説明

オープンラック式気化器

【課題】二重管構造の下部ヘッダーを備え、NGの送出流量の変動を抑制して操業の安定化を実現できるORVを提供する。
【解決手段】ORVは、複数のフィンチューブ2をパネル状に配列し、その上下端にそれぞれ上部ヘッダー4と下部ヘッダー5を接合して成り、下部ヘッダー5に供給したLNGをフィンチューブ2内に導入して気化させ、NGを上部ヘッダー4から送り出す。下部ヘッダー5は、各フィンチューブ2の下端が接合され、両端が閉ざされた外管9と、外管9の内部に延在し、終端が閉塞板12で閉ざされるとともに始端からLNGが供給されるスパージパイプ10と、から構成され、スパージパイプ10は、下部にLNG散布孔16が設けられ、上部にガス抜き孔17が設けられており、外管9とフィンチューブ2との接合部同士の間に配置されたリング板19によって外管9内で支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス(以下「LNG」という)を天然ガス(以下「NG」という)に気化させるために用いられるオープンラック式気化器(以下「ORV」という)に関する。
【背景技術】
【0002】
LNGは、メタンを主成分とし硫黄分を含んでいないことから、SOXなどの環境汚染物質を排出しないクリーン燃料として、様々な産業分野で利用されている。LNGは、産出地で−160℃程度の超低温液化状態とされ、タンカーによって需要地まで運搬される。LNGを燃料として利用するには、気化させてNGに戻す必要があり、従来から、ORVが多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ORVは、複数の伝熱管がパネル状に配列され、その上下端にそれぞれヘッダーが設けられて成る熱交換パネルを外側から熱媒体によって加熱し、伝熱管内を流通するLNGをNGに気化させる熱交換器の一種である。
【0004】
図1は、ORVの要部を構成する熱交換パネルとそれに付帯する設備を模式的に示す図である。同図に示すように、熱交換パネル1は、フィンチューブ2を径方向に複数並べてパネル状に配列し、その上端と下端にそれぞれ上部ヘッダー4と下部ヘッダー5を接合して構成される。フィンチューブ2は、管壁の外周面から外方に向かって突出した複数のフィン3を有する。ORVは、このような熱交換パネル1を仕様に応じて多数並列に配置して成り立つ。
【0005】
各熱交換パネル1の上部ヘッダー4と下部ヘッダー5には、それぞれ上部マニホールド6と下部マニホールド7が連結されている。さらに、各熱交換パネル1の上部には、フィンチューブ2に隣接してトラフ8が配設されている。トラフ8には熱媒体として海水が供給され、海水は、トラフ8から溢れ出してフィンチューブ2の表面を流下する。その熱媒体としては循環水が用いられる場合もある。
【0006】
LNGは、下部マニホールド7を経て下部ヘッダー5に供給され、フィンチューブ2内に導入される。フィンチューブ2内に導入されたLNGは、フィンチューブ2の表面を流下する海水との熱交換により気化し、NGとなって上部ヘッダー4に導出される。上部ヘッダー4に導出されたNGは、上部マニホールド6を通じて外部に送り出される。
【0007】
ORVにおいては、下部ヘッダー5に供給されたLNGを始端から終端までの全てのフィンチューブ2に均一に分配するために、多くの場合、二重管構造の下部ヘッダー5を採用している。
【0008】
図2は、従来のORVにおける二重管構造の下部ヘッダーの終端近傍を示す図であり、同図(a)は縦断面図を、同図(b)は同図(a)のA−A断面図を、同図(c)は同図(a)のB−B断面図をそれぞれ示す。図3は、従来のORVにおける二重管構造の下部ヘッダーのマニホールド側近傍を示す縦断面図である。
【0009】
図2および図3に示すように、下部ヘッダー5は、二重管構造であり、外管9と、この外管9の内部に延在するスパージパイプ10とから構成される。外管9は、管壁の頂上部に各フィンチューブ2の下端が溶接で接合され、各フィンチューブ2と連通している。外管9の終端は、図2(a)に示すように、半球形などの内部空間を有するエンドキャップ11によって閉ざされ、その始端は、図3に示すように、下部マニホールド7に溶接で接合されている。
【0010】
スパージパイプ10は外管9に挿入されて組み付けられるものである。スパージパイプ10の終端は、図2(a)、(b)に示すように、閉塞板12によって閉ざされている。閉塞板12の外周には板状のリング部13が突出し、スパージパイプ10はそのリング部13によって外管9内で支持される。
【0011】
スパージパイプ10の始端には、図3に示すように、その外周にリング板14が取り付けられている。このリング板14は、下部マニホールド7の近傍において、外管9内でスパージパイプ10を支持する役割を担う。こうして、外管9とスパージパイプ10との管壁間に環状空間15が形成される。下部マニホールド7を経たLNGは、スパージパイプ10の始端からスパージパイプ10内に供給される。
