説明

エレベータの表示灯点検装置

【課題】保守員による点検作業の負担を軽減し、全ての表示灯を簡単かつ正確に点検する。
【解決手段】エレベータ制御装置1に設けられた主制御部11は、乗りかご2内に乗り込んだ保守員の操作により、乗りかご表示灯21A…21Nおよび乗り場表示灯41A…41Nを一斉に点灯させる機能と、乗りかご表示灯21A…21Nの点灯状態が確認された後、これらを消灯させた状態で、乗り場表示灯41A…41Nの点灯異常を検出する機能と、乗り場表示灯41A…41Nのいずれかに点灯異常が検出された場合に、乗りかご表示灯21A…21Nの中で該当する階の呼び釦に対応した表示灯を点滅させる機能と、この点滅状態にある表示灯に対応した階の呼び釦の押下に伴い、保守員に当該階の乗り場に設置された表示灯を目視にて確認させるべく、乗りかご2を当該階に移動させる機能を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗りかご内や各階の乗場に設置された表示灯を点検するためのエレベータの表示灯点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、乗りかごや各階の乗り場に釦応答灯やランタンなどの表示灯が複数取り付けられている。これらの表示灯を点検する場合に、保守員が各表示灯に対応した釦を1つ1つ押して、点灯状態を確認するといった方法では、手間がかかり、階床数が多いビルでは、点検作業に時間がかかってしまう。
【0003】
このような問題を解決するため、各表示灯を1つ1つ個別に点灯させながら、そのときに流れる電流を電流検出器にて測定し、その測定値から点灯異常にある表示灯を特定して監視センタに発報することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−269840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した方法では、各表示灯に流れる電流値を一度に測定することができないため、点検に時間がかかる。また、保守員が介在しないため、電流検出器が故障している場合に、正常な表示灯を誤って異常であると誤報してしまい、監視センサから保守員が派遣される可能性がある。
【0006】
そこで、保守員による点検作業の負担を軽減し、全ての表示灯を簡単かつ正確に点検することのできるエレベータの表示灯点検装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係るエレベータの表示灯点検装置は、乗りかご内に設置された各階の呼び釦に対応した複数の表示灯と、各階の乗り場に設置された複数の表示灯と、上記乗りかごに乗り込んだ保守員の操作により、上記乗りかご内に設置された各表示灯および上記各階の乗り場に設置された表示灯を一斉に点灯させる一斉点灯手段と、この一斉点灯手段によって上記乗りかご内に設置された各表示灯の点灯状態が確認された後、これらの表示灯を消灯させた状態で、上記各階の乗り場に設置された表示灯の点灯異常を検出する異常検出手段と、この異常検出手段によって上記各階の乗り場に設置された表示灯のいずれかに点灯異常が検出された場合に、上記乗りかご内に設置された各表示灯の中で該当する階の呼び釦に対応した表示灯を点滅させる点検通知手段と、この点検通知手段によって点滅状態にある表示灯に対応した階の呼び釦の押下に伴い、保守員に当該階の乗り場に設置された表示灯を目視にて確認させるべく、上記乗りかごを当該階に移動させる運転制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0008】
また、本実施形態に係るエレベータの表示灯点検装置は、乗りかご内に設置された各階の呼び釦に対応した複数の表示灯と、各階の乗り場に設置された複数の表示灯と、上記乗りかごに乗り込んだ保守員の操作により、上記各階の乗り場に設置された表示灯を個別に点検するための第1の点検モードが設定された際に、上記乗りかご内に設置された各表示灯を点滅する点検通知手段と、この点検通知手段によって点滅状態にある表示灯に対応した階の呼び釦の押下に伴い、その表示灯を消灯させた後、保守員に当該階の乗り場に設置された表示灯を目視にて点検させるべく、上記乗りかごを当該階に移動させる運転制御手段とを具備したことを特徴とするエレベータの表示灯点検装置。
