剤の層を裏張りに積層することもできる。所望の場合、剥離ライナーを接着剤層の上に貼付することができる。所望の場合、裏張り用の支持材を取り外してよく、別の接着剤、例えば、感圧性接着剤への接着性の向上、又はコーティングへの接着性の向上のために、裏張りの露出面を上記のように処理してよい。
【0029】
本開示の実施の際には、本開示の保護物品は、保護する基材、例えば、複合材物品の製造初期に用いても、基材上の領域で用いてもよい(この場合には、硬化性接着剤は、所要の高温で硬化させてよい)。この所要の高温は、IRランプ、ヒートガン、ポータブルヒーターなどのような既知の手段によってもたらしてもよい。一般に、本開示の保護物品は、硬化性接着材が付着することになる任意の基材上で用いることができる。このような基材の例としては、塗装した表面、下塗りした表面、金属表面、セラミック、硬化済み及び未硬化の複合材表面、フッ素化ポリマーの表面、メッキ表面、亜鉛メッキ表面、その他のアップリケなどが挙げられる。本開示の保護物品構成体の外側露出面は、パターン付き構造を備えていてもよい。このようなパターン付き構造は、露出面の上及び/又は露出面全体にわたる耐流体(例えば、空気、水)抗力性を低減させるのに有用である。このようなパターン付き構造と、この構造をもたらす手段は、米国特許第5,133,516号及び同第5,548,769号に教示されている。
【0030】
本開示の実施形態としては、下記の列挙アイテムが挙げられる。
【0031】
アイテム1.a)フルオロプラスチック層と、b)このフルオロプラスチック層と接触している少なくとも1つの硬化性接着剤層であって、未硬化エポキシド樹脂と、ジシアンジアミドを含む硬化剤との混合物を含む接着剤層と、を含む、多層物品。
【0032】
アイテム2.a)フルオロプラスチック層と、b)このフルオロプラスチック層と接触している少なくとも1つの硬化性接着剤層であって、未硬化エポキシド樹脂と、ジシアンジアミド、4,4−アミノフェニルジスルフィド、炭酸グアニジン、チオ尿素、及びこれらの混合物からなる群から選択した硬化剤との混合物を含む硬化性接着剤層と、を含む、多層物品。
【0033】
アイテム3.アイテム1又は2の物品のうち、そのフルオロプラスチックが非ペルフルオロ化フルオロポリマーを含む物品。
【0034】
アイテム4.アイテム3の物品のうち、非ペルフルオロ化フルオロポリマーが、少なくとも部分的に二フッ化ビニリデンモノマーに由来する物品。
【0035】
アイテム5.アイテム1又は2の物品のうち、フルオロプラスチックが、表面処理済みの非ペルフルオロ化フルオロポリマーを含む物品。
【0036】
アイテム6.アイテム1又は2の物品のうち、フルオロプラスチックが、表面処理済みのフルオロポリマーを含む物品。
【0037】
アイテム7.アイテム1〜6のいずれかの物品のうち、フルオロプラスチック層が2つの硬化性接着剤層を有する物品。
【0038】
アイテム8.アイテム1〜7のいずれかの物品のうち、エポキシド樹脂がフェノール化合物である物品。
【0039】
アイテム9.アイテム1〜8のいずれかの物品のうち、エポキシド樹脂が2つを超える官能基を有する物品。
【0040】
アイテム10.アイテム1〜9のいずれかの物品のうち、硬化部位が、窒素含有硬化部位、臭素含有硬化部位、塩素含有硬化部位、又はヨウ素含有硬化部位、オレフィン、及びこれらの組み合わせから選択される物品。
【0041】
アイテム11.アイテム1〜10のいずれかの物品のうち、フルオロプラスチックポリマーが1つ以上の硬化部位を含む物品。
【0042】
アイテム12.アイテム1〜11のいずれかの物品のうち、窒素含有硬化部位がニトリル含有硬化部位である物品。
【0043】
アイテム13.アイテム1〜12のいずれかの物品のうち、エポキシド樹脂が、クレゾールノボラック、エピクロロヒドリン/テトラフェニロールエタン、ビスフェノールA/エピクロロヒドリン、ノボラック/ビスフェノールA、エピクロロヒドリン/フェノール−ホルムアルデヒド、9,9−ビス−2,3−エポキシプロピルフェニルフルオリン、エポキシプロピルフェニルフルオレン、ビスフェノールAF/エピクロロヒドリン、ノボラック/ビスフェノールAF、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物品。
【0044】
本開示の目的及び利点は以下の実施例によって更に例証されるが、これらの実施例に引用される具体的な物質及び量、並びにその他の条件及び詳細は、本開示を過度に制限すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0045】
