説明

エポキシ樹脂粒子の製造方法

【課題】 本発明の課題は、液状又は超臨界状態の二酸化炭素を用いる樹脂粒子の製造方法において、樹脂中の残存溶剤が極めて少なく、均一な形状、狭い粒度分布を有する樹脂粒子が得られる製造方法を提供することである。
【解決手段】 疎水性分散安定剤(D)又は疎水性微粒子(F)の存在下に、液状又は超臨界状態の二酸化炭素(E)中に、エポキシ基を2個以上有する化合物(A)及びN−H結合を2個以上有する化合物(B)必要により溶剤(K)を含有する樹脂前駆体溶液(C)を混合分散させて、(A)と(B)の反応を行うことによりエポキシ樹脂粒子(J)を得ることを特徴とする、エポキシ樹脂粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒径が均一であるエポキシ樹脂粒子の製造方法、さらに詳しくは、液状又は超臨界状態の二酸化炭素を用いる樹脂粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂粒子は粉体塗料、電子写真トナー等に用いられる。その製造方法としては、粉砕法や、水もしくは非水系溶剤、並びに分散安定剤の存在下で、樹脂を分散させて粉体を得る方法等が知られているが、超臨界二酸化炭素を用いるエポキシ樹脂粒子の製造法が最近検討されている。超臨界二酸化炭素を用いる樹脂粒子の製造法として、高圧流体を含む樹脂組成物をスタチックミキサーによって混合、分散し、高圧タービン分散機によって微粒化する方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
この方法によれば、安定剤等の不純物を含まず、癒着の少ない均一な粒子径を有する球状に近いエポキシ樹脂微粒子を経済的に製造することができるとされているが、この方法では、十分に均一な形状、狭い粒度分布の樹脂粒子を得ることができない問題があった。また10万を超える高分子量の樹脂や、架橋構造を有する樹脂を扱うことが困難である問題があった。
【特許文献1】特開2000−279774
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、液状又は超臨界状態の二酸化炭素を用いるエポキシ樹脂粒子の製造方法において、樹脂中の残存溶剤が極めて少なく、均一な形状、狭い粒度分布を有するエポキシ樹脂粒子が得られる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、従来技術における上記の事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、疎水性分散安定剤(D)又は疎水性微粒子(F)の存在下に、液状又は超臨界状態の二酸化炭素(E)中に、エポキシ基を2個以上有する化合物(A)及びN−H結合を2個以上有する化合物(B)必要により溶剤(K)を含有する樹脂前駆体溶液(C)を混合分散させて、(A)と(B)の反応を行うことによりエポキシ樹脂粒子(J)を得ることを特徴とする、エポキシ樹脂粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の製造方法から得られるエポキシ樹脂粒子は、樹脂中の残存溶剤が極めて少なく、均一な形状、狭い粒度分布を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の製造方法において、疎水性分散安定剤(D)又は疎水性微粒子(F)の存在下に、液状又は超臨界状態の二酸化炭素(E)中に、エポキシ基を2個以上有する化合物(A)及びN−H結合を2個以上有する化合物(B)必要により溶剤(K)を含有する樹脂前駆体溶液(C)を混合分散させる方法としては、例えば、(1)(C)を(E)に添加して(E)中に(C)を分散させる方法、(2)(C)に(E)を添加して(E)中に(C)を分散させる方法が挙げられる。これらの中で、(1)が好ましい。
【0007】
疎水性分散安定剤(D)は、樹脂前駆体溶液(C)及び二酸化炭素(E)を混合分散させる際に、(D)だけを添加してもよいし、予め化合物(A)中、又は化合物(B)中、溶剤(K)中、二酸化炭素(E)中のいずれに添加しておいてもよいが、(A)中に混合しておくことが好ましい。
【0008】
本発明において疎水性分散安定剤(D)とは、二酸化炭素に親和性を有するジメチルシロキサン基、含フッ素基の少なくとも一方の基と共に、樹脂前駆体溶液(C)に親和性を有する化学構造を有する化合物であることが好ましい。
さらに、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であり、側鎖にジメチルシロキサン基及びフッ素を含有する官能基の少なくとも一方の基を有する櫛型高分子である化合物が、疎水性分散安定剤(D)としてより好ましい。
