説明

エレクトロルミネッセンスパネルシステムおよびエレクトロルミネッセンスパネル

【課題】表示装置と発音装置の設置スペースを小さくし、複雑なメンテナンスおよび表示と音声の解離に伴う混乱を低減するエレクトロルミネッセンスパネルシステムおよびエレクトロルミネッセンスパネルを提供すること。
【解決手段】情報を表示あるいは照光の少なくともいずれか一方を可能にするための表示部20、および、音声を出力する音声出力部(20、40)を有するエレクトロルミネッセンスパネル部1と、表示部20および音声出力部(20、40)のうち少なくとも1つを動作させるための制御部200と、を有するエレクトロルミネッセンスパネルシステム100としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンスパネルシステムおよびエレクトロルミネッセンスパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、避難口を表示する表示装置が、非常時に避難口まで人々を誘導するために用いられている。さらに、音声により人々を非常口まで誘導できるように、スピーカ等による発音装置を別に設置する場合がある(例えば、特許文献1参照。)。また、その表示装置として有機エレクトロルミネッセンスパネルを用いるものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−48559号公報(請求項1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の方法には以下の問題がある。それは、表示装置と発音装置が分離しているため、表示装置の設置場所および発音装置の設置場所の両方が必要となり、大きな設置スペースが必要であるという問題である。また、別々に設置された表示装置と発音装置との配線、制御およびメンテナンスが複雑になるという問題がある。
【0005】
さらに、上述の表示装置と発音装置とが分離しているため、表示装置と発音装置とが離れた場所に設置されてしまう場合がある。たとえば、壁の強度が重量物の固定に適さないような壁に表示装置と発音装置とを設置したい場合には、表示装置と発音装置とを離れた場所に設置する必要が生じる。このように、表示装置と発音装置とが離れた場所に設置される場合には、誘導表示と音声案内が解離して混乱を招くという問題を生じることがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、表示装置と発音装置の設置スペースを小さくし、複雑なメンテナンスおよび表示と音声の解離に伴う混乱を低減するエレクトロルミネッセンスパネルシステムおよびエレクトロルミネッセンスパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、情報を表示あるいは照光の少なくともいずれか一方を可能にするための表示部、および、音声を出力する音声出力部を有するエレクトロルミネッセンスパネル部と、表示部および音声出力部のうち少なくとも1つを動作させるための制御部と、を有するエレクトロルミネッセンスパネルシステムとしている。
【0008】
また、別の発明では、上述の発明に加えて、音声出力部と表示部を重ねて配置すると共に、音声出力部の駆動部分を表示部の裏面に接触するように構成したものとしている。
【0009】
また、別の発明では、上述の発明に加えて、エレクトロルミネッセンスパネルシステムは、光、ガス、煙、温度変化、振動、あるいは液状体の少なくとも1つを検出するセンサ部を有し、制御部は、センサ部の検出をトリガとして、エレクトロルミネッセンスパネル部を制御するものとしている。
【0010】
また、別の発明では、上述の発明に加えて、制御部は、表示、照明および音声のうち少なくとも2つ以上が連動して作動するように制御するものとしている。
【0011】
また、別の発明では、上述の発明に加えて、移動手段に搭載されるものとしている。
【0012】
また、別の発明では、上述の発明に加えて、制御部は、表示部および/または音声出力部に信号を送り、注意喚起あるいは誘導案内するように制御するものとしている。
【0013】
また、別の発明では、上述の発明加えて、表示部に、非常時誘導表示部を含むものとしている。
【0014】