特に断らないかぎり、全ての試薬は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI)より入手したか、又は販売されるものであり、あるいは既知の方法で合成することができるものである。
【0046】
方法
複合部材の一般的なツーリング及びバギング(Bagging)
硬化性エポキシ接着剤樹脂を有する複合材試料を硬化用に、下記の方法(manor)で調製した。2B仕上げの12ゲージのステンレススチール合金304を2フィート(61.0cm)×2フィート(61.0cm)にトリミングして、平坦なツールを作製した。1ミル(25.4マイクロメートル)の離型無孔PTFEフィルム(Northern Fiber Glass Sales,Inc.からHTF−621として入手可能)をツールに貼付して、フィルムの縁部及び角に貼付した耐熱性テープで固着させた。材料の各層を、実施例の本文に記載の順序及び配列でツールに適用した。層をそれぞれ、最初にツールに貼付してから、ライナーなしで手で順に重ねて、最上部の層の上に、直径1.5インチ(3.8cm)の木製のローラを手で圧力を加えながら移動させて、層のそれぞれをその前の層と固結させた。プライ4つごとに、部品及びツールを、以下で説明する離型有孔フィルムの層で覆い、次に、以下で説明するブリーザープライの層及び部品を、3M製のScotchlite Vacuum Applicator Model VAL−1で3分間、完全真空下でツールに圧密させてから、ブリーザープライ及び離型有孔フィルムを取り除いて、更なるプライを部品に加えた。Pilot Silver Markerを使用して部材の露出面上の1つの縁部に沿って一意の名前を適用して、各クーポンに永久的にマーク付けした。Richmond Aircraft ProductsからA5000として入手可能な有孔離形フィルムを皺が寄らないように適用して、クーポンの露出面を完全に覆った。1つの熱電対をクーポンの2インチ(5.1cm)以内でツールに取り付けた。以下に記載のオートクレーブのベッドに無孔離形フィルムの層を適用して、ツールが載置されている領域を覆った。ツール及び部材を、以下で説明するオートクレーブの底部に置いて、真空バッグのシールテープの連続的なビードを、テープからツールまでの距離が少なくとも3インチ(7.6cm)になるように、オートクレーブの底部に直接貼付した。真空バッグ密封テープにかからないように、オートクレーブのベッドの上の露出した無孔離形フィルムを折り曲げるか又はトリミングした。不織布ポリエステル10オンス/ヤード(339g/m)フェルト通気層(Richmond Aircraft ProductsからRC−3000−10として入手可能)を、真空バッグ密封テープの四方の2インチ(5.1cm)以内まで延びるように、部材及びツールの上並びにオートクレーブのベッド上にオーバーレイした。3ミル(76.2マイクロメートル)のナイロン製高温バギングフィルム(Richmond Aircraft ProductsからHS8171として入手可能)を、部材及びツールが覆われるように、及び四方が真空バッグのシールテープまで広がる又は真空バッグのシールテープを越えて広がるように、オートクレーブの底部に緩やかに置いた。少なくとも1つの真空ポート組立体を真空バッグの中の通気層の上に設置し、フィルムを真空バッグ密封テープに押圧して真空バッグをオートクレーブのベッドの全ての縁部に沿って封止させた。
【0047】
複合部材の高圧硬化
硬化性エポキシ接着剤樹脂を有する複合材試料を下記の方法(manor)で硬化させた。「複合部材の一般的なツーリング及びバギング(Bagging)」に従って、硬化性エポキシ接着剤樹脂を有する各複合材試料を硬化用に調製した。真空ポート組立体(単数又は複数)を下記のオートクレーブ中で真空システムに取り付け、パーツ、ツール、離型フィルム及びブリーザープライを完全真空下で5分間、統合させた。オートクレーブの中の制御システムに熱電対を取り付けた。次に、部品を、制御された温度及び圧力の条件下で、1つはThermal Equipment Corporation製で、もう1つはASC Process Systems製の2つのオートクレーブのうちの1つで、以下で説明する圧力及び温度のプロファイルを使用して、硬化させた。オートクレーブ内部の圧力は、60psi(413.7kPa)まで上昇させ、温度は、ラギング付き熱電対の温度が177℃に達するまで、5°F/分(2.8℃/分)で上昇させた。120分間、圧力を60psi(413.7kPa)〜70psi(482.6kPa)に保持し、温度を177℃〜182℃で保持した。ラギング付き熱電対の温度が44℃に達するまで、温度を5°F/分(2.5℃/分)の制御速度で低下させた。ラギング付き熱電対の温度が66℃に達するまで、圧力を60psi(413.7kPa)〜70psi(482.6kPa)に保持してから、オートクレーブ中の圧力及び真空バッグ下の真空を大気に排出した。硬化した複合材料の試験片をオートクレーブ、バッグ及びツールから取り出した。
