説明

オーナメントパネルの取付け構造

【課題】従来に比べてコストダウンを図ることができ、また、オーナメントパネルの変形を矯正できる、オーナメントパネルの取付け構造の提供。
【解決手段】樹脂製の本体部11と、本体部11とは異なる材料で構成され本体部11に固定される表層部12と、を備えるオーナメントパネル10を、オーナメントパネル10が取付けられる相手部品20に取付ける、構造である。オーナメントパネル10は、相手部品20に、スクリュ30を相手部品20に設けられるスクリュ挿通用孔31を挿通させてオーナメントパネル10に締め付けることで取付けられるとともに、オーナメントパネル10に一体に設けられる爪41を相手部品20に一体に設けられる爪受け42に係合させることで取付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーナメントパネルの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドア内装材やインストルメントパネル等に、意匠性を向上させるために、木目調のオーナメントパネルが配設されることがある。木目調のオーナメントパネルは、樹脂製の本体部に本木(本物の木材)や木目柄のフィルムがインサート成形にて固定された構成になっている。
木目調のオーナメントパネルは、長尺状である場合、一般的に、樹脂材のみで構成される場合に比べて、木の木目による樹脂の流れやフィルムと樹脂の収縮率の違いなどにより、長手方向に捩れるような変形が大きく生じる。そのため、図8に示すように、木目調のオーナメントパネル1の、該オーナメントパネル1が取付けられる相手部品2への取付けは、長手方向に所定間隔ごとに(例えば40mmごとに)スクリュ3を締め付けることで行なわれることが多い。スクリュ3を締め付けることにより、オーナメントパネル1の変形を矯正してオーナメントパネル1を相手部品2に取付けることができるからであり、オーナメントパネル1と相手部品2との隙を小さくかつ一定または略一定に保つことができるからである。
【0003】
しかし、従来の取付け構造には、つぎの問題点がある。
長手方向に所定間隔ごとにスクリュ3を締め付けているため、スクリュ3の数が多く部品点数上不利であるだけでなく取付けコスト上も不利である。
【0004】
特許文献1は、オーナメントパネルを相手部品に取付けるのに、スクリュを用いずに樹脂クリップを用いる技術を開示している。しかし、該公報開示の技術では、樹脂クリップがオーナメントパネルおよび相手部品とは別体品であるため、上記従来の問題点と同様の問題点が存在する。また、樹脂クリップのみでオーナメントパネルを相手部品に取付けるため、スクリュを用いる場合に比べて、オーナメントパネルの変形矯正力が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−315183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来に比べてコストダウンを図ることができ、また、オーナメントパネルの変形を矯正できる、オーナメントパネルの取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 樹脂製の本体部と、該本体部とは異なる材料で構成され前記本体部に固定される表層部と、を備えるオーナメントパネルを、該オーナメントパネルが取付けられる相手部品に取付ける、オーナメントパネルの取付け構造であって、
前記オーナメントパネルは、前記相手部品に、スクリュを前記オーナメントパネルと前記相手部品の一方に設けられるスクリュ挿通用孔を挿通させて前記オーナメントパネルと前記相手部品の他方に締め付けることで取付けられるとともに、前記オーナメントパネルと前記相手部品の一方に一体に設けられる爪を前記オーナメントパネルと前記相手部品の他方に一体に設けられる爪受けに係合させることで取付けられている、オーナメントパネルの取付け構造。
(2) 前記オーナメントパネルは長尺状であり、
前記オーナメントパネルの、前記相手部品に前記スクリュを締め付けることで取付けられる部分と、前記相手部品に前記爪を前記爪受けに係合させることで取付けられる部分とは、前記オーナメントパネルの長手方向に交互に設けられている、(1)記載のオーナメントパネルの取付け構造。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)のオーナメントパネルの取付け構造によれば、オーナメントパネルが、相手部品に、スクリュを締め付けることで取付けられるとともに、爪を爪受けに係合させることで取付けられているため、つぎの効果を得ることができる。
