説明

オレキシンアンタゴニストとしてのスルホンアミド

本発明は、式[式中、R、R、R及びnは、明細書及び特許請求の範囲に記載のとおりである]の新規なスルホンアミドに関する。化合物は、オレキシン受容体アンタゴニストであり、オレキシン経路が関与する障害の処置に有用でありうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式:
【化1】


[式中、
、R及びRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、シアノ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲンで置換されている低級アルキル又はハロゲンで置換されている低級アルコキシであり、
nは、1又は2である]
の化合物あるいは、その薬学的に適切な酸付加塩、光学的に純粋な鏡像異性体、ラセミ体又はジアステレオマー混合物に関する。
【0002】
式Iの化合物が、オレキシン受容体アンタゴニストであり、そして関連化合物が、オレキシン経路が関与する障害、例としては、睡眠時無呼吸症、ナルコレプシー、不眠症、睡眠時異常行動、時差ぼけ症候群、概日リズム障害、下肢静止不能症候群を含む睡眠障害、不安、鬱病、躁鬱病、強迫性障害、情動性神経症、抑鬱性神経症、不安神経症、気分障害、譫妄、パニック発作障害、心的外傷後ストレス障害、性機能不全、統合失調症、精神病、認知障害、アルツハイマー病及びパーキンソン病、認知症、精神遅滞、ハンチントン病及びトゥレット症候群などのジスキネジア、中毒、薬物乱用に関連する欲求、発作性障害、癲癇を含む精神、神経性及び神経変性障害、肥満、糖尿病などの代謝疾患、拒食症及び過食症を含む摂食障害、喘息、片頭痛、疼痛、神経因性疼痛、精神、神経性及び神経変性障害に関連する睡眠障害、神経因性疼痛、痛覚過敏症、灼熱痛、及び異痛症などの疼痛に対する亢進した又は過剰な感受性、急性疼痛、熱傷痛、背痛、複合性局所疼痛症候群I及びII、関節痛、脳卒中後疼痛、術後疼痛、神経痛、HIV感染に伴う疼痛、化学療法後疼痛、過敏性腸症候群、ならびに全身オレキシン系機能不全に関連する他の疾患の処置において有用でありうることが見出された。
【0003】
オレキシン(ヒポクレチン)は、視床下部神経ペプチドファミリーであり、摂食行動、エネルギー恒常性及び睡眠・覚醒周期を調節する上で重要な役割を果たす(Siegel, Annu. Rev. Psychol., 55, 125-148, 2004)。オレキシンA/ヒポクレチン1(OX−A、33アミノ酸)及びオレキシンB/ヒポクレチン2(OX−B、28アミノ酸)は、130アミノ酸プレプロオレキシンのタンパク質分解過程によって同じ前駆体から誘導される(de Lecea et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 95, 322-327, 1998; Sakurai T. et al., Cell, 92, 573-585, 1998)。オレキシンレベルは、活動的な周期の間に、日周変動が最も高くなることを示す。オレキシン−1受容体(OXR)及びオレキシン−2受容体(OXR)と称される2つの受容体サブタイプが同定されている。結合及び機能アッセイにおける両方の受容体の評価により、OXRは、OX−A及び−Bの両方に対して非選択的受容体であるのに対して、OXRは、OX−Aに対して選択的であり、逆に、OX−Aは、非選択的神経ペプチドであり、そして同様の親和性でOXR及びOXRに結合しているのに対し、OX−Bは選択的であり、OXRに対し高い親和性を有することが実証された(Sakurai T. et al., Cell, 92, 573-585, 1998)。両方の受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)のクラスAファミリーに属し、それらは、Gq/11を介してホスホリパーゼCの活性化と共役し、それがイノシトールリン脂質(PI)加水分解及び細胞内Ca2+レベルの上昇を引き起こす。しかし、OXRはまた、Gi/oを介してcAMP経路と共役できることが示されている(Sakurai, Regulatory Peptides, 126, 3-10, 2005)。成体ラット組織のノーザンブロット分析は、プレプロオレキシンmRNAが、脳内でのみ検出されること(精巣中で少量が検出されることを除く)、ならびにOXR及びOXR転写物もまた、脳内でのみ検出されることを示した(Sakurai T. et al., Cell, 92, 573-585, 1998)。ヒトの複数の組織のノーザンブロットを使用して、同様の結果が得られた。インサイチューでのハイブリダイゼーション及び免疫組織化学を用いたラットの脳における分布についての研究は、オレキシンニューロンが、CNS全体に突き出た状態で視床下部外側野でのみ見られることを示している(Peyron et al., J Neurosci, 18, 9996-10015, 1998; Nambu et al., Brain Res., 827, 243-60, 1999)。さらに、OX及びOX受容体の両方は、睡眠/覚醒の制御にとって重要な脳領域に存在する。
【0004】