また、別の発明では、情報を表示あるいは照光の少なくともいずれか一方を可能にするための表示部と、音声を出力するための音声出力部を有すると共に、制御部により、表示部および音声出力部のうち少なくとも1つを動作させるように制御されるエレクトロルミネッセンスパネルとしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表示装置と発音装置の設置スペースを小さくし、複雑なメンテナンスおよび表示と音声の解離に伴う混乱を低減するエレクトロルミネッセンスパネルシステムおよびエレクトロルミネッセンスパネルを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のエレクトロルミネッセンスパネルスピーカの一例として、第1の実施の形態に係る有機エレクトロルミネッセンスパネルスピーカ1(以後、有機ELパネルスピーカ1という。)について説明する。なお、図の簡略化のため、図1以外の図において後述のスタンド2の図示を省略している。また、以下の説明において、有機ELパネルスピーカ1が発音する方向を、Y1方向とし、その反対側をY2方向として説明を行う。
【0017】
図1は、有機ELパネルスピーカ1をY1方向から見た時の、外観の構成を示す全体斜視図である。
【0018】
本実施の形態において、非常の際に避難口へ誘導および案内するための有機ELパネルスピーカ1は、この有機ELパネルスピーカ1を固定等するためのスタンド2と、本体部10とを主に有する。
【0019】
本実施の形態において、Y方向に延伸する2つのスタンド2は、本体部10のZ2方向側の面に離間して固定されている。また、スタンド2のZ2方向の面は、平滑な面に面一である。そのため、スタンド2のZ2方向の面を床上等に置く、あるいは床上等で床とスタンド2のZ2方向の面とを固定することを可能とする。
【0020】
なお、上述のスタンド2は、Z1方向側の面に配置されていて、天井に固定されるようなものであってもよい。また、上述のスタンド2がX1方向側、X2方向側あるいはY2方向側に配置されていて、壁面に固定されるようなものであってもよい。さらに、ネジ等で有機パネルスピーカ1を壁面等に固定できるように、スタンド2には、ネジを挿入するためのZ方向に貫通する貫通孔が設けられていてもよい。また、スタンド2は、後述の前フレームあるいは後フレームと一体として形成されているものであってもよい。
【0021】
本実施の形態において、本体部10をY1方向から見ると、後述の前フレーム12の開口部から有機ELパネル部20が露出している。また、有機ELパネル部20のY1方向の面には、消防法で定められた非常時誘導用の案内マーク(非常時誘導表示部の一例)4が貼り付けられている。
【0022】
案内マーク4は、例えば、厚さ0.1mmで、片側の面に粘着剤が被覆された、緑色の光透過性樹脂フィルムを、案内マーク4の形状に切り抜く。そしてその切り抜かれた案内マーク4の粘着剤が形成されている面を、有機ELパネル部20に対向させて貼り付ける。このようにすると、有機ELパネル部20が発光した場合に、案内マーク4が明瞭に認識できる。
【0023】
図2は、図1の有機ELパネルスピーカ1をY2方向側(裏側)から見た場合の分解斜視図である。
【0024】
有機ELパネルスピーカ1の本体部10は、有機ELパネル部20、有機ELパネル部20のY方向両側に1枚ずつ配置されるクッション材11、前フレーム12およびボイスコイル型振動装置40を構成する磁気回路構成体50、ボイスコイル60および後フレーム70を主に有する。
【0025】
前フレーム12は、内側、すなわちY2方向側に有機ELパネル部20を保持することができる矩形の枠体として構成され、有機ELパネル部20の表示面に対応する部分は開口部13として形成されている。前フレーム12の内周には開口部13の全周に亘って内側に向かって延設される延設部15が形成されている。なお、前フレーム12は、例えば、アルミニウム材から形成され、前フレーム12の外周のZ方向の長さT21とX方向の長さS21が各157.5mm、Z方向の厚さD21が8mmであり、また、内周のZ方向の長さT22とX方向の長さS22が各138.0mmとなっている。前フレーム12は、その内側に、X方向およびZ方向の長さが137.5mmの正方形の有機ELパネル部20を収容することができるように構成されている。開口部13のZ方向の長さT23とX方向の長さS23は、各120mmであり、前フレーム12は、9.75mm幅(図中W21で示される距離)の枠体である。また、延設部15は、幅9mm(W22で示される距離)で形成されている。
【0026】
図3は、有機ELパネル部20をY2方向から見た場合の平面図である。また、図4は、図3の有機ELパネル部20をA−A線で切断した場合の断面を示す図である。なお、後述の入力端子部26および入力端子部46に接続され、透明電極層29および金属電極層49に電力を供給するためのリード線については図示を省略している。
【0027】