【0012】
また、スパージパイプ10の管壁の下部には、その内部に供給されたLNGを外管9内の環状空間15に均一に分配して流出させるために、所定の間隔でLNG散布孔16が穿設されている。一般に、LNG散布孔16は、図2(c)に示すように、スパージパイプ10の横断面において、最底部から85°までの斜め下方の位置、または90°の真横の位置に設けられる。
【0013】
このような二重管構造の下部ヘッダー5を備えるORVでは、下部ヘッダー5からフィンチューブ2にLNGを導入するに際し、LNGは、下部ヘッダー5を構成するスパージパイプ10に供給され、各LNG散布孔16から流出して外管9内の環状空間15にほぼ均一に分配され流入する。環状空間15に流入したLNGは、フィンチューブ2の表面を流下して外管9の外表面に達した海水からの入熱によって昇温され、各フィンチューブ2内にほぼ均一に導入される。
【0014】
下部ヘッダー5内では、海水からの入熱によってLNGの一部は気化することがあり、スパージパイプ10に供給されたLNGの一部もスパージパイプ10内で気化することがある。このため、スパージパイプ10の管壁の頂上部には、ガス抜き孔17Aが穿設されている。このガス抜き孔17Aは、スパージパイプ10内のNGを環状空間15に放出するガス抜き機能を果たす。また、スパージパイプ10の終端を閉ざす閉塞板12の上部にも、ガス抜き孔17Bが穿設されている。このガス抜き孔17Bは、スパージパイプ10内のNGを、閉塞板12およびリング部13とエンドキャップ11とで形成される終端空間18に放出するガス抜き機能を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2000−28276号公報(段落0003〜0004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ORVは、内部でLNGが液相から、液相と気相の混相を経て、気相となる相変化を伴いながら流れているため、圧力や流量などの変動が生じる可能性を内在している。通常、その変動は運転に支障のあるような大きさにはならないが、流量制御方法などの特別な問題が複合した場合、極まれに、ORV出口のNG流量が大きく変動し、顕在化することがある。NGの送出流量に著しい変動が発生すると、安定した操業が困難になる。
【0017】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、二重管構造の下部ヘッダーを備え、NGの送出流量の変動を抑制して操業の安定化を実現できるORVを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記目的を達成するため、二重管構造の下部ヘッダーを採用することを前提とし、NGの送出流量が変動する要因について鋭意検討を重ねた結果、下記(a)〜(e)の知見を得た。
【0019】
図4は、従来の下部ヘッダーの終端近傍におけるLNGの挙動を説明する図である。
(a)図4に示すように、スパージパイプ10内に供給されたLNGは、各LNG散布孔16から流出して環状空間15に流入する。環状空間15のLNGは上昇してフィンチューブ2に向かうが、途中、海水からの入熱によって昇温され、条件によっては一部が気化することもあり、その場合はLNGとNGの混相流となってフィンチューブ2に導入される。これに加え、スパージパイプ10内で気化したNGが、ガス抜き孔17Aから放出されて環状空間15に流入し、主流に合流する。このとき、終端空間18は、閉塞板12の外周から突出するリング部13によって隔離されているが、リング部13の外周面と外管9の内周面との間には僅かに隙間があるため、環状空間15のLNGの一部が、その隙間を通じて終端空間18に進入して滞留する。
【0020】
終端空間18に滞留するLNGの一部は、海水からの入熱によって気化するが、これに加え、スパージパイプ10内で気化したNGが、ガス抜き孔17Bから放出されて、終端空間18に流入する。これらのNGも、リング部13の外周面と外管9の内周面との間の僅かな隙間から環状空間15へ流出し、主流に合流する。しかしながら、終端空間18と環状空間15との間の流通は非常に少ないので、終端空間18は半閉鎖状態といえる。
【0021】
(b)LNG流量が少ないか、海水からの入熱が大きい場合は、スパージパイプ10内や、環状空間15および終端空間18に液面が存在し、LNGとNGが混在する場所が多いものの、それぞれ圧力バランスのとれた状態となっており、LNGとNGの二相流はそれなりに安定して流れている。
【0022】
