説明

エラストマー組成物発泡体およびその製造方法

【課題】微細な発泡セルを有するエラストマー組成物発泡体を簡便かつ大量に製造する。
【解決手段】エラストマー(A)10〜90重量部および熱可塑性樹脂(B)10〜90重量部(但し、(A)と(B)との合計は100重量部である。)を溶融混合して混合物を形成し、該混合物を架橋および発泡することにより得られる、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した平均セル径が50〜3000nmの発泡セルを有し、前記発泡セルのうちセル径が100nm未満の発泡セルの割合が数基準で30%以上であり、密度が0.01〜0.85g/cm3であることを特徴とするエラストマー組成物発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマーおよび熱可塑性樹脂から形成されるエラストマー組成物発泡体ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などに用いられる材料には、近年の環境対応の観点から、軽量化が求められている。軽量化の手段の一つとして発泡が挙げられる。例えば、エラストマーおよび樹脂の発泡体とは、多数の相互に連絡している小空孔または相互に連絡していない小気泡が全体に均一に分布している、密度の小さいものをいう。実用化されているエラストマーおよび樹脂の発泡体としては、ポリスチレン発泡体、ABS(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリウレタン発泡体、塩化ビニル樹脂発泡体、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合体)発泡体などが挙げられる。
【0003】
エラストマーおよび樹脂の発泡体の製造方法は、バッチ式、連続押出式に大別される。
バッチ式の製造方法は、例えば、オートクレーブ内にエラストマーおよび樹脂の組成物を配置して、該組成物に発泡剤を溶解させ、オートクレーブ内の圧力を下げて、該組成物に溶解させた発泡剤を過飽和とすることで、エラストマーおよび樹脂の組成物の発泡体を得る方法である。バッチ式の方法を用いれば、製造条件の精密制御が比較的容易なため、微細な発泡セルを有する発泡体を製造することができるなどの利点がある(例えば特許文献1〜5参照)。
【0004】
一方、連続押出式の製造方法は、発泡剤を含む溶融エラストマーおよび溶融樹脂の組成物を減圧雰囲気下で準備して、該組成物を口金から連続して押し出して、該組成物に溶解させた発泡剤を過飽和とすることで、エラストマーおよび樹脂の組成物の発泡体を得る方法である。連続押出式の製造方法によれば、サイズの大きい発泡体を得ることができ、また大量生産の視点からはコスト面でも優れている(例えば特許文献6参照)。
【0005】
上記のようにバッチ式の製造方法には、微細な発泡セルを有する発泡体を製造できるという利点があるものの、大量生産には不向きで、コスト面で不利になることがある。
一方、連続押出式の製造方法では、コスト面での優位性はあるものの、製造条件を精密に制御することが難しい。特に、溶融エラストマーおよび溶融樹脂中での発泡セルのセル成長を制御することが困難であるため、発泡セルの長径の平均値が4μm以下の発泡体を得ることは難しかった。
【0006】
発泡セルを小さくする手法として、例えば特許文献7では、形成された発泡セルの成長を制御するため、セル形成(発泡完了)後にエラストマーおよび樹脂を架橋する方法が述べられている。このようにセルを小さくすることは、発泡体の最大の欠点である機械特性の低下を抑制するという点で重要である。しかしながら、この方法では、セル径が0.1μm以上の発泡セルの割合が多く、充分に機械強度の低下を抑制できるとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−057026号公報
【特許文献2】特開平6−254981号公報
【特許文献3】特開平7−138401号公報
【特許文献4】特開2000−281829号公報
【特許文献5】特開2001−055464号公報
【特許文献6】特開2003−176375号公報
【特許文献7】特許第3992386号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、微細な発泡セルを有し、かつ大量生産の視点からコスト面でも優れる発泡体およびその製造方法を提供することである。また、このように微細な発泡セルを形成することで、発泡体の機械強度の低下を抑制すると共に、製品の軽量化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定量のエラストマーおよび熱可塑性樹脂を溶融混合して混合物を形成し、該混合物を架橋および発泡することにより、発泡セルの成長を制御でき、ひいては微細な発泡セルを有するエラストマー組成物発泡体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明およびその好適な態様を、次の〔1〕〜〔22〕によりそれぞれ説明する。
〔1〕本発明は、エラストマー(A)10〜90重量部および熱可塑性樹脂(B)10〜90重量部(但し、(A)と(B)との合計は100重量部である。)を溶融混合して混合物を形成し、該混合物を架橋および発泡することにより得られる、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した平均セル径が50〜3000nmの発泡セルを有し、前記発泡セルのうちセル径が100nm未満の発泡セルの割合が数基準で30%以上であり、密度が0.01〜0.85g/cm3であることを特徴とするエラストマー組成物発泡体に関する。
【0011】
〔2〕前記〔1〕等に記載の本発明においては、前記のエラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、架橋剤(C)を0.01〜50重量部の割合で使用して得られるエラストマー組成物発泡体が好適である。
【0012】
〔3〕前記〔2〕等に記載の本発明においては、前記架橋剤(C)として、SiH基を1分子中に少なくとも2個有するSiH基含有化合物(C1)、有機過酸化物(C2)およびフェノール系樹脂(C3)から選ぶことが好適である。
【0013】
〔4〕前記の〔1〕、〔2〕あるいは〔3〕等に記載の発明においては、前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、発泡剤(D)を0.1〜200重量部の割合で使用して得られるエラストマー組成物発泡体が好適である。
【0014】
〔5〕前記〔4〕等に記載のエラストマー組成物発泡体においては、前記発泡剤(D)として、二酸化炭素(D1)、窒素(D2)および化学発泡剤(D3)から選ばれることが好適である。
【0015】
〔6〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の本発明において、前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、無機充填剤(E)を0.01〜100重量部の割合で使用して得られるエラストマー組成物発泡体が好適である。
【0016】
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の本発明において、前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、軟化剤(F)を1〜150重量部の割合で使用して得られるエラストマー組成物発泡体が好適である。
【0017】
〔8〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の本発明において、前記エラストマー(A)が、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、およびエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムから選ばれる少なくとも一種であるエラストマー組成物発泡体が好適である。
【0018】
〔9〕前記〔8〕等に記載の本発明において、前記エラストマー(A)が、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体ゴムであることが好適である。
〔10〕前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の本発明において、前記熱可塑性樹脂(B)が、炭素原子数2〜20のα−オレフィンを(共)重合することによって得られる(共)重合体であることが好適である。
【0019】
〔11〕前記〔10〕等に記載の本発明において、前記熱可塑性樹脂(B)が、プロピレンホモポリマー、およびプロピレンを主体とした、プロピレンと炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く。)との共重合体から選ばれる少なくとも1種であることが好適である。
【0020】
〔12〕前記の〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の本発明において、前記熱可塑性樹脂(B)から形成された海相と、前記エラストマー(A)から形成された島相とを含む海島構造を有するエラストマー組成物発泡体であることが好適である。