有機ELパネル部20は、図3に示すように、例えば、Z方向の長さT13とX方向の長さS13が各137.5mmの略正方形の透明なガラス基板21上に、透明電極層29(陽極)、有機発光層39、反射層を兼ねる金属電極層49(陰極)の順で積層されて、有機ELパネル本体22を形成している。透明電極層29、有機発光層39、金属電極層49からなる層を、積層部27という。さらに、この有機ELパネル本体22の上に配設される吸湿用シート23と封止板24とを有する。また、ガラス基板21と封止板24と間の空間25には窒素ガスが封入され、空気が封入されている場合とは異なる音響特性に設定されている。空間25に封入するガスを適宜選択することでガスの種類に応じた音響特性を得ることができる。
【0028】
ガラス基板21は、例えばY方向の厚さD11が0.7mm、Z方向の長さT11とX方向の長さS11が各300mmであるガラス製の板を用いることができる。
【0029】
透明電極層29は、例えばインジウム・スズ酸化物(Indium Tin Oxide)あるいはインジウム・亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)が約130nmの膜厚で形成されている。本実施の形態ではインジウム・スズ酸化物を使用している。有機発光層39は、低分子化合物、具体的には陽極の透明電極層29側からホール輸送層として約60nmのビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニル〕ベンジジンと電子輸送層兼発光層として約70nmのトリス(キノリノラト)アルミニウム錯体、および電子注入層として約1nmのフッ化リチウムからなる層を重ねた成膜層から形成されている。金属電極層49は、アルミニウムが約120nmの膜厚で形成されている。これらの各層29、39、49は、例えば、真空蒸着法に代表される薄膜形成方法により、Z方向の長さT12とX方向の長さS12が各122mmの略正方形形状に形成される。透明電極層29の一辺部には入力端子部26が、金属電極層49の一辺部には入力端子部46が、それぞれ突出して形成され、入力端子部26と入力端子部46は積層部27の縁部から突出するようになっている。
【0030】
2枚の吸湿用シート23は、例えば、Y方向の厚さが0.3mm、Z方向の長さが40mm、X方向の長さが30mmの大きさである。2枚の吸湿用シート23は、空間25の間隙を設けて、後述の封止板24の凹部に並んで収容される。また、吸湿用シート23の片面は、予め粘着層を有し、吸湿用シート23は、粘着層の設けられている面を封止板24側に向けて凹部に収容される。したがって、吸湿用シート23は、金属電極層49に接するように配置される。
【0031】
封止板24は、例えばガラス材から形成され、一方の面に大きな正方形の凹部(不図示)が形成され、この凹部に2枚の吸湿用シート23が空間25の間隙を設けて並んで収容される。封止板24は、例えばY方向の厚さが1mmでZ方向の長さとX方向の長さが各127.6mmの大きさである。凹部は、Y方向の深さが0.3mmでZ方向の長さとX方向の長さが各122.6mmにて形成されている。したがって、凹部の周囲には、封止板24のX方向およびZ方向の幅(127.6mm)と凹部のX方向およびZ方向の幅(122.6mm)の差分が周縁部28として形成される。本実施の形態では2.5mm幅で周縁部28が形成されている。
【0032】
封止板24は、積層部27の全面が凹部の下側に位置するように有機ELパネル本体22上に配置され、封止板24の周縁部28は、ガラス基板21に当接した状態となる。また、封止板24の周縁部28とガラス基板21との当接部分は、接着剤(不図示)により固着し封止されている。したがって、積層部27および吸湿用シート23は、ガラス基板21と封止板24との間で封止状態とされている。
【0033】
上述したように構成された有機ELパネル部20では、有機発光層39で発光した光が、透明電極層29を介してガラス基板21側に出射すると共に金属電極層49で反射し、ガラス基板21側から出射する。つまり、有機ELパネル部20は、いわゆるボトムエミッション型の有機ELパネルとして構成されている。
【0034】
有機ELパネル部20のY方向両側に配置されるクッション材11は、例えば、独立発泡のウレタン材から形成される薄いシート状であり、前フレーム12の枠体の内側に延設部15の全周に亘って重ねて配設できる大きさの矩形の枠体である。クッション材11は、クッション材11を延設部15に重ねて配設した際に延設部15からはみ出ないように、延設部15の外周よりやや小さく、かつ、延設部15の内周より大きくなっている。
【0035】
ボイスコイル型振動装置40は、図2に示すように、磁気回路構成体50とボイスコイル60とを有する。ボイスコイル60は円筒状のボビン部61とこのボビン部61の一端側に形成されるフランジ部63とを有し、ボビン部61の周囲に導線が巻回されコイル部62が形成されている。コイル部62はボビン部61に対し前後に移動しないようにしっかりと巻回される。また、必要に応じて接着剤によりボビン部61とコイル部62とを固着することで、コイル部62をボビン部61に対して固定するようにしてもよい。