オレキシン系の破壊は、以下の一連の証拠に基づくと、ナルコレプシーの原因であることが示唆される:(a)プレプロオレキシンノックアウトマウスは、ナルコレプシーに著しく類似した特徴を持つ表現型を有していた(Chemelli et al., Cell, 98, 437-451, 1999)、(b)OXRをコードする遺伝子を破壊する突然変異(canarc-1)が、イヌのナルコレプシーの原因であることが見出された(Lin et al., Cell, 98, 365-376, 1999)、(c)OX−A及びOX−Bの欠損が、ヒトのナルコレプシー患者において観察された(Nishino et al., Lancet, 355, 39-40, 2000; Peyron et al., Nature Medicine, 6, 991-997, 2000)、(d)モダフィニル(Modafinil)(作用機序が知られていない抗ナルコレプシー薬)が、オレキシンニューロンを活性化させることが示されている(Mignot et al., Sleep, 11, 1012-1020, 1997; Chemelli et al., Cell, 98, 437-451, 1999)。OX−Aの脳室内(icv)投与が、用量依存的にラットの覚醒を増加させ、さらに総レム(REM)睡眠を84%減少させる(Piper et al., Eur. J. Neuroscience, 12, 726-730, 2000)。総合すると、これらの観察は、睡眠/覚醒周期の調節におけるオレキシン系のきわめて重要な役割と一致する。
【0005】
オレキシンは、その視床下部におけるコルチコトロピン放出因子(CRF)系との相互作用を介して、ストレス及び不安に対して重要な役割を果たす(Sakamoto et al., Regul Pept., 118, 183-91, 2004)。OX−Aのicv注入は毛づくろい(ストレス反応)を誘発するが、それは、CRFアンタゴニストにより部分的に妨げられる(Ida et al., Biochem. Biophys. Res. Comm., 270, 318-323, 2000)。OXRは、副腎髄質において高度に発現されるのに対して、OXRは、副腎皮質において高度に発現される。OX−A及びOX−Bの両方は、血漿におけるコルチコステロン放出を刺激し、視床下部の視床下部傍室核(PVN)内のc−Fosを誘発する(Kuru et al., Neuroreport, 11, 1977-1980, 2000)。さらに、CRFニューロンに突き出たオレキシンニューロンは、主にOXRを発現する(Winsky-Sommerer et al., J. Neuroscience, 24, 11439-11448, 2004)。したがって、OXRの刺激が、視床下部-下垂体-副腎系(HPA)軸を活性化させる。興味深いことに、これに関連して、オレキシンAにより誘発された血漿ACTHの増加が、OX−2R(N−{(1S)−1−(6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロ−2(1H)−イソキノリニル)カルボニル}−2,2−ジメチルプロピル)−N−{4−ピリジニルメチル}アミンに対する選択的アンタゴニストにより弱められることが報告されている(Chang et al., Neurosci Res., 21 Dec 2006)。最近の前臨床報告(Suzuki et al., Brain Research, 1044, 116-121, 2005)は、OX−Aの不安惹起効果を示唆している。OX−Aのicv注入は、マウスの不安様行動を引き起こした。効果は、比較のために同時に試験したコルチコトロピン放出因子(CRF)のものと同様であった。最近の研究はまた、ヒトの脂肪組織内の機能的OX1及びOX2受容体の存在と、脂肪組織代謝及び脂質生成におけるそれらの役割を実証している(Digby et al., J. Endocrinol., 191, 129-36, 2006)。
【0006】
要約すれば、目覚め、睡眠/覚醒、食欲の制御に際してオレキシン系により果たされる非常に多様な機能、ならびに不安及びストレス反応等におけるそれらの役割を考慮すると、オレキシン系を標的とする薬剤(又は化合物)が、疾患、例としては、睡眠時無呼吸症、ナルコレプシー、不眠症、睡眠時異常行動、時差ぼけ症候群、概日リズム障害、下肢静止不能症候群を含む睡眠障害、不安、鬱病、躁鬱病、強迫性障害、情動性神経症、抑鬱性神経症、不安神経症、気分障害、譫妄、パニック発作障害、心的外傷後ストレス障害、性機能不全、統合失調症、精神病、認知障害、アルツハイマー病及びパーキンソン病、認知症、精神遅滞、ハンチントン病及びトゥレット症候群などのジスキネジア、中毒、薬物乱用に関連する欲求、発作性障害、癲癇を含む精神、神経性及び神経変性障害、肥満、糖尿病などの代謝疾患、拒食症及び過食症を含む摂食障害、喘息、片頭痛、疼痛、神経因性疼痛、精神、神経性及び神経変性障害に関連する睡眠障害、神経因性疼痛、痛覚過敏症、灼熱痛、及び異痛症などの疼痛に対する亢進した又は過剰な感受性、急性疼痛、熱傷痛、背痛、複合性局所疼痛症候群I及びII、関節痛、脳卒中後疼痛、術後疼痛、神経痛、HIV感染に関連する疼痛、化学療法後疼痛、過敏性腸症候群、ならびに全身オレキシン系機能不全に関連する他の疾患の処置に対して有益な治療効果を有するであろうことが期待される。
【0007】
多くの文書が、オレキシン経路についての現在の知見を記載している。例えば、以下の文書が挙げられる:
【表1】