【0009】
また、本実施形態に係るエレベータの表示灯点検装置は、乗りかご内に設置された各階の呼び釦に対応した複数の表示灯と、各階の乗り場に設置された複数の表示灯と、上記乗りかご内に設置されたカメラと、監視センタからの遠隔操作により、上記乗りかご内に設置された各表示灯および上記各階の乗り場に設置された表示灯を一斉に点灯させる一斉点灯手段と、この一斉点灯手段によって上記乗りかご内に設置された各表示灯および上記各階の乗り場に設置された表示灯を一斉に点灯させた状態で、これらの点灯異常を検出する異常検出手段と、この異常検出手段によって上記乗りかご内に設置された各表示灯のいずれかに点灯異常が検出された場合に、上記カメラを起動して上記乗りかご内に設置された各表示灯の点灯状態を撮影した画像を取得する画像取得手段と、上記異常検出手段によって得られた結果と共に上記画像取得手段によって得られた撮影画像を上記監視センタに送信する報知手段とを具備したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は一実施形態に係るエレベータの表示灯点検装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は同実施形態におけるエレベータ制御装置に設けられた主制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は同実施形態における表示灯一斉点灯点検処理の動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は同実施形態における点灯状態確認処理の動作を示すフローチャートである。
【図5】図5は同実施形態における表示灯個別点灯点検処理の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は同実施形態における表示灯遠隔点検処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は同実施形態における監視センタ側の画像処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0012】
図1は一実施形態に係るエレベータの表示灯点検装置の全体構成を示す図である。なお、ここではエレベータ(乗りかご)を駆動するためのモータやロープなどの機構は省略されている。
【0013】
エレベータ制御装置1は、ビルの機械室などに設置されており、エレベータ全体の制御を行う。なお、機械室を持たないマシンルームレスタイプのエレベータでは、エレベータ制御装置1が昇降路内に設置される。
【0014】
このエレベータ制御装置1は、主制御部11と伝送制御部12とで構成される。主制御部11は、乗客の釦操作による呼び(乗り場呼び/かご呼び)の発生に対し、図示せぬモータを駆動して乗りかご2を移動させる。
【0015】
また、本実施形態において、この主制御部11は、「エレベータの表示灯点検装置」として機能し、図2に示すように、一斉点灯部11a、異常検出部11b、点検通知部11c、運転制御部11d、画像取得部11e、報知部11fを備える。
【0016】
一斉点灯部11aは、乗りかご2に乗り込んだ保守員の操作あるいは監視センタ5からの遠隔操作により、乗りかご2内に設置された複数の乗りかご表示灯21A…21Nおよび各階の乗り場に設置された乗り場表示灯41A…41Nを一斉に点灯させる。
【0017】
異常検出部11bは、後述する乗りかご操作盤20に設置された点灯検出部23、乗り場操作盤40A…40Nに設置された点灯検出部43A…43Nを通じて、乗りかご表示灯21A…21Nおよび乗り場表示灯41A…41Nの点灯異常を検出する。
【0018】
点検通知部11cは、乗りかご2内に設置された乗りかご表示灯21A…21Nの点滅により、点灯異常あるいは点検中であることを通知する。
【0019】