【0036】
図5は、有機ELパネルスピーカ1をY2側から見た場合の平面図である。図6は、図5のB−B線で切断した場合の断面を説明する拡大断面図である。また、図7は、図6の点線で示す範囲Cを拡大して示す拡大断面図である。
【0037】
磁気回路構成体50は、図7に示すように、プレート54と、マグネット55と、ヨーク56とを有する。プレート54は、円盤状を呈し、磁性材である鉄材から形成されている。マグネット55はリング状を呈し、ネオジムを含む合金から構成されている。ヨーク56は、円盤部51と円筒部52とを有し、いわゆる壷ヨークと称される形体のものである。なお、円盤部51は、円筒部52より大きな直径で構成され、ヨーク56には円盤部51が円筒部52の外周から突出した部分がフランジ部57として形成されている。
【0038】
マグネット55の外周の直径は、ヨーク56の円筒部52の内周より小さな直径に形成されている。そして、マグネット55は、マグネット55の外周面とヨーク56の円筒部52の内周面との間に、外周面の全周に亘って均一な間隙58が存在するように配設されている。
【0039】
また、プレート54の外周の直径も、ヨーク56の円筒部52の内周より小さな直径に形成されている。プレート54は、ヨーク56の円筒部52の内周面とプレート54の外周面との間に、プレート54の外周面の全周に亘って均一な間隙59が磁気ギャップとして存在するように配置され、マグネット55に対して固定されている。
【0040】
磁気回路構成体50とボイスコイル60とは、磁気ギャップとしての間隙59内にコイル部62およびボビン部61が、プレート54および円筒部52に接触することなく挿入できるように構成されている。例えば、本実施の形態に係る有機ELパネルスピーカ1においては、ヨーク56の円筒部52の内周の直径L21を25.54mm、プレート54の直径L26を24.2mmとすることで、間隙59の幅を0.67mmとしている。また、ボイスコイル60のボビン部61の内周の直径L23を24.4mmとし、ボビン部61のコイル部62を含めた外周の直径L24を25.34mmとしている。
【0041】
このようにすることで、ボビン部61の内周側にプレート54をボビン部61の内周面に対して0.1mmの間隔を有して挿入でき、かつ、間隙59に、コイル部62およびボビン部61を円筒部52の内周面に対して0.1mmの間を有して挿入することができる。なお、ヨーク56の円筒部52の外周の直径L25は29.98mmであり、円筒部52の開口端から円盤部51までの内側の深さD22は5.5mmとなっている。また、マグネット55は、厚さD23が3mm、外周の直径L26が23mm、そして内周の直径L27が10mmとなっている。また、プレート54は、厚さD24が2mmとなっている。ボイスコイル60のコイル部62の巻幅D25は3mmであり、インピーダンスは4Ωに設定されている。
【0042】
後フレーム70は、矩形の外枠部と、この外枠部の内側に設けられ外枠部の対向する辺部分を繋ぐ十字状の内枠部72とを有する。また、外枠部の前面側には、外枠部に沿って枠状に形成されるリブ部73(図10および図11参照)が形成されている。外枠部の外周のZ方向の長さT24とX方向の長さS24は、例えば、各157.5mmである。また、リブ部73の外周のZ方向の長さT25とX方向の長さS25は、例えば、各137.0mmである。そして、リブ部73の内周側段部の前後方向の厚さD26は、例えば、8mmで形成されている。外枠部と内枠部72は、共に幅広面に形成され、図2に示すように、内枠部72の中央には磁気回路構成体50のヨーク56の円筒部52が挿入される円形の開口部75が形成されている。例えば、内枠部72のX方向の幅W24は、開口部75が形成される部分を除いて、例えば、25mmで形成されている。内枠部72の開口部75が形成される部分は、開口部75の直径L28を、ヨーク56の円筒部52が挿入することができる大きさにできるように、幅広に形成されている。開口部75の直径L28は、例えば、30mmである。
【0043】
内枠部72は十字状であるため外枠部の内側と内枠部72との間には矩形の4つの開口部74が形成されている。開口部74は、外枠部の4隅方向に配置され、かつ、開口部75に対して中心対称となる位置に配置されている。
【0044】
なお、上述の構成の後フレーム70は、例えば、矩形の板体を、開口部74と開口部75に対応する部分をくり抜く等して製作されるもので、外枠部と内枠部72とは一体に構成されている。このように外枠部に対して内枠部72が形成されていることで、後フレーム70は変形に対して剛性が高められている。
