説明

オレオイルエタノールアミド主体の機能性メソフェーズ

本発明は、液晶の分野に関する。本発明の実施形態は、少なくとも一種のN−アシルエタノールアミド(NAE)類、例えばオレオイルエタノールアミド(OEA)を含む液晶、その液晶を含む組成物、及び可能性のあるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、液晶の分野に関する。本発明の実施形態は、少なくとも一種のN−アシルエタノールアミド(NAE)類、例えばオレオイルエタノールアミド(OEA)、を含有する液晶、その液晶を含む組成物、及び可能性のあるその使用に関する。
【0002】
薬剤の薬理学的投与における最近の研究によって、サブマイクロ構造のビヒクルは、例えばエマルション、ゲルなどのマイクロメートルスケールの送達システムよりはるかに効率的であることが実証されている(A.zur Muhlenら、European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics、1998、45、149)。このことは、サブマイクロエマルション、マイクロエマルション及び固体脂質サブマイクロ粒子などの小構造の食物担体に対する新たな関心をもたらした。しかし、上記の構造は全て、食品グレードの配合物において重大な欠点を有する。例えば、親水性化合物を送達できるのは、サブマイクロエマルション及びマイクロエマルションだけである。サブマイクロエマルションは、極度の超音波処理及び均質化手順を必要とし、長期的に不安定である。マイクロエマルションは熱力学的に安定であるが、マイクロエマルションを安定化するために使用され、食品グレードへの応用が厳しく制限されている界面活性剤に強く左右される。最後に、固体脂質サブマイクロ粒子は安定であるが、疎水性化合物の送達のみを可能にする。
【0003】
近年、モノグリセリド及び水の自己組織化リオトロピック液晶(LC)相並びにそのコロイド状水性分散液は、食品技術、タンパク質又は多糖類のカプセル化及び結晶化、投薬、新しい送達システムの処方、などの様々な応用分野におけるそのポテンシャルによって、関心を集めている。モノグリセリド/水の二成分系で見られる一般的なタイプの液晶相は、等方性ミセル流体(L)、ラメラ相(Lα)、逆ヘキサゴナル柱状相(HII)、及び逆両連続キュービック構造の一部のタイプ、即ち二重ダイヤモンド(Pn3m)及び二重ジャイロイド(Ia3d)である(Mezzenga,R.ら;Langmuir 2005、21、3322)。水性ドメイン中に位置する極性ゲスト分子は、水溶液の特性を変化させることになり、モノグリセリドの極性頭部基の平衡水和レベルを変更する、又はモノグリセリド頭部基との協同的水素結合に直接関与することができる。Saturni及びMariariの研究グループは、親水性ゲスト分子の例としてトレハロース糖類によって改変された、大過剰の水の存在下での脂質−水系の液晶挙動を調査してきた(Saturni,L.ら、P.Phys.Rev.E 2001、64、040902;Marianiら、L.Eur.Biophys.J.Biophys.1999、28、294)。
【0004】
Mezzengaらは、モノグリセリド−水バルク系において分子量が異なるデキストラン多糖系列を用いることによってこれらの知見を裏付け、さらに親水性分子のサイズが、異なる群空間の両連続キュービック相の間で、例えば秩序−秩序転移を誘発することで、役割を果たしていることを実証した(Mezzenga,R,ら、Langmuir 2005、21、6165)。一方、好ましくはLC系の疎水性領域に分配される無極性添加剤の効果は、脂質炭化水素の尾部を膨潤させる本質的な傾向があり、それらのパッキングフラストレーションを解放し、逆相の形成を促進する水/脂質の曲率を増加させることになる。
【0005】
これらの液晶は、サブマイクロメートルサイズの粒子として水に再分散することがしばしばできるが、活性成分に対する可能な送達ビヒクルとしてモノグリセリド−水系を使用する時の主な欠点の1つは、得られた配合物中に新しい脂肪成分、例えばモノグリセリドを導入することである。
【0006】
肥満抑制に対する明らかな栄養的見地及び現在の必要性から、食品組成物中のモノグリセリドなどの脂肪化合物の総量を低く維持しなければならない。そのため、脂肪主体の液晶は、特に食品用途に対して、理想的な送達システムではない。
【0007】
この従来技術から始めて、本発明の目的は、当該技術の現状を改善し、極性環境、例えば水性環境で、親水性分子及び疎水性分子用の送達シャトルとして使用でき、同時に、脂肪性化合物の総量を増加させないと見込まれ、したがって低脂肪食品にも許容される送達ビヒクルを、従来技術にもたらすことであった。
