説明

エレベータ

【課題】ユニットのディスクブレーキを装備する場合に比べて、駆動軸に沿う方向に寸法が小さい巻上機を備えるエレベータを提供する。
【解決手段】エレベータ1は、昇降路5内に乗籠2および釣合錘3をつるべ式にメインロープ6で吊下げて巻上機4で駆動するエレベータである。このエレベータ1の巻上機4は、メインロープ6が巻き掛けられるメインシーブ41と、メインシーブ41に連結される駆動軸42と、駆動軸42を支持するベアリング43と、ベアリング43が組み込まれたハウジング44と、駆動軸42に垂直にディスク712(722)が配置されてバネ715(725)による制動力を電磁気力で解放するディスクブレーキ71(72)とを備える。このディスクブレーキ71(72)は、ベアリング43の外周のハウジング44内に組み込まれ電磁気力を発生するコイル711(721)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、巻上機にディスクブレーキを備えるエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、巻上機の駆動軸にクラッチ式のディスクブレーキを備えている。このディスクブレーキは、独立したユニットになっており、巻上機の駆動軸に沿う方向に並べて設置されている。エレベータに採用されるディスクブレーキは、アーマチュアをディスクに押し当てる力をバネによって発生させて制動力を得ており、巻上機の駆動軸が回転している間は、電磁石のコイルに電流を流してアーマチュアをディスクから引き離している。
【0003】
ディスクブレーキの制動力を減らすことなく駆動軸に沿う方向に巻上機の寸法を小さくするために、1つのディスクに対してアーマチュア及び電磁石のコイルを複数に分割したものがある。周方向に2つの半円弧に分割される場合と、半径方向に2つの同心円に分割される場合とが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−525400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ディスクブレーキはユニットになっているため、駆動軸に沿う方向のユニットの寸法は、構造上の強度を考慮すると小さくするのにも限界がある。そのため、駆動軸に沿う方向にディスクブレーキが装着された巻上機の寸法によって、エレベータのメインロープのローピングや巻上機のレイアウトが制限される場合が生じる。ディスクブレーキのユニットを2つ設置する場合は、ユニットの数が増えた分だけ巻上機の寸法が大きくなる。その結果、さらにエレベータの昇降路内における様々な機器のレイアウトの制約を受ける。
【0006】
そこで本発明は、ユニットのディスクブレーキを装備する場合に比べて、駆動軸に沿う方向に寸法が小さい巻上機を備えるエレベータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態のエレベータは、昇降路内に乗籠および釣合錘をつるべ式にメインロープで吊下げて巻上機で駆動するエレベータである。このエレベータの巻上機は、メインロープが巻き掛けられるメインシーブと、メインシーブに連結される駆動軸と、駆動軸を支持するベアリングと、ベアリングが組み込まれたハウジングと、駆動軸に垂直にディスクが配置されてバネによる制動力を電磁気力で解放するディスクブレーキとを備える。このディスクブレーキは、ベアリングの外周のハウジング内に組み込まれ電磁気力を発生するコイルを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態のエレベータを示す斜視図。
【図2】図1に示したエレベータの巻上機の断面図。
【図3】第2の実施形態のエレベータの巻上機の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の実施形態のエレベータ1について、図1および図2を参照して説明する。図1に示すエレベータ1は、乗籠2と釣合錘3と巻上機4とを昇降路5内に備える。乗籠2と釣合錘3は、それぞれ籠用のガイドレール21および錘用のガイドレール31に案内され、メインロープ6によって昇降路5内につるべ式に吊下げられている。巻上機4は、図1に示すように昇降路5の上部に設置され、図2に示すようにメインシーブ41と、駆動軸42と、ベアリング43と、ハウジング44と、第1のディスクブレーキ71と、第2のディスクブレーキ72とを備える。
【0010】
