エンコーダ装置、及び装置
【課題】スケールの位置情報を高精度に検出する。
【解決手段】エンコーダ装置は、照射光を射出する光源部と、少なくとも移動方向に光源部と相対的に移動可能であって、照射光が入射され、移動方向に沿って形成されたパターンを有するスケールと、照射光を変調させる変調信号と、変調信号に応じた参照信号とを生成する変調部と、照射光を受光して、受光した照射光に応じた受光信号を出力する受光部と、参照信号を遅延させて遅延参照信号を生成する遅延信号生成部と、遅延信号生成部によって生成された遅延参照信号と受光信号とに基づいて、移動方向におけるスケールの位置情報を検出する位置検出部と、を備える。
【解決手段】エンコーダ装置は、照射光を射出する光源部と、少なくとも移動方向に光源部と相対的に移動可能であって、照射光が入射され、移動方向に沿って形成されたパターンを有するスケールと、照射光を変調させる変調信号と、変調信号に応じた参照信号とを生成する変調部と、照射光を受光して、受光した照射光に応じた受光信号を出力する受光部と、参照信号を遅延させて遅延参照信号を生成する遅延信号生成部と、遅延信号生成部によって生成された遅延参照信号と受光信号とに基づいて、移動方向におけるスケールの位置情報を検出する位置検出部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ装置、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体とともに移動するスケールに、所定の変調信号に基づいて変調された照射光を照射して、その反射光又は透過光を受光して得られる受光信号と、変調信号とを比較することで、スケールの位置情報を検出するエンコーダ装置が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。このようなエンコーダ装置として、例えば、照射光の波長変調によって変調された受光信号を得て内挿処理を行う波長変調型のエンコーダ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,639,686明細書
【特許文献2】特開2007−333722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上述のようなエンコーダ装置では、光源であるレーザダイオードの電流を変調して照射光の波長変調を行っている。しかしながら、変調による電流の変化と照射光の波長変化との間に時間遅れが生じる場合があるため、上述のようなエンコーダ装置は、スケールの位置情報の検出精度が低下する場合がある。
このように、上述のようなエンコーダ装置は、スケールの位置情報を高精度に検出することが困難な場合があるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたもので、その目的は、スケールの位置情報を高精度に検出することができるエンコーダ装置、及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一実施形態は、照射光を射出する光源部と、少なくとも移動方向に前記光源部と相対的に移動可能であって、前記照射光が入射され、前記移動方向に沿って形成されたパターンを有するスケールと、前記照射光を変調させる変調信号と、前記変調信号に応じた参照信号とを生成する変調部と、前記照射光を受光して、受光した前記照射光に応じた受光信号を出力する受光部と、前記参照信号を遅延させて遅延参照信号を生成する遅延信号生成部と、前記遅延信号生成部によって生成された前記遅延参照信号と前記受光信号とに基づいて、前記移動方向における前記スケールの位置情報を検出する位置検出部と、を備えることを特徴とするエンコーダ装置である。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、上記に記載のエンコーダ装置と、前記スケール又は前記エンコーダ装置の検出ヘッドに接続された移動体と、を備えることを特徴とする装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スケールの位置情報を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態によるエンコーダ装置を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態におけるエンコーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態における受光信号の波形の一例を示す図である。
【図4】第2の実施形態におけるエンコーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第2の実施形態における受光信号の波形の一例を示す図である。
【図6】第3の実施形態におけるエンコーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図7】同実施形態における遅延生成部の構成を示すブロック図である。
【図8】本実施形態における遅延設定部16の処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】同実施形態におけるリサージュ波形の一例を示す図である。
【図10】第4の実施形態におけるエンコーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本実施形態における駆動装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態によるエンコーダ装置について図面を参照して説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態によるエンコーダ装置1(位置検出装置)の構成を示す模式図である。
この図において、エンコーダ装置1は、所定の移動方向(例えば、X軸方向などの一方向)に相対的に移動するスケール6(移動格子)の位置情報(例えば、スケール6の移動方向、移動量、あるいは変位など)を検出する光学式のリニアエンコーダである。なお、この図において、紙面において上方に向かう方向をY軸の正方向、紙面において右方向をX軸の正方向、紙面において裏面から表面に向かう方向をZ軸の正方向として、以下説明する。すなわち、スケール6の移動方向をX軸方向、光源部2の照射方向をY軸の負方向として、以下説明する。
【0012】
図1において、本実施形態のエンコーダ装置1は、光源部2、コリメータレンズ3、光分岐部材41、ガラスブロック42、インデックス格子(基準部材)5、スケール6、受光部7、及び信号処理部8を備えている。
なお、光源部2、コリメータレンズ3、光分岐部材41、ガラスブロック42、インデックス格子5、及び受光部7の受光素子(71、72)は、検出ヘッド9に対応する。光源部2、コリメータレンズ3、光分岐部材41、ガラスブロック42、インデックス格子5、及び受光部7の受光素子(71、72)は、検出ヘッド9に一体的に支持されている。検出ヘッド9は、スケール6と所定の間隔を保つように、配置されている。また、検出ヘッド9とスケール6とは、上述したX軸方向に、相対的に移動する。また、受光部7には、信号処理部8の一部である、後述するアンプ(84、85)(図2)が含まれる。
【0013】
光源部21は、コリメータレンズ3、光分岐部材41、ガラスブロック42、インデックス格子5、及びスケール6を介して、受光部7に照射光を射出する。光源部2は、光源21と、ドライブ部22とを有する。なお、光源部2は、ドライブ部22を含まない構成としてもよい。
光源21は、例えばレーザ光を射出するレーザダイオードなどのレーザ素子であって、変調部81(図2)により波長が変調されたコヒーレントな光を−Y軸方向側に向けて射出する。
ドライブ部22は、例えば、光源21を駆動する電流を供給する駆動アンプである。ドライブ部22は、信号処理部8の変調部81(図2)から供給された変調信号に基づいて波長が周期的に変調された照射光を光源21に射出させる。
コリメータレンズ3は、光源21から射出された光を受光し、Y軸方向の平行光に偏向する。
【0014】
光分岐部材41は、光源部2から射出された光を受光し、受光した光を複数の光線L1、L2、L3に分ける。すなわち、光分岐部材41は、例えば、光線L1、L2、L3に対応する位置で光を透過させ、他の部分は光を遮断するような、部分的に透過率の異なるマスクからなり、コリメータレンズ3から射出された平行光の光軸(Y軸方向)と直交する位置(X軸方向)に受光面が配置されている。よって、光分岐部材41に入射した平行光は、光線L1〜L3に分岐され射出される。
【0015】
ガラスブロック42は、光源部2から射出された複数の光線のうち少なくとも一部の光の光路長を変更する光路長変更部である。ガラスブロック42は、例えば、光分岐部材41とスケール6との間の光線L2が射出される位置に配置され、光分岐部材41から射出された光線L2を透過させる。ガラスブロック42は、所定の屈折率N1を有し、光分岐部材41から射出された光線L2の進行方向(例えば、Y軸方向)に、所定の厚さDを有する。
【0016】
よって、ガラスブロック42を透過する光線L2の光路長は、この屈折率N1及び厚さDの大きさに応じて、例えば空気中を透過する光線L1および光線L3の光路長に比べて長くなる。つまり、ガラスブロック42は、光源21からスケール6における光路としての実質的な距離が等しい光線L1、L2間に対して、ガラスブロック42によって光線L1、L2同士の光路長を相対的に変更される。これにより、例えば、光線L2の光路長が、光線L1の光路長に比べて長くなる。また同様に、光線L2、L3間においても、ガラスブロック42によって光線L2、L3の光路長が相対的に変更される。これにより、例えば、光線L2の光路長が、光線L3の光路長に比べて長くなる。
【0017】
一例として、光線L2の光源21からスケール6における光路長は、光線L1および光線L3の光源21からスケール6における光路長に比べて長く、ガラスブロック42は、スケール6上又はスケール6の近傍の光路に形成される交差領域に入射する複数の光線同士の光路長を相対的に変更することができる。
これにより、ガラスブロック42を透過する光線L2は、光線L1、L3と、光路としての実質的な距離が同じであっても、スケール6の入射面において波面の位相が遅れる。ここで、光路長とは、空間的な距離に屈折率をかけた光学的距離を含むものである。
【0018】
インデックス格子5は、スケール6上又はスケール6の近傍の光路において少なくとも2つの交差領域を形成するように、光分岐部材41から射出された複数の光線L1〜L3の進行方向をそれぞれ変更する光偏向部材である。
インデックス格子5は、例えば、スケール6と同じピッチで格子状のパターンが形成された回折格子であって、インデックスパターン51を有する透過型の回折格子である。インデックスパターン51は、X軸方向に沿って周期的に形成された回折パターンである。インデックス格子5は、入射光に基づき、複数の回折光を生成し、例えば、所定の入射光を±1次回折光に回折する。
【0019】
一例として、インデックス格子5は、入射した光線L1〜L3をそれぞれ±1次回折光に回折し、光線L1に基づく+1次回折光Lp1(第3の光線)、光線L2に基づく−1次回折光Lm2(第1の光線)および+1次回折光Lp2(第2の光線)、光線L3に基づく−1次回折光Lm3(第4の光線)を射出する。なお、上述の通り、+1次回折光Lp1と−1次回折光Lm3は、光源部2からスケール6までの光路長(以下、第1の光路長という)が等しく、光線L2に基づく−1次回折光Lm2および+1次回折光Lp2の光源部2からスケール6までの光路長(以下、第2の光路長という)が等しく、第1の光路長に比べて第2の光路長の方が長い。また上述の通り、+1次回折光Lp1と−1次回折光Lm3とが、また、光線L2に基づく−1次回折光Lm2と+1次回折光Lp2とが、それぞれ同一の光からなる。
【0020】
スケール6は、少なくとも一方向に光源部2と相対的に移動可能であって、光源部2によって射出された照射光が入射される。スケール6は、検出ヘッド9に対して相対的にX軸方向に変位する。スケール6は、移動方向に沿って形成されたパターン61を有している。なお、パターン61は、例えば、透過型の回折パターンであって、移動方向(例えば、X軸方向)に沿って周期的に形成された回折パターンである。
【0021】
スケール6は、光源部2から射出される照射光のうち少なくとも複数の光線が入射する入射面を有する。また、スケール6は、入射面において、インデックス格子5によって回折された回折光が重なり合う交差領域M1、M2が複数形成されるように位置され、複数の交差領域M1、M2に入射した回折光を、進行方向が実質的に同一方向となるように射出面から射出する。例えば、スケール6上の交差領域M1に入射した+1次回折光Lp1および−1次回折光Lm2は、一部が重なり合うことで干渉し、干渉光L12として−Y軸方向側に射出される。また、スケール6上の交差領域M2に入射した+1次回折光Lp2および−1次回折光Lm3は、一部が重なり合うことで干渉し、干渉光L23として、干渉光L12と実質的に同一方向の−Y軸方向側に射出される。ここで、交差領域とは、スケール6又はスケール6の近傍の光路の入射面において、入射する複数の光が重なり合う領域であって、干渉縞が形成される領域をいう。
【0022】
本実施の形態において、スケール6は、スケール6の射出面側の光路に配置されている受光部7の受光素子71、72に向けて干渉光L12、L23を射出する。すなわち、+1次回折光Lp1及び−1次回折光Lm2に基づく干渉光L12は、受光素子71に入射され、+1次回折光Lp2及び−1次回折光Lm3に基づく干渉光L23は、受光素子72に入射される。
【0023】
受光部7は、光源部2から射出される照射光(ここでは、干渉光L12、L23)を受光して、受光した照射光に応じた受光信号を出力する。本実施形態において、受光部7は、受光素子(71、72)、及び、後述するアンプ(84、85)(図2)を有している。
受光素子(71、72)は、例えば、フォトダイオードなどの受光素子であり、それぞれスケール6の異なる位置から射出した干渉光L12、L23を受光し、干渉光L12、L23の干渉強度を示す光電変換信号を受光信号として出力する。
【0024】
なお、スケール6上又はスケール6の近傍の光路の交差領域M1に入射する+1次回折光Lp1および−1次回折光Lm2の干渉による干渉光L12(第1の干渉光)と、スケール6上の交差領域M2に入射した+1次回折光Lp2および−1次回折光Lm3による干渉光L23(第2の干渉光)とは、互いに逆位相となる。受光素子(71、72)によって検出される干渉光L12、L23のそれぞれに基づく干渉強度は、変調部81によって与えられた変調に関する数値項目が互いに逆位相となる。よって、受光素子(71、72)によって検出される干渉光L12、L23のそれぞれに基づく干渉強度を加算することによって、変調に関する数値項目を互いに打ち消し合うことができる。
【0025】
信号処理部8は、光源部2に供給する変調信号を生成し、受光部7が出力する受光信号に基づいて、移動方向(X軸方向)におけるスケール6の位置を検出し、位置情報(例、位置x)を出力する。
【0026】
次に、信号処理部8の構成について図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態におけるエンコーダ装置1の構成を示す概略ブロック図である。
図2において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
この図2において、信号処理部8は、位置検出部80、変調部81、DAC(Digital to Analog Converter)82、遅延信号生成部83、及びアンプ(84、85)を備えている。また、位置検出部80は、ADC(Analog to Digital Converter)(86、87)、デコーダ部(88、89)、加算器90、及び除算器91を備えている。
【0027】
変調部81(信号発生器)は、例えば、シンセサイザなどの信号発生器であり、光源21に供給される電流を変化させることによって、光源21から射出される照射光の波長を周期的に変化させる。つまり、変調部81は、変調信号によって、照射光の波長を変調させる。一例として、変調部81は、照射光の波長を周期的に変化させる変調信号(例えば、sinωt)を生成し、生成した変調信号を、DAC82を介してドライブ部22に供給する。また、変調部81は、位置検出部80がスケール6の位置情報を検出する際に参照される参照信号を生成し、生成した参照信号を遅延信号生成部83に供給する。なお、この参照信号は、上述した変調信号に応じた(対応した)信号であり、変調信号に応じて変化する信号である。本実施形態では、変調信号をそのまま参照信号として用いる場合の一例を説明する。
【0028】
DAC82は、例えば、D/A(デジタル/アナログ)コンバータ回路であり、変調部81が生成した変調信号をアナログ信号に変換し、変換したアナログ信号を変調信号としてドライブ部22に供給する。
【0029】
