説明

エンボス加工金属箔、フェノール樹脂発泡体積層板およびその製造方法

【課題】 フェノール樹脂発泡体の表面欠陥を覆い隠す効果が発揮されると共に、意匠、美観効果が加味され、かつ長期使用時の防食性、難燃性、耐熱性、熱線反射性、意匠性などの品質が維持されるフェノール樹脂発泡体積層板、この積層板を与える金属箔を提供する。
【解決手段】 展性を有する金属箔2の少なくとも一方の面にエンボス加工を施してなるエンボス加工金属箔30、およびフェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の面にシート状布材、接着剤層および金属箔2が順に積層され、かつ前記金属箔として、上記エンボス加工金属箔を用い、表面側がエンボス加工部31となるように配したフェノール樹脂発泡体積層板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス加工金属箔、フェノール樹脂発泡体積層板およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、表面にエンボス加工が施された展性を有する金属箔、特にアルミニウム箔、並びに前記エンボス加工金属箔を有し、発泡体の表面欠陥を覆い隠す効果が発揮されると共に、意匠、美観効果が加味され、かつ長期使用時の防食性、難燃性、耐熱性、熱線反射性、意匠性などの品質が維持されるフェノール樹脂発泡体積層板、およびこのものを効率よく製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築やその他の各種産業分野において広く使用される難燃性断熱パネルや耐熱性断熱パネルとして、一般にフェノール樹脂発泡体の片面または両面に、難燃性や耐熱性などを有する面材を一体的に貼着したものが用いられている。前記難燃性や耐熱性などを有する面材としては、例えばアルミニウム箔のような金属箔または金属シートが使用されている。例えばフェノール樹脂発泡体の片面または両面に、不織布または織物シートを介して樹脂コートが施されたアルミニウム箔を積層してなる不燃性断熱パネルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなフェノール樹脂発泡体積層板は、例えばアルミニウム箔などの金属箔をガラス繊維などの不織布または織布に接着して面材を作製し、フェノール樹脂発泡組成物に前記面材を供給し、次いで該フェノール樹脂発泡組成物を硬化させて、面材とフェノール樹脂発泡体を一体成形する方法、あるいは不織布や織物シートなどの面材が表面に積層されたフェノール樹脂発泡体に、接着剤層を介してアルミニウム箔などの金属箔を接合して一体化する方法などによって作製することができる。
【0004】
前記金属箔としては、一般にアルミニウム箔が安価であるために多用されている。しかしながら、アルミニウム箔は、厚さが薄いために、それを用いた金属箔被覆フェノール樹脂発泡体に、製造中、あるいは製造後の保管や輸送中において外部から力が加わると、しわがよったり、傷が付いたりしやすい上、物体と接触すると簡単にその摩擦力で表面に傷が付きやすい欠点を有している。一旦、アルミニウム箔の表面にしわがよったり、傷が付いたりすると、そこを起点にして腐食性、難燃性、熱線反射性などが損なわれる原因になると共に、意匠性や商品性が低下する。
したがって、傷が付きにくく、かつしわがよりにくくて、アルミニウム箔被覆作業性に優れるアルミニウム箔コートフェノール樹脂発泡体の開発が求められていた。
【0005】
一方、フェノール樹脂発泡体からなる断熱層の少なくとも一方の面に、紙質層、アルミニウム箔および合成樹脂層が順に積層されてなる複合断熱材が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、この複合断熱材においては、紙質層としてクラフト紙などの紙が用いられているため、ガス抜きができにくく、したがってガス剥がれが生じやすい上、紙では連続成形ができないなどの問題がある。また、アルミニウム箔に関しては、前述の欠点を有している。
【0007】
【特許文献1】特開2003−239417号公報
【特許文献2】特開2003−56090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情のもとで、アルミニウム箔などの金属箔が被覆されたものであって、フェノール樹脂発泡体の表面欠陥を覆い隠す効果が発揮されると共に、意匠、美観効果が加味され、かつ長期使用時の防食性、難燃性、耐熱性、熱線反射性、意匠性などの品質が維持されるフェノール樹脂発泡体積層板、この積層板を与える金属箔、および前記フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、表面にエンボス加工が施された金属箔、特にアルミニウム箔を用いることにより、所望の好ましい性質を有するフェノール樹脂発泡体積層板が得られること、このものは、シート状布材、接着剤層および表面側にエンボス加工部を有するエンボス加工金属箔を順に積層してなる面材を、該面材のシート状布材が吐出されたフェノール樹脂発泡組成物と対面接触するように供給し、該フェノール樹脂発泡組成物を硬化させることにより、効率よく製造し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) 展性を有する金属箔の少なくとも一方の面にエンボス加工を施してなることを特徴とするエンボス加工金属箔、
