説明

エレベータの制御装置

【課題】休止するエレベータに利用者が誤乗車することを防止できるエレベータの制御装置を提供する。
【解決手段】エレベータの運転モードを決定する決定手段10と、決定手段10により決定された運転モードでエレベータが戸閉休止する指定階を指定する指定手段11と、決定手段10により決定された運転モードでエレベータを運転後、指定手段11により指定された指定階でエレベータを戸閉休止させる運転制御手段5と、指定階でエレベータが戸閉休止している際に、決定手段10が運転モードを切り換えた場合に、エレベータが指定階で戸開することを阻止する戸制御手段16と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーキングスイッチを備えたエレベータの制御装置が提案されている。このパーキングスイッチは、エレベータから離れた監視盤等に設けられる。この制御装置によれば、パーキングスイッチが操作されると、エレベータの運転モードがパーキング運転に切り換わる。パーキング運転になると、エレベータが指定階に走行する。その後、エレベータは指定階で戸開する。これにより、かご内の利用者はかごから降りることができる。その後、エレベータは戸閉休止する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−78366号公報
【0004】
これに対し、建築物の自家発電源を利用するエレベータの制御装置も提案されている。この制御装置によれば、停電になると、エレベータの運転モードが自家発時管制運転に切り換わる。自家発時管制運転になると、自家発電源容量に基づいて、グループ内で運転可能な台数のエレベータが指定階又は最寄階に順々に帰着する。これにより、かご内の利用者を救出することができる。その後、エレベータが運転を継続する場合もある(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JEAS 日本エレベータ協会標準集 1996年版 p.73−81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パーキング運転と自家発時管制運転との双方を設定した場合、どちらの運転においても、指定階が同じになることが多い。この場合、パーキング運転においてエレベータが指定階で戸閉休止しているときに、優先度の高い自家発時管制運転が選択されると、エレベータは指定階で戸開する。このため、休止するエレベータに利用者が誤乗車し得る。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、休止するエレベータに利用者が誤乗車することを防止できるエレベータの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベータの制御装置は、エレベータの運転モードを決定する決定手段と、前記決定手段により決定された運転モードで前記エレベータが戸閉休止する指定階を指定する指定手段と、前記決定手段により決定された運転モードで前記エレベータを運転後、前記指定手段により指定された指定階で前記エレベータを戸閉休止させる運転制御手段と、前記指定階で前記エレベータが戸閉休止している際に、前記決定手段が運転モードを切り換えた場合に、前記エレベータが前記指定階で戸開することを阻止する戸制御手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、休止するエレベータに利用者が誤乗車することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置のシステム構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の動作の第1例を説明するためのフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の動作の第2例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置のシステム構成図である。
【0013】
図1において、1は乗場である。乗場1は、建築物(図示せず)の各階に設けられる。各乗場1には、乗場戸2が設けられる。3はかごである。かご3は、エレベータの昇降路(図示せず)内に配置される。かご3には、かご戸4が設けられる。かご戸4は、かご3が各乗場1に到着した際に乗場戸2と対向するように設けられる。
【0014】
かご3には、制御盤5が接続される。制御盤5は、エレベータの昇降路や機械室(図示せず)等に設けられる。制御盤5には、バッテリ電源6が設けられる。制御盤5には、パーキングスイッチ7が接続される。パーキングスイッチ7は、エレベータの管理人室や特定階の乗場1に設けられる。
【0015】
制御盤5には、群管理装置8が接続される。群管理装置8は、エレベータの昇降路や機械室等に設けられる。群管理装置8には、商用電源(図示せず)が接続される。群管理装置8には、自家発電源9も接続される。自家発電源9は、エレベータが設置された建築物の所定位置に設けられる。
【0016】
このようなエレベータにおいては、パーキングスイッチ7がONになると、制御盤5は、運転モードをパーキング運転に切り換える。パーキング運転になると、制御盤5は、運転制御手段として、エレベータを所定の指定階まで走行させる。その後、制御盤5は、指定階で乗場戸2とかご戸4とを開く。これにより、かご3内の利用者は、かご3から降りることができる。その後、制御盤5は、乗場戸2とかご戸4とを閉じ、エレベータを休止させる。
【0017】