遅延信号生成部83は、変調部81によって生成された参照信号(変調信号)を遅延させて遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。遅延信号生成部83は、遅延参照信号の位相が受光部7によって受光された受光信号に含まれる変調成分の位相と一致するように、遅延変調信号を生成する。一例として、遅延信号生成部83は、所定の遅延量Δtに基づいて参照信号(変調信号)を遅延させて、遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。本実施形態では、この所定の遅延量Δtは、変調部81によって生成された変調信号に対する光源部2における変調の位相遅れ量に基づいて予め定められている。
遅延信号生成部83は、生成した遅延参照信号(遅延変調信号)を位置検出部80に供給する。
【0030】
例えば、レーザダイオードなどの光源21は、変調信号に対して位相遅れが生じる場合がある。レーザダイオードの場合、この位相遅れは、レーザダイオードの内部の熱効果によって生じる。このため、レーザダイオードの品種及び使用条件を決めると、この位相遅れ量はほぼ一定に定まる。したがって、本実施形態では、レーザダイオードの品種及び使用条件によって定まる位相遅れ量を所定の遅延量Δtとして適用する。この場合、エンコーダ装置1ごとに、所定の遅延量Δtを調整することなく、エンコーダ装置1を量産することができる。なお、レーザダイオードの品種及び使用条件によって定まる位相遅れ量は、実際の計測により取得してもよいし、シミュレーションなどの手段により、演算によって算出して取得してもよい。
【0031】
アンプ84は、例えば、増幅回路であり、受光部7の受光素子71が受光して出力した受光信号を所定の利得(ゲイン)によって増幅する。アンプ84は、増幅した受光信号を位置検出部80のADC86に供給する。
アンプ85は、例えば、増幅回路であり、受光部7の受光素子72が受光して出力した受光信号を所定の利得(ゲイン)によって増幅する。アンプ85は、増幅した受光信号を位置検出部80のADC87に供給する。
なお、本実施形態において、アンプ(84、85)は、受光部7に含まれる。
【0032】
位置検出部80は、遅延信号生成部83によって生成された遅延参照信号と受光信号とに基づいて、移動方向におけるスケール6の位置情報(例えば、スケール6の位置x)を検出する。位置検出部80は、検出したスケール6の位置情報を、例えば、エンコーダ装置1を制御する制御装置10に出力する。すなわち、位置検出部80は、遅延参照信号と受光信号とに基づいて、内挿処理を行う。
【0033】
ADC86は、例えば、A/D(アナログ/デジタル)コンバータ回路であり、アンプ84から供給された受光信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をデコーダ部88に供給する。
ADC87は、例えば、A/Dコンバータ回路であり、アンプ85から供給された受光信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をデコーダ部89に供給する。
【0034】
デコーダ部88は、遅延信号生成部83によって生成された遅延参照信号と受光素子71が干渉光L12を受光して出力した受光信号とに基づいて、位置情報の復号化処理(デコード処理)を行い、復号結果を加算器90に出力する。ここで、デコーダ部88による復号化処理は、例えば、特許文献1の「米国特許第6,639,686明細書」に記載の信号処理方法を利用することができる。
デコーダ部89は、遅延信号生成部83によって生成された遅延参照信号と受光素子72が干渉光L23を受光して出力した受光信号とに基づいて、位置情報の復号化処理(デコード処理)を行い、復号結果を加算器90に出力する。ここで、デコーダ部89による復号化処理は、デコーダ部88と同様に、例えば、特許文献1の「米国特許第6,639,686明細書」に記載の信号処理方法を利用することができる。
【0035】
加算器90は、デコーダ部88の復号結果とデコーダ部89の復号結果とを合成処理(加算処理)して、合成結果(加算結果)を除算器91に出力する。
除算器91は、加算器90による合成結果を2分の1に除算し、スケール6の位置情報(例えば、スケール6の位置x)を算出する。除算器91は、算出したスケール6の位置情報を例えば、制御装置10に出力する。
【0036】
なお、図2において、ノードAは、変調部81から遅延信号生成部83に供給される参照信号の信号線におけるノードを示し、ノードBは、遅延信号生成部83から位置検出部80に供給される遅延参照信号の信号線におけるノードを示す。また、ノードCは、アンプ84から位置検出部80に供給される受光信号の信号線におけるノードを示す。
【0037】
次に、本実施形態におけるエンコーダ装置1の動作について説明する。
まず、変調部81は、照射光の波長を周期的に変化させる変調信号を生成し、生成した変調信号を、DAC82を介してドライブ部22に供給する。ドライブ部22は、DAC82から供給された変調信号に基づいて変調された駆動信号を光源21に供給する。これにより、光源21は、波長変調された照射光を射出する。なお、光源21において、照射光は、変調部81によって生成された変調信号に対して、例えば、レーザダイオードの品種及び使用条件によって定まる位相遅れ量の遅延が生じて変調される。
【0038】
光源21が射出した変調された照射光は、コリメータレンズ3及び光分岐部材41を介して、光線L1〜L3として、ガラスブロック42及びインデックス格子5に入射される。インデックス格子5を透過した回折光(Lp1、Lm1、Lp2、Lm2)は、スケール6に入射され、干渉光L12、L23が、受光部7に照射される。ここで、受光部7の受光素子71が干渉光L12を受光し、干渉光L12の光の強度に応じた受光信号をアンプ84に出力する。また、受光部7の受光素子72が干渉光L23を受光し、干渉光L23の光の強度に応じた受光信号をアンプ85に出力する。
【0039】
例えば、受光素子71が受光する干渉光L12の干渉強度Iは、上述した変調信号に対する位相遅れが生じない場合には、下記の式(1)の関係式に表される。
【0040】
【数1】
【0041】
ここで、定数A0は振幅を、変数xはスケール6の位置を、定数Pはスケール6の格子パターンのピッチを、定数D0は変調度をそれぞれ示している。
【0042】
しかし実際には、上述した変調信号に対する位相遅れが生じるため、受光素子71が受光する干渉光L12の干渉強度Iは、下記の式(2)の関係式に表される。
【0043】
【数2】
【0044】
ここで、定数Δtは上述した位相遅れを示し、定数D1は振幅変調度を示している。
式(2)に示されるように、干渉強度Iには、振幅変調成分(1+D1sinωt)と位相遅れ成分(D0sinω(t−Δt))との2つの誤差要因が含まれている。ここでいう誤差要因とは、スケール6の位置を検出する場合に発生する検出誤差の要因である。
【0045】
次に、アンプ84は、受光素子71が受光して出力した受光信号を所定の利得(ゲイン)によって増幅し、増幅した受光信号を位置検出部80のADC87に供給する。また、アンプ85は、受光素子72が受光して出力した受光信号を所定の利得(ゲイン)によって増幅し、増幅した受光信号を位置検出部80のADC87に供給する。
一方で、変調部81は、変調信号に応じた参照信号(例えば、本実施形態では変調信号そのまま)を生成し、生成した参照信号を遅延信号生成部83に供給する。遅延信号生成部83は、遅延参照信号の位相が受光部7によって受光された受光信号に含まれる変調成分の位相と一致するように、遅延変調信号を生成する。一例として、遅延信号生成部83は、所定の遅延量Δtに基づいて参照信号(変調信号)を遅延させて、遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。
【0046】
図3は、本実施形態における受光信号の波形の一例を示す図である。
図3(a)は、ノードA(図2)の参照信号(変調信号)における(sinωt)成分が“0”となる時刻t0Aを基準にした場合におけるノードC(図2)の受光信号の波形W1を示している。また、図3(b)は、ノードB(図2)の遅延参照信号(遅延変調信号)における(sinωt)成分が“0”となる時刻t0Bを基準にした場合におけるノードCの受光信号の波形W2を示している。
また、図3(c)は、参考として、式(1)による位相遅れが存在しない場合における上述した時刻t0Aを基準にしたノードCの受光信号の理想的な波形の一例(波形W3)を示している。
【0047】
図3(a)と図3(c)に示すように、波形W1と波形W3との間には、位相遅れが生じている。遅延信号生成部83は、所定の遅延量Δtだけ参照信号(変調信号)を遅延させて遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。その結果、図3(b)に示すように、時刻t0Bを基準にしたノードCにおける受光信号の波形W2は、位相が波形W1より位相差Δt分変化し、波形W3とほぼ同じ位相となる。すなわち、位置検出部80においては、遅延参照信号(遅延変調信号)によって、ノードBの遅延参照信号の位相がノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相と一致した状態に補正される。これにより、ノードBの遅延参照信号とノードCの受光信号とは、波形W2に示すように、位相遅れのない場合における理想的な受光信号の一例である波形W3と同等の位相関係になる。すなわち、遅延信号生成部83は、遅延参照信号(遅延変調信号)を生成することにより、上述した式(2)における位相遅れ成分による誤差要因を低減している。
【0048】
次に、位置検出部80は、遅延信号生成部83によって生成された遅延参照信号と受光信号とに基づいて、移動方向におけるスケール6の位置情報(例えば、スケール6の位置x)を検出する。位置検出部80は、スケール6の位置情報を例えば、制御装置10に出力する。
【0049】
以上のように、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、光源部2と、スケール6と、変調部81と、受光部7と、遅延信号生成部83と、位置検出部80と、を備える。光源部2は、照射光を射出し、スケール6は、少なくとも一方向(移動方向)に光源部2と相対的に移動可能であって、照射光が入射され、移動方向(X軸方向)に沿って形成されたパターンを有する。変調部81は、照射光を変調させる変調信号と、変調信号に応じた参照信号とを生成する。受光部7は、照射光を受光して、受光した照射光に応じた受光信号を出力する。遅延信号生成部83は、変調部81が生成した参照信号を遅延させて遅延参照信号を生成する。位置検出部80は、遅延信号生成部83が生成した遅延信号生成部によって生成された遅延参照信号と受光部7が受光して出力した受光信号とに基づいて、移動方向におけるスケール6の位置情報を検出する。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、遅延信号生成部83によって参照信号を遅延させた遅延参照信号を使用することで、光源部2(光源21)の変調信号に対する位相遅れによるスケール6の位置情報の検出誤差を低減する。そのため、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0050】
また、本実施形態では、遅延信号生成部83は、遅延参照信号の位相が受光信号に含まれる変調成分の位相と一致するように、遅延変調信号を生成する。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、位置検出部80において、ノードBの遅延参照信号の位相がノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相と一致した状態に補正される。そのため、光源部2(光源21)の変調信号に対する位相遅れが補正されるため、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0051】
また、本実施形態では、遅延信号生成部83は、所定の遅延量Δtに基づいて参照信号を遅延させて、遅延参照信号を生成する。また、所定の遅延量Δtは、変調信号に対する光源部2(光源21)における変調の位相遅れ量に基づいて予め定められている。例えば、所定の遅延量Δtは、光源21であるレーザダイオードの品種及び使用条件によって定まる位相遅れ量を所定の遅延量Δtである。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1ごとに、所定の遅延量Δtの調整をすることなく、本実施形態におけるエンコーダ装置1を量産することができる。
【0052】
また、本実施形態では、変調部81は、変調信号によって、照射光の波長を変調させる。
これにより、例えば、光源部2から周期的に波長が変化された変調光を出射し、かつ、干渉させる2つの変調光の光路長を異ならせることが、簡易な構成によって行うことができる。本実施形態におけるエンコーダ装置1は、例えば、光路に振動回転する振動ミラーを配置する方法のような、機械的にミラーを駆動するための複雑な駆動機構が不要となり、装置の小型化及び低コスト化を実現することができる。さらに、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、機械的な光ビームを振動させる構成が不要となるため、メカ的な取り付けに起因した温度、湿度等の環境変化による、スケール6の位置情報の検出における誤差発生を低減することができる。
【0053】
また、本実施形態では、参照信号は、変調信号である。遅延信号生成部83は、変調部81が生成した変調信号を遅延させて遅延変調信号を遅延参照信号として生成する。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、参照信号に変調信号を使用するので、簡易な構成によりスケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態によるエンコーダ装置1の構成を示す概略ブロック図である。 図4において、図2と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本実施形態において、検出ヘッド9及びスケール6の構成は、図1に示される構成と同一である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、第1の実施形態における信号処理部8の代わりに信号処理部8aを備えている。
【0055】
図4において、信号処理部8aは、位置検出部80、変調部81、DAC82、遅延信号生成部83、及びゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備えている。信号処理部8aは、アンプ(84、85)の代わりにゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備えている点が信号処理部8と異なり、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)を除く他の構成は、信号処理部8と同様である。以下、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)について説明する。
【0056】
ゲインコントロールアンプ(84a、85a)(増幅回路部)は、例えば、ゲイン可変アンプであり、変調信号(参照信号)に基づいて利得(ゲイン)を変更して、受光信号を出力する。ここで、利得(ゲイン)とは、入力信号レベルと出力信号レベルとの比のことである。この場合、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)は、受光素子(71、72)が受光して出力した受光信号を増幅するので、利得(ゲイン)は“1.0”より大きい値となる。つまり、利得(ゲイン)は、増幅率といえる。
【0057】
ゲインコントロールアンプ84aは、変調部81が生成した変調信号(参照信号)に基づいて、利得(ゲイン)すなわち増幅率を変更して、受光素子71が受光して出力した受光信号を増幅する。ゲインコントロールアンプ84aは、増幅した受光信号を位置検出部80のADC86に供給する。
ゲインコントロールアンプ85aは、変調部81が生成した変調信号(参照信号)に基づいて、利得(ゲイン)すなわち増幅率を変更して、受光素子72が受光して出力した受光信号を増幅する。ゲインコントロールアンプ85aは、増幅した受光信号を位置検出部80のADC87に供給する。
【0058】
なお、本実施形態において、なお、本実施形態において、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)は、受光部7に含まれる。すなわち、受光部7は、変調信号(参照信号)に基づいて利得(ゲイン)を変更して、受光信号を出力するゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備えている。