【0048】
FEPの下塗り
3−アミノプロピルトリエトキシシランとN,N−ジメチルアニリンを8:2の比率でメタノールに溶解させた5重量%溶液で、洗浄済みガラスプレートを下塗りした。下塗りしたガラスにフッ化エチレンプロピレン(FEP)フィルムを積層した。このフィルムは、プライマーと良好に接触していたと共に、境界面には気泡はなかった。この後、積層したFEPを254nmの殺菌ランプ下で特定の期間、UV照射した。続いて、処理した側面を水ですすいで、全てのプライマー残留物を除去した。処理したFEPの側面は親水性を示した。
【0049】
一般的な積層法
構造体の層を以下の通りの組み合わせ、順序及び量で合体させた。積層工程の間に取り外し可能な支持材料を接合面から分離した。これらの層を、周囲条件(22℃、相対湿度50%)で、4インチ(10.2cm)のゴムローラーを用いて、2.5フィート/分(76.2cm/分)の速度で、Geppert Engineering Inc.のラミネーターのニップに供給することによって積層した。
【0050】
中間組立体の実施例:
非ペルフルオロ化フルオロポリマーフィルム(515)
フルオロポリマーフィルムを準備又はキャスティングして、実施例を作製するのに用いた。これらのフィルムには次を含む。
【0051】
・厚さ1ミル(25.4cm)のDyneon(商標)Fluoroplastic PVDF 11010/0000というポリフッ化ビニリデン
・厚さ3ミル(73.2cm)のDyneon(商標)のDyneon(商標)Fluorothermoplastic THV500
接着剤フィルムAF555とフルオロポリマー層との積層組立体(25)
構造用接着剤フィルム(401)と非ペルフルオロ化フルオロポリマーフィルム(515)とを準備し、固着性フルオロポリマーフィルム(25)を調製するのに用いた。更に詳細には、各非ペルフルオロ化フルオロポリマーフィルム(515)を、0.05lbs./平方フィート(245.7g/m)の不織布ポリエステルベールを含む厚さ8ミル(203.2マイクロメートル)のエポキシフィルム(3M(商標)Scotch−Weld(商標)Structural Adhesive Film AF 555Mとして3Mから入手可能)(401)の1つの側面に、上記の「一般的な積層法」に記載されているようにして接合及び積層した。残りの全てのライナー及び支持材料を除去し、固着性フルオロポリマーフィルム(25)をもたらした。
【0052】
接着剤フィルムAF555接着剤フィルムと処理済みのFEPフルオロポリマー層との積層組立体(25.1)
構造用接着剤フィルム(401)と前処理済みの非ペルフルオロ化フルオロポリマーフィルム(213)とを準備し、固着性FEPフルオロポリマーフィルム(25.1)を調製するのに用いた。更に詳細には、上記の「FEPの下塗り」に記載されているようにして、厚さ2ミル(50.8マイクロメートル)のDupont(商標)FEPの1つの側面を下塗りした。続いて、一方の試料にはUV照射を10分間行い、他方の試料にはUV照射を20分間行って、前処理済みの非ペルフルオロ化フルオロポリマーフィルム(213)を作製した。0.05lbs./平方フィート(245.7g/m)の不織布ポリエステルベールを含む厚さ8ミル(203.2マイクロメートル)のエポキシフィルム(3M(商標)Scotch−Weld(商標)Structural Adhesive Film AF 555Mとして3Mから入手可能)(401)を、上記の「一般的な積層法」に記載されているようにして、上記のフルオロポリマーフィルムの処理済みの表面に接合及び積層した。残りの全てのライナー及び支持材料を除去し、固着性フルオロポリマーフィルム(25.1)をもたらした。
【0053】
接着剤フィルムAF555とFEPフルオロポリマー層との積層組立体(25.2)
