説明

エレベーターのドア監視装置

【課題】終端スイッチの動作に基づくことなく、敷居やドアレール上に堆積した塵埃等の堆積量が閾値を越えたかどうかを判断することのできるエレベーターのドア監視装置の提供。
【解決手段】敷居やドアレール上に堆積した塵埃等の堆積量が閾値を越えたことを判断して異常検出を行うエレベーターのドア監視装置において、閉扉時に、ドアが開閉端から押し戻された距離を測定する反転距離測定手段(10a)と、この反転距離が所定値を超えたときに異常と判断する異常検出手段(10a)とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターのドア動作異常を検出するものに係り、特に、敷居やドアレール上に堆積した塵埃等により本来のドア開閉動作ができなくなることを防ぐエレベーターのドア監視装置に関わる技術である。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、従来、ドア開閉時に終端スイッチが動作してから慣性によってドアが移動する移動量を測定し、終端スイッチからの移動量が所定値以下となった場合に、敷居溝への塵埃の堆積等により開閉動作に異常が生じたと判断して異常信号を送信するエレベーターの監視装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−308177号公報(段落番号0015、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した特許文献1に示す従来技術では、ドア開閉端にある終端スイッチが動作してからのドアの移動量に基づき異常を検出しているため、ボルトの緩みや経年的な摩耗等によって終端スイッチの動作位置が変位した場合には、異常を正確に判断することができなくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、終端スイッチの動作に基づくことなく、敷居やドアレール上に堆積した塵埃等の堆積量が閾値を越えたかどうかを判断することのできるエレベーターのドア監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、敷居やドアレール上に堆積した塵埃等が閾値を越えたことを判断して異常検出を行うエレベーターのドア監視装置において、閉扉時に、ドアが開閉端から押し戻された距離を測定する反転距離測定手段と、この反転距離が所定値を超えたときに異常と判断する異常検出手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
このように構成した本発明では、敷居やドアレール上に堆積した塵埃等によりドアが反転する現象を利用し、閉扉時に、ドアが開閉端から押し戻された距離を測定し、この反転距離が所定値を超えたときに、敷居やドアレール上に堆積した塵埃等の堆積量が閾値を越えたと判断するようにしたものである。これによって、従来のように終端スイッチの動作に基づくことなく異常の検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドアが開閉端から押し戻された時の反転距離を検出し、この反転距離が所定値以上となった場合に、敷居やドアレール上に堆積した塵埃等の堆積量が閾値を越えたと判断することで、経年的に高精度で異常検出を行うことができ、これによって、エレベーター装置の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のエレベーターのドア監視装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】本実施例におけるドア監視装置のブロック図である。
【図3】本実施例におけるドア監視装置の制御処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るエレベーターのドア監視装置の実施例を図に基づき説明する。
【0011】
エレベーターには、図1に示すように、ドアモータ1と、ドアモータ1に同期してパルス信号を発し、位置検出器として用いられるロータリーエンコーダ2と、ドアモータ1により駆動されるドア駆動ベルト3と、ドア駆動ベルト3と平行して延設されるドアレール4と、出入口に配置されるドアパネル5と、ドアパネル5の上端に取付けられるとともに、このドアパネル5をドアレール4に吊下するドアハンガー6と、ドアハンガー6に軸を介して固定され、ドアレール4上をドア開閉方向に回転するハンガーローラ7と、ドアパネル5の下端を案内する敷居8と、エレベーターの制御を司るとともに、外部、すなわち、監視センター9と情報の送受信を行う制御装置10とが備えられている。尚、11はドアレール4上に堆積した塵埃等の堆積物である。
【0012】