(2) 少なくとも一方の面に、所定の幅を有するエンボス部と平滑部が、所定の間隔をおいて交互に平行して並び縞模様を形成していると共に、前記平滑部のほぼ中央に、前記エンボス部に対して平行に線条細溝部を有する上記(1)項に記載のエンボス加工金属箔、
(3) 展性を有する金属箔がアルミニウム箔である上記(1)または(2)項に記載のエンボス加工金属箔、
(4) フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の面にシート状布材、接着剤層および金属箔が順に積層され、かつ前記金属箔として、上記(1)、(2)または(3)項に記載のエンボス加工金属箔を用い、表面側がエンボス加工部となるように配したことを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板、
(5) シート状布材が、無機繊維および有機繊維の中から選ばれる少なくとも1種を用いて得られた織布、編布または不織布である上記(4)項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板、
(6) 接着剤層が、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、合成ゴムおよび天然ゴムの中から選ばれる少なくとも1種を含む単層または複数層からなり、かつ接着剤層が複数層である場合、各層を構成する接着剤の種類が別種のものである上記(4)または(5)項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板、
(7) 接着剤層が単層からなる場合、その厚さが5〜100μmであり、接着剤層が2層からなる場合、それぞれの層の厚さが5〜100μmである上記(6)項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板、
接着剤層が2層からなり、かつそれぞれの厚さが5〜100μmである上記(6)項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板、
(8) エンボス加工金属箔の表面に樹脂コート層を有する上記(4)ないし(7)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板、および
(9) シート状布材、接着剤層および表面側にエンボス加工部を有するエンボス加工金属箔を順に積層してなる面材を、該面材のシート状布材が吐出されたフェノール樹脂発泡組成物と対面接触するように供給し、該フェノール樹脂発泡組成物を硬化させ、フェノール樹脂発泡体と面材とを一体化させることを特徴とする上記(4)ないし(8)項のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面にエンボス加工が施された展性を有する金属箔、特にアルミニウム箔、並びに前記エンボス加工金属箔を有し、発泡体の表面欠陥を覆い隠す効果が発揮されると共に、意匠、美観効果が加味され、かつ長期使用時の防食性、難燃性、耐熱性、熱線反射性、意匠性などの品質が維持されるフェノール樹脂発泡体積層板、およびこのものを効率よく製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のエンボス加工金属箔は、展性を有する金属箔の少なくとも一方の面に、エンボス加工を施したものである。この金属箔は、例えば後述する本発明のフェノール樹脂発泡体積層板に用いる場合には、それに耐熱性、難燃性、熱線反射性、意匠性などを付与するためのものである。前記展性を有する金属箔の材料に特に制限はなく、アルミニウム箔やステンレス鋼箔などを用いることができるが、これらの中で軽量性および経済性などのバランスの面から、アルミニウム箔が好適である。当該金属箔の厚さは、通常7〜100μm程度、好ましくは10〜70μm、より好ましくは15〜50μmである。
【0013】
当該金属箔としてアルミニウム箔を用いる場合、アルミニウム箔の種類に特に制限はないが、JIS H 4160の「アルミニウムおよびアルミニウム合金箔」規定のアルミニウム箔が好適である。
【0014】
エンボス加工は、前記展性を有する金属箔の少なくとも一方の面に、全面または部分的に施すことができるが、特に所定の幅を有するエンボス部と平滑部が、所定の間隔をおいて交互に平行して並び縞模様を形成すると共に、前記平滑部のほぼ中央に、前記エンボス部に対して平行に線条細溝部を有することが好ましい。
【0015】
前記のエンボス加工を施す方法としては、例えば金属箔ロールから排出され走行する金属箔の少なくとも一方の面にエンボスローラを機械的に押し当てる方法、あるいは不織布などをその裏に配置した金属箔の表面にエンボスローラを押し当てる方法などを採用することができる。
【0016】