【0021】
〔13〕前記の〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の本発明において、前記エラストマー(A)から形成された島相に選択的にセルが形成されているエラストマー組成物発泡体が好適である。
【0022】
〔14〕前記の〔12〕または〔13〕等に記載の本発明において、前記島相を形成するエラストマー(A)の架橋を開始した後に前記混合物を発泡させ、あるいは、前記混合物の発泡段階で前記島相を形成するエラストマー(A)を架橋させて得られることを特徴とするエラストマー組成物発泡体が好適である。
【0023】
〔15〕本発明はまた、エラストマー(A)10〜90重量部および熱可塑性樹脂(B)10〜90重量部(但し、(A)と(B)との合計は100重量部である。)と、架橋剤(C)0.01〜50重量部とを溶融混合して混合物を形成し、該混合物の架橋および発泡を行う工程を含むことを特徴とする、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した平均セル径が50〜3000nmの発泡セルを有し、前記発泡セルのうちセル径が100nm未満の発泡セルの割合が数基準で30%以上であり、密度が0.01〜0.85g/cm3であるエラストマー組成物発泡体の製造方法に関する。
【0024】
〔16〕前記〔15〕等に記載の本発明の製造方法において、前記エラストマー(A)の架橋を開始した後に前記混合物を発泡させ、あるいは、前記混合物の発泡段階で前記エラストマー(A)を架橋させて、エラストマー組成物発泡体を製造することが好適である。
【0025】
〔17〕前記〔15〕または〔16〕等に記載の本発明において、前記架橋剤(C)として、SiH基を1分子中に少なくとも2個有するSiH基含有化合物(C1)、有機過酸化物(C2)およびフェノール系樹脂(C3)から選ばれる架橋剤(C)を使用して、エラストマー組成物発泡体を製造することが好適である。
【0026】
〔18〕前記〔15〕、〔16〕または〔17〕のいずれかに記載の本発明において、前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、発泡剤(D)を0.1〜200重量部の割合で使用して、エラストマー組成物発泡体を製造することが好適である。
【0027】
〔19〕前記〔18〕等に記載の本発明において、前記発泡剤(D)として、二酸化炭素(D1)、窒素(D2)および化学発泡剤(D3)から選ばれた発泡剤(D)を使用して、エラストマー組成物発泡体を製造することが好適である。
【0028】
〔20〕前記〔15〕〜〔19〕のいずれかに記載の本発明において、前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、無機充填剤(E)を0.01〜100重量部の割合で使用して、エラストマー組成物発泡体を製造することが好適である。
【0029】
〔21〕前記〔15〕〜〔20〕のいずれかに記載の本発明において、前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、軟化剤(F)を1〜150重量部の割合で使用して、エラストマー組成物発泡体を製造することが好適である。
【0030】
〔22〕前記〔15〕〜〔21〕のいずれかに記載の本発明において、前記エラストマー(A)が、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、およびエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムから選ばれる少なくとも一種を使用してエラストマー組成物発泡体を製造することが好適である。
【0031】
〔23〕前記〔15〕〜〔22〕のいずれかに記載の本発明において、前記熱可塑性樹脂(B)が、炭素原子数2〜20のα−オレフィンを(共)重合することによって得られる(共)重合体であるエラストマー組成物発泡体を製造することが好適である。
【0032】
〔24〕前記〔15〕〜〔23〕のいずれかに記載の本発明において、前記熱可塑性樹脂(B)から形成された海相と、前記エラストマー(A)から形成された島相とを含む海島構造を有するエラストマー組成物発泡体を製造することが好適である。
【0033】
〔25〕前記〔15〕〜〔24〕のいずれかに記載の本発明において、前記エラストマー(A)から形成された島相に選択的にセルが形成されているエラストマー組成物発泡体を製造することが好適である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、発泡セルの成長を制御することで、微細な発泡セルを有するエラストマー組成物発泡体を製造することができる。また、このように微細な発泡セルを形成することで、発泡体の機械強度の低下を抑制すると共に、製品の軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、エラストマー組成物発泡体の製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明のエラストマー組成物発泡体およびその製造方法の詳細を説明する。
〈エラストマー組成物発泡体〉
本発明のエラストマー組成物発泡体は、エラストマー(A)10〜90重量部および熱可塑性樹脂(B)10〜90重量部(但し、(A)と(B)との合計は100重量部である。)を溶融混合して混合物を形成し、該混合物を架橋および発泡することにより得られる。
【0037】
本発明の発泡体は、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した平均セル径が50〜3000nmの発泡セルを有し、前記発泡セルのうちセル径が100nm未満の発泡セルの割合が数基準で30%以上であり、密度が0.01〜0.85g/cm3であることを特徴とする。
【0038】
上記発泡セルの平均セル径は、好ましくは50〜2000nm、より好ましくは50〜1000nmである。上記発泡セルのうちセル径が100nm未満の発泡セルの割合は、数基準で好ましくは40%以上である。本発明の発泡体の密度は、好ましくは0.1〜0.85g/cm3、より好ましくは0.2〜0.85g/cm3、更に好ましくは0.3〜0.85g/cm3である。このように本発明の発泡体は、発泡セルが微細化されており、かつ密度が小さいため、断熱性、軽量性、反射特性および機械強度などの特性に優れる。
【0039】
本発明において、エラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)と共に、架橋を効率的に進めるという観点からは架橋剤(C)を使用することが好ましく、発泡を効率的に進めるという観点からは発泡剤(D)を使用することが好ましい。また、必要に応じて、無機充填剤(E)および軟化剤(F)などを使用してもよい。
【0040】
本発明のエラストマー組成物発泡体は、通常は熱可塑性樹脂(B)から形成された海相と、エラストマー(A)から形成された島相とを含む海島構造を有する。ここで、島相を構成するエラストマー(A)は、通常は架橋構造を有する。つまりエラストマー(A)は、溶融混合に続く架橋時において、架橋して流動性が低下するか、あるいは流動しなくなる傾向にある。また、後述するエラストマー組成物発泡体の製造方法に従うことにより、上記発泡セルはエラストマー(A)からなる島相に選択的に形成される。
【0041】
エラストマー(A)からなる島相に選択的に形成されるとは、島相であるエラストマー(A)に形成されたセルのセル密度をρA、海相である熱可塑性樹脂(B)に形成されたセルのセル密度をρBとした場合、ρA/(ρA+ρB)×100が70以上、好ましくは80以上、さらに好ましくは90以上となることをいう。
【0042】
またセル密度は、走査型電子顕微鏡により撮影した写真を画像処理した100μm2中にあるセル数から1cm2当たりのセル数を算出し、それを2分の3乗した値をセル密度とした。
以下、上記各成分について説明する。
【0043】
〔エラストマー(A)〕
エラストマー(A)としては、例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、ハイスチレンゴム(HSR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、プロピレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)とからなるプロピレン・α−オレフィン共重合体ゴム、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム、プロピレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)と非共役ポリエンとからなるプロピレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムなどが挙げられる。エラストマー(A)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
