説明

エレベータ装置

【課題】1つの昇降路内を互いに逆方向に昇降する2つのかごが懸架手段によって釣瓶式に懸架されたエレベータ装置において、簡単な構成により昇降路の省スペース化を実現することができるエレベータ装置を得る。
【解決手段】エレベータ昇降路内1に備えられた第1のかご及び第2のかご2,3が、懸架手段4によって釣瓶式に懸架されて、互いに逆方向に昇降するエレベータ装置において、第1のかご及び第2のかごは、エレベータの乗客が乗るかご室と、懸架手段によって懸架され、かご室を水平方向に移動可能に支持する支持手段と、をそれぞれ備え、昇降路のうち、すれ違いゾーン1eは、第1のかごと第2のかごとが互いに干渉せずに並設できる所定の鉛直投影面積を有し、すれ違いゾーン以外の範囲は、すれ違いゾーンが有する鉛直投影面積よりも小さな鉛直投影面積を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、1つの昇降路内に備えられた2つのかごが、懸架手段によって釣瓶式に懸架されて、互いに逆方向に昇降するエレベータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1つの昇降路内に備えられた2つのかごが、主索やベルト等の懸架手段によって釣瓶式に懸架されて、互いに逆方向に昇降する従来のエレベータ装置には、主索の荷重変動や経年変化による伸縮によって生じる着床誤差を防止するため、かご枠にかご室を昇降可能に支持し、かご枠の底とかご室の床との間に、かご枠及びかご室の上下方向の相対位置を調整するレベリング機構を介在させたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、昇降路内のかご及び釣合い重りが懸架手段によって釣瓶式に懸架されて、互いに逆方向に昇降する従来のエレベータ装置には、昇降路の省スペース化を実現するため、昇降路の鉛直投影面積を、かごと釣合い重りとがすれ違う高さを含めた所定範囲のみ、かごと釣合い重りとが並設できる大きさとし、その他の部分は、鉛直投影面積の大きいかごのみが昇降できる大きさとしたものが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】実開昭58−53764号公報
【非特許文献1】発明協会公開技報 公技番号89−17019
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のエレベータ装置では、懸架手段によって釣瓶式に懸架された2つのかごが、鉛直投影面上干渉することなく、常時並設された状態で昇降路内を昇降するため、かご2台分の昇降路スペースが昇降路の上下に渡って必要となり、昇降路の省スペース化を実現することが困難であった。
【0006】
また、非特許文献1記載のエレベータ装置では、かごと釣合い重りとの接触を回避するため、釣合い重りの昇降方向を案内する釣合い重り用ガイドレールを、かごと釣合い重りとがすれ違う部分のみ外側に湾曲させる必要があり、釣合い重り用ガイドレールの据付及び調整作業が極めて困難になっていた。また、かごと釣合い重りとがすれ違う際に、釣合い重りの懸架位置が水平方向に変動するため、懸架手段とかご、或いは、懸架手段と昇降路壁との接触を防止する必要がある等、実現するには種々の問題が存在していた。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、1つの昇降路内を互いに逆方向に昇降する2つのかごが懸架手段によって釣瓶式に懸架されたエレベータ装置において、簡単な構成により昇降路の省スペース化を実現することができるエレベータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベータ装置は、エレベータ昇降路内に備えられた第1のかご及び第2のかごが、懸架手段によって釣瓶式に懸架されて、互いに逆方向に昇降するエレベータ装置において、第1のかご及び第2のかごの一方は、エレベータの乗客が乗るかご室と、懸架手段によって懸架され、かご室を水平方向に移動可能に支持する支持手段と、を備え、
昇降路のうち、すれ違いゾーンは、第1のかごと第2のかごとが互いに干渉せずに並設できる所定の鉛直投影面積を有し、すれ違いゾーン以外の範囲は、すれ違いゾーンが有する鉛直投影面積よりも小さな鉛直投影面積を有するものである。
【0009】
また、この発明に係るエレベータ装置は、エレベータ昇降路内に備えられた第1のかご及び第2のかごが、懸架手段によって釣瓶式に懸架されて、互いに逆方向に昇降するエレベータ装置において、第1のかご及び第2のかごは、エレベータの乗客が乗るかご室と、懸架手段によって懸架され、かご室を水平方向に移動可能に支持する支持手段と、をそれぞれ備え、昇降路のうち、すれ違いゾーンは、第1のかごと第2のかごとが互いに干渉せずに並設できる所定の鉛直投影面積を有し、すれ違いゾーン以外の範囲は、すれ違いゾーンが有する鉛直投影面積よりも小さな鉛直投影面積を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、エレベータ昇降路内に備えられた第1のかご及び第2のかごが、懸架手段によって釣瓶式に懸架されて、互いに逆方向に昇降するエレベータ装置において、第1のかご及び第2のかごの一方は、エレベータの乗客が乗るかご室と、懸架手段によって懸架され、かご室を水平方向に移動可能に支持する支持手段と、を備え、昇降路のうち、すれ違いゾーンは、第1のかごと第2のかごとが互いに干渉せずに並設できる所定の鉛直投影面積を有し、すれ違いゾーン以外の範囲は、すれ違いゾーンが有する鉛直投影面積よりも小さな鉛直投影面積を有する構成としたことで、1つの昇降路内を互いに逆方向に昇降する2つのかごが懸架手段によって釣瓶式に懸架されたエレベータ装置において、簡単な構成により昇降路の省スペース化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の正面図、図2は図1に示すエレベータ装置の要部正面図、図3は図2に示すエレベータ装置のA−A矢視図、図4はこの発明の実施の形態1における一方のかごを示す正面図、図5は図4に示すかごのB部詳細図であり、1つの昇降路内に備えられた2つのかご(第1のかご及び第2のかご)が、懸架手段によって釣瓶式に懸架されて、互いに逆方向に昇降するエレベータ装置を示したものである。なお、実施の形態1に示すエレベータ装置は、シャトルエレベータ装置や展望タワーに備えられたエレベータ装置等、建築物の2つの所定階に設けられたエレベータ乗場間の輸送に利用されるものである。以下においては、その一例として、展望タワー等、建築物の最下階と最上階とにのみエレベータ乗場が設置され、その途中階は非停止階であるエレベータ装置について説明する。
