説明

カプセル内視鏡システム

【課題】患者体内でのカプセル内視鏡(CE)の動き量を正確に検出する。
【解決手段】CE11に、加速度を検出するCE加速度センサ42を設ける。患者10が身に付けるシールドシャツ15に装着されたアンテナ16に、加速度を検出する患者加速度センサ19を設ける。CE11から(受信装置12)レコーダ17へCE加速度を無線送信する。患者加速度センサ19の検出結果をレコーダ17に入力する。レコーダ17にて、CE加速度及び患者加速度を元に、患者10に対するCE11の相対動き量を検出する。患者10が動いた場合でも、患者10の動きとCE11の動きの違いを判別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル内視鏡で撮影された内視鏡画像を、被検体に携帯されている受信装置で無線受信して記憶するカプセル内視鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、撮像素子や照明光源などが超小型のカプセルに内蔵されたカプセル内視鏡による内視鏡検査が実用化されつつある。この内視鏡検査では、まず、患者にカプセル内視鏡を嚥下させ、照明光源で人体内の被観察部位(人体内管路の内壁面)を照明しつつ、撮像素子で被観察部位を撮影する。そして、これにより得られた画像データを患者に携帯させた受信装置で無線受信し、受信装置に設けられたフラッシュメモリなどの記憶媒体に逐次記憶していく。検査中、または検査終了後、ワークステーションなどの情報管理装置に画像データを取り込み、モニタに表示された画像を読影して診断を行う。
【0003】
カプセル内視鏡が人体内を移動する際の移動速度は一定ではない。例えば、カプセル内視鏡が腸内にあるときに、腸の運動が活発化するとカプセル内視鏡の移動速度が速くなり、逆に腸の運動が弱くなるとカプセル内視鏡の移動速度が遅くなる。カプセル内視鏡の移動速度が速くなった時に、カプセル内視鏡が撮影を行う際のフレームレート(単位時間当たりの撮影回数)が低く設定されていると、撮影できない箇所、いわゆる撮りこぼしが発生する。逆にカプセル内視鏡の移動速度が遅くなった時に、フレームレートが高く設定されていると、同じ箇所を撮影した類似画像の撮影数が増加してしまう。
【0004】
そこで、カプセル内視鏡に加速度センサを設けて、患者体内でのカプセル内視鏡の加速度を検出し、検出した内視鏡加速度からカプセル内視鏡の移動速度を求め、求めた移動速度に応じてカプセル内視鏡の撮影条件を変更する発明が開示されている(特許文献1及び2参照)。この発明は、例えば、カプセル内視鏡の移動速度が速い場合にはフレームレートを増加させ、逆に移動速度が遅い場合にはフレームレートを減少させることにより、撮りこぼしの発生や類似画像の撮影数の増加を抑えている。
【特許文献1】特表2004−521662号公報
【特許文献2】特開2006−223892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カプセル内視鏡を利用した内視鏡検査では、カプセル内視鏡を患者体内、例えば腸内でスムーズに移動にさせるため、検査中に患者に体操などをさせて腸の運動を活発化させている。このように患者が体操を行う場合には、特許文献1及び2に記載の発明では、カプセル内視鏡内の加速度センサが患者の加速度(動き)も検出するため、カプセル内視鏡の加速度と患者の加速度との判別が困難となる。このため、患者体内でのカプセル内視鏡の移動速度(単位時間あたりの動き量)が正確に検出されない。その結果、カプセル内視鏡の実際の動き量に適したフレームレートが決定されないので、撮りこぼしの発生や類似画像の撮影数の増加は依然として発生する。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、患者体内でのカプセル内視鏡の動き量を精度良く検出することができるカプセル内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、被検体内に嚥下され、被検体内の被観察部位を撮影するカプセル内視鏡と、被検体に携帯されるとともに、前記カプセル内視鏡と無線通信により接続されており、前記カプセル内視鏡で得られた内視鏡画像を無線受信して、これを記憶する受信装置とを備えるカプセル内視鏡システムにおいて、前記カプセル内視鏡に設けられ、前記カプセル内視鏡の加速度を検出する内視鏡加速度検出手段と、前記受信装置に設けられ、前記受信装置を携帯した被検体の加速度を検出する被検体加速度検出手段と、前記カプセル内視鏡または前記受信装置の少なくともいずれか一方に設けられ、前記内視鏡加速度検出手段及び前記被検体加速度検出手段の検出結果に基づき、前記被検体に対する前記カプセル内視鏡の相対的な動き量を検出する相対動き量検出手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
前記カプセル内視鏡または前記受信装置の少なくともいずれか一方に設けられ、前記相対動き量検出手段で検出された前記カプセル内視鏡の相対動き量に基づき、前記カプセル内視鏡の撮影条件を決定する撮影条件決定手段と、前記カプセル内視鏡に設けられ、前記撮影条件決定手段で決定された前記撮影条件に従って前記カプセル内視鏡に前記撮影を行わせる撮影制御手段とを備えることが好ましい。
【0009】
前記撮影条件は、前記撮影を行う際のフレームレート、視野範囲、露出の少なくともいずれか一つを含んでいることが好ましい。また、前記撮影条件決定手段は、前記相対動き量が大きくなるのに従って前記フレームレートが増加するように、前記撮影条件を決定することが好ましい。これにより、カプセル内視鏡の相対動き量が大きい時には撮りこぼしの発生を低減させ、逆に相対動き量が小さい時には類似画像の撮影数を低減させることができる。
【0010】
前記撮影条件決定手段は、前記相対動き量が大きくなるのに従って前記視野範囲が拡大するように、前記撮影条件を決定することが好ましい。フレームレートの場合と同様に撮りこぼしの発生を低減させることができる。
【0011】
前記撮影条件決定手段は、前記相対動き量が大きくなるのに従って前記撮影のシャッタ速度が速くなり、且つ前記被観察部位を照明する照明光の光量が増加するように、前記撮影条件を決定することが好ましい。これにより、カプセル内視鏡の相対動き量が大きい時でも内視鏡画像のブレが防止される。
【0012】
前記撮