エラストマー(A)の密度は、軽量化という観点から、1.20g/cm3以下であることが好ましく、0.90g/cm3未満であることがより好ましく、0.80〜0.89g/cm3であることがさらに好ましい。上記例示の中では、より低密度のエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムが好適に用いられ、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムがより好適に用いられ、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体ゴムが特に好適に用いられる。密度は、電子密度計(ミラージュ(株)、MD−200S)を用いて、エラストマー(A)の任意の3ヶ所を測定したときの、それぞれの密度についての平均値である。
【0045】
エラストマー(A)の極限粘度[η]は、0.6〜6.0dl/gであることが好ましく、0.8〜5.0dl/gであることがより好ましい。[η]が前記範囲を下回ると、エラストマー(A)の分子量が極端に低いため、得られるエラストマー組成物発泡体の機械物性を悪化させることがある。[η]が前記範囲を上回ると、分散混練時や動的な熱処理におけるエラストマー(A)の粘度が極端に高くなり、取り扱いが困難となることがある。なお、エラストマー(A)がエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムの場合は、135℃デカリン(デカヒドロナフタレン)中で測定した極限粘度を適用する。
【0046】
上記炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。上記炭素原子数3〜20のα−オレフィンは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記非共役ポリエンとしては、例えば、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;
メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−イソブテニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;
2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン等のトリエン;などが挙げられる。
【0048】
これらの中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンが好ましい。上記非共役ポリエンは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムにおいて、エチレンから誘導される構成単位含量(エチレン含量)は、通常50モル%以上、好ましくは50〜90モル%、より好ましくは60〜85モル%であり、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位含量(α−オレフィン含量)は、通常50モル%以下、好ましくは50〜10モル%、より好ましくは40〜15モル%である。但し、エチレン含量とα−オレフィン含量との合計を100モル%とする。なお、前記ゴムの組成は13C−NMRによる測定で求められる。また、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムにおいて、非共役ポリエンから誘導される構成単位含量(非共役ポリエン含量)は、ヨウ素価で通常0.1〜30、好ましくは0.1〜25である。
【0050】
エラストマー(A)としては、従来公知の重合方法により製造したエラストマーを用いることができる。具体例としては、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含量=80モル%、プロピレン含量=20モル%、ヨウ素価=12、[η]=3.5dl/g、密度0.87g/cm3)、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含量=80モル%、プロピレン含量20モル%、ヨウ素価=12、[η]=4.5dl/g、密度0.87g/cm3)などが挙げられる。
【0051】
本発明においてエラストマー(A)は、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、10〜90重量部、好ましくは15〜85重量部、特に好ましくは20〜80重量部の割合で用いられる。エラストマー(A)の使用量が前記範囲にあると、海島構造が安定するという観点から好ましい。エラストマー(A)の使用量が前記範囲を上回ると、微細な発泡セル形成が困難となり、また、機械特性が低下する。エラストマー(A)の使用量が前記範囲を下回ると、発泡体の軽量化が困難となる。
【0052】
〔熱可塑性樹脂(B)〕
熱可塑性樹脂(B)としては、従来公知の熱可塑性樹脂であって、密度が通常0.90g/cm3以上、好ましくは0.90〜1.0g/cm3のものが挙げられる。密度は、電子密度計(ミラージュ(株)、MD−200S)を用いて、熱可塑性樹脂(B)の任意の3ヶ所を測定したときの、それぞれの密度についての平均値である。
【0053】
熱可塑性樹脂(B)の極限粘度[η]は、0.5〜6.0dl/gであることが好ましく、0.6〜5.0dl/gであることがより好ましい。[η]が前記範囲を下回ると、熱可塑性樹脂(B)の分子量が極端に低いため、得られるエラストマー組成物発泡体の機械物性を悪化させることがある。[η]が前記範囲を上回ると、溶融時の粘度が極端に高くなり、取り扱いが困難となることがある。なお、熱可塑性樹脂(B)がポリオレフィン系樹脂の場合は、135℃デカリン(デカヒドロナフタレン)中で測定した極限粘度を適用する。
【0054】
熱可塑性樹脂(B)としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよびエチレン・プロピレン共重合体等のエチレン重合体、プロピレンホモポリマー、プロピレンブロック共重合体およびプロピレンランダム共重合体等のプロピレン重合体などの、炭素原子数2〜20のα−オレフィンを(共)重合することによって得られる(共)重合体;環状オレフィン(共)重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体およびアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等のスチレン系重合体;ポリ塩化ビニルおよびポリ塩化ビニリデン;エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体およびエチレン・ビニルアルコール共重合体;ポリカーボネートおよびポリメタクリレート;ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロンMXD6、全芳香族ポリアミドおよび半芳香族ポリアミド等のポリアミド;ポリアセタール;などが挙げられる。熱可塑性樹脂(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、「(共)重合」とは、重合または共重合を意味し、「(共)重合体」とは、重合または共重合によって得られる重合体を意味する。
【0055】
これらの中では、炭素原子数2〜20のα−オレフィンを(共)重合することによって得られる(共)重合体が好ましく、プロピレンホモポリマー、およびプロピレンを主体とした、プロピレンと炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)との共重合体がより好ましい。プロピレンを主体とした共重合体としては、プロピレンブロック共重合体、プロピレンランダム共重合体およびプロピレン・エチレン共重合体などが挙げられる。なお、「プロピレンを主体とした」とは、プロピレン含量が55モル%以上であることを意味する。
【0056】
上記炭素原子数2〜20のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、2−メチルブテン−1、3−メチルブテン−1、ヘキセン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、3,3−ジメチルペンテン−1、ヘプテン−1、メチルヘキセン−1、ジメチルペンテン−1、トリメチルブテン−1、エチルペンテン−1、オクテン−1、メチルペンテン−1、ジメチルヘキセン−1、トリメチルペンテン−1、エチルヘキセン−1、メチルエチルペンテン−1、ジエチルブテン−1、プロピルペンテン−1、デセン−1、メチルノネン−1、ジメチルオクテン−1、トリメチルヘプテン−1、エチルオクテン−1、メチルエチルヘプテン−1、ジエチルヘキセン−1、ドデセン−1およびヘキサドデセン−1などが挙げられる。
【0057】
熱可塑性樹脂(B)としては、従来公知の方法により製造した熱可塑性樹脂を用いることができる。具体例としては、プロピレンホモポリマー([η]=2.4dl/g、密度0.91g/cm3)、プロピレンランダム共重合体([η]=2.4dl/g、密度0.91g/cm3)、プロピレンブロック共重合体([η]=3.5dl/g、密度0.91g/cm3)などが挙げられる。