【0008】
本発明の目的は、式Iの新規な化合物、それらの製造、本発明による化合物に基づく薬剤及びそれらの生産、並びに疾患、例えば、睡眠時無呼吸症、ナルコレプシー、不眠症、睡眠時異常行動、時差ぼけ症候群、概日リズム障害、下肢静止不能症候群を含む睡眠障害、不安、鬱病、躁鬱病、強迫性障害、情動性神経症、抑鬱性神経症、不安神経症、気分障害、譫妄、パニック発作障害、心的外傷後ストレス障害、性機能不全、統合失調症、精神病、認知障害、アルツハイマー病及びパーキンソン病、認知症、精神遅滞、ハンチントン病及びトゥレット症候群などのジスキネジア、中毒、薬物乱用に関連する欲求、発作性障害、癲癇を含む精神、神経性及び神経変性障害、肥満、糖尿病などの代謝疾患、拒食症及び過食症を含む摂食障害、喘息、片頭痛、疼痛、神経因性疼痛、精神、神経性及び神経変性障害に関連する睡眠障害、神経因性疼痛、痛覚過敏症、灼熱痛、及び異痛症などの疼痛に対する亢進した又は過剰な感受性、急性疼痛、熱傷痛、背痛、複合性局所疼痛症候群I及びII、関節痛、脳卒中後疼痛、術後疼痛、神経痛、HIV感染に関連する疼痛、化学療法後疼痛、又は過敏性腸症候群の抑制又は予防における式Iの化合物の使用である。
【0009】
本明細書で使用される一般的用語についての以下の定義は、当該用語が単独で現れるか、又は組み合わされて現れるかに関わらず、適用される。
【0010】
本明細書で使用されるように、用語「低級アルキル」は、1〜7個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖状アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル等を示す。好ましい低級アルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する基である。
【0011】
用語「ハロゲンで置換されている低級アルキル」は、上で定義されたとおりのアルキル基であって、少なくとも1個の水素原子が、ハロゲンで置き換えられているもの、例えば、−CF、−CHF、−CHF、−CHCF、−CHCHCF、−CHCFCF等を示す。好適なハロゲンで置換されている低級アルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する基である。
【0012】
用語「低級アルコキシ」は、アルキル残基が上で定義されたとおりであり、酸素原子を介して結合している基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、2−ブトキシ、t−ブトキシ等を示す。好適なアルコキシ基は、1〜4個の炭素原子を有する基である。
【0013】
用語「ハロゲンで置換されている低級アルコキシ」は、アルキル残基が上で定義されたとおりの“ハロゲンで置換されている低級アルキル”であり、酸素原子を介して結合している基を示す。好適なハロゲンで置換されている低級アルコキシ基は、1〜4個の炭素原子を有する基である。
【0014】
用語「ハロゲン」は、塩素、ヨウ素、フッ素及び臭素を示す。
【0015】
用語「薬学的に許容しうる酸付加塩」は、無機及び有機酸、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩を包含する。
【0016】
好適な式Iの化合物は、nが1であるそれらである。
【0017】
この群の好適な化合物は、Rが水素であり、R及びRが上で定義されたとおりであり、例えば、以下の化合物:
N−(4−クロロ−フェニル)−3−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−4−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−2−メチル−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
3−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−4−メチル−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−4−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
4−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−4−フルオロ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−3−フルオロ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
2−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
2−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−2−フルオロ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
4−メトキシ−N−(4−メトキシ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(3−フルオロ−フェニル)−4−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−フルオロ−フェニル)−4−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
4−メトキシ−N−(2−メトキシ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
4−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンゼンスルホンアミド、又は
N−(4−クロロ−フェニル)−2−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミドである。
【0018】
この群の好適な化合物は、さらに、Rが4−フルオロであり、その他の定義が、上記のとおりである化合物、例えば、以下の化合物:
2−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−3−フルオロ−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−2−フルオロ−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
3−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
4−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−2−メチル−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−3−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−3−メチル−ベンゼンスルホンアミド、
N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メトキシ−N−(2−メトキシ−フェニル)−ベンゼンスルホンアミド、
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−4−フルオロ−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メトキシ−N−(4−メトキシ−フェニル)−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド、又は
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−2−メトキシ−ベンゼンスルホンアミドである。
【0019】
式Iの本化合物及びそれらの薬学的に許容しうる塩は、当該技術に既知の方法、例えば、以下に記載するプロセスにより調製することができ、該プロセスは、
a)式:
【化2】