また、本実施形態では、ノードCは、ゲインコントロールアンプ84aから位置検出部80に供給される受光信号の信号線におけるノードを示す。
【0059】
次に、本実施形態におけるエンコーダ装置1の動作について説明する。
本実施形態におけるエンコーダ装置1の基本的な動作は、第1の実施形態と同様である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)が上述した式(2)における振幅変調成分(1+D1sinωt)による誤差要因を低減する。
【0060】
図5は、本実施形態における受光信号の波形の一例を示す図である。
図5(a)は、比較のために第1の実施形態における図3(a)に対応する波形W1を示している。すなわち、波形W1は、ノードA(図2)の参照信号(変調信号)における(sinωt)成分が“0”となる時刻t0Aを基準にした場合におけるノードC(図2)の受光信号の波形を示している。
また、図5(b)は、本実施形態におけるノードB(図4)の参照信号(変調信号)における(sinωt)成分が“0”となる時刻t0Aを基準にした場合におけるノードC(図4)の受光信号の波形W4を示している。
また、図5(c)は、本実施形態におけるノードB(図4)の遅延参照信号(遅延変調信号)における(sinωt)成分が“0”となる時刻t0Bを基準にした場合におけるノードCの受光信号の波形W5を示している。
【0061】
本実施形態では、ゲインコントロールアンプ84aは、変調部81が生成した変調信号(参照信号)に基づいて、上述した振幅変調成分を打ち消すように、増幅率を変更する。その結果、図5(b)に示すように、波形W4は、図5(a)の波形W1に比べて、振幅が一定になる。すなわち、ゲインコントロールアンプ84aは、受光信号における振幅変調成分による誤差要因を低減する。また、ゲインコントロールアンプ85aについても、ゲインコントロールアンプ84aと同様に、受光信号における振幅変調成分による誤差要因を低減する。
【0062】
次に、遅延信号生成部83は、所定の遅延量Δtだけ参照信号(変調信号)を遅延させて遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。その結果、図5(b)に示すように、時刻t0Bを基準にしたノードCにおける受光信号の波形W5は、位相が波形W4より位相差Δt分変化する。すなわち、波形W5は、振幅が一定で、且つ、図3(c)の波形W3とほぼ同じ位相となる。
このように、本実施形態では、遅延信号生成部83は、上述した式(2)における位相遅れ成分による誤差要因を低減し、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)は、上述した式(2)における振幅変調成分による誤差要因を低減する。
【0063】
以上のように、本実施形態におけるエンコーダ装置1において、受光部7は、変調信号(参照信号)に基づいて利得を変更して、受光信号を出力するゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備える。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、上述した式(2)における振幅変調成分による誤差要因を低減することができる。すなわち、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、位相遅れ成分とともに振幅変調成分によるスケール6の位置情報の検出誤差を低減することができる。よって、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0064】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態によるエンコーダ装置1の構成を示す概略ブロック図である。
図6において、図4と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本実施形態において、検出ヘッド9及びスケール6の構成は、図1に示される構成と同一である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、第2の実施形態における信号処理部8aの代わりに信号処理部8bを備えている。また、信号処理部8bには、上述した所定の遅延量Δtを計測して設定する設定装置15が接続されている。
【0065】
図6において、信号処理部8bは、位置検出部80、変調部81、DAC82、遅延信号生成部83a、遅延量記憶部92、及びゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備えている。信号処理部8bは、遅延信号生成部83a及び遅延量記憶部92を備えている点が信号処理部8aと異なり、遅延信号生成部83a及び遅延量記憶部92を除く他の構成は、信号処理部8aと同様である。以下、遅延信号生成部83a及び遅延量記憶部92について説明する。
【0066】
遅延量記憶部92(記憶部)は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの書き換え可能な不揮発性メモリであり、所定の遅延量Δtを予め記憶している。本実施形態では、この所定の遅延量Δtは、設定装置15の遅延設定部16によって記憶される。
遅延信号生成部83aは、遅延生成部30を備えており、遅延生成部30によって参照信号(変調信号)を遅延させる。
遅延生成部30は、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtに応じて、変調部81によって生成された参照信号(変調信号)を遅延させて、遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。遅延生成部30は、生成した遅延参照信号(遅延変調信号)を位置検出部80に供給する。ここで、遅延生成部30の構成について詳細に説明する。
【0067】
図7は、本実施形態における遅延生成部30の構成の一例を示す概略ブロック図である。
図7において、遅延生成部30は、遅延回路31〜34及び3N、選択部35を備えている。
遅延回路31〜34及び3Nは、それぞれ入力信号に所定の単位遅延量を遅延させた遅延信号を生成し、生成した遅延信号を出力信号として出力する。遅延回路31〜34及び3Nは、直列に接続され、遅延回路31〜34及び3Nの各出力端子と、選択部35の入力端子I1〜I4及びINとがそれぞれ接続されている。また、遅延回路31の入力端子には、変調部81によって生成された参照信号(変調信号)が供給される。すなわち、遅延回路31〜34及び3Nは、参照信号(変調信号)に対して、それぞれ遅延量の異なる遅延信号を選択部35に出力する。
【0068】
選択部35は、遅延量記憶部92に予め記憶されている所定の遅延量Δtに基づいて、入力端子I1〜I4及びINに供給される遅延量の異なる遅延信号のうちから、遅延参照信号(遅延変調信号)として出力する信号を選択する。すなわち、選択部35は、所定の遅延量Δtに基づいて選択した遅延信号を遅延参照信号(遅延変調信号)として出力する。
このように、遅延生成部30は、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtに応じた遅延参照信号を位置検出部80に供給する。本実施形態では、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtの値を変更することにより、遅延信号生成部83aは、遅延参照信号の参照信号に対する遅延量を変更することができる。
【0069】
再び図6に戻り、設定装置15は、遅延設定部16を備えている。
遅延設定部16は、遅延量記憶部92に記憶する所定の遅延量Δtを計測して定め(設定し)、定めた(設定した)所定の遅延量Δtを遅延量記憶部92に記憶させる。
一例として、遅延設定部16は、例えば、ノードBの遅延参照信号と受光素子71が受光してゲインコントロールアンプ84aを介して出力されたノードCの受光信号とのリサージュ波形を生成する。遅延設定部16は、生成したリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とを一致させるように、所定の遅延量Δtを定める(設定する)。すなわち、所定の遅延量Δtは、遅延参照信号と受光信号とのリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とを一致させるように定められている。
【0070】
次に、本実施形態におけるエンコーダ装置1の動作について説明する。
本実施形態におけるエンコーダ装置1の基本的な動作は、第2の実施形態と同様である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、遅延信号生成部83aの遅延生成部30が、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtに応じて、遅延参照信号の参照信号に対する遅延量を変更する。
【0071】
一例として、遅延生成部30は、N個の遅延回路31〜34及び3Nが直列に接続されており、選択部35が、遅延回路31〜34及び3Nのうちの1つの所定の遅延量Δtに対応する出力信号(遅延信号)を遅延参照信号として出力する。例えば、遅延回路31〜34及び3Nの各遅延量(所定の単位遅延量)が遅延量DTである場合、遅延回路31の出力における参照信号に対する遅延量は、遅延量DTである。また、遅延回路32の出力における参照信号に対する遅延量は、遅延量(2×DT)である。
例えば、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtに対応する遅延量が遅延量(2×DT)である場合、選択部35は、所定の遅延量Δtに基づいて、遅延回路32の出力を選択し、遅延参照信号として出力する。すなわち、この場合、遅延生成部30は、遅延量DTの倍数でN段階に所定の遅延量Δtを変更することができる。
【0072】
次に、本実施形態における設定装置15の遅延設定部16の動作について説明する。
図8は、本実施形態における遅延設定部16の処理の一例を示すフローチャートである。
図8において、遅延設定部16は、まず、所定の遅延量Δtの初期値を遅延量記憶部92に記憶させる(ステップS101)。
次に、遅延設定部16は、ノードBの遅延参照信号とノードCの受光信号とのリサージュ波形を生成する(ステップS102)。
次に、遅延設定部16は、生成したリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とが一致しているか否かを判定する(ステップS103)。遅延設定部16は、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とが一致していると判定した場合に、処理をこの所定の遅延量Δtの設定処理を終了させる。また、遅延設定部16は、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とが一致していないと判定した場合に、処理をステップS104に進める。
【0073】
ステップS104において、遅延設定部16は、所定の遅延量Δtの値を変更して遅延量記憶部92に記憶させ、処理をステップS102に戻す。
このように、ステップS102からステップS104の処理が、ステップS103において、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とが一致していると判定されるまで繰り返される。
【0074】
図9は、本実施形態におけるリサージュ波形の一例を示す図である。
図9において、リサージュ波形の横軸はノードBの遅延参照信号に対応し、リサージュ波形の縦軸はノードCの受光信号に対応する。
図9(a)は、ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致していない場合の波形(W6、W7)を示している。また、図8(b)は、ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致している場合の波形W8を示している。
【0075】
図9(a)に示すように、ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致していない場合、リサージュ波形は、波形W6及びW7が一致しない2つの波形が形成される。この状態において、遅延設定部16が、図8におけるステップS102からステップS104の処理を繰り返すことによって、図9(b)に示すような波形W8を得る。ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致している場合、リサージュ波形は、波形W8のように、1つの波形が形成される。このように、遅延設定部16は、生成したリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とを一致させるように、所定の遅延量Δtを定める(設定する)。
【0076】
なお、上記の実施形態では、所定の遅延量Δtがリサージュ波形を用いて設定される形態を説明したが、例えば、遅延設定部16が、受光信号に含まれる変調成分の位相と変調信号の位相との位相差を計測し、計測した位相差基づいて所定の遅延量Δtが定められる形態でもよい。この場合、エンコーダ装置1において、所定の遅延量Δtは、受光信号に含まれる変調成分の位相と変調信号の位相との位相差に基づいて、予め定められている形態でもよい。
また、設定装置15は、エンコーダ装置1の出荷前の検査、校正処理、部品交換などの修理などの際にエンコーダ装置1に接続され、所定の遅延量Δtを設定する設定処理を実行する。
【0077】
以上のように、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、所定の遅延量Δtを記憶している遅延量記憶部92を備える。遅延信号生成部83aは、遅延生成部30が、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtに応じて、参照信号を遅延させる。
これにより、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtの値を変更することにより、遅延参照信号の参照信号に対する遅延量を変更することができる。そのため、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、光源部2における位相遅れ特性の経時変化や光源部2の部品交換による位相遅れ特性の変化に対して、所定の遅延量Δtの値を補正することができる。よって、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0078】
また、本実施形態では、所定の遅延量Δtは、遅延参照信号と受光信号とのリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とを一致させるように定められている。
これにより、変調信号に対する光源部2(光源21)における変調の位相遅れ量に基づいて所定の遅延量Δtを定めた場合(品種及び使用条件によって定まる位相遅れ量)に比べて、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、所定の遅延量Δtを正確に設定することができる。そのため、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、変調信号に対する光源部2(光源21)における変調の位相遅れ量に基づいて所定の遅延量Δtを定めた場合に比べて、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0079】
また、本実施形態では、所定の遅延量Δtは、受光信号に含まれる変調成分の位相と変調信号の位相との位相差に基づいて、予め定められていてもよい。
これにより、リサージュ波形に基づいて所定の遅延量Δtを定めた場合と同様に、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、所定の遅延量Δtを正確に設定することができる。そのため、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、変調信号に対する光源部2(光源21)における変調の位相遅れ量に基づいて所定の遅延量Δtを定めた場合に比べて、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0080】
また、本実施形態では、設定装置15は、所定の遅延量Δtを計測して定める遅延設定部16を備える。遅延設定部16は、上述のように計測に基づいて、所定の遅延量Δtを定めて、遅延信号生成部83aに記憶させる。そのため、設定装置15は、所定の遅延量Δtを正確に設定することができる。設定装置15によって所定の遅延量Δtが正確に設定されるので、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0081】