【0058】
本発明において熱可塑性樹脂(B)は、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、10〜90重量部、好ましくは15〜85重量部、特に好ましくは20〜80重量部の割合で用いられる。熱可塑性樹脂(B)の使用量が前記範囲にあると、海島構造が安定するという観点から好ましい。
【0059】
〔架橋剤(C)〕
本発明において、架橋を効率的に進めるという観点から、エラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)とともに、架橋剤(C)を用いることが好ましい。本発明において、架橋剤(C)とエラストマー(A)とが主に反応し、エラストマー(A)の架橋構造が形成されると推定される。この架橋構造の存在により、発泡セルの成長を効果的に制御することができるとともに、エラストマー(A)からなる島相に発泡セルを選択的に形成することができる。
【0060】
架橋剤(C)は、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.01〜30重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部の割合で用いることができる。
【0061】
架橋剤(C)は、原料供給口であるホッパー、あるいは押出機途中より添加することができる。架橋剤(C)を押出機途中より添加する場合は、その添加位置は、原料の溶融位置以降であればよく、シリンダーの上部、下部および水平部の何れの部分でもよく、発泡剤(D)の添加位置より前でも後でもよい。また、架橋剤(C)は、オイル等と混合して液体状態でポンプを介して添加してもよく、押出機等を用いて溶融混練してサイドフィードしてもよい。
【0062】
架橋剤(C)としては、SiH基を1分子中に少なくとも2個有するSiH基含有化合物(C1)、有機過酸化物(C2)、フェノール系樹脂(C3)などが好ましい。架橋剤(C)はこれらの架橋剤から選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
《SiH基含有化合物(C1)》
SiH基含有化合物(C1)は、ケイ素原子に直結した水素原子、すなわちSiH基を、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上、更に好ましくは3〜10個、特に好ましくは6〜10個有する化合物である。SiH基含有化合物(C1)の分子構造に特に制限はなく、従来製造されている、例えば線状、環状もしくは分岐状構造または三次元網目状構造の樹脂状物なども使用可能である。
【0064】
SiH基含有化合物(C1)としては、例えば、一般組成式RbcSiO(4-b-c)/2で表される化合物を使用することができる。Rは、脂肪族不飽和結合を有するものを除く、炭素原子数1〜10、特に炭素原子数1〜8の置換または非置換の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、脂肪族不飽和結合を有するものを除く、アルキル基;フェニル基;トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換のアルキル基などが挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基、フェニル基が特に好ましい。bは、0≦b<3、好ましくは0.6<b<2.2、特に好ましくは1.5≦b≦2であり、cは、0<c≦3、好ましくは0.002≦c<2、特に好ましくは0.01≦c≦1であり、かつ、b+cは、0<b+c≦3、好ましくは1.5<b+c≦2.7である。
【0065】
SiH基含有化合物(C1)は、1分子中のケイ素原子数が好ましくは2〜100個、さらに好ましくは2〜50個、特に好ましくは2〜20個、最も好ましくは2〜10個のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0066】
SiH基含有化合物(C1)としては、具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8−ペンタメチルペンタシクロシロキサン等のシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、R2(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなり、任意にR3SiO1/2単位、R2SiO2/2単位、R(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位またはRSiO3/2単位を含み得るシリコーンレジンなどが挙げられる(Rは上記一般組成式におけるRと同様である)。
【0067】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、(CH33SiO−(−SiH(CH3)−O−)d−Si(CH33(式中のdは2以上の整数である。)で示される化合物、該化合物においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0068】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、(CH33SiO−(−Si(CH32−O−)e−(−SiH(CH3)−O−)f−Si(CH33(式中のeは1以上の整数であり、fは2以上の整数である。)で示される化合物、該化合物においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0069】
分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、HOSi(CH32O−(−SiH(CH3)−O−)2−Si(CH32OHで示される化合物、該化合物においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0070】
分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、HOSi(CH32O−(−Si(CH32−O−)e−(−SiH(CH3)−O−)f−Si(CH32OH(式中のeは1以上の整数であり、fは2以上の整数である。)で示される化合物、該化合物においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0071】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンとしては、HSi(CH32O−(−Si(CH32−O−)e−Si(CH32H(式中のeは1以上の整数である。)で示される化合物、該化合物においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0072】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、HSi(CH32O−(−SiH(CH3)−O−)e−Si(CH32H(式中のeは1以上の整数である。)で示される化合物、該化合物においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0073】
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、HSi(CH32O−(−Si(CH32−O−)e−(−SiH(CH3)−O−)h−Si(CH32H(式中のeおよびhは、それぞれ1以上の整数である。)で示される化合物、該化合物においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0074】
このような化合物は、従来公知の方法により製造することができ、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはテトラメチルシクロテトラシロキサンと、末端基となり得るヘキサメチルジシロキサンあるいは1,3−ジハイドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどの、トリオルガノシリル基あるいはジオルガノハイドロジェンシロキシ基を含む化合物とを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸などの触媒の存在下に、−10℃〜+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
【0075】
《有機過酸化物(C2)》
有機過酸化物(C2)としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシフタレート等のパーオキシエステル類;ジシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類などが挙げられる。有機過酸化物(C2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
これらの中でも、1分間半減期温度が130〜200℃の範囲にある有機過酸化物が好ましく、具体的には、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイドなどが挙げられる。
