説明

カウル構造

【課題】部品点数を増加することなく、ワイパ駆動手段の支持剛性確保と衝突体の保護性能向上とを両立する。
【解決手段】ピボットホルダ16を取付けた助手席用ピボット取付けブラケット22に形成された橋渡しブラケット取付座部22Eに、橋渡しブラケット56の前端部56Bが締結部材60によって結合されており、橋渡しブラケット56の後縦壁部56Dはカウルトップインナステー64とカウルマウンティングブラケット62を介して、後側カウル52の上壁部52Cに結合されている。また、橋渡しブラケット56の前部56A及び傾斜壁部56Cに形成した切欠部80を通り、ピボットレバー42が橋渡しブラケット56より下方へ移動できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカウル構造に係り、特に、自動車等の車両に使用されるカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両に使用されるカウル構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、ワイパピボット部が締結された第1のカウルブラケットと第2のカウルブラケットとが開きカウルに架け渡されている。また、第1カウルブラケットの先端部とボルト部材で締結した第2のカウルブラケットの先端部には、ボルト部材を挿通する貫通穴からカウルブラケットの先端末に至るスリットが設けられており、歩行者の打ち付け荷重でボルト部材がスリットを押し広げて移動し先端部から離脱することで、第1カウルブラケットと第2カウルフブラケットとが分離させるようになっている。
【特許文献1】特開2003−312450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1では、第1カウルブラケットと第2カウルフブラケットとを分割し、別部材とする必要があるため部品点数が増加する。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、部品点数を増加することなく、ワイパ駆動手段の支持剛性確保と衝突体の保護性能向上とを両立できるカウル構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明のカウル構造は、車両上方側が開口され長手方向を車幅方向に沿って設けられたカウル本体と、前記カウル本体の開口部の前方側に取付けられたワイパ駆動手段と、前記カウル本体の開口部の前方側における前記ワイパ駆動手段の取付部と、前記開口部の後方側とに車両前後方向に沿って橋渡しした状態で固定され、前記ワイパ駆動手段の前記カウル本体の開口部内への移動に対して前記ワイパ駆動手段との干渉を防止するための干渉防止部が形成された連結補強手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
ワイパ駆動手段にワイパを拘束する負荷が作用した場合には、カウル本体のワイパ駆動手段の取付部に作用する変形力を、カウル本体の開口部の前方側におけるワイパ駆動手段の取付部と、カウル本体の開口部の後方側とに車両前後方向に沿って橋渡しされた連結補強手段によって、カウル本体の開口部の前方側に加えて後方側にも分散することができる。この結果、カウル本体の開口部の前方側に応力が集中するのを抑制できるため、カウル本体におけるワイパ駆動手段の取付部の変形を抑制できる。即ち、ワイパ駆動手段の支持剛性が確保される。一方、衝突体がワイパ駆動手段へ衝突し、ワイパ駆動手段がカウル本体の開口部内へ移動した場合には、連結補強手段に形成された干渉防止部によって、ワイパ駆動手段と連結補強手段との干渉が防止される。このため、ワイパ駆動手段の上下方向の変形ストロークが確保される。また、連結補強手段を前後に2分割する必要がないため部品点数が増加することもない。
【0007】
請求項2記載の本発明は請求項1に記載のカウル構造において、前記干渉防止部は前記連結補強手段に形成した切欠部であることを特徴とする。
【0008】
連結補強手段に切欠部を形成することで干渉防止部を設けることができるため製造が容易である。
【0009】
請求項3記載の本発明は請求項2に記載のカウル構造において、前記連結補強手段における前記カウル本体の開口部の後方側との結合部の車幅方向に沿った長さが、前記連結補強手段における前記カウル本体の開口部の前方側との結合部の車幅方向に沿った長さより長いことを特徴とする。
【0010】
