説明

エレベータ引張り部材アセンブリ

エレベータベルト(20)やロープ(25)は、ポリウレタンジャケット(24、28)で覆われた複数の引張り部材(22、26、46)を含む。各々の引張り部材は、各々複数のワイヤ(40)からなる複数のストランド(42)を含む。引張り部材の製造工程の間、切れているワイヤの端部(44、54)が再度取り込まれ、これによって、これらのワイヤの端部(44、54)がストランド(42)もしくはコード(46)から外側に突出しない。種々の切れているワイヤの端部(44、54)を再度取り込む方法が、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ベルトやロープなどに使用されているエレベータの引張り部材に関する。特に、本発明はアセンブリ内の引張り部材構成要素の取り扱いや配置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置は、多くの場合、ロープやベルトによって支持されたかごならびにカウンタウェイトを備える。従来の巻上機は、例えば、ビル内の階の間でエレベータかごの所望の動きをもたらすようにロープやベルトを動かす。従来より、鋼製ロープが使用されてきた。最近になり、平型ベルトを用いる方法が採用されてきた。平型ベルトによって、牽引及び耐曲げ疲労での利点がもたらされる。
【0003】
平型ベルト構造の一例は、ポリウレタンジャケットに覆われた複数の鋼製の引張り部材を備える。鋼製の引張り部材は、引張り部材として供給されるコードを形成するように互いに巻きつけられる複数のワイヤを備えることがある。ベルトを組み立てる工程の間、1本或いは複数のワイヤが、異なる時点で切れる可能性がある。切れているワイヤの端部が、ワイヤ巻きつけもしくはそれ以降の工程の間に、組立機内でワイヤのもつれを引き起こし、ジャケットが引張り部材に装着されるときに、組立機の損傷や少なくともベルトの著しい製造中断などの問題を引き起こす。
【0004】
同様の問題が、円形のジャケットロープの製造において存在する。このような切れているワイヤを取り扱う方法が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ストックされたワイヤが、単純に各断線部分において切断されると、ストックされたワイヤの長さが、不揃いかつ不必要に制限される。ほとんどのエレベータの取り付けにおいては、非常に長く、連続した引張り部材を必要とする。
【0006】
1つの提案された手段は、ワイヤの断線部分においてストランドまたはコード(即ち、構成要素である全てのワイヤ)全体を切断し、その後、2つの切断した端部を互いに溶接することである。この提案は、重大な欠点を持つ。エレベータベルト内の引張り部材に要求される引張り強さ及び耐曲げ疲労は、切断−溶接技術が採用されると、著しく損なわれる。ある状況においては、曲げ疲労に基づいた耐用年数が、50パーセント以上低下する。
【0007】
本発明は、エレベータの引張り部材つまりベルトやロープを組み立てる工程の間に、1本或いは複数のワイヤが断線する状況において別の手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
広く言えば、本発明は、エレベータの引張り部材つまりロープやベルトを組み立てる工程の間に、切れているワイヤを効果的に取り扱う方法である。
【0009】
エレベータ引張り部材を製造する一実施例の方法は、複数のワイヤを少なくとも1本のストランドに処理することを含む。その後、複数のストランドが、少なくとも1本のコードに処理される。この方法は、少なくとも1本のストランド或いは少なくとも1本のコードから突出する少なくとも1本の切れているワイヤの端部が存在するか否かが、対応する処理工程の間に判定される。少なくとも1本の切れているワイヤが存在すると、このワイヤの端部が、対応するストランドまたはコードから離れて突出しないように処理される。
【0010】
一実施例においては、検出された切れているワイヤの端部が、対応するストランドまたはコード内に挿入される。一実施例においては、ワイヤの切れ口が、少なくとも1本の隣接する切れていないワイヤの周囲に捻られる。別の実施例においては、ワイヤの切れ口が、切れていないワイヤの間に織られる。
【0011】
別の実施例においては、切れているワイヤの端部が、対応するストランドまたはコードの外側の面に固定される。一実施例においては、切れているワイヤの端部が、所定の位置に溶接もしくはろう付けされる。別の実施例においては、切れているワイヤの端部が、所定の位置に接着して固定される。
【0012】