運転制御部11dは、保守員に各階の乗り場に設置された乗り場表示灯41A…41Nを目視にて点検させるべく、乗りかご2を指定された階に移動させる。
【0020】
画像取得部11eは、乗りかご2内に設置された乗りかご表示灯21A…21Nのいずれかに点灯異常が検出された場合に、乗りかご2内に設置されたカメラ3を起動して、乗りかご表示灯21A…21Nの点灯状態を撮影した画像を取得する。
【0021】
報知部11fは、乗りかご表示灯21A…21N,乗り場表示灯41A…41Nの異常検出結果と共にカメラ3で撮影された乗りかご表示灯21A…21Nの画像を監視センタ5に送信する。
【0022】
伝送制御部12は、主制御部11からの伝送指令51により、乗りかご2内に設置された乗りかご操作盤20や各階の乗り場に設置された乗り場操作盤40A〜40Nに対する各種指令52の伝送制御を行う。
【0023】
エレベータ制御装置1は、監視センタ5と公衆回線6を介して接続されている。監視センタ5は、各地に存在する複数のエレベータの運転状態を遠隔監視しており、何らかの異常を検出した場合に保守員を派遣するなどの対処を行う。
【0024】
乗りかご2は、乗客を乗せて各階を移動する。この乗りかご2の内部には乗りかご操作盤20が設けられている。乗りかご操作盤20には、複数の乗りかご表示灯21A〜21Nと、乗りかご制御部22と、点灯検出部23と、表示部24と、操作部25が設けられている。
【0025】
乗りかご表示灯21A〜21Nは、各階に対応した呼び釦(行先階指定釦)の応答表示の他、階床表示、管制表示などを行うものであり、電球やLED(light emitting diode)などが用いられる。乗りかご制御部22は、乗りかご2内の表示制御や図示せぬドアの開閉制御などを行う。点灯検出部23は、乗りかご表示灯21A〜21Nの点灯状態を検出する。表示部24は、乗りかご2の現在位置や運転方向などを表示する。操作部25は、保守員が点検操作を行う場合に用いられる。
【0026】
ここで、点灯検出部23は、表示灯の種類に応じた検出回路が用いられる。すなわち、例えば乗りかご表示灯21A〜21Nがランプやランタンで構成されている場合には、これらの表示灯を点灯させたときに流れる電流値を検出し、その電流値が予め設定された閾値以下であるときに点灯異常と判断する。また、乗りかご表示灯21A〜21NがLEDで構成されている場合には、LEDの輝度を検出することにより、輝度が予め設定された閾値以下であるときに点灯異常であると判断する。
【0027】
このような構成において、乗りかご内制御部22は、エレベータ制御装置1の主制御部11から点灯指令52を受けると、乗りかご表示灯21A〜21Nに対して点灯指令61を出力して、乗りかご表示灯21A〜21Nを点灯させる。
【0028】
点灯検出部23は、乗りかご表示灯21A〜21Nから点灯信号62を受信することで、正常に点灯しているかどうかを判断し、その結果を点灯検出信号63として乗りかご内制御部22に送信する。乗りかご内制御部22は、表示部24に表示信号64を出力したり、操作部25からの操作信号65を入力する。
【0029】
また、乗りかご2の内部には、乗りかご操作盤20に向けてカメラ3が設置されている。このカメラ3は、乗りかご操作盤20に設けられた乗りかご表示灯21A〜21Nを撮影し、その撮影画像53を主制御部11に転送する。
【0030】
一方、各階の乗り場に乗り場操作盤40A〜40Nが設置されている。この乗り場操作盤40A〜40Nは、それぞれに乗り場に設置された乗り場表示灯41A〜41Nと、乗り場制御部42A〜42Nと、点灯検出部43A〜43Nが設けられている。
【0031】
乗り場表示灯41A〜41Nは、上方向あるいは下方向といった乗客の行き先方向を指定するための呼び釦の応答表示の他、階床表示、管制表示などを行うものであり、電球やLEDなどが用いられる。乗り場制御部42A〜42Nは、主制御部11からの指令により、乗り場表示灯41A〜41Nに対する表示制御などを行う。点灯検出部43A〜43Nは、乗り場表示灯41A〜41Nの点灯異常を検出する。この点灯検出部43A〜43Nについても、上記乗りかご2の点灯検出部23と同様に、表示灯の種類に応じた検出回路が用いられる。