連結補強手段におけるカウル本体の開口部の後方側との結合部の車幅方向に沿った長さが、連結補強手段におけるカウル本体の開口部の前方側との結合部の車幅方向に沿った長さより長いため、カウル本体の開口部の前方側との結合部から連結補強手段に伝達された力を、カウル本体の開口部の後方側との結合部の広範囲に伝達することができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本発明のカウル構造は部品点数を増加することなく、ワイパ駆動手段の支持剛性確保と衝突体の保護性能向上とを両立できる。
【0012】
請求項2記載の本発明のカウル構造は生産性を向上できる。
【0013】
請求項3記載の本発明のカウル構造はカウル本体における開口部の後方側の局所変形を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るカウル構造について、図1〜図7に基づいて説明する。
【0015】
なお、図中矢印FRは車両前方方向を、矢印INは車幅内側方向を、矢印UPは車両上方方向を示す。
【0016】
図7には本実施形態におけるカウル構造が適用された車体のウインドシールドガラスが車両斜め前方から見た斜視図によって示されている。
【0017】
図7に示される如く、本実施形態のワイパ装置10は、車体12のカウル14内に取付けられており、ワイパム10Aに取付けられたワイパブレード10Bによって、車体12のウインドシールドガラス12A上に積もった雪S1、S2等を拭い取るようになっている。
【0018】
図1には本実施形態におけるカウル構造が車両斜め前方外側から見た斜視図によって示されている。また、図1ではカウル内部を示すため一部を断面としている。
【0019】
次に、ワイパ装置10について説明する。なお、ワイパ装置10は周知の構成であるため簡単に説明する。
【0020】
図1に示される如く、ワイパ装置10は、車幅方向に所定の間隔を隔てて取付けられたワイパピボット部を構成する車幅方向略中央部に設けられた助手席用のピボットホルダ16と、車体右側に設けられた運転手席用のピボットホルダ18とを備えている。また、ピボットホルダ16とピボットホルダ18とは連結フレーム20によって互いに連結されている。連結フレーム20は丸パイプ材で構成されており、その長手方向を略車幅方向に沿って配置されている。
【0021】
なお、連結フレーム20の車幅方向左側端部20Aは、ピボットホルダ16の支持部16Dに固定されており、連結フレーム20の車幅方向右側端部20Bは、ピボットホルダ18の支持部18Dに固定されている。
【0022】
ピボットホルダ16はピボットホルダ支持部16Aを備えており、ピボットホルダ支持部16Aの車両左側には、カウル14への取付部16Bが形成されている。また、カウル14の前部における車幅方向略中央部にはワイパ駆動手段の取付部としての助手席用ピボット取付けブラケット22が設けられており、助手席用ピボット取付けブラケット22のピボットホルダ取付座部22Aに、ピボットホルダ16の取付部16Bがボルト等の締結部材23で固定されている。なお、助手席用ピボット取付けブラケット22のピボットホルダ取付座部22Aは、助手席用ピボット取付けブラケット22の車両右側部において車両上方に突出した突部となっている。
【0023】
ピボットホルダ16のピボットホルダ支持部16Aには円筒部16Cが車両上方へ向かって一体に設けられており、円筒部16Cに挿通されたワイパ駆動手段としてのピボットシャフト21がピボットホルダ支持部16Aに回転可能に支持されている。また、ピボットホルダ16には図示を省略したワイパモータが取付けられている。
【0024】
同様に、ピボットホルダ18はピボットホルダ支持部18Aを備えており、ピボットホルダ支持部18Aの車両右側には、車体への取付部18Bが形成されている。ピボットホルダ18の取付部18Bはカウル14に取付けた運転席用ピボット取付けブラケット24の取付座部24Aに、ボルト等の締結部材25で固定されている。
【0025】
ピボットホルダ18のピボットホルダ支持部18Aには円筒部18Cが一体に車体上方へ向かって設けられており、円筒部18Cに挿通されたピボットシャフト30がピボットホルダ支持部18Aに回転可能に支持されている。
【0026】
ワイパモータ(図示省略)の出力軸は、ピボットホルダ16のワイパモータ支持部16Bから上方へ向かって突出しており、その先端にはクランクアーム26が連結されている。クランクアーム26の先端には、ジョイント29を介して第1リンクロッド34の一方の端部34Aが連結されている。また、第1リンクロッド34の他方の端部34Bは、ジョイント37とピボットレバー39とを介してピボットシャフト30に連結されている。これによって、ワイパモータの回転がクランクアーム26の往復回転として伝わり、第1リンクロッド34はこの往復回転をピボットシャフト30の揺動回転として伝えるようになっている。
【0027】