【0077】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、有機過酸化物(C2)に併用して、硫黄、ジオキシム類、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー;ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
【0078】
《フェノール系樹脂(C3)》
フェノール系樹脂(C3)としては、例えば、下記一般式(1)で表されるp−置換フェノール系化合物、o−置換フェノール・アルデヒド縮合物、m−置換フェノール・アルデヒド縮合物、臭素化アルキルフェノール・アルデヒド縮合物などが挙げられる。これらの中でも、下記一般式(1)で表されるp−置換フェノール系化合物が好ましい。フェノール系樹脂(C3)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
【化1】

式(1)中、Rは炭素原子数1〜15の飽和炭化水素基であり、nは0〜10の整数である。飽和炭化水素基としては、例えば、アルキル基が挙げられる。なお、一般式(1)で表されるp−置換フェノール系化合物は、アルカリ触媒の存在下における、p−置換フェノールとアルデヒド(好ましくはホルムアルデヒド)との縮合反応により得ることができる。
【0080】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、フェノール系樹脂(C3)とともに、第一塩化錫、第二塩化鉄、第二塩化銅等のハロゲン化物、酸化亜鉛などを配合することができる。
【0081】
〔発泡剤(D)〕
本発明において、発泡を効果的に進めるという観点から、エラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)とともに、発泡剤(D)を用いることが好ましい。発泡剤(D)としては、二酸化炭素(D1)、窒素(D2)、化学発泡剤(D3)などが挙げられる。
【0082】
物理発泡剤である二酸化炭素(D1)および窒素(D2)は、蒸気にする必要が無く、安価で、環境汚染や火災の危険性が極めて少ない。二酸化炭素(D1)および窒素(D2)は、小規模に発泡製品を製造する設備であれば、ボンベに入った状態で使用し、押出機に減圧弁を通して供給でき、大規模に発泡製品を製造する設備であれば、液化二酸化炭素および液化窒素などの貯蔵タンクを設置し、熱交換機を通し、気化し、配管を通し、押出機に減圧弁を通して供給できる。
【0083】
化学発泡剤(D3)は、熱分解型の発泡剤であり、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AZBN)、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレ−ト等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、p,p'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。
【0084】
本発明において発泡剤(D)を用いる場合は、該(D)は、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常0.1〜200重量部、好ましくは0.2〜30重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部の割合で用いられる。
【0085】
発泡剤(D)は、二酸化炭素(D1)または窒素(D2)の場合は押出機途中より、化学発泡剤(D3)の場合は原料供給口であるホッパーもしくは押出機途中より添加することができる。発泡剤(D)を押出機途中より添加する場合は、その添加位置は、原料の溶融位置以降であればよく、シリンダーの上部、下部および水平部の何れの部分でもよく、架橋剤(C)の添加位置より前でも後でもよい。
【0086】
二酸化炭素(D1)の場合は液化状態、気体状態または超臨界状態で添加し、窒素(D2)の場合は気体状態または超臨界状態で添加し、化学発泡剤(D3)の場合は押出機等を用いて溶融混練してサイドフィードしてもよい。
【0087】
超臨界流体は、液体に近い優れた溶解性と気体に近い優れた拡散性とを有するため、樹脂やエラストマーへの溶解性が高く、また樹脂等中での拡散速度も大きいことから、短時間で発泡剤を樹脂等中に含浸させることが可能となる。したがって、押出機に添加された発泡剤は、二酸化炭素(D1)または窒素(D2)の場合は超臨界状態となり、化学発泡剤(D3)の場合はその分解後に発生する二酸化炭素または窒素が超臨界状態となる条件で使用することが好ましい。
【0088】
また、必要に応じて発泡助剤を用いることもできる。発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの働きを示す。発泡助剤としては、亜鉛、カルシウム、鉛、鉄、バリウム等の金属を含む化合物;クエン酸、サリチル酸、フタル酸、シュウ酸等の有機酸;尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0089】
本発明において発泡助剤を用いる場合、該発泡助剤は、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で用いられる。
【0090】
〔無機充填剤(E)〕
本発明において、微細な発泡セルのセル数増加の観点から、エラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)とともに、無機充填材(E)を用いることが好ましい。
【0091】
無機充填剤(E)としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、ケイ酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、シリカ、シリカ化合物、ケイソウ土、雲母粉、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーン、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカーなどが挙げられる。
【0092】
本発明において無機充填材(E)を用いる場合、該(E)は、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜20重量部の割合で用いられる。無機充填剤(E)の使用量が前記範囲を上回ると、得られるエラストマー組成物発泡体のゴム弾性、成形加工性が低下する傾向にある。
【0093】
〔軟化剤(F)〕
本発明において、エラストマー組成物を柔軟にさせるという観点から、エラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)とともに、これら(A)および(B)成分以外の軟化剤(F)を用いることができる。
【0094】
軟化剤(F)として、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系物質;低分子量エチレン・α−オレフィンランダム共重合体等の合成油;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油;トール油、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその金属塩;石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤;その他マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコールなどが挙げられる。
【0095】
これらの軟化剤の中でも、パラフィン系もしくはナフテン系のプロセスオイル、または低分子量エチレン・α−オレフィンランダム共重合体がより好ましく、更に、揮発しやすい低分子量成分の含有量が少ない高粘度タイプのパラフィン系プロセスオイル、またはナフテン系プロセスオイルが特に好ましい。ここで高粘度タイプとは、40℃における動粘度が100〜10000センチストークスの範囲にあるものをいう。
【0096】
本発明において軟化剤(F)を用いる場合、該(F)は、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、通常1〜150重量部、好ましくは1〜50重量部の割合で用いられる。
【0097】
〔その他の成分〕
本発明において、エラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)に加えて、必要に応じて、熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、着色剤などの添加剤を用いてもよい。
【0098】
〈エラストマー組成物発泡体の製造方法〉
本発明のエラストマー組成物発泡体の製造方法は、エラストマー(A)10〜90重量部および熱可塑性樹脂(B)10〜90重量部(但し、(A)と(B)との合計は100重量部である。)と、架橋剤(C)0.01〜50重量部とを溶融混合して混合物を形成し、該混合物の架橋および発泡を行う工程を含むことを特徴とする。本発明の方法はバッチ式および連続押出式の何れであってもよいが、製造コストの観点から、連続押出式であることが好ましい。