の化合物を、式:
【化3】


の化合物と反応させ、式:
【化4】


[式中、置換基は、上記のとおりである]
の化合物とする工程、及び
所望であれば、得られた化合物を薬学的に許容しうる酸付加塩に変換する工程を含む。
【0020】
一般的合成手順:
本発明の式Iの化合物の調製は、連続型又は収束型合成経路で実施しうる。本発明の化合物の合成は、以下のスキームに示される。反応及び得られた生成物の精製を実施するために必要な技術は、当業者に既知である。以下の方法の記載において使用される置換基及び指数は、反することが示されない限り、本明細書で先に記載の意味を有する。
【0021】
より詳細には、式Iの化合物は、以下に記載の方法、実施例に記載の方法、又は類似の方法により製造することができる。個々の反応工程についての適切な反応条件は、当業者に既知である。しかし、反応シーケンスは、スキーム1に示したものに限定されず、出発物質及びそれらの各々の反応性に依存して、反応工程のシーケンスは自由に変更することができる。出発物質は、市販されているか、あるいは以下に記載の方法と類似の方法、本明細書もしくは実施例に引用される参考文献に記載の方法、又は当該技術で既知の方法により調製することができる。
【0022】
【化5】

【0023】
工程a)
アニリンIV及びスルホニルクロリドVは、市販であるか、あるいは、文献に記載の方法により入手することができる。アニリンIVとスルホニルクロリドVとの反応は、文献に記載の幾つかの方法により生じさせることができる(反応条件については、例えば:Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations, 2nd Edition, Richard C. Larock. John Wiley & Sons, New York, NY. 1999を参照されたい)。しかし、塩基及び溶媒の存在下又は不在下でアニリンIVをスルホニルクロリドVと反応させるのが好都合である。反応又は関与する試薬に悪影響を及ぼさず、少なくともある程度まで試薬を溶解することができる限り、用いる溶媒の性質に特に制限はない。適切な溶媒の例には、ジクロロメタン(DCM)等が含まれる。この段階において使用される塩基の性質に特に制限はなく、このタイプの反応に一般に使用される任意の塩基をここで同等に使用しうる。そのような塩基の例には、ピリジン等が含まれる。反応は幅広い範囲の温度にわたって起こることが可能で、正確な反応温度は、本発明にとって決定的なものではない。周囲温度から還流するまで加熱しながら反応を実施するのが好都合である。反応に要する時間も、多くの要素、特に反応温度及び試薬の性質に依存して、幅広く変化しうる。しかしながら、スルホンアミド誘導体VIを得るには、0.5時間から数日間の時間で通常十分であろう。
【0024】
工程b)
スルホンアミド誘導体VIとブロモ酢酸メチルとの反応は、様々な反応条件下で反応を生じさせることができる(例えば:Journal of Medicinal Chemistry (2005), 48(24), 7882-7905を参照されたい。)。塩基及び溶媒の存在下でスルホンアミド誘導体VIとブロモ酢酸メチルとを反応させるのが好都合であることを見出した。反応又は関与する試薬に悪影響を及ぼさず、少なくともある程度まで試薬を溶解することができる限り、用いる溶媒の性質に特に制限はない。適切な溶媒の例には、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が含まれる。この段階において使用される塩基の性質に特に制限はなく、このタイプの反応に一般に使用される任意の塩基をここで同等に使用しうる。そのような塩基の例には、水素化ナトリウム等が含まれる。反応は幅広い範囲の温度にわたって起こることが可能で、正確な反応温度は、本発明にとって決定的なものではない。周囲温度から還流するまで加熱しながら反応を実施するのが好都合である。反応に要する時間も、多くの要素、特に反応温度及び試薬の性質に依存して、幅広く変化しうる。しかしながら、エステル誘導体VIIを得るには、0.5時間から数日間の時間で通常十分であろう。
【0025】
工程c)
エステル誘導体VIIの最終化合物への変換は、文献に記載の手順に従って行うことができる。しかしながら、VIIにおけるエステル官能基を塩基性水溶液条件下で開裂し、遊離した酸官能基をカップリング条件下でそれぞれのアミンに変換して、それぞれのスルホンアミド誘導体IIを得る2工程の反応シーケンスを用いることが好都合であることを見出した。反応又は関与する試薬に悪影響を及ぼさず、少なくともある程度まで試薬を溶解することができる限り、用いる水性塩基の性質に特に制限はない。適切な水性塩基の例には、NaOH、LiOH等が含まれる。一般に使用される任意の共溶媒を使用しうる。例には、THF等が含まれる。反応は幅広い範囲の温度にわたって起こることが可能で、正確な反応温度は、本発明にとって決定的なものではない。周囲温度から還流するまで加熱しながら反応を実施するのが好都合である。反応に要する時間も、多くの要素、特に反応温度及び試薬の性質に依存して、幅広く変化しうる。しかしながら、酸誘導体IIを得るには、0.5時間から数日間の時間で通常十分であろう。
【0026】
工程d)