また、本実施形態では、遅延設定部16は、ノードBの遅延参照信号とノードCの受光信号とのリサージュ波形を生成する。遅延設定部16は、生成したリサージュ波形に基づいて、所定の遅延量Δtを定める(設定する)。
これにより、設定装置15は、所定の遅延量Δtが正確に設定することができる。
【0082】
[第4の実施形態]
図10は、第4の実施形態によるエンコーダ装置1の構成を示す概略ブロック図である。
図10において、図6と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本実施形態において、検出ヘッド9及びスケール6の構成は、図1に示される構成と同一である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、第3の実施形態における信号処理部8bの代わりに信号処理部8cを備えている。
【0083】
信号処理部8cは、位置検出部80、変調部81、DAC82、遅延信号生成部83a、遅延量記憶部92、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)及び遅延設定部16を備えている。信号処理部8cは、遅延設定部16を備えている点が信号処理部8bと異なり、遅延設定部16を除く他の構成は、信号処理部8bと同様である。以下、遅延設定部16について説明する。
【0084】
遅延設定部16は、第3の実施形態における設定装置15が備える遅延設定部16と同様の構成である。つまり、遅延設定部16は、第3の実施形態と同様に、所定の遅延量Δtを計測して定める。すなわち、遅延設定部16は、例えば、ノードBの遅延参照信号と受光素子71が受光してゲインコントロールアンプ84aを介して出力されたノードCの受光信号とのリサージュ波形を生成する。遅延設定部16は、生成したリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とを一致させるように、所定の遅延量Δtを定める(設定する)。
【0085】
次に、本実施形態におけるエンコーダ装置1の動作について説明する。
本実施形態におけるエンコーダ装置1の基本的な動作は、第3の実施形態と同様である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、遅延設定部16が、所定の遅延量Δtを設定する設定処理を行う。なお、この遅延設定部16による所定の遅延量Δtを設定する設定処理は、図8に示されるフローチャートの処理と同様である。
なお、エンコーダ装置1は、この遅延設定部16による設定処理を予め定められた期間ごとに実行してもよいし、メンテナンスモードなどを設けて、メンテナンスモードにおいて、実行してもよい。また、エンコーダ装置1は、エンコーダ装置1の使用時ごとにこの設定処理を実行してもよい。
【0086】
以上のように、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、所定の遅延量Δtを計測して定める遅延設定部16を備える。すなわち、遅延設定部16は、上述の計測に基づいて、所定の遅延量Δtを定めて、遅延信号生成部83aに記憶させる。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、設定装置15を用いずに、所定の遅延量Δtを正確に設定することができる。すなわち、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、光源部2における位相遅れ特性の経時変化や光源部2の部品交換による位相遅れ特性の変化に対して、設定装置15を用いずに、所定の遅延量Δtの値を補正することができる。よって、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、常に所定の遅延量Δtの値を適切な値に設定することができるので、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0087】
[第5の実施形態]
次に、上記の各実施形態におけるエンコーダ装置1を駆動装置に適用した場合の一実施形態について説明する。
図11は、本実施形態における駆動装置100の構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態は、上記の各実施形態におけるエンコーダ装置1を使用して、移動体を駆動する駆動装置100である。なお、本実施形態では、移動体の一例としてステージ12を駆動するステージ装置について説明する。
【0088】
図11において、ステージ装置である駆動装置100(装置)は、エンコーダ装置1(1a)、ステージ12、駆動部11及び制御装置10(制御部)を備えている。この図において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
エンコーダ装置1は、スケール6、検出ヘッド9、及び信号処理部8(8a〜8c)を備えている。
【0089】
ステージ12(移動体)は、例えば、スケール6又は検出ヘッド9と固定されており、駆動部11によって駆動(移動)される。すなわち、ステージ12は、スケール6又は検出ヘッド9に接続されている。
駆動部11は、ステージ12をスケール6における位置検出方向に相対的に駆動する。
制御装置10(制御部)は、制御信号線C1を介してエンコーダ装置1の信号処理部8(8a〜8c)と接続されている。この制御信号線C1を介して、エンコーダ装置1は、上述した位置情報を制御装置10に供給する。
また、制御装置10は、制御信号線C2を介して駆動部11と接続されている。制御装置10は、この制御信号線C2を介して駆動部11を制御する。
【0090】
制御装置10は、エンコーダ装置1から供給されたステージ12の位置情報に基づいて、駆動部11を制御する。
【0091】
以上のように、本実施形態における駆動装置100は、エンコーダ装置1と、スケール6又は検出ヘッド9に接続されているステージ12とを備えている。
エンコーダ装置1が、スケール6の位置情報を高精度に検出することができるため、本実施形態における駆動装置100は、ステージ12の位置情報を高精度に検出することができる。これにより、本実施形態における駆動装置100は、高精度にステージ12の位置を制御することができる。
【0092】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
上記の各実施形態において、受光部7は、2つの受光素子(71、72)を備える形態を説明したが、1つの受光素子を備えて、受光素子において、干渉光L12及びL23を合成した受光信号を出力する形態でもよい。
【0093】
また、上記の各実施形態において、受光部7にアンプ(84、85)又はゲインコントロールアンプ(84a、85a)が含まれる形態を説明したが、受光部7にアンプ(84、85)又はゲインコントロールアンプ(84a、85a)が含まれない形態でもよい。また、光源部2にドライブ部22が含まれる形態を説明したが、光源部2にドライブ部22が含まれない形態(ドライブ部22が信号処理部8に含まれる形態)でもよい。
【0094】
また、上記の各実施形態において、検出ヘッド9は、信号処理部8(8a〜8c)を含まない形態を説明したが、信号処理部8(8a〜8c)を含む形態でもよい。
また、上記の各実施形態において、スケール6がリニアスケールである形態について説明したが、円盤型や扇型のスケール6を用いてロータリー式のエンコーダに適用する形態でもよい。
また、上記の各実施形態において、検出ヘッド9が固定され、スケール6が変位方向に移動する形態を説明したが、スケール6が固定され、検出ヘッド9が変位方向に移動する形態でもよい。
【0095】
また、上記の各実施形態において、変調部81によって生成される参照信号が変調信号である形態について説明したが、これに限定されるものではない。参照信号は、位置検出部80の内挿処理方式によって種々の形態が考えられ、変調信号に応じて生成された参照信号でもよいし、変調信号に対応している参照信号であれば、他の形態でもよい。
また、上記の各実施形態において、変調部81は、照射光の波長を変調させる変調信号を生成する形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、変調部81は、光源部2が射出する照射光の光量を周期的に変調する形態でもよい。
【0096】
また、上記の第2〜第4の各実施形態において、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)の利得を制御する信号として変調信号を用いる形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、変調信号に基づいて生成された制御信号を用いる形態でもよい。
【0097】
また、上記の第3の実施形態において、設定装置15が所定の遅延量Δtの値を計測により設定し、エンコーダ装置1の遅延量記憶部92に所定の遅延量Δtを設定する形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、オシロスコープなどの計測装置とパーソナルコンピュータ(PC)などの制御装置10とを利用して所定の遅延量Δtを設定してもよい。
この場合、エンコーダ装置1のノードBにおける遅延参照信号の信号線をオシロスコープのX軸入力端子に、ノードCにおける受光信号の信号線をオシロスコープのY軸入力端子に、それぞれ接続する。また、設定を行う作業者が、ノードPCからエンコーダ装置1の遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtを変更し、オシロスコープに表示されるリサージュ波形を観察する。作業者は、リサージュ波形を観察しながら、ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致するように、ノードPCからエンコーダ装置1の遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtを変更する。
このように、第3の実施形態におけるエンコーダ装置1は、特別な設定装置15を利用せずに、簡易な方法により、所定の遅延量Δtを適切に変更することができる。
【0098】
また、上記の第3及び第4の実施形態は、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備える形態を説明したが、第1の実施形態であるゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備えない形態において、第3及び第4の実施形態を適用してもよい。すなわち、第1〜第4の実施形態のうちのいずれかを単独で実施する形態でもよいし、第1〜第4の実施形態のうちの複数の形態を組み合わせて実施する形態でもよい。
【0099】
また、上記の第3及び第4の実施形態において、遅延生成部30は、遅延回路31〜34及び3Nを用いる形態を説明したがこれに限定されるものではない。例えば、参照信号及び遅延参照信号は、アナログ信号でもよいし、デジタル信号でもよい。参照信号及び遅延参照信号がデジタル信号である場合、遅延生成部30は、シフトレジスタを用いて遅延量を変更する形態でもよい。この形態では、シフトレジスタに供給するクロック信号の周波数を変更することにより、より精密に所定の遅延量Δtを変更することができる。
【0100】
また、上記の第3及び第4の実施形態において、遅延量記憶部92にEEPROMを用いる形態を説明したが、他の不揮発性メモリを用いる形態でもよい。また、遅延生成部30は、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtの値を直接読み出して使用する形態を説明したが、レジスタなどの一時記憶部に読み出した値を使用する形態でもよい。また、遅延生成部30は、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtの値は、所定の遅延量Δtの値に基づいて変換された値でもよい。この場合、遅延生成部30は、所定の遅延量Δtの値に基づいて変換された値によって遅延量を変更する形態でもよい。
【0101】
また、上記の第3及び第4の実施形態において、所定の遅延量Δtを設定する際に、ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致するように設定している形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、所定の遅延量Δtは、ノードBの遅延参照信号の位相と、受光素子72によって受光されて出力された受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致するように定められてもよい。
【0102】
また、上記の第5の実施例において、ステージ12を移動方向(例、一方向)に駆動する駆動装置100に上記の各実施形態におけるエンコーダ装置1を適用する形態を説明したが、この形態に限定されるものではない。例えば、XY移動ステージ、3次元計測装置、モータ装置、工作機械、精密機械、半導体のチップマウンタ、ステッパ装置などの装置に適用してもよい。
また、上記の各実施形態において透過型のスケール6を用いる形態を説明したが、本実施形態は反射型のスケールを用いるような反射型のエンコーダ装置に適用してもよい。
【0103】
また、上記の各実施形態において、信号処理部8(8a〜8c)の各部は、専用のハードウェアによって実現されてもよく、また、信号処理部8(8a〜8c)の各部は、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成され、信号処理部8(8a〜8c)の各機能は、プログラムによって実現されてもよい。
【0104】
上述の信号処理部8(8a〜8c)は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した信号処理部8(8a〜8c)の処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…エンコーダ装置、2…光源部、6…スケール、7…受光部、9…検出ヘッド、12…ステージ、16…遅延設定部、30…遅延生成部、61…パターン、80…位置検出部、83,83a…遅延信号生成部、84a,85a…ゲインコントロールアンプ、92…遅延量記憶部、100…駆動装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ装置、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体とともに移動するスケールに、所定の変調信号に基づいて変調された照射光を照射して、その反射光又は透過光を受光して得られる受光信号と、変調信号とを比較することで、スケールの位置情報を検出するエンコーダ装置が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。このようなエンコーダ装置として、例えば、照射光の波長変調によって変調された受光信号を得て内挿処理を行う波長変調型のエンコーダ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,639,686明細書
【特許文献2】特開2007−333722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上述のようなエンコーダ装置では、光源であるレーザダイオードの電流を変調して照射光の波長変調を行っている。しかしながら、変調による電流の変化と照射光の波長変化との間に時間遅れが生じる場合があるため、上述のようなエンコーダ装置は、スケールの位置情報の検出精度が低下する場合がある。
このように、上述のようなエンコーダ装置は、スケールの位置情報を高精度に検出することが困難な場合があるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたもので、その目的は、スケールの位置情報を高精度に検出することができるエンコーダ装置、及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一実施形態は、照射光を射出する光源部と、少なくとも移動方向に前記光源部と相対的に移動可能であって、前記照射光が入射され、前記移動方向に沿って形成されたパターンを有するスケールと、前記照射光を変調させる変調信号と、前記変調信号に応じた参照信号とを生成する変調部と、前記照射光を受光して、受光した前記照射光に応じた受光信号を出力する受光部と、前記参照信号を遅延させて遅延参照信号を生成する遅延信号生成部と、前記遅延信号生成部によって生成された前記遅延参照信号と前記受光信号とに基づいて、前記移動方向における前記スケールの位置情報を検出する位置検出部と、を備えることを特徴とするエンコーダ装置である。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、上記に記載のエンコーダ装置と、前記スケール又は前記エンコーダ装置の検出ヘッドに接続された移動体と、を備えることを特徴とする装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スケールの位置情報を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態によるエンコーダ装置を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態におけるエンコーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態における受光信号の波形の一例を示す図である。