より具体的には、後述のジメチルシロキサン基を有するモノマー(あるいは反応性オリゴマー)(M1−1)、フッ素を含有するモノマー(M1−2)の少なくとも一方と、ビニル系のモノマーあるいはオリゴマー(M2−1)あるいは後述の高分子ポリオール(a1)、低分子ジオール(a2)との共重合体が好ましい。共重合の形態はランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよいが、ブロックあるいはグラフトが好ましい。
【0009】
例えば疎水性分散安定剤(D)がビニル系樹脂である場合、ジメチルシロキサン基を有するモノマー(あるいは反応性オリゴマー)(M1−1)としては、メタクリル変性 シリコーンが好ましく、次式に示す構造を有する。
(CH3 3 SiO((CH3 2 SiO)a Si(CH3 2
(但しaは、平均値で15〜45であり、Rはメタクリル基を含む有機変性基である。) Rの例としては、−C3 6 OCOC(CH3 )=CH2 が挙げられる。
【0010】
また、フッ素を含有するモノマー(M1−2)の具体例としては、1,1−ジヒドロパーフルオロオクチルアクリレート(DPFOA)、1,1−ジヒドロパーフルオロオクチルメタクリレート(DPFOMA)、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート(PFOEA)、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(PFOEMA)、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(PFHEMA)、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート(PFBEMA)等が挙げられる。ビニル系のモノマーあるいはオリゴマー(M2−1)としては、二重結合を有するいかなるモノマーを使用することができるが、プレポリマー(A)とケチミン化合物(B)が反応してなる樹脂との親和性が良好なものが好ましい。
【0011】
疎水性分散安定剤(D)の好ましい重量平均分子量の範囲は1,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは2,000〜500,000、特に好ましくは5,000〜100,000である。この範囲内にすると、(D)の分散安定効果が向上する。
分散安定剤(D)の添加量は、分散安定性の観点から、エポキシ基を2個以上有する化合物(A)の重量に対し0.01〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0.02〜40重量%、特に好ましくは0.03〜30重量%である。
【0012】
本発明において、疎水性微粒子(F)としては、無機あるいは有機の粒子状物質であれば特に限定されず、目的に応じて単独で用いても2種以上を使用してもよい。すなわち、無機微粒子(F1)、有機微粒子(F2)、(F1)と(F2)の組合せのいずれでもよい。
【0013】
無機微粒子(F1)としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、酸化スズ、酸化クロム、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ランタン、酸化タンタル、酸化テルビウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジウム、フェライト類等の金属酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム等の金属水酸化物、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルイサイト等の金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維等の金属硫酸塩、珪酸カルシウム(ウォラスナイト、ゾノトライト)、カオリン、クレー、タルク、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク等の金属珪酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素等の金属窒化物 、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛アルミニウムボレード等の金属チタン酸塩、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム等の金属ホウ酸塩、リン酸三カルシウム等の金属燐酸塩、硫化モリブデン等の金属硫化物、炭化珪素等の金属炭化物、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維等の炭素類、金、銀その他の無機粒子が挙げられる。
【0014】