カルボン酸とアミン類とのカップリングは、文献に広く記載されており、その手順は、当業者に既知である(そのような反応に影響を及ぼす文献中に記載されている反応条件については、例えば:Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations, 2nd Edition, Richard C. Larock. John Wiley & Sons, New York, NY. 1999を参照されたい)。しかしながら、酸誘導体IIと2−アリール−(ピロリジン)ピペリジン誘導体III(適宜、市販であるか、あるいは文献に記載の方法又は当該技術において既知の方法により入手可能であるもの)とを、カップリング試薬、塩基及び溶媒の存在下で、カップリングさせるのが好都合である。例えば、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム−3−オキシドへキサフルオロホスファート(HATU)、1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール(HOBT)、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)等のカップリング試薬をこのような変換を起こさせるために十分同様に使用することができる。反応又は関与する試薬に悪影響を及ぼさず、少なくともある程度まで試薬を溶解することができる限り、用いる溶媒の性質に特に制限はない。適切な溶媒の例には:DMF、ジクロロメタン(DCM)、ジオキサン、THF等が含まれる。この段階において使用される塩基の性質に特に制限はなく、このタイプの反応に一般に使用される任意の塩基をここで同等に使用しうる。そのような塩基の例には、トリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミン等が含まれる。反応は幅広い範囲の温度にわたって起こることが可能で、正確な反応温度は、本発明にとって決定的なものではない。周囲温度から還流するまで加熱しながら反応を実施するのが好都合であることを見出した。反応に要する時間も、多くの要素、特に反応温度及び試薬の性質に依存して、幅広く変化しうる。しかしながら、スルホンアミド誘導体Iを得るには、0.5時間から数日間の時間で通常十分であろう。
【0027】
化合物を、以下に示す試験に従って調べた。
【0028】
細胞内Ca2+動員アッセイ
ヒトオレキシン−1(hOX1)又はヒトオレキシン−2(hOX2)受容体を安定的に発現するチャイニーズハムスター卵巣(dHFr−)変異細胞株を、GlutaMax(商標)1、4500mg/L D−グルコース及びピルビン酸ナトリウム(Catalog No. 31966-021, Invitrogen, Carlsbad, CA)、5%透析ウシ胎仔血清(Catalog No. 26400-044)、100μg/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを含むダルベッコ修飾イーグル培地(1×)で維持した。細胞を、ポリ−D−リジン処理した、96−ウェル、黒/透明底プレート(Catalog No. BD356640, BD Biosciences, Palo Alto, CA)中に、5×10細胞/ウェルで播種した。24時間後、細胞に、FLIPR緩衝液(1×HBSS、20mM HEPES、2.5mM プロベネシド)中の4μM フルオ−4アセトキシメチルエステル(Catalog No. F-14202, Molecular Probes, Eugene, OR)を、37℃で1時間添加した。ハンクス平衡塩溶液(HBSS)(10×)(catalog No. 14065-049)及びHEPES(1M)(catalog No. 15630-056)は、Invitrogen, Carlsbad, CAから購入した。プロベネシド(250mM)(catalog No. P8761)は、Sigma, Buchs, Switzerlandからであった。細胞をFLIPR緩衝液で5回洗浄して、過剰の染料を取り除き、細胞内カルシウム動員[Ca2+を、先に記載されているとおり(Malherbe et al., Mol. Pharmacol., 64, 823-832, 2003)、Fluorometric Imaging Plate Reader(FLIPR-96, Molecular Devices, Menlo Park, CA)を用いて測定した。オレキシンA(catalog No. 1455, Toris Cookson Ltd, Bristol, UK)は、アゴニストとして使用した。オレキシンA(DMSO中50mM原液)を、FLIPR緩衝液+0.1%BSA中で希釈した。オレキシンAのEC50及びEC80値を、CHO(dHFr−)−OX1R及び−OX2R細胞株における標準的アゴニスト濃度−反応曲線から毎日測定した。全ての化合物を、100%DMSOに溶解した。阻害化合物の11の濃度(0.0001〜10μM)を加え、アゴニストとしてのオレキシンAのEC80値(最大アゴニスト反応の80%を与える濃度、毎日測定)を用いて阻害曲線を求めた。アンタゴニストを25分間用い(37℃でインキュベーション)、その後アゴニストを用いた。反応を、オレキシンA又はオレキシンBのEC80値により誘導される最大刺激効果に対して正規化した、基底値を引いた蛍光におけるピーク増加として測定した。ヒルの式:y=100/(1+(x/IC50nH)(ここで、n=傾斜因子)に従い、Excel-fit 4 ソフトウェア(Microsoft)を用いて、阻害曲線を当てはめた。K値は、以下の式:K=IC50/(1+[A]/EC50)(ここで、Aは、加えられたアゴニストの濃度であり、アゴニストEC80値に非常に近似し、IC50及びEC50値は、各々アンタゴニスト阻害及びオレキシンA又はBアゴニスト曲線より導かれた)に従って計算した。
【0029】
化合物は、以下の表に示すように、オレキシン受容体についてのヒトのK値(μM)<0.01を示した。
【0030】
【表2】