第2リンクロッド38の一方の端部38Aはジョイント40を介してピボットシャフト21に結合されたワイパ駆動手段としての助手席側のピボットレバー42に連結されている。また、第2リンクロッド38の他方の端部38Bは、ジョイント37を介して第1リンクロッド34に連結されている。
【0028】
これにより、第1リンクロッド34の往復動が第2リンクロッド38を介してピボットレバー42へ伝達されて、ピボットシャフト21が揺動回転するようになっている。
【0029】
図7に示される如く、ピボットシャフト21、30がそれぞれ揺動回転することによって、ピボットシャフト21、30に取付けられたワイパ装置10の左右のワイパム10Aがそれぞれ揺動回転するようになっている。
【0030】
次に、本実施形態のカウル14を詳細に説明する。
【0031】
図2には図1の2−2断面線に沿った拡大断面図が示されており、図3には図1の3−3断面線に沿った拡大断面図が示されている。
【0032】
図2に示される如く、本実施形態のカウル本体としてのカウル14は長手方向を車幅方向に沿って設けられた前側カウル50と後側カウル52とを備えており、カウル14は車両上方側の前方が開口部54によって開口されている。より具体的に説明すると、前側カウル50はカウル14の前部側を構成しており、後側カウル52はカウル14の後部側を構成している。また、前側カウル50の後端縁部50Aと後側カウル52の下端縁部52Aとが溶接等によって結合されている。
【0033】
助手席用ピボット取付けブラケット22は、前側カウル50の前部50Bにおける車幅方向略中央部に溶接等に固定されている。より具体的に説明すると、助手席用ピボット取付けブラケット22の前端縁部に形成されたフランジ22Bが、前側カウル50の前部50Bにおける横壁部50Cの上面に溶接等によって結合されている。また、助手席用ピボット取付けブラケット22の後端縁部に形成されたフランジ22Cが、前側カウル50の前部50Bにおける縦壁部50Dの後面に溶接等によって結合されている。
【0034】
図1に示される如く、助手席用ピボット取付けブラケット22の車両左側縁部にはフランジ22Dが形成されており、フランジ22Dの前端はフランジ22Bに、後端はフランジ22Cに連結されている。また、助手席用ピボット取付けブラケット22のフランジ22Dは前側カウル50の前部50Bにおける横壁部50Cの上面に溶接等によって結合されている。一方、助手席用ピボット取付けブラケット22のピボットホルダ取付座部22Aの車両左側部には、橋渡しブラケット取付座部22Eが形成されている。なお、助手席用ピボット取付けブラケット22の橋渡しブラケット取付座部22Eは、ピボットホルダ取付座部22Aに比べて車両上方への突出高さが低い突出部となっている。
【0035】
図2に示される如く、助手席用ピボット取付けブラケット22の橋渡しブラケット取付座部22Eの上面には、連結補強手段としての橋渡しブラケット56の前部56Aにおける前端部56Bがボルト、ナット等の締結部材60によって固定されている。また、橋渡しブラケット56の前部56Aの後端からは車両後側下方に向かって傾斜壁部56Cが延設されており、傾斜壁部56Cの後端からは車両後側上方に向かって後縦壁部56Dが形成されている。
【0036】
橋渡しブラケット56の後縦壁部56Dは、カウルマウンティングブラケット62を介して後側カウル52に固定されたカウルトップインナステー64に取付けられている。
【0037】
より具体的に説明すると、後側カウル52の下端縁部52Aの車両上側には、車両後側上方向へ傾斜した縦壁部52Bが形成されており、縦壁部52Bの上端からは、車両前側上方へ向かって上壁部52Cが形成されている。また、上壁部52Cの前端からは車両上方へ向かって前壁部52Dが形成されており、前壁部52Dの上端からは車両後側上方に向かってフランジ52Eが形成されている。
【0038】
図5にはカウルトップインナステー64が車両斜め前方下側から見た斜視図によって示されている。
【0039】
図5に示される如く、カウルトップインナステー64は板材をプレス加工等で折り曲げており、上壁部64Aが後側カウル52における上壁部52Cの下面に溶接等によって結合されている(結合点P1)。また、カウルトップインナステー64の上壁部64Aの前端からは略車両下方へ向かってフランジ64Bが形成されている。一方、カウルトップインナステー64の上壁部64Aの後端からは車両後側下方へ向かって傾斜壁部64Cが形成されており、傾斜壁部64Cの後端からは略車両下方へ向かって縦壁部64Dが形成されている。また、カウルトップインナステー64の縦壁部64Dは、後側カウル52における縦壁部52Bの前面に溶接等によって結合されている(結合点P2)。
【0040】
図6にはカウルマウンティングブラケット62が車両斜め前方下側から見た斜視図によって示されている。