【0045】
以上のような構成の有機ELパネルスピーカ1は、コイル部62に接続されるリード線(不図示)からオーディオ信号を入力すると、ボイスコイル型振動装置40が駆動される。すなわち、ボイスコイル60が磁気回路構成体50に対して振動する。ボイスコイル60が振動すると、この振動が封止板24に伝わり、その結果、有機ELパネルスピーカ1全体が振動し、光の出射面となるガラス基板21面から音が発音される。
【0046】
このように、表示部と音声出力部とによって本体部10を構成しているため、人々の注意喚起を効果的に行える。より具体的には、表示と音声とが解離して混乱を招くという問題を生じることがない。例えば、煙等で視界が悪い場合等でも、音声の方向へ進むことで、非常口を発見することが容易になる。また、表示部と音声出力部とから本体部10を構成しているため、設置スペースを小さくできる。
【0047】
また、音声を拡声するための振動板として、有機ELパネル部20を用いるため、別途、振動板を用いる必要がなく、軽量で、かつ、取り付ける場所が限定されにくい。
【0048】
また、有機ELパネルスピーカ1は、ボイスコイル型振動装置40のうち、重量の大きな磁気回路構成体50が後フレーム70に保持されているため、封止板24を薄くすることができ発音効率を高くすることができる。
【0049】
また、上述の有機ELパネルスピーカ1の有機ELパネル部20は、上述したように、前フレーム12と後フレーム70の外枠部において周囲が保持されている。有機ELパネル部20は周囲において変形しやすい。このため、前フレーム12と後フレーム70の外枠部とにより前後から保持されることで、効果的に有機ELパネル部20の変形を抑えることができる。また、後フレーム70は、十字状の内枠部72を設けることで剛性が高められているため、有機ELパネル部20の変形を一層抑えることができる。
【0050】
また、上述の有機ELパネルスピーカ1の有機ELパネル部20は、クッション材11を介して前フレーム12と後フレーム70との間に保持されている。そのため、前フレーム12と後フレーム70とが互いにねじ81により固定されることにより前フレーム12と後フレーム70との間に作用する有機ELパネル部20の押圧力を、クッション材11にて緩和することができ、有機ELパネル部20の変形を防止することができる。また、クッション材11を備えることで、低音域帯における再生周波数を聴感上、好適なものとすることができる。
【0051】
次に、上述の有機ELパネルスピーカ1の製造方法について説明する。図8から図11は、有機ELパネルスピーカ1の各製造工程を説明するための説明図である。
【0052】
まず、有機ELパネル部20を作製する。有機ELパネル部20は、ガラス基板21の上に積層部27を、スパッタリング等で4箇所に形成する。例えば、図8に示すように、厚さD11が0.7mmで縦T11と横S11が各300mmであるガラス基板21の上に、縦T12と横S12が各122mmの積層部27を形成する。なお、透明電極層29の一辺部には入力端子部26が、金属電極層49の一辺部には入力端子部46が、それぞれ突出して形成され、入力端子部26と入力端子部46は積層部27の縁部から突出するように各層29、39、49が形成される。
【0053】
ガラス基板21に積層部27を形成した後、図9に示すように、各積層部27毎にガラス基板21を分割し、縦長T13と横長S13が各137.5mmの正方形の有機ELパネル本体22を切り出す。
【0054】
次に、図10に示すように、粘着シートが装着されている吸湿用シート23の面を封止板24側に向けて凹部に収容する。すなわち、吸湿用シート23は、封止板24の凹部内に固定された状態となる。
【0055】
次に、図11にて説明されるように、吸湿用シート23が収容された封止板24を、吸湿用シート23側を金属電極層49に向けて、積層部27の全面が凹部の下側に位置するように有機ELパネル本体22上に配置する。封止板24を積層部27の全面が凹部の下側に位置するように有機ELパネル本体22上に配置すると、多少の弾性を有する吸湿用シート23は、ゆるく変形し、周縁部がガラス基板21に当接した状態となる。したがって、封止板24の周縁部とガラス基板21との当接部を接着剤により固着し封止することで、積層部27はガラス基板21と封止板24との間で封止状態とされる。
【0056】
次に、一方のクッション材11を前フレーム12の内側の延設部15の上に重ねて配置する。そして、クッション材11が配置された前フレーム12の内側に、有機ELパネル部20を配置する。有機ELパネル部20は、クッション材11を介在してガラス基板21の周囲を延設部15により支持された状態で、前フレーム12に配置される。