【0031】
式Iの化合物及び式Iの化合物の薬学的に許容しうる塩は、医薬として、例えば、医薬製剤の形態で使用することができる。医薬製剤は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の剤形で、経口投与することができる。しかし投与はまた、例えば坐剤の剤形で直腸内に、又は例えば注射液の剤形で非経口的に行うこともできる。
【0032】
式Iの化合物は、医薬製剤を製造するため、薬学的に不活性な無機又は有機担体と共に加工することができる。乳糖、トウモロコシデンプン又はそれらの誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩等が、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤のためのそのような担体として使用することができる。軟ゼラチンカプセル剤のための適切な担体は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体及び液体ポリオール等である。しかし、活性物質の性質に応じて、軟ゼラチンカプセル剤の場合は、通常担体を必要としない。溶剤及びシロップ剤の製造に適切な担体は、例えば、水、ポリオール類、グリセロール、植物油等である。坐剤に適切な担体は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪、半液体又は液体のポリオール等である。
【0033】
更に、医薬製剤は、保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、着香剤、浸透圧を変化させる塩、緩衝剤、マスキング剤又は酸化防止剤を含むことができる。それらは、その他の治療上有用な物質も更に含有することができる。
【0034】
式Iの化合物又は薬学的に許容しうるその塩及び治療上不活性な担体を含有する医薬もまた、式Iの化合物及び/又は薬学的に許容しうる酸付加塩の1種以上と、所望により、他の治療上有用な物質の1種以上とを、治療上不活性な担体の1種以上と共に生薬投与形態にすることを含む製造プロセスと同様に、本発明の目的である。
【0035】
本発明による最も好ましい適応症は、睡眠時無呼吸症、ナルコレプシー、不眠症、睡眠時異常行動、時差ぼけ症候群、概日リズム障害、下肢静止不能症候群を含む睡眠障害、不安、鬱病、躁鬱病、強迫性障害、感情神経症、抑鬱神経症、不安神経症、気分障害、譫妄、パニック発作障害、心的外傷後ストレス障害、性機能不全、統合失調症、精神病、認知障害、アルツハイマー病及びパーキンソン病、認知症、精神遅滞、ハンチントン病及びトゥレット症候群などのジスキネジア、中毒、薬物乱用に関連する渇望、発作性障害、癲癇を含む精神、神経性及び神経変性障害、肥満、糖尿病などの代謝疾患、拒食症及び過食症を含む摂食障害、喘息、片頭痛、疼痛、神経因性疼痛、精神、神経性及び神経変性障害に関連する睡眠障害、神経因性疼痛、痛覚過敏症、灼熱痛、及び異痛症などの疼痛に対する亢進した又は過剰な感受性、急性疼痛、熱傷痛、背痛、複合性局所疼痛症候群I及びII、関節痛、脳卒中後疼痛、術後疼痛、神経痛、HIV感染に関連する疼痛、化学療法後疼痛、過敏性腸症候群ならびに全身オレキシン系機能不全に関連する他の疾患を含むものである。
【0036】
用量は、広い範囲内で変えることができ、当然それぞれの特定の症例における個別の要求に適合させなければならない。経口投与の場合、成人用の用量は、一般式Iの化合物1日当たり約0.01mg〜約1000mg、又は薬学的に許容しうるその塩の対応する量で変えることができる。1日量を、1回量として又は分割量として投与してよく、加えて、必要性が示される場合、上限を超えることもできる。
【0037】
錠剤の処方(湿式造粒)
品目 成分 mg/錠剤
5mg 25mg 100mg 500mg
1.式Iの化合物 5 25 100 500
2.無水乳糖DTG 125 105 30 150
3.Sta-Rx 1500 6 6 6 30
4.微晶質セルロース 30 30 30 150
5.ステアリン酸マグネシウム 1 1 1 1
合計 167 167 167 831
【0038】
製造手順
1.品目1、2、3及び4を混合し、精製水と共に造粒する。
2.顆粒を50℃で乾燥させる。
3.顆粒を適切な微粉砕装置に通す。
4.品目5を加え、3分間混合し、適切な成形機で圧縮する。
【0039】
カプセルの処方
品目 成分 mg/カプセル
5mg 25mg 100mg 500mg
1.式Iの化合物 5 25 100 500
2.含水乳糖 159 123 148 ---
3.トウモロコシデンプン 25 35 40 70
4.タルク 10 15 10 25
5.ステアリン酸マグネシウム 1 2 2 5
合計 200 200 300 600
【0040】
製造手順
1.品目1、2及び3を適切なミキサーで30分間混合する。
2.品目4及び5を加え、3分間混合する。
3.適切なカプセルに充填する。
【0041】
実験部分:
実施例1
N−(4−クロロ−フェニル)−3−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド
【0042】
【化6】

【0043】
a)工程1:
N−(4−クロロフェニル)−3−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド
【0044】
【化7】

【0045】
無水ジクロロメタン(40ml)中の4−クロロアニリン(400mg、3.13mmol)の溶液に、3−メトキシベンゼンスルホニルクロリド(648mg、3.13mmol)を、次いでピリジン(297.2mg、3.76mmol)を加えた。混合物を25℃で12時間攪拌した。10%クエン酸溶液(20ml)及び水(20ml)を加えた。有機相を乾燥させ(NaSO)、減圧下で蒸発させて、標記化合物を固体として得て、これをそのまま次の工程で使用した。収率:900mg(96%)。MS(m/e): 296(M+ -H); 1H-NMR(CDCl3, 400MHz): δ3.76(s, 3H), 6.48(brs, 1H), 7.0(d, J= 8.72 Hz, 2H), 7.06(d, J= 7.76 Hz, 1H), 7.21(m, 3H), 7.32(m, 2H)。
【0046】
b)工程2:
[(4−クロロフェニル)−(3−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−酢酸メチルエステル
【0047】
【化8】