【0032】
このような構成において、各階の乗り場制御部42A〜42Nは、エレベータ制御装置1の主制御部11からの点灯指令52を受けると、それぞれに乗り場表示灯41A〜41Nに対して点灯指令71A〜71Nを出力して、乗り場表示灯41A〜41Nを点灯させる。
【0033】
点灯検出部43は、乗り場表示灯41A〜41Nから点灯信号72A〜72Nを受信することで、正常に点灯しているかどうかを判断し、その結果を点灯検出信号73A〜73Nとして乗り場制御部42に送信する。
【0034】
次に、本実施形態の動作について、(a)表示灯一斉点灯点検処理、(b)表示灯個別点灯点検処理、(c)表示灯遠隔点検処理に分けて説明する。
【0035】
(a)表示灯一斉点灯点検処理
まず、表示灯一斉点灯点検処理について説明する。これは、乗りかご2内に保守員が乗り込んだ状態で、乗りかご表示灯21A〜21Nと各階の乗り場表示灯41A〜41Nの点灯状態を一斉に点検するものである。
【0036】
図3は表示灯一斉点灯点検処理の動作を示すフローチャートである。
【0037】
保守員が乗りかご2内に乗り込み、操作部25の操作により「一斉点灯」指令を乗りかご内制御部22に入力すると(ステップS1)、乗りかご内制御部22は、一斉点灯指令を主制御部11に送信する(ステップS2)。
【0038】
主制御部11は、一斉点灯指令を受信すると、乗りかご制御部22と各階の乗り場制御部42に対し、全ての表示灯を一斉に点灯させる指令を送信する(ステップS3)。これにより、乗りかご制御部22を通じて乗りかご表示灯21A〜21Nが点灯されると共に、乗り場制御部42を通じて乗り場表示灯41A〜41Nが点灯される(ステップS4)。
【0039】
ここで、乗りかご表示灯21A〜21Nについては、保守員が乗りかご2内にいるので、目視にて点灯状態を確認することができ、確認後に操作部25の操作により消灯するものとする(ステップS5)。この場合、主制御部11が一定時間後に乗りかご表示灯21A〜21Nを消灯するようにしても良い。
【0040】
なお、保守員が目視にて点灯状態を確認した結果、乗りかご表示灯21A〜21Nの中に不点灯あるいは点滅しているなどの点灯異常があれば、その表示灯をチェックしておき、後で交換するなどの修理を施すものとする。
【0041】
ただし、後述するように、本実施形態では、乗り場表示灯41A〜41Nの中に点灯異常があれば、乗りかご表示灯21A〜21Nの中の該当する階の表示灯を点滅することで知らせるようになっている。このため、上記ステップS5の段階で乗りかご表示灯21A…21Nのいずれかが正常に点灯しなかった場合に、乗りかご表示灯と乗り場表示灯のどちらの異常であるか分からない。
【0042】
そこで、図4に示すように、乗りかご表示灯21A〜21Nのいずれかが正常に点灯しなかった場合に(ステップS5−1のYes)、その表示灯に対応した呼び釦の階に設置された乗り場表示灯が点灯異常である可能性を考慮して、当該階へ乗りかご2を移動させ(ステップS5−2)、保守員に当該階の乗り場表示灯の点灯状態を目視にて確認させる(ステップS5−3)。
【0043】
これにより、乗りかご表示灯と乗り場表示灯のどちらが異常であるのかが分かり、以後、当該乗り場表示灯は点検済みとして、他の乗り場表示灯について以下のように点検を行う。
【0044】
すなわち、各階の乗り場表示灯41A〜41Nについては、それぞれに対応した点灯検出部43A〜43Nが点灯状態を検出し、いずれかの表示灯に異常があれば、その情報を乗り場制御部42A〜42Nに送信し(ステップS6)、乗り場制御部42A〜42Nは乗り場表示灯41A〜41Nの情報を主制御部11に送信する(ステップS7)。
【0045】
主制御部11は、乗り場制御部42から受信した情報に基づいて、乗り場表示灯41A〜41Nの中に異常な表示灯があるか否かを判断する(ステップS8)。異常な表示灯があれば(ステップS8のYes)、主制御部11は、保守員に報知するため、乗りかご2内の表示部24に該当する階を表示すると共に、乗りかご表示灯21A〜21Nの中の該当する階に対応した呼び釦(行先階指定釦)の表示灯を点滅させる(ステップS9)。
【0046】