メインシーブ41は、メインロープ6が巻き掛けられ、駆動軸42に連結される。ベアリング43は、ハウジング44に組み込まれ、駆動軸42を支持している。第1のディスクブレーキ71および第2のディスクブレーキ72は、メインシーブ41と反対側に設置されている。第1のディスクブレーキ71は、第1のコイル711と第1のディスク712とエンドプレート703と第1のアーマチュア714と第1のバネ715とを含む。また第2のディスクブレーキ72は、第2のコイル721と第2のディスク722とエンドプレート703と第2のアーマチュア724と第2のバネ725とを含む。図2に示すように第1の実施形態において第1のディスクブレーキ71と第2のディスクブレーキ72は、1つのエンドプレート703を共有している。
【0011】
第1のコイル711は、図2に示すようにベアリング43の外周のハウジング44内に組み込まれる。より具体的には、駆動軸42の半径方向にベアリング43にオーバラップする位置に第1のコイル711が配置されている。第1のディスク712は、駆動軸42の端部に形成されたスプライン421によって連結される。第1のディスク712は、駆動軸42とともに回転し、かつ、駆動軸42に沿う方向に変位する。エンドプレート703は、ハウジング44に対して第1のディスク712を隔てて配置され、駆動軸42と平行に配置されたロッド704によってハウジング44に固定されている。
【0012】
第1のアーマチュア714は、第1のディスク712とハウジング44との間に配置され、エンドプレート703を支持するロッド704に装着さている。この第1のアーマチュア714は、駆動軸42に沿う方向に変位可能であり、回転方向に拘束されている。第1のバネ715は、第1のアーマチュア714とハウジング44との間に装着される圧縮コイルバネであって、第1のアーマチュア714をエンドプレート703に向かって付勢する。
【0013】
また、第2のコイル721は、図2に示したようにエンドプレート703からハウジング44と反対側に延びたロッド705の端部に固定されたエンドブロック726に組み込まれている。第2のディスク722は、エンドプレート703とエンドブロック726との間に配置され、駆動軸42の端部に形成されたスプライン421によって連結されている。したがって、第2のディスク722は、駆動軸42とともに回転し、かつ駆動軸42に沿う方向に変位する。第2のアーマチュア724は、第2のディスク722とエンドブロック726との間に配置され、エンドプレート703からエンドブロック726までの間に延びるロッド705に装着されている。したがって、第2のアーマチュア724は、駆動軸42に沿う方向へ変位可能であり、回転方向に拘束されている。第2のバネ725は、第2のアーマチュア724とエンドブロック726との間に装着される圧縮コイルバネであって、第2のアーマチュア724をエンドプレート703に向かって付勢する。
【0014】
以上のように構成された第1のディスクブレーキ71は、第1のバネ715の力で第1のアーマチュア714とエンドプレート703で第1のディスクを挟み、駆動軸42を保持する制動力を発生する。また、第2のディスクブレーキ72は、第2のバネ725の力で、第2のアーマチュア724とエンドブロック726で第2のディスク722を挟み、駆動軸42を保持する制動力を発生する。第1のディスクブレーキ71において第1のコイル711に電流が流れると、第1のアーマチュア714が第1のバネ715の力に抗ってハウジング44に引き付けられ、第1のディスク712が開放される。第2のディスクブレーキ72において第2のコイル721に電流が流れると、第2のアーマチュア724が第2のバネ725の力に抗ってエンドブロック726に引き付けられ、第2のディスク722が開放される。
【0015】
このように第1のディスクブレーキ71および第2のディスクブレーキ72は、第1のコイル711および第2のコイル721にそれぞれ電流が流れている間、開放状態であり、電流が遮断されると図2に示す制動状態になる。
【0016】
第1の実施形態のエレベータ1は、巻上機4に装備されるブレーキとして第1のディスクブレーキ71および第2のディスクブレーキ72を駆動軸42に沿う方向に並べて配置している。このとき、第1のディスクブレーキ71と第2のディスクブレーキ72の少なくとも一方、第1の実施形態の場合、第1のディスクブレーキ71の第1のコイル711が巻上機4の駆動軸42を支持するベアリング43の外周の位置に配置さており、その分だけ駆動軸42に沿う方向に巻上機4の寸法が小さくなる。
【0017】