【0048】
無水THF(40ml)中のN−(4−クロロフェニル)−3−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド(900mg、3.02mmol)の溶液に、水素化ナトリウム(146mg、3.62mmol)を窒素下0〜5℃で加えた。混合物を25℃で30分間撹拌した。次にブロモ酢酸エチル(463mg、3.02mmol)を加え、25℃で1時間撹拌した。ブロモ酢酸メチル(232mg、1.51mmol)をさらなる分量加え、撹拌をさらに12時間続けた。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、酢酸エチル(3x20ml)で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で蒸発させて、標記化合物を油状化合物として得て、これをそのまま次の工程で使用した。収率:1.03g(92%)。
【0049】
c)工程3:
[(4−クロロフェニル)−(3−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−酢酸(中間体1)
【0050】
【化9】

【0051】
THF(20ml)中の[(4−クロロフェニル)−(3−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−酢酸メチルエステル(1.03g、2.7mmol)の溶液に、水酸化リチウム一水和物(168mg、4.0mmol)の水溶液(10ml)を氷冷条件下で徐々に加えた。反応混合物を25℃で2時間撹拌した。THFを真空下で蒸発させ、水を加えた。混合物をジエチルエーテルで洗浄した。水層を1(N)塩酸でpH6に酸性化し、酢酸エチル(3x20ml)で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で蒸発させて、標記化合物を純粋な固体化合物として得て、これをそのまま最後のカップリング反応で使用した。収率:810mg(84%)。
【0052】
d)工程4:
N−(4−クロロ−フェニル)−3−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド
乾燥ジクロロメタン(20ml)中の[(4−クロロフェニル)−(3−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−酢酸(250mg、0.7mmol)の溶液に、EDCI(202mg、1.05mmol)、HOBT(142.4mg、1.05mmol)、及びDIPEA(0.23ml、1.40mmol)を順次加えた。反応混合物を窒素下25℃で30分間攪拌した。2−フェニル−ピロリジン(104mg、0.7mmol)を加え、混合物を25℃で12時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタン(20ml)で希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を乾燥させ(NaSO)、減圧下で蒸発させた。残留物をシリカゲル(30〜40%エチルアセタート/ヘキサン)のカラムクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物を得た。収率:140mg(41%)。HPLC純度98.17%;MS(m/e): 485.4(M+ +H); 1H-NMR(DMSO-d6, 400MHz): δ1.76(m, 1H), 1.85(m, 3H), 2.32(m, 1H), 3.45(m, 1H), 3.78(s, 3H), 4.77(m, 3H), 6.93(m, 3H), 7.19(m, 6H), 7.43(m, 4H)。
【0053】
[(4−クロロフェニル)−(3−メトキシ−ベンゼンスルホニル)−アミノ]−酢酸(実施例1、工程3)の合成について記載した手順と同様にして、さらに中間体の酸を、それぞれのアニリンとそれぞれのスルホニルクロリドとブロム酢酸メチルとの反応、そしてそれに続くLiOHでのけん化により合成した。中間体の酸及びそれぞれの出発物質を中間体2〜中間体25を含む表1に示す。
【0054】
【表3】









【0055】
N−(4−クロロ−フェニル)−4−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド(実施例1、工程4)の合成について記載した手順と同様にして、さらに表2に示すそれぞれの出発物質からスルホンアミド誘導体を合成した。表2は、実施例2〜53を含む。
【0056】
【表4】




























【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化10】


[式中、
、R及びRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、シアノ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲンで置換されている低級アルキル、又はハロゲンで置換されている低級アルコキシであり、
nは、1又は2である]
の化合物あるいは、その薬学的に適切な酸付加塩、光学的に純粋な鏡像異性体、ラセミ体又はジアステレオマー混合物。
【請求項2】
nが1である、請求項1記載の式Iの化合物。
【請求項3】
が水素であり、R及びRが、請求項1に定義のとおりである、請求項2記載の式Iの化合物。
【請求項4】
化合物が、
N−(4−クロロ−フェニル)−4−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−3−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−2−メチル−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
3−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−4−メチル−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−4−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
4−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−4−フルオロ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−3−フルオロ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
2−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
2−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−2−フルオロ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
4−メトキシ−N−(4−メトキシ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(3−フルオロ−フェニル)−4−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−フルオロ−フェニル)−4−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
4−メトキシ−N−(2−メトキシ−フェニル)−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド、
4−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−N−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−ベンゼンスルホンアミド、又は
N−(4−クロロ−フェニル)−2−メトキシ−N−[2−オキソ−2−(2−フェニル−ピロリジン−1−イル)−エチル]−ベンゼンスルホンアミドである、請求項3記載の式Iの化合物。
【請求項5】
が4−フルオロであり、その他の定義が請求項1に記載のとおりである、請求項2記載の式Iの化合物。
【請求項6】
化合物が、
2−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−3−フルオロ−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−2−フルオロ−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
3−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
4−クロロ−N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−2−メチル−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−3−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メチル−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−3−メチル−ベンゼンスルホンアミド、
N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メトキシ−N−(2−メトキシ−フェニル)−ベンゼンスルホンアミド、
N−(3−フルオロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−クロロ−フェニル)−4−フルオロ−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−ベンゼンスルホンアミド、
N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メトキシ−N−(4−メトキシ−フェニル)−ベンゼンスルホンアミド、
N−(4−フルオロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−4−メトキシ−ベンゼンスルホンアミド、又は
N−(4−クロロ−フェニル)−N−{2−[2−(4−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチル}−2−メトキシ−ベンゼンスルホンアミドである、請求項5記載の式Iの化合物。
【請求項7】
a)式:
【化11】