【0041】
図6に示される如く、カウルマウンティングブラケット62は板材をプレス加工等で折り曲げており、上壁部62Aがカウルトップインナステー64における上壁部64Aの下面に溶接等によって結合されている(結合点P3)。また、カウルマウンティングブラケット62の上壁部62Aの後端からは略車両下方へ向かって縦壁部62Bが形成されている。なお、カウルマウンティングブラケット62の縦壁部62Bの車両下方側から見た形状は開口部を車両後方へ向けたハット断面形状となっており、縦壁部62Bの車幅方向中央部には、左右一対の取付孔68が形成されている。
【0042】
図2に示される如く、カウルマウンティングブラケット62の縦壁部62Bの前面には、橋渡しブラケット56の後縦壁部56Dが重合されている。また、カウルマウンティングブラケット62の縦壁部62Bに形成された左右一対の取付孔68と対向する橋渡しブラケット56の後縦壁部56Dの部位にはそれぞれ取付孔70が形成されており、これらの取付孔70、68を貫通するボルト等の締結部材72によって、カウルマウンティングブラケット62の縦壁部62Bと橋渡しブラケット56の後縦壁部56Dとが結合されている。
【0043】
従って、橋渡しブラケット56は前側カウル50に取付けた助手席用ピボット取付けブラケット22と、カウル14の開口部54の後方側となる後側カウル52の上壁部52Cとに、カウルマウンティングブラケット62とカウルトップインナステー64とを介して橋渡しされている。
【0044】
従って、図2及び図4に示すように、ピボットシャフト21からの入力F1、F2は、助手席用ピボット取付けブラケット22を介して前側カウル50に伝達されると共に、橋渡しブラケット56に伝達された力(図2及び図4の矢印F3、F4)は、フランジ56Eで補強された橋渡しブラケット56から、橋渡しブラケット56が締結部材72によって結合されたカウルマウンティングブラケット62と、カウルマウンティングブラケット62が結合されたカウルトップインナステー64を介して、後側カウル52の上壁部52Cにも伝達されるようになっている。
【0045】
図4には本実施形態におけるカウル構造が車両上方から見た平面図によって示されている。
【0046】
図4に示される如く、橋渡しブラケット56の前部56Aの幅(車幅方向に沿った長さ)L1は、傾斜壁部56Cの後部及び後縦壁部56Dの幅(車幅方向に沿った長さ)L2に比べて狭く(短く)なっており、橋渡しブラケット56の後側カウル52との結合部の幅L2が、橋渡しブラケット56の前側カウル50との結合部L1より広く(長く)なっている。このため、橋渡しブラケット56に伝達された力(図2及び図4の矢印F3、F4)を後側カウル52の上壁部52Cの広範囲に伝達することができ、後側カウル52の局所変形を防止できるようになっている。
【0047】
また、橋渡しブラケット56の傾斜壁部56Cの前後方向中間部においては、幅L3が車両前方側から車両後方側へ向かって車両右側へ広がっており、橋渡しブラケット56は車両前後方向に延びる中心線Qに対して非対称形状となっている。即ち、橋渡しブラケット56における前部56Aの車両右側部及び傾斜壁部56Cの車両右側部には干渉防止部としての切欠部80が形成されている。また、切欠部80の車両上方側には、ピボットレバー42が配置されている。このため、橋渡しブラケット56とピボットレバー42とが車両上下方向において重なっていない(オフセットしている)。
【0048】
従って、ピボットレバー42がカウル14の開口部54内へ入る方向となる略車両下方(図3の矢印A方向)へ移動した場合に、ピボットレバー42が切欠部80を通り、橋渡しブラケット56より下方へ移動できるようになっている。このため、ピボットレバー42と橋渡しブラケット56とが干渉しないようになっている。
【0049】
図1に示される如く、橋渡しブラケット56の長手方向から見た断面形状は、ハット断面形状となっており、橋渡しブラケット56の車幅方向両端縁部には、橋渡しブラケット56の長手方向に沿って、橋渡しブラケット56の長手方向の曲げ剛性を向上するためのフランジ56Eが形成されている。
【0050】
なお、後側カウル52の縦壁部52Bにはブラケット84が結合されており、ブラケット84に車幅方向に沿って形成されたスリット86には、ピボットホルダ16の後端部16Eがゴムブッシュ88を介して係合されている。
【0051】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0052】
