説明

カテキンタイプのカテキン類高含有茶葉

【課題】
茶を原料とし、加熱および加圧処理を行うことにより、茶葉中のEGCGをGCGに、またECGをCGに効率的に変換し、GCGおよびCG含量の高い茶葉を調製することを目的とする。
【解決手段】
本発明の茶葉は、茶葉のエピカテキンタイプ及びカテキンタイプのカテキン類のうち、カテキンタイプが50%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガロカテキンガレートなどのカテキンタイプのカテキン類を高濃度で含有する茶葉、当該茶葉の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茶葉には、ポリフェノール成分である茶カテキン類として、エピガロカテキンガレート((-)-epigallocatechin 3-O-gallate)(EGCG)、エピカテキン((-)-epicatechin)(EC)、 エピカテキンガレート((-)-epicatechin 3-O-gallate)(ECG)、及びエピガロカテキン((-)-epigallocatechin)(EGC)などのエピカテキンタイプのカテキン類と、カテキン((+)-catechin)(C)、ガロカテキン( (-)-gallocatechin)(GC)、カテキンガレート((-)-catechin 3-O-gallate(CG))、及びガロカテキンガレート((-)-gallocatechin 3-O-gallate(GCG))等のカテキンタイプのカテキン類が含まれている。
【0003】
それらのカテキン類のうち、緑茶ではエピカテキンタイプのカテキン類の含量が高く、特にEGCGの含量は茶カテキン類の約50%から60%をしめており、緑茶を原料とした茶抽出物や各種茶製品においても主カテキン成分となっている。
【0004】
また、緑茶以外の発酵茶であるウーロン茶や紅茶では、カテキン類が酸化され、teaflavin等の酸化、縮合型カテキン類の含量が高くなっている。
【0005】
それに対して、GCGやCG等のカテキンタイプの含量は、緑茶や各種発酵茶葉中で低く(GCGは一般的に0.1%前後、CGはほとんど含まれない)(Lin J.-K. et. al., Journal of Agricultural and Food Chemistry, 46, 3635-3642,1998)、また、GCGやCGなどは、茶ドリンクの加工製造工程における加熱処理によってEGCGまたECGの変換により生成される(Xu J.-Z., et. al., Journal of the Science of Food and Agriculture, 83, 1617-1621,2003)。
【0006】
近年、茶カテキンの機能性が注目され、食品分野をはじめとして多様な茶関連商品が作られ、社会の関心を集めている。最近ではメチル化カテキン類の抗アレルギー活性も見出され、べにほまれ等のメチル化カテキン類高含有茶が注目されている。また、EGCG等のカテキン類を化学的に変換し、脂溶性誘導体など新しいタイプのカテキン素材の開発が進められている。
【0007】
さらに、GCGおよびCGに強いコレステロール吸収阻害作用が認められ(Ikeda et al, Journal of Agriculture and Food Chemistry, 51, 7303-7307, 2003)、通常の茶葉中にほとんど含まれていないGCGやCGの機能性の解析と利用が注目されている。
【0008】
【非特許文献1】Lin J.-K. et. al., Journal of Agricultural and Food Chemistry, 46, 3635-3642,1998
【非特許文献2】Xu J.-Z., et. al., Journal of the Science of Food and Agriculture, 83, 1617-1621,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したカテキン素材の開発におけるカテキン類は、主としてエピカテキンタイプのカテキン類であり、GCGやCG等のカテキンタイプを高含量で含む素材の開発はあまりされていない。
【0010】
そこで、本発明は、茶を原料とし、加熱および加圧処理を行うことにより、茶葉中のEGCGをGCGに、またECGをCGに効率的に変換し、GCGおよびCG含量の高い茶葉を調製することを目的とする。
【0011】