また、エンボス加工金属箔をフェノール樹脂発泡体積層板において、被覆材として使用する場合、本発明においてはエンボス加工金属箔/接着剤層/シート状布材からなる面材を用いることができる。この面材は、例えばシート状布材と金属箔の間に接着剤を介挿し、金属箔側からエンボスローラを押し当て、該金属箔にエンボス加工を施すことにより作製することができる。
【0017】
図1は、エンボス加工金属箔/接着剤層/シート状布材からなる面材を得る場合において、金属箔表面にエンボス加工を施す方法の1例を示す説明図であり、図2は、エンボスローラの1例の模式的斜視図(a)および模式的縦断面図(b)である。
【0018】
図1で示されるように、シート状布材8と金属箔2との間に接着剤7を介挿し、エンボスローラ4側に金属箔2を配し、エンボスローラ4と対面ローラ5間で金属箔とシート状布材とが接着され、一体化され、面材3が得られる。その際、金属箔は、エンボスローラ4の凸部および反対側からシート状布材8に接し、押さえつけられ、その結果、金属箔面にエンボス模様が生じると考えられる。
【0019】
金属箔にエンボスローラの凸部が押さえ付けられた際、該凸部に接する金属箔がその展性のため延び、凸部と隣の凸部との間の金属箔は弛む。弛んだ部分の金属箔は、その後ガイドローラ6に接して引張られて進行して行く過程で、金属箔の弛んだ部分のほぼ中央部分、すなわち、エンボス加工された縞模様の平滑部のほぼ中央に、前記エンボス部に対して平行に(金属箔の長手方向に沿って)線条の細溝が発生するものと推定される。
【0020】
前記エンボスローラ4は、図2で示されるように、ローラ上に交互に凹凸部を有し、前記凹部、凸部の表面は共に平滑であり、該凸部上にはエンボス模様は付けられていない。金属箔に設けられるエンボス模様は、この場合、前述のように、金属箔がエンボスローラの凸部および反対側からシート状布材に接し、押えつけられることにより、縞模様状に形成される。
【0021】
図3は、本発明のエンボス加工金属箔の1例の上面図である。エンボス加工金属箔30は、展性を有する金属箔2の表面に、所定の幅を有するエンボス部31と平滑部32が、所定の間隔をおいて交互に平行して並び縞模様を形成すると共に、前記平滑部32のほぼ中央に、前記エンボス部31に対して平行に線条細溝部33が形成されている。
【0022】
このような本発明のエンボス加工金属箔は、一般に表面にしわが現れにくく、また現れても目立たないという特性を示す。その上、エンボス部の存在のために、金属箔の強度を向上させると考えられるので、金属箔のロールの直線性が増強されており、したがって、しわがよりにくい。
【0023】
本発明のエンボス加工金属箔は、例えばプラスチック成形体に耐熱性、難燃性、意匠性などを付与する被覆材等として用いることができ、具体的には、下記の本発明のフェノール樹脂発泡体積層板における被覆材として好適に用いられる。
【0024】
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板は、フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の面にシート状布材、接着剤層および金属箔が順に積層され、かつ該金属箔として、前述のエンボス加工金属箔を用い、表面側がエンボス加工部となるように配した構造を有している。
【0025】
このような構造を有する本発明のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法に特に制限はないが、以下に示す本発明の方法によれば、所望のフェノール樹脂発泡体積層板を効率よく製造することができる。
【0026】
本発明の方法によれば、シート状布材、接着剤層および表面側にエンボス加工部を有するエンボス加工金属箔を順に積層してなる面材を、該面材のシート状布材が吐出されたフェノール樹脂発泡組成物と対面接触するように供給し、該フェノール樹脂発泡組成物を硬化させ、フェノール樹脂発泡体と面材とを一体化させることにより、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板を製造することができる。
【0027】
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板はフェノール樹脂発泡体を母材とするものである。
【0028】
母材のフェノール樹脂発泡体としては、特開平6−93128号公報に記載されているように、フェノール樹脂に例えば酸性硬化剤、整泡剤、発泡剤などを添加したフェノール樹脂発泡組成物を硬化させて得られるものが挙げられる。
【0029】
用いられるフェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類及びその変性物とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアルカリ性触媒の存在下に反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0030】
用いられる酸性硬化剤としては、硫酸、リン酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
用いられる整泡剤としては、シリコーン系非イオン界面活性剤、変性ひまし油などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