【図4】第2の実施形態におけるエンコーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第2の実施形態における受光信号の波形の一例を示す図である。
【図6】第3の実施形態におけるエンコーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図7】同実施形態における遅延生成部の構成を示すブロック図である。
【図8】本実施形態における遅延設定部16の処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】同実施形態におけるリサージュ波形の一例を示す図である。
【図10】第4の実施形態におけるエンコーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本実施形態における駆動装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態によるエンコーダ装置について図面を参照して説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態によるエンコーダ装置1(位置検出装置)の構成を示す模式図である。
この図において、エンコーダ装置1は、所定の移動方向(例えば、X軸方向などの一方向)に相対的に移動するスケール6(移動格子)の位置情報(例えば、スケール6の移動方向、移動量、あるいは変位など)を検出する光学式のリニアエンコーダである。なお、この図において、紙面において上方に向かう方向をY軸の正方向、紙面において右方向をX軸の正方向、紙面において裏面から表面に向かう方向をZ軸の正方向として、以下説明する。すなわち、スケール6の移動方向をX軸方向、光源部2の照射方向をY軸の負方向として、以下説明する。
【0012】
図1において、本実施形態のエンコーダ装置1は、光源部2、コリメータレンズ3、光分岐部材41、ガラスブロック42、インデックス格子(基準部材)5、スケール6、受光部7、及び信号処理部8を備えている。
なお、光源部2、コリメータレンズ3、光分岐部材41、ガラスブロック42、インデックス格子5、及び受光部7の受光素子(71、72)は、検出ヘッド9に対応する。光源部2、コリメータレンズ3、光分岐部材41、ガラスブロック42、インデックス格子5、及び受光部7の受光素子(71、72)は、検出ヘッド9に一体的に支持されている。検出ヘッド9は、スケール6と所定の間隔を保つように、配置されている。また、検出ヘッド9とスケール6とは、上述したX軸方向に、相対的に移動する。また、受光部7には、信号処理部8の一部である、後述するアンプ(84、85)(図2)が含まれる。
【0013】
光源部21は、コリメータレンズ3、光分岐部材41、ガラスブロック42、インデックス格子5、及びスケール6を介して、受光部7に照射光を射出する。光源部2は、光源21と、ドライブ部22とを有する。なお、光源部2は、ドライブ部22を含まない構成としてもよい。
光源21は、例えばレーザ光を射出するレーザダイオードなどのレーザ素子であって、変調部81(図2)により波長が変調されたコヒーレントな光を−Y軸方向側に向けて射出する。
ドライブ部22は、例えば、光源21を駆動する電流を供給する駆動アンプである。ドライブ部22は、信号処理部8の変調部81(図2)から供給された変調信号に基づいて波長が周期的に変調された照射光を光源21に射出させる。
コリメータレンズ3は、光源21から射出された光を受光し、Y軸方向の平行光に偏向する。
【0014】
光分岐部材41は、光源部2から射出された光を受光し、受光した光を複数の光線L1、L2、L3に分ける。すなわち、光分岐部材41は、例えば、光線L1、L2、L3に対応する位置で光を透過させ、他の部分は光を遮断するような、部分的に透過率の異なるマスクからなり、コリメータレンズ3から射出された平行光の光軸(Y軸方向)と直交する位置(X軸方向)に受光面が配置されている。よって、光分岐部材41に入射した平行光は、光線L1〜L3に分岐され射出される。
【0015】
ガラスブロック42は、光源部2から射出された複数の光線のうち少なくとも一部の光の光路長を変更する光路長変更部である。ガラスブロック42は、例えば、光分岐部材41とスケール6との間の光線L2が射出される位置に配置され、光分岐部材41から射出された光線L2を透過させる。ガラスブロック42は、所定の屈折率N1を有し、光分岐部材41から射出された光線L2の進行方向(例えば、Y軸方向)に、所定の厚さDを有する。
【0016】
よって、ガラスブロック42を透過する光線L2の光路長は、この屈折率N1及び厚さDの大きさに応じて、例えば空気中を透過する光線L1および光線L3の光路長に比べて長くなる。つまり、ガラスブロック42は、光源21からスケール6における光路としての実質的な距離が等しい光線L1、L2間に対して、ガラスブロック42によって光線L1、L2同士の光路長を相対的に変更される。これにより、例えば、光線L2の光路長が、光線L1の光路長に比べて長くなる。また同様に、光線L2、L3間においても、ガラスブロック42によって光線L2、L3の光路長が相対的に変更される。これにより、例えば、光線L2の光路長が、光線L3の光路長に比べて長くなる。
【0017】
一例として、光線L2の光源21からスケール6における光路長は、光線L1および光線L3の光源21からスケール6における光路長に比べて長く、ガラスブロック42は、スケール6上又はスケール6の近傍の光路に形成される交差領域に入射する複数の光線同士の光路長を相対的に変更することができる。
これにより、ガラスブロック42を透過する光線L2は、光線L1、L3と、光路としての実質的な距離が同じであっても、スケール6の入射面において波面の位相が遅れる。ここで、光路長とは、空間的な距離に屈折率をかけた光学的距離を含むものである。
【0018】
インデックス格子5は、スケール6上又はスケール6の近傍の光路において少なくとも2つの交差領域を形成するように、光分岐部材41から射出された複数の光線L1〜L3の進行方向をそれぞれ変更する光偏向部材である。
インデックス格子5は、例えば、スケール6と同じピッチで格子状のパターンが形成された回折格子であって、インデックスパターン51を有する透過型の回折格子である。インデックスパターン51は、X軸方向に沿って周期的に形成された回折パターンである。インデックス格子5は、入射光に基づき、複数の回折光を生成し、例えば、所定の入射光を±1次回折光に回折する。
【0019】
一例として、インデックス格子5は、入射した光線L1〜L3をそれぞれ±1次回折光に回折し、光線L1に基づく+1次回折光Lp1(第3の光線)、光線L2に基づく−1次回折光Lm2(第1の光線)および+1次回折光Lp2(第2の光線)、光線L3に基づく−1次回折光Lm3(第4の光線)を射出する。なお、上述の通り、+1次回折光Lp1と−1次回折光Lm3は、光源部2からスケール6までの光路長(以下、第1の光路長という)が等しく、光線L2に基づく−1次回折光Lm2および+1次回折光Lp2の光源部2からスケール6までの光路長(以下、第2の光路長という)が等しく、第1の光路長に比べて第2の光路長の方が長い。また上述の通り、+1次回折光Lp1と−1次回折光Lm3とが、また、光線L2に基づく−1次回折光Lm2と+1次回折光Lp2とが、それぞれ同一の光からなる。
【0020】
スケール6は、少なくとも一方向に光源部2と相対的に移動可能であって、光源部2によって射出された照射光が入射される。スケール6は、検出ヘッド9に対して相対的にX軸方向に変位する。スケール6は、移動方向に沿って形成されたパターン61を有している。なお、パターン61は、例えば、透過型の回折パターンであって、移動方向(例えば、X軸方向)に沿って周期的に形成された回折パターンである。
【0021】
スケール6は、光源部2から射出される照射光のうち少なくとも複数の光線が入射する入射面を有する。また、スケール6は、入射面において、インデックス格子5によって回折された回折光が重なり合う交差領域M1、M2が複数形成されるように位置され、複数の交差領域M1、M2に入射した回折光を、進行方向が実質的に同一方向となるように射出面から射出する。例えば、スケール6上の交差領域M1に入射した+1次回折光Lp1および−1次回折光Lm2は、一部が重なり合うことで干渉し、干渉光L12として−Y軸方向側に射出される。また、スケール6上の交差領域M2に入射した+1次回折光Lp2および−1次回折光Lm3は、一部が重なり合うことで干渉し、干渉光L23として、干渉光L12と実質的に同一方向の−Y軸方向側に射出される。ここで、交差領域とは、スケール6又はスケール6の近傍の光路の入射面において、入射する複数の光が重なり合う領域であって、干渉縞が形成される領域をいう。
【0022】
本実施の形態において、スケール6は、スケール6の射出面側の光路に配置されている受光部7の受光素子71、72に向けて干渉光L12、L23を射出する。すなわち、+1次回折光Lp1及び−1次回折光Lm2に基づく干渉光L12は、受光素子71に入射され、+1次回折光Lp2及び−1次回折光Lm3に基づく干渉光L23は、受光素子72に入射される。
【0023】
受光部7は、光源部2から射出される照射光(ここでは、干渉光L12、L23)を受光して、受光した照射光に応じた受光信号を出力する。本実施形態において、受光部7は、受光素子(71、72)、及び、後述するアンプ(84、85)(図2)を有している。
受光素子(71、72)は、例えば、フォトダイオードなどの受光素子であり、それぞれスケール6の異なる位置から射出した干渉光L12、L23を受光し、干渉光L12、L23の干渉強度を示す光電変換信号を受光信号として出力する。
【0024】
なお、スケール6上又はスケール6の近傍の光路の交差領域M1に入射する+1次回折光Lp1および−1次回折光Lm2の干渉による干渉光L12(第1の干渉光)と、スケール6上の交差領域M2に入射した+1次回折光Lp2および−1次回折光Lm3による干渉光L23(第2の干渉光)とは、互いに逆位相となる。受光素子(71、72)によって検出される干渉光L12、L23のそれぞれに基づく干渉強度は、変調部81によって与えられた変調に関する数値項目が互いに逆位相となる。よって、受光素子(71、72)によって検出される干渉光L12、L23のそれぞれに基づく干渉強度を加算することによって、変調に関する数値項目を互いに打ち消し合うことができる。
【0025】
信号処理部8は、光源部2に供給する変調信号を生成し、受光部7が出力する受光信号に基づいて、移動方向(X軸方向)におけるスケール6の位置を検出し、位置情報(例、位置x)を出力する。
【0026】
次に、信号処理部8の構成について図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態におけるエンコーダ装置1の構成を示す概略ブロック図である。
図2において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
この図2において、信号処理部8は、位置検出部80、変調部81、DAC(Digital to Analog Converter)82、遅延信号生成部83、及びアンプ(84、85)を備えている。また、位置検出部80は、ADC(Analog to Digital Converter)(86、87)、デコーダ部(88、89)、加算器90、及び除算器91を備えている。
【0027】
変調部81(信号発生器)は、例えば、シンセサイザなどの信号発生器であり、光源21に供給される電流を変化させることによって、光源21から射出される照射光の波長を周期的に変化させる。つまり、変調部81は、変調信号によって、照射光の波長を変調させる。一例として、変調部81は、照射光の波長を周期的に変化させる変調信号(例えば、sinωt)を生成し、生成した変調信号を、DAC82を介してドライブ部22に供給する。また、変調部81は、位置検出部80がスケール6の位置情報を検出する際に参照される参照信号を生成し、生成した参照信号を遅延信号生成部83に供給する。なお、この参照信号は、上述した変調信号に応じた(対応した)信号であり、変調信号に応じて変化する信号である。本実施形態では、変調信号をそのまま参照信号として用いる場合の一例を説明する。
【0028】
DAC82は、例えば、D/A(デジタル/アナログ)コンバータ回路であり、変調部81が生成した変調信号をアナログ信号に変換し、変換したアナログ信号を変調信号としてドライブ部22に供給する。
【0029】
遅延信号生成部83は、変調部81によって生成された参照信号(変調信号)を遅延させて遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。遅延信号生成部83は、遅延参照信号の位相が受光部7によって受光された受光信号に含まれる変調成分の位相と一致するように、遅延変調信号を生成する。一例として、遅延信号生成部83は、所定の遅延量Δtに基づいて参照信号(変調信号)を遅延させて、遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。本実施形態では、この所定の遅延量Δtは、変調部81によって生成された変調信号に対する光源部2における変調の位相遅れ量に基づいて予め定められている。
遅延信号生成部83は、生成した遅延参照信号(遅延変調信号)を位置検出部80に供給する。
【0030】
例えば、レーザダイオードなどの光源21は、変調信号に対して位相遅れが生じる場合がある。レーザダイオードの場合、この位相遅れは、レーザダイオードの内部の熱効果によって生じる。このため、レーザダイオードの品種及び使用条件を決めると、この位相遅れ量はほぼ一定に定まる。したがって、本実施形態では、レーザダイオードの品種及び使用条件によって定まる位相遅れ量を所定の遅延量Δtとして適用する。この場合、エンコーダ装置1ごとに、所定の遅延量Δtを調整することなく、エンコーダ装置1を量産することができる。なお、レーザダイオードの品種及び使用条件によって定まる位相遅れ量は、実際の計測により取得してもよいし、シミュレーションなどの手段により、演算によって算出して取得してもよい。
【0031】
アンプ84は、例えば、増幅回路であり、受光部7の受光素子71が受光して出力した受光信号を所定の利得(ゲイン)によって増幅する。アンプ84は、増幅した受光信号を位置検出部80のADC86に供給する。
アンプ85は、例えば、増幅回路であり、受光部7の受光素子72が受光して出力した受光信号を所定の利得(ゲイン)によって増幅する。アンプ85は、増幅した受光信号を位置検出部80のADC87に供給する。
なお、本実施形態において、アンプ(84、85)は、受光部7に含まれる。
【0032】
位置検出部80は、遅延信号生成部83によって生成された遅延参照信号と受光信号とに基づいて、移動方向におけるスケール6の位置情報(例えば、スケール6の位置x)を検出する。位置検出部80は、検出したスケール6の位置情報を、例えば、エンコーダ装置1を制御する制御装置10に出力する。すなわち、位置検出部80は、遅延参照信号と受光信号とに基づいて、内挿処理を行う。
【0033】
ADC86は、例えば、A/D(アナログ/デジタル)コンバータ回路であり、アンプ84から供給された受光信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をデコーダ部88に供給する。
ADC87は、例えば、A/Dコンバータ回路であり、アンプ85から供給された受光信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をデコーダ部89に供給する。
【0034】
デコーダ部88は、遅延信号生成部83によって生成された遅延参照信号と受光素子71が干渉光L12を受光して出力した受光信号とに基づいて、位置情報の復号化処理(デコード処理)を行い、復号結果を加算器90に出力する。ここで、デコーダ部88による復号化処理は、例えば、特許文献1の「米国特許第6,639,686明細書」に記載の信号処理方法を利用することができる。
デコーダ部89は、遅延信号生成部83によって生成された遅延参照信号と受光素子72が干渉光L23を受光して出力した受光信号とに基づいて、位置情報の復号化処理(デコード処理)を行い、復号結果を加算器90に出力する。ここで、デコーダ部89による復号化処理は、デコーダ部88と同様に、例えば、特許文献1の「米国特許第6,639,686明細書」に記載の信号処理方法を利用することができる。
【0035】