また、当該調製方法によって得られるGCGおよびCG高含有茶葉の提供、およびその抽出物を材料とする新しい茶関連製品の製造を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、新鮮な茶葉はそのまま、また乾燥茶葉は適量の水を添加後、加熱、及び加圧処理を行うことにより茶葉中のGCGおよびCG含量が増加することを見いだした。処理によるEGCGおよびECG等の茶カテキン類の分解も少なく、含量が増加する成分のうち、特にGCG量はEGCGとほぼ同程度の高含量にまで達することを知見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の茶葉は、茶葉のエピカテキンタイプ及びカテキンタイプのカテキン類のうち、カテキンタイプが50%以上であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の茶葉の好ましい実施態様において、エピカテキンタイプが、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、及びエピガロカテキンガレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の茶葉の好ましい実施態様において、カテキンタイプが、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン、及びガロカテキンガレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の茶葉の好ましい実施態様において、エピガロカテキンガレート(EGCG)とガロカテキンガレート(GCG)の含有量の合計が3%以上であり、かつ、GCG/EGCG+GCGの比が、0.3以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の茶葉の好ましい実施態様において、エピカテキンガレート(ECG)とカテキンガレート(CG)の含有量の合計が1%以上であり、かつ、CG/ECG+CGの比が、0.3以上であることを特徴とする。
【0018】
本発明の茶葉の調整方法は、請求項1〜5項のいずれか1項に記載の茶葉を、加熱及び加圧処理することにより得ることを特徴とする。
【0019】
本発明の茶葉の調整方法の好ましい実施態様において、前記加熱及び加圧処理を、オートクレープにより行うことを特徴とする。
【0020】
本発明の茶葉の調整方法の好ましい実施態様において、加熱を、115〜130℃で、15〜30分間行うことを特徴とする。
【0021】
本発明の健康飲食品は、請求項1〜5項のいずれか1項に記載の茶葉を含有することを特徴とする。
【0022】
本発明の健康飲食品の好ましい実施態様において、さらに、米粉、そば粉、うどん粉、小麦粉、パン粉からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0023】
本発明の健康飲食品の好ましい実施態様において、健康飲食品が、健康飲料であることを特徴とする。
【0024】
本発明の健康飲食品の好ましい実施態様において、さらに、水、又は野菜飲料を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
茶葉中のEGCGやECGが,茶ドリンク等の製造工程においてGCGやCGにそれぞれ変換することは、知られているが、市販茶ドリンク中のGCGおよびCGは、液体に溶解した状態であり、素材としての利用の制約が大きい。今回の加熱、加圧処理した茶葉中では、EGCGおよびECGのGCGおよびCGへの変換効率は高く、十分な含量のGCGとCGを生成することができる。さらに、得られた処理茶葉は、そのまま、また乾燥粉末等の固体素材としても利用範囲が広いという特徴がある。
【0026】
また、本発明は、天然の茶葉にはほとんど含まれていないGCGとCGを効率的に生成する手法を提供するのが特徴である。得られるGCGおよびCG高含有茶葉の利用は、乾燥茶葉、抽出液(液体)、乾燥粉末、ゲル状物、固形成形物など、多種の形状で可能である。
【0027】
本発明のGCGおよびCG高含有茶葉の製造方法は、有機溶媒等の危険性のあるものは使用せず、また操作も簡便で、有機合成等の高度な技術を必要としない実用性の高いものである。また、得られる素材は、食品や医薬分野での広い応用が期待され、人の健康増進に貢献するところ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の茶葉は、茶葉のエピカテキンタイプ及びカテキンタイプのカテキン類のうち、カテキンタイプが50%以上である。これは、通常の茶葉は、カテキンタイプのカテキン類はほとんど含まれず、多くの場合、エピカテキンタイプのカテキンを50〜60%を占めているが、本発明者らの開発した調整法によれば、有用なカテキン機能を有する高含有カテキンタイプの茶葉を開発できたことによる。本発明で得られる茶葉に含まれるGCGおよびCGは一般式IおよびIIで表すことができる(図1参照)。なお、ここでいう茶葉とは、いわゆる茶葉のほか、茶粉末、パック茶、固形茶葉など、茶由来のものを包含することを意図するものである。
【0029】