有機微粒子(F2)としては、例えば、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、セルロース及びこれらの混合物等の公知の有機樹脂微粒子(F21)が挙げられる。またエステル系ワックス(カルナバワックス、モンタンワックス、ライスワックス等)、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、パラフィン系ワックス、ケトン系ワックス、エーテル系ワックス、長鎖脂肪族アルコール、長鎖脂肪酸およびこれらの混合物等の有機系ワックス微粒子(F22)、長鎖脂肪酸の金属塩微粒子(F23)等が挙げられる。また一般的に着色剤として使用されるアゾ系、フタロシアニン系、縮合多環系、染色レーキ系等の各種有機系染料あるいは有機系顔料、及びこれらの誘導体を使用することができる。
【0015】
疎水性微粒子(F)はそのまま用いても良く、また例えばシラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤による表面処理、各種界面活性剤による表面処理、ワックスやポリマーによるコーティング処理等により表面改質されていてもよい。
疎水性微粒子(F)は、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属珪酸塩、金属窒化物、金属リン酸塩、金属ホウ酸塩、金属チタン酸塩、金属硫化物、炭素類からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機微粒子(F1)、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機樹脂微粒子(F21)、長鎖脂肪酸の金属塩微粒子(F23)、又は(F1)、(F21)及び(F23)からなる群から選ばれる少なくとも2種以上の混合物を使用することが好ましい。
【0016】
疎水性微粒子(F)の体積平均粒径は、所望の粒径のエポキシ樹脂粒子 (J)を得るのに適した粒径になるように、上記粒径比の範囲で適宜調整することができる。例えば、体積平均粒子径1μmの樹脂粒子 (C)を得たい場合には、好ましくは0.0005〜0.3μm、特に好ましくは0.001〜0.2μmの範囲、10μmの樹脂粒子 (C)を得た場合には、好ましくは0.005〜3μm、特に好ましくは0.05〜2μm、100μmの粒子(C)を得たい場合には、好ましくは0.05〜30μm、特に好ましくは0.1〜20μmである。
(F)の添加量は、分散安定性の観点から、エポキシ基を2個以上有する化合物(A)の重量に対し0.01〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0.02〜40重量%、特に好ましくは0.03〜30重量%である。
【0017】
本発明において用いられるエポキシ基を2個以上有する化合物(A)は、通常エポキシ樹脂を製造する際に使用されるものであれば特に制限されないが、以下のものが好ましい。
エポキシ基を2個以上有する化合物(A)としては、芳香族系、複素環系、脂環族系および脂肪族系のポリエポキシド(エポキシ 基の数は2〜4、エポキシ 当量は70〜4,000eq/g)があげられる。
【0018】
芳香族系ポリエポキシドとしては、多価フェノールのエポキシエーテル体およびエポキシ芳香族ポリアミンが挙げられる。
多価フェノールのエポキシエーテル体としては、ビスフェノールFジエポキシエーテル、ビスフェノールAジエポキシエーテル、ビスフェノールBジエポキシエーテル、ビスフェノールADジエポキシエーテル、ビスフェノールSジエポキシエーテル、ハロゲン化ビスフェノールAジエポキシ、テトラクロロビスフェノールAジエポキシエーテル、カテキンジエポキシエーテル、レゾルシノールジエポキシエーテル、ハイドロキノンジエポキシエーテル、ピロガロールトリエポキシエーテル、1,5−ジヒドロキシナフタリンジエポキシエーテル、ジヒドロキシビフェニルジエポキシエーテル、オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジエポキシエーテル、フェノールまたはクレゾールノボラック樹脂のエポキシエーテル体、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応から得られるジエポキシエーテル体、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒド、またはホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリエポキシエーテル体、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリエポキシエーテル体が挙げられる。
【0019】
