説明

カテキン類を形成物へ耐水固定化させる方法

【課題】煩雑な工程や新規設備を必要としない、カテキン類を均一に形成物へ耐水固定化させる方法を提供すること。
【解決手段】本発明のカテキン類を形成物へ耐水固定化させる方法は、含水有機溶媒に水溶性高分子化合物を分散させ、カテキン類を加えて均一に混合した後に、その混合溶液を形成物に塗布し、さらに乾燥させて溶媒を除去しながら耐水化させる工程を経ることに行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
含水有機溶媒中に水溶性高分子化合物とカテキン類を混合させた後に、その混合溶液を形成物に塗布し、さらに乾燥させて溶媒を除去する工程を具備することを特徴とするカテキン類を形成物へ耐水固定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類は、消臭性、抗菌性、抗ウィルス性などの機能を有することが知られており、その機能を活かして、例えば防カビ抗菌抗ウイルスフィルター(特許文献1)のように、シート、フィルム、フォームなど様々な建築用、若しくは家具用材料、フィルター等に機能性成分として用いられている。
しかしながら、カテキン類は水溶性であるため、フィルター等を水で洗ったりすると、塗布されているカテキン類が溶出し、抗菌性や脱臭性が大きく低下してしまう。また、シート等にカテキン類を担持した場合には、湿度の高い環境で溶出してしまい、色移りなどの問題もあげられている。そのため、カテキン類に耐水性を付与する技術が強く求められていた。
【0003】
これまでに知られているカテキン類の耐水化方法としては、カテキン等の機能性成分とセラミックス成分を樹脂に配合し、融解成形する方法(特許文献2)、茶抽出物をシリカ等の多孔質微粒子に含有させ、金属塩溶液にてキレート化させて水不溶化物とする方法(特許文献3)などが挙げられる。
しかし、カテキン等の機能性成分とセラミックス成分を樹脂に配合し融解成形する方法では、樹脂からなる成形物にしか用いることができず、また一般的に樹脂内部に包埋されたカテキン類は所望の機能を発揮することができないと考えられる。また茶抽出物を多孔質微粒子に含有させ金属塩溶液にてキレート化させて水不溶化物とする方法は、着色や人体に対する有害性の問題が挙げられ、またカテキン類の官能基が金属のキレートに用いられてしまうため、カテキン類の有する機能を保持させることができない恐れがある。更にこれらの方法は専用の設備を設ける必要が生じ、手軽に既存の設備を用いることが難しいとされていた。
【0004】
カテキン類の耐水化方法としては、その他にもポリフェノールをアルデヒド類などにより重合させて水に難溶とする方法(特許文献4)が挙げられる。しかし、当該方法は有害大気汚染物質であるアルデヒド類を副原料として用いる点で好ましくなく、またアルデヒドと反応して重合させる為にカテキン類のアルデヒド除去機能が発揮されないと考えられる。ここで、ポリフェノールを難溶化する方法としては、タンニン酸などの高分子ポリフェノールを水溶性高分子化合物であるメチルセルロースにより難溶化沈殿させる方法があり、タンニンの除去などに用いられている(非特許文献1)。しかし、カテキンなどの低分子ポリフェノールはメチルセルロースにより難溶化沈殿が形成されづらいとされていた(非特許文献1)。
【0005】
また、耐水化されたカテキン類を固定化した形成物を商品化する際には、商品の品質・性能を均質にするため、耐水化されたカテキン類を形成物へ均一かつ容易に固定化させる技術が求められていた。

【特許文献1】特開平10−315
【特許文献2】特開2000−204277
【特許文献3】特開2002−060309
【特許文献4】特開2003−176329
【非特許文献1】日本食品工業学会誌 第18巻 第1号(1971)p.28−32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点を克服し、カテキン類を均一かつ容易に形成物へ耐水固定化させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、低分子ポリフェノールであるカテキン類中のガレート体カテキンと非ガレート体カテキンの比が特定の場合に水溶性高分子化合物により耐水化されること、及び水溶性高分子化合物によるカテキン類の耐水化反応が含水有機溶媒中では起こらないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
請求項1記載の本発明は、水溶性セルロースエーテル類、ポリアルキルエーテル類及びポリビニルアルコール類から選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子化合物とカテキン類を含水有機溶媒に混合させた混合溶液である。
【0009】
また、請求項2記載の本発明は、水溶性セルロースエーテル類、ポリアルキルエーテル類及びポリビニルアルコール類から選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子化合物とカテキン類を酸性の含水有機溶媒に混合させた混合溶液である。
【0010】
また、請求項3記載の本発明は、カテキン類中のガレート体カテキン(A)と非ガレート体カテキン(B)の重量比率A/Bが0.8以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の混合溶液である。
【0011】