構造用接着剤フィルム(401)と非ペルフルオロ化FEPフルオロポリマーフィルム(213)とを準備し、FEPフルオロポリマーフィルム(25.2)を調製するのに用いた。更に詳細には、厚さ2ミル(50.8マイクロメートル)のDupont(商標)FEP(213)の1つの側面を、上記の「一般的な積層法」に記載されているようにして、0.05lbs./平方フィート(245.7g/m)の不織布ポリエステルベールを含む厚さ8ミル(203.2マイクロメートル)のエポキシフィルム(3M(商標)Scotch−Weld(商標)Structural Adhesive Film AF 555Mとして3Mから入手可能)(401)の1つの表面に積層した。残りの全てのライナー及び支持材料を除去し、フルオロポリマーフィルム(25.2)をもたらした。
【0054】
接着剤フィルムAF191とフルオロポリマー層との積層組立体(26)
構造用接着剤フィルム(404)と非ペルフルオロ化フルオロポリマーフィルム(515)とを準備し、固着性フルオロポリマーフィルム(26)を調製するのに用いた。更に詳細には、各非ペルフルオロ化フルオロポリマーフィルム(515)を、上記の「一般的な積層法」に記載されているようにして、不織布ポリエステルベールを含む硬化性エポキシフィルム(3M(商標)Scotch−Weld(商標)Structural Adhesive Film AF191Mとして3Mから入手可能)(404)の1つの側面に接合及び積層した。残りの全てのライナー及び支持材料を除去し、固着性フルオロポリマーフィルム(26)をもたらした。
【0055】
接着剤フィルムAF191と処理済みのフルオロポリマー層との積層組立体(26.1)
構造用接着剤フィルム(404)と前処理済みの非ペルフルオロ化フルオロポリマーフィルム(213)とを準備し、固着性フルオロポリマーフィルム(26.1)を調製するのに用いた。更に詳細には、上記の「FEPの下塗り」に記載されているようにして、厚さ2ミル(50.8マイクロメートル)のDupont(商標)FEPの1つの側面を下塗りした。続いて、一方の試料にはUV照射を10分間行い、他方の試料にはUV照射を20分間行って、前処理済みの非ペルフルオロ化フルオロポリマーフィルム(213)を作製した。不織布ポリエステルベールを含む硬化性エポキシフィルム(3M(商標)Scotch−Weld(商標)Structural Adhesive Film AF191Mとして3Mから入手可能)(404)を、上記の「一般的な積層法」に記載されているようにして、フルオロポリマーフィルムの処理済み表面に接合及び積層した。残りの全てのライナー及び支持材料を除去し、固着性フルオロポリマーフィルム(26.1)をもたらした。
【0056】
接着剤フィルムAF191とFEPフルオロポリマー層との積層組立体(26.2)
構造用接着剤フィルム(404)と非ペルフルオロ化FEPフルオロポリマーフィルム(213)とを準備し、FEPフルオロポリマーフィルム(26.2)を調製するのに用いた。更に詳細には、厚さ2ミル(50.8マイクロメートル)のDupont(商標)FEP(213)の1つの側面を、上記の「一般的な積層法」に記載されているようにして、不織布ポリエステルベールを含む硬化性エポキシフィルム(3M(商標)Scotch−Weld(商標)Structural Adhesive Film AF191Mとして3Mから入手可能)(404)の1つの表面に積層した。残りの全てのライナー及び支持材料を除去し、固着性フルオロポリマーフィルム(26.2)をもたらした。
【0057】
硬化実施例:
ジアミン硬化エポキシと固着したフルオロポリマー層を有する硬化済み積層体(実施例65)
エポキシ樹脂含浸炭素繊維ファブリックと固着性フルオロポリマーフィルムとを準備し、複合材試料を調製するのに用いた。より具体的には、上記「複合部材の一般的なツーリング及びバギング」に記載の通りに以下の材料を組み立てかつ調製した。フルオロポリマー層が上記のツールに最も近くなり、接着剤層が露出される状態で、固着性フルオロポリマーフィルム(25)を上記のツールに貼付した。続いて、Cycom 970/PWC FT300 3K UTとしてCytecから入手可能である8プライのエポキシ樹脂含浸平織グラファイトファブリック3K−70−PW(100)を貼付した。各フルオロポリマーフィルムを用いて別個の試料を作製した。この組立体の硬化性樹脂を上記「複合部材の高圧硬化」に記載の通りに硬化した。
【0058】
ジアミン硬化エポキシと固着した処理済みのFEP層を有する硬化済み積層体(実施例65.1)