本発明における種々の特徴ならびに長所は、後述する実施例の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1Aは、エレベータベルト20の一部分を概略的に示している。複数の引張り部材22が、ポリウレタンジャケット24で覆われている。一実施例においては、引張り部材22は、7本のストランドからなるコードであり、各ストランドは、7本の単一のワイヤからなる。ワイヤは、ストランドを形成するように周知の方法で巻かれ、またこのストランドは、コードを形成するように周知の方法で巻かれる。図示された実施例では、12本の引張り部材22(即ち、12本のコード)が存在する。別の実施例では、ベルト20の幅全体に亘って8本の引張り部材が存在する。
【0014】
図1Bは、図1Aの実施例の引張り部材22と同様に製造された複数の引張り部材26を有するジャケットロープ25の端部を示している。ロープとして互いに巻かれた引張り部材26が、ポリウレタンジャケット28によって覆われている。
【0015】
図2は、エレベータベルトの組立工程30を概略的に示しており、単一のワイヤからなるワイヤストック32が、コード巻きつけ機34に備えられる。コード巻きつけ機34は、最初に複数のワイヤを巻きつけて個々のストランドにし、その後、複数のストランドを巻きつけてコードにする。完成したコードは、スプール上に配置され、最終的にジャケット装着機36に供給される。コードは、ベルトやロープを形成するために、ジャケット24、28内に適切に位置決めかつ配置され、最終的にベルトやロープは適切な収納場所38に送られる。周知の方法を、図2で概略的に示されている各段階において用いることができる。
【0016】
図3A、図3Bを参照すると、ワイヤストック32からなる複数のワイヤ40が、ストランド42を得るために周知の方法で撚られる。この実施例においては、7本の単一のワイヤ40が、個々のストランド42内に存在する。図3Aに示すように、ワイヤ40のうちの1本が、ストランド42の外側から離れて突出している2つの端部44となって切れている部分を有する。この状態は、例えば、高速巻きつけ機に使用される公知の装置である検出器50によって検出される。切れ口44が検出されると、巻きつけ機34が好ましくは停止し、これによって切れているワイヤ40の状態に対処することができる。ワイヤ40の巻きつけ工程が続くと、切れているワイヤ40が巻きつけ機34の内部でもつれる可能性があり、この重大な問題ならびに巻きつけ機の停止の要因になる。
【0017】
この実施例においては、図3Aで示されている切れ口44は、この切れ口44がエレベータベルトの製造機械におけるワイヤの絡みのリスクとなるようにストランド42から離れて突出することがないような形でストランド42の一部として再取り込みされる。一実施例においては、切れ口44が手作業で処理され、かつこの切れ口44の周辺の別のワイヤ40の間に挿入される。別の実施例での方法は、ストランド42内にワイヤ40の切れている部分を織り込むことや、少なくとも1本の隣接する切れていないワイヤの周囲にこの切れているワイヤ40を捻ることを含む。切れ口44を押し込むことによって、この切れ口44が、外側に突出せず、また巻きつけ機における問題を引き起こさない方法でストランド42内に効果的に取り込まれる。
【0018】
別の実施例においては、切れているワイヤの端部が処理されるとともに、ストランド42に対して配置される。接着剤が、切れ口44の周辺のストランド42に塗布され、これによってこの切れ口44が、ストランド42の一部としてある位置に固定されるとともに、外側に突出しない。さらに別の実施例においては、切れ口44が、ストランド42に沿って適切な位置において隣接するワイヤに対して、所定の位置に溶接またはろう付けされる。ろう付けや溶接の材料は、製造工程を妨げる可能性がある突起を避けることが好ましい。
【0019】
別の実施例は、ワイヤの切れ口44を互いに溶接することやろう付けすることを含む。
【0020】
別の実施例においては、外側に突出しているワイヤの一部が切断され、これによって残っているワイヤの部分が、他のストランド42と同一平面になる。
【0021】
巻きつけ機34が切れているワイヤを検知して停止すると、ワイヤ40の張りが緩み、選択した方法を用いて切れ口44を再取り込みするために、切れているワイヤの端部44の手作業による処理が可能になる。
【0022】
図3Bは、コードにする後半部分の工程を概略的に示しており、個々のストランド42が、コード46を形成するように互いに巻きつけられる。図3Bの実施例で示すように、別の検出器52によって、例えば、コード46の外側から離れて突出している切れているワイヤを検出するためにコード46が検査される。図示された実施例では、切れているワイヤの端部54が検出されるとともに、巻きつけ機34が停止し、これによって、切れているワイヤの端部54をコード46内に再度取り込むことができる。上述した実施例におけるいずれかの方法が、エレベータベルト20やロープ25を形成するコード46の後半の工程の間、ワイヤ40が絡まないように、再度この工程の段階で用いられる。検出器52は、周知の検出装置からなる。