また、請求項4記載の本発明は、カテキン類に対して水溶性セルロースエーテル類、ポリアルキルエーテル類及びポリビニルアルコール類から選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子化合物の量が0.5〜50倍重量であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の混合溶液である。
【0012】
また、請求項5記載の本発明は、水溶性セルロースエーテル類がメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルメチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子化合物であり、ポリアルキルエーテル類がポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びトリメチロールプロパンポリプロピレングリコールエーテルから選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子化合物であり、ポリビニルアルコール類がポリビニルアルコールである請求項1乃至4いずれかに記載の混合溶液である。
【0013】
また、請求項6記載の本発明は、混合溶液中の有機溶媒濃度が30容量%〜95容量%であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の混合溶液である。
【0014】
また、請求項7記載の本発明は、含水有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、又はアセトニトリル及びそれらの混合物から選択される、請求項1乃至6いずれかに記載の混合溶液である。
【0015】
また、請求項8記載の本発明は、請求項1乃至7いずれかに記載の混合溶液を形成物に塗布し、さらに乾燥させて溶媒を除去する工程を具備することを特徴とする、カテキン類を形成物へ耐水固定化させる方法である。
【0016】
また、請求項9記載の本発明は、形成物の素材が繊維類、木質材料、ゴム類、プラスチック類のいずれかであることを特徴とする請求項8記載の方法である。
【0017】
また、請求項10記載の本発明は、形成物の用途が建築・家具用材料、シート類、フィルターのいずれかであることを特徴とする請求項8記載の方法である。
【0018】
また、請求項11記載の本発明は、請求項1乃至7いずれかに記載の混合溶液を形成物に塗布し、さらに乾燥させて溶媒を除去する工程により、カテキン類を形成物へ耐水固定化させたことを特徴とするカテキン類耐水固定化形成物である。
【0019】
また、請求項12記載の本発明は、形成物の素材が繊維類、木質材料、ゴム類、プラスチック類のいずれかであることを特徴とする請求項11記載のカテキン類耐水固定化形成物である。
【0020】
また、請求項13記載の本発明は、形成物の用途が建築・家具用材料、シート類、フィルターのいずれかであることを特徴とする請求項11記載のカテキン類耐水固定化形成物である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の耐水固定化方法は、煩雑な工程を経ずにカテキン類を様々な素材に均一に耐水固定化させることを可能とする。これにより、洗浄などによる形成物からのカテキン類の溶出を抑制することができる。更に、カテキン類は形成物に耐水固定化された状態でも各種機能を保持している。また、含水有機溶媒に水溶性高分子化合物とカテキン類を混合させた溶液は、非常に安定であるため混合溶液の状態でも保存可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下において本発明を詳細に説明する。
本発明におけるカテキン類とは、茶樹(Camellia sinensis)の主に葉、茎、およびこれらを緑茶、紅茶、ウーロン茶、プアール茶等に加工したものを原料とし、それらを水、熱水、有機溶媒、含水有機溶媒等により抽出して得られる茶抽出物に含有される成分であり、(±)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン等の非ガレート体カテキンと、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート等のガレート体カテキンの総称を指す。これらカテキン類は、上記茶抽出物から有機溶媒分画や吸着樹脂の使用等により所望の濃度に精製することができる。
【0023】
本発明においては、これら精製品を単独で、若しくは2種以上を適宜組み合わせて使用できる他、粗精製物である上記の茶抽出物の形態で使用しても何ら差し支えない。茶抽出物としては、例えば、三井農林株式会社製「ポリフェノン」、太陽化学株式会社製「サンフェノン」、株式会社伊藤園製「テアフラン」等の市販品を利用することが簡便である。
【0024】
本発明に用いる水溶性高分子化合物は、カテキン類との反応性を示すものが好ましく、水溶性セルロースエーテル類やポリアルキルエーテル類、ポリビニルアルコール類等が挙げられ、これら1種及び2種以上から選択される。水溶性セルロースエーテル類としてはメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどがあるが、それらに限定されるものではない。水溶性セルロースエーテル類の中でもメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、食品添加物としても認められており安全性が高いという点でより好ましい。メチルセルロースはセルロースをメチルエーテル化して得られる水溶性高分子化合物であり、メトキシ基(−OCH)の置換度によって異なる性質を有するが、本発明においては冷水に可溶で扱い易い点から置換度が25%〜35%のものを用いるのが好ましい。またその水溶液は一般的に高粘度を示すが、扱い易く加工された低粘度品も同様に用いることができる。