保守員が点滅している呼び釦を押すと、主制御部11は、該当する階へ乗りかご2を移動させて、点滅している呼び釦の表示灯を消灯する(ステップS10)。例えば、3Fの呼び釦の表示灯が点滅している場合に、その呼び釦を押下することで、乗りかご2が3Fへ移動し、そこで戸開することになる。これにより、保守員は3Fに設置された乗り場表示灯の異常の有無を目視にて確認することができる。
【0047】
保守員はその階の乗り場表示灯の点灯状態を確認後、乗りかご2内の操作部25を操作して当該表示灯を消灯する(ステップS11)。
【0048】
ステップS8に戻り、乗り場表示灯41A〜41Nの中に異常な表示灯が複数存在する場合には、ステップS9〜S11までの処理が繰り返し行われる。異常な表示灯がない、または全ての表示灯の確認が終了すると(ステップS8のNo)、表示灯一斉点灯点検処理が終了する。
【0049】
このように、保守員が乗りかご2内に乗車した状態で、特殊な釦操作をすることなく、乗りかご表示灯21A〜21Nと各階の乗り場表示灯41A〜41Nの点灯状態を一斉に点検することができる。
【0050】
特に、各階の乗り場表示灯41A〜41Nについては、異常な表示灯があった場合に、その階に対応した呼び釦の乗りかご表示灯が点滅するので、一目で点検結果を把握できると共に、その点滅している呼び釦を押下すれば、該当する階に乗りかご2が移動するので、実際に保守員の目で異常の有無を確認することができる。したがって、例えば点灯検出部の故障などにより、異常と判断された表示灯の交換を不用意に連絡してしまうような事態を回避できる。
【0051】
(b)表示灯個別点灯点検処理
次に、表示灯個別点灯点検処理について説明する。これは、乗りかご2内に保守員が乗り込んだ状態で、各階の乗り場表示灯41A〜41Nの点灯状態を個別に点検するものである。なお、乗りかご表示灯21A〜21Nはすべて正常であるものとする。
【0052】
図5は表示灯個別点灯点検処理の動作を示すフローチャートである。
【0053】
保守員が乗りかご2内に乗り込み、操作部25の操作により「個別点灯」指令および「点検モード」を乗りかご内制御部22に入力すると(ステップS21)、乗りかご内制御部22は、個別点灯指令を主制御部11に送信する(ステップS22)。
【0054】
上記「点検モード」は、保守員が点検したい階の乗り場を順次指定しながら行う「手動点検モード(第1の点検モード)」と、最下階から1階床ずつ移動して全ての階床の表示灯の確認を行う「自動点検モード(第2の点検モード)」がある。
【0055】
主制御部11は、個別点灯指令を受信すると、指定された点検モードが自動点検モードであるか否かを判断する(ステップS23)。そして、自動点検モードでなければ、つまり、手動点検モードであれば(ステップS23のNo)、主制御部11は、乗りかご操作盤20の各呼び釦の表示灯21A〜21Nを点滅させる(ステップS24)。
【0056】
ここで、保守員が点滅している乗りかご呼び釦を押すと、主制御部11は、該当する階へ乗りかご2を移動させ、乗りかご表示灯21A〜21Nの中の該当する表示灯を消灯する(ステップS25)。
【0057】
今、保守員がN階の呼び釦を押下したものと仮定して説明する。
N階の呼び釦の押下に伴い、乗りかご2はN階へ移動し、そのN階の呼び釦に対応した表示灯21Nが点滅から消灯に切り替わることになる。乗りかご2がN階に到着すると、主制御部11は、N階の乗り場制御部42Nに点灯指令を出力して、N階の乗り場表示灯41Nを点灯させる(ステップS26)。これにより、乗りかご2が到着したN階にて、保守員はそこに設置された乗り場表示灯41Nの点灯状態を確認できる。確認後、乗りかご2内の操作部25の操作により乗り場表示灯41Nを消灯する(ステップS27)。
【0058】
その後、主制御部11は、未確認の乗り場表示灯があるか否かを判断し(ステップS28)、未確認の乗り場表示灯があれば(ステップS28のYes)、ステップS25〜S27の処理を繰り返す。
【0059】