(a)オーナメントパネルが相手部品にスクリュを締め付けることのみで取付けられる場合に比べて、スクリュの数を減らすことができ、部品点数を削減できるだけでなく取付けコストを低減させることができる。
(b)オーナメントパネルが相手部品に爪を爪受けに係合させることのみで取付けられる場合と異なり、オーナメントパネルの変形をスクリュを締め付けることで矯正することができる。そのため、オーナメントパネルが相手部品に爪を爪受けに係合させることのみで取付けられる場合に比べて、オーナメントパネルの変形強制力を高めることができる。
【0009】
上記(2)のオーナメントパネルの取付け構造によれば、オーナメントパネルの、相手部品にスクリュを締め付けることで取付けられる部分と、相手部品に爪を爪受けに係合させることで取付けられる部分とが、オーナメントパネルの長手方向に交互に設けられているため、つぎの効果を得ることができる。
(c)オーナメントパネルが相手部品にスクリュを締め付けることのみで取付けられる場合に比べて、スクリュの数を半分または約半分にすることができ、コストダウン上有利である。
(d)オーナメントパネルが相手部品に爪を爪受けに係合させることのみで取付けられる場合と異なり、爪を爪受けに係合させる部分同士が隣り合うことを防止できる。そのため、スクリュ締めにて変形を矯正しない間隔が比較的長くなってしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明実施例のオーナメントパネルの取付け構造の、分解概略斜視図である。
【図2】本発明実施例のオーナメントパネルの取付け構造の、オーナメントパネルの部分拡大断面図である。
【図3】本発明実施例のオーナメントパネルの取付け構造の、スクリュとその近傍の、部分拡大断面図である。
【図4】本発明実施例のオーナメントパネルの取付け構造の、爪と爪受けおよびその近傍の、部分拡大断面図である。
【図5】本発明実施例のオーナメントパネルの取付け構造における、爪の変形例を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明実施例のオーナメントパネルの取付け構造における、爪の変形例を示す拡大斜視図である。
【図7】本発明実施例のオーナメントパネルの取付け構造の、オーナメントパネルがドア内装材に取付けられる場合の、ドアの車室内側からの正面図である。
【図8】従来のオーナメントパネルの取付け構造の、分解概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明実施例のオーナメントパネルの取付け構造を、図1〜図7を参照して、説明する。
本発明実施例のオーナメントパネルの取付け構造(以下、単に、取付け構造ともいう)は、図3に示すように、樹脂製の本体部11と、本体部11とは異なる材料で構成され本体部11に固定される表層部12と、を備える長尺状のオーナメントパネル10を、該オーナメントパネル10が取付けられる相手部品20に取付ける、取付け構造である。
【0012】
オーナメントパネル10は、薄板形状であり、長尺状である。
本体部11は、本体部11を成形するための図示略の成形型に表層部12を構成する部材を挿入した状態で溶融樹脂を流し込んで成形することで(インサート成形することで)、表層部12と固定されている。ただし、本体部11と表層部12との固定の方法は、インサート成形に限定されるものではなく、たとえば接着等であってもよい。
表層部12は、たとえば、本木材(本物の木材)または木目柄等のフィルム部材からなる。表層部12の厚みは、本体部11の厚みに比べて薄い。表層部12は、本体部11の車室側面に設けられており、車室内乗員が視認可能な意匠面を備えている。表層部12は、本体部11の車室側面の、全面にわたって設けられていてもよく、一部のみに設けられていてもよい。
【0013】
相手部品20は、たとえば、自動車のドア内装材(ドア内装材に取付けられる部品も含む)、インストルメントパネル(インストルメントパネルに取付けられる部品も含む)、等からなる。相手部品20は、一部品であってもよく、複数部品であってもよい。相手部材20は、たとえば自動車のドア内装材である場合、図7に示す、ドアトリムアッパ21、ドアトリムロア22、アームレスト23、インサイドハンドルのハウジング24、モール25、のいずれか少なくとも1つからなる。