エピカテキンタイプとしては、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、及びエピガロカテキンガレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。また、カテキンタイプとしては、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン、及びガロカテキンガレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。好ましい実施態様において、エピガロカテキンガレート(EGCG)とガロカテキンガレート(GCG)の含有量の合計が3%以上であり、かつ、GCG/EGCG+GCGの比が、0.3以上である。また、好ましい実施態様において、エピカテキンガレート(ECG)とカテキンガレート(CG)の含有量の合計が1%以上であり、かつ、CG/ECG+CGの比が、0.3以上である。当該カテキンタイプのカテキンを高含有量で含む茶葉は、GCG及びCGが強いコレステロール吸収阻害作用を有するという観点から、当該茶葉もこのようなコレステロール吸収阻害作用を有する。
【0030】
次に、本発明の茶葉の調整方法について説明する。本発明の茶葉は、加熱及び加圧処理することにより得られる。ここで、加熱及び加圧処理の手段は、特に限定されないが、例えば、密閉型の加熱装置、オートクレープ、蓋付きの釜炒り用の釜などを使用することにより行うことができる。好ましくは、加熱を、115〜130℃で、15〜30分間行う。
【0031】
本発明における茶葉は、採茶後の新鮮な茶葉をなるべく早くオートクレープなどの加熱、加圧処理をするか、もしくは市販の乾燥茶葉を原料とする場合は、適量の水を添加した後、オートクレープなどの加熱、加圧処理をすることが好ましい。処理後は、水やメタノール、エタノール、アセトンまたはそれらの混合液により抽出して茶葉抽出物を得るか、もしくはオートクレープ処理後の茶葉を風乾、もしくは乾燥機(60℃程度)にて乾燥して乾燥茶葉を得ることにより、これら、茶葉またその抽出物を、GCGおよびCG高含量素材として用いることができる。
【0032】
また、本発明の健康飲食品は、上記本発明の茶葉を含有する。上記本発明の茶葉の説明をそのまま本発明の健康飲食品に当てはめることができる。
【0033】
健康食品又は健康飲料の用語は、特に限定されず、広く本発明の茶葉を含有する食品又は飲料を意味するものである.本発明の茶葉をそのまま食用とすることも可能であるが、自然にかつ容易に食用できるように、後述するような他の天然素材と混合して食用することもできる。好ましい実施態様において、本発明の健康飲食品は、上記本発明の茶葉のほかに、さらに、米粉、そば粉、うどん粉、小麦粉、パン粉からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0034】
また、好ましくは、健康飲食品が、健康飲料である。この場合、健康飲料には、上記本発明の茶葉に、さらに、水、又は野菜飲料を含有する。
【0035】
本発明の茶葉を含有する健康食品は、食事の代用、間食として食用することもできる。この場合、前記茶葉由来の粉末を米粉、そば粉、うどん粉、小麦粉、又はパン粉から選択される少なくともl種とを調合して通常の料理に利用することもできる。また、これらを洋菓子、和菓子、菓子、うどん、そば、パスタ、中華そば、パン等に加工してさらに食べやすくしても良い。これらの料理方法は常法に従う。
【0036】
また、健康食品の状態は、固体状(粉末、顆粒状)、ゼリー状、液体、懸濁状のいずれでもよい。また、健康食品、又は健康飲料には、甘味料、酸味料、ビタミン剤、ドリンク剤などに含まれる各種成分等を含まれていても良い。
【0037】
また健康飲料の場合には、さらに水、ココア、コーヒー、紅茶、牛乳、酒、果実飲料、又は野菜飲料からなる群から選択される少なくともl種を含有してもよい。上述したように得られた本発明の茶葉由来の粉末1〜100 mg程度を、水 10 〜 100 mlに溶かして食用する場合に、さらに水、ココア等に溶かして飲用することができる。
【0038】
いずれにしても、本発明の健康食品又は健康飲料の飲食方法は自由であり、特に限定されない.したがって、食品素材を活かした飲食方法であれば、本発明の効果を期待できる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
【0040】
[実施例1]
新鮮茶葉をオートクレープ可能な袋に入れ、オートクレープ(121℃、15分間)にて加熱、加圧処理をおこなった。処理後、茶葉を風乾し、乾燥茶葉とした。乾燥茶葉(1.8 g)を80℃のお湯(20 ml)で6分間抽出し、その抽出液を濾過後、HPLCで分析した。HPLC条件は以下の様である。カラム:TSK-gel ODS-80Ts (4.6 x 250 mm)、カラム温度:40℃、移動相:A; 1mM tetrabuthylammonium chrolide (pH 2.9, 酢酸にて)、B; CH3CN、A:B=9:1から1:4 (30分間)、流速:0.75 ml / min、検出:280 nm (UV)。オートクレープ処理をしない新鮮茶葉も同様に抽出し、HPLC分析した(図2参照)。
【0041】
[実施例2]
