説明

オートバイ用のインテグラルブレーキシステム

本発明はオートバイ用のインテグラルブレーキシステムに関し、このシステムは、一方の車輪(1)に作用する液圧ブレーキ装置を含んでいて、この液圧ブレーキ装置は液圧ライン(5)を介して主ブレーキシリンダ(6)と接続されていて、この主ブレーキシリンダ(6)は第1ブレーキレバー(7)を用いて制御可能であり、またこのシステムは、他方の車輪(2)に作用するブレーキ装置を含んでいて、このブレーキ装置にはアクチュエータ(14)が付設されていて、このアクチュエータ(14)は第1ブレーキレバー(7)を用いても第2ブレーキレバー(20)を用いても制御可能であり、更にこのシステムは、両方の車輪に対してブレーキ力を被制御分配するための調整装置を含んでいる電子制御装置(12)を含んでいる。この電子制御装置(12)は、電気制御ライン(11、15、21)を介し、液圧ブレーキ装置の操作に応答するセンサ(9)と、アクチュエータ(14)と、第2ブレーキレバー(20)と接続されている。制御装置(12)は、アクチュエータ(14)を、センサ(9)の出力信号に依存して又は第2ブレーキレバー(20)の操作により、第2車輪(2)に作用するブレーキ装置を作動させるためにコントロールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオートバイ用のインテグラルブレーキシステム(前後連動式ブレーキシステム)に関し、このシステムは、一方の車輪に作用する液圧ブレーキ装置を含んでいて、この液圧ブレーキ装置は液圧ラインを介してブレーキシリンダと接続されていて、このブレーキシリンダは第1ブレーキレバーを用いて制御可能であり、またこのシステムは、他方の車輪に作用するブレーキ装置を含んでいて、このブレーキ装置にはアクチュエータが付設されていて、このアクチュエータは第1ブレーキレバーを用いても第2ブレーキレバーを用いても制御可能であり、更にこのシステムは、両方の車輪に対してブレーキ力を被制御分配するための調整装置を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
この種の周知のインテグラルブレーキシステムでは前輪に作用するブレーキ装置も後輪に作用するブレーキ装置も液圧式で作動する。この際、アクチュエータは後輪に作用するブレーキ装置に付設されている。このアクチュエータは主ブレーキ弁を含んでいて、この主ブレーキ弁は別個の液圧ラインを介してハンドブレーキレバー及びフットブレーキレバーと接続されている。この主ブレーキシリンダは液圧調整弁を含んでいて、この液圧調整弁は両方の車輪に対してブレーキ力を被制御分配するための調整装置を形成する。周知のこのインテグラルブレーキシステムにより、フットブレーキレバーを用い、後輪に付設されている液圧ブレーキ装置を単独で操作すること、又は、ハンドブレーキレバーを用い、前輪に付設されている液圧ブレーキ装置も後輪に付設されている液圧ブレーキ装置も共同で操作することが可能である。この場合、液圧調整弁により形成されている調整装置は両方の車輪に対してブレーキ力を被制御分配させることになる。しかし、前輪及び後輪に対する理想的な動的ブレーキ力分配に近いかたちでブレーキ力を分配するそのような液圧調整装置は極めて複雑で且つコストがかかる。実際には、前輪及び後輪に対して理想的とされる動的ブレーキ力分配が純粋に液圧的な調整弁を用いては達成可能ではないことが判明している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の基礎を成す課題は、僅かな生産費で前輪及び後輪に対して動的ブレーキ力の最適分配を可能とする、冒頭に掲げた形式のオートバイ用のインテグラルブレーキシステムを創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従い、その要求に対応するインテグラルブレーキシステムは、調整装置を含んでいる電子制御装置が設けられていて、この制御装置が、電気制御ラインを介し、液圧ブレーキ装置の操作に応答するセンサと、アクチュエータと、第2ブレーキレバーと接続されていて、この際、この制御装置が、アクチュエータを、センサの出力信号に依存して又は第2ブレーキレバーの操作により、第2車輪に作用するブレーキ装置を作動させるためにコントロールすることにより特徴付けられている。本発明に従うインテグラルブレーキシステムにより、液圧調整弁を含んでいる主ブレーキシリンダをアクチュエータが補うこととなり、液圧コントロールが不必要となる。
【0005】
液圧ブレーキ装置の操作に応答するセンサは、例えば、第1ブレーキレバーの操作移動距離又はこの第1ブレーキレバーに加えられた反力を検出する。しかしこのセンサはオートバイの減速度も検出し得る。液圧ライン内の圧力を検出するセンサが特に有利である。
【0006】
本発明に従うインテグラルブレーキシステムを用い、両方の車輪におけるアンチロック機能も実現され得る。この目的のために次のことが意図されている。即ち、両方の車輪には各々アンチロックセンサが付設されていて、このアンチロックセンサが制御ラインを介して制御装置と接続されていること、及び、液圧ライン内には圧力センサに直列接続された減圧装置が配設されていて、この減圧装置が制御ラインを介して制御装置と接続されていることである。