エポキシ芳香族ポリアミンとしては、N,N−ジエポキシアニリンおよびN,N,N’,N’−テトラエポキシジフェニルメタンジアミンが挙げられる。さらに、本発明において前記芳香族系として、トリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタンジイソシアネートとグリシドールの付加反応によって得られるジエポキシレタン化合物、前記2反応物にポリオールも反応させて得られるエポキシ基含有ポリウレタン(プレ)ポリマーおよびビスフェノールAのアルキレンオキシド(エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)付加物のジエポキシエーテル体も含む。
【0020】
複素環系としては、トリスエポキシメラミン等が挙げられる。
【0021】
脂環族系としては、ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエール、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、およびビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミンが挙げられる。また、脂環族系としては、前記芳香族系ポリエポキシドの核水添化物も含む。
【0022】
脂肪族系としては、多価アルコールのポリエポキシエーテル体、ポリカルボン酸のポリエポキシエステル体、およびエポキシ脂肪族アミンが挙げられる。
多価アルコールのポリエポキシエーテル体としては、例えばエチレングリコールジエポキシエーテル、プロピレングリコールジエポキシエーテル、テトラメチレングリコールジエポキシエーテル、ポリエチレングリコールジエポキシエーテル、ポリプロピレングリコールジエポキシエーテル、トリメチロールプロパントリエポキシエーテル、ペンタエリスリトールテトラエポキシエーテル、およびソルビトールポリエポキシエーテルが挙げられる。
ポリカルボン酸のポリエポキシエステル体としては、例えばジエポキシアジペート、エポキシ(メタ)アクリレートの(共)重合体が挙げられる。
エポキシ脂肪族アミンとしては、例えばN,N,N’,N’−テトラエポキシヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0023】
本発明においてN−H結合を2個以上有する化合物(B)としては、炭素数4〜15の脂環族ジアミン[4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシル、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等];炭素数2〜12の脂肪族ジアミン[1,2−エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン];芳香環含有ジアミン[キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジアミン等]およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。これらのうち好ましいものは脂環族ジアミンおよび脂肪族ジアミンであり、特に好ましいのはイソホロンジアミンおよび1,6−ヘキサンジアミンである。
【0024】
本発明においてN−H結合を2個以上有する化合物(B)として、対応するケチミン化合物(B’)を用いることができる。
高温で分散する場合、化合物(B)の反応速度が速い場合等は、ケチミン化合物(B’)を使用することが好ましい。
ケチミン化合物(B’)は、化合物(B)とケトン化合物との反応化合物である。
【0025】
ケトン化合物としては炭素数3〜9の脂肪族または脂環族ケトン化合物(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)が挙げられる。これらのうち好ましいのはアセトンおよびメチルエチルケトンである。
【0026】
ケチミン化合物(B)を合成する方法としては特に限定されず公知の方法を用いてよく、例えば、ジアミンと過剰量のケトン化合物の混合物を加熱し、必要により生成した水を除去する方法が例示できる。
【0027】
溶剤(K)としては、例えば、活性水素を含まず、且つ標準状態において水の溶解度が1%以上であり、溶解度パラメータが8〜15である溶媒が挙げられる。具体的には酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系またはエステルエーテル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン(以下、THFと記載する。)、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載する。)、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤、N−メチルピロリドンなどの複素環式化合物系溶剤、及びこれら2種以上の混合溶剤等が挙げられる。これらの中で、残存溶剤除去の観点から低沸点であるものが好ましく、具体的には酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトンが好ましい。