加算器90は、デコーダ部88の復号結果とデコーダ部89の復号結果とを合成処理(加算処理)して、合成結果(加算結果)を除算器91に出力する。
除算器91は、加算器90による合成結果を2分の1に除算し、スケール6の位置情報(例えば、スケール6の位置x)を算出する。除算器91は、算出したスケール6の位置情報を例えば、制御装置10に出力する。
【0036】
なお、図2において、ノードAは、変調部81から遅延信号生成部83に供給される参照信号の信号線におけるノードを示し、ノードBは、遅延信号生成部83から位置検出部80に供給される遅延参照信号の信号線におけるノードを示す。また、ノードCは、アンプ84から位置検出部80に供給される受光信号の信号線におけるノードを示す。
【0037】
次に、本実施形態におけるエンコーダ装置1の動作について説明する。
まず、変調部81は、照射光の波長を周期的に変化させる変調信号を生成し、生成した変調信号を、DAC82を介してドライブ部22に供給する。ドライブ部22は、DAC82から供給された変調信号に基づいて変調された駆動信号を光源21に供給する。これにより、光源21は、波長変調された照射光を射出する。なお、光源21において、照射光は、変調部81によって生成された変調信号に対して、例えば、レーザダイオードの品種及び使用条件によって定まる位相遅れ量の遅延が生じて変調される。
【0038】
光源21が射出した変調された照射光は、コリメータレンズ3及び光分岐部材41を介して、光線L1〜L3として、ガラスブロック42及びインデックス格子5に入射される。インデックス格子5を透過した回折光(Lp1、Lm1、Lp2、Lm2)は、スケール6に入射され、干渉光L12、L23が、受光部7に照射される。ここで、受光部7の受光素子71が干渉光L12を受光し、干渉光L12の光の強度に応じた受光信号をアンプ84に出力する。また、受光部7の受光素子72が干渉光L23を受光し、干渉光L23の光の強度に応じた受光信号をアンプ85に出力する。
【0039】
例えば、受光素子71が受光する干渉光L12の干渉強度Iは、上述した変調信号に対する位相遅れが生じない場合には、下記の式(1)の関係式に表される。
【0040】
【数1】
【0041】
ここで、定数A0は振幅を、変数xはスケール6の位置を、定数Pはスケール6の格子パターンのピッチを、定数D0は変調度をそれぞれ示している。
【0042】
しかし実際には、上述した変調信号に対する位相遅れが生じるため、受光素子71が受光する干渉光L12の干渉強度Iは、下記の式(2)の関係式に表される。
【0043】
【数2】
【0044】
ここで、定数Δtは上述した位相遅れを示し、定数D1は振幅変調度を示している。
式(2)に示されるように、干渉強度Iには、振幅変調成分(1+D1sinωt)と位相遅れ成分(D0sinω(t−Δt))との2つの誤差要因が含まれている。ここでいう誤差要因とは、スケール6の位置を検出する場合に発生する検出誤差の要因である。
【0045】
次に、アンプ84は、受光素子71が受光して出力した受光信号を所定の利得(ゲイン)によって増幅し、増幅した受光信号を位置検出部80のADC87に供給する。また、アンプ85は、受光素子72が受光して出力した受光信号を所定の利得(ゲイン)によって増幅し、増幅した受光信号を位置検出部80のADC87に供給する。
一方で、変調部81は、変調信号に応じた参照信号(例えば、本実施形態では変調信号そのまま)を生成し、生成した参照信号を遅延信号生成部83に供給する。遅延信号生成部83は、遅延参照信号の位相が受光部7によって受光された受光信号に含まれる変調成分の位相と一致するように、遅延変調信号を生成する。一例として、遅延信号生成部83は、所定の遅延量Δtに基づいて参照信号(変調信号)を遅延させて、遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。
【0046】
図3は、本実施形態における受光信号の波形の一例を示す図である。
図3(a)は、ノードA(図2)の参照信号(変調信号)における(sinωt)成分が“0”となる時刻t0Aを基準にした場合におけるノードC(図2)の受光信号の波形W1を示している。また、図3(b)は、ノードB(図2)の遅延参照信号(遅延変調信号)における(sinωt)成分が“0”となる時刻t0Bを基準にした場合におけるノードCの受光信号の波形W2を示している。
また、図3(c)は、参考として、式(1)による位相遅れが存在しない場合における上述した時刻t0Aを基準にしたノードCの受光信号の理想的な波形の一例(波形W3)を示している。
【0047】
図3(a)と図3(c)に示すように、波形W1と波形W3との間には、位相遅れが生じている。遅延信号生成部83は、所定の遅延量Δtだけ参照信号(変調信号)を遅延させて遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。その結果、図3(b)に示すように、時刻t0Bを基準にしたノードCにおける受光信号の波形W2は、位相が波形W1より位相差Δt分変化し、波形W3とほぼ同じ位相となる。すなわち、位置検出部80においては、遅延参照信号(遅延変調信号)によって、ノードBの遅延参照信号の位相がノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相と一致した状態に補正される。これにより、ノードBの遅延参照信号とノードCの受光信号とは、波形W2に示すように、位相遅れのない場合における理想的な受光信号の一例である波形W3と同等の位相関係になる。すなわち、遅延信号生成部83は、遅延参照信号(遅延変調信号)を生成することにより、上述した式(2)における位相遅れ成分による誤差要因を低減している。
【0048】
次に、位置検出部80は、遅延信号生成部83によって生成された遅延参照信号と受光信号とに基づいて、移動方向におけるスケール6の位置情報(例えば、スケール6の位置x)を検出する。位置検出部80は、スケール6の位置情報を例えば、制御装置10に出力する。
【0049】
以上のように、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、光源部2と、スケール6と、変調部81と、受光部7と、遅延信号生成部83と、位置検出部80と、を備える。光源部2は、照射光を射出し、スケール6は、少なくとも一方向(移動方向)に光源部2と相対的に移動可能であって、照射光が入射され、移動方向(X軸方向)に沿って形成されたパターンを有する。変調部81は、照射光を変調させる変調信号と、変調信号に応じた参照信号とを生成する。受光部7は、照射光を受光して、受光した照射光に応じた受光信号を出力する。遅延信号生成部83は、変調部81が生成した参照信号を遅延させて遅延参照信号を生成する。位置検出部80は、遅延信号生成部83が生成した遅延信号生成部によって生成された遅延参照信号と受光部7が受光して出力した受光信号とに基づいて、移動方向におけるスケール6の位置情報を検出する。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、遅延信号生成部83によって参照信号を遅延させた遅延参照信号を使用することで、光源部2(光源21)の変調信号に対する位相遅れによるスケール6の位置情報の検出誤差を低減する。そのため、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0050】
また、本実施形態では、遅延信号生成部83は、遅延参照信号の位相が受光信号に含まれる変調成分の位相と一致するように、遅延変調信号を生成する。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、位置検出部80において、ノードBの遅延参照信号の位相がノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相と一致した状態に補正される。そのため、光源部2(光源21)の変調信号に対する位相遅れが補正されるため、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0051】
また、本実施形態では、遅延信号生成部83は、所定の遅延量Δtに基づいて参照信号を遅延させて、遅延参照信号を生成する。また、所定の遅延量Δtは、変調信号に対する光源部2(光源21)における変調の位相遅れ量に基づいて予め定められている。例えば、所定の遅延量Δtは、光源21であるレーザダイオードの品種及び使用条件によって定まる位相遅れ量を所定の遅延量Δtである。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1ごとに、所定の遅延量Δtの調整をすることなく、本実施形態におけるエンコーダ装置1を量産することができる。
【0052】
また、本実施形態では、変調部81は、変調信号によって、照射光の波長を変調させる。
これにより、例えば、光源部2から周期的に波長が変化された変調光を出射し、かつ、干渉させる2つの変調光の光路長を異ならせることが、簡易な構成によって行うことができる。本実施形態におけるエンコーダ装置1は、例えば、光路に振動回転する振動ミラーを配置する方法のような、機械的にミラーを駆動するための複雑な駆動機構が不要となり、装置の小型化及び低コスト化を実現することができる。さらに、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、機械的な光ビームを振動させる構成が不要となるため、メカ的な取り付けに起因した温度、湿度等の環境変化による、スケール6の位置情報の検出における誤差発生を低減することができる。
【0053】
また、本実施形態では、参照信号は、変調信号である。遅延信号生成部83は、変調部81が生成した変調信号を遅延させて遅延変調信号を遅延参照信号として生成する。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、参照信号に変調信号を使用するので、簡易な構成によりスケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態によるエンコーダ装置1の構成を示す概略ブロック図である。 図4において、図2と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本実施形態において、検出ヘッド9及びスケール6の構成は、図1に示される構成と同一である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、第1の実施形態における信号処理部8の代わりに信号処理部8aを備えている。
【0055】
図4において、信号処理部8aは、位置検出部80、変調部81、DAC82、遅延信号生成部83、及びゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備えている。信号処理部8aは、アンプ(84、85)の代わりにゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備えている点が信号処理部8と異なり、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)を除く他の構成は、信号処理部8と同様である。以下、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)について説明する。
【0056】
ゲインコントロールアンプ(84a、85a)(増幅回路部)は、例えば、ゲイン可変アンプであり、変調信号(参照信号)に基づいて利得(ゲイン)を変更して、受光信号を出力する。ここで、利得(ゲイン)とは、入力信号レベルと出力信号レベルとの比のことである。この場合、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)は、受光素子(71、72)が受光して出力した受光信号を増幅するので、利得(ゲイン)は“1.0”より大きい値となる。つまり、利得(ゲイン)は、増幅率といえる。
【0057】
ゲインコントロールアンプ84aは、変調部81が生成した変調信号(参照信号)に基づいて、利得(ゲイン)すなわち増幅率を変更して、受光素子71が受光して出力した受光信号を増幅する。ゲインコントロールアンプ84aは、増幅した受光信号を位置検出部80のADC86に供給する。
ゲインコントロールアンプ85aは、変調部81が生成した変調信号(参照信号)に基づいて、利得(ゲイン)すなわち増幅率を変更して、受光素子72が受光して出力した受光信号を増幅する。ゲインコントロールアンプ85aは、増幅した受光信号を位置検出部80のADC87に供給する。
【0058】
なお、本実施形態において、なお、本実施形態において、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)は、受光部7に含まれる。すなわち、受光部7は、変調信号(参照信号)に基づいて利得(ゲイン)を変更して、受光信号を出力するゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備えている。
また、本実施形態では、ノードCは、ゲインコントロールアンプ84aから位置検出部80に供給される受光信号の信号線におけるノードを示す。
【0059】
次に、本実施形態におけるエンコーダ装置1の動作について説明する。
本実施形態におけるエンコーダ装置1の基本的な動作は、第1の実施形態と同様である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)が上述した式(2)における振幅変調成分(1+D1sinωt)による誤差要因を低減する。
【0060】
図5は、本実施形態における受光信号の波形の一例を示す図である。
図5(a)は、比較のために第1の実施形態における図3(a)に対応する波形W1を示している。すなわち、波形W1は、ノードA(図2)の参照信号(変調信号)における(sinωt)成分が“0”となる時刻t0Aを基準にした場合におけるノードC(図2)の受光信号の波形を示している。
また、図5(b)は、本実施形態におけるノードB(図4)の参照信号(変調信号)における(sinωt)成分が“0”となる時刻t0Aを基準にした場合におけるノードC(図4)の受光信号の波形W4を示している。
また、図5(c)は、本実施形態におけるノードB(図4)の遅延参照信号(遅延変調信号)における(sinωt)成分が“0”となる時刻t0Bを基準にした場合におけるノードCの受光信号の波形W5を示している。
【0061】
本実施形態では、ゲインコントロールアンプ84aは、変調部81が生成した変調信号(参照信号)に基づいて、上述した振幅変調成分を打ち消すように、増幅率を変更する。その結果、図5(b)に示すように、波形W4は、図5(a)の波形W1に比べて、振幅が一定になる。すなわち、ゲインコントロールアンプ84aは、受光信号における振幅変調成分による誤差要因を低減する。また、ゲインコントロールアンプ85aについても、ゲインコントロールアンプ84aと同様に、受光信号における振幅変調成分による誤差要因を低減する。
【0062】
次に、遅延信号生成部83は、所定の遅延量Δtだけ参照信号(変調信号)を遅延させて遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。その結果、図5(b)に示すように、時刻t0Bを基準にしたノードCにおける受光信号の波形W5は、位相が波形W4より位相差Δt分変化する。すなわち、波形W5は、振幅が一定で、且つ、図3(c)の波形W3とほぼ同じ位相となる。
このように、本実施形態では、遅延信号生成部83は、上述した式(2)における位相遅れ成分による誤差要因を低減し、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)は、上述した式(2)における振幅変調成分による誤差要因を低減する。
【0063】
以上のように、本実施形態におけるエンコーダ装置1において、受光部7は、変調信号(参照信号)に基づいて利得を変更して、受光信号を出力するゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備える。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、上述した式(2)における振幅変調成分による誤差要因を低減することができる。すなわち、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、位相遅れ成分とともに振幅変調成分によるスケール6の位置情報の検出誤差を低減することができる。よって、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0064】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態によるエンコーダ装置1の構成を示す概略ブロック図である。