【0013】
図1乃至図5において、1はエレベータの昇降路、2及び3は、1つの昇降路1内を互いに逆方向に昇降するかごであり、かご2が最下階の停止位置に、かご3が最上階の停止位置に停止している状態を示している。4はかご2とかご3とを釣瓶式に懸架する主索、5は昇降路1の上方に設けられて、種々のエレベータ機器類が設置される機械室、6は機械室5に備えられた巻上機(図示せず)に回動自在に設けられ、主索4の一部が巻き掛けられた駆動綱車、7は機械室5に回動自在に設けられ、主索4の一部が巻き掛けられたそらせ車、8は機械室5の昇降路1直上部に設けられ、機械室5に設置される巻上機やそらせ車7等を支持する機械台、9は機械室5に設けられ、エレベータ装置の各種機器類の制御を司る制御装置である。なお、上記主索4は、ベルト等の他の懸架手段によっても代替が可能である。
【0014】
また、建築物の最下階及び最上階の各フロアには、かご2及びかご3への乗客の乗り降りがスムーズに行われるように、主索4によって釣瓶式に懸架された一対のかご2及びかご3に対して、乗場出入口がそれぞれ2つずつ設けられている。即ち、最下階及び最上階の各フロアには、昇降路壁1aの中央部に形成された乗場出入口からかご2又はかご3に乗車する乗車専用の乗場10aと、乗場10aが設けられた昇降路壁1aに対向する昇降路壁1bの中央部に形成された乗場出入口を通ってかご2又はかご3から降車する降車専用の乗場10bとが、それぞれ設けられている。なお、11は乗場10a及び10bにそれぞれ立設されて、乗場出入口を形成する乗場三方枠、12は乗場出入口を開閉する乗場の戸を示している。
【0015】
また、13a及び13bはかご2を間に挟んで互いに対向するように昇降路1内の上下に渡って略一直線状に立設され、かご2の昇降方向を案内する一対のかご用ガイドレール(第1のかご用ガイドレール)、14a及び14bはかご3を間に挟んで互いに対向するように昇降路1内の上下に渡って略一直線状に立設され、かご3の昇降方向を案内する一対のかご用ガイドレール(第2のかご用ガイドレール)である。ここで、かご用ガイドレール13a及び14aは、それぞれ取付ブラケット15a等を介して昇降路壁1aに、また、かご用ガイドレール13b及び14bは、それぞれ取付ブラケット15b等を介して昇降路壁1bに固定される。即ち、かご2を案内するかご用ガイドレール13a及び13bを結ぶ直線と、かご3を案内するかご用ガイドレール14a及び14bを結ぶ直線とが、乗場出入口が形成された昇降路壁1a及び1b間方向(以下、「奥行方向」という)となるようにそれぞれ配置されている。そして、かご用ガイドレール13a及び13bが、昇降路壁1a及び1b間に配置されて互いに対向する昇降路壁1c及び1dのうちの一側の昇降路壁1cと、互いに対向位置に配置された両乗場出入口間との間に、また、かご用ガイドレール14a及び14bが、他側の昇降路壁1dと上記両乗場出入口との間に、それぞれ配置されている。
【0016】
かかる構成を有するエレベータ装置では、駆動綱車6の回動に連動して主索4が移動することにより、かご2及び3が、かご用ガイドレール13a及び13b、14a及び14bに案内されて、昇降路1内を互いに逆方向に昇降する。ここで、かご2及びかご3が昇降する昇降路1のうち、かご2及びかご3が同じ高さとなる位置から所定距離上方及び下方の範囲、即ち、かご2とかご3とがすれ違う高さを含めた所定範囲(以下、「すれ違いゾーン1e」という)は、かご2及びかご3が互いに干渉せずに並設できる所定の鉛直投影面積が確保されている。一方、昇降路1のうち、すれ違いゾーン1e以外の範囲、即ち、昇降路1のうち、すれ違いゾーン1eより下方の範囲と上方の範囲とは、すれ違いゾーン1eが有する鉛直投影面積よりも小さい鉛直投影面積しか確保されておらず、鉛直投影面上、かご2とかご3とが互いに干渉せずに並設できるような十分な広さは確保されていない。つまり、昇降路壁1a及び1b間距離、即ち、昇降路1の奥行方向の幅は、昇降路1の底部から頂部に渡ってほぼ一定であるが、昇降路壁1c及び1d間距離、即ち、上記奥行方向に直交する昇降路1の間口方向の幅は、すれ違いゾーン1eのみ大きく、すれ違いゾーン1e以外の範囲では、すれ違いゾーン1eよりも小さくなるように構成されている。
【0017】
次に、昇降路1内を昇降するかご2の構成について説明する。上記かご2には、かご床16、かご床16上に立設されたかご壁17、かご壁17の上部を覆うかご天井から構成されて箱状を呈し、エレベータの乗客が乗るかご室18と、主索4によって懸架され、その長手が上下及び昇降路1の奥行方向に配置されるとともに、中空部にかご室18が配置された略四角環状を呈するかご枠19と、かご枠19に設けられ、かご室18を、かご枠19に対して昇降路1の間口方向に移動自在に支持するかご室駆動装置20とが備えられている。即ち、エレベータの乗客が乗るかご室18は、主索4によって懸架されたかご枠19とかご室駆動装置20とからなる支持手段により、水平方向に移動可能に支持されている。
【0018】
ここで、上記かご枠19は、かご室18と所定の間隔を有して昇降路壁1a側及び1b側にそれぞれ配置されたかご枠柱21と、各かご枠柱21の上端部間に跨って設けられてかご室18の上方に配置されるとともに、その中間部に主索4の一端部が弾性的に連結されたかご枠上梁22と、各かご枠柱21の下端部間に渡って設けられ、かご室18の下方に配置されたかご枠柱下梁23とから構成される。なお、かご用ガイドレール13a及び13b間に配置されたかご枠19の上下両端部には、ガイドシューやガイドローラ等のガイド手段(図示せず)が設けられており、このガイド手段がかご用ガイドレール13a及び13bに係合することにより、かご2の昇降方向が案内されている。
【0019】