【0057】
続いて、前フレーム12の内側に収容されている有機ELパネル部20の周辺の上にもう一方のクッション材11を配置する。そして、ボイスコイル60を有機ELパネル部20の上に配置する。そして、後フレーム70を、リブ部73が前フレーム12の内側に嵌合されるように前フレーム12の上に載置する。
【0058】
ボイスコイル60と後フレーム70とは、ボイスコイル60を、後フレーム70の前面側から開口部75にコイル部62を通した状態にして、ボイスコイル60の有機ELパネル部20への載置と、後フレーム70の前フレーム12への載置とを行う。リブ部73を前フレーム12の内側に嵌合させることで、有機ELパネル部20が、前フレーム12の延設部15とリブ部73との間にクッション材11を介して挟み込まれた状態となり、有機ELパネル部20は前フレーム12と後フレーム70とに保持されることになる。
【0059】
次に、後フレーム70の外枠部に形成される複数の貫通穴82にそれぞれねじ81を通して、このねじ81を前フレーム12の背面に形成されるねじ孔14にるい合することで、後フレーム70を前フレーム12に対して固定する。後フレーム70を前フレーム12に固定した後、治具を用いてコイル部62の周側面と開口部75の内側面との間の間隔が、コイル部62の全周に亘って均一になるように、ボイスコイル60の位置決めを行い、この位置決めされている状態で、ボイスコイル60のフランジ部63を有機ELパネル部20の封止板24に対して接着固定する。
【0060】
続いて、磁気回路構成体50を、ヨーク56の円筒部52が開口部75内に挿入されるようにして後フレーム70に取り付ける。円筒部52の内周面の直径L21とプレート54の直径L26、およびボビン部61の内周の直径L23とコイル部62を含めた部分の直径L24とは上述したように構成されているため、円筒部52を開口部75内に挿入すると、ボビン部61およびコイル部62が、円筒部52とプレート54との間の磁気ギャップである間隙59内に挿入されることになる。磁気回路構成体50は、ヨーク56の円筒部52を開口部75内に挿入するとフランジ部57が後フレーム70に当接することで前後方向の位置決めが行われる。そして、磁気回路構成体50は、フランジ部57を後フレーム70に対して接着剤により固着することで後フレーム70に対して固定され、図1に示す有機ELパネルスピーカ1が構成される。
【0061】
上記のように構成される有機ELパネルスピーカ1は、コイル部62に接続される図示を省略するリード線からオーディオ信号を入力するとボイスコイル型振動装置40が駆動される。すなわち、ボイスコイル60が磁気回路構成体50に対して振動する。ボイスコイル60が振動すると、この振動が封止板24に伝わり、その結果、有機ELパネルスピーカ1全体が振動し、光の出射面となるガラス基板21面から音が発音する。
【0062】
次に、上述の有機ELパネルスピーカ1を用いた有機ELパネルスピーカシステム100について説明する。図12は、有機ELパネルスピーカシステム100の構成を説明するブロック図である。
【0063】
有機ELパネルスピーカシステム100は、有機ELパネルスピーカ1、制御部200、およびセンサ部300から主に構成されている。
【0064】
制御部200は、有機ELパネルスピーカシステム100の制御を行う。制御部200は、有機ELパネルスピーカ1を発音させる制御を行う場合には、ボイスコイル60に音声信号を印加する。また、制御部200による制御の下、有機ELパネルの入力端子部26および入力端子部46に電圧を印加することで、有機ELパネルスピーカ1を照光させることができる。
【0065】
また、制御部200は、有機ELパネルスピーカ1の表示が必要ない場合には、照光を行わなくてもよい。また、通常は照光のみ行い、例えば、緊急時にのみ、音声出力をするように制御することもできる。
【0066】
本実施の形態におけるセンサ部300は、光、ガス、煙、温度変化、振動、あるいは液状体の少なくとも1つを検出する。本実施の形態では、センサ部300は、煙を検出すると、制御部200へ信号を送出する。
【0067】
上述のような有機ELパネルスピーカシステム100とすることで、通知する情報への注意喚起が必要な場合にのみ、照光、表示あるいは音声出力をするよう動作する有機ELパネルスピーカシステム100とすることができる。したがって、通常は、有機ELパネルスピーカ1を煩く思うことがないが、緊急時等、その情報が必要である場合にのみ、その表示に注意が喚起されるような有機ELパネルスピーカ1になる。
【0068】
また、センサ部300が煙等を検出することにより、火災等の場合に、注意喚起のための照光、表示あるいは音声出力を自動で開始できるものとすることができる。