また、制御装置10は、図2に示すように、制御マイコン10aと、インバータ10bとを有しており、通常のドア開閉制御、ロータリーエンコーダ2から出力されるパルス信号に基づくドア位置の判断、ドア開閉端にそれぞれ配置される終端スイッチ(図示しない)から出力される終端スイッチ信号に基づく開閉扉確認、本発明によるドアの反転距離測定、反転距離と設定値、すなわち、あらかじめ定められる所定値との比較、異常検出等を行うようになっている。尚、前述した、閉扉時に、ドアが開閉端から押し戻された距離を測定する反転距離測定手段、および、反転距離が所定値を超えたときに異常と判断する異常検出手段のそれぞれは、例えば、制御装置10の制御マイコン10aからなっている。また、図2において前述した図1に示すもの同様のものには同一符号が付してある。
【0013】
一般的に、エレベーターを使用していると、空気中の塵埃が敷居8やドアレール4上に堆積する。また、ドアレール4上の塵埃は、ドアの開閉に伴ってハンガーローラ7により開閉端に寄せ集められ、堆積物11として固着する傾向にある。この堆積物11が多くなると、開閉端ではドアの慣性によってハンガーローラ7が一旦堆積物11に乗り上げ、その後、ドアモータ1の消勢と伴にハンガーローラ7が押し戻され、ドアが反転する現象が生じ始める。更に、堆積物11が多くなると、ドアが閉まり切らない等のドア本来の開閉動作に支障をきたすため、このような状態となる前に堆積物11が閾値を越えたことを判断する必要がある。そこで、本発明は、前述したドア反転現象を利用し、反転距離が所定値以上、例えば2.0mmとなった場合に、敷居8やドアレール4上に塵埃等、すなわち、堆積物11が閾値を越えて堆積していると判断して異常を検出するようにしたものである。
【0014】
ここで、図3に基づきドア監視装置の制御処理を説明する。尚、ここに示す制御処理は、制御装置10内の制御マイコン10aにて処理されるものである。
【0015】
図2のステップS1において、エレベーターが目的階に到着した場合や開釦が押された場合等、ドアが開閉動作を行うとき、ステップS2において、ドア開動作の場合はドア開端の終端スイッチ(図示しない)にてドアが開き切ったかを確認し、ドア閉動作の場合はドア閉端の終端スイッチ(図示しない)にてドアが閉じ切ったかを確認する。尚、ドア開閉端の終端スイッチをあえて確認する必要はないが、ここではドア開閉途中での乗客のぶつかり等によるドア反転時の誤検出を防止する目的で終端スイッチを確認している。次に、ステップS3においてドア開閉端でのドア反転距離を測定し、ステップS4にてドア反転距離が所定値、すなわち、2.0mm以上であるか否かを判定する。尚、ドア反転距離は、ドア位置検出において、ドア移動距離の最大値とドア停止後の停止位置との差分を算出することで求められる。ここで、ドアレール4上の堆積物9に一旦乗り上げたハンガーローラ7が押し戻されたり、敷居8内の異物によってドアパネル5が押し戻される等の理由により、ドアの反転距離が所定値以上であれば、ステップS5に進み異常を検出する。また、ドアの反転距離が所定値未満であれば異常は検出せずに処理を終了する。そして、ステップS5に進んでドアの異常を検出した場合には、ステップS6にて監視センター9へ異常を発報する。これにより、監視センター9ではドアの異常を認識でき、技術員を現地に出動させてドアの異常を取り除くことが可能となる。
【0016】
本実施例によれば、ドアが開閉端から押し戻された時の反転距離を検出し、この反転距離が所定値以上となった場合に、敷居8やドアレール4上に堆積した塵埃等の堆積量が閾値を越えたと判断することで、経年的に高精度で異常検出を行うことができ、これによって、エレベーター装置の信頼性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0017】
1 ドアモータ
2 ロータリーエンコーダ
3 ドア駆動ベルト
4 ドアレール
5 ドアパネル
6 ドアハンガー
7 ハンガーローラ
8 敷居
9 監視センター
10 制御装置
10a 制御マイコン(反転距離測定手段、異常検出手段)
10b インバータ
11 堆積物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷居やドアレール上に堆積した塵埃等の堆積量が閾値を越えたことを判断して異常検出を行うエレベーターのドア監視装置において、
閉扉時に、ドアが開閉端から押し戻された距離を測定する反転距離測定手段と、この反転距離が所定値を超えたときに異常と判断する異常検出手段とを備えたことを特徴とするエレベーターのドア監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−30899(P2012−30899A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169069(P2010−169069)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】