【0025】
一方、ヒドロキシプロピルメチルセルロースはセルロースをメトキシ基およびヒドロキシプロポキシ基(−OCH2CHOHCH)で置換した水溶性高分子化合物であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおいてもメトキシ基の置換度が25%〜35%のものを用いるのが好ましい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースはメチルセルロースよりも粘度が低く、温水にも溶けやすく、アルコール溶液への溶解性も高いため、メチルセルロースよりも扱いやすい。水溶性セルロースエーテルの市販品は信越化学工業株式会社、松本油脂製薬株式会社などから販売されている。
【0026】
ポリビニルアルコール類はポリビニルアルコール及びその誘導体がある。ポリビニルアルコール類の中でも、水酸基を多く有している点でポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールは酢酸ビニルを重合し、ケン化して得られるビニル樹脂であり、その重合度やケン化度によって性質が異なり、一般的に高い重合度、高いケン化度で低溶解性、高粘度を示す。
【0027】
本発明においては特に規定はないが、重合度1000以上、ケン化度70%以上のものを使用するのが扱い易さの面から好ましい。ポリビニルアルコールは株式会社クラレや日本合成化学工業株式会社などから販売されている。
【0028】
また、ポリアルキルエーテル類はアルキル主鎖中にエーテル結合を有する重合体であり、カテキン類との反応性が見られるものにポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びその誘導体であるトリメチロールプロパンポリプロピレングリコールエーテル等が挙げられるがそれらに限定されるものではない。ポリアルキルエーテル類の中でもポリエチレングリコールがカテキンとの反応性が最も高いため好ましい。ポリエチレングリコールはエチレングリコールを重合させたものであり、平均分子量は特に限定されるものではないが、200〜50000が好ましい。旭電化工業株式会社、日本油脂株式会社などから販売されている。
【0029】
カテキン類と水溶性高分子化合物の耐水化反応は酸性条件下で促進されるため、カテキン類若しくは/及び水溶性高分子化合物を溶解させる溶液を酸性にすることで、よりカテキン類の耐水性向上が見込まれ、例えば1重量%のカテキン溶液に対してはpH5以下に調整するのが好ましい。
【0030】
酸性にする方法としては各種の酸を用いることができる。各種の酸は特に限定されるものではなく、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸などがあり、有機酸としてはアスコルビン酸、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、エリソルビン酸、蟻酸、プロピオン酸、酪酸、フマル酸、アジピン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられるが、安全性およびカテキン類の酸化防止作用の面からアスコルビン酸などの有機酸を用いるのが好ましい。
【0031】
カテキン類の耐水化反応率は、カテキン類の中でもガレート体カテキンにおいて高く、使用するカテキン類におけるガレート体カテキン(A)と非ガレート体カテキン(B)の重量比率A/Bが0.8以上であるのが好ましく、1.0以上がより好ましく、1.2以上が更に好ましく、1.5以上が殊更好ましく、2.0以上が最も好ましい。本発明においては、非ガレート体を含まないカテキン類を用いてもなんら問題はない。
【0032】
本発明において、カテキン溶液と水溶性高分子化合物溶液を混合することで、カテキン類が耐水化される。カテキン類に対する水溶性高分子化合物の添加量はその耐水化反応率から0.5〜50倍重量が好ましく、より好ましくは0.8〜20倍重量、更に好ましくは1〜10倍重量、最も好ましくは2〜5倍重量である。
【0033】
本発明における水溶性高分子化合物は、有機溶媒中に混合すると不溶分散する性質を有し、この状態ではカテキン類を加えても耐水化されず、分散系溶液を保ったままであるが、含水有機溶媒の場合は乾燥などの工程により有機溶媒濃度を低下させるに従って、含まれている水により耐水化される。この現象を利用して、親水性を示すアルコールなどの含水有機溶媒に水溶性高分子化合物を分散させ、カテキン類を加えて均一に混合した後に、その混合溶液を形成物に塗布し、さらに乾燥させて溶媒を除去しながら耐水化させる工程を経ることで、容易に形成物にカテキン類を耐水固定化することが可能である。
【0034】
この方法を用いると、水溶性高分子化合物によりカテキン類を耐水固定化させた形成物を製造するに当たり、カテキン類と水溶性高分子化合物を一工程で、しかも均一に担持させることが可能となり、既存の設備や工程を大きく変えずに、耐水性を備えたカテキン類の固定化が可能となる。
【0035】
本発明で用いる有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルイソブチルケトンやアセトニトリルなどの親水性及び揮発性を示すものが好ましいが、これらに限定されるものではなく、上記に示す溶媒とその他の溶媒を含有する混合系溶媒でも構わない。取り扱いの容易さや安全性、汎用性の面からアルコール類、特にエタノールを用いるのが最も好ましい。