【0069】
次に、本発明に係る有機ELパネルスピーカシステム100の動作例について説明する。
【0070】
火災等で煙が発生し、その煙がセンサ部300に検出されると、センサ部300は、制御部200に信号を送出する。
【0071】
制御部200は、その信号により、有機ELパネルスピーカ1を発光および音声出力を開始する。音声出力としては、例えば、「火災が発生しました。避難してください」等の音声を出力する。発光と音声出力の一例を同時に行うことにより、人々の注意を一層喚起できる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は、これらの実施の形態に限定されることなく、種々の変形および組合せが可能である。
【0073】
たとえば、本実施の形態では、制御部200およびセンサ部300を別途設けるものとしているが、このような形態に限らない。制御部200またはセンサ部300の一方または両方を有機ELパネルスピーカ1と一体に設けても良い。
【0074】
また、本実施の形態では、有機ELパネルスピーカシステム100は、センサ部300を設けるものとしているが、センサ部300は、必須ではない。しかし、センサ部300を設けることにより、火災および地震等の非常事態を検出して作動できるものとなる。
【0075】
また、本実施の形態では、非常時に非常口へ誘導および案内するために有機ELパネルスピーカ1が機能するものとしているが、建物内部以外で用いてもよい。例えば、移動手段として、バス、車、飛行機、船あるいはその他の乗り物に設けても良い。さらに、非常用の誘導案内以外の用途に用いてもよい。例えば、バス車内等の案内に用いることが考えられる。その場合には、バスが走行中には、表示が非点灯の状態として、一方、バスの停車をセンサ部が検出した場合には、出口である旨の表示を点灯させることに加えて、バス停の名前と、降口への案内を音声として出力するような有機ELパネルスピーカシステム100とすることができる。また、さらに、建物や車両に固定されるものに限らず、携帯できるようなものとしてもよい。
【0076】
また、本実施の形態においては、有機ELパネル部は、案内マーク4の形状のフィルムを貼り付けられた有機ELパネル部20とすることで、表示されるものとしている。しかしこのような形態に限らない。例えば、インク等を用いて所定の形状を形成してもよいし、有機ELの所定の部分を所望の色および形状で発光させてもよい。
【0077】
また、本実施の形態においては、有機ELパネル部20の表示は、静止画であるものとしているが、このようなものに限らない。例えば、陰極と陽極を単純に交差させ,その交差部に有機EL素子を配置し,外付け駆動ICにより瞬間的に電流を流して発光させる、いわゆるパッシブ型の有機ELパネルスピーカあるいは、有機EL素子1つひとつに対して薄膜トランジスタを配し,このTFTにより画素に流す電流量を制御しながら発光させる、いわゆるアクティブ型の有機ELパネルスピーカ1とすることにより、動画を再生できるようにしてもよい。有機ELパネルスピーカ1で動画を再生する場合には,瞬間的な最大輝度を小さくでき,これにより素子の寿命も長くなり,省電力化が容易になる。さらに、動画と音声、あるいは動画と照光を連動させることで、より効果的に人々の注意を喚起し、情報を通知できる表示となる。
【0078】
例えば、有機ELパネル部20が表示を変化させることができる場合には、非緊急時には、白色の照明として有機ELパネルスピーカ1を機能させることができる。一方、地震などの緊急時には、案内マーク4と同様のマークを表示し、かつ、音声によって案内を可能とする表示とすることができる。
【0079】
また、本実施の形態においては、有機発光層39を有する有機ELパネルスピーカ1としているが、エレクトロルミネッセンスを起こす材料として無機材料を用いる、無機ELパネルスピーカとしてもよい。無機ELパネルスピーカの場合には、有機発光層39の代わりに、無機発光層を形成する。無機発光層としては、例えば、硫化亜鉛などの無機物の蒸着層を採用できる。有機ELパネルパネルスピーカ1は、低電力で高い輝度が得ることができるので、視認性を向上できることに加え、消費電力を少なくできる等の特徴がある。
【0080】
また、本実施の形態においては、ボイスコイル型振動装置40を有する有機ELパネルスピーカ1としているが、他の振動アクチュエータを有する有機ELパネルスピーカとすることも可能である。また、本実施の形態においては、ボトムエミッション型の有機ELパネル部20を例示したが、このようなものに限らない。例えば、トップエミッション型の有機ELパネル20としてもよい。また、各説明において例示した寸法等は、適宜当業者が設定できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態に係る有機ELパネルスピーカの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の有機ELパネルスピーカをY2方向から見た場合の分解斜視図である。
【図3】図1の有機ELパネルスピーカの有機ELパネルをY2方向から見た場合の平面図である。
【図4】図3の有機ELパネルをA−A線で切断した場合の断面図である。
【図5】図1の有機ELパネルスピーカをY2方向から見た外観を示す平面図である。
【図6】図5に示す有機ELパネルスピーカを図のB−B線で切断した場合の断面図である。
【図7】図6のCの部分を拡大した拡大断面図である。
【図8】図1の有機ELパネルスピーカの有機ELパネルの製造方法を説明する図である。
【図9】図1の有機ELパネルスピーカの有機ELパネルの製造方法を説明する図である。
【図10】図1の有機ELパネルスピーカの有機ELパネルの製造方法を説明する図である。
【図11】図1の有機ELパネルスピーカの有機ELパネルの製造方法を説明する図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る有機ELパネルスピーカシステムの構成を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0082】
1…有機ELパネルスピーカ(エレクトロルミネッセンスパネルスピーカ)、4…案内マーク(非常時誘導表示)、20…有機ELパネル(表示部、音響出力部)、40…ボイスコイル型振動装置(音響出力部)、100…非常用誘導システム、200…制御部、300…センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示あるいは照光の少なくともいずれか一方を可能にするための表示部、および、音声を出力する音声出力部を有するエレクトロルミネッセンスパネル部と、
上記表示部および上記音声出力部のうち少なくとも1つを動作させるための制御部と、
を有することを特徴としたエレクトロルミネッセンスパネルシステム。
【請求項2】
前記音声出力部と前記表示部を重ねて配置すると共に、
前記音声出力部の駆動部分を前記表示部の裏面に接触するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネッセンスパネルシステム。
【請求項3】
前記エレクトロルミネッセンスパネルシステムは、光、ガス、煙、温度変化、振動、あるいは液状体の少なくとも1つを検出するセンサ部を有し、
前記制御部は、上記センサ部の検出をトリガとして、エレクトロルミネッセンスパネル部を制御することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項4】
前記制御部は、表示、照明および音声のうち少なくとも2つ以上が連動して作動するように制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンスパネルシステム。
【請求項5】
移動手段に搭載されることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンスパネルシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記表示部および/または前記音声出力部に信号を送り、注意喚起あるいは誘導案内するように制御することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンスパネルシステム。
【請求項7】
前記表示部に、非常時誘導表示部を含むことを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンスパネルシステム。
【請求項8】
情報を表示あるいは照光の少なくともいずれか一方を可能にするための表示部と、
音声を出力するための音声出力部を有すると共に、
制御部により、上記表示部および上記音声出力部のうち少なくとも1つを動作させるように制御されることを特徴とする、エレクトロルミネッセンスパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−301431(P2009−301431A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157098(P2008−157098)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【出願人】(501231510)
【出願人】(598146850)後藤電子 株式会社 (24)
【Fターム(参考)】