また、停電時に自家発電源9が確立すると、制御盤5は、運転モードを自家発時管制運転に切り換える。自家発時管制運転になると、制御盤5は、運転制御手段として、自家発電源9の容量に基づいて、グループ内の運転可能な台数のエレベータを指定階又は最寄階に順々に帰着させる。これにより、かご3内の利用者を救出することができる。その後、制御盤5がエレベータの運転を継続させる場合もある。
【0018】
また、停電時に自家発電源9が確立しないと、制御盤5は、運転モードを停電時自動着床運転に切り換える。停電時自動着床運転になると、制御盤5は、停電時自動着床装置等を用いて、運転制御手段として、バッテリ電源6からの電力を利用してエレベータを最寄階まで走行させた後、乗場戸2とかご戸4とを開く。これにより、かご3内の利用者を救出することができる。
【0019】
これらの運転モードの切り換えにおいては、パーキング運転よりも自家発時管制運転、停電時自動着床運転が優先される。
【0020】
次に、制御盤5を具体的に説明する。制御盤5は、運転モード決定手段10、指定階決定手段11、かご位置検出手段12、ドア位置検出手段13、戸開閉制御手段14、警報発報制御手段15、指定階戸開閉制御手段16を備える。
【0021】
運転モード決定手段10は、パーキングスイッチ7、自家発電源9、バッテリ電源6等の外部情報に基づいて、エレベータの運転モードを決定する機能を備える。指定階決定手段11は、指定手段として、運転モード決定手段10により決定された運転モードで休止、帰着すべき階を指定階として決定する機能を備える。
【0022】
かご位置検出手段12は、かご3を昇降させるモータ(図示せず)のエンコーダ(図示せず)等から得たパルス信号に基づいて、かご3の移動距離を算出する機能を備える。かご位置検出手段12は、かご3の移動距離に基づいて、かご3の位置を検出する機能を備える。
【0023】
ドア位置検出手段13は、乗場戸2やかご戸4に設置されたスイッチ(図示せず)から得た情報に基づいて、乗場戸2やかご戸4の開閉状態等の情報を検出する機能を備える。
【0024】
戸開閉制御手段14は、乗場戸2とかご戸4との開閉を制御する機能を備える。警報発報制御手段15は、戸開閉制御手段14から得た情報に基づいて、乗場戸2とかご戸4との開放中に、かご3内に設置されたブザー等の警報装置(図示せず)に発報指令を出力する機能を備える。
【0025】
指定階戸開閉制御手段16は、かご位置検出手段12から得た情報に基づいて、かご3が指定階に停止しているか否かを判断する機能を備える。指定階戸開閉制御手段16は、ドア位置検出手段13から得た情報に基づいて、乗場戸2とかご戸4との開閉状態を判断する機能を備える。
【0026】
指定階戸開閉制御手段16は、かご3が指定階に停止している場合は、戸開閉制御手段14に戸開制御情報を出力する機能を備える。なお、かご3が指定階で戸閉休止中である場合、指定階戸開閉制御手段16は、戸開閉制御手段14に戸開閉制御情報の出力を停止する。
【0027】
次に、図2を用いて、運転モードがパーキング運転から自家発時管制運転に切り換わる場合の動作を説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の動作の第1例を説明するためのフローチャートである。
【0028】
ステップS1では、運転モード決定手段10は、1階の乗場1のパーキングスイッチ7がONか否かを判断する。パーキングスイッチ7がOFFの場合は、ステップS2に進む。ステップS2では、運転モード決定手段10は、運転モードとして通常運転の選択を維持する。その後、ステップS1に戻る。
【0029】
ステップS1でパーキングスイッチ7がONの場合は、ステップS3に進む。ステップS3では、運転モード決定手段10は、運転モードとしてパーキング運転を選択する。その後、指定階戸開閉制御手段16は、指定階においてエレベータが戸閉休止中か否かを判断する。
【0030】
指定階においてエレベータが戸閉休止中でない場合は、ステップS4に進む。ステップS4では、制御盤5は、指定階へのパーキング運転を継続する。その後、ステップS3に戻る。
【0031】
ステップS3で指定階においてエレベータが戸閉休止中の場合は、ステップS5に進む。ステップS5では、運転モード決定手段10は、自家発電源9が確立しているか否かを判断する。自家発電源9が確立していない場合は、ステップS6に進む。ステップS6では、制御盤5は、指定階においてエレベータの戸閉休止を継続する。その後、ステップS5に戻る。
【0032】
ステップS5で自家発電源9が確立している場合は、ステップS7に進む。ステップS7では、制御盤5は、群管理装置8からの帰着指令があるか否かを判断する。帰着指令がない場合は、ステップS8に進む。ステップS8では、制御盤5は、帰着待ちの状態で、指定階においてエレベータの戸閉休止を継続する。その後、ステップS7に戻る。
【0033】
ステップS7で帰着指令がある場合は、ステップS9に進む。ステップS9では、制御盤5は、自家発時管制運転の指定階がパーキング運転の指定階と同一階(1階)であるか否かを判断する。自家発時管制運転の指定階がパーキング運転の指定階と同一階でない場合は、ステップS10に進む。ステップS10では、制御盤5は、エレベータを自家発時管制運転の指定階まで走行させ、動作が終了する。
【0034】
ステップS9で自家発時管制運転の指定階がパーキング運転の指定階と同一階の場合は、ステップS11に進む。ステップS11では、制御盤5は、当該指定階においてエレベータの戸閉休止を継続し、動作が終了する。
【0035】
次に、図3を用いて、運転モードがパーキング運転から停電時自動着床運転に切り換わる場合の動作を説明する。