【0036】
水溶性高分子化合物、及びカテキン類の混合溶液における有機溶媒濃度は安定性及び作業性の問題から30容量%〜95容量%が好ましく、35容量%〜90容量%が更に好ましく、40容量%〜80容量%が特に好ましく、50容量%〜60容量%の間が最も好ましい。有機溶媒濃度が低いと水溶性高分子化合物とカテキン類によって耐水化物が生成することにより、また有機溶媒濃度が高いと水溶性高分子化合物が析出してしまい、それぞれ不均一な溶液となる。一般的に、使用する水溶性高分子化合物の有機溶媒溶解性が高いほど、混合溶液の有機溶媒濃度は高い方が好ましく、混合溶液中における水溶性高分子化合物の濃度が増加すると、有機溶媒濃度が低くても分散系を安定に保つ。
【0037】
なお、混合溶液中の水溶性高分子化合物、及びカテキン類の濃度としては0.01%〜20%の間であるのが取り扱いの容易さ、及び安定性の面から好ましい。含水有機溶媒に水溶性高分子化合物とカテキン類を混合させた溶液は、非常に安定であるため混合溶液の状態でも保存可能であり、この状態で流通させることも可能である。
【0038】
本発明におけるカテキン類耐水化物は、カテキン類と水溶性高分子化合物を混合し反応させることにより得られる。カテキン類耐水化物の状態でもカテキン類の各種機能が保持されており、粉砕や成型など使用形態に応じた加工を施して、耐水性のある機能性物質として使用可能である。また、水だけでなく各種有機溶媒にも溶けない性質を有している。
【0039】
食品添加物であるメチルセルロースおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースにより耐水化されたカテキン類は、食品に用いることもできる。例えば保健機能食品たる錠剤などのコーティング剤として使用することでその不快味のマスキングをすることや、錠剤の溶解性を遅らせて腸溶性とすることができる。またメチルセルロースおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースによって耐水化されたカテキン類は口腔内においてカテキン類由来の苦渋味成分の拡散を抑制する効果も有しており、様々な食用組成物として食品及びその原料に用いることが可能である。
【0040】
本発明におけるカテキン類耐水固定化形成物とは、形成物上でカテキン類と水溶性高分子化合物を反応させることにより、耐水性を有するカテキン類を形成物に固定化したものをいう。本発明の耐水固定化方法によって、カテキン類を様々な形成物に耐水固定化させることが出来る。
【0041】
形成物とは、その用途で区分されるものとして、前記の食品又はその原料の他、建築・家具用材料、シート類、フィルターなどがあり、その素材により区分されるものとしては、繊維類、木質材料、ゴム類、プラスチック類などがある。
【0042】
繊維類としては、合成繊維、再生繊維、半合成繊維、無機繊維などの化学繊維や、植物繊維、動物繊維などの天然繊維、及びそれらを原料に用いて作製された衣類、カーテン、じゅうたん、織布、紙、マスクなどがある。
【0043】
木質材料としては、製材、短板、積層材、集成材、合板、化粧合板、パーティクルボード、ファイバーボード、チップボード、ストランドボード、木材パルプ、パネル、紙、木毛、木炭、及びそれらを加工してなる家具・建具・クラフト製品などがあり、木材の種類は問わない。
【0044】
ゴム類としては、ネオプレンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴムなどの合成ゴム、天然ゴム、合成ゴムラテックス、天然ゴムラテックス、及びそれらの加工品などがあげられる。
【0045】
プラスチック類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチロール樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、TPS樹脂、ポリカーボネイト、ナイロン等の熱可塑性樹脂、及びメラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂などがあり、これらの粉末やペレットを原料とした塗料や接着剤、成形材、包装材料、雑貨、家庭用品、日用品などの加工品も含まれる。
【0046】
また建築・家具用材料としては上記記載の加工品の他、特にせっこうボード、セメント、瓦、タイル、ガラス、断熱材などがあり、その材質を問わない。シート類とは、形成物を紙や薄板、薄幕状に加工したものであり、例えば畳表、ござ、フィルム、シート、吸水シート、壁紙、ふすま紙などがあげられる。
【0047】
またフィルターとは、気体や液体を濾過清浄するための空気洗浄器、加湿器、換気扇、冷暖房機、掃除機、集塵機などに用いる不織布状の集塵フィルター、ヘパフィルターなどを意味する。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なおカテキン類含量の測定は以下の方法で行った。
【0049】
≪カテキン類含量の測定条件≫
カテキン類含量は以下の条件でHPLC法を用いて行い、(±)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレートの合計をカテキン類含量とした。
装置 :アライアンスHPLC/PDAシステム(日本ウォーターズ株式会社)
カラム: Mightysil RP−18 GP、4.6mmφ×150mm(5μm)(関東化学株式会社)
移動相:A液 アセトニトリル:0.05%リン酸水=25:1000
B液 アセトニトリル:0.05%リン酸水:メタノール=10:400:200 (体積比)