【0023】
コード46が検出器52による検査に通ると、このコード46を、ベルト20またはロープ25を形成するために、ポリウレタンジャケット24、28を装着するように、例えば、押出機を備えるジャケット装着機36に供給することができる。
【0024】
図4は、一実施例であるベルトアセンブリ20の製造方法を概略的に示している。この実施例においては、ジャケット24、28が、コード46を覆うように押し出され、これによりジャケット24、28の外側は滑らかで、連続し、また溝によって遮断されない。コード供給源50によって、コード46が供給される。一実施例においては、コード供給源50は、コード46を形成する鋼製ワイヤを巻いたストランド42を具備する複数のスプールを備える。コード46は、ジャケット24を装着する設備と同一の工場で形成されてもよく、または特定の状況における必要に応じて、コード46を事前に形成し事前に巻き取っておくようにしてもよい。
【0025】
位置決め装置52によって、コード46が所望の配列で整列し、これによってこのコード46が、ベルトアセンブリ20の縦軸方向に平行に延びる。ジャケット24、28を装着する工程の間、引張り装置54が、コード46の張力を制御する。単一の引張り装置54が概略的に図示されているが、複数の引張り装置54を、ベルトアセンブリ20の組立ラインに沿って用いてもよい。例えば、同じ張力が、好ましくはジャケット装着機56の両側でコード46に加えられる。引張り装置54は、好ましくは所望の範囲内で張力を監視し、かつ制御する適切なプログラム制御装置を備える。
【0026】
特に、個々のコード46における張力が、好ましくはベルトアセンブリ20の製造工程全体に亘って所望のレベルで維持され、これによりベルト20の構成や形状が、可能な限り調整される。個々のコード46における張力は、別のコード46と比較して異なることがあり得る。一実施例においては、約50ニュートンの基準張力が各コード46にかけられ、サンプルとなるベルトアセンブリ20が製造される。その後、このサンプルのベルトアセンブリ20が、好ましくはこのベルト20が所望の形状になっているかを確認するために検査される。長手方向に若干湾曲している形状などの好ましくない形状のばらつきが存在すると、1つ或いは複数の単一のコード46上の張力が、ベルト20の好ましくない形状のばらつきに対応するように調整される。いくらかのサンプルを製造し、かつこれらのばらつきに対して手段を講じつつ補正することによって、所望のベルト20の形状をもたらす個々のコード46の必要な張力を決定することができる。
【0027】
各々のコード46の張力は十分であり、これによってコード46の水平姿勢が、ジャケット24、28の装着工程全体に亘って同じ状態のままになる。この実施例は、ベルト20の製造工程におけるジャケット装着工程においてコード支持を無くすことを含むので、実施例の工程の間に用いられる張力は、コード46を支持する方法において用いられていた張力より高くなる必要があり得る。
【0028】
特に図示されていないが、張力フィードバック装置(従来技術として公知)が、好ましくはベルト製造装置内に備えられ、これによって個々のコード46の張力を、ベルト20の組立工程全体に亘って必要に応じて監視し、かつ調整することができる。
【0029】
ジャケット装着機56は、好ましくはコード46上にジャケット材料を装着する適切な成形装置や別の装置を備える。ジャケット供給源58は、従来の方法でジャケット装着機56に選択した材料を供給する。ジャケット材料は、加圧成形や押出成形、或いは他の方法によってコード46に装着される。
【0030】
一実施例においては、ローラ59が、ジャケット装着機56の一部に、或いはその直後に備えられる。ローラ59は、好ましくはテフロン(商標)加工される。ジャケット材料の装着の直後に、ローラ59によって、ベルトアセンブリ20のシーブ接触面に表面処理が施される。この実施例においては、ローラ59は、滑らかで、平滑で、かつ平行したベルト面を形成する。ローラ59によって、例えば、ジャケット面上にエンボス加工が施されてもよい。従来の装置に使用されているコード支持部を無くすことによって、さらなる寸法調整が必要になるので、ローラ59が備えられることが好ましい。ローラ59によって、更なる寸法調整が施される。
【0031】
図示された実施例においては、ローラ59は、ベルトアセンブリ20の両側に配置される(図4では1つのローラのみ認識できるが)。ローラ59は、好ましくはベルト面における最良の寸法調整を施せるようにベルトアセンブリ20の幅全体に亘って延びている。
【0032】
一実施例においては、このローラ59は空転するものであり、ベルトアセンブリ20がローラ59を通過すると、ベルトアセンブリ20の動きに応じて回転する。別の実施例においては、ローラ59が電動化され、これによってこのローラ59が、制御された速度で回転する。