【0099】
上記方法により製造されたエラストマー組成物発泡体は、上述の発泡セル特性および密度特性を有する。なお、上記以外に配合しうる成分や、各成分の好ましい配合割合は、〈エラストマー組成物発泡体〉の欄にて説明したとおりである。
【0100】
従来のエラストマーから形成される発泡体は、バッチ式および連続押出式などを用いて製造されている。連続押出式は大量生産が可能で製造コストの面で有利である。しかしながら、従来のエラストマーでは微細な発泡セル、特にセル径が100nm未満の発泡セルの割合が大きな(30%以上の)発泡体を得ることは困難である。
【0101】
これに対して本発明では、エラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)と、必要に応じて架橋剤(C)や発泡剤(D)等とを用いることにより、連続押出式でも、微細な発泡セルを有するエラストマー組成物発泡体を製造することができる。その理由の詳細は明らかではないが、本発明者らは次のように推定している。発泡体の製造過程において、熱可塑性樹脂(B)から形成された海相に発生した発泡セルは消滅するため、発泡セルは主に架橋されたエラストマー(A)から形成された島相に存在している。そして発泡セルは、この架橋されたエラストマー(A)に囲まれているため、成長が制御されて微細化された状態で維持される。
【0102】
このようにして作製した発泡体は、海相である熱可塑性樹脂(B)にあるセルは消滅するが架橋されたエラストマー(A)から形成された島相に存在するセルは微細化された状態で保持されるため機械強度の低下が抑制されており、製品の軽量化がなされている。また、このような機能性を保持するためには、島相であるエラストマー(A)に形成されたセルのセル密度をρA、海相である熱可塑性樹脂(B)に形成されたセルのセル密度をρBとした場合、ρA/(ρA+ρB)×100が70以上、好ましくは80以上、さらに好ましくは90以上となることが必要である。
【0103】
以下、本発明のエラストマー組成物発泡体の製造方法について、好適態様を説明する。
上記工程は、以下の副工程を含むことが好ましい。
(1)エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)とを押出機に供給する工程。
(2)架橋剤(C)を、架橋剤供給部を通して押出機に供給する工程。
(3)発泡剤(D)を、発泡剤供給部を通して押出機に供給する工程。
【0104】
副工程(1)において、押出機内の加熱されたシリンダー部におけるスクリューの回転により、エラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)を溶融混合し、溶融エラストマー混合物を形成する。エラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)とともに、上述の他の成分(例:無機充填材(E))を供給してもよい。これらの原料は、通常はホッパーより押出機に供給される。
【0105】
副工程(2)において、架橋剤(C)を押出機に供給する。ここで、架橋剤(C)は、原料供給口であるホッパーから押出機に供給してもよく(つまり、架橋剤供給部はホッパーであってもよく)、押出機途中から供給してもよい。架橋剤(C)とエラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)とが溶融混練され、シリンダー温度が適温の場合、エラストマー(A)の架橋が開始される。
【0106】
副工程(3)において、発泡剤(D)を押出機に供給する。ここで、発泡剤(D)は、その種類に応じて、原料供給口であるホッパーから押出機に供給してもよく(つまり、発泡剤供給部はホッパーであってもよく)、押出機途中から供給してもよい。発泡剤(D)をエラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)からなる溶融エラストマー混合物に溶解させ、この混合物が押出機の減圧部に到達した場合、該混合物の発泡が開始される。
【0107】
以上の副工程(1)〜(3)は記載の順序に従って行う必要は必ずしもない。例えば、架橋剤供給部を発泡剤供給部の上流側に設置してもよく、発泡剤供給部を架橋剤供給部の上流側に設置してもよい。
【0108】
上記溶融エラストマー混合物が押出機内の減圧部に到達し、該混合物の発泡が開始し、発泡セルが形成される。ここで、架橋剤供給部を減圧部の上流側に設置し、前記混合物の架橋を開始した後に前記混合物の発泡を進めてもよい。また、減圧部で架橋が開始するようシリンダー温度を適宜設定したり、スクリューアレンジを工夫するなどの方法で減圧部が密閉状態である場合などは、減圧部に架橋剤供給部を設置したりすることにより、前記混合物の発泡段階(発泡途中)において前記混合物の架橋を進めてもよい。具体的には、島相を形成するエラストマー(A)の架橋を開始した後に前記混合物を発泡させてもよく、前記混合物の発泡段階で島相を形成するエラストマー(A)を架橋させてもよい。このように発泡セル形成が完結する前に、島相を形成するエラストマー(A)が架橋されることで、形成された発泡セルの成長が制御され、微細な発泡セル状態が保持されることとなる。本発明では、前記混合物(島相を形成するエラストマー(A))の架橋を開始した後に前記混合物の発泡を進めることが特に好ましい。
【0109】
通常は、以上のようにして得られた発泡した溶融エラストマー組成物を口金から連続的に押し出す工程が行われる。発泡した溶融エラストマー組成物は、押出機内と比較して相対的に減圧された雰囲気下に吐出される。口金は、押出ダイまたは押出ヘッドとも称される。以上のようにして、本発明のエラストマー組成物発泡体を製造することができる。
【0110】
発泡剤供給部における圧力は、通常は0.1〜30MPa、好ましくは0.1〜25MPaである。一方、減圧部における圧力は、通常は0.1〜10MPa、好ましくは0.1〜1MPaであって、発泡剤供給部における圧力よりも小さく設定される。
【0111】
成形機としては、例えば、バッチ式製造装置、一軸押出機、二軸押出機、タンデム型押出機、多軸押出機、射出成形機、インフレ成形機、ブロー成形機などの従来公知の押出機を用いることができる。これらの中でも、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との混練を強化するという観点から、二軸押出機、一軸押出機などの押出機が好ましい。
【0112】
押出機の最高の設定温度は、溶融エラストマー組成物が押出しに耐えうる溶融粘度となるように設定すればよく、例えば80〜260℃、好ましくは140〜230℃に設定すればよい。押出機のスクリューは、注入する発泡剤(D)の性質に応じて最適なものを用いればよい。発泡剤(D)として二酸化炭素(D1)や窒素(D2)などを用いる場合は、発泡剤供給部で原料を溶融できる構造であればよく、特に制限されない。
【実施例】
【0113】
次に、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例および比較例に限定されるものではない。以下の1)〜5)は、実施例および比較例で得られたエラストマー組成物発泡体(以下「発泡エラストマー」ともいう。)についての評価方法である。
【0114】
1)断面観察
サンプルを適当な大きさに切削した後、RuO4染色した。再度TD方向に精密切削し面出しを行った後、カーボン蒸着した。同サンプルを走査型電子顕微鏡JSM−6380(日本電子データム(株)製)で観察した。測定条件は、サンプルに応じて、電圧:5〜15KV、倍率:2,000〜10,000倍で行った。
【0115】
2)平均セル径測定
上記観察写真のうちランダムに選択した10個の発泡セルについてのセル径の平均値を、平均セル径とした。1枚の画像で発泡セルが10個観察できない場合は、複数枚の画像から10個の発泡セルをランダムに選択し、セル径の平均値を算出した。
【0116】
3)セル径が100nm未満の発泡セルの割合の算出
上記方法で発泡エラストマーの断面SEM観察を行い、15μm×15μm角で、セル径が100nm未満の発泡セルを算出して全発泡セル数で除し、100を乗じた。
【0117】
4)島相に形成されたセルの割合測定
上記観察写真のうち1枚の画像中で、島相であるエラストマー(A)に形成されたセルのセル密度をρA、海相である熱可塑性樹脂(B)に形成されたセルのセル密度をρBとした場合、ρA/(ρA+ρB)×100で求めた値をセルの割合とした。
【0118】
5)密度測定
電子密度計(ミラージュ(株)、MD−200S)を用いて、発泡エラストマーの任意の3ヶ所を測定したときの、それぞれの密度についての平均値をとった。
【0119】
6)引張強度測定、引張伸び測定
発泡エラストマーを2mm厚みに研磨し、スキン層を取り除くことでスキン層による影響を取り除いた。その後、サンプルを5mm幅とし、引張速度500mm/minで引張試験を行い、破断強度(引張強度)および破断時の伸び(引張伸び)を測定した。
【0120】
7)極限粘度
極限粘度は、135℃デカリン(デカヒドロナフタレン)中で測定した。
【0121】