本実施形態では、図7に示される如く、車体12のウインドシールドガラス12A上に積もった雪S1、S2等をワイパ装置10のワイパブレード10Bで拭い取る際に、ウインドシールドガラス12A上の下部に雪S1等が付着し、ワイパム10Aが下方(図7の矢印B方向)への移動中に移動範囲下端部の手前で拘束されることがある。この場合に、図1に示される如く、ピボットシャフト21、30には、ウインドシールドガラス12Aの上面に沿って車体斜め上側後方へ向かう力、即ち、車幅方向の軸廻りに上方へ回転しようとする力(図1の矢印F1)が作用する。このため、助手席用ピボット取付けブラケット22及び運転席用ピボット取付けブラケット24を介して前側カウル50の前部50Bにも車幅方向の軸廻りに上方へ向かう力(図2の矢印F1)が作用する。
【0053】
一方、ウインドシールドガラス12A上の側部に雪S2等が付着し、ワイパム10Aが上方(図7の矢印C方向)への移動中に移動範囲上端部の手前で拘束されることがある。この場合に、図1に示される如く、ピボットシャフト21、30には、ウインドシールドガラス12Aの上面に沿って車体斜め下側前方へ向かう力、即ち、車幅方向の軸廻りに下方へ回転しようとする力(図1の矢印F2)が作用する。このため、助手席用ピボット取付けブラケット22及び運転席用ピボット取付けブラケット24を介して前側カウル50の前部50Bにも車幅方向の軸廻りに下方へ回転しようとする力(図2の矢印F2)が作用する。
【0054】
このとき、本実施形態では、ピボットホルダ16を取付けた助手席用ピボット取付けブラケット22におけるピボットホルダ取付座部22Aの近傍に形成された橋渡しブラケット取付座部22Eに、橋渡しブラケット56の前端部56Bが締結部材60によって結合されており、橋渡しブラケット56の後縦壁部56Dはカウルトップインナステー64とカウルマウンティングブラケット62を介して、後側カウル52の上壁部52Cに結合されている。
【0055】
従って、ピボットシャフト21からの入力F1、F2は助手席用ピボット取付けブラケット22を介して前側カウル50に伝達される。また、橋渡しブラケット56に伝達された力(図2及び図4の矢印F3、F4)は、フランジ56Eで補強された橋渡しブラケット56から、橋渡しブラケット56が締結部材72によって結合されたカウルマウンティングブラケット62と、カウルマウンティングブラケット62が結合されたカウルトップインナステー64を介して、後側カウル52の上壁部52Cにも伝達される。
【0056】
この結果、ピボットシャフト21からの入力F1、F2を前側カウル50と後側カウル52とに分散することができる。このため、前側カウル50におけるピボットシャフト21の取付部となる助手席用ピボット取付けブラケット22を固定した部位の変形を抑制できる。
【0057】
また、橋渡しブラケット56の後側カウル52との結合部の幅L2が、橋渡しブラケット56の前側カウル50との結合部の幅L1より広くなっている。この結果、橋渡しブラケット56に伝達された力(図2及び図4の矢印F3、F4)を後側カウル52の広範囲に伝達することができるため、後側カウル52の局所変形を防止できる。
【0058】
従って、本実施形態では、車体12のウインドシールドガラス12A上に積もった雪S1、S2等をワイパ装置10のワイパブレード10Bで拭い取る際のピボットシャフト21の支持剛性が確保される。
【0059】
一方、図3に示される如く、衝突体Kがワイパムの根元部となるピボットシャフト21に略車両下方(図3の矢印D方向)へ向かって衝突した場合には、ピボットシャフト21がカウル14の開口部54の内方へ移動する。この結果、ピボットシャフト21に連結されたピボットレバー42がカウル14の開口部54内へ入る方向となる略車両下方(図3の矢印A方向)へ移動する。
【0060】
このとき、本実施形態では、橋渡しブラケット56の前部56Aの車両右側部及び傾斜壁部56Cの車両右側部に形成した切欠部80を通り、ピボットレバー42が橋渡しブラケット56より下方へ移動できるので、ピボットレバー42と橋渡しブラケット56とが干渉しない。この結果、ピボットレバー42の略車両下方側への変形ストロークを大きくできる。このため、衝突体Kが衝突した際の衝突体保護性能を向上できる。
【0061】
また、本実施形態では、衝突体Kが衝突した際の衝突体保護性能を向上するために、予め、橋渡しブラケット56を前後に2分割した構成にする必要もない。このため、部品点数を増加することなく、ピボットシャフト21の支持剛性確保と衝突体Kの保護性能向上とを両立できる。
【0062】
また、本実施形態では、橋渡しブラケット56に切欠部80を形成することで、ピボットレバー42と橋渡しブラケット56との干渉を防止できる。この結果、製造が容易であるため生産性が向上する。