【0033】
その後、形成されたベルトアセンブリ20は、仕上げ装置60において処理される。一実施例においては、仕上げ装置60は、成形装置と、寸法検査装置と、ジャケット材料及びコード46を適切な温度に冷却する硬化用の水槽と、を備える。
【0034】
周知のレーザ三角測定装置などの検査装置によって、所望の形状が得られているかどうかが決定される。
【0035】
そして、得られたベルトアセンブリ20は、好ましくは収納場所62に、例えば、エレベータ装置内にこのアセンブリ20を取り付ける種々の場所にこのアセンブリ20を輸送するためにスプール上に収納される。ベルトアセンブリ20を、特定の長さに予めカットしてもよく、或いは大量に供給してもよい。取り付け時において、技術者が、特定の用途におけるベルト材の適切な量を選択する。
【0036】
図5は、ジャケット24をコード46に装着する実施例の成形装置70を概略的に示している。従来の装置は、複数のコード支持部を備え、これによりベルトアセンブリ20上の少なくとも1つの外側の面に溝が生じる。本発明は、これらの溝を無くすことを含むので、このようなコード支持部を有する従来のコード支持装置は、好ましくは使用されない。
【0037】
図5の実施例の成形装置70は、入口側74を有するモールドハウジング72を備える。コード位置決め装置76は、好ましくは入口側74に配置される。コード位置決め装置76は、複数の開口部78を備え、これらの開口部78を通してコード46が成形装置70内に送り込まれる。開口部78は、好ましくは精密に機械加工されるか、もしくは別の方法により形成され、これにより精密な公差が、コード46の外側と開口部78の内側との間で維持される。開口部78とコード46とが密着することによって、成形工程の間、ジャケット材料の逆流が防止される。
【0038】
図5から理解できるように、例えば、コード46がコード位置決め装置76内の開口部78を通過する際に、浮き上がった切れているワイヤの端部は開口部78を通過しない可能性がある。この問題は、コード46のねじれやベルト製造工程の中断の要因になり得る。
【0039】
一実施例においては、ワイヤ40の端部の浮き上がりにより生じる問題を避けるために、ジャケット装着工程の一部としてコード46の状態が確認される。上述のような別の検出器が、ベルト製造工程の間、ワイヤ40を適切に装着するために適切な位置において成形装置70に結合されてもよい。
【0040】
モールドハウジング72は、1つ或いは複数の開口部79を備え、この開口部79を通してジャケット材料が、加圧注入を利用してコード46に装着される。従来技術で周知のとおり、ポリウレタンなどのジャケット材料が適切に加熱され、加圧注入を、材料の成形のために用いることができる。本明細書を前提にして、当業者であれば、所望の結果を得るために、適切な条件を選択することができるであろう。
【0041】
成形装置70は、モールドハウジング72の出口側82に開口部80を備える。開口部80は、好ましくはベルトアセンブリ20の外形及びこのアセンブリ20の面を調整するように形成される。
【0042】
図6の実施例での成形装置70における開口部80は、シーブに接触するベルト面を形成する開口部の一部分に沿って非線形の形状を有する。ベルト20の幅全体に亘って見られるように、この非線形の形状によって、ベルトアセンブリ20の厚さの違いがもたらされる。図から理解できるように、コード46の位置に対応するベルトアセンブリ20の部分は、このコード46が存在しないこのアセンブリ20の部分と比較して厚さが薄い。
【0043】
一様でないベルト面86、88の非線形形状は、ベルトアセンブリ20の仕上げ及び硬化の間に生じる、このベルト20の幅全体に亘る収縮量の変化に対応するように設計される。ベルト20の収縮量は、ウレタンジャケット材の断面に対応すると考えられる。コード46が存在する部分においては、ある実施例では鋼製であるコード材料が在ることによって、ベルト20の収縮量が小さくなる。コード46が存在しないベルトアセンブリ20の部分は、このアセンブリ20のこれらの部分においてより収縮するので、一時的に大きな厚みを有している。
【0044】
ベルトアセンブリ20の幅全体に亘って厚さの変化を与えることによって、最終的にベルト20を平坦にすることが容易になり、面86と面88との間が平行に揃う。図6に示された形状は、ベルトアセンブリ20を製造する実施例での方法において独特である。従来の方法においては、成形ホイールがジャケット装着機の一部として備えられていた。このような成形ホイールは、初期段階の冷却過程の一部として、より平坦な形状にジャケット材を押し付けるように作動していた。故に、本発明の一実施例の一部である非線形でベルトの厚さが変化する方法は、特殊な方法でベルトを硬化させる工程の間に生じる収縮量の変化に対応する。