グラジエント:注入3分後から25分後にA液100%からB液100%に達するリニアグラジエント
流速:1ml/min
検出:UV230nm
カラム温度:40℃
【0050】
試験例1
〈カテキンの耐水化物の試作〉
カテキン溶液として市販の茶抽出物であるポリフェノン70A(三井農林株式会社製;カテキン類83重量%、ガレート体カテキン/非ガレート体カテキン=12.35)の2重量%水溶液を調製した。また、水溶性高分子化合物としてメチルセルロース(メトローズSM−4;信越化学株式会社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ60SH−06;信越化学株式会社製)、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製)、ポリエチレングリコール(和光純薬株式会社製)の2重量%水溶液を調製した。カテキン溶液10mlと水溶性高分子化合物水溶液10mlを混合してカテキン耐水化物を生成させた。
【0051】
この溶液を遠心濃縮にかけて耐水化物を乾燥させた後、100mlの蒸留水を加え、40℃の湯浴で60分間振盪抽出を行い、抽出液をよく攪拌混合後、0.45μmのメンブランフィルターで処理し上記HPLC法で溶出したカテキン類量を測定した。
【0052】
コントロールとしてカテキン溶液10mlに蒸留水10mlを混合した溶液を用いて同様の処理を行った時のカテキン類溶出量を測定し、以下の計算式を用いて各カテキン類の耐水化反応率を求めた。
【0053】
それぞれの水溶性高分子化合物において、アスコルビン酸を2重量%含有するポリフェノン70Aの2重量%水溶液を混合したものに関しても同様にカテキン耐水化物を生成させ、カテキン類溶出量の測定を行った。
【0054】
また、試験比較として、水溶性高分子化合物の代わりに水不溶性高分子化合物であるカルボキシルメチルセルロースの2重量%水溶液を用いて同様の試験を行った。
【0055】
【数1】

【0056】
【表1】

【0057】
表1に示す通り、各水溶性高分子化合物においてカテキン類の高い耐水化反応率が見られた。また、アスコルビン酸を加えることでその耐水化反応率はより高くなった。各カテキン類における耐水化反応率を見ると、ガレート体カテキンにおいて特に高い耐水化反応率を示していた。しかし、カテキン水溶液と水溶性高分子化合物水溶液を混合することにより生成されたカテキン耐水化物は、不溶状態のため均一性に乏しく、これを固定化した形成物の作製は困難に思われた。
【0058】
実施例1
〈水溶性高分子化合物とカテキンの混合溶液の試作〉
カテキン溶液として試験例1と同様にポリフェノン70Aを用いて特級エタノール溶液(キシダ化学株式会社製;純度99.5%)に2重量%となるように溶解させた。
【0059】
また、水溶性高分子化合物として試験例1で用いたメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールを特級エタノール溶液に2重量%となるように分散溶解させ、上記のカテキン溶液とそれぞれ等量混合し、水溶性高分子化合物とカテキンの混合エタノール溶液を試作した。カテキン溶液、及び水溶性高分子化合物溶液のエタノール濃度を95、90、80、60、50、40、35、30、20容量%と変えて同様に各水溶性高分子化合物とカテキンの混合溶液を試作し、混合溶液におけるエタノール濃度と溶液の安定性の観察を行った。また、混合溶液を乾燥させてカテキン耐水化物を作製し、作業性の評価を行った。
またヒドロキシプロピルメチルセルロースに関してはその終濃度を0.5重量%、0.1重量%と変化させて同様の試験を行った。
【0060】
【表2】

【0061】
表2に示す通り、混合溶液のエタノール濃度が30容量%より低くなると多くの水溶性高分子化合物とカテキン溶液の間に耐水化物の生成が見られ、不均一な状態となっていたが、エタノール濃度が上昇するにつれ、混合溶液の状態も白濁から薄にごり、澄明へと溶液の安定性の上昇が見られた。またエタノール濃度が上昇するにつれ、乾燥にかかる時間が短縮されカテキン耐水化物作製の作業性に優れていた。
【0062】
しかし、90容量%を超えると析出した水溶性高分子化合物により溶液が再び薄くにごり始め、やや安定性の面で劣っていた。この混合溶液を乾燥させて液中の水分濃度を上昇させると、澄明な溶液のものでもカテキン耐水化物は作成されたが、水をほとんど含まない100容量%濃度のものは耐水化物の生成が見られなかった。また、もともと有機溶媒への溶解性の高いヒドロキシプロピルメチルセルロースでは他の水溶性高分子化合物に比べて、安定となるエタノール濃度は高い値となっており、その終濃度を1.0重量%、0.5重量%、0.1重量%と変化させるに従い、より高いエタノール濃度にて安定化する様子が観察された。
【0063】
実施例2
〈水溶性高分子化合物とカテキンの混合溶液の試作〉
実施例1と同様にカテキン溶液としてポリフェノン70Aを用いて、エタノール95容量%水溶液に2重量%となるように調製した。水溶性高分子化合物としてメチルセルロースを同じくエタノール95容量%水溶液に2重量%となるように溶解させ、上記のカテキン溶液と等量混合し、水溶性高分子化合物とカテキンの混合溶液(エタノール濃度95容量%)を試作した。カテキン溶液、及びメチルセルロース2重量%溶液のエタノール濃度を80、60、50、40、30、25容量%と変えた場合についても同様に混合溶液を試作し、混合溶液におけるエタノール濃度と溶液の安定性の観察を行った。
【0064】