【0008】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成することができる。従属請求項は、本発明をさらに展開する。
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、親水性溶媒、例えば水、及び特別なタイプの親油性生物活性化合物、即ちN−アシルエタノールアミド(NAE)類の一員、例えばオレオイルエタノールアミド(OEA)、に基づく新しい系が、このような送達ビヒクルを生成させることを認識した。
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、N−アシルエタノールアミド(NAE)類の一員、例えばOEAなどの親油性生物活性化合物が、本発明の液晶を調製するのに首尾よく使用できることを認識した。
【0011】
本発明者らは、(A)OEAと例えば水とが、水相中で再分散性の液晶を形成すること、並びに(B)OEA−と例えば水との液晶を、例えば水性環境で、親水性分子及び疎水性分子用の送達ビヒクルとして使用できることを実証できた。OEAは、内在性カンナビノイドのアナンダミドの天然類似体であり、例えばチョコレート中に自然に存在する。OEAの投与によって、食物摂取及び体重の増加を強力に持続的に減少させる(Thabuis,C,ら、Lipid Technology 2007、19、225)。OEAはまた、摂食の末梢性調節に関わる脂質媒介物であるように思われる(de Fonseca,F.R.ら、Nature 2001、414、209)。
【0012】
本発明の一実施形態は、少なくとも一種のN−アシルエタノールアミド(NAE)類、例えばオレオイルエタノールアミド(OEA)と、親水性溶媒とを含む新規な液晶に関する。親水性溶媒は、例えば、水であってもよい。液晶はリオトロピックであってもよい。例えば、OEA−水系によって形成される液晶は、キューボソームの形態で水に再分散できることが見出された。
【0013】
新規な液晶の摂取によって、食物摂取を強力に持続的に減少させ、その結果、体重管理及び食物摂取制限、例えば飽食感及び/又は満腹感に貢献することになろう。
【0014】
その結果、食糧の脂肪含有量を増加させ、それにより食糧のエネルギー量を増加させている脂肪主体系とは正反対の効果を有する。
【0015】
好ましくは、結晶は、L2相(L2 phase)、ラメラ相(lamellar phase)、逆ヘキサゴナル相(reverse hexagonal phase)、逆Ia3d二重ジャイロイド相(reverse la3d double gyroid phase)、逆二重Pn3mダイヤモンドキュービック相(the reverse double Pn3m diamond cubic phase)、逆単純Im3mキュービック相(reverse primitive lm3m cubic phase)などの典型的なリオトロピックメソフェーズ中、又はミセル状Fd3mキュービック相(Fd3m cubic phase)中に存在することができる。異なる相中の結晶の混合物を使用することもできる。
【0016】
本発明の液晶のサイズ及び結晶相は、液晶の安定性に影響を及ぼす。この結晶の性質によって、例えば、結晶のサイズを選択する、又は結晶の使用目的に応じて安定な若しくはより不安定な特定の結晶形を選択することができる。
【0017】
親水性溶媒及び/又は液晶はまた、少なくとも1つのゲスト分子を含むことができる。ゲスト分子は、液晶の内側に存在することができる。このゲスト分子は、親水性ゲスト分子であることが好ましい。好ましくは親水性ゲスト分子の性質は、重要ではない。いずれのゲスト分子も、最終結晶の使用目的によって選択することができる。食品用途に関しては、その少なくとも1つのゲスト分子が食品グレードであることが好ましい。例えば、本発明者らは、例えば糖及びアミノ酸、例えばアルギニン及びグルコースを、極性ゲスト分子として使用できることを実証している。
【0018】
本発明の枠組み内で使用できる典型的な親水性ゲスト分子は、親水性アミノ酸、親水性ビタミン、糖、薬学的に活性な親水性化合物、塩、ペプチド、及び/又は親水性栄養素からなる群から選択されることが好ましい。
【0019】
好ましくは、親水性ゲスト分子は、技術的に実行可能な任意の量で本発明の液晶中に存在することができる。典型的に好ましい量は、結晶のサイズ及び結晶相、並びにゲスト分子の性質によって決まる。しかし、ゲスト分子は、結晶の最大2.5重量%、好ましくは結晶の0.5〜2重量%、さらにより好ましくは結晶の1〜2重量%の量で、結晶中に存在していれば一般的には好ましい。
【0020】
この液晶は、例えば、ゲスト分子を送達するための、又は、口、胃、及び/又は消化管のかなり過酷な環境からゲスト分子を保護するための送達ビヒクルとして有利に使用できる。したがって、この液晶は、ゲスト分子を標的部位に送達するために使用することができる。