〔実施例1〕
図1に示す装置構成により発泡エラストマー4を製造した。すなわち、押出機1としてスクリュー径30mmの二軸押出機(L/D=81.6)を用い、発泡エラストマー4を製造した。
【0122】
エラストマー(A)としてエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含量=80モル%、プロピレン含量=20モル%、ヨウ素価=12、[η]=3.5dl/g、密度0.87g/cm3)60重量部と、熱可塑性樹脂(B)としてプロピレンホモポリマー([η]=2.4dl/g、密度0.91g/cm3)40重量部と、更に無機充填剤(E)として炭酸カルシウム(カルファイン製;MD−2−5)3重量部とを充分にドライブレンドしてホッパー6より投入した。このときの押出機1の設定温度は190℃、スクリュー回転数は300rpmとした。
【0123】
架橋剤(C)としてパーオキサイド0.2重量部と軟化剤(F)としてプロセスオイル5重量部との混合溶液12を、ポンプ13を介して押出機1に供給した。このときの架橋剤供給部14内部の圧力は8MPaであった。但し、パーオキサイドは、日本油脂製;パークミルD(ジクミルパーオキサイド)、1分間半減期温度175.2℃、分子量270.38であり、プロセスオイルは、出光興産製;PW−90、密度0.87g/cm3である。また、パーオキサイドおよびプロセスオイルの供給量は、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部を基準とした。架橋剤供給部14は、14を通過したエラストマー(A)が真空ベント15(減圧部)に達するまでの時間が、架橋剤(C)が半減する時間(0.5分以下)より短くなるような位置に設置した。
【0124】
サイホン式の液化二酸化炭素ボンベ7を使用し、発泡剤(D)として二酸化炭素を液相部分から直接取り出せるようにした。液化二酸化炭素ボンベ7から二酸化炭素用定量ポンプ9までの流路を、冷媒循環機8により−12℃に調節したエチレングリコール水溶液で冷却し、二酸化炭素を液体状態で二酸化炭素用定量ポンプ9まで送液できるようにした。
【0125】
次に、二酸化炭素用定量ポンプ9の吐出圧力を保圧弁10にて調整し、二酸化炭素を押出機1内に供給した。このときの二酸化炭素供給部11内部の圧力は8MPaであった。このようにして、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、二酸化炭素を10重量部の割合で押出機1に供給し、スクリューで均一に溶解拡散させた。
【0126】
次に、真空ベント15を用いて脱気を行うと共に、この部分での圧力を1MPa以下とした。このように圧力を低下させることで、エラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)に溶解している発泡剤(D)は飽和状態となり、発泡セルが形成される。
【0127】
架橋剤(C)が添加されていない場合、形成された発泡セルは押出機1の内部で消滅する。他方、架橋剤(C)が添加されている場合、形成された発泡セルは架橋されたエラストマー(A)に主に囲まれているため、該セルはその状態を保持したままダイス3を通過し、発泡エラストマー4が採取されることとなる。
【0128】
得られた発泡エラストマー4中の発泡セルの平均セル径は370nmであり、前記発泡セルのうちセル径が100nm未満の発泡セルの割合は数基準で46%であり、島相に形成されたセルの割合は99%であり、発泡エラストマー4の密度は0.68g/cm3であり、引張強度は15MPaであり、引張伸びは95%であった。
【0129】
〔実施例2〕
架橋剤供給部14を、14を通過したエラストマー(A)が真空ベント15に達するまでの時間が、架橋剤(C)が半減する時間の3倍となる位置に設置したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0130】
〔実施例3〕
架橋剤(C)として、上記パーオキサイドの代わりにアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(商品名「タッキロール201」、田岡化学工業社製)を80℃に加熱し軟化させた状態で、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して2重量部の割合で使用したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0131】
〔実施例4〕
架橋剤(C)として、上記パーオキサイドの代わりに(CH33SiO−[−SiH(CH3)−O−]6−[−Si(CH32−O−]1−[−Si(C662−O−]1−Si(CH33を、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して4重量部の割合で使用し、触媒として白金―1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン錯体:2%白金(0価)濃度の1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン錯体−IPA(イソプロピルアルコール)溶液[エヌ、イーケム・キャット(株)製]を、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して0.075重量部の割合で使用したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0132】
〔実施例5〕
発泡剤(D)として、二酸化炭素の代わりに窒素を、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して10重量部の割合で使用し、供給装置を用いずボンベに設置したコントロールバルブを介してボンベから直接供給したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0133】
〔実施例6〕
発泡剤(D)として、二酸化炭素の代わりにアゾジカルボンアミド/4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(ADCA/OBSH)の複合発泡剤(永和化成工業(株)社製、スパンセルDS−25)を、エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して0.5重量部の割合で使用し、ホッパーから供給したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0134】
〔実施例7〕
熱可塑性樹脂(B)としてプロピレンランダム共重合体([η]=2.4dl/g、密度0.91g/cm3)を40重量部使用したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0135】
〔実施例8〕
熱可塑性樹脂(B)としてプロピレンブロック共重合体([η]=3.5dl/g、密度0.91g/cm3)を40重量部使用したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0136】
〔実施例9〕
軟化剤(F)としてナフテン系プロセスオイル(日本サンオイル製;サンセン4240)をエラストマー(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対して5重量部使用したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0137】
〔実施例10〕
エラストマー(A)としてエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含量=80モル%、プロピレン含量20モル%、ヨウ素価=12、[η]=4.5dl/g、密度0.87g/cm3)を60重量部使用したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0138】
〔比較例1〕
架橋剤(C)を使用しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。
【0139】
〔比較例2〕
架橋剤供給部14を真空ベント15より下流側に設置し、発泡セル形成が完結した後に架橋を開始したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0140】
〔比較例3〕
エラストマー(A)の使用量を95重量部、熱可塑性樹脂(B)の使用量を5重量部としたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0141】
〔比較例4〕
エラストマー(A)の使用量を5重量部、熱可塑性樹脂(B)の使用量を95重量部としたこと以外は実施例1と同様に行った。
【0142】
〔比較例5〕
無機充填剤(E)を使用しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。
以上の実施例および比較例における評価結果を表1に示す。
【0143】
【表1】

【符号の説明】
【0144】
1 押出機
2 スクリュー
3 ダイス
4 発泡エラストマー
5a エラストマー(A)
5b 熱可塑性樹脂(B)