エタノールの代わりに特級メタノール(キシダ化学株式会社製)、特級2−プロパノール(関東化学株式会社製)などのアルコール類、特級アセトン(キシダ化学株式会社製)、特級アセトニトリル(キシダ化学株式会社製)を用いて同様の試験を行い、各有機溶媒濃度と溶液の安定性の観察を行った。
【0065】
また比較例として、特級エチレングリコール(和光純薬株式会社製)、特級プロピレングリコール(和光純薬株式会社製)などのグリコール類を用いて同様の試験を行った。
【0066】
【表3】

【0067】
表3に示す通り、エタノールの代わりに実施例として各種の有機溶媒を用いた場合もほぼ同様の結果を示した。アルコール類では、メタノールで50〜95%、エタノールで40〜95%、プロパノールで30〜95%とアルキル鎖が長くなるにつれて低い有機溶媒濃度で混合溶液が澄明化する様子が見られた。また、これらのアルコール類は臭気も無く、取り扱い易く好ましかった。
【0068】
またアセトン、アセトニトリルは低い有機溶媒濃度でも安定した状態を保っていたが、特有の臭気が目立っていた。比較例として用いたグリコール類は、高い有機溶媒濃度でも溶液が澄明に安定する様子は確認されなかった。また、グリコール類は融点も200℃近いため、この混合溶液を乾燥させてもカテキンの固形化が見られなかった。
【0069】
実施例3
<カテキン耐水固定化不織布の試作>
カテキン溶液として実施例1で用いたポリフェノン70Aの他に、茶抽出物ポリフェノンCH(三井農林株式会社製;カテキン類28重量%、ガレート体カテキン/非ガレート体カテキン=1.88)、茶抽出物ポリフェノンG(三井農林株式会社製;カテキン類29重量%、ガレート体カテキン/非ガレート体カテキン=1.28)、茶抽出物ポリフェノンKN(三井農林株式会社製;カテキン類32重量%、ガレート体カテキン/非ガレート体カテキン=1.08)を用いて、それぞれカテキン類として4重量%となるようにアスコルビン酸2重量%水溶液に溶解した。
【0070】
また、実施例1で用いたメチルセルロースを8重量%となるように特級エタノール溶液に溶解し、前記のカテキン溶液とそれぞれ等量混合した(エタノール終濃度50容量%)。10cm四方に切り取った不織布にこの混合溶液を1ml滴下塗布し、乾燥してカテキンを耐水固定化させた不織布を試作した。
【0071】
また、コントロールとしてそれぞれのカテキン溶液だけを用いて、比較例として茶抽出物ポリフェノンNP(三井農林株式会社製;カテキン類12重量%含有、ガレート体カテキン/非ガレート体カテキン=0.74)をカテキン溶液として用いて、上記と同様の処理を行った不織布も試作した。
【0072】
<耐水化反応率の測定>
上記の各カテキン耐水固定化不織布を密封容器に入れ、50mlの水を添加して40℃で放置してカテキン類溶出試験を行った。30分経過後、不織布を取り除いた溶液を0.45μmのメンブランフィルターで処理し、HPLC法でカテキン類溶出量を測定した。取り除いた不織布は50℃の乾燥機で60分間乾燥後、密封容器に入れ、新しく50mlの水を添加して同様に溶出試験を行った。この操作を繰り返し、計5回の溶出試験を行って上記に示した数1の計算式を用いてコントロールの溶出量に対する各カテキン類の耐水化反応率を求め、判定(◎:良い、○:やや良い、△:やや悪い、×:悪い)を行った。
【0073】
【表4】

【0074】
カテキン溶液のガレート体カテキン/非ガレート体カテキンの比率からみると、その値が0.8未満であると、耐水化反応率が悪いのに対し、0.8以上であると、その比率に応じて高い耐水化反応率を示しており、特にガレート体カテキンは5回の抽出を繰り返しても多く残存していた。
【0075】
実施例4
〈カテキン耐水固定化フィルターの試作〉
カテキン溶液として、10mlの60容量%エタノール水溶液にポリフェノン70Aを30mg(カテキン類として25mg)溶解する。これに、実施例1で用いたメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールのいずれかをそれぞれ5mg、12.5mg、25mg、50mg、125mg、250mg、1250mg、2500mg加え、攪拌してカテキン類と水溶性高分子化合物の混合溶液を調製する。これらの混合溶液を濾紙(アドバンテック、No.5c、110mm)1枚に滴下塗布し、乾燥させてカテキン耐水固定化フィルターを試作した。
【0076】
〈消臭率の測定〉
以上のように試作されたカテキン耐水固定化フィルターを、1L広口瓶上部にテープで貼り付け、下部に19mlの水と攪拌子を入れる。これに0.4重量%のアンモニア水溶液1mlを加え、すばやくアルミホイルで蓋をして密封し、室温で30分間攪拌後、ヘッドスペース中の残存アンモニア濃度をガス検知管(株式会社ガステック、No.3La使用)で測定を行った。コントロールとしてポリフェノン70Aの3.0重量%水溶液1mlのみを用いて試作したフィルター、また比較として各水溶性高分子化合物2500mgのみを10mlの60容量%エタノール水溶液に溶解した溶液を用いて試作したフィルターを使用して同様に測定を行った。なお、予備試験において液中のアンモニア濃度と気中のアンモニア濃度は平衡関係にあることを確認してある。
【0077】
また、同様に試作されたカテキン耐水固定化フィルターを密封容器に入れ、50mlの水を添加して40℃で放置して溶出試験を行う。30分経過後、フィルターを取り除いた溶液を0.45μmのメンブランフィルターで処理し、HPLC法で溶出したカテキン類含量を測定し、上記に示した数1の計算式を用いてコントロールの溶出量に対する各カテキン類の耐水化反応率を求めた。また、取り出したフィルターを50℃の乾燥機で60分間乾燥した後に、上記と同様の方法で消臭率の測定を行った。
【0078】
【表5】

【0079】