【0007】
本発明に従うインテグラルブレーキシステムでは第2車輪に作用するブレーキ装置が液圧的にも機械的にも操作され得る。第1選択肢では、アクチュエータがポンプとして形成されていて液圧ラインを介してブレーキ装置と接続されていることが意図されている。第2選択肢では、アクチュエータが電気調整モータ(電気サーボモータ)であり、この調整モータがブレーキ装置と機械的に接続されていることが意図されている。このインテグラルブレーキシステムは、好ましくは、ハンドブレーキレバーを用いることにより、前輪に付設されているブレーキ装置も後輪に付設されているブレーキ装置も操作され得るが、フットブレーキレバーを用いては、後輪に付設されているブレーキ装置が単独で操作され得るように形成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に概要的に描かれている実施形態に基づいて本発明を更に説明する。
【実施例1】
【0009】
唯一の図である図1にはオートバイの前輪1及び後輪2が概要的に描かれていて、前輪1及び後輪2には各々ディスクブレーキ3及び4が付設されている。前輪1に付設されているブレーキ装置は従来通りに形成されている、即ちディスクブレーキ3のブレーキキャリパは液圧ライン5を介して主ブレーキシリンダ6と接続されていて、主ブレーキシリンダ6はハンドブレーキレバー7を用いて制御可能である。液圧ライン5には減圧装置8が配設されていて、この減圧装置8とディスクブレーキ3との間には圧力センサ9が配設されている。減圧装置8と圧力センサ9は電気制御ライン10及び11を介して電子制御装置12と接続されている。(詳細には示されていない)オートバイの後輪2に付設されているディスクブレーキ4は、液圧ライン13を介し、電気ポンプにより形成されているアクチュエータ14と接続されている。アクチュエータ14は電気制御ライン15を介して制御装置12と接続されている。前輪1及び後輪2には各々アンチロックセンサ16及び17が付設されていて、これらのセンサは各々電気制御ライン18及び19を介して制御装置12と接続されている。オートバイのフットブレーキレバー20は電気制御ライン21を介して制御装置12と接続されている。
【0010】
制御装置12は、この装置が、前輪1及び後輪2に対するブレーキ力の最適分配と、車輪のロック時におけるブレーキ力の減少という2重機能を満たすようにプログラミングされている。
【0011】
以下、前述の構成を有するインテグラルブレーキについて詳細に説明する。
【0012】
オートバイのハンドブレーキレバー7が操作されると、その際には従来の方式により液圧ライン5内でブレーキ圧が増加され、それにより、前輪1に付設されているディスクブレーキ3が操作される。液圧ライン5内の圧力上昇は圧力センサ9により検出され、圧力センサ9は対応する信号を制御ライン11を介して制御装置12へと送信する。制御装置12はこの信号に基づいて後輪2のために理想的なブレーキ力を検出し、制御ライン15を介して対応する信号をアクチュエータ14へと送信する。それに基づきアクチュエータ14つまり電気ポンプは後方のディスクブレーキ4の作動に必要なブレーキ圧を液圧ライン13内に生成する。従ってハンドブレーキレバー7の操作により前方のディスクブレーキ3と後方のディスクブレーキ4が共同で操作され得て、この際、電子制御装置12は前輪1及び後輪2に加えられるブレーキ力の最適分配をもたらしてくれる。
【0013】
フットブレーキレバー20が操作されると、その際には制御装置12が制御ライン21を介してブレーキ信号を受信し、対応するブレーキ圧を液圧ライン13内に生成するためにアクチュエータ14が制御装置12により制御ライン15を介してコントロールされる。従ってフットブレーキレバー20の操作により後輪2に単独でブレーキをかけることが可能である。
【0014】
ブレーキ過程時に前輪1がロックする場合にはアンチロックセンサ16が対応する信号を制御装置12へと送信する。制御装置12は制御ライン10を介して減圧装置8をコントロールし、それにより前方のディスクブレーキ3のブレーキ作用を減少するために液圧ライン5内のブレーキ圧が低下される。液圧ライン5内のこの圧力降下は圧力センサ9により記録され、圧力センサ9は対応する信号を制御装置12へと送信する。次いで制御装置12は、液圧ライン5内の減少された圧力に適合する、液圧ライン13内の減少された圧力を検出し、対応する信号をアクチュエータ14へと送信する。このようにして前輪1のロックが防止され得て、同時に前輪1及び後輪2に対して理想的とされる動的ブレーキ力分配が維持され得る。
【0015】
後輪2がロックする傾向にある場合、その際には前述のブレーキ力の調整過程が逆の順番で行われる。
【0016】
フットブレーキレバー20の操作により後方のディスクブレーキ4だけでブレーキがかけられる場合、その際には制御装置12によりアクチュエータ14だけがコントロールされ、液圧ライン13内のブレーキ圧が必要に応じて減少される。