一方、上記かご室駆動装置20には、かご枠19のかご枠柱21やかご枠下梁23に設けられ、かご床16と所定の間隙を有してかご室18の下方に配置されたかごガイド枠24aと、回動軸が昇降路1の奥行方向となるようにかごガイド枠24aに回動自在に設けられ、外周面にかご室18が載置された複数のガイドローラ25aと、かご枠19又はかごガイド枠24aに設けられたモータ付減速機26と、モータ付減速機26の出力軸に設けられ、かご床16に形成されたラック27に噛み合うピニオン歯車28と、かご枠19のかご枠柱21やかご枠上梁22に設けられ、かご天井と所定の間隙を有してかご室18の上方に配置されたかごガイド枠24bと、回動軸が昇降路1の奥行方向となるようにかごガイド枠24bに回動自在に設けられ、外周面がかご室18の天井面に接触する複数のガイドローラ25bとが備えられている。なお、ピニオン歯車28の回動軸は、ガイドローラ25a及び25bの回動軸と同様に、昇降路1の奥行方向に配置されている。
【0020】
なお、かご3もかご2と同様の構成を有し、かご2と左右対称に配置されて、主索4によって昇降路1内に懸架されている。
【0021】
上記構成を有するかご2は、最下階の停止位置に停止している状態では、鉛直投影面上、かご室18の昇降路壁1c側側面が昇降路壁1cと僅かな間隙を有して対向するように配置され、反対側の昇降路壁1d側側面が、互いに対向位置に配置された両乗場出入口と、機械室5で折り返されて駆動綱車6からかご3に至るかご3側の主索4との間に配置される。そして、互いに対向するようにかご2に形成された2つのかご出入口2aは、かかる配置において各乗場出入口に対向するように、かご室18の昇降路壁1d側に寄って配置されている。また、すれ違いゾーン1e以外の範囲では、かご用ガイドレール13a及び13bが昇降路壁1cに近接して配置されるため、かご2が最下階の停止位置に停止している状態では、かご枠19は、かご室18の昇降路壁1c側に寄って配置されて、かご室18を支持している。なお、29は上記各かご出入口2aを開閉するかごの戸を示している。
【0022】
一方、かご3は、最上階の停止位置に停止している状態では、鉛直投影面上、かご3の昇降路壁1d側側面が昇降路壁1dと僅かな間隙を有して対向するように配置され、反対側の昇降路壁1c側側面が、互いに対向位置に配置された両乗場出入口と、機械室5で折り返されてそらせ車7からかご2に至るかご2側の主索4との間に配置される。そして、かご3に形成された2つのかご出入口3aは、かかる配置において各乗場出入口に対向するように、かご室18の昇降路壁1c側に寄って配置されている。また、すれ違いゾーン1e以外の範囲では、かご用ガイドレール14a及び14bが昇降路壁1dに近接して配置されるため、かご2が最上階の停止位置に停止している状態では、かご枠19は、かご室18の昇降路壁1d側に寄って配置されて、かご室18を支持している。
【0023】
なお、乗場10a及び10bは、最上階及び最下階において、昇降路壁1a及び1bの同じ位置に設けられている。即ち、最上階に設けられた乗場10aは、最下階に設けられた乗場10aの直上部に、また、最上階に設けられた乗場10bは、最下階に設けられた乗場10bの直上部に配置されている。したがって、かご2が最下階の停止位置に、また、かご3が最上階の停止位置に停止している状態では、かご2のかご出入口2aが形成された部分と、かご3のかご出入口3aが設けられた部分とは、鉛直投影面上、重なって配置されている。
【0024】
次に、上記構成を有するエレベータ装置において、駆動綱車6が駆動されることにより、かご2が上方に、かご3が下方にそれぞれ移動して、かご2及びかご3がすれ違いゾーン1eに進入した場合について説明する。ここで、図6はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の他の状態を示す正面図、図7は図6に示すエレベータ装置の要部拡大図、図8は図7に示すエレベータ装置のC−C矢視図、図9は図7に示す一方のかごの要部正面図であり、昇降路1のすれ違いゾーン1eに進入したかご2及びかご3が、すれ違う直前の状態を示したものである。
【0025】
図6乃至図9において、かご2が最下階の停止位置から上方に移動してすれ違いゾーン1eに進入すると、昇降路1の間口方向の幅が広がることにより、かご2及び昇降路壁1c間距離が大きくなる。即ち、かご2と昇降路壁1cとの間に、すれ違いゾーン1e以外の範囲で形成される間隙よりも大きな間隙が形成される。そこで、かご2がすれ違いゾーン1eに下方から進入した後、かご2及び昇降路壁1c間距離が所定値に達するまで、かご2のかご室18を昇降路壁1c側、即ち、外側に移動させる。具体的には、かご2がすれ違いゾーン1eに進入したことを検出した後、かご2のモータ付減速機26を駆動させることによってピニオン歯車28を回転させ、かご室18を自動的に横移動させる。なお、かご室18の横移動方向は、ガイドローラ25a及び25bによって案内される。
【0026】
一方、かご3が最上階の停止位置から下方に移動して、かご2とほぼ同時にすれ違いゾーン1eに進入すると、昇降路1の間口方向の幅が広がることにより、かご3及び昇降路壁1d間距離が大きくなる。即ち、かご3と昇降路壁1dとの間に、すれ違いゾーン1e以外の範囲で形成される間隙よりも大きな間隙が形成される。そこで、かご3がすれ違いゾーン1eに上方から進入した後、かご3及び昇降路壁1d間距離が所定値に達するまで、かご3のかご室18を昇降路壁1d側、即ち、外側に移動させる。具体的には、かご3がすれ違いゾーン1eに進入したことを検出した後、かご3のモータ付減速機26を駆動させることによってピニオン歯車28を回転させ、かご室18を自動的に横移動させる。なお、かご室18の横移動方向は、ガイドローラ25a及び25bによって案内される。
【0027】
このように、かご2及びかご3は、すれ違いゾーン1eに進入した後で、且つ、すれ違う前に、すれ違い時の衝突を回避するため、それぞれ外側に、即ち、鉛直投影面上互いに離れる方向に自動的に横移動される。そして、かご2とかご3との間に鉛直投影面上所定の間隙が形成されて並設された状態となった後、かご2とかご3とが同じ高さに配置されて互いの側方を通過し、すれ違いが実施される。また、すれ違い完了後、かご2とかご3とを横移動前の状態に復帰させるため、かご2及びかご3を、それぞれ内側に、即ち、鉛直投影面上互いに接近して干渉する方向に横移動させる。具体的には、すれ違いが完了してかご2とかご3とが互いに干渉しない高さまで移動したことを検出した後、かご2及びかご3のモータ付減速機26を駆動させることによってピニオン歯車28を回転させ、各かご室18を自動的に横移動させる。そして、かご2及びかご3が元の配置に復帰した後、かご2とかご3とは、それぞれすれ違いゾーン1eを通過して、かご2が最上階の停止位置に、また、かご3が最下階の停止位置に向かって移動する。