【0021】
この標的送達は、結晶の形及びサイズを適切に選択することによって、精巧に調整することができる。
【0022】
液晶はまた、ゲスト分子の潜在的な不快な味を隠すのに使用することができる。
【0023】
本発明の液晶のさらなる用途は、長い貯蔵期間中の変化及び/又は劣化から、価値のある分子を保護することである。
【0024】
本発明による液晶はまた、少なくとも1種のその他の親油性化合物を含むことができる。これらのその他の親油性化合物は特に限定しないが、液晶が食品で使用されることを意図する場合、この親油性化合物は、食品グレードの化合物であることが好ましい。このような別の親油性化合物の一例として、リモネンがある。その他の適した例としてはトリグリセリド、不飽和油又は飽和油、精油、ビタミン、疎水性の芳香剤及び香料がある。
【0025】
また、親水性ゲスト分子と同様に、少なくとも1種の親油性化合物は、液晶によって保護される及び/又は送達されるゲスト分子とすることができる。同じように、例えば、その味を液晶によって隠すことができる。また、その親油性化合物は、それ自体で、液晶にある種の風味を与える芳香化合物としてもよい。
【0026】
また、その他の親油性化合物は、例えば、結晶形成に必要な温度を低下させるのに使用できるという利点を有し得る。このようにして、本発明の液晶の製造におけるエネルギーを節約することができる。
【0027】
一般に、本発明による液晶は、約0.01〜99重量%、好ましくは約1〜80重量%、より好ましくは約1〜50重量%の量でオレオイルエタノールアミド(OEA)を含めば好ましい。
【0028】
親水性溶媒は、約1〜99.99重量%、好ましくは約20〜99.9重量%、より好ましくは約50〜99重量%の量で結晶中に存在すれば、さらに好ましい。
【0029】
親水性ゲスト分子は、約0〜30重量%、好ましくは約0〜20重量%、より好ましくは約0〜10重量%の量で結晶中に存在すれば、さらに好ましい。
【0030】
少なくとも1種のその他の親油性化合物は、約0〜99重量%、好ましくは約0〜80重量%、より好ましくは約0〜10重量%の量で存在すれば、さらに好ましい。
【0031】
液晶は、溶液中に存在することができる、又は精製された形態で同様に良好に調製することができる。しかし、本発明による液晶が、親水性溶媒中に分散液又はエマルションとなって存在すれば好ましい。このことは、液晶の安定性に有益に貢献する。
【0032】
本発明の分散した液晶粒子は、一般に、約1nm〜500μmの範囲、好ましくは10nm〜300μmの範囲、さらにより好ましくは50nm〜50μmの範囲の直径を有する。この小さいサイズには、いくつかの利点がある。このことが、例えば、結晶中に含まれるオレオイルエタノールアミドの相対量を最大限に高められることを可能にする。さらに、100nm未満のサイズの結晶は、水などの透明な溶媒中でさえ目に見えないので、例えば透明な液体に添加しても肉眼で観察することができない。
【0033】
また、本発明によって含まれるものは、本発明による液晶を含む組成物である。この組成物の性質は特に限定しないが、乾燥した又は湿った組成物とすることができる。しかし、組成物は液体組成物であることが好ましい。
【0034】
さらにより好ましくは、組成物は、エマルション、とりわけ、マイクロエマルション、サブマイクロエマルション、多相エマルション、高内相エマルション又はそれらの混合物を含む。
【0035】
組成物はまた、エマルション、とりわけ、マイクロエマルション、サブマイクロエマルション、多相エマルション、高内相エマルション又はそれらの混合物とすることができる。
【0036】
一般に、エマルションは、約100nm〜100μm、好ましくは約100nm〜50μm、さらにより好ましくは約1μm〜50μmの範囲の粒径を有する。
【0037】
マイクロエマルションは、約1nm〜500nm、好ましくは約1nm〜200nm、さらにより好ましくは約5nm〜100nmの範囲の粒径を有する。
【0038】
サブマイクロエマルションは、約10nm〜500nm、好ましくは約10nm〜200nm、さらにより好ましくは約10nm〜100nmの範囲の粒径を有する。
【0039】
多相エマルションは、水などの連続相で再分散される、油中水エマルションなどのエマルションである。このことが、例えば水中油中水エマルション(W/O/W)をもたらす。これらのエマルションは、油中水中油中水エマルション(W/O/W/O)をもたらす油などの追加の相でさらに再分散できる。任意の数のステップによって、この方法を繰り返し適用することができる。多相エマルションはまた、水などの親水性媒体中の、油などの疎水性化合物を乳化することによって開始することができる。このことは、水中油相同エマルション及びその多相エマルションをもたらす。
