説明

エレベーターの案内表示システムおよび案内表示方法

【課題】エレベーターホール及びかご内における各種放送、階床案内表示などの内容変更に柔軟に対応可能なエレベーター案内表示システムを提供する。
【解決手段】ホール端末HT1〜HT3及びかご端末CT1に案内表示データ、各種案内放送データを号機制御装置CP1から、エレベーター電源投入時または異常発生からの回復時に、初期化伝送として送信する。また、案内表示内容の変更が要求された場合にも、入力された変更後の案内表示データを各端末へ送信する。この案内表示データを、ホール及びかご端末で受信格納し、運転中に、音声案内、案内表示用のデータとして、利用する。これにより、各種放送、階床案内表示などの変更要求に柔軟かつ素早く対応可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの案内表示システムおよび案内表示方法に係わり、特にかご内及びホールにおける案内表示の内容を変更する手段を備えたエレベーターの案内表示システムおよび案内表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの乗場(ホール)やかご内の案内表示としては、かご位置と運転方向を視覚的に表示するかご位置表示器、運転方向や到着階を聴覚的に案内する音声案内放送などがある。以下、これらを総称して、案内表示と称することとする。
【0003】
この種の技術として、ホール端末・かご端末側の不揮発性のメモリに、工場出荷時に予め使用する表示データ及び音声データ(以下、両データを含めて案内表示用の要素データと称する)を記憶しておき、号機制御装置から案内表示用の要素データが格納されたメモリのアドレスを送る方式と、案内表示用の要素データそのものを、案内表示出力タイミングで送るといった方式がある。
【0004】
まず、特許文献1には、端末側に2箇所の記憶個所を用意しておき、第1記憶装置には標準的な案内表示用の要素データを格納しておき、案内表示を変更したい場合には、修正装置を用いて第2の記憶装置に変更した案内表示用の要素データを格納する。そして、エレベータ制御装置から案内表示コードが送信されたときに、端末側は、そのコードに応じたデータを第2の記憶装置から取得する。しかし、標準の案内表示で良く、案内表示の変更を要求されていない場合は、第2の記憶装置の該当部分には何も格納されておらず、第1の記憶装置から標準の案内表示用の要素データを取得し案内表示する。
【0005】
また、特許文献2には、エレベータ制御装置から、案内表示装置を備えた端末側へ、案内表示用の要素データそのものを定期的に伝送する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−196283号公報
【特許文献2】特開平9−165154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1のように、2つの記憶装置に異なる案内表示情報を格納して選択的に案内表示する方式では、記憶装置の容量が単純に2倍必要になってしまう。
【0008】
一方、特許文献2のように、案内表示用の要素データそのものを伝送するものでは、送信するデータ量が膨大になるため、制御盤と端末間の通信周期が長くなり、端末での入出力応答性が低下し、エレベーターが高速になる程、案内表示が追いつかない欠点がある。
【0009】
本発明の課題は、ホール及びかご内での案内表示内容を柔軟に変更可能なエレベーターの案内表示システムを提供することにある。
【0010】
本発明のその他の課題は、案内表示用の要素データを格納する記憶装置の要領を増やすことなしに、ホール及びかご内での案内表示内容を変更可能なエレベーターの案内表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の望ましい実施態様においては、エレベーターの電源投入時の初期化伝送として、号機制御装置からホール端末及びかご端末に、案内表示用の要素データを送信する。また、異常発生からの回復時にも、号機制御装置からホール端末及びかご端末に、案内表示用の要素データを送信することが望ましい。
【0012】
ここで、案内表示内容の変更が要求された場合に、ビル内の管理センターなどから、変更された案内表示用の要素データが入力されると、入力された変更後の案内表示用の要素データを、号機制御装置からホール端末及びかご端末に送信する。これをホール及びかご端末で受信格納し、その後の、エレベーター運転中における案内表示用の要素データとして利用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の望ましい実施態様によれば、毎朝のエレベーターの電源投入時に、号機制御装置から各階およびかご端末へ、案内表示用の要素データを伝送することにより、各種案内表示の内容の変更要求に対して、次回の電源投入時から、即応可能なエレベーターの案内表示システムを提供できる。
【0014】
また、本発明の望ましい実施態様によれば、運転中の案内表示の内容の変更要求に対しては、エレベーターの呼びが所定時間だけ途絶えたときに、号機制御装置から各階およびかご端末へ、変更された案内表示用の要素データを伝送することにより、変更要求に柔軟かつ素早く対応可能なエレベーターの案内表示システムを提供できる。
【0015】
さらに、本発明の望ましい実施態様によれば、号機制御装置から各階およびかご端末へ、案内表示用の要素データ一式を伝送することにより、案内表示データを格納する各端末の記憶装置容量を増すことなく、変更要求に柔軟に対応可能なエレベーターの案内表示システムを提供できる。