ここで、溶解度パラメータは、Polymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14,No.2 P.147〜154に記載の計算方法による。樹脂前駆体溶液(C)において、溶剤(K)の含有量は、0〜70重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましい。
【0028】
本発明において、液体の二酸化炭素とは、二酸化炭素の温度軸と圧力軸とで表す相図上において、二酸化炭素の三重点(温度=−57℃、圧力=0.5MPa)と二酸化炭素の臨界点(温度=31℃、圧力=7.4MPa)を通る気液境界線、臨界温度の等温線、及び固液境界線に囲まれた部分の温度・圧力条件である二酸化炭素を表し、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度以上の温度・圧力条件である二酸化炭素を表す(本発明の圧力とは、2成分以上の混合ガスの場合、全圧を示す)。
【0029】
本発明の製造方法において、液状又は超臨界状態の二酸化炭素(E)中で行う操作は以下の温度で行うことが好ましい。減圧時に配管内で二酸化炭素が固体に相転移し、流路を閉塞させないようにするために、30℃以上が好ましく、また、樹脂粒子(J)の熱劣化を防止するために、200℃以下が好ましい。さらに30〜150℃が好ましく、より好ましくは34〜130℃、特に好ましくは35〜100℃、最も好ましくは40℃〜80℃である。
【0030】
本発明の製造方法において、液状又は超臨界状態の二酸化炭素(E)中で行う操作は以下の圧力で行うことが好ましい。(E)中に良好に分散させるために好ましくは7MPa以上であり、設備コスト、運転コストの観点から好ましくは40MPa以下である。さらに好ましくは7.5〜35MPa、より好ましくは8〜30MPa、特に好ましくは8.5〜25MPa、最も好ましくは9〜20MPaである。
本発明の製造方法において、液状又は超臨界状態の二酸化炭素(E)中で行う操作の温度及び圧力は、樹脂粒子(J)が(E)中に溶解せず、且つ(J)が凝集・合一可能な範囲内で設定することが好ましい。通常、低温・低圧ほど目的分散物が(E)中に溶解しない傾向となり、高温・高圧ほど(J)が凝集・合一し易い傾向となる。
【0031】
本発明における(E)中の二酸化炭素の質量分率は、通常70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
分散媒としての物性値(粘度、拡散係数、誘電率、溶解度、界面張力等)を調整するために(E)中に他の物質を適宜含んでよく、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等の不活性気体等が挙げられる。
【0032】
本発明において、上記疎水性分散安定剤(D)又は疎水性微粒子(F)の存在下に、樹脂前駆体溶液(C)と液状又は超臨界状態の二酸化炭素(E)を混合分散させて、エポキシ基を2個以上有する化合物(A)及びN−H結合を2個以上有する化合物(B)の重合反応を行うことにより樹脂粒子(J)が生成するが、該樹脂粒子は、(E)中に(J)が分散した分散体(L)の圧力を減圧にすることにより樹脂粒子(J)を単離することができる。
【0033】
さらに上記分散体(L)に、二酸化炭素(E)を混合して、樹脂粒子(J)から溶剤を二酸化炭素の相に抽出し、さらに溶剤を含む二酸化炭素を溶剤不含の二酸化炭素に置換する操作を行えば、樹脂粒子間の合着がないという点から好ましい。
【0034】
化合物(A)がエポキシ基を3個以上有する場合、及び化合物(B)がN−H結合を3個以上有する場合の少なくとも1方の場合であって、エポキシ樹脂粒子(J)が架橋構造を有する場合であっても本発明の製造方法によれば、均一な形状、狭い粒度分布を有するエポキシ樹脂粒子を得ることができる。
【0035】
実施例
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0036】
製造例1
ケチミン化合物(B)の製造
ヘキサメチレンジアミンと過剰のメチルエチルケトン(ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のメチルエチルケトンを除去してケチミン化合物(ヘキサメチレンジアミン1モルにメチルエチルケトン2モルが脱水付加したジケチミン)(B−2)を得た。(B−2)の全アミン価は414、価数は2である。
【0037】
製造例2
