説明

オレフィン触媒重合をキルする方法。

【課題】チーグラー−ナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いた液相でのオレフィンの連続触媒重合をキルする方法。
【解決手段】反応装置のサイクル時間の少なくとも2回分の間、所定量のキル剤を反応装置中に注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、オレフィンの液相の重合反応に関するものであり、特に、緊急事態に反応を終了(キル)させる方法に関するものである。
本発明は特に、チーグラー−ナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いたオレフィンの触媒重合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィンの重合プロセスは発熱反応であり、従って、緊急事態には反応を迅速かつ効果的に終了することが必要である。
下記文献にはルイス塩基(および水)を使用してオレフィン重合反応の活性を制御すること、そして、必要な場合には、全反応を実質的に完全に終了する方法が記載されている。
【特許文献1】欧州特許第EP 630910号公報
【0003】
この一種または複数のルイス塩基を用いた反応の不活性化または終了化は追加の助触媒を導入するだけで完全に逆転することができる。この特許には気相または液相での反応が記載されている。
下記文献に記載のメタロセン触媒を用いたオレフィン重合によるオレフィンポリマーの製造方法では、少なくとも一種の揮発性触媒キル剤(kill agent)を導入する。
【特許文献2】米国特許第5,432,242号明細書
【0004】
上記の揮発性触媒キル剤と一緒に不揮発性の触媒キル剤も使うことができる。揮発性キル剤では水が使用され、非揮発性キル剤は末端にヒドロキシ基、酸素、窒素または硫黄を含む化合物で構成できる。精製したモノマーは反応装置へ再循環される。
下記文献は低圧力の気相反応装置で実行されるオレフィン重合を停止させる方法に関するものである。
【特許文献3】米国特許第5,336,738号明細書
【0005】
この方法では有効量の不活性化剤を反応装置に導入するが、その特徴はオレフィン重合にクロム酸化物触媒を使用し、不活性化剤を酸素、アムモニア、水および一酸化炭素の中から選択し、比較的短時間で導入する点にある。不活性化剤は、反応装置中の触媒/不活性化剤の重量比率が少なくとも0.001となるような量で重合反応装置中に導入するのが好ましい。この特許の第3欄第8〜25行目には以下のように記載されている:「実際に反応装置に導入される不活性化剤の量はオレフィン重合を停止させるの必要な最少量の1〜10倍、好ましくは2〜3倍である。この最少量は、量が分かっている触媒および不活性化剤で気相反応装置で予め予備実験をして求めることができる。例えば、触媒1キログラム当り2〜80gの酸素または少なくとも2g、好ましくは10〜80gの水または3〜130gの一酸化炭素を重合反応装置中に導入することで気相オレフィン重合を停止させることができる。活性化剤は比較的短時間、一般には5分以下の時間で反応装置中に導入される。不活性化剤の導入時間はできるだけ短くするのが有利であり、好ましくは1分以下、より好ましくは30秒以下にする。」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
効率的にキルできなかった従来の方法ではシャットダウン中に重合が再び開始し、パイプやポンプがブロッキングするという問題があった。
本発明の目的は、重合をキルし(殺し)、重合が再び始まらないようにすることにある。
本発明者は、反応装置のサイクル時間の少なくとも2回分の間、所定量のキル剤を反応装置中に注入すれば、チーグラー−ナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いた液相でのオレフィンの連続触媒重合をキルできるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、チーグラー−ナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いた液相でのオレフィンの連続触媒重合をキルする方法において、反応装置のサイクル時間の少なくとも2回分の間、所定量のキル剤を反応装置中に注入することを特徴とする方法にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
オレフィンの液相重合プロセス自体は公知である。このプロセスはループ反応装置で実行するのが有利である。「ループ反応装置」はマルチプルループ反応装置にすることができ、ダブルループ反応装置が特に重要である。液体媒体は触媒と、未反応のモノマー、コモノマおよびポリオレフィンの溶剤であるイソブタン、イソヘキサンの混合物にするのが有利である。チーグラー−ナッタ触媒およびメタロセン触媒は既に多くの特許に記載されている。本発明はポリエチレン用のループ反応装置に特に有用である。この種の反応装置は下記文献に記載されている。
【0009】
【特許文献4】国際特許公開第WO 2006-003144号公報
【特許文献5】国際特許公開第WO 2005-080449号公報