また、第1の実施形態の場合、第1のディスクブレーキ71と第2のディスクブレーキ72は、エンドプレート703を共有しているので、その分だけ構造が簡略になるとともに、エンドプレート703に対して第1のバネ715の力と第2のバネ725の力が相殺するように作用するので、構造的にもバランスがよい。なお、巻上機4の制動力として第1のディスクブレーキ71のみでも十分に足りる場合は、第2のディスクブレーキ72を装備しなくてもよい。
【0018】
第2の実施形態のエレベータ1について、図3を参照して説明する。第1の実施形態のエレベータ1と同じ機能を有する構成は、図中において同一の符号を付し、第1の実施形態における対応する記載を参酌する。またエレベータ1の全体の構成は第1の実施形態と同じであるので、図1およびその記載を参酌し、ここでの説明を省略する。
【0019】
第2の実施形態のエレベータ1は、巻上機4に装備されるディスクブレーキの配置が第1の実施形態の場合と異なっている。図3に示すように、巻上機4は、メインシーブ41から離れた側に第1のディスクブレーキ71を有し、メインシーブ41とハウジング44との間に第2のディスクブレーキ72を有している。
【0020】
第1のディスクブレーキ71は、第1のコイル711と第1のディスク712と第1のエンドプレート713と第1のアーマチュア714と第1のバネ715とを備える。第1のコイル711は、第1のディスク712が配置される側のベアリング43の外周のハウジング44に組み込まれている。具体的には、第1のコイル711は駆動軸42の半径方向にベアリング43にオーバラップする位置に配置されている。第2のディスクブレーキ72は、第2のコイル721と第2のディスク722と第2のエンドプレート723と第2のアーマチュア724と第2のバネ725とを備える。第2のコイル721は、第2のディスク722が配置される側のベアリング43の外周のハウジングに組み込まれている。具体的には、第2のコイル721は駆動軸42の半径方向にベアリング43にオーバラップする位置に配置されている。
【0021】
第1のディスクブレーキ71および第2のディスクブレーキ72は、駆動軸42を垂直に横切る面に対して鏡像となるレイアウトに配置されており、したがって、第1のエンドプレート713および第2のエンドプレート723をそれぞれ有している。第1のエンドプレート713は、第1の実施形態のエンドプレート703に相当する。第2のエンドプレート723は、ハウジング44から一定の距離にロッド727で保持されている。
【0022】
以上のように構成された第2の実施形態のエレベータ1は、巻上機4に装備される制動装置としてディスクブレーキを駆動軸42の両端に1つずつ有している。そして、メインシーブ41から離れた側に配置される第1のディスクブレーキ71およびメインシーブ41の側に配置される第2のディスクブレーキ72は、どちらもベアリング43の外周のハウジングに第1のコイル711および第2のコイル721を配置している。したがって、独立したユニットのディスクブレーキを装備する場合に比べて駆動軸方向に沿う巻上機の寸法は、第1のコイル711および第2のコイル721の分だけ小さくなる。
【0023】
また、メインシーブ41とハウジング44との間に第2のディスクブレーキ72が配置されているので、メインシーブ41がメインロープ6から受けるトルクは、第2のディスクブレーキ72に制動されることによって、駆動軸42に伝達される捩れ応力が軽減される。また、第1のディスクブレーキ71と第2のディスクブレーキ72は、構造上ほぼ同じものを流用できる。したがって、用意すべき部品の種類が少なく、量産することによるコストの低減が期待される。なお、メインシーブ41とハウジング44の間に配置される第2のディスクブレーキ72のみで巻上機4に必要な制動力を満足する場合、巻上機4は、メインシーブ41から離れた側に配置される第1のディスクブレーキ71を装備しなくてもよい。
【0024】
第1の実施形態および第2の実施形態において、駆動軸42に沿う方向に巻上機4の寸法が小さくなると、巻上機4を昇降路5内に配置する際のレイアウト上の制限が緩和される。したがって、エレベータ1の乗籠2の床面形状、ドア装置の数および配置、釣合錘3の配置、ガイドレール21,31の配置、またこれらに伴うメインロープ6のローピングなど、様々な面で各部の自由度が増し、最適なエレベータを提供することができるようになる。また、2つのディスクブレーキを備える場合にも、2つのブレーキユニットを装備する場合に比べて駆動軸42に沿う方向に巻上機4の寸法が小さい。