【0017】
センサ9と制御装置12とアクチュエータ14とを含んでいるシステムが故障したとしても、前輪1に付設されている液圧ブレーキ装置3の機能性が維持され続けることが認識できる。
【0018】
図示された実施形態と異なりアクチュエータ14は電気ブレーキシリンダによっても形成され得る。またアクチュエータ14は電気調整モータ(電気サーボモータ)でもあり得て、この調整モータは後方のディスクブレーキ4と機械的に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 前輪
2 後輪
3 前輪1のディスクブレーキ
4 後輪2のディスクブレーキ
5 ディスクブレーキ3の液圧ライン
6 主ブレーキシリンダ
7 ハンドブレーキレバー
8 減圧装置
9 圧力センサ
10 減圧装置8の制御ライン
11 圧力センサ9の制御ライン
12 制御装置
13 ディスクブレーキ4の液圧ライン
14 アクチュエータ
15 アクチュエータ14の制御ライン
16 前輪1のアンチロックセンサ
17 後輪2のアンチロックセンサ
18 アンチロックセンサ16の制御ライン
19 アンチロックセンサ17の制御ライン
20 フットブレーキレバー
21 フットブレーキレバーの制御ライン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートバイ用のインテグラルブレーキシステムであって、このシステムが、一方の車輪に作用する液圧ブレーキ装置を含んでいて、この液圧ブレーキ装置が液圧ラインを介して主ブレーキシリンダと接続されていて、この主ブレーキシリンダが第1ブレーキレバーを用いて制御可能であり、またこのシステムが、他方の車輪に作用するブレーキ装置を含んでいて、このブレーキ装置にはアクチュエータが付設されていて、このアクチュエータが第1ブレーキレバーを用いても第2ブレーキレバーを用いても制御可能であり、更にこのシステムが、両方の車輪に対してブレーキ力を被制御分配するための調整装置を含んでいる、前記インテグラルブレーキシステムにおいて、
調整装置を含んでいる電子制御装置(12)が設けられていて、この制御装置(12)が、電気制御ライン(11、15、21)を介し、液圧ブレーキ装置(3)の操作に応答するセンサ(9)と、アクチュエータ(14)と、第2ブレーキレバー(20)と接続されていて、更に制御装置(12)が、アクチュエータ(14)を、センサ(9)の出力信号に依存して又は第2ブレーキレバー(20)の操作により、第2車輪(2)に作用するブレーキ装置(4)を作動させるためにコントロールすることを特徴とするインテグラルブレーキシステム。
【請求項2】
センサ(9)が液圧ライン(5)内の圧力に応答することを特徴とする、請求項1に記載のインテグラルブレーキシステム。
【請求項3】
両方の車輪(1、2)には各々アンチロックセンサ(16、17)が付設されていて、このアンチロックセンサ(16、17)が制御ライン(18、19)を介して制御装置(12)と接続されていること、及び、液圧ライン(5)内には圧力センサ(9)に直列接続された減圧装置(8)が配設されていて、この減圧装置(8)が制御ライン(10)を介して制御装置(12)と接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインテグラルブレーキシステム。
【請求項4】
アクチュエータ(14)がポンプとして又は電気ブレーキシリンダとして形成されていて、液圧ライン(13)を介し、第2車輪(2)に作用するブレーキ装置(4)と接続されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載のインテグラルブレーキシステム。
【請求項5】
アクチュエータ(14)が電気調整モータであり、この調整モータが、第2車輪(2)に作用するブレーキ装置(4)と機械的に接続されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載のインテグラルブレーキシステム。
【請求項6】
第1車輪(1)が前輪であり第2車輪(2)が後輪であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインテグラルブレーキシステム。
【請求項7】
システム(9、12、14)の故障時に液圧ブレーキ装置(3)の機能性が維持され続けることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインテグラルブレーキシステム。

【公表番号】特表2006−513904(P2006−513904A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568413(P2004−568413)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014477
【国際公開番号】WO2004/074060
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】