【0045】
一実施例においては、図6に示される成形装置の開口部80によって与えられるジャケットの厚さの変化量は、おおよそ0.05〜0.10mmである。特定のベルトアセンブリの全体の寸法、コード寸法、及び選択したジャケット材料が、特定の状況において要求される特定の厚さの変化に影響する。本明細書を前提にして、当業者であれば、特定の状況における必要性に対処するために適切な寸法を選択することができるであろう。
【0046】
本発明では、ベルトまたはロープストックの長さ、及びコードストックの長さが著しく増加する。ワイヤが切れる度にストランドまたはコード部分を簡単に切断すると、好ましくない量の材料の廃材が生じ、ほとんどのエレベータの取り付けにおいて使用できない長さのものとなる可能性がある。上述した実施例の方法を用いることによって、コード及びベルトのストックの長さが著しく増加する。一実施例においては、引張り部材における切断−溶接結合のないベルトの長さを、約13kmにすることができる。故に、実施例の方法によって、引張り部材の製造工程が大幅に経済的でかつ、効率的になる。
【0047】
本発明の実施例は、ある地点において1本或いは複数の切れているワイヤを含んでもよい。7本のワイヤで各ストランドを形成し、かつ7本のストランドで各コードを形成する実施例においては、1本の切れているワイヤによって、連続するワイヤの引張り支持性能が約2パーセント減少する。多数のワイヤが劣化しておらず、また複数のコードが存在し、いくらか或いは大部分のワイヤが切れていないので、この僅かな違いがコードの強度に著しく影響することはない。
【0048】
実施例の方法によれば、エレベータのベルトやロープの製造及び取り付けに関連した生産効率ならびに経済性を向上させるように切れているワイヤを処理することができる。
【0049】
上記の説明は、限定的ではなく例示的な性質のものである。当業者には、開示された実施例に対して本発明の趣旨から逸脱することなく加え得る種々の変更及び改良が明らかとなろう。本発明に与えられる法的保護の範囲は、以下の請求範囲を検討することによって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1A】エレベータのベルトアセンブリの一部分を示す概略図。
【図1B】ジャケットロープアセンブリの端部を示す概略図。
【図2】エレベータベルトの組立工程を示す概略図。
【図3A】ある程度詳細なベルト組立工程において、1本或いは複数の切れているワイヤが存在する状況を強調している概略図。
【図3B】ある程度詳細なベルト組立工程において、1本或いは複数の切れているワイヤが存在する状況を強調している概略図。
【図4】本発明の実施例に従って設計されたベルトアセンブリの製造方法を示す概略図。
【図5】本発明における方法を実施する実施例の工具を示す概略図。
【図6】図5に示される実施例の工具の好ましい特徴を示す概略図。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)複数のワイヤ(40)を少なくとも1本のストランド(42)に処理するステップと、
(B)複数のストランド(42)を少なくとも1本のコード(46)に処理するステップと、
(C)ステップ(A)、ステップ(B)を実行する間、少なくとも1本のストランド(42)または少なくとも1本のコード(46)から突出する少なくとも一つの切れているワイヤの端部が存在するか否かを判定するステップと、
(D)上記の切れているワイヤの端部(44、54)が突出しないように、これらのワイヤの端部(44、54)を処理するステップと、からなることを特徴とするエレベータ装置で使用される引張り部材の製造方法。
【請求項2】
上記ステップ(D)は、上記の切れているワイヤの端部(44、54)をこれらの端部(44、54)に対応するストランド(42)またはコード(46)内に挿入することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置で使用される引張り部材の製造方法。
【請求項3】
上記ステップ(D)は、上記の切れているワイヤの端部(44、54)をこれらの端部(44、54)に対応するストランド(42)またはコード(46)の外側の面に固定することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置で使用される引張り部材の製造方法。
【請求項4】
上記ステップ(D)は、上記の切れているワイヤの端部(44、54)を少なくとも1本の隣接する切れていないワイヤの一部分にろう付けすることを特徴とする請求項3に記載のエレベータ装置で使用される引張り部材の製造方法。
【請求項5】
上記ステップ(D)は、上記の切れているワイヤの端部(44、54)を少なくとも1本の隣接する切れていないワイヤの一部分に溶接することを特徴とする請求項3に記載のエレベータ装置で使用される引張り部材の製造方法。