の化合物を、式:
【化12】


の化合物と反応させ、式:
【化13】


[式中、置換基は、請求項1に記載のとおりである]
の化合物とする工程、及び
所望であれば、得られた化合物を薬学的に許容しうる酸付加塩に変換する工程を含む、式Iの化合物の調製方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法又は同等の方法により調製した請求項1記載の式Iの化合物。
【請求項9】
1つ以上の式Iの化合物及び薬学的に許容しうる賦形剤を含有する薬剤。
【請求項10】
睡眠時無呼吸症、ナルコレプシー、不眠症、睡眠時異常行動、時差ぼけ症候群、概日リズム障害、下肢静止不能症候群を含む睡眠障害、不安、鬱病、躁鬱病、強迫性障害、感情神経症、抑鬱神経症、不安神経症、気分障害、譫妄、パニック発作障害、心的外傷後ストレス障害、性機能不全、統合失調症、精神病、認知障害、アルツハイマー病及びパーキンソン病、認知症、精神遅滞、ハンチントン病及びトゥレット症候群などのジスキネジア、中毒、薬物乱用に関連する渇望、発作性障害、癲癇を含む精神、神経性及び神経変性障害、肥満、糖尿病などの代謝疾患、拒食症及び過食症を含む摂食障害、喘息、片頭痛、疼痛、神経因性疼痛、精神、神経性及び神経変性障害に関連する睡眠障害、神経因性疼痛、痛覚過敏症、灼熱痛、及び異痛症などの疼痛に対する亢進した又は過剰な感受性、急性疼痛、熱傷痛、背痛、複合性局所疼痛症候群I及びII、関節痛、脳卒中後疼痛、術後疼痛、神経痛、HIV感染に関連する疼痛、化学療法後疼痛、又は過敏性腸症候群の処置ための、請求項9記載の薬剤。
【請求項11】
睡眠障害が、睡眠時無呼吸症、ナルコレプシー、不眠症、睡眠時異常行動、時差ぼけ症候群及び神経精神系疾患に関連する睡眠障害である、睡眠障害の処置のための請求項10記載の薬剤。
【請求項12】
睡眠時無呼吸症、ナルコレプシー、不眠症、睡眠時異常行動、時差ぼけ症候群、概日リズム障害、下肢静止不能症候群を含む睡眠障害、不安、鬱病、躁鬱病、強迫性障害、感情神経症、抑鬱神経症、不安神経症、気分障害、譫妄、パニック発作障害、心的外傷後ストレス障害、性機能不全、統合失調症、精神病、認知障害、アルツハイマー病及びパーキンソン病、認知症、精神遅滞、ハンチントン病及びトゥレット症候群などのジスキネジア、中毒、薬物乱用に関連する渇望、発作性障害、癲癇を含む精神、神経性及び神経変性障害、肥満、糖尿病などの代謝疾患、拒食症及び過食症を含む摂食障害、喘息、片頭痛、疼痛、神経因性疼痛、精神、神経性及び神経変性障害に関連する睡眠障害、神経因性疼痛、痛覚過敏症、灼熱痛、及び異痛症などの疼痛に対する亢進した又は過剰な感受性、急性疼痛、熱傷痛、背痛、複合性局所疼痛症候群I及びII、関節痛、脳卒中後疼痛、術後疼痛、神経痛、HIV感染に関連する疼痛、化学療法後疼痛又は過敏性腸症候群の処置用の薬剤の調製のための、請求項1記載の式Iの化合物の使用。
【請求項13】
睡眠障害が、睡眠時無呼吸症、ナルコレプシー、不眠症、睡眠時異常行動、時差ぼけ症候群、概日リズム障害又は神経系疾患に関連する睡眠障害である、請求項12記載の式Iの化合物の使用。
【請求項14】
上記本明細書に記載の本発明。

【公表番号】特表2011−510037(P2011−510037A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543459(P2010−543459)
【出願日】平成21年1月12日(2009.1.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050272
【国際公開番号】WO2009/092642
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】