(c)LNG流量が増加したり、海水からの入熱が減少し、スパージパイプ10内のほとんどがLNGで充満されるようになると、スパージパイプ10内の終端付近だけがLNGとNGが混在する状態となり、ガス抜き孔17Bから終端空間18にLNGとNGが交互に流入する状態となることがある。
【0023】
LNGとNGは単位重量あたりの体積比率が大きく異なるため、半閉鎖状態の終端空間18にLNGとNGが交互に流入するときには、終端空間18の圧力が僅かながら変動する状態となる。ここにLNGの上流側配管などからほぼ同程度の周期性を有する圧力脈動が加わると、共振して大きな圧力変動となることがある。この圧力は、リング部13の外周面と外管9の内周面との間の僅かな隙間からNGを流出させるための動力源であるため、圧力変動の影響によって隙間を通るNG流出量が変化し、終端空間18でLNGの液面遥動が発生する。この際、終端空間18や環状空間15のNGが圧縮性容量となることで、スパージパイプ10内や環状空間15にも圧力変動が伝搬し、外管9の内部全体で大きな液面遥動が発生する状態となる場合がある。この液面揺動や圧力変動は、フィンチューブ2に流入するLNG流量や圧力の変動を誘起し、最終的にはORV出口のNG送出流量や圧力の変動となって感知されることもある。
【0024】
(d)上記(c)の場合よりもさらにLNG流量が増加したり、海水からの入熱が減少し、スパージパイプ10内および終端空間18が完全にLNGで充満されると、ガス抜き孔17Bから終端空間18にはLNGだけが流入する状態となるため、スパージパイプ10内および終端空間18は圧力バランスのとれた安定状態となって、LNGの液面遥動も収束する。
【0025】
(e)通常は、上記(c)のような液面揺動が発生したとしても、ORVの運転に支障が出ることはない。しかし、ORV上流の流量制御装置が、NG圧力や送出流量の変動に対して敏感すぎる場合には、変動を上手く抑制しきれずに、却って変動を助長してしまい、操業上支障が出るほどの流量変動に発達することもある。
【0026】
本発明者らは、このような(a)〜(e)の知見に基づき、NGの送出流量の変動を抑制するには、LNGおよびNGが外管内の環状空間と終端空間とを円滑に流通する構造にすることで、ORVの上流側から圧力脈動がもたらされたとしても共振を起こしにくくなり、外管内におけるLNGの液面遥動を抑えるのが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0027】
本発明の要旨は、下記のORVにある。すなわち、複数のフィンチューブをパネル状に配列し、その上下端にそれぞれ上部ヘッダーと下部ヘッダーを接合して成り、下部ヘッダーに供給したLNGをフィンチューブ内に導入して気化させ、気化したNGを上部ヘッダーから送り出すORVにおいて、下部ヘッダーは、各フィンチューブの下端が接合され、両端が閉ざされた外管と、この外管の内部に延在し、終端が閉塞板で閉ざされるとともに始端からLNGが供給されるスパージパイプと、から構成され、スパージパイプは、管壁の下部にLNG散布孔が設けられ、管壁の上部にガス抜き孔が設けられており、外管とフィンチューブとの接合部同士の間に配置されたリング板によって外管内で支持されていることを特徴とするORVである。
【0028】
上記のORVにおいて、前記外管の終端がエンドキャップで閉ざされ、このエンドキャップの内面と前記閉塞板の外面との前記外管の軸方向での最大間隔が前記外管の内径の半分以下である構成にすることが好ましい。
【0029】
また、上記のORVでは、前記ガス抜き孔は、前記閉塞板に近接するとともに、前記スパージパイプの横断面において、頂上部から85°の範囲内の上方の位置に設けられる構成にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明のORVによれば、閉塞板とエンドキャップとで形成される終端空間は、隔離されることなく外管内の環状空間と連通し、LNG散布孔から流出したLNG、およびガス抜き孔から放出されたNGが終端空間に滞留することはない。このため、終端空間で気化したNGが円滑に環状空間に流通することから、環状空間でLNGの液面遥動を抑えることができ、その結果、上部ヘッダーを経て送り出されるNGの流量変動を減少させることができ、操業の安定化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ORVの要部を構成する熱交換パネルとそれに付帯する設備を模式的に示す図である。
【図2】従来のORVにおける二重管構造の下部ヘッダーの終端近傍を示す図であり、同図(a)は縦断面図を、同図(b)は同図(a)のA−A断面図を、同図(c)は同図(a)のB−B断面図をそれぞれ示す。
【図3】従来のORVにおける二重管構造の下部ヘッダーのマニホールド側近傍を示す縦断面図である。