【0028】
なお、鉛直投影面積の大きなすれ違いゾーン1eの上下方向の距離を短縮して昇降路1の省スペース化をさらに実現するため、かご2とかご3とがすれ違いゾーン1eに進入する際、及び、すれ違いゾーン1eを通過する際に、かご2及びかご3を減速又は停止させて、かご室18を横移動させる時間を十分に確保するように構成しても良い。
【0029】
ここで、図10はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の他の状態を示す要部正面図、図11は図10に示すエレベータ装置のD−D矢視図であり、かご2がすれ違いゾーン1eを通過した後、最上階の停止位置に停止した状態を示したものである。図10及び図11において、最上階の停止位置に停止するかご2は、最下階の停止位置に停止していた状態と同じ配置及び構成を有している。即ち、かご2は、鉛直投影面上、かご室18の昇降路壁1c側側面が昇降路壁1cと僅かな間隙を有して対向するように配置され、反対側の昇降路壁1d側側面が、互いに対向位置に配置された両乗場出入口と、かご3側の主索4との間に配置される。そして、かご出入口2aは、かかる配置において各乗場出入口に対向するように配置されている。また、また、すれ違いゾーン1e以外の範囲では、かご用ガイドレール13a及び13bが昇降路壁1cに近接して配置されるため、かご2が最上階の停止位置に停止している状態では、かご枠19は、かご室18の昇降路壁1c側に寄って配置されて、かご室18を支持している。なお、図示されていないが、最下階の停止位置に停止するかご3も、かご2と同様に、最上階の停止位置に停止していた状態と同じ配置及び構成を有している。したがって、かご2が最上階の停止位置に、また、かご3が最下階の停止位置に停止している状態では、かご2のかご出入口2aが形成された部分と、かご3のかご出入口3aが設けられた部分とは、鉛直投影面上、重なって配置されている。
【0030】
なお、かご2及びかご3がすれ違いゾーン1eにおいて衝突を回避するために横移動する前後においては、かご2とかご3とは、鉛直投影面上、常時同じ配置を有している。したがって、かご2とかご3とが、すれ違いゾーン1e以外の範囲を昇降する間、即ち、最下階の停止位置及びすれ違いゾーン1e下端間を昇降する間、並びに、すれ違いゾーン1e上端及び最上階の停止位置間を昇降する間は、かご2のかご出入口2aが形成された部分と、かご3のかご出入口3aが設けられた部分とは、互いに鉛直投影面上常時重なって配置される。
【0031】
なお、上述したエレベータ装置は、その構成及び昇降中の動作等が従来のエレベータ装置とは異なる、即ち、かご2及びかご3が同一昇降路1内を連携運転されるとともに、かご室18が昇降中に水平方向にも移動するように構成されているため、当該エレベータ装置の構成及び動作等を乗客に対して案内することにより、より安全で快適なサービスを提供することができる。そこで、以下にエレベータサービスの向上を図るための手段について説明する。
【0032】
図12はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ乗場への通路を示す図、図13はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ乗場を示す図、図14はこの発明の実施の形態1におけるエレベータのかご室内を示す図、図15はこの発明の実施の形態1における案内パネルを示す図、図16はこの発明の実施の形態1における待ち時間表示器を示す図である。
【0033】
図12乃至図16において、エレベータ乗場10a及び10bに通じる通路の壁面30や、乗場10a及び10bの壁面31、かご室18の室内壁面32には、図15に示す案内パネル33が備えられている。この案内パネル33は、当該エレベータ装置の構成及び動作等といった特徴や、かご2及びかご3の昇降時及び停止時における注意事項等が図解されたものであり、例えば、かご2及びかご3が同一昇降路1内を連携運転されるとともに、かご2とかご3との衝突を回避するため、かご室18が昇降中に水平方向に移動する旨等が簡潔に記載されている。また、乗場10a及び10bが各フロアにおいて乗車専用と降車専用とに分かれている場合には、その旨、並びに、乗車及び降車方法(手順)についても記載されている。
【0034】
なお、34はエレベータ乗場10a及び10bに通じる通路の壁面30や、乗場10a及び10bの壁面31に設けられ、案内パネル33で案内されている内容等を音声によって乗客に報知するスピーカ、35は乗場10a及び10bの壁面31に設けられたインジケータ、36は壁面31の乗場出入口側方に設けられた乗場ボタン、37は壁面31に設けられ、乗場10aでかご2又はかご3の到着を待っている利用者に対してその待ち時間を表示する待ち時間表示器である。
【0035】
ここで、上記スピーカ34は、図示されていないが、かご室18内にも備えられており、例えば、かご2及びかご3の停止中は案内パネル33で案内されている内容等を音声によってかご室18内の乗客に報知し、かご2及びかご3がすれ違いゾーン1eに差し掛かった際には、かご2及びかご3の移動速度が変化する旨やかご室18が横移動する旨の案内を音声によってかご室18内の乗客に対して報知する。また、上記待ち時間表示器37は、乗場10aにいる利用者に対してかご2又はかご3が到着するまでの待ち時間を表示することができれば、その構成は如何なるものでも良く、例えば、LEDによって砂時計を表示するように構成しても同様の効果を奏する。なお、上記エレベータ装置は、途中階が非停止階であるため、最下階及び最上階の停止位置間を移動するのに要する時間が一定である。そのため、上記待ち時間表示器37と同様の構成のものをかご室18内に設置して、かご室18内の乗客に対して、到着までの時間を表示するようにしても良い。また、実施の形態1では、各壁面30乃至32等に備えられた案内パネル33やスピーカ34によって、当該エレベータ装置の構成や動作等を利用者に対して案内しているが、特にこれらの構成に限定されるものではなく、例えば、液晶画面等の他の案内手段によって当該エレベータ装置の構成や動作等を利用者に対して案内しても良い。