【0040】
高内相エマルションは、分散相の体積分率が体積で50%、好ましくは74%、さらにより好ましくは80%を超える単純なエマルションである。
【0041】
例えば、組成物は、食品組成物、飲料、ペットフード組成物、栄養補助食品、食品添加物、医薬組成物又は化粧用組成物とすることができる。
【0042】
組成物は、例えばタンパク源、脂質源、及び/又は炭水化物源などのその他の構成成分を含有することができる。
【0043】
組成物はまた、USRDAなどの政府機関の勧告に従って、無機物、並びに微量元素及びビタミンなどの微量栄養素を含有することができる。例えば、示した範囲の1種又は複数の以下の微量栄養素を、一日量当たり含むことができる。カルシウム300〜500mg、マグネシウム50〜100mg、リン150〜250mg、鉄5〜20mg、亜鉛1〜7mg、銅0.1〜0.3mg、ヨウ素50〜200μg、セレニウム5〜15μg、βカロテン1000〜3000μg、ビタミンC 10〜80mg、ビタミンB1 1〜2mg、ビタミンB6 0.5〜1.5mg、ビタミンB2 0.5〜2mg、ナイアシン5〜18mg、ビタミンB12 0.5〜2.0μg、葉酸100〜800μg、ビオチン30〜70μg、ビタミンD 1〜5μg、ビタミンE 3〜10μg。
【0044】
1種又は複数の食品グレードの乳化剤、例えば、モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、レシチンは、所望であれば、組成物に組み込むことができる。
【0045】
本発明の組成物は、ハイドロコロイド(ガム、タンパク質、加工デンプンなど)、結合剤、薄膜形成剤、カプセル化剤/カプセル化材料、壁物質/外殻物質、マトリックス化合物、被覆剤、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共用化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動剤、矯味剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、酸化防止剤及び抗菌剤をさらに含有することができる。組成物はまた、これらだけには限らないが、水、任意の由来のゼラチン、植物ガム、リグニンスルホネート、タルク、糖、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、香料、保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などを含めた、従来の医薬添加剤及び補助剤、賦形剤及び希釈剤を含有することができる。全ての場合において、このようなさらなる構成成分は、目的の受容者に対する適合性を考慮して選択されることになる。
【0046】
本発明の組成物は、組成物の性質によって、経口、経腸、非経口及び/又は局所適用することができる。
【0047】
本発明の結晶のサイズが小さいことによって、非経口投与さえ可能になる。
【0048】
本発明の組成物及び結晶は、いくつかの異なる目的に使用できる。
【0049】
例えば、上述の通り、これらは、上述のゲスト分子などの化合物を送達及び/又は保護するためのビヒクルとして使用することができる。好ましくは、送達及び/又は保護されるべきこれらの化合物は、親水性化合物である。
【0050】
しかし、これらはまた、少なくとも1種のその他の親油性化合物、例えばリモネンなどの化合物を送達及び/又は保護するためのビヒクルとして、追加又は代替として使用してもよい。
【0051】
結晶中のOEAの存在並びに食物摂取及び体重増加を減少させるその特性によって、本発明の組成物及び結晶を、食欲を減らす及び/又は満腹感を誘発するのに使用できる。
【0052】
この直接的な影響として、本発明の組成物及び結晶はまた、体重増加を抑えるのに使用できる。
【0053】
開示した本発明の主題から逸脱することなく、本明細書に列挙した全ての特徴を自由に組み合わせることができることは、当業者には明らかである。
【0054】
本発明のさらなる利点及び特徴は、以下の実施例及び図から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】アルギニン、グルコース、リモネン及びオレオイルエタノールアミド(OEA)の式を示す図である。
【図2】50℃でのOEA−水の二成分ブレンド(10〜40重量%の範囲)に対する通常顕微鏡検査(上)及び偏光顕微鏡検査(下)を用いて得た画像を示す図である。
【図3】Ia3dキュービック相に対応する、20.0重量%の水に対する、OEA−リモネン−水の三成分ブレンドの42℃でのSAXS回折測定の図である。