【図4】従来の下部ヘッダーの終端近傍におけるLNGの挙動を説明する図である。
【図5】本発明のORVにおける二重管構造の下部ヘッダーの終端近傍を示す図であり、同図(a)は縦断面図を、同図(b)は同図(a)のC−C断面図を、同図(c)は同図(a)のD−D断面図を、同図(d)は同図(a)のE−E断面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明のORVの実施形態について、図面を参照しながら詳述する。
図5は、本発明のORVにおける二重管構造の下部ヘッダーの終端近傍を示す図であり、同図(a)は縦断面図を、同図(b)は同図(a)のC−C断面図を、同図(c)は同図(a)のD−D断面図を、同図(d)は同図(a)のE−E断面図をそれぞれ示す。同図に示す下部ヘッダーとこれを備えるORVは、前記図2および図3に示す下部ヘッダーとこれを備える前記図1に示すORVの構成を基本とし、それと同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0033】
図5に示すように、本発明のORVにおける下部ヘッダー5は、管壁の頂上部に各フィンチューブ2の下端が溶接で接合された外管9と、この外管9の内部に延在し、管壁の下部にLNG散布孔16が穿設されたスパージパイプ10とから構成される。
【0034】
図5(a)、(b)に示すように、スパージパイプ10の終端は閉塞板12によって閉ざされている。この閉塞板12は、スパージパイプ10の外径とほぼ同じ直径の円板状であり、前記図2および図4に示す従来の下部ヘッダーのようなリング部13を有していない。
【0035】
スパージパイプ10の外周には、図5(a)、(d)に示すように、リング板19が取り付けられている。このリング板19は、外管9とフィンチューブ2との接合部同士の間に配置され、前記リング部13に代えて、外管9内でスパージパイプ10を支持する。
【0036】
本実施形態では、図5(a)に示すように、外管9の終端を閉ざすエンドキャップ11として、皿形の内部空間を有する皿形鏡板を採用している。閉塞板12によって閉ざされたスパージパイプ10の終端は、そのエンドキャップ11に近接して配置される。
【0037】
また、本実施形態のスパージパイプ10には、図5(a)、(c)に示すように、閉塞板12に近接して管壁の上部に、ガス抜き孔17Cが穿設されている。このガス抜き孔17Cは、スパージパイプ10の横断面において、上半分の領域内であれば設置する位置や個数に特に限定はないが、ガス抜き機能を効果的に発揮するために、頂上部から85°の範囲内の斜め上方の位置に設けることが好ましい。より好ましくは、頂上部から45°の範囲内である。ガス抜き孔17Cの直径は、4〜20mm程度が好ましい。
【0038】
このような構成の下部ヘッダー5を備えるORVでは、スパージパイプ10の終端を閉ざす閉塞板12が前記リング部13を有しておらず、外管9とフィンチューブ2との接合部同士の間に配置されたリング板19によってスパージパイプ10が支持された構成であるため、閉塞板12とエンドキャップ11とで形成される終端空間18は、隔離されることなく外管9内の環状空間15と連通する。これにより、スパージパイプ10内に供給されたLNGは、各LNG散布孔16から流出して環状空間15に流入し、さらに終端空間18にも円滑に流入する。これに加え、スパージパイプ10内で気化したNGは、ガス抜き孔17Cから放出されて環状空間15に充満し、さらに終端空間18にも円滑に流入する。すなわち、LNGおよびNGが終端空間18に滞留することはない。
【0039】
このため、終端空間18に存在するLNGが気化した場合であっても、気化したNGは円滑に環状空間15に流入し、各フィンチューブ2に導入されることから、終端空間18のNGが圧縮性容量とならず、環状空間15でLNGの液面遥動を抑えることができる。これにより、環状空間15の圧力が安定し、各フィンチューブ2に導入される気液混合状態のLNGの流量が安定するのに伴い、前記知見(c)で述べたような外管9の内部全体で大きな液面遥動が発生する状態の場合よりも、上部ヘッダー4を経て送り出されるNGの流量変動を減少させることができる。その結果、前記知見(e)で述べたような流量制御装置を採用していたとしても、操業の安定化を実現することが可能となる。
【0040】
また、エンドキャップ11として、皿形または半楕円形の内部空間を有するものを用いることにより、前記図2および図4に示す従来の下部ヘッダーで用いるエンドキャップ、すなわち半球形の内部空間を有するものと比較して、終端空間18の容積を半分以下に減少させることができ、環状空間15でのLNG液面遥動の抑制効果が一層高まる。この場合、エンドキャップ11の内面と閉塞板12の外面との外管9の軸方向での最大間隔を、外管9の内径の半分以下とする。例えば、外管9の内径が140mmの場合、エンドキャップ11の内面と閉塞板12の外面との最大間隔は、70mm以下である。この範囲内であれば、エンドキャップ11の形状に限定はなく、また、エンドキャップ11の内部を埋める構成でも構わない。