疎水性分散安定剤(D−1)溶液の製造
攪拌機を備えた反応容器内にTHF700部を仕込み、反応容器内の空気を窒素置換した後、加熱して還流温度とした。次に、メタクリル酸メチル150部、メタクリル変性シリコーン(官能基等量:12,000g/mol、数平均分子量12,000、信越化学工業製:X22−2426、下記一般式(1)で示される構造を有する。)150部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部の混合物を反応基内に2時間で適下後、還流温度で6時間熟成し、疎水性分散安定剤(D―1)溶液を得た。(D−1)の重量平均分子量は43,000であった。
【0038】
【化1】

【0039】
製造例3
疎水性分散安定剤(D−2)溶液の製造
攪拌機を備えた反応容器内にTHF700部を仕込み、反応容器内の空気を窒素置換した後、加熱して還流温度とした。次に、メタクリル酸メチル150部、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート150部、アゾビスイソブチロニトリル1.5部の混合物を反応基内に2時間で適下後、還流温度で6時間熟成し、疎水性分散安定剤(D―2)溶液を得た。(D−2)の重量平均分子量は、18,000であった。
【0040】
製造例4
微粒子(F−1)分散液の製造
ガラス容器内にノルマルヘキサン700部、および疎水性シリカ(平均一次粒径40nm、日本アエロジル製、RX50)300部を添加し、3分間超音波を照射し、微粒子(F−1)分散液を得た。
【0041】
実施例1
図1の実験装置において、まずバルブV1、V2を閉じ、ボンベB2、ポンプP4より粒子回収槽T4に二酸化炭素(純度99.99%)を導入し、10MPa、40℃に調整した。また溶液タンクT1にビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)の40%THF溶液、溶液タンクT6にヘキサメチレンジアミン(B−1)の40%THF溶液、溶液タンクT2に製造例2で得た疎水性分散安定剤(D−1)溶液を仕込んだ。
次にボンベB1、ポンプP3より二酸化炭素を分散槽T3に導入し、15MPa、40℃に調整した。次に分散槽T3の内部を3000rpmで攪拌しながら、タンクT1、ポンプP1より(A−1)溶液を、またタンクT6、ポンプP6より(B−1)溶液を、またタンクT2、ポンプP2より(D−1)溶液を分散槽T3内に導入した。この際、(A−1)溶液と(B−1)溶液はスタティックミキサーM1で混合される。
【0042】
なお分散槽T3への仕込み組成の質量比は次の通りである。
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)の40%THF溶液 310部
ヘキサメチレンジアミン(B−1)の40%THF溶液 90部
疎水性分散安定剤(D−1)溶液 40部
二酸化炭素 437部
なお導入した二酸化炭素の質量は、二酸化炭素の温度(40℃)、及び圧力(15MPa)
から二酸化炭素の密度を下記文献2に記載の状態式より算出し、これに分散槽T3の体積を乗じることにより算出した。
文献2:Journal of Physical and Chemical Refarence data、vol.25、P.1509〜1596
【0043】
上記材料をT3内に導入後、1分間攪拌し分散体(L−1)を得た。バルブV1を開き、予め10MPa、40℃に調整された二酸化炭素を粒子回収槽T4に仕込み、そこに分散体(L−1)を導入し、圧力が一定になったところでV1を閉めた。この操作により樹脂からの溶剤の抽出を行った。次に圧力ボンベB2、ポンプP4より粒子回収槽T4に二酸化炭素を導入しつつ圧力調整バルブV2により圧力を10MPaに保持することにより、抽出された溶剤を含む二酸化炭素を溶剤トラップ槽T5に排出すると共に、樹脂粒子(J−1)をフィルターF1に捕捉した。圧力ボンベB2、ポンプP4より粒子回収槽T4に二酸化炭素を導入することは、上記の分散槽T3に導入した二酸化炭素質量の8倍量を粒子回収槽T4に導入した時点で二酸化炭素の導入を停止した。この停止の時点で、溶剤を含む二酸化炭素を、溶剤を含まない二酸化炭素で置換すると共に樹脂粒子(J−1)をフィルターF1に捕捉する操作は完了した。さらに、圧力調整バルブV2を少しずつ開き、粒子回収槽内を大気圧まで減圧し、フィルターF1に補足されている樹脂粒子(J−1)を得た。
【0044】
実施例2
実施例1において、疎水性分散安定剤(D−1)溶液の代わりに製造例4で得た微粒子(F−1)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂粒子(J−2)を得た。なお分散槽T3への仕込み組成の質量比は次の通りである。
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)の40%THF溶液 310部