エポキシ樹脂含浸炭素繊維ファブリックと固着性FEPフルオロポリマーフィルムとを準備し、複合材試料を調製するのに用いた。より具体的には、上記「複合部材の一般的なツーリング及びバギング」に記載の通りに以下の材料を組み立てかつ調製した。フルオロポリマー層が上記のツールに最も近くなり、接着剤層が露出される状態で、固着性フルオロポリマーフィルム(25.1)を上記のツールに貼付した。続いて、Cycom 970/PWC FT300 3K UTとしてCytecから入手可能である8プライのエポキシ樹脂含浸平織グラファイトファブリック3K−70−PW(100)を貼付した。この組立体の硬化性樹脂を上記「複合部材の高圧硬化」に記載の通りに硬化した。
【0059】
ジアミン硬化エポキシと固着したFEP層を有する硬化済み積層体(実施例65.2)
エポキシ樹脂含浸炭素繊維ファブリックとFEPフルオロポリマーフィルムとを準備し、複合材試料を調製するのに用いた。より具体的には、上記「複合部材の一般的なツーリング及びバギング」に記載の通りに以下の材料を組み立てかつ調製した。フルオロポリマー層が上記のツールに最も近くなり、接着剤層が露出される状態で、FEPフルオロポリマーフィルム(25.2)を上記のツールに貼付した。続いて、Cycom 970/PWC FT300 3K UTとしてCytecから入手可能である8プライのエポキシ樹脂含浸平織グラファイトファブリック3K−70−PW(100)を貼付した。この組立体の硬化性樹脂を上記「複合部材の高圧硬化」に記載の通りに硬化した。
【0060】
ジシアンジアミド硬化エポキシと固着したフルオロポリマー層を有する硬化済み積層体(実施例66)
エポキシ樹脂含浸炭素繊維ファブリックと固着性フルオロポリマーフィルムとを準備し、複合材試料を調製するのに用いた。より具体的には、上記「複合部材の一般的なツーリング及びバギング」に記載の通りに以下の材料を組み立てかつ調製した。フルオロポリマー層が上記のツールに最も近くなり、接着剤層が露出される状態で、固着性フルオロポリマーフィルム(26)を上記のツールに貼付した。続いて、Cycom 970/PWC FT300 3K UTとしてCytecから入手可能である8プライのエポキシ樹脂含浸平織グラファイトファブリック3K−70−PW(100)を貼付した。各フルオロポリマーフィルムを用いて別個の試料を作製した。この組立体の硬化性樹脂を上記「複合部材の高圧硬化」に記載の通りに硬化した。
【0061】
ジシアンジアミド硬化エポキシと固着した処理済みのフルオロポリマー層を有する硬化済み積層体(実施例66.1)
エポキシ樹脂含浸炭素繊維ファブリックと固着性FEPフルオロポリマーフィルムとを準備し、複合材試料を調製するのに用いた。より具体的には、上記「複合部材の一般的なツーリング及びバギング」に記載の通りに以下の材料を組み立てかつ調製した。フルオロポリマー層が上記のツールに最も近くなり、接着剤層が露出される状態で、固着性フルオロポリマーフィルム(26.1)を上記のツールに貼付した。続いて、Cycom 970/PWC FT300 3K UTとしてCytecから入手可能である8プライのエポキシ樹脂含浸平織グラファイトファブリック3K−70−PW(100)を貼付した。この組立体の硬化性樹脂を上記「複合部材の高圧硬化」に記載の通りに硬化した。
【0062】
ジシアンジアミド硬化エポキシと固着し、FEP層を有する硬化済み積層体(実施例66.2)
エポキシ樹脂含浸炭素繊維ファブリックとFEPフルオロポリマーフィルムとを準備し、複合材試料を調製するのに用いた。より具体的には、上記「複合部材の一般的なツーリング及びバギング」に記載の通りに以下の材料を組み立てかつ調製した。フルオロポリマー層が上記のツールに最も近くなり、接着剤層が露出される状態で、FEPフルオロポリマーフィルム(26.2)を上記のツールに貼付した。続いて、Cycom 970/PWC FT300 3K UTとしてCytecから入手可能である8プライのエポキシ樹脂含浸平織グラファイトファブリック3K−70−PW(100)を貼付した。この組立体の硬化性樹脂を上記「複合部材の高圧硬化」に記載の通りに硬化した。
【0063】
評価
硬化後、実施例65、65.1、65.2、66、66.1、及び66.2のクーポンをダイヤモンドソーでトリミングした。テープ剥離試験を用いて、各試料のフルオロポリマー層の基材に対する接着性を試験した。更に詳細には、かみそりの刃を用いて、各試料に網状線を入れた。3M(商標)Aluminum Foil Tape 427(このテープは、非常に強固な接着性を有し、当該フィルムにしっかりと固着する)を用いて、試料の接着性(初期)を試験した。ゴムローラーを10回かけて圧力を加えることによって、このテープをならし、テープを素早く剥がした。接着試験の結果は、ASTM D3359に従って分類されている。試料を50℃の水に2時間浸すことによって調整した。上記と同じ方法を用いて、調整済み試料の接着性を試験した。結果を表1に要約する。