市販の乾燥緑茶(1 g)を三角フラスコに入れ、水(1 ml)を添加後、オートクレープ(121℃、15分間)にて加熱、加圧処理をおこなった。処理後、茶葉を60℃で一晩乾燥した。得られた乾燥茶葉(40 mg)をメタノール(2 ml)で一晩抽出し、その抽出液を濾過後、HPLCで分析した。HPLC条件は実施例1と同様である。オートクレープ処理をしない市販茶葉も同様に抽出し、HPLC分析した(図3参照)。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により製造されるGCGおよびCG高含有茶葉は、既存の緑茶や各種発酵茶には無い新しい組成のカテキン類を含んでおり、食品や医薬分野をはじめ広い分野での応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、GCGおよびCGの化学構造式を示す図である。
【図2】図2は、新鮮茶葉を原料とした実施例1のHPLC分析の結果を示す図である。(A)無処理茶(B)オートクレープ処理茶GC : (-)-gallocatechin,EGC : (-)-epigallocatechin,C : (+)-catechin,EC : (-)-epicatechin,EGCG : (-)-epigallocatechin 3-O-gallate,GCG : (-)-gallocatechin 3-O-gallate,ECG : (-)-epicatechin 3-O-gallate,CG : (-)-catechin 3-O-gallate
【図3】図3は、市販乾燥茶葉を原料とした実施例2のHPLC分析の結果を示す図である。(A)無処理茶(B)オートクレープ処理茶GC : (-)-gallocatechin,EGC : (-)-epigallocatechin,C : (+)-catechin,EC : (-)-epicatechin,EGCG : (-)-epigallocatechin 3-O-gallate,GCG : (-)-gallocatechin 3-O-gallate,ECG : (-)-epicatechin 3-O-gallate,CG : (-)-catechin 3-O-gallate

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉のエピカテキンタイプ及びカテキンタイプのカテキン類のうち、カテキンタイプが50%以上である茶葉。
【請求項2】
エピカテキンタイプが、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、及びエピガロカテキンガレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の茶葉。
【請求項3】
カテキンタイプが、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン、及びガロカテキンガレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の茶葉。
【請求項4】
エピガロカテキンガレート(EGCG)とガロカテキンガレート(GCG)の含有量の合計が3%以上であり、かつ、GCG/EGCG+GCGの比が、0.3以上である請求項1〜3項のいずれか1項に記載の茶葉。
【請求項5】
エピカテキンガレート(ECG)とカテキンガレート(CG)の含有量の合計が1%以上であり、かつ、CG/ECG+CGの比が、0.3以上である請求項1〜4項のいずれか1項に記載の茶葉。
【請求項6】
請求項1〜5項のいずれか1項に記載の茶葉を、加熱及び加圧処理することにより得ることを特徴とする茶葉の調製方法。
【請求項7】
前記加熱及び加圧処理を、オートクレープにより行う請求項6記載の方法。
【請求項8】
加熱を、115〜130℃で、15〜30分間行う請求項6又は7項記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜5項のいずれか1項に記載の茶葉を含有する健康飲食品。
【請求項10】
健康飲食品が、健康食品である請求項9記載の健康飲食品。
【請求項11】
さらに、米粉、そば粉、うどん粉、小麦粉、パン粉からなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項10項に記載の健康飲食品。
【請求項12】
健康飲食品が、健康飲料である請求項9記載の健康飲食品。
【請求項13】
さらに、水、又は野菜飲料を含有する請求項12記載の健康飲食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−94825(P2006−94825A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287187(P2004−287187)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【Fターム(参考)】