図6において、図4と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本実施形態において、検出ヘッド9及びスケール6の構成は、図1に示される構成と同一である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、第2の実施形態における信号処理部8aの代わりに信号処理部8bを備えている。また、信号処理部8bには、上述した所定の遅延量Δtを計測して設定する設定装置15が接続されている。
【0065】
図6において、信号処理部8bは、位置検出部80、変調部81、DAC82、遅延信号生成部83a、遅延量記憶部92、及びゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備えている。信号処理部8bは、遅延信号生成部83a及び遅延量記憶部92を備えている点が信号処理部8aと異なり、遅延信号生成部83a及び遅延量記憶部92を除く他の構成は、信号処理部8aと同様である。以下、遅延信号生成部83a及び遅延量記憶部92について説明する。
【0066】
遅延量記憶部92(記憶部)は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの書き換え可能な不揮発性メモリであり、所定の遅延量Δtを予め記憶している。本実施形態では、この所定の遅延量Δtは、設定装置15の遅延設定部16によって記憶される。
遅延信号生成部83aは、遅延生成部30を備えており、遅延生成部30によって参照信号(変調信号)を遅延させる。
遅延生成部30は、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtに応じて、変調部81によって生成された参照信号(変調信号)を遅延させて、遅延参照信号(遅延変調信号)を生成する。遅延生成部30は、生成した遅延参照信号(遅延変調信号)を位置検出部80に供給する。ここで、遅延生成部30の構成について詳細に説明する。
【0067】
図7は、本実施形態における遅延生成部30の構成の一例を示す概略ブロック図である。
図7において、遅延生成部30は、遅延回路31〜34及び3N、選択部35を備えている。
遅延回路31〜34及び3Nは、それぞれ入力信号に所定の単位遅延量を遅延させた遅延信号を生成し、生成した遅延信号を出力信号として出力する。遅延回路31〜34及び3Nは、直列に接続され、遅延回路31〜34及び3Nの各出力端子と、選択部35の入力端子I1〜I4及びINとがそれぞれ接続されている。また、遅延回路31の入力端子には、変調部81によって生成された参照信号(変調信号)が供給される。すなわち、遅延回路31〜34及び3Nは、参照信号(変調信号)に対して、それぞれ遅延量の異なる遅延信号を選択部35に出力する。
【0068】
選択部35は、遅延量記憶部92に予め記憶されている所定の遅延量Δtに基づいて、入力端子I1〜I4及びINに供給される遅延量の異なる遅延信号のうちから、遅延参照信号(遅延変調信号)として出力する信号を選択する。すなわち、選択部35は、所定の遅延量Δtに基づいて選択した遅延信号を遅延参照信号(遅延変調信号)として出力する。
このように、遅延生成部30は、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtに応じた遅延参照信号を位置検出部80に供給する。本実施形態では、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtの値を変更することにより、遅延信号生成部83aは、遅延参照信号の参照信号に対する遅延量を変更することができる。
【0069】
再び図6に戻り、設定装置15は、遅延設定部16を備えている。
遅延設定部16は、遅延量記憶部92に記憶する所定の遅延量Δtを計測して定め(設定し)、定めた(設定した)所定の遅延量Δtを遅延量記憶部92に記憶させる。
一例として、遅延設定部16は、例えば、ノードBの遅延参照信号と受光素子71が受光してゲインコントロールアンプ84aを介して出力されたノードCの受光信号とのリサージュ波形を生成する。遅延設定部16は、生成したリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とを一致させるように、所定の遅延量Δtを定める(設定する)。すなわち、所定の遅延量Δtは、遅延参照信号と受光信号とのリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とを一致させるように定められている。
【0070】
次に、本実施形態におけるエンコーダ装置1の動作について説明する。
本実施形態におけるエンコーダ装置1の基本的な動作は、第2の実施形態と同様である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、遅延信号生成部83aの遅延生成部30が、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtに応じて、遅延参照信号の参照信号に対する遅延量を変更する。
【0071】
一例として、遅延生成部30は、N個の遅延回路31〜34及び3Nが直列に接続されており、選択部35が、遅延回路31〜34及び3Nのうちの1つの所定の遅延量Δtに対応する出力信号(遅延信号)を遅延参照信号として出力する。例えば、遅延回路31〜34及び3Nの各遅延量(所定の単位遅延量)が遅延量DTである場合、遅延回路31の出力における参照信号に対する遅延量は、遅延量DTである。また、遅延回路32の出力における参照信号に対する遅延量は、遅延量(2×DT)である。
例えば、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtに対応する遅延量が遅延量(2×DT)である場合、選択部35は、所定の遅延量Δtに基づいて、遅延回路32の出力を選択し、遅延参照信号として出力する。すなわち、この場合、遅延生成部30は、遅延量DTの倍数でN段階に所定の遅延量Δtを変更することができる。
【0072】
次に、本実施形態における設定装置15の遅延設定部16の動作について説明する。
図8は、本実施形態における遅延設定部16の処理の一例を示すフローチャートである。
図8において、遅延設定部16は、まず、所定の遅延量Δtの初期値を遅延量記憶部92に記憶させる(ステップS101)。
次に、遅延設定部16は、ノードBの遅延参照信号とノードCの受光信号とのリサージュ波形を生成する(ステップS102)。
次に、遅延設定部16は、生成したリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とが一致しているか否かを判定する(ステップS103)。遅延設定部16は、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とが一致していると判定した場合に、処理をこの所定の遅延量Δtの設定処理を終了させる。また、遅延設定部16は、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とが一致していないと判定した場合に、処理をステップS104に進める。
【0073】
ステップS104において、遅延設定部16は、所定の遅延量Δtの値を変更して遅延量記憶部92に記憶させ、処理をステップS102に戻す。
このように、ステップS102からステップS104の処理が、ステップS103において、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とが一致していると判定されるまで繰り返される。
【0074】
図9は、本実施形態におけるリサージュ波形の一例を示す図である。
図9において、リサージュ波形の横軸はノードBの遅延参照信号に対応し、リサージュ波形の縦軸はノードCの受光信号に対応する。
図9(a)は、ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致していない場合の波形(W6、W7)を示している。また、図8(b)は、ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致している場合の波形W8を示している。
【0075】
図9(a)に示すように、ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致していない場合、リサージュ波形は、波形W6及びW7が一致しない2つの波形が形成される。この状態において、遅延設定部16が、図8におけるステップS102からステップS104の処理を繰り返すことによって、図9(b)に示すような波形W8を得る。ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致している場合、リサージュ波形は、波形W8のように、1つの波形が形成される。このように、遅延設定部16は、生成したリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とを一致させるように、所定の遅延量Δtを定める(設定する)。
【0076】
なお、上記の実施形態では、所定の遅延量Δtがリサージュ波形を用いて設定される形態を説明したが、例えば、遅延設定部16が、受光信号に含まれる変調成分の位相と変調信号の位相との位相差を計測し、計測した位相差基づいて所定の遅延量Δtが定められる形態でもよい。この場合、エンコーダ装置1において、所定の遅延量Δtは、受光信号に含まれる変調成分の位相と変調信号の位相との位相差に基づいて、予め定められている形態でもよい。
また、設定装置15は、エンコーダ装置1の出荷前の検査、校正処理、部品交換などの修理などの際にエンコーダ装置1に接続され、所定の遅延量Δtを設定する設定処理を実行する。
【0077】
以上のように、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、所定の遅延量Δtを記憶している遅延量記憶部92を備える。遅延信号生成部83aは、遅延生成部30が、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtに応じて、参照信号を遅延させる。
これにより、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtの値を変更することにより、遅延参照信号の参照信号に対する遅延量を変更することができる。そのため、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、光源部2における位相遅れ特性の経時変化や光源部2の部品交換による位相遅れ特性の変化に対して、所定の遅延量Δtの値を補正することができる。よって、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0078】
また、本実施形態では、所定の遅延量Δtは、遅延参照信号と受光信号とのリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とを一致させるように定められている。
これにより、変調信号に対する光源部2(光源21)における変調の位相遅れ量に基づいて所定の遅延量Δtを定めた場合(品種及び使用条件によって定まる位相遅れ量)に比べて、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、所定の遅延量Δtを正確に設定することができる。そのため、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、変調信号に対する光源部2(光源21)における変調の位相遅れ量に基づいて所定の遅延量Δtを定めた場合に比べて、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0079】
また、本実施形態では、所定の遅延量Δtは、受光信号に含まれる変調成分の位相と変調信号の位相との位相差に基づいて、予め定められていてもよい。
これにより、リサージュ波形に基づいて所定の遅延量Δtを定めた場合と同様に、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、所定の遅延量Δtを正確に設定することができる。そのため、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、変調信号に対する光源部2(光源21)における変調の位相遅れ量に基づいて所定の遅延量Δtを定めた場合に比べて、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0080】
また、本実施形態では、設定装置15は、所定の遅延量Δtを計測して定める遅延設定部16を備える。遅延設定部16は、上述のように計測に基づいて、所定の遅延量Δtを定めて、遅延信号生成部83aに記憶させる。そのため、設定装置15は、所定の遅延量Δtを正確に設定することができる。設定装置15によって所定の遅延量Δtが正確に設定されるので、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0081】
また、本実施形態では、遅延設定部16は、ノードBの遅延参照信号とノードCの受光信号とのリサージュ波形を生成する。遅延設定部16は、生成したリサージュ波形に基づいて、所定の遅延量Δtを定める(設定する)。
これにより、設定装置15は、所定の遅延量Δtが正確に設定することができる。
【0082】
[第4の実施形態]
図10は、第4の実施形態によるエンコーダ装置1の構成を示す概略ブロック図である。
図10において、図6と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本実施形態において、検出ヘッド9及びスケール6の構成は、図1に示される構成と同一である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、第3の実施形態における信号処理部8bの代わりに信号処理部8cを備えている。
【0083】
信号処理部8cは、位置検出部80、変調部81、DAC82、遅延信号生成部83a、遅延量記憶部92、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)及び遅延設定部16を備えている。信号処理部8cは、遅延設定部16を備えている点が信号処理部8bと異なり、遅延設定部16を除く他の構成は、信号処理部8bと同様である。以下、遅延設定部16について説明する。
【0084】
遅延設定部16は、第3の実施形態における設定装置15が備える遅延設定部16と同様の構成である。つまり、遅延設定部16は、第3の実施形態と同様に、所定の遅延量Δtを計測して定める。すなわち、遅延設定部16は、例えば、ノードBの遅延参照信号と受光素子71が受光してゲインコントロールアンプ84aを介して出力されたノードCの受光信号とのリサージュ波形を生成する。遅延設定部16は、生成したリサージュ波形に基づいて、受光信号に含まれる変調成分の位相と、遅延参照信号の位相とを一致させるように、所定の遅延量Δtを定める(設定する)。
【0085】
次に、本実施形態におけるエンコーダ装置1の動作について説明する。
本実施形態におけるエンコーダ装置1の基本的な動作は、第3の実施形態と同様である。本実施形態では、エンコーダ装置1は、遅延設定部16が、所定の遅延量Δtを設定する設定処理を行う。なお、この遅延設定部16による所定の遅延量Δtを設定する設定処理は、図8に示されるフローチャートの処理と同様である。
なお、エンコーダ装置1は、この遅延設定部16による設定処理を予め定められた期間ごとに実行してもよいし、メンテナンスモードなどを設けて、メンテナンスモードにおいて、実行してもよい。また、エンコーダ装置1は、エンコーダ装置1の使用時ごとにこの設定処理を実行してもよい。
【0086】
以上のように、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、所定の遅延量Δtを計測して定める遅延設定部16を備える。すなわち、遅延設定部16は、上述の計測に基づいて、所定の遅延量Δtを定めて、遅延信号生成部83aに記憶させる。
これにより、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、設定装置15を用いずに、所定の遅延量Δtを正確に設定することができる。すなわち、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、光源部2における位相遅れ特性の経時変化や光源部2の部品交換による位相遅れ特性の変化に対して、設定装置15を用いずに、所定の遅延量Δtの値を補正することができる。よって、本実施形態におけるエンコーダ装置1は、常に所定の遅延量Δtの値を適切な値に設定することができるので、スケール6の位置情報を高精度に検出することができる。
【0087】
[第5の実施形態]
次に、上記の各実施形態におけるエンコーダ装置1を駆動装置に適用した場合の一実施形態について説明する。
図11は、本実施形態における駆動装置100の構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態は、上記の各実施形態におけるエンコーダ装置1を使用して、移動体を駆動する駆動装置100である。なお、本実施形態では、移動体の一例としてステージ12を駆動するステージ装置について説明する。