【0064】
未硬化エポキシド樹脂と、ジシアンジアミドを含む硬化剤と、の混合物を含む接着剤に、フルオロポリマーフィルムを高温で硬化させることによって、優れた接着性が得られた。FEPの実施例の接着性は、実施例65.2及び66.2の使用可能な接着性が事実上ない状態から、実施例65.1及び66.1(表面処理を加えたもの)の優れた接着性まで向上した。
【0065】
【表1】

【0066】
<1>調整中にFEPが基材から分離した。
【0067】
本開示の様々な修正及び変更は、本開示の範囲及び原理から逸脱することなく当業者には明白であり、また本発明は、上記で説明した例示的な実施形態に不当に限定して理解すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フルオロプラスチック層と、b)前記フルオロプラスチック層と接触している少なくとも1つの硬化性接着剤層であって、未硬化エポキシド樹脂と、ジシアンジアミドを含む硬化剤との混合物を含む接着剤層と、を含む、多層物品。
【請求項2】
a)フルオロプラスチック層と、b)前記フルオロプラスチック層と接触している少なくとも1つの硬化性接着剤層であって、未硬化エポキシド樹脂と、ジシアンジアミド、4,4−アミノフェニルジスルフィド、炭酸グアニジン、チオ尿素、及びこれらの混合物からなる群から選択される硬化剤との混合物を含む硬化性接着剤層と、を含む、多層物品。
【請求項3】
前記フルオロプラスチックが非ペルフルオロ化フルオロポリマーを含む、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記非ペルフルオロ化フルオロポリマーが、少なくとも部分的に二フッ化ビニリデンモノマーに由来する、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記フルオロプラスチックが、表面処理済みの非ペルフルオロ化フルオロポリマーを含む、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項6】
前記フルオロプラスチックが、表面処理済みのフルオロポリマーを含む、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項7】
前記フルオロプラスチック層が2つの硬化性接着剤層を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記エポキシド樹脂がフェノール化合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記エポキシド樹脂が2つを超える官能基を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
硬化部位が、窒素含有硬化部位、臭素含有硬化部位、塩素含有硬化部位、又はヨウ素含有硬化部位、オレフィン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記フルオロプラスチックポリマーが1つ以上の硬化部位を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記窒素含有硬化部位がニトリル含有硬化部位である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
前記エポキシド樹脂が、クレゾールノボラック、エピクロロヒドリン/テトラフェニロールエタン、ビスフェノールA/エピクロロヒドリン、ノボラック/ビスフェノールA、エピクロロヒドリン/フェノール−ホルムアルデヒド、9,9−ビス−2,3−エポキシプロピルフェニルフルオリン、エポキシプロピルフェニルフルオレン、ビスフェノールAF/エピクロロヒドリン、ノボラック/ビスフェノールAF、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の物品。

【公表番号】特表2013−514439(P2013−514439A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544697(P2012−544697)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/060222
【国際公開番号】WO2011/081911
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】