一方、指定された点検モードが自動点検モードであれば(ステップS23のYes)、主制御部11は、乗りかご2を最下階(A階とする)に移動させ(ステップS31)、A階の乗り場制御部42Aに点灯指令を出力して、A階の乗り場表示灯41Aを点灯させる(ステップS32)。これにより、乗りかご2が到着したA階にて、保守員はそこに設置された乗り場表示灯41Aの点灯状態を確認できる。確認後、乗りかご2内の操作部25の操作により乗り場表示灯41Aを消灯して乗りかご2に乗り込む(ステップS33)。
【0060】
主制御部11は、保守員が乗車したことを確認すると、最上階に到着したかどうかを判断する(ステップS34)。なお、保守員の乗車検出方法としては、例えば保守員に無線IDカードを持たせ、それを乗りかご2内に設置された図示せぬカードリーダで検知する方法がある。また、点検時には保守員しか乗らないのが前提であるため、乗りかご2に設置されている図示せぬ荷重センサにて乗客一人相当の荷重が検知されたときに、保守員が乗り場表示灯の点検を終えて乗りかご2に乗り込んできたものと判断することでも良い。
【0061】
現在の階が最上階でなければ(ステップS34のNo)、主制御部11は、乗りかご2を現在の階から1階床上に移動させて(ステップS35)、上記ステップS32〜S33を繰り返す。
【0062】
このようにして、乗りかご2を最下階から1階床ずつ上に移動させ、各階の乗り場表示灯41A〜41Nの点灯状態を保守員が目視にて確認していく。そして、乗りかご2が最上階に到着し、そこでの表示灯の点検が終了すると(ステップS35のYes)、表示灯個別点灯点検処理が終了する。
【0063】
このように、乗りかご2を手動あるいは自動にて移動させながら、各階の乗り場表示灯41A〜41Nの点灯状態を個別に点検することができる。この場合も、保守員が乗り場にて直接異常の有無を確認するため、点灯検出部の故障による不用意な交換を回避できる。また、乗りかご2内では、点検が終了した階の乗りかご表示灯21A〜21Nが消灯していくので、どの階の乗り場表示灯を点検したのかを一目で把握でき、点検漏れを防ぐことができる。
【0064】
なお、ここでは「自動点検モード」のときに、乗りかご2を最下階に移動させた後、1階床ずつ上に移動させて点検するものとしたが、乗りかご2を最上階に移動させた後、1階床ずつ下に移動させて点検するようにしても良い。
【0065】
(c)表示灯遠隔点検処理
次に、表示灯遠隔点検処理について説明する。これは、監視センタ5からの遠隔操作により、乗りかご表示灯21A〜21Nと各階の乗り場表示灯41A〜41Nの点灯状態を点検するものである。
【0066】
図6は表示灯遠隔点検処理の動作を示すフローチャートである。
【0067】
監視センタ5から公衆回線6を介してエレベータ制御装置1の主制御部11に表示灯点検指令を送信する(ステップS41)。主制御部11は、表示灯点検指令を受信すると、乗りかご制御部22と各階の乗り場制御部42に対し、全ての表示灯を点灯する指令を送信する(ステップS42)。これにより、乗りかご制御部22を通じて乗りかご表示灯21A〜21Nが点灯されると共に、乗り場制御部42を通じて乗り場表示灯41A〜41Nが点灯される(ステップS43)。
【0068】
このとき、乗りかご表示灯21A〜21Nについては、乗りかご操作盤20に設けられた点灯検出部23がこれらの点灯状態を検出し、異常があれば、その情報を乗りかご内制御部22に送信する。また、各階の乗り場表示灯41A〜41Nについては、乗り場操作盤40A〜40Nに設けられた点灯検出部43A〜43Nがこれらの点灯状態を検出し、異常があれば、その情報を乗り場制御部42Aに送信する(ステップS44)。乗りかご内制御部22および各階の乗り場制御部42は、それぞれに各表示灯の情報を主制御部11に送信する(ステップS45)。
【0069】
主制御部11は、乗りかご制御部22および各階の乗り場制御部42から受信した各表示灯の情報を監視センタ5に送信した後(ステップS46)、各階の乗り場制御部42に消灯指令を送って、乗り場表示灯41A〜41Nを消灯する(ステップS47)。
【0070】
ここで、主制御部11は、乗りかご制御部22から受信した乗りかご表示灯21A〜21Nの情報に点灯異常があったか否かを判断する(ステップS48)。点灯異常があった場合(ステップS48のYes)、主制御部11は、乗りかご2内にカメラ3が設置されているか否かを判断する(ステップ49)。