【0014】
オーナメントパネル10は、図1に示すように、スクリュ30をオーナメントパネル10と相手部品20の一方に設けられるスクリュ挿通用孔31を挿通させてオーナメントパネル10と相手部品20の他方に一体に設けられるボス部32に締め付けることで取付けられるとともに、オーナメントパネル10と相手部品20の一方に一体に設けられる爪41をオーナメントパネル10と相手部品20の他方に一体に設けられる爪受け42に係合させることで(爪嵌合にて)取付けられている。
以下、本発明実施例および図示例では、スクリュ挿通用孔31が相手部品20に設けられ、ボス部32がオーナメントパネル10に設けられており、また、爪41がオーナメントパネル10に設けられ、爪受け42が相手部品20に設けられる場合を、例にとって説明する。
【0015】
スクリュ挿通用孔31は、相手部品20に複数設けられている。スクリュ挿通用孔31の径は、図3に示すように、スクリュ30の軸部30aの径より大で、スクリュ30の頭部30bの径より小とされている。このため、スクリュ挿入用孔31に、スクリュ30の軸部30aは挿通可能であり、スクリュ30の頭部30bは挿通不能である。
【0016】
ボス部32は、オーナメントパネル10の本体部11に、スクリュ挿通用孔31と同数、設けられている。ボス部32は、本体部11の反車室側面(表層部12と反対側の面)から反車室側(相手部品20側)に円筒状に突出して設けられている。ボス部32の突出方向先端は、オーナメントパネル10の相手部品20に対する位置を一義的に定めるため、相手部品20の車室側面に接触している。
【0017】
爪41は、図1に示すように、オーナメントパネル10の本体部11に複数設けられている。爪41は、図4に示すように、本体部11の反車室側面(表層部12と反対側の面)から反車室側(相手部品20側)に突出して設けられている。爪41は、オーナメントパネル10を相手部品20との隙が無くなるかまたは無視できる程度の隙となるまで変形を矯正させたときにのみ爪受け42に係合するように(引っ掛かるように)なっており(引き込み爪となっており)、オーナメントパネル10の変形を矯正する機能を有する。
【0018】
爪41の形状は、特に限定されるものではない。すなわち、爪41は、(i)図4に示すように、本体部11から突出する平板状部41aと、該平板状部41aの突出方向先端部に設けられる引っ掛かり部41bと、を備える形状であってもよく、(ii)図5に示すように、平板状部41aと引っ掛かり部41bに加えて、さらに、平板状部41aの曲げ剛性を向上させる背面リブ41cを備え、オーナメントパネル10の相手部品20への取付け強度を図4の形状の場合よりも高める形状とされていてもよく、(iii)図6に示すように、リブ41dによって曲げ剛性が高められている板状部41eの一対のスリット41fの間に、両持ち梁構造の引っ掛かり形状部41gを設ける形状であってもよく、(iv)その他の形状であってもよい。
爪41の本体部11側端部の厚み(板厚)は、ボス部32の本体部11側端部の厚み(板厚)より小とされている。
【0019】
爪受け42は、図4に示すように、相手部品20に設けられる孔42aと、孔42aの周縁部42bと、からなる。爪41を爪受け42の孔42aに挿入することで、爪41が弾性変形後復元して孔42aの周縁部42bに引っ掛かり、爪41と爪受け42とが係合する。
【0020】
図1に示すように、オーナメントパネル10の、相手部品20にスクリュ30で取付けられる部分(ボス部32が設けられる部分)は、成形性およびオーナメントパネル10の相手部品20への取付け性を向上させるため、オーナメントパネル10の長手方向に一直線上に並んで設けられている。また、オーナメントパネル10の、相手部品20に爪41を爪受け42に係合させることで取付けられる部分(爪41が設けられる部分)も、成形性およびオーナメントパネル10の相手部品20への取付け性を向上させるため、オーナメントパネル10の長手方向に一直線上に並んで設けられている。
【0021】
オーナメントパネル10の、相手部品20にスクリュ30で取付けられる部分と、相手部品20に爪41を爪受け42に係合させることで取付けられる部分とは、オーナメントパネル10の長手方向に所定間隔ごとに(例えば40mm〜50mmごとに)交互に設けられている。オーナメントパネル10の、相手部品20にスクリュ30で取付けられる部分と、相手部品20に爪41を爪受け42に係合させることで取付けられる部分とは、同一直線状に設けられていてもよいが、千鳥足状に設けられていることが望ましい。この理由は、同一直線状に設けられている場合に比べて、オーナメントパネル10が相手部品20に対して傾いてしまうことを抑制できるからである。