【図4】アルギニンの量を増加させながらOEA−リモネン−水の四成分ブレンドに対して42℃で記録されたSAXS回折測定図である。スペクトル(a)、(b)、(c)、(d)は、水と脂質の比が20.0重量%の一定で、それぞれ、2.5、5.0、7.5及び10.0重量%のアルギニン濃度に対応する。スペクトル(e)は、50.0重量%の水と脂質の比及び5.0重量%のアルギニン濃度(キューボソームの分散)を表す。これらの回折測定図は、単独で又は同様のメソフェーズ中で混合した、Ia3d及びPn3mキュービック相に対応する。
【図5】OEA−リモネン−水にグルコースを加えた四成分ブレンドに対する、42℃でのSAXS回折測定図である。スペクトルは、20.0重量%の水と脂質の比、及びPn3mキュービック相に対応する5.0重量%のグルコース濃度を表す。
【実施例】
【0056】
使用した材料:
天然原料からOEAを合成し、Nestle Research Centerで精製した。純度約99%のL(+)−アルギニン(M.wt=174.20g/モル)を、ドイツのAldrich社から購入した。その水中溶解度は、20℃で15.91重量%と決定した。親油性ゲスト分子の例として、リモネンをいくつかのOEA−水配合物で使用した。図1は、本研究で使用した様々な化合物の化学構造の概略である。
【0057】
OEA−水の液晶の調製:
典型的なOEA−水ブレンドの配合において、10〜50重量%の範囲の異なる重量比で、HPLCグレードの水をOEAに加えた。次いで、得られた混合物を、キャップで密封したガラスのバイアル(体積15ml)に入れ、85℃で10分間水浴中に放置した。次いで、バイアルをボルテックスにかけ、試料を振とうした。このステップを2回繰り返し、確実に、構成成分を完全に均質に混合した。最終的に、均質な試料を含むバイアルを4℃でクエンチし、構造を同定するために小角X線散乱を用いて、及び複屈折を検出するために交差偏光光学顕微鏡法によって、室温以上での真に平衡状態での形態調査を可能にした。
OEA−水ブレンドの配合物の相図を、5〜50重量%の範囲の水、及び25℃〜85℃の温度に対して評価した。SAXS測定及び交差偏光光学顕微鏡法(図2)は、逆等方性メソフェーズ(L2)、粘性のラメラ相(Lα)及び剛直な両連続キュービック相(Pn3m及びIa3d)の存在を示した。OEAの各キューボソーム分散液を、試験する各水分量を増やすために得ることができた。
【0058】
OEA−水−リモネンの液晶の調製
典型的なリモネン−OEA−水−ブレンドの配合において、少量のリモネン、即ちOEAに対して5.0重量%を、単純な混合によって、OEAの融点より上でOEAと混合した。次いで、得られた95:5重量%のOEA対リモネンの二成分混合物を、分かりやすくするために、1種の単一の構成成分として扱った。次いで、この配合に続けて、上記OEA−水の液晶の場合と全く同様に水を加えた。三成分ミックスの相図を、OEA−水の液晶に対して上記と同様に得て、逆等方性メソフェーズ流体相(L2)及び剛直な両連続キュービック相(Pn3m及びIa3d)の存在を示した。OEA−リモネンのキューボソーム分散液を、試験する各水分量を増やすために得ることができた。図3は、Ia3dキュービック相に対応する、20.0重量%の水に対して、OEA−リモネン−水の三成分ブレンドの42℃でのSAXS回折測定の図である。
【0059】
OEA−水−アルギニンの液晶の調製
典型的なOEA−水−アルギニンの配合において、アルギニンが0〜10重量%の範囲にある様々な濃度のアルギニン水溶液を、連続撹拌下、室温でHPLCグレードの水にアルギニンを溶解することによって調製した。次いで、アルギニン水溶液を、10〜50重量%の範囲の異なる重量比でOEAに加えた。次いで、上述のOEA−水の液晶の場合と同様の手順に従って、以下の調製ステップを行った。一部の場合では、OEAはリモネンを含有した。これらの場合、上述のOEA−水−リモネンの液晶の場合と同様の手順に従って、リモネン−OEAブレンドの調製を行った。UV吸収測定を行い、水中で放出された親水性化合物の濃度を求めた。図4は、アルギニンの量を増加させながらOEA−リモネン−水の四成分ブレンドに対して42℃で記録されたSAXS回折測定図である。スペクトル(a)、(b)、(c)、(d)は、水と脂質の比が20.0重量%の一定で、それぞれ、2.5、5.0、7.5及び10.0重量%のアルギニン濃度に対応する。スペクトル(e)は、50.0重量%の水と脂質の比及び5.0重量%のアルギニン濃度(キューボソームの分散)を表す。これらの回折測定図は、単独で又は同様のメソフェーズ中で混合した、Ia3d及びPn3mキュービック相に対応する。
【0060】
OEA−水−グルコースの液晶の調製