【0036】
次に、上記構成を有するエレベータ装置の実際のサービス手順を、図17(a)乃至(f)に基づいて説明する。例えば、展望タワーに備えられたエレベータ装置のように最上階が目的階であるエレベータ装置では、かご2が最下階の停止位置に、かご3が最上階の停止位置に停止している場合、かご2が乗客を目的階に運搬する往路かご、かご3が目的階から乗客を他方の乗場へ運搬する復路かごとなる。そして、最下階の乗場10aでは、スピーカ34によってかご2に乗車して待機する旨の案内を報知することにより、かご2に上りの乗客を乗せ、その後、かごの戸29及び乗場の戸12の戸閉動作が行われる。また、最上階の乗場10aでも同様に、かご3に下りの乗客を乗せた後、戸閉される。そして、かご2及びかご3の戸閉完了後、駆動綱車6が駆動されて、かご2が上昇、かご3が下降し、かご2とかご3とが連携して移動される。
【0037】
かご2及びかご3が移動を開始してから所定時間経過後、かご2及びかご3がすれ違いゾーン1eに差し掛かる前に、かご2及びかご3のすれ違いが行われる旨が、スピーカ34からかご室18内の乗客に対して報知される。そして、かご2及びかご3が、すれ違いゾーン1eの所定距離手前、若しくは、すれ違いゾーン1eに達すると、すれ違いに備えて昇降速度が定格速度から減速されるとともに、各かご室18が外側に移動される。なお、昇降路1の省スペース化のためにすれ違いゾーン1eに十分な上下方向の距離が確保されていない場合には、かご2及びかご3を停止させた後、各かご室18を横移動させるように構成しても良い。そして、かご2とかご3とのすれ違いが完了した後、各かご室18を内側に移動させて横移動前の状態に戻されると、昇降速度が定格速度まで加速される。なお、かご2及びかご3の上記各動作、即ち、昇降速度の増減やかご室18の横移動を実施する際には、かご室18内の乗客に適切な対応を求めるべく、かご室18に備えられたスピーカ34から各動作を実施する旨の案内を実施するようにしても良い。
【0038】
そして、かご2が最上階の停止位置に、かご3が最下階の停止位置に到着すると、降車側の乗場10bに通じるかごの戸29及び乗場の戸12が開放されて、各かご室18内の乗客を乗場10bに降ろす。
【0039】
上記サービス手順により、最下階の乗場10aにいた乗客を最上階の乗場10bに、最上階の乗場10aにいた乗客を最下階の乗場10bに運搬すると、今度は、かご3が乗客を目的階に運搬する往路かご、かご2が目的階から乗客を他方の乗場へ運搬する復路かごとなる。そして、上記サービス手順と同様の手順により、最下階の乗場10aにいる乗客を最上階の乗場10bに、最上階の乗場10aにいる乗客を最下階の乗場10bに運搬する。即ち、最下階及び最上階の各乗場10aにおいて、かご2又はかご3に乗車して待機する旨の案内がスピーカ34から報知され、乗客がかご2及びかご3に乗車した後、戸閉される。そして、戸閉完了後、かご2及びかご3を連携して移動させ、かご3を上昇、かご2を下降させる。
【0040】
かご2及びかご3が移動を開始してから所定時間経過後、かご2及びかご3がすれ違いゾーン1eに差し掛かる前に、かご2及びかご3のすれ違いが行われる旨が、スピーカ34からかご室18内の乗客に対して報知される。そして、かご2及びかご3が所定高さに達した後、昇降速度の減速、各かご室18の外側への横移動、すれ違い、各かご室18の内側への横移動、昇降速度の加速の各動作が順次実施される。なお、かご2及びかご3の上記各動作を実施する際には、かご室18内の乗客に適切な対応を求めるべく、かご室18に備えられたスピーカ34から各動作を実施する旨の案内を実施するようにしても良い。
【0041】
そして、かご3が最上階の停止位置に、かご2が最下階の停止位置に到着すると、乗場10bに通じるかごの戸29及び乗車の戸12が開放されて、各かご室18内の乗客を乗場10bに降ろす。以上の動作により、かご2が最下階の乗場に、かご3が最上階の乗場にそれぞれ停止して最初の状態((a)の状態)に戻るため、上述の手順を繰り返してその後の乗客の運搬を継続する。
【0042】
この発明の実施の形態1によれば、1つの昇降路1内を互いに逆方向に昇降する2つのかご2及び3が懸架手段によって釣瓶式に懸架されたエレベータ装置においても、簡単な構成により、昇降路1の省スペース化を実現することができる。即ち、昇降路1のうち、かご2とかご3とが衝突を回避するための動作を行うのに必要な範囲のみ、即ち、すれ違いゾーン1eのみ、かご2とかご3とが互いに干渉せずに並設できる所定の鉛直投影面積を確保すれば良く、昇降路1のその他の範囲は、かご2又はかご3の有する鉛直投影面積と、かご2の昇降路壁1d側、及び、かご3の昇降路壁1c側に形成されて主索4が通過する、かご2又はかご3の有する鉛直投影面積よりも小さな所定の鉛直投影面積とを確保するのみで良い。したがって、昇降路1の上下に渡って、かご2台分の昇降路スペース、即ち、かご2とかご3とが互いに干渉せずに並設できる鉛直投影面積を確保する必要はなく、昇降路1の占有スペースを大幅に削減させることが可能となる。
【0043】
また、すれ違いゾーン1eにおいて、各かご室18を横移動させるため、簡単な構成でかご2とかご3との衝突を回避することができる。なお、各かご室18のみを横移動させて衝突を回避するため、かご2及びかご3が昇降路1の如何なる高さに配置されている場合でも、鉛直投影面上、かご枠19の配置に変動は生じない。このため、かご用ガイドレール13a及び13b、14a及び14bを、それぞれ昇降路1内の上下に渡って一直線状に配置することができ、その据付及び調整において、作業効率を悪化させる恐れもない。また、鉛直投影面上、主索4の配置にも変動が生じることはなく、主索4と昇降路壁1c及び1dとが接触するようなことも防止できる。
【0044】
また、かご2及びかご3の各かご室18に形成されたかご出入口は、かご2とかご3とが同じ乗場(例えば、最上階に設けられた乗場)に停止した際に、同一の乗場出入口に対向して配置される。このため、各かご2及び3に対して別の乗場出入口を設ける必要がなく、安価に構成でき、さらに省スペース化にも貢献し得る。