表5に示すように、カテキン類の耐水化反応率はカテキン類に対して水溶性高分子化合物の量が0.5〜50倍重量で高く、1〜10倍重量で更に高く、2〜5倍重量の時に最も高かった。また、溶出試験の前はカテキン類の耐水化反応率に関わらず、どのサンプルも高い消臭率を示し、水溶性高分子化合物がカテキン類の消臭作用を低下させないことがわかった。溶出試験後のフィルターでは、カテキン類、特にガレート体カテキンの耐水化反応率が高いほど、消臭率も高かった。
【0080】
以上の結果から、カテキン類は水溶性高分子化合物によりフィルターに耐水固定化でき、しかもカテキンの持つ消臭機能を十分に発揮させることができることがわかった。また本実施例においてカテキン類耐水固定化フィルターを提供できることもわかった。なお、水溶性高分子化合物のみを用いたフィルターではほとんど消臭機能が確認されなかった。
【0081】
実施例5
〈カテキン耐水固定化木材の試作〉
メチルセルロースを0.1重量%となるように特級エタノール溶液に溶解する。これに、ポリフェノンG0.1重量%水溶液を等量混合して攪拌し、混合溶液を調製する。厚さ15mmのスギ無垢材の表面にこの混合溶液を20l/m(カテキン類として2.9g/m)となるように塗布し乾燥させて、カテキン耐水固定化木材を試作した。また、コントロールとしてポリフェノンG水溶液にエタノールを等量混合した溶液、及びメチルセルロースエタノール溶液に純水を等量混合した溶液のみを塗布したものも試作した。
【0082】
〈ホルムアルデヒド消臭試験〉
上記の方法で試作した木材を15cm×5cmに切り取り、木口、及び裏面をアルミテープで覆い、試験片とする。内径24cmのデシケーター底部に300mlの精製水を入れた結晶皿を置き、その結晶皿の上に各試験片10枚を放射状に立てたホルダーを設置した。デシケーターの蓋内側には、直径90mmの濾紙(No.5C、アドバンテック)を貼り付け、そこに約4%ホルムアルデヒド水溶液500μlを滴下し、素早く蓋をしめた。これらのデシケーターを室温に3日間放置した後、上記精製水中のホルムアルデヒド濃度を以下に示す方法により測定した。測定したホルムアルデヒド濃度を、試験片を入れないブランク試験のホルムアルデヒド濃度と比較し、両者の差を試験片が吸着したホルムアルデヒド濃度(吸着量)とした。
【0083】
また、上記試験の後、試験片は残したままデシケーター蓋内側に貼り付けた濾紙を取り除き、さらに結晶皿の精製水を入れ替えて再び蓋をした。4日間放置後、試験片から精製水中に再放出されたホルムアルデヒド濃度(再放出量)を測定した。吸着量と再放出量の差から吸収量を求めた。また、カテキン塗布木材及びコントロールを湿度75%RH、温度40℃の試験環境器に24時間入れ、取り出して白い布をこすり当てた時の色移りの程度を3点満点の評価(3点:色移りなし、2点:薄く色移りあり、1点:色移りあり、0点:強く色移りあり)で目視観察し、ホルムアルデヒド吸収量と合わせて総合的に機能性木材としての判定(◎:良い、○:やや良い、△:やや悪い、×:悪い)を行った。
【0084】
≪ホルムアルデヒド測定条件≫
精製水中に移行したホルムアルデヒド量は、溶液1mlにDNPH試薬(0.24%DNPH/2N−HCl)1mlを加えて室温で30分程反応させて、ホルムアルデヒドをDNPH誘導体化した後に、次の条件によりHPLCにて測定した。
装置 :アライアンスHPLC/PDAシステム(日本ウォーターズ株式会社)
カラム: Mightysil RP−18 GP、4.6mmφ×150mm(5μm)(関東化学株式会社)
移動相:50%アセトニトリル水溶液
流速:1ml/min
検出:UV355nm
カラム温度:40℃
【0085】
【表6】

【0086】
表6に示すように、メチルセルロースによりカテキン類を耐水固定化した木材では、コントロールと比較してホルムアルデヒド吸収量はほとんど変わらないが、色移りを大幅に抑えるということが確認された。以上の結果から、カテキン類の持つホルムアルデヒド除去機能を保持したまま、カテキン類を耐水固定化できると共に、カテキン類を耐水固定化せしめた木質材料の提供が可能であることがわかった。
【0087】
実施例6
<マスキング剤>
表7に示す処方により打錠剤を試作した。この打錠剤1kgに対してアスコルビン酸が2重量部、ポリフェノン70Aが4重量部、メチルセルロースが8重量部、特級エタノール溶液が40重量部、水が46重量部からなるコーティング液を6g/minの速度で30分間スプレー塗布し、被覆した。得られた錠剤について、被覆を行わなかったものと比較し、口に含んだときに感じる不快味の程度を官能検査にて4点評価(4:感じられない、3:ほとんど感じられない、2:やや感じる、1:感じる)を行い、平均を求めた。結果を表7に示す。なお、本試験は10名のパネラーで行った。
【0088】
【表7】

【0089】
表7に示すように、本発明のカテキン類耐水化物により被覆された錠剤は、不快味のマスキング作用に優れていることが明らかとなった。
【0090】
実施例7
<カテキン肌着>
カテキン溶液としてポリフェノン70Aを5重量%となるようにアスコルビン酸2重量%水溶液に溶解した。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを10重量%となるように特級エタノール溶液に溶解し、前記のカテキン溶液とそれぞれ等量混合した。綿100%の肌着用メリヤス生地を生地重量の200%量の混合溶液中に含浸させて100℃で乾燥し、カテキン配合肌着を作製した。
【0091】
実施例8
<カテキンマスク>