用いられる発泡剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の低沸点の脂肪族炭化水素、イソプロピルエーテル等のエーテル、塩化メチレン等の塩素化脂肪族炭化水素、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン等の弗素化合物、あるいはこれらの化合物の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
また上記フェノール樹脂発泡組成物に酸化アルミニウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムなどの金属粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛などの粉末状塩基性物質などを含有させてもよい。
【0034】
フェノール樹脂発泡体は、任意の形状とすることができるが、直方体の場合、その2つの主表面間の厚みが0.5〜20cm、特に2〜10cmであるのが好ましい。
【0035】
当該フェノール樹脂発泡体積層板におけるシート状布材としては、無機繊維および有機繊維の中から選ばれる少なくとも1種を用いて得られた織布、編布または不織布を用いることができるが、これらの中で、不織布が好適である。この不織布としては、繊維状で空隙を有し、疎水性を有する不織布であれば、どのようなものでもよいが、特に無機繊維紙、無機繊維不織布および有機繊維不織布から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましく用いられる。
【0036】
シート状布材を構成する無機繊維としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維などが挙げられ、有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維などが挙げられる。
【0037】
本発明における前記シート状布材の厚さに特に制限はないが、通常0.1〜1mm程度、好ましくは0.2〜0.6mmであり、また目付は、通常10〜200g/m程度、好ましくは30〜150g/mである。
【0038】
当該フェノール樹脂発泡体積層板において、シート状布材とエンボス加工金属箔との間に介在させる接着剤層を構成する接着剤に特に制限はなく、従来公知の樹脂、例えばポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、合成ゴムおよび天然ゴムの中から選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂などのポリエチレン樹脂等を挙げることができる。
【0039】
前記接着剤層は、単層構造および複数層構造のいずれであってもよい。
単層構造の接着剤層は、上述の各種接着剤によって構成され、その厚さは5〜100μmであるのが好ましい。
【0040】
複数構造層である場合には、各層を構成する接着剤の種類が別種のものであることが好ましく、例えば、第1の接着剤層と第2の接着剤層とからなる2層構造が挙げられる。この場合、第1の接着剤層はシート状布材に接して設けられるものであり、それを構成する接着剤としては、接着剤としての本来の機能(フェノール樹脂発泡体と面材との接着性)を発揮させるために、前述の樹脂の中から選ばれる少なくとも1種を含むものが用いられる。
【0041】
一方、第2の接着剤層は、面材中のエンボス加工金属箔層と接して設けられるものであり、第2の接着剤層の接着剤としては、フェノール樹脂発泡組成物の硬化反応により発生し、シート状布材、第1の接着剤層を経て上昇してきた熱水蒸気を、端部から外部へ逃散させるために、水蒸気ないし水との親和性が比較的に乏しい樹脂が好ましく用いられ、このような樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、例えばポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂の部分又は完全加水分解物、エチレン−アクリル酸エステル−酸無水物基含有モノマー3元共重合体などの変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0042】
なお、第1の接着剤層の接着剤がポリオレフィン系樹脂であり、第2の接着剤層の接着剤が変性ポリオレフィン系樹脂である場合、両者は別種のポリオレフィン系樹脂を用いるものとする。例えば、第1の接着剤層の接着剤がポリエチレン樹脂である場合、第2の接着剤層の接着剤は変性ポリオレフィン樹脂が用いられる。
【0043】
第1の接着剤層の厚さは、フェノール樹脂発泡体と面材との強固な結合の目的を達成するためには5〜100μmが好ましく、特に15〜45μmが好ましい。また第2の接着剤層の厚さは、その端部から外部への水蒸気の逃散の目的を達成するためには5〜100μmが好ましく、特に15〜45μmが好ましい。
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板においては、外表面に設けられているエンボス加工金属箔の表面に、所望により樹脂コート層を設けることができる。