【0045】
また、当該エレベータ装置は、かご室18が昇降中に水平移動するように構成されているが、種々の案内手段によって、当該エレベータ装置の構成及び動作等が乗客に対して報知されているため、乗客に不安感を与えたり、咄嗟の動作を要求したりすることもなく、快適な運行サービスを提供することが可能となる。なお、待ち時間表示器37を壁面31や32に備えることにより、乗客のイライラ感を解消することもできる。
【0046】
なお、実施の形態1においては、かご2及びかご3の各かご室18が互いに水平方向に移動可能に構成されているが、かご2及びかご3の何れか一方のかご室18を水平方向に移動可能に構成し、すれ違いゾーン1eにおいて、この一方のかご2又は3のかご室18のみ、衝突を回避するために横移動させるように構成しても、上記と同様の効果を奏することは可能である。
【0047】
また、実施の形態1におけるエレベータ装置は、すれ違いゾーン1e以外の範囲が長い場合に、より昇降路1の省スペース化を実現することができるため、昇降行程の長いエレベータ装置には、特に有効な手段となる。しかし、昇降行程の長いエレベータ装置では、必然的に、懸架手段の長さが長くなるため、比較的短期間において懸架手段の伸びが所定値に達してしまう。したがって、懸架手段の伸びが大きくなった場合には、かご2及びかご3の床面と乗場10a及び10bの床面との間に生じる段差が顕著となり、乗降時に乗客がこの段差に躓いてしまうようなことが起こり得る。そこで、以下において、当該エレベータ装置に備えられた、かご2及びかご3の停止位置の異常を検出する停止位置検出装置と、この停止位置検出手段によって停止位置の異常が検出された場合に、懸架手段に生じる伸びを吸収することにより、上記段差を所定高さ内に収めてこの段差を解消する段差解消手段とについて説明する。
【0048】
図18はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の要部断面図、図19は図18に示すエレベータ装置のE部詳細図であり、例えば、かご2が最下階の停止位置に停止した状態を示したものである。図18及び図19において、38は乗場の戸12や乗場三方枠11等を備えて乗場出入口が形成され、乗場10aに対して上下方向に所定距離移動自在に設けられた乗場出入口装置、39は昇降路1側縁部が乗場出入口装置38に回動自在に、また、乗場10a側縁部が乗場10aの床部40に回動自在に設けられることにより、乗場出入口装置38と乗場10aの床部40との高さに追従して、乗場出入口装置38の床面と床部40の床面とを一続きに形成する乗場可動床である。
【0049】
ここで、上記乗場出入口装置38には、乗場三方枠11が立設され、その昇降路1側縁部に乗場の戸12の下端部を案内する敷居溝41aが設けられるとともに、その上面が乗場出入口装置38の床面を形成する床部41と、床部41から下方に突設されたガイド42aと、回動軸が昇降路1の間口方向に水平になるように昇降路壁1a等の昇路固定体に回動自在に設けられ、ガイド42aに両側から接触して、ガイド42aを上下方向に案内するガイドローラ43aと、昇降路固定体に設けられたモータ付減速機44と、モータ付減速機44の出力軸に設けられ、ガイド42aに形成されたラック45に噛み合うピニオン歯車46と、ガイド42aから昇降路1の内側に突出するように設けられ、かご2に設けられたカム47に係合する位置に配置された位置スイッチ48と、乗場三方枠11から上方に突設されたガイド42bと、回動軸が昇降路1の間口方向に水平になるように昇降路固定体に回動自在に設けられ、ガイド42bに両側から接触して、ガイド42bを上下方向に案内するガイドローラ43bとが備えられている。なお、乗場の戸12は、乗場三方枠11の上方に設けられた桁(図示せず)に支持されている。また、49は床部41の昇降路1側端部に垂設され、乗場出入口装置38の床面とかご2の床面との間に段差が生じた場合に、乗客の足等が挟まれたりすることを防止する乗場側スカートガードを示している。
【0050】
かかる構成を有するエレベータ装置では、かご2が最下階の停止位置に停止すると、かご2に備えられた位置スイッチ48により、かご2の停止位置が適切であるかが検出される。即ち、図18及び図19に示すものでは、かご2が停止位置に停止した際に、上下に配置された2つの位置スイッチ48のうち、何れか一方の検出子がカム47によって押し込まれると、かご2の停止位置の異常が検出される。ここで、主索4の伸びが所定値に達して、位置スイッチ48によって停止位置の異常が検出されると、モータ付減速機44が駆動されることによってピニオン歯車46が回転し、乗場出入口装置38の床面とかご2の床面との間に生じた段差を解消する方向に乗場出入口装置38が昇降される。
【0051】
このように、段差解消手段を乗場10a及び10bに備えることにより、主索4に伸びが生じた場合でも、乗場出入口装置38の床面とかご2の床面との間に生じる段差を常時所定高さ以下に維持することができる。なお、かご2やかご3の停止位置の異常を検出する停止位置検出装置は、実施の形態1に示すようなカム47及び位置スイッチ48に限られるものではなく、同様の効果を奏するものであれば、如何なる構成のものでも構わない。また、停止位置検出手段によって停止位置の異常が検出された場合に、乗場出入口装置38を上下方向に移動させる乗場出入口装置駆動手段は、上記モータ付減速機44、ピニオン歯車46、ガイド42aに設けられたラック45から構成される。
【0052】
ここで、実施の形態1における段差解消手段は、ガイド42aに形成されたラック45の範囲で乗場出入口装置38を上下に移動させることができる。したがって、主索4の伸びが大きくなって当該段差解消手段により解消できる段差の範囲を超えてしまった場合には、従来通り、主索4の端部に連結されたロープシャックル50のネジ部を締め込んだり、主索4を切り詰めたりする等の作業により、段差を解消する必要がある。しかし、当該段差解消手段を採用することにより、上記作業が必要となる間隔を長期化させて、作業効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0053】
実施の形態2.