カテキン溶液としてポリフェノン70Aの1重量%水溶液を調製した。また、メチルセルロースを2重量%となるように特級エタノール溶液に溶解し、前記のカテキン溶液とそれぞれ等量混合した。この溶液を不織布に50ml/mとなるように滴下塗布を行い、カテキン耐水固定化不織布とした。別の不織布2枚でカテキン耐水固定化不織布を挟み合わせ、20cm×15cmの大きさに切断し、ゴムひもを挟みながら端を接着し、カテキンマスクを作製した。
【0092】
実施例9
<カテキン吸水シート>
カテキン溶液としてポリフェノン70Aの1重量%水溶液を調製した。また、メチルセルロースを2重量%となるように特級エタノール溶液に溶解し、前記のカテキン溶液とそれぞれ等量混合した。この混合溶液をポリエチレンフィルムに100ml/mとなるように滴下塗布後、50℃の乾燥機に入れて1時間ほど乾燥させた。このカテキン耐水固定化フィルムを非透水性シートとし、その上にポリアクリル酸からなる吸水性ポリマー微粉末を、バインダ樹脂を用いて層状に固定した。不織布からなる透水性シートに接着剤をドットパターンで施し、表面から被せて非透水性シートと透水性シートを接着させてカテキン吸水シートを作製した。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のカテキン類を形成物へ耐水固定化させる方法は、上記のとおり、カテキン類の機能を保持したまま、カテキン類を均一に形成物へ耐水固定化させることができ、且つ煩雑な工程や新規設備の必要としない簡便な方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性セルロースエーテル類、ポリアルキルエーテル類及びポリビニルアルコール類から選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子化合物とカテキン類を含水有機溶媒に混合させた混合溶液。
【請求項2】
水溶性セルロースエーテル類、ポリアルキルエーテル類及びポリビニルアルコール類から選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子化合物とカテキン類を酸性の含水有機溶媒に混合させた混合溶液。
【請求項3】
カテキン類中のガレート体カテキン(A)と非ガレート体カテキン(B)の重量比率A/Bが0.8以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の混合溶液。
【請求項4】
カテキン類に対して水溶性セルロースエーテル類、ポリアルキルエーテル類及びポリビニルアルコール類から選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子化合物の量が0.5〜50倍重量であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の混合溶液。
【請求項5】
水溶性セルロースエーテル類がメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルメチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子化合物であり、ポリアルキルエーテル類がポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びトリメチロールプロパンポリプロピレングリコールエーテルから選ばれる1種又は2種以上の水溶性高分子化合物であり、ポリビニルアルコール類がポリビニルアルコールである請求項1乃至4いずれかに記載の混合溶液。
【請求項6】
混合溶液中の有機溶媒濃度が30容量%〜95容量%であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の混合溶液。
【請求項7】
含水有機溶媒がメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、又はアセトニトリル及びそれらの混合物から選択される、請求項1乃至6いずれかに記載の混合溶液。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかに記載の混合溶液を形成物に塗布し、さらに乾燥させて溶媒を除去する工程を具備することを特徴とする、カテキン類を形成物へ耐水固定化させる方法。
【請求項9】
形成物の素材が繊維類、木質材料、ゴム類、プラスチック類のいずれかであることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
形成物の用途が建築・家具用材料、シート類、フィルターのいずれかであることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至7いずれかに記載の混合溶液を形成物に塗布し、さらに乾燥させて溶媒を除去する工程により、カテキン類を形成物へ耐水固定化させたことを特徴とするカテキン類耐水固定化形成物。
【請求項12】
形成物の素材が繊維類、木質材料、ゴム類、プラスチック類のいずれかであることを特徴とする請求項11記載のカテキン類耐水固定化形成物。
【請求項13】
形成物の用途が建築・家具用材料、シート類、フィルターのいずれかであることを特徴とする請求項11記載のカテキン類耐水固定化形成物。


【公開番号】特開2007−217522(P2007−217522A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38736(P2006−38736)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(303044712)三井農林株式会社 (72)
【Fターム(参考)】