【0044】
該樹脂コート層は、耐熱性と透明性を有するものであることが好ましい。100℃以上での焼付コートが可能で、金属箔の輻射熱反射機能を阻害しない透明なコート層を形成する樹脂が使用できる。例えば、エポキシ系樹脂焼付コート、シリコーン系樹脂焼付コートが好適に用いられる。その他にポリエチレンのコートまたはフィルム、ポリプロピレンのコートまたはフィルム、塩化ビニールシート、アクリルコート等が可能であるが、一般的に薄くコートすることが難しい。また、樹脂コートのコート量は、通常0.3〜5g/m程度であり、好ましくは0.4〜3g/mである。コート量が0.3g/m未満だと均一な表面コートが困難となり、充分な防食性が得られなくなる。逆にコート量が5g/mを超えると防食性は問題ないが、耐熱性、耐燃焼性が不充分となり、積層板の難燃性を低下させるので適さない。
【0045】
図4は、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板の1例の模式的断面図である。フェノール樹脂発泡体積層板40は、フェノール樹脂発泡体41の一方の面に、シート状布材8、第1の接着剤層42、第2の接着剤層43、樹脂コート層44側にエンボス加工部を有するエンボス加工金属箔30および樹脂コート層44が順に積層された構造を有している。
【0046】
次に、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板を製造するための好適な実施態様について説明する。
まず、シート状布材、第1の接着剤層、第2の接着剤層および表面側にエンボス加工部を有するエンボス加工金属箔を順に積層してなる面材を作製する。
【0047】
上記構成を有する面材は、第1の接着剤層となる接着剤および第2の接着剤層となる接着剤をダイを通して混合しないように2層にして押し出し、第1の接着剤層となる接着剤側にシート状布材を、第2の接着剤層となる接着剤側にエンボス加工金属箔を供給しつつ、一対のロール間を挿通して、一体化することにより得られる。
【0048】
本発明の方法によればこのようにして得られた面材を、該面材のシート状布材が吐出されたフェノール樹脂発泡組成物と対面接触するように供給し、フェノール樹脂発泡組成物を硬化させて、フェノール樹脂発泡体と面材とを一体化させることにより、所望のフェノール樹脂発泡体積層板が得られる。
【0049】
このような製造方法においては、用いられた面材がそのシート状布材とエンボス加工金属箔層との間に高い接着性を有する第1接着剤層および水蒸気逃散性を有する第2接着剤層を有するため、フェノール樹脂発泡体と面材とが強固に結合し、かつフェノール樹脂発泡組成物の硬化時に発生する熱水蒸気の滞留による面材中の金属箔層の剥離の問題を起すことがないので、所望の耐熱性、難燃性、熱線反射性、意匠性を有するフェノール樹脂発泡体積層板を得ることができる。
【0050】
以下に、フェノール樹脂発泡体の二つの表面に面材が設けられたフェノール樹脂発泡体積層板の製造例を図5に基いて具体的に説明する。
図5において、フェノール樹脂発泡体積層板の製造装置10は、フェノール樹脂発泡体の厚み程度の間隔を開けて対向配置された上下一対のコンベア11,12を備えている。これらの上、下部コンベア11,12は、無端のスチールベルト13が複数のローラ14に巻架されて成る無端スチールベルトコンベアであり、搬送速度が同期されて駆動される。
【0051】
この製造装置10は、面材3,3をロール状に巻回すると共に回転可能に支持される支持部15,16を上、下部コンベア11,12に対応して各々備え、上、下部コンベア11,12が駆動されることで、支持部15,16に巻回された面材3,3を各々繰り出し、上、下部コンベア11,12の搬送面に沿って搬送すると共に、ミキサー17で混合されたフェノール樹脂発泡組成物18を、一対の面材3,3間に供給すべく、ガイド管19を介して、下部コンベア12上の面材3上に供給する。また、製造装置10は、一対の面材3,3間に供給され下流に搬送されるフェノール樹脂発泡組成物18を熱硬化させるための加熱装置20を備えている。
【0052】
さらに、製造装置10は、上下一対のコンベア11,12により搬送される一対の面材3,3の搬送方向に沿った縁部3a,3aを両側(図面手前側と向こう側;図では手前側のみ図示)において、搬送途中で繋ぎ合わせて閉じるための閉塞手段21を備えている。この閉塞手段21は、一対の面材3,3の縁部3a,3aを縫合するためのミシンのような縫合装置であっても、接着部材により接着するための接着装置であっても、融着装置であっても良い。この閉塞手段21に対しては、一対の面材3,3の縁部3a,3aを、当該閉塞手段21に向かって上流側から案内するためのガイド部材22が付設されている。
【0053】