ヘキサメチレンジアミン(B−1)の40%THF溶液 90部
微粒子(F−1)分散液 53部
二酸化炭素 427部
【0045】
実施例3
実施例1において疎水性分散安定剤(D−1)溶液を用いる代わりに、製造例3で得られた疎水性分散安定剤(D−2)溶液を用いる以外は実施例1と同様にして樹脂粒子(J−3)を得た。
なお分散槽T3への仕込み組成の質量比は次の通りである。
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)の40%THF溶液 310部
ヘキサメチレンジアミン(B−1)の40%THF溶液 90部
疎水性分散安定剤(D−2)溶液 40部
二酸化炭素 411部
【0046】
実施例4
実施例1においてビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)を用いる代わりに、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン(A−2)溶液を用いる以外は実施例1と同様にして樹脂粒子(J−4)を得た。
なお分散槽T3への仕込み組成の質量比は次の通りである。
テトラグリシジルアミノジフェニルメタン(A−2)40%THF溶液 278部
ヘキサメチレンジアミン(B−1)の40%THF溶液 123部
疎水性分散安定剤(D−2)溶液 40部
二酸化炭素 436部
【0047】
実施例5
実施例1においてヘキサメチレンジアミンを用いる代わりに、製造例1で得られたケチミン化合物(B−2)溶液を用いること、また分散槽T3の温度・圧力が40℃、15MPaであるのを80℃、25MPaとすること、また疎水性分散安定剤(D−1)溶液中に7重量%の水を添加すること以外は実施例1と同様にして樹脂粒子(J−5)を得た。
なお分散槽T3への仕込み組成の質量比は次の通りである。
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)の40%THF溶液 257部
ケチミン化合物(B−2)溶液 143部
疎水性分散安定剤(D−2)溶液 40部
二酸化炭素 384部
【0048】
比較例1
攪拌機を備えた反応容器にビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)の40%THF溶液281部とヘキサメチレンジアミン(B−1)の40%THF溶液82部を60℃で6時間混合した後、60℃、7Torrの条件でTHFを留去することにより、エポキシ樹脂を得た。これをヘンシェルミキサー(FM10B、三井三池化工機製)を用いて予備粉砕した後、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業製)を用いて微粉砕し、樹脂粒子(J−6‘)を得た。
【0049】
比較例2
攪拌機を備えた反応容器にビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)の40%THF溶液281部、スチレン化クミルフェノールポリエチレンオキサイド付加物2.9部、ヘキサメチレンジアミン(B−1)の40%THF溶液82部を加え、攪拌混合した後、攪拌下で水550部を添加し、乳白色の懸濁液を得た。これを攪拌下で70℃まで加熱し5時間攪拌した。得られた懸濁液を2000rpm、5分間遠心分離して上澄み液を捨て、さらに水を550部加えて攪拌、均一化し、この操作を2回繰り返した。さらに遠心分離して上澄みを捨て、得られた沈降物を40℃の乾燥機にて乾燥し、樹脂粒子(J−7‘)を得た。
【0050】
実施例1〜5および比較例1〜2で得た樹脂粒子 (J−1)〜(J−5)と(J−6’)〜(J−7’)について、下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
評価方法
・粒度分布
樹脂粒子をポリスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度0.1%)に分散して、体積平均粒径(Dv50)及び個数平均粒径(Dn50)をコールターカウンター(Multisizer3、ベックマンコールター社製)で測定した。粒度分布はDv50/Dn50の値で評価を行った。Dv50/Dn50の値が1に近いほど、粒度の単分散性が高い。
【0053】
・安息角
樹脂粒子1000部に対し、シリカ微粉末(サイロブロックS200、グレースデヴィソン化学製)3部をプラネタリーミキサーで10分間混合したものを、パウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製PT−R型)で測定した。測定は、温度23±0.5℃、湿度50±2%に調節した温調室にて実施した。安息角の値が小さいほど、粉体流動性が良い。
【0054】
・形状