【特許文献6】国際特許公開第WO 2005-082944号公報
【特許文献7】国際特許公開第WO 2005-080441号公報
【特許文献8】国際特許公開第WO 2005-080439号公報
【特許文献9】国際特許公開第WO 2004-026463号公報
【0010】
反応装置の「サイクル時間」は、「反応媒体(v)の速度×反応装置の断面積」に対する反応装置(V)の体積の比として定義される。このサイクル時間はV/(v×s)で表される。一般の工業的反応装置ではこのサイクル時間は5〜80秒である。一例として、主としてイソブタンから成るスラリー中でポリエチレン(例えばHDPE)を製造するように設計された反応装置の体積は10〜100m3であり、サイクル時間は約8〜50秒である。例えば、20m3の反応装置のサイクル時間は10秒であり、703の反応装置のサイクル時間は25秒であり、80m3の反応装置のサイクル時間は45秒サイクルである。
【0011】
触媒の活性を殺す(キル)するキル剤の量は当業者が簡単に決定できる。好ましい実施例ではキル剤は液体の形をしている。「キル剤」とは重合反応を停止させることができる任意の化合物を意味する。例としてはルイス塩基を挙げることができる。水との混合物、好ましくは少なくとも30重量%、さらに好ましくは40重量%の水の混合物が好ましい。例えば、20m3の反応装置では約8〜20リットル、60m3の反応装置では約15〜30リットルの混合物を必要とする。
【0012】
本発明は反応装置へキル剤(水溶液)を注入するためのシステムにも関するものである。このシステムは少なくとも一つのキル剤(水溶液)の貯蔵タンクと、この貯蔵タンクから重合反応装置へキル剤(水溶液)を移送する手段(以下、「移送ライン」)と、貯蔵タンクを重合反応装置より高圧下に維持する手段とを有する。貯蔵タンクを重合反応装置より高圧下に維持する手段は、例えば、貯蔵タンクから反応装置までの移送ラインに設けた少なくとも一つの制限オリフィと通常運転時には閉じている自動弁とで構成できる。キル剤(水溶液)の貯蔵タンクは窒素で加圧下にすることができる。
【0013】
反応をキルすることが必要になった場合には、所定時間(反応装置のサイクル時間の少なくとも二回分)の間、上記自動弁を開く。上記制限オリフィスはキル剤(水溶液)を反応装置中へ所定流速で送るように設計されている。好ましい実施例では、重合をキルするのに必要な正確な量のキル剤が貯蔵タンク中に貯蔵されている。キルすることが必要になった場合、自動弁が開く。
【0014】
キル剤(水溶液)はサイクル時間の2〜10回分、好ましくは2〜6回分注入される。寒冷国では水が凍結するのを防ぐための任意の成分を混合することができる。水は重量配合比50/50でイソプロパノールに混合するのが水は配合50/50のイソプロパノールについては重量により混合される有利である。
マルチループ反応装置の場合、キル剤は全てのループまたは所定のループのみに注入できる。各ループを個別反応装置と見なして各ループに噴射するのが有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーグラー−ナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いた液相でのオレフィンの連続触媒重合をキルする方法において、
反応装置のサイクル時間の少なくとも2回分の間、所定量のキル剤を反応装置中に注入することを特徴とする方法。
【請求項2】
キル剤をサイクル時間の2〜10回分の間注入する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キル剤をサイクル時間の2〜6回分の間注入する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
反応装置でポリエチレンを作る請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリエチレンがHDPEである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
反応装置がループ反応装置である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応装置がダブルループ反応装置である請求項6に記載方法。
【請求項8】
キル剤が少なくとも30重量%の水を含む混合物である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
キル剤が重量配合率が50/50のイソプロパノールと水である請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2009−531501(P2009−531501A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502089(P2009−502089)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053026
【国際公開番号】WO2007/113206
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】