このような製造装置10によれば、上、下部コンベア11,12の駆動が開始されると、支持部15,16が回転し、面材3,3が繰り出されて搬送されると共に、ミキサー17からのフェノール樹脂発泡組成物18が、下部の面材3を介して、搬送される一対の面材3,3間に供給される。この時、当該一対の面材3,3の搬送方向に沿った縁部3a,3aは、ガイド部材22により案内されて閉塞手段21に送られ、この閉塞手段21により縫合又は接着又は融着されて、一対の面材3,3間に閉空間が形成され、この閉空間内でフェノール樹脂発泡組成物18が発泡し加熱装置20により熱硬化されてフェノール樹脂発泡体2が形成されると同時に当該フェノール樹脂発泡体2の両面に面材3,3が積層されて搬送され、最後に、繋ぎ合わされて閉じている縁部3a,3aが取り除かれることで、フェノール樹脂発泡体積層板1が得られる。
【0054】
このようなフェノール樹脂発泡体積層板1の製造方法によれば、面材3,3を上下に並べて連続的に走行させると共に、この走行する面材3,3間にフェノール樹脂発泡組成物18を供給して発泡硬化させることで、当該発泡硬化したフェノール樹脂発泡体2の両面に面材3,3を連続的に一体に積層するように製造しているため、フェノール樹脂発泡体積層板1が簡易に得られ、製造コストの低減が図られる。
【0055】
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板は、以下に示す効果を奏する。
フェノール樹脂発泡体に、アルミニウム箔などの金属箔を貼った場合、被覆後の金属箔表面は、フェノール樹脂発泡体表面の平滑性の乱れや、金属箔被覆時の加工の不具合などから、金属箔表面に凹凸や歪み、傷などが生じることがある。これに対し、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板においては、その種の発泡体の表面の平滑性の不具合に起因する金属箔のよれや凹凸など、あるいはしわの発生が目立たなくなると共に、傷が発生しにくい。ひいては、長期使用時の防食性、高温加熱時の難燃性、耐熱性、熱線反射性、意匠性(高級感)などの品質が維持されることにつながる。フェノール樹脂発泡体の表面欠陥を覆い隠す効果が、エンボス加工されていない金属箔を使う場合よりも極めて大きい。
【0056】
特に、エンボス加工金属箔としてアルミニウム箔を用いた場合には、前記効果に加えて、安価なものとなり、経済的にも有利である。
【実施例】
【0057】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(1)面材の作製
不織布として、キュムラスVH−4260(日本バイリーン(株)製ガラス繊維不織布 坪量60g/m)を、接着剤層として、低密度ポリエチレン樹脂1384R(東ソー(株)製低密度ポリエチレン樹脂)、金属箔としてアルミニウム箔(JIS H 4160に規定されたもの)を用い、金属箔表面にエンボス加工を施す方法に従い、ホットメルト法(300℃)により一体化することによって、不織布/接着剤層/エンボス加工アルミニウム箔の構成を有する面材を作製した。
(2)フェノール樹脂発泡体積層板の製造
フェノール84重量部、37重量%ホルマリン558重量部、水酸化ナトリウム11.1重量部をフラスコに投入し、90℃で60分間等温反応させた後、反応液のpHが7.0〜7.3になるようにしゅう酸を添加して反応液を中和し、減圧下80℃で脱水することにより、レゾール型フェノール樹脂を得た。このレゾール型フェノール樹脂は、遊離フェノール3.0重量%、遊離ホルマリン1.9重量%であった。
【0058】
上で得られたレゾール型フェノール樹脂に酸性硬化剤としてフェノールスルホン酸を20重量部、発泡剤として塩化メチレンを7重量部加え、攪拌して、レゾール型フェノール樹脂発泡組成物を得た。
【0059】
得られたレゾール型フェノール樹脂発泡組成物を、上記(1)で得られた面材とともに、図5に示す製造装置に供給しフェノール樹脂発泡体積層板を製造したが、得られたフェノール樹脂発泡体積層板は面材中の金属箔層の剥離がなく、優れた耐熱性、難燃性、熱線反射性、意匠性を有していた。
【0060】
面材におけるアルミニウム箔および積層板におけるアルミニウム箔のしわ・傷の目立ちやすさの評価結果を表1に示す。
【0061】
比較例1
エンボス加工されていないアルミニウム箔面材を用いた以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を製造した。得られたフェノール樹脂発泡体積層板は実施例1と同様に面材中の金属箔層の剥離がなく、優れた耐熱性、難燃性、熱線反射性、意匠性を有していた。
面材におけるアルミニウム箔および積層板におけるアルミニウム箔のしわ・傷の目立ちやすさの評価結果を表1に示す。
【0062】
実施例2
実施例1における面材の作製に、第2の接着剤層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を製造した。
面材におけるアルミニウム箔および積層板におけるアルミニウム箔のしわ・傷の目立ちやすさの評価結果を表1に示す。
【0063】
実施例3
実施例2における面材の作製に、ガラス繊維不織布の代わりに、ポリエステル繊維不織布[ユニチカ(株)製、「マトリックス70505FLV」、スパンボンド]を用いた以外は、実施例2と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を製造した。