5c 無機充填剤(E)
6 ホッパー
7 液化二酸化炭素ボンベ
8 冷媒循環機
9 二酸化炭素用定量ポンプ
10 保圧弁
11 二酸化炭素供給部
12 架橋剤(C)と軟化剤(F)との混合溶液
13 ポンプ
14 架橋剤供給部
15 真空ベント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー(A)10〜90重量部および熱可塑性樹脂(B)10〜90重量部(但し、(A)と(B)との合計は100重量部である。)を溶融混合して混合物を形成し、該混合物を架橋および発泡することにより得られる、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した平均セル径が50〜3000nmの発泡セルを有し、前記発泡セルのうちセル径が100nm未満の発泡セルの割合が数基準で30%以上であり、密度が0.01〜0.85g/cm3であることを特徴とするエラストマー組成物発泡体。
【請求項2】
前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、架橋剤(C)を0.01〜50重量部の割合で使用して得られることを特徴とする請求項1に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項3】
前記架橋剤(C)が、SiH基を1分子中に少なくとも2個有するSiH基含有化合物(C1)、有機過酸化物(C2)およびフェノール系樹脂(C3)から選ばれることを特徴とする請求項2に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項4】
前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、発泡剤(D)を0.1〜200重量部の割合で使用して得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項5】
前記発泡剤(D)が、二酸化炭素(D1)、窒素(D2)および化学発泡剤(D3)から選ばれることを特徴とする請求項4に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項6】
前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、無機充填剤(E)を0.01〜100重量部の割合で使用して得られることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項7】
前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、軟化剤(F)を1〜150重量部の割合で使用して得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項8】
前記エラストマー(A)が、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、およびエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項9】
前記エラストマー(A)が、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体ゴムであることを特徴とする請求項8に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂(B)が、炭素原子数2〜20のα−オレフィンを(共)重合することによって得られる(共)重合体であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂(B)が、プロピレンホモポリマー、およびプロピレンを主体とした、プロピレンと炭素原子数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く。)との共重合体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項10に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂(B)から形成された海相と、前記エラストマー(A)から形成された島相とを含む海島構造を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項13】
前記エラストマー(A)から形成された島相に選択的にセルが形成されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項14】
前記島相を形成するエラストマー(A)の架橋を開始した後に前記混合物を発泡させ、あるいは、前記混合物の発泡段階で前記島相を形成するエラストマー(A)を架橋させて得られることを特徴とする請求項12または13に記載のエラストマー組成物発泡体。
【請求項15】
エラストマー(A)10〜90重量部および熱可塑性樹脂(B)10〜90重量部(但し、(A)と(B)との合計は100重量部である。)と、架橋剤(C)0.01〜50重量部とを溶融混合して混合物を形成し、該混合物の架橋および発泡を行う工程を含むことを特徴とする、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した平均セル径が50〜3000nmの発泡セルを有し、前記発泡セルのうちセル径が100nm未満の発泡セルの割合が数基準で30%以上であり、密度が0.01〜0.85g/cm3であるエラストマー組成物発泡体の製造方法。
【請求項16】
前記エラストマー(A)の架橋を開始した後に前記混合物を発泡させ、あるいは、前記混合物の発泡段階で前記エラストマー(A)を架橋させることを特徴とする請求項15に記載のエラストマー組成物発泡体の製造方法。
【請求項17】
前記架橋剤(C)が、SiH基を1分子中に少なくとも2個有するSiH基含有化合物(C1)、有機過酸化物(C2)およびフェノール系樹脂(C3)から選ばれることを特徴とする請求項15または16に記載のエラストマー組成物発泡体の製造方法。
【請求項18】
前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、発泡剤(D)を0.1〜200重量部の割合で使用することを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体の製造方法。
【請求項19】
前記発泡剤(D)が、二酸化炭素(D1)、窒素(D2)および化学発泡剤(D3)から選ばれることを特徴とする請求項18に記載のエラストマー組成物発泡体の製造方法。
【請求項20】
前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、無機充填剤(E)を0.01〜100重量部の割合で使用することを特徴とする請求項15〜19のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体の製造方法。
【請求項21】
前記エラストマー(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、軟化剤(F)を1〜150重量部の割合で使用することを特徴とする請求項15〜20のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体の製造方法。
【請求項22】
前記エラストマー(A)が、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、およびエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンとからなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項15〜21のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体の製造方法。
【請求項23】
前記熱可塑性樹脂(B)が、炭素原子数2〜20のα−オレフィンを(共)重合することによって得られる(共)重合体であることを特徴とする請求項15〜22のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体の製造方法。
【請求項24】
前記熱可塑性樹脂(B)から形成された海相と、前記エラストマー(A)から形成された島相とを含む海島構造を有することを特徴とする請求項15〜23のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体の製造方法。
【請求項25】
前記エラストマー(A)から形成された島相に選択的にセルが形成されていることを特徴とする請求項15〜24のいずれか一項に記載のエラストマー組成物発泡体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−208118(P2011−208118A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235884(P2010−235884)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】