【0071】
乗りかご2内にカメラ3が設置されている場合(ステップS49のYes)、主制御部11は、カメラ3を起動することにより、乗りかご表示灯21A〜21Nを点灯させた状態の撮影画像を取得して(ステップS50)、これを監視センタ5へ送信する(ステップS51)。これにより、監視センタ5では、以下のようにして乗りかご表示灯21A〜21Nの異常の有無を判断する。
【0072】
すなわち、図7に示すように、監視センタ5では、撮影画像を受信すると(ステップS61のYes)、図示せぬメモリに記憶された基準画像と比較する(ステップS62)。この基準画像は、予め乗りかご表示灯21A〜21Nが正常な状態のときに、これらを点灯させてカメラ3で撮影した画像である。
【0073】
この基準画像と上記受信した撮影画像とを比較した結果、両者が一致すれば(ステップS63のYes)、正常であると判断される(ステップS64)。この場合、上記ステップS46にて異常の発報があっても、点灯検出部23の故障による誤報と判断されることになる。一方、両者が一致しない場合には(ステップS63のNo)、上記ステップS46にて異常の発報通りであると判断される(ステップS64)。なお、画像の比較処理は、パターンマッチングなどの一般的に知られている方法を用いるものとし、本発明では特にその方法に限定されるものではない。
【0074】
なお、監視センタ5には監視者が常駐しているので、上記受信した撮影画像を見て、乗りかご表示灯21A〜21Nの異常の有無を判断することもできる。
【0075】
撮影画像の送信後、主制御部11は、乗りかご制御部22に消灯指令を送って、乗りかご表示灯21A〜21Nを消灯し(ステップS52)、遠隔点検処理を終了する。また、乗りかご表示灯21A〜21Nの情報に異常がなかった場合(ステップS48のNo)、あるいは、乗りかご2にカメラ3が設置されていなかった場合(ステップS49のNo)、上述した撮影画像処理は行われず、そのまま遠隔点検処理が終了する。
【0076】
このように、監視センタ5からの遠隔操作により、乗りかご表示灯21A〜21Nと各階の乗り場表示灯41A〜41Nの点灯状態を点検し、その点検結果としての情報を監視センタ5に送ることで、保守員による点検負担を軽減できる。
【0077】
また、乗りかご表示灯21A〜21Nに関しては、点検結果に異常が見られた場合にカメラ3の撮影画像を監視センタ5に送ることで、異常の有無を正しく判断することができ、例えば点灯検出部23の故障で誤って異常情報が送られたような場合に保守員を不用意に派遣してしまう事態を回避できる。
【0078】
以上のように、これらの実施形態によれば、保守員による点検作業の負担を軽減し、全ての表示灯を簡単かつ正確に点検することのできるエレベータの表示灯点検装置が提供される。
【0079】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1…エレベータ制御装置、2…乗りかご、3…カメラ、4…乗り場、5…監視センタ、6…公衆回線、11…主制御部、11a…一斉点灯部、11b…異常検出部、11c…点検通知部、11d…運転制御部、11e…画像取得部、11f…報知部、12…伝送制御部、20…乗りかご操作盤、21A〜21N…乗りかご表示灯、22…乗りかご制御部、23…点灯検出部、24…表示部、25…操作部、40A〜40N…乗り場操作盤、41A〜41N…乗り場表示灯、42A〜42N…乗り場制御部、43A〜43N…点灯検出部、51…伝送指令、52…各種指令、53…撮影画像、61…点灯指令、62…点灯信号、63…点灯検出信号、64…表示信号、65…操作信号、71A〜71N…点灯指令、72A〜72N…点灯信号、73A〜73N…点灯検出信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に設置された各階の呼び釦に対応した複数の表示灯と、
各階の乗り場に設置された複数の表示灯と、