図20はこの発明の実施の形態2におけるエレベータ装置の要部正面図、図21はこの発明の実施の形態2における段差解消手段の動作を示す図である。図20及び図21において、実施の形態2における段差解消手段には、機械室5の機械台8に設けられた油圧ジャッキ51と、その中間部が機械台8に軸52を介して回動自在に設けられるとともに、一端部が油圧ジャッキ51の可動部に、他端部が上下方向に移動自在に設けられたそらせ車7の回動軸に回動自在に連結された可動アーム53とが備えられている。
【0054】
そして、かかる構成を有する段差解消手段では、かご2の停止位置を検出する停止位置検出装置(図示せず)によって、かご2の停止位置の異常が検出されると、油圧ジャッキ51が動作されることによって可動アーム53が駆動され、乗場10a及び10bの床面とかご2の床面との間に生じた段差を解消するように、そらせ車7が上方に移動される。なお、上記はかご2の停止位置の異常が検出された場合の動作であるが、停止位置検出装置によってかご3の停止位置の異常が検出された場合にも、同様の動作が行われる。
【0055】
この発明の実施の形態2によれば、実施の形態1における乗場出入口装置38のような段差解消手段を各乗場10a及び10bに備える必要がなく、より簡単な構成により、乗場10a及び10bの床面とかご2及び3の床面との間に生じる段差を解消することが可能となる。なお、停止位置検出手段によって停止位置の異常が検出された場合に、そらせ車7を上下方向に移動させるそらせ車駆動手段は、上記油圧ジャッキ51、軸52、可動アーム53から構成される。その他の構成及び効果は、実施の形態1と同様である。
【0056】
実施の形態3.
図22はこの発明の実施の形態3におけるエレベータ装置の要部正面図、図23は図22に示すエレベータ装置のF−F矢視図、図24は図23に示すエレベータ装置の要部詳細図である。図22乃至図24において、実施の形態3における段差解消手段には、かご3のかご枠上梁22に軸54を介して回動自在に設けられ、主索4の端部が巻き付けられた巻取ドラム55と、この巻取ドラム55に連動して回動するリンクギア56と、かご枠上梁22に設けられたモータ付減速機57と、モータ付減速機57の出力軸に設けられ、リンクギア56に噛み合う歯車58とが備えられている。
【0057】
そして、かかる構成を有する段差解消手段では、かご3の停止位置を検出する停止位置検出装置(図示せず)によって、かご3の停止位置の異常が検出されると、モータ付減速機57が駆動されることによって巻取ドラム55が回転し、乗場10a及び10bの床面とかご3の床面との間に生じた段差を解消するように、主索4の端部が巻取ドラム55に巻き取られる。なお、上記はかご3の停止位置の異常が検出された場合の動作であるが、停止位置検出装置によってかご2の停止位置の異常が検出された場合にも、同様の動作が行われる。
【0058】
この発明の実施の形態3によれば、主索4を巻取ドラム55で巻き取ることによってかご2及びかご3の高さを調節して、上記段差を解消するため、主索4の伸びが大きい場合でも容易に対応することができる。なお、上記段差解消手段がかご2に備えられていても同様の効果を奏することは言うまでもない。また、停止位置検出手段によって停止位置の異常が検出された場合に、巻取ドラム55を回動させて主索4を巻き取る巻取ドラム駆動手段は、上記軸54、リンクギア56、モータ付減速機57、歯車58から構成される。その他の構成及び効果は、実施の形態1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の正面図である。
【図2】図1に示すエレベータ装置の要部正面図である。
【図3】図2に示すエレベータ装置のA−A矢視図である。
【図4】この発明の実施の形態1における一方のかごを示す正面図である。
【図5】図4に示すかごのB部詳細図である。
【図6】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の他の状態を示す正面図である。
【図7】図6に示すエレベータ装置の要部拡大図である。
【図8】図7に示すエレベータ装置のC−C矢視図である。
【図9】図7に示す一方のかごの要部正面図である。
【図10】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の他の状態を示す要部正面図である。
【図11】図10に示すエレベータ装置のD−D矢視図である。
【図12】この発明の実施の形態1におけるエレベータ乗場への通路を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態1におけるエレベータ乗場を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態1におけるエレベータのかご室内を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態1における案内パネルを示す図である。
【図16】この発明の実施の形態1における待ち時間表示器を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のサービス手順を示す図である。
【図18】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の要部断面図である。
【図19】図18に示すエレベータ装置のE部詳細図である。
【図20】この発明の実施の形態2におけるエレベータ装置の要部正面図である。
【図21】この発明の実施の形態2における段差解消手段の動作を示す図である。
【図22】この発明の実施の形態3におけるエレベータ装置の要部正面図である。
【図23】図22に示すエレベータ装置のF−F矢視図である。
【図24】図23に示すエレベータ装置の要部詳細図である。
【符号の説明】
【0060】
1 昇降路、 1a 昇降路壁、 1b 昇降路壁、 1c 昇降路壁、
1d 昇降路壁、 1e すれ違いゾーン、 2 かご、 2a かご出入口、
3 かご、 3a かご出入口、 4 主索、 5 機械室、 6 駆動綱車、
7 そらせ車、 8 機械台、 9 制御装置、 10a 乗場、 10b 乗場、
11 乗場三方枠、 12 乗場の戸、 13a かご用ガイドレール、
13b かご用ガイドレール、 14a かご用ガイドレール、
14b かご用ガイドレール、 15a 取付ブラケット、
15b 取付ブラケット、 16 かご床、 17 かご壁、 18 かご室、
19 かご枠、 20 かご室駆動装置、 21 かご枠柱、 22 かご枠上梁、
23 かご枠下梁、 24a かごガイド枠、 24b かごガイド枠、
25a ガイドローラ、 25b ガイドローラ、 26 モータ付減速機、
27 ラック、 28 ピニオン歯車、 29 かごの戸、 30 壁面、
31 壁面、 32 壁面、 33 案内パネル、 34 スピーカ、
35 インジケータ、 36 乗場ボタン、 37 待ち時間表示器、
38 乗場出入口装置、 39 乗場可動床、 40 床部、 41 床部、