【0063】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、カウル本体としてのカウル14を前側カウル50と後側カウル52との2部材で構成したが、カウル14の構成はこれに限定されず、カウル14を1部材からなる構造としても良い。また、カウル14を3つ以上の部材からなる構造としても良い。
【0064】
また、上記実施形態では、橋渡しブラケット56との干渉を防止するワイパ駆動手段の部位を助手席側のピボットレバー42としたが、橋渡しブラケット56との干渉を防止するワイパ駆動手段の部位は、ピボットレバー42以外のワイパ装置10の他の部分であっても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、橋渡しブラケット56に干渉防止部としての切欠部80が形成したが、干渉防止部は切欠部80に限定されず、車両下方へ凹んだ凹部等の他の構成としても良い。
【0066】
また、上記実施形態では、橋渡しブラケット56の前端部56Bを助手席用ピボット取付けブラケット22を介して前側カウル50に取り付けたが、これに代えて、橋渡しブラケット56の前端部56Bを前側カウル50のワイパ駆動手段の取付部に直接取り付けた構成としても良い。
【0067】
また、上記実施形態では、橋渡しブラケット56の後縦壁部56Dをカウルマウンティングブラケット62とカウルトップインナステー64とを介して後側カウル52に取り付けたが、これに代えて、橋渡しブラケット56の後縦壁部56Dを後側カウル52に直接取り付けた構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係るカウル構造を示す車体斜め前方外側から見た一部を断面とした斜視図である。
【図2】図1の2−2断面線に沿った拡大断面図である。
【図3】図1の3−3断面線に沿った拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るカウル構造を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るカウル構造のカウルトップインナステーを示す車体斜め前方外側下方から見た斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るカウル構造のカウルマウンティングブラケットを示す車体斜め前方外側下方から見た斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るカウル構造のワイパ作動状態を示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
10 ワイパ装置
12 車体
12A ウインドシールドガラス
14 カウル(カウル本体)
16 ピボットホルダ
18 ピボットホルダ
21 ピボットシャフト(ワイパ駆動手段)
22 ブラケット(ワイパ駆動手段の取付部)
22A ブラケットのピボットホルダ取付座部
22E ブラケットの橋渡しブラケット取付座部
30 ピボットシャフト
42 ピボットレバー(ワイパ駆動手段)
50 前側カウル
52 後側カウル
54 カウルの開口部
56 橋渡しブラケット(連結補強手段)
62 カウルマウンティングブラケット
64 カウルトップインナステー
80 橋渡しブラケットの切欠部(干渉防止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上方側が開口され長手方向を車幅方向に沿って設けられたカウル本体と、
前記カウル本体の開口部の前方側に取付けられたワイパ駆動手段と、
前記カウル本体の開口部の前方側における前記ワイパ駆動手段の取付部と、前記開口部の後方側とに車両前後方向に沿って橋渡しした状態で固定され、前記ワイパ駆動手段の前記カウル本体の開口部内への移動に対して前記ワイパ駆動手段との干渉を防止するための干渉防止部が形成された連結補強手段と、
を有することを特徴とするカウル構造。
【請求項2】
前記干渉防止部は前記連結補強手段に形成した切欠部であることを特徴とする請求項1に記載のカウル構造。
【請求項3】
前記連結補強手段における前記カウル本体の開口部の後方側との結合部の車幅方向に沿った長さが、前記連結補強手段における前記カウル本体の開口部の前方側との結合部の車幅方向に沿った長さより長いことを特徴とする請求項2に記載のカウル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−331710(P2007−331710A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169092(P2006−169092)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】