典型的なOEA−水−グルコースの配合において、グルコースが0〜100重量%の範囲にある様々な濃度のグルコース溶液を、連続撹拌下、室温でHPLCグレードの水にグルコースを溶解することによって調製した。次いで、グルコース水溶液を、10〜50重量%の範囲の異なる重量比でOEAに加えた。次いで、上述のOEA−水の液晶の場合と同様の手順に従って、以下の調製ステップを行った。一部の場合では、OEAはリモネンを含有した。これらの場合、上述のOEA−水−リモネンの液晶の場合と同様の手順に従って、リモネン−OEAブレンドの調製を行った。図5は、OEA−リモネン−水にグルコースを加えた四成分ブレンドに対する、42℃でのSAXS回折測定図である。スペクトルは、20.0重量%の水と脂質の比、及びPn3mキュービック相に対応する5.0重量%のグルコース濃度を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のN−アシルエタノールアミド(NAE)類、例えばオレオイルエタノールアミド(OEA)、と、親水性溶媒と、を含有する液晶。
【請求項2】
前記親水性溶媒が、少なくとも一つの親水性ゲスト分子を含む、請求項1に記載の液晶。
【請求項3】
前記結晶が、L2相(L2 phase)、ラメラ相(lamellar phase)、逆Ia3d二重ジャイロイド相(reverse la3d double gyroid phase)、逆二重Pn3mダイヤモンドキュービック相(reverse double Pn3m diamond cubic phase)、逆単純Im3mキュービック相(reverse primitive lm3m cubic phase)、ミセル(micellar)、Fd3mキュービック相(fd3m Cubic phase)などの典型的なリオトロピックメソフェーズ中に存在する、請求項1又は2に記載の液晶。
【請求項4】
親水性溶媒中に、分散液又はエマルションとなって存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶。
【請求項5】
前記親水性ゲスト分子が、結晶の2.5重量%以下、好ましくは結晶の0.5〜2重量%、より好ましくは結晶の1〜2重量%、の量で存在する、請求項2に記載の液晶。
【請求項6】
前記親水性ゲスト分子が、親水性アミノ酸、親水性ビタミン、糖、薬学的に活性な親水性化合物、塩、ペプチド、親水性栄養素からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶。
【請求項7】
親油性化合物をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶。
【請求項8】
0.01〜99重量%の量のオレオイルエタノールアミド(OEA)、1〜99.99重量%の量の親水性溶媒、0〜30重量%の量の親水性ゲスト分子を含み、親油性化合物が0〜50重量%の量で存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶を含む組成物。
【請求項10】
食品組成物;飲料;医薬組成物;化粧用組成物;経口、経腸、非経口及び/又は局所適用される組成物;エマルション、特にマイクロエマルション又はサブマイクロエマルション;多相エマルション;高内相エマルション;及びそれらの混合物であることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
化合物を送達及び/又は保護するためのビヒクルとしての、請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶の使用。
【請求項12】
送達及び/又は保護される前記化合物が、親水性化合物である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
送達及び/又は保護される前記化合物が、親油性化合物である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
食欲を減らす及び/又は満腹感を誘発するための、請求項11〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
体重増加を抑えるための、請求項11〜14のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−520780(P2011−520780A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502360(P2011−502360)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053729
【国際公開番号】WO2009/121829
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】