41a 敷居溝、 42a ガイド、 42b ガイド、 43a ガイドローラ、
43b ガイドローラ、 44 モータ付減速機、 45 ラック、
46 ピニオン歯車、 47 カム、 48 位置スイッチ、
49 乗場側スカートガード、 50 ロープシャックル 51 油圧ジャッキ、
52 軸、 53 可動アーム、 54 軸、 55 巻取ドラム、
56 リンクギア、 57 モータ付減速機、 58 歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ昇降路内に備えられた第1のかご及び第2のかごが、懸架手段によって釣瓶式に懸架されて、互いに逆方向に昇降するエレベータ装置において、
前記第1のかご及び前記第2のかごの一方は、
エレベータの乗客が乗るかご室と、
前記懸架手段によって懸架され、前記かご室を水平方向に移動可能に支持する支持手段と、を備え、
前記昇降路のうち、すれ違いゾーンは、前記第1のかごと前記第2のかごとが互いに干渉せずに並設できる所定の鉛直投影面積を有し、前記すれ違いゾーン以外の範囲は、前記すれ違いゾーンが有する鉛直投影面積よりも小さな鉛直投影面積を有することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
一方のかごのかご室は、昇降路のすれ違いゾーンにおいて、第1のかごと第2のかごとがすれ違う前に、鉛直投影面上前記他方のかごから離れる方向に横移動し、すれ違い完了後に、鉛直投影面上前記他方のかごに接近する方向に横移動することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
エレベータ昇降路内に備えられた第1のかご及び第2のかごが、懸架手段によって釣瓶式に懸架されて、互いに逆方向に昇降するエレベータ装置において、
前記第1のかご及び前記第2のかごは、
エレベータの乗客が乗るかご室と、
前記懸架手段によって懸架され、前記かご室を水平方向に移動可能に支持する支持手段と、をそれぞれ備え、
前記昇降路のうち、すれ違いゾーンは、前記第1のかごと前記第2のかごとが互いに干渉せずに並設できる所定の鉛直投影面積を有し、前記すれ違いゾーン以外の範囲は、前記すれ違いゾーンが有する鉛直投影面積よりも小さな鉛直投影面積を有することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項4】
第1のかご及び第2のかごの各かご室は、昇降路のすれ違いゾーンにおいて、前記第1のかごと前記第2のかごとがすれ違う前に、鉛直投影面上互いに離れる方向に横移動し、すれ違い完了後に、鉛直投影面上互いに接近する方向に横移動することを特徴とする請求項3に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
第1のかご及び第2のかごの各かご室の一部は、昇降路のすれ違いゾーン以外の範囲において、互いに鉛直投影面上重なって配置されることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のエレベータ装置。
【請求項6】
第1のかご及び第2のかごは、互いにすれ違う前に減速され、すれ違い完了後に加速されることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のエレベータ装置。
【請求項7】
昇降路内に一直線状に立設され、第1のかごの昇降方向を案内する第1のかご用ガイドレールと、
前記昇降路内に一直線状に立設され、第2のかごの昇降方向を案内する第2のかご用ガイドレールと、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載のエレベータ装置。
【請求項8】
第1のかご及び第2のかごの各かご室に形成されたかご出入口は、前記第1のかごと前記第2のかごとが同じ乗場に停止した際に、同一の乗場出入口に対向して配置されることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載のエレベータ装置。
【請求項9】
第1のかご及び第2のかごの各かご室には、それぞれ2つのかご出入口が対向して形成されたことを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載のエレベータ装置。
【請求項10】
第1のかご及び第2のかごの停止位置の異常を検出する停止位置検出手段と、
前記停止位置検出手段によって停止位置の異常が検出された場合に、前記第1のかご及び前記第2のかごの床面と乗場の床面との間に形成された段差を所定高さ内に収める段差解消手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載のエレベータ装置。
【請求項11】
段差解消手段は、
乗場出入口が形成され、エレベータ乗場に上下方向に移動自在に設けられた乗場出入口装置と、
停止位置検出手段によって停止位置の異常が検出された場合に、前記乗場出入口装置を上下方向に移動させる乗場出入口装置駆動手段と、
前記乗場出入口装置及び前記乗場間に設けられ、前記乗場出入口装置の床面及び前記乗場の床面を一続きに形成する乗場可動床と、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載のエレベータ装置
【請求項12】
段差解消手段は、
上下方向に移動自在に設けられ、懸架手段の一部が巻き掛けられたそらせ車と、
停止位置検出手段によって停止位置の異常が検出された場合に、前記そらせ車を上下方向に移動させるそらせ車駆動手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載のエレベータ装置。
【請求項13】
段差解消手段は、
懸架手段の端部を巻き取る巻取ドラムと、
停止位置検出手段によって停止位置の異常が検出された場合に、前記巻取ドラムを回動させて前記懸架手段を巻き取る巻取ドラム駆動手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載のエレベータ装置。
【請求項14】
第1のかご及び第2のかご、エレベータ乗場への通路、エレベータ乗場の少なくとも何れか一つに、エレベータ利用者に対して、エレベータの構成及び動作を案内する案内手段が備えられたことを特徴とする請求項1から請求項13の何れかに記載のエレベータ装置。
【請求項15】
エレベータ乗場に、第1のかご又は第2のかごが到着するまでの時間を表示する待ち時間表示器が備えられたことを特徴とする請求項1から請求項14の何れかに記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−204157(P2007−204157A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21380(P2006−21380)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】