上記乗りかごに乗り込んだ保守員の操作により、上記乗りかご内に設置された各表示灯および上記各階の乗り場に設置された表示灯を一斉に点灯させる一斉点灯手段と、
この一斉点灯手段によって上記乗りかご内に設置された各表示灯の点灯状態が確認された後、これらの表示灯を消灯させた状態で、上記各階の乗り場に設置された表示灯の点灯異常を検出する異常検出手段と、
この異常検出手段によって上記各階の乗り場に設置された表示灯のいずれかに点灯異常が検出された場合に、上記乗りかご内に設置された各表示灯の中で該当する階の呼び釦に対応した表示灯を点滅させる点検通知手段と、
この点検通知手段によって点滅状態にある表示灯に対応した階の呼び釦の押下に伴い、保守員に当該階の乗り場に設置された表示灯を目視にて確認させるべく、上記乗りかごを当該階に移動させる運転制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの表示灯点検装置。
【請求項2】
上記運転制御手段は、
上記一斉点灯手段によって上記乗りかご内に設置された各表示灯のいずれかが正常に点灯しなかった場合に、当該階の乗り場に設置された表示灯の点灯異常の可能性を考慮して、上記乗りかごを当該階に移動させることを特徴とする請求項1記載のエレベータの表示灯点検装置。
【請求項3】
乗りかご内に設置された各階の呼び釦に対応した複数の表示灯と、
各階の乗り場に設置された複数の表示灯と、
上記乗りかごに乗り込んだ保守員の操作により、上記各階の乗り場に設置された表示灯を個別に点検するための第1の点検モードが設定された際に、上記乗りかご内に設置された各表示灯を点滅する点検通知手段と、
この点検通知手段によって点滅状態にある表示灯に対応した階の呼び釦の押下に伴い、その表示灯を消灯させた後、保守員に当該階の乗り場に設置された表示灯を目視にて点検させるべく、上記乗りかごを当該階に移動させる運転制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの表示灯点検装置。
【請求項4】
上記運転制御手段は、
上記乗りかごに乗り込んだ保守員の操作により、上記各階の乗り場に設置された表示灯を個別に点検するための第2の点検モードが設定された際に、保守員に上記各階の乗り場に設置された表示灯を目視にて順に点検させるべく、上記乗りかごを最下階あるいは最上階から順に1階床ずつ移動させることを特徴とする請求項3記載のエレベータの表示灯点検装置。
【請求項5】
乗りかご内に設置された各階の呼び釦に対応した複数の表示灯と、
各階の乗り場に設置された複数の表示灯と、
上記乗りかご内に設置されたカメラと、
監視センタからの遠隔操作により、上記乗りかご内に設置された各表示灯および上記各階の乗り場に設置された表示灯を一斉に点灯させる一斉点灯手段と、
この一斉点灯手段によって上記乗りかご内に設置された各表示灯および上記各階の乗り場に設置された表示灯を一斉に点灯させた状態で、これらの点灯異常を検出する異常検出手段と、
この異常検出手段によって上記乗りかご内に設置された各表示灯のいずれかに点灯異常が検出された場合に、上記カメラを起動して上記乗りかご内に設置された各表示灯の点灯状態を撮影した画像を取得する画像取得手段と、
上記異常検出手段によって得られた結果と共に上記画像取得手段によって得られた撮影画像を上記監視センタに送信する報知手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの表示灯点検装置。
【請求項6】
上記監視センタは、
上記乗りかご内に設置された各表示灯が正常な状態のときに撮影した基準画像を有し、上記撮影画像を受信した際に、上記撮影画像と上記基準画像とを比較して点灯異常の有無を判断することを特徴とする請求項5記載のエレベータの表示灯点検装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−56688(P2012−56688A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201421(P2010−201421)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】