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1…エレベータ、2…乗籠、3…釣合錘、4…巻上機、5…昇降路、6…メインロープ、41…メインシーブ、42…駆動軸、43…ベアリング、44…ハウジング、703…エンドプレート、71…第1のディスクブレーキ(ディスクブレーキ)、711…第1のコイル、712…第1のディスク、713…第1のエンドプレート、714…第1のアーマチュア、715…第1のバネ、72…第2のディスクブレーキ(ディスクブレーキ)、721…第2のコイル、722…第2のディスク、723…第2のエンドプレート、724…第2のアーマチュア、725…第2のバネ、726…エンドブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内に乗籠および釣合錘をつるべ式にメインロープで吊下げて巻上機で駆動するエレベータであって、前記巻上機は、
前記メインロープが巻き掛けられるメインシーブと、
前記メインシーブに連結される駆動軸と、
前記駆動軸を支持するベアリングと、
前記ベアリングが組み込まれたハウジングと、
前記駆動軸に垂直にディスクが配置されてバネによる制動力を電磁気力で解放するディスクブレーキと
を備え、
前記ディスクブレーキは、前記ベアリングの外周の前記ハウジング内に組み込まれ電磁気力を発生するコイルを含む
ことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記ディスクブレーキは、前記メインシーブが連結されている側から離れた側に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記ディスクブレーキは、前記メインシーブが連結されている側に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記ディスクブレーキは、
前記メインシーブが連結されている側から離れた側に配置される第1のディスクブレーキおよび第2のディスクブレーキを有し、
前記第1のディスクブレーキは、前記駆動軸にスプラインを介して連結される第1のディスクと、前記第1のディスクを隔てて前記ハウジングから一定の距離にロッドで支持されるエンドプレートと、前記第1のディスクと前記ハウジングの間に配置され前記ロッドに装着される第1のアーマチュアと、前記ベアリングの外周の前記ハウジングに組み込まれ前記第1のアーマチュアを引き付ける電磁気力を発生する第1のコイルとを含み、
前記第2のディスクブレーキは、前記エンドプレートと、前記第1のディスクに対して前記エンドプレートを隔てて配置され前記駆動軸にスプラインを介して連結される第2のディスクと、前記エンドプレートから前記ハウジングと反対側に延びたロッドで前記エンドプレートから一定の距離に保持されるエンドブロックと、前記第2のディスクと前記エンドブロックとの間に配置され前記ロッドに装着される第2のアーマチュアと、前記エンドブロックに組み込まれて前記第2のアーマチュアを引き付ける電磁気力を発生する第2のコイルとを含む
ことを特徴とする請求項1に記載されたエレベータ。
【請求項5】
前記ディスクブレーキは、
前記メインシーブが連結されている側から離れた側に配置される第1のディスクブレーキおよび前記メインシーブが連結されている側に配置される第2のディスクブレーキを有し、
前記第1のディスクブレーキは、前記駆動軸にスプラインを介して連結される第1のディスクと、前記第1のディスクを隔てて前記ハウジングから一定の距離にロッドで支持される第1のエンドプレートと、前記第1のディスクと前記ハウジングの間に配置され前記ロッドに装着される第1のアーマチュアと、前記第1のディスクが配置される側の前記ベアリングの外周の前記ハウジングに組み込まれる第1のコイルとを含み、
前記第2のディスクブレーキは、前記メインシーブと前記ハウジングとの間に配置され前記駆動軸にスプラインを介して連結される第2のディスクと、前記第2のディスクと前記メインシーブとの間に配置され前記ハウジングから一定の距離にロッドで支持される第2のエンドプレートと、前記第2のディスクと前記ハウジングの間に配置され前記ロッドに装着される第2のアーマチュアと、前記第2のディスクが配置される側の前記ベアリングの外周の前記ハウジングに組み込まれる第2のコイルとを含む
を特徴とする請求項1に記載されたエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−6689(P2013−6689A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142228(P2011−142228)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】