【0088】
図11において、ステージ装置である駆動装置100(装置)は、エンコーダ装置1(1a)、ステージ12、駆動部11及び制御装置10(制御部)を備えている。この図において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
エンコーダ装置1は、スケール6、検出ヘッド9、及び信号処理部8(8a〜8c)を備えている。
【0089】
ステージ12(移動体)は、例えば、スケール6又は検出ヘッド9と固定されており、駆動部11によって駆動(移動)される。すなわち、ステージ12は、スケール6又は検出ヘッド9に接続されている。
駆動部11は、ステージ12をスケール6における位置検出方向に相対的に駆動する。
制御装置10(制御部)は、制御信号線C1を介してエンコーダ装置1の信号処理部8(8a〜8c)と接続されている。この制御信号線C1を介して、エンコーダ装置1は、上述した位置情報を制御装置10に供給する。
また、制御装置10は、制御信号線C2を介して駆動部11と接続されている。制御装置10は、この制御信号線C2を介して駆動部11を制御する。
【0090】
制御装置10は、エンコーダ装置1から供給されたステージ12の位置情報に基づいて、駆動部11を制御する。
【0091】
以上のように、本実施形態における駆動装置100は、エンコーダ装置1と、スケール6又は検出ヘッド9に接続されているステージ12とを備えている。
エンコーダ装置1が、スケール6の位置情報を高精度に検出することができるため、本実施形態における駆動装置100は、ステージ12の位置情報を高精度に検出することができる。これにより、本実施形態における駆動装置100は、高精度にステージ12の位置を制御することができる。
【0092】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
上記の各実施形態において、受光部7は、2つの受光素子(71、72)を備える形態を説明したが、1つの受光素子を備えて、受光素子において、干渉光L12及びL23を合成した受光信号を出力する形態でもよい。
【0093】
また、上記の各実施形態において、受光部7にアンプ(84、85)又はゲインコントロールアンプ(84a、85a)が含まれる形態を説明したが、受光部7にアンプ(84、85)又はゲインコントロールアンプ(84a、85a)が含まれない形態でもよい。また、光源部2にドライブ部22が含まれる形態を説明したが、光源部2にドライブ部22が含まれない形態(ドライブ部22が信号処理部8に含まれる形態)でもよい。
【0094】
また、上記の各実施形態において、検出ヘッド9は、信号処理部8(8a〜8c)を含まない形態を説明したが、信号処理部8(8a〜8c)を含む形態でもよい。
また、上記の各実施形態において、スケール6がリニアスケールである形態について説明したが、円盤型や扇型のスケール6を用いてロータリー式のエンコーダに適用する形態でもよい。
また、上記の各実施形態において、検出ヘッド9が固定され、スケール6が変位方向に移動する形態を説明したが、スケール6が固定され、検出ヘッド9が変位方向に移動する形態でもよい。
【0095】
また、上記の各実施形態において、変調部81によって生成される参照信号が変調信号である形態について説明したが、これに限定されるものではない。参照信号は、位置検出部80の内挿処理方式によって種々の形態が考えられ、変調信号に応じて生成された参照信号でもよいし、変調信号に対応している参照信号であれば、他の形態でもよい。
また、上記の各実施形態において、変調部81は、照射光の波長を変調させる変調信号を生成する形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、変調部81は、光源部2が射出する照射光の光量を周期的に変調する形態でもよい。
【0096】
また、上記の第2〜第4の各実施形態において、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)の利得を制御する信号として変調信号を用いる形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、変調信号に基づいて生成された制御信号を用いる形態でもよい。
【0097】
また、上記の第3の実施形態において、設定装置15が所定の遅延量Δtの値を計測により設定し、エンコーダ装置1の遅延量記憶部92に所定の遅延量Δtを設定する形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、オシロスコープなどの計測装置とパーソナルコンピュータ(PC)などの制御装置10とを利用して所定の遅延量Δtを設定してもよい。
この場合、エンコーダ装置1のノードBにおける遅延参照信号の信号線をオシロスコープのX軸入力端子に、ノードCにおける受光信号の信号線をオシロスコープのY軸入力端子に、それぞれ接続する。また、設定を行う作業者が、ノードPCからエンコーダ装置1の遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtを変更し、オシロスコープに表示されるリサージュ波形を観察する。作業者は、リサージュ波形を観察しながら、ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致するように、ノードPCからエンコーダ装置1の遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtを変更する。
このように、第3の実施形態におけるエンコーダ装置1は、特別な設定装置15を利用せずに、簡易な方法により、所定の遅延量Δtを適切に変更することができる。
【0098】
また、上記の第3及び第4の実施形態は、ゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備える形態を説明したが、第1の実施形態であるゲインコントロールアンプ(84a、85a)を備えない形態において、第3及び第4の実施形態を適用してもよい。すなわち、第1〜第4の実施形態のうちのいずれかを単独で実施する形態でもよいし、第1〜第4の実施形態のうちの複数の形態を組み合わせて実施する形態でもよい。
【0099】
また、上記の第3及び第4の実施形態において、遅延生成部30は、遅延回路31〜34及び3Nを用いる形態を説明したがこれに限定されるものではない。例えば、参照信号及び遅延参照信号は、アナログ信号でもよいし、デジタル信号でもよい。参照信号及び遅延参照信号がデジタル信号である場合、遅延生成部30は、シフトレジスタを用いて遅延量を変更する形態でもよい。この形態では、シフトレジスタに供給するクロック信号の周波数を変更することにより、より精密に所定の遅延量Δtを変更することができる。
【0100】
また、上記の第3及び第4の実施形態において、遅延量記憶部92にEEPROMを用いる形態を説明したが、他の不揮発性メモリを用いる形態でもよい。また、遅延生成部30は、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtの値を直接読み出して使用する形態を説明したが、レジスタなどの一時記憶部に読み出した値を使用する形態でもよい。また、遅延生成部30は、遅延量記憶部92に記憶されている所定の遅延量Δtの値は、所定の遅延量Δtの値に基づいて変換された値でもよい。この場合、遅延生成部30は、所定の遅延量Δtの値に基づいて変換された値によって遅延量を変更する形態でもよい。
【0101】
また、上記の第3及び第4の実施形態において、所定の遅延量Δtを設定する際に、ノードBの遅延参照信号の位相と、ノードCの受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致するように設定している形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、所定の遅延量Δtは、ノードBの遅延参照信号の位相と、受光素子72によって受光されて出力された受光信号に含まれる変調成分の位相とが一致するように定められてもよい。
【0102】
また、上記の第5の実施例において、ステージ12を移動方向(例、一方向)に駆動する駆動装置100に上記の各実施形態におけるエンコーダ装置1を適用する形態を説明したが、この形態に限定されるものではない。例えば、XY移動ステージ、3次元計測装置、モータ装置、工作機械、精密機械、半導体のチップマウンタ、ステッパ装置などの装置に適用してもよい。
また、上記の各実施形態において透過型のスケール6を用いる形態を説明したが、本実施形態は反射型のスケールを用いるような反射型のエンコーダ装置に適用してもよい。
【0103】
また、上記の各実施形態において、信号処理部8(8a〜8c)の各部は、専用のハードウェアによって実現されてもよく、また、信号処理部8(8a〜8c)の各部は、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成され、信号処理部8(8a〜8c)の各機能は、プログラムによって実現されてもよい。
【0104】
上述の信号処理部8(8a〜8c)は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した信号処理部8(8a〜8c)の処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…エンコーダ装置、2…光源部、6…スケール、7…受光部、9…検出ヘッド、12…ステージ、16…遅延設定部、30…遅延生成部、61…パターン、80…位置検出部、83,83a…遅延信号生成部、84a,85a…ゲインコントロールアンプ、92…遅延量記憶部、100…駆動装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射光を射出する光源部と、
少なくとも移動方向に前記光源部と相対的に移動可能であって、前記照射光が入射され、前記移動方向に沿って形成されたパターンを有するスケールと、
前記照射光を変調させる変調信号と、前記変調信号に応じた参照信号とを生成する変調部と、
前記照射光を受光して、受光した前記照射光に応じた受光信号を出力する受光部と、
前記参照信号を遅延させて遅延参照信号を生成する遅延信号生成部と、
前記遅延信号生成部によって生成された前記遅延参照信号と前記受光信号とに基づいて、前記移動方向における前記スケールの位置情報を検出する位置検出部と、
を備えることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項2】
前記遅延信号生成部は、
前記遅延参照信号の位相が前記受光信号に含まれる変調成分の位相と一致するように、前記遅延変調信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記遅延信号生成部は、
所定の遅延量に基づいて前記参照信号を遅延させて、前記遅延参照信号を生成する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記所定の遅延量は、
前記変調信号に対する前記光源部における変調の位相遅れ量に基づいて予め定められている
ことを特徴とする請求項3に記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記所定の遅延量は、
前記受光信号に含まれる変調成分の位相と前記変調信号の位相との位相差に基づいて、予め定められている
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
前記所定の遅延量は、
前記遅延参照信号と前記受光信号とのリサージュ波形に基づいて、前記受光信号に含まれる変調成分の位相と、前記遅延参照信号の位相とを一致させるように定められている
ことを特徴とする請求項3に記載のエンコーダ装置。
【請求項7】
前記所定の遅延量を記憶している記憶部を備え、
前記遅延信号生成部は、
前記記憶部に記憶されている所定の遅延量に応じて、前記参照信号を遅延させる遅延生成部を備える
ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項8】
前記所定の遅延量を計測して定める遅延設定部を備える
ことを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項9】
前記受光部は、
前記変調信号に基づいて利得を変更して、前記受光信号を出力する増幅回路部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項10】
前記変調部は、
前記変調信号によって、前記照射光の波長を変調させる
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項11】
前記参照信号は、前記変調信号であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のエンコーダ装置と、
前記スケール又は前記エンコーダ装置の検出ヘッドに接続された移動体と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項1】
照射光を射出する光源部と、
少なくとも移動方向に前記光源部と相対的に移動可能であって、前記照射光が入射され、前記移動方向に沿って形成されたパターンを有するスケールと、
前記照射光を変調させる変調信号と、前記変調信号に応じた参照信号とを生成する変調部と、
前記照射光を受光して、受光した前記照射光に応じた受光信号を出力する受光部と、
前記参照信号を遅延させて遅延参照信号を生成する遅延信号生成部と、
前記遅延信号生成部によって生成された前記遅延参照信号と前記受光信号とに基づいて、前記移動方向における前記スケールの位置情報を検出する位置検出部と、
を備えることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項2】
前記遅延信号生成部は、
前記遅延参照信号の位相が前記受光信号に含まれる変調成分の位相と一致するように、前記遅延変調信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記遅延信号生成部は、
所定の遅延量に基づいて前記参照信号を遅延させて、前記遅延参照信号を生成する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記所定の遅延量は、
前記変調信号に対する前記光源部における変調の位相遅れ量に基づいて予め定められている
ことを特徴とする請求項3に記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記所定の遅延量は、
前記受光信号に含まれる変調成分の位相と前記変調信号の位相との位相差に基づいて、予め定められている
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
前記所定の遅延量は、
前記遅延参照信号と前記受光信号とのリサージュ波形に基づいて、前記受光信号に含まれる変調成分の位相と、前記遅延参照信号の位相とを一致させるように定められている
ことを特徴とする請求項3に記載のエンコーダ装置。
【請求項7】
前記所定の遅延量を記憶している記憶部を備え、
前記遅延信号生成部は、
前記記憶部に記憶されている所定の遅延量に応じて、前記参照信号を遅延させる遅延生成部を備える
ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項8】
前記所定の遅延量を計測して定める遅延設定部を備える
ことを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項9】
前記受光部は、
前記変調信号に基づいて利得を変更して、前記受光信号を出力する増幅回路部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項10】
前記変調部は、
前記変調信号によって、前記照射光の波長を変調させる
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項11】
前記参照信号は、前記変調信号であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のエンコーダ装置と、
前記スケール又は前記エンコーダ装置の検出ヘッドに接続された移動体と、
を備えることを特徴とする装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−40809(P2013−40809A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176707(P2011−176707)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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