【0016】
本発明のその他の目的と特徴は、以下に述べる実施形態の中で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例によるエレベーターの案内表示システムの系統構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例による号機制御装置側の案内表示処理フロー図である。
【図3】本発明の一実施例による端末側の案内表示処理フロー図である。
【図4】本発明の一実施例による視覚による表示用の要素データテーブルの一部を抜粋した概略構成図である。
【図5】本発明の一実施例による音声案内用の要素データテーブルの一部を抜粋した概略構成図である。
【図6】本発明の一実施例による主マイコンと端末間の案内表示用伝送データのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して本発明の一実施例によるエレベーターの案内表示システムの系統構成を説明する。エレベーターを統括制御する号機制御装置CP2の内部には、主マイコンCMPU2がある。この主マイコンCMPU2は、ホール用多重伝送路HL1により、各階設置のホール端末HT1〜HT3とそれぞれ接続されている。また、主マイコンCMPU2は、かご用多重伝送路CL2により、かご側のかご端末CT1と接続されている。ホール端末HT1〜HT3は、各階のホール呼び釦HB1〜HB3や、ホール用のかご位置表示装置兼音声案内装置HI1〜HI3に接続されている。かご端末CT1は、行き先階呼び釦CD1とかご用のかご位置表示装置兼音声案内装置CI1に接続されている。
【0019】
ここで、案内表示の内容を変更するための操作卓OTが、ビル内の管理センターMC内に設けられている。もちろん、各エレベーターの号機制御装置CP2に直接、入力手段を設けても良い。
【0020】
図2は、本発明の一実施例による号機制御装置側の案内表示処理フロー図である。
【0021】
ステップ201では、主マイコンが電源投入の有無を検出する。電源投入を検出したのであればステップ202に移行する。電源投入を検出していなければステップ203で、かご端末及びホール端末異常を検出したかを判定する。端末のいずれかが異常を検出していればステップ202へ戻り、異常検出がなければステップ204へ移行する。
【0022】
さて、ステップ202では、全伝送完了を意味するFLG1をリセットする。次に、ステップ205では、かご端末CT1およびホール端末HT1〜HT3に案内表示用の要素データ一式を伝送する。伝送を全て完了すれば、ステップ206において、全伝送完了を意味するFLG1をセットする。次に、ステップ207で、FLG1のセット状態を確認する。セット済みであれば、既に、ホール端末HT1〜HT3及びかご端末CT1では、案内表示用の要素データを受信格納済みと見なすことができるので、ステップ208で、端末に案内表示させる案内表示用の要素データの格納アドレスを伝送する。
【0023】
これによって、これまでの運用において使用されていた案内表示用の要素データが、ホール端末HT1〜HT3及びかご端末CT1にセットされ、これまでと同じ表示内容、音声案内放送が実行されることになる。
【0024】
ところで、エレベーターの運転中に、案内表示内容の変更が要求され、センターMC内の操作卓OTから、案内表示データの変更入力がなされたとする。この場合、図2のステップ203で、端末に異常が無いことを検出した後、ステップ204に進んで、号機側格納案内表示用の要素データに変化があることを検出する。すると、ステップ209において、エレベーターが利用中であるかを判断し、利用の合間をぬって、ステップ202から207で、変更された案内表示用の要素データ一式をかご端末及CT1およびホール端末HT1〜HT3に伝送する。したがって、ステップ208での、以後の案内表示は、変更された案内表示用の要素データに基づいて実行されることになる。
【0025】
この結果、かご端末及CT1およびホール端末HT1〜HT3においては、常に、案内表示用の要素データ一式を格納しており、余分な記憶装置は必要が無い。
【0026】
図3は、本発明の一実施例による端末側の案内表示処理フロー図である。
【0027】
ステップ301では、主マイコンから送信された案内表示用の要素データの受信に成功したかを判定する。受信に成功していれば、ステップ302で、端末側に格納保持する。次に、ステップ303では、主マイコンから、案内表示用の要素データの格納アドレスに対応する要素データ番号を受信したかを確認する。これらの番号を受信していれば、ステップ304では、受信した番号の要素データに対応するアドレスに基づいて、案内表示用の要素データ格納テーブルから、今回、案内表示すべき案内表示用の要素データを取得する。次に、ステップ305では、取得した案内表示用の要素データに基づいて、表示器や音声案内装置から案内表示を出力する。
【0028】
本実施例においては、視覚表示における文字フォントの変更要求に対しては、号機制御装置CP2から、フォントデータ番号のみを変更して送信するだけで、文字フォントを変更できる。
【0029】
図4は、本発明の一実施例による視覚による表示用の要素データテーブルの一部を抜粋した概略構成図であり、同じく図5は、本発明の一実施例による音声案内用の要素データテーブルの一部を抜粋した概略構成図である。これらは、それぞれ、データ番号に対応した所定のアドレスに、案内表示用の要素データを格納する。
【0030】