面材におけるアルミニウム箔および積層板におけるアルミニウム箔のしわ・傷の目立ちやすさの評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
(注)アルミニウム箔のしわ・傷の目立ちやすさの評価
幅90cm、長さ180cmの製造直後の面材およびフェノール樹脂発泡体積層板それぞれ100枚について、目視にて下記の基準で評価した。
○:しわや傷がほとんど目立たない。
△:しわや傷が若干目立つ。
×:しわや傷が目立ち、商品として出荷できない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のフェノール樹脂発泡体積層板は、エンボス加工金属箔が被覆されたものであって、発泡体の表面欠陥を覆い隠す効果が発揮されると共に、意匠、美観効果が加味され、かつ長期使用時の防食性、難燃性、耐熱性、熱線反射性、意匠性などの品質が維持される特徴を有し、難燃性断熱パネルや耐熱性断熱パネルなどとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】エンボス加工金属箔/接着剤層/シート状布材からなる面材を得る場合において、金属箔表面にエンボス加工を施す方法の1例を示す説明図である。
【図2】エンボスローラの1例の模式的斜視図(a)および模式的縦断面図(b)である。
【図3】本発明のエンボス加工金属箔の1例の上面図である。
【図4】本発明のフェノール樹脂発泡体積層板の1例の模式的断面図である。
【図5】フェノール樹脂発泡体積層板の製造装置の1例の概略図である。
【符号の説明】
【0068】
1,40 フェノール樹脂発泡体積層板
2 金属箔
3 面材
3a 面材の縁部
4 エンボスローラ
5 対面ローラ
6 ガイドローラ
7 接着剤
8 シート状布材
10 製造装置
11 上部コンベア
12 下部コンベア
13 無端スチールベルト
14 複数個のローラ
15,16 面材支持部
17 ミキサー
18 フェノール樹脂発泡組成物
19 ガイド管
20 加熱装置
21 閉塞手段
22 ガイド部材
30 エンボス加工金属箔
31 エンボス部
32 平滑部
33 線条細溝部
41 フェノール樹脂発泡体
42 第1の接着剤層
43 第2の接着剤層
44 樹脂のコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
展性を有する金属箔の少なくとも一方の面にエンボス加工を施してなることを特徴とするエンボス加工金属箔。
【請求項2】
少なくとも一方の面に、所定の幅を有するエンボス部と平滑部が、所定の間隔をおいて交互に平行して並び縞模様を形成していると共に、前記平滑部のほぼ中央に、前記エンボス部に対して平行に線条細溝部を有する請求項1に記載のエンボス加工金属箔。
【請求項3】
展性を有する金属箔がアルミニウム箔である請求項1または2に記載のエンボス加工金属箔。
【請求項4】
フェノール樹脂発泡体の少なくとも一方の面にシート状布材、接着剤層および金属箔が順に積層され、かつ前記金属箔として、請求項1、2または3に記載のエンボス加工金属箔を用い、表面側がエンボス加工部となるように配したことを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項5】
シート状布材が、無機繊維および有機繊維の中から選ばれる少なくとも1種を用いて得られた織布、編布または不織布である請求項4に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項6】
接着剤層が、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、合成ゴムおよび天然ゴムの中から選ばれる少なくとも1種を含む単層または複数層からなり、かつ接着剤層が複数層である場合、各層を構成する接着剤の種類が別種のものである請求項4または5に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項7】
接着剤層が単層からなる場合、その厚さが5〜100μmであり、接着剤層が2層からなる場合、それぞれの層の厚さが5〜100μmである請求項6に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項8】
エンボス加工金属箔の表面に樹脂コート層を有する請求項4ないし7のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項9】
シート状布材、接着剤層および表面側にエンボス加工部を有するエンボス加工金属箔を順に積層してなる面材を、該面材のシート状布材が吐出されたフェノール樹脂発泡組成物と対面接触するように供給し、該フェノール樹脂発泡組成物を硬化させ、フェノール樹脂発泡体と面材とを一体化させることを特徴とする請求項4ないし8のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−35675(P2006−35675A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219831(P2004−219831)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】