形状については走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。
【0055】
・揮発分
揮発分は、サンプル3gを150℃の循風乾燥機に45分間入れた際の重量減少分とした。
【0056】
評価結果
・粒度分布
実施例1〜5、比較例2については、粒度分布Dv50/Dn50の値が比較的小さく粒度分布は比較的シャープであったが、比較例1は、Dv50/Dn50の値が比較的大きく粒度分布はブロードとなった。
・形状
実施例1〜5、比較例2は球状であった。比較例1は不定形となった。
・揮発分
比較例2は、他に比べ非常に高い値となった。
・安息角
実施例1〜5は低い値を示し粉体流動性が良好であったが、比較例1及び2は比較的高い値を示し、粉体流動性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の樹脂粒子 は、塗料用添加剤、化粧品用添加剤、紙塗工用添加剤、スラッシュ成形用樹脂、粉体塗料、電子部品製造用スペーサー、触媒用担体、電子写真トナー、静電記録トナー、静電印刷トナー、電子測定機器の標準粒子、電子ペーパー用粒子、医療診断用担体、クロマトグラフ充填剤、電気粘性流体用粒子、その他成形材料用樹脂粒子として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】樹脂粒子の作成に用いた実験装置
【符号の説明】
【0059】
T1:溶液タンク
T2:溶液タンク
T3:分散槽(最高使用圧力20MPa、最高使用温度100℃、攪拌機つき)
T4:粒子回収槽(最高使用圧力20MPa、最高使用温度100℃)
T5:溶剤トラップ
T6:溶液タンク
F1:セラミックフィルター(メッシュ:0.5μm)
B1、B2:二酸化炭素ボンベ
P1、P2、P6:溶液ポンプ
P3、P4:二酸化炭素ポンプ
V1:バルブ
V2:圧力調整バルブ
M1:スタティックミキサー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性分散安定剤(D)又は疎水性微粒子(F)の存在下に、液状又は超臨界状態の二酸化炭素(E)中に、エポキシ基を2個以上有する化合物(A)及びN−H結合を2個以上有する化合物(B)必要により溶剤(K)を含有する樹脂前駆体溶液(C)を混合分散させて、(A)と(B)の反応を行うことによりエポキシ樹脂粒子(J)を得ることを特徴とする、エポキシ樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
さらに、液状又は超臨界状態の二酸化炭素(E)中にエポキシ樹脂粒子(J)が分散した分散体(L)の圧力を減圧にすることによりエポキシ樹脂粒子(J)を得る請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
疎水性分散安定剤(D)がジメチルシロキサン基及びフッ素を含有する官能基の少なくとも一方の基を有する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
疎水性分散安定剤(D)が、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であり、側鎖にジメチルシロキサン基及びフッ素を含有する官能基の少なくとも一方の基を有する櫛型高分子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
疎水性微粒子(F)が、無機微粒子(F1)、有機樹脂微粒子(F21)、長鎖脂肪酸の金属塩微粒子(F23)、又は無機微粒子(F1)、有機樹脂微粒子(F21)及び長鎖脂肪酸の金属塩微粒子(F23)からなる群から選ばれる少なくとも2種の混合物微粒子である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
化合物(A)がエポキシ基を3個以上有する場合、及び化合物(B)がN−H結合を3個以上有する場合の少なくとも1方の場合であって、エポキシ樹脂粒子(J)が架橋構造を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
液状又は超臨界状態の二酸化炭素(E)中にエポキシ樹脂粒子(J)が分散した分散体(L)に、液状又は超臨界状態の二酸化炭素(E)を混合して、エポキシ樹脂粒子(J)から溶剤を二酸化炭素の相に抽出し、さらに溶剤を含む二酸化炭素を溶剤不含の二酸化炭素に置換する請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−208164(P2008−208164A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43806(P2007−43806)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】