【請求項6】
上記ステップ(D)は、上記の切れているワイヤの端部(44、54)を少なくとも1本の隣接する切れていないワイヤの一部分に接着して固定することを特徴とする請求項3に記載のエレベータ装置で使用される引張り部材の製造方法。
【請求項7】
上記ステップ(D)は、上記の切れているワイヤの端部(44、54)を少なくとも1本の隣接する切れていないワイヤの一部分の周囲に捻ることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置で使用される引張り部材の製造方法。
【請求項8】
上記ステップ(D)は、上記ワイヤの突出部分を切断することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置で使用される引張り部材の製造方法。
【請求項9】
少なくとも1本のコード(46)を覆うように装着されるジャケット(24)を備え、上記ジャケット(24)を装着するステップに関連してステップ(C)、ステップ(D)が実行されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置で使用される引張り部材の製造方法。
【請求項10】
ジャケット(24)によって覆われた複数のコード(46)を有するエレベータの引張り部材アセンブリであって、上記引張り部材は、
(A)複数のワイヤ(40)を少なくとも1本のストランド(42)に処理するステップと、
(B)複数のストランド(42)を少なくとも1本のコード(46)に処理するステップと、
(C)ジャケット(24)を少なくとも1本のコード(46)を覆うように装着するステップと、
(D)少なくともステップ(A)、ステップ(B)を実行する間、少なくとも1本のストランド(42)または少なくとも1本のコード(46)から突出する少なくとも1本の切れているワイヤの端部が存在するか否かを判定するステップと、
(E)上記の切れているワイヤの端部(44、54)が突出しないように、これらのワイヤの端部(44、54)を処理するステップと、からなる方法によって製造されることを特徴とするエレベータの引張り部材アセンブリ。
【請求項11】
上記ステップ(E)の方法は、上記の切れているワイヤの端部(44、54)をこれらの端部(44、54)に対応するストランド(42)またはコード(46)内に挿入することを特徴とする請求項10に記載のエレベータの引張り部材アセンブリ。
【請求項12】
上記ステップ(E)の方法は、上記の切れているワイヤの端部(44、54)をこれらの端部(44、54)に対応するストランド(42)またはコード(46)の外側の面に固定することを特徴とする請求項10に記載のエレベータの引張り部材アセンブリ。
【請求項13】
上記の切れているワイヤの端部(44、54)の固定は、上記端部(44、54)を少なくとも1本の隣接する切れていないワイヤの一部分にろう付けすることを特徴とする請求項12に記載のエレベータの引張り部材アセンブリ。
【請求項14】
上記の切れているワイヤの端部(44、54)の固定は、上記端部(44、54)を少なくとも1本の隣接する切れていないワイヤの一部分に溶接することを特徴とする請求項12に記載のエレベータの引張り部材アセンブリ。
【請求項15】
上記の切れているワイヤの端部(44、54)の固定は、上記端部(44、54)を少なくとも1本の隣接する切れていないワイヤの一部分に接着して固定することを特徴とする請求項12に記載のエレベータの引張り部材アセンブリ。
【請求項16】
上記ステップ(E)の方法は、上記の切れているワイヤの突出部分を切断することを特徴とする請求項10に記載のエレベータの引張り部材アセンブリ。
【請求項17】
上記ステップ(E)の方法は、上記の切れているワイヤの端部(44、54)を少なくとも1本の隣接する切れていないワイヤの一部分の周囲に捻ることを特徴とする請求項10に記載のエレベータの引張り部材アセンブリ。
【請求項18】
上記の方法によって、ステップ(C)を実行することに関連してステップ(D)、ステップ(E)が実行されることを特徴とする請求項10に記載のエレベータの引張り部材アセンブリ。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−524549(P2007−524549A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513786(P2005−513786)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/041387
【国際公開番号】WO2005/068696
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】