【0041】
また、ガス抜き孔17Cを閉塞板12に近接させつつ、スパージパイプ10の横断面において、頂上部から85°の範囲内の斜め上方の位置に設けることにより、ガス抜き機能を効果的に発揮させることができ、しかも、外管9とフィンチューブ2との接合部で貫通割れの発生を防止することができる。後者の効果は以下の理由による。
【0042】
ガス抜き孔17Cからは、スパージパイプ10内で気化したNGが放出されるのに加え、LNGも放出される。このため、運転条件によっては、ガス抜き孔17CからNGと低温のLNGとが交互に噴出することがあり、その噴出先に外管9とフィンチューブ2との接合部などの不連続形状が存在した場合、その部分には、繰り返し熱応力が発生するが、応力集中により平滑面よりも熱応力が著しく大きくなるため、長期の運転に伴って、疲労破壊により貫通割れが発生するおそれがある。
【0043】
本実施形態の下部ヘッダー5のように、ガス抜き孔17Cを閉塞板12に近接させつつ、スパージパイプ10の横断面で斜め上方の位置に設ける構成にすれば、ガス抜き孔17Cが外管9とフィンチューブ2との接合部から外れた位置に配置されるため、その接合部には、ガス抜き孔17Cから噴出したNGとLNGが直接到達することはなく、貫通割れを誘発する繰り返しの熱応力は発生しない。
【0044】
その他本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のORVによれば、LNG散布孔から流出したLNG、およびガス抜き孔から放出されたNGがエンドキャップ内の終端空間に滞留することはないため、終端空間で気化したNGが円滑に環状空間に流入するのに伴って、環状空間でLNGの液面遥動を抑えることができ、その結果、上部ヘッダーを経て送り出されるNGの流量変動を防止することができ、操業の安定化を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1:熱交換パネル、 2:フィンチューブ、 3:フィン、
4:上部ヘッダー、 5:下部ヘッダー、 6:上部マニホールド、
7:下部マニホールド、 8:トラフ、 9:外管、
10:スパージパイプ、 11:エンドキャップ、 12:閉塞板、
13:リング部、 14:リング板、 15:環状空間、
16:LNG散布孔、 17A、17B、17C:ガス抜き孔、
18:終端空間、 19:リング板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィンチューブをパネル状に配列し、その上下端にそれぞれ上部ヘッダーと下部ヘッダーを接合して成り、下部ヘッダーに供給したLNGをフィンチューブ内に導入して気化させ、気化したNGを上部ヘッダーから送り出すオープンラック式気化器において、
下部ヘッダーは、各フィンチューブの下端が接合され、両端が閉ざされた外管と、この外管の内部に延在し、終端が閉塞板で閉ざされるとともに始端からLNGが供給されるスパージパイプと、から構成され、
スパージパイプは、管壁の下部にLNG散布孔が設けられ、管壁の上部にガス抜き孔が設けられており、外管とフィンチューブとの接合部同士の間に配置されたリング板によって外管内で支持されていることを特徴とするオープンラック式気化器。
【請求項2】
前記外管の終端がエンドキャップで閉ざされ、このエンドキャップの内面と前記閉塞板の外面との前記外管の軸方向での最大間隔が前記外管の内径の半分以下であることを特徴とする請求項1に記載のオープンラック式気化器。
【請求項3】
前記ガス抜き孔は、前記閉塞板に近接するとともに、前記スパージパイプの横断面において、頂上部から85°の範囲内の上方の位置に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のオープンラック式気化器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169494(P2011−169494A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32260(P2010−32260)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【出願人】(598166696)北九州エル・エヌ・ジー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】