本テーブルは、号機制御装置側及び端末側で同じ構成となっており、号機制御装置側で本テーブルのデータを変更すれば、前述した図2および図3の処理の実行により、端末側のデータも連動して変更できる。例えば、号機制御装置側でBという案内表示用の要素データを漢字の“中”と変更すれば、端末側の案内表示用の要素データも同様に変更となる。実際に、案内表示させるには、そのデータが格納されるアドレスを指定することで可能である。
【0031】
図6は、本発明の一実施例による主マイコンと端末間のデータ伝送タイムチャートを示したものであり、電源投入時や異常状態からの復帰時には、案内表示用の要素データを伝送し、その後、定期的に、あるいはエレベーターの運転に応じて、案内表示データ番号を送信する。端末側の異常を検出すれば、再度案内表示用の要素データを伝送し、その後、定期的に案内表示用の要素データ番号を送信する。
【符号の説明】
【0032】
MC:管理センター、OT:操作卓、CP2:号機制御装置、CMPU2:号機制御用主マイコン、HL1:ホール用多重伝送路、CL2:かご用多重伝送路、HT1〜HT3:ホール端末1〜3、HB1〜HB3:ホール呼び釦1〜3、HI1〜HI3:ホール用案内表示装置兼音声案内装置、CT1:かご端末、CD1:かご内行き先階呼び釦、CI1:かご用階床案内表示装置兼音声案内装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各階ホールに設置されたホール呼び釦とその応答灯、各種案内表示装置などを制御する各階のホール端末と、
かご内に設置される行き先階呼び釦とその応答灯、各種案内表示装置などを制御するかご端末と、
前記ホール端末及び前記かご端末と多重伝送路により接続される号機制御装置とを備えたエレベータの案内表示システムにおいて、
前記号機制御装置に設けられ、前記ホール端末及び前記かご端末に、案内表示情報を形成するための要素データを送信する要素データ送信手段、
前記ホール端末及び前記かご端末に設けられ、前記要素データ送信手段から受信した要素データを、指定されたアドレスに格納する要素データ格納メモリ、
前記号機制御装置に設けられ、エレベーターの運転に応じてまたは定期的に、前記ホール端末及び前記かご端末に、前記要素データが格納されたアドレスの組合せからなる案内表示用のデータを送信する案内表示用データ送信手段、
前記ホール端末及び前記かご端末に設けられ、受信した前記案内表示用データが示す前記要素データを組合わせて、案内表示を行う案内表示手段
を備えたことを特徴とするエレベーターの案内表示システム。
【請求項2】
請求項1において、前記要素データ送信手段は、前記エレベータ号機制御装置の電源投入に応じて前記要素データを送信するように構成されていることを特徴とするエレベーターの案内表示システム。
【請求項3】
請求項1において、前記要素データ送信手段は、前記エレベータ号機制御装置の異常状態からの復帰に応じて前記要素データを送信するように構成されていることを特徴とするエレベーターの案内表示システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記要素データ送信手段は、前記エレベータ号機制御装置内の前記要素データに変更があった場合、当該エレベータのホール呼び及びかご内行先呼びが無い状態が所定時間継続したことに応じて、前記要素データを送信するように構成されていることを特徴とするエレベーターの案内表示システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記ホール端末及び前記かご端末に設けられた前記要素データ格納メモリは、案内表示用の要素データ一式を記憶するように構成されていることを特徴とするエレベーターの案内表示システム。
【請求項6】
請求項4において、ビル内の管理センターに、前記エレベータ号機制御装置内の前記要素データの変更を入力する操作卓を備えたことを特徴とするエレベーターの案内表示システム。
【請求項7】
各階ホールに設置されたホール呼び釦とその応答灯、各種案内表示装置などを各階のホール端末で制御するステップと、
かご内に設置される行き先階呼び釦とその応答灯、各種案内表示装置などをかご端末で制御するステップと、
エレベーターの号機制御装置と、前記ホール端末及び前記かご端末との間を、多重伝送路により接続してデータを伝送するステップとを備えたエレベータの案内表示方法において、
前記号機制御装置から前記ホール端末及び前記かご端末へ、案内表示情報を形成するための要素データを送信する要素データ送信ステップと、
前記ホール端末及び前記かご端末において、前記要素データ送信手段から受信した要素データを、指定されたアドレスに格納する要素データ格納ステップと、
エレベーターの運転または定期的に、前記号機制御装置から前記ホール端末及び前記かご端末へ、前記要素データが格納されたアドレスの組合せからなる案内表示用のデータを送信する案内表示用データ送信ステップと、
前記ホール端末及び前記かご端末で、受信した前記案内表示用データが示す前記要素データを組合わせて、案内表示を行う案内表示ステップ
を備えたことを特徴とするエレベーターの案内表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−111287(P2011−111287A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269393(P2009−269393)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】