【0022】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
本発明実施例では、オーナメントパネル10が、相手部品20に、スクリュ30を締め付けることで取付けられるとともに、爪41を爪受け42に係合させることで取付けられているため、つぎの作用を得ることができる。
(a)オーナメントパネル10が相手部品20にスクリュ30を締め付けることのみで取付けられる場合に比べて、スクリュ30の数を減らすことができ、部品点数を削減できるだけでなく取付けコストを低減させることができる。
(b)オーナメントパネル10が相手部品20に爪41を爪受け42に係合させることのみで取付けられる場合と異なり、オーナメントパネル10の変形をスクリュ30を締め付けることで矯正することができる。そのため、オーナメントパネル10が相手部品20に爪41を爪受け42に係合させることのみで取付けられる場合に比べて、オーナメントパネル10の変形強制力を高めることができる。
【0023】
オーナメントパネル10の、相手部品20にスクリュ30を締め付けることで取付けられる部分と、相手部品20に爪41を爪受け42に係合させることで取付けられる部分とが、オーナメントパネル10の長手方向に交互に設けられているため、つぎの作用を得ることができる。
(c)オーナメントパネル10が相手部品20にスクリュ30を締め付けることのみで取付けられる場合に比べて、スクリュ30の数を半分または約半分にすることができ、コストダウン上有利である。
(d)オーナメントパネル10が相手部品20に爪41を爪受け42に係合させることのみで取付けられる場合と異なり、爪41を爪受け42に係合させる部分同士が隣り合うことを防止できる。そのため、スクリュ30締めにて変形を矯正しない間隔が比較的長くなってしまうことを抑制できる。
【0024】
爪41の本体部11側端部の厚み(板厚)が、ボス部32の本体部11側端部の厚み(板厚)より小とされているため、つぎの作用を得ることができる。
(e)ボス部32が設けられる本体部11部分(オーナメントパネル10部分)に比べて、爪41が設けられる本体部11部分(オーナメントパネル10部分)にヒケが発生することを抑制できる。そのため、オーナメントパネル10が相手部品20にスクリュ30を締め付けることのみで取付けられる場合に比べて、オーナメントパネル10の意匠面にヒケの影響が出てしまうことを抑制できる。
【符号の説明】
【0025】
10 オーナメントパネル
11 本体部
12 表層部
20 相手部品
30 スクリュ
31 スクリュ挿通用孔
32 ボス部
41 爪
42 爪受け


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の本体部と、該本体部とは異なる材料で構成され前記本体部に固定される表層部と、を備えるオーナメントパネルを、該オーナメントパネルが取付けられる相手部品に取付ける、オーナメントパネルの取付け構造であって、
前記オーナメントパネルは、前記相手部品に、スクリュを前記オーナメントパネルと前記相手部品の一方に設けられるスクリュ挿通用孔を挿通させて前記オーナメントパネルと前記相手部品の他方に締め付けることで取付けられるとともに、前記オーナメントパネルと前記相手部品の一方に一体に設けられる爪を前記オーナメントパネルと前記相手部品の他方に一体に設けられる爪受けに係合させることで取付けられている、オーナメントパネルの取付け構造。
【請求項2】
前記オーナメントパネルは長尺状であり、
前記オーナメントパネルの、前記相手部品に前記スクリュを締め付けることで取付けられる部分と、前記相手部品に前記爪を前記爪受けに係合させることで取付けられる部分とは、前記オーナメントパネルの長手方向に交互に設けられている、請求項1記載のオーナメントパネルの取付け構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−171447(P2012−171447A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34228(P2011−34228)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】