図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の動作の第2例を説明するためのフローチャートである。
【0036】
ステップS21〜S24は、図2のステップS1〜S4と同様である。ステップS23で指定階においてエレベータが戸閉休止中の場合は、ステップS25に進む。ステップS25では、運転モード決定手段10は、停電が発生し、バッテリ電源6が確立しているか否かを判断する。
【0037】
バッテリ電源6が確立していない場合は、ステップS26に進む。ステップS26では、制御盤5は、指定階においてエレベータの戸閉休止を継続する。その後、ステップS25に戻る。
【0038】
ステップS25でバッテリ電源6が確立している場合は、ステップS27に進む。ステップS27では、指定階戸開閉制御手段16は、戸開閉制御手段14に戸開指令を出力する。この戸開指令に基づいて、戸開閉制御手段14は、乗場戸2とかご戸4とを開く。
【0039】
その後、ステップS28に進み、戸開閉制御手段14は、警報発報制御手段15に警報発報指令を出力する。この警報発報指令に基づいて、警報発報制御手段15は、かご3内の警報装置に乗り込み防止のため警報等、所定の警報を発報させる。
【0040】
その後、ステップS29に進み、乗場戸2とかご戸4との全開後所定時間が経過すると、指定階戸開閉制御手段16は、戸開閉制御手段14に戸閉指令を出力する。この戸閉指令に基づいて、戸開閉制御手段14は、乗場戸2とかご戸4とを閉じる。
【0041】
その後、ステップS30に進み、戸開閉制御手段14は、警報発報制御手段15への警報発報指令の出力を停止する。この停止に基づいて、警報発報制御手段15は、かご3内の警報装置に発報を停止させる。
【0042】
以上で説明した実施の形態1によれば、指定階においてエレベータが戸閉休止している際に、運転モードが切り換わっても、エレベータが指定階で戸開することはない。このため、休止するエレベータに利用者が誤乗車することを防止できる。また、自家発時管制運転の場合は、他のエレベータの運転に迅速に移ることができる。このため、他のエレベータのかご3内の利用者を早急に救出することができる。
【0043】
また、指定階においてエレベータが戸閉休止している際に、停電時自動着床運転に切り換わった場合は、指定階でエレベータが戸開するものの、かご3内の警報装置が所定の警報を行う。このため、休止するエレベータに利用者が誤乗車することを防止できるだけでなく、万が一、バッテリ電源6が制御盤5から切り離されても、かご3内への利用者の閉じ込めを防止できる。
【0044】
この際、エレベータが戸閉休止するまで警報が発し続ける。このため、休止するエレベータに利用者が誤乗車することをより確実に防止できる。
【0045】
なお、警報を発するための警報装置は、指定階の乗場1に設けられていてもよい。この場合も、休止するエレベータに利用者が誤乗車することをより確実に防止できる。
【符号の説明】
【0046】
1 乗場
2 乗場戸
3 かご
4 かご戸
5 制御盤
6 バッテリ電源
7 パーキングスイッチ
8 群管理装置
9 自家発電源
10 運転モード決定手段
11 指定階決定手段
12 かご位置検出手段
13 ドア位置検出手段
14 戸開閉制御手段
15 警報発報制御手段
16 指定階戸開閉制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの運転モードを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された運転モードで前記エレベータが戸閉休止する指定階を指定する指定手段と、
前記決定手段により決定された運転モードで前記エレベータを運転後、前記指定手段により指定された指定階で前記エレベータを戸閉休止させる運転制御手段と、
前記指定階で前記エレベータが戸閉休止している際に、前記決定手段が運転モードを切り換えた場合に、前記エレベータが前記指定階で戸開することを阻止する戸制御手段と、
を備えたことを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
前記エレベータが前記指定階で戸閉休止している際に、前記決定手段が前記運転モードをバッテリ電源からの電力を用いた運転モードに切り換えた場合に、前記エレベータのかご又は前記指定階の乗場に設けられた警報装置に所定の警報を行わせる警報制御手段、
を備え、
前記戸制御手段は、前記エレベータが前記指定階で戸閉休止している際に、前記決定手段が前記運転モードを前記バッテリ電源からの電力を用いた運転モードに切り換えた場合に、前記指定階で前記エレベータに戸開させることを特徴とする請求項1記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
前記警報装置は、前記エレベータが前記指定階で戸閉休止している際に、前記決定手段が前記運転モードを前記バッテリ電源からの電力を用いた運転モードに切り換えた場合に、前記エレベータが戸開した後に戸閉するまで、警報を発し続けることを特徴とする請求項2記載のエレベータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−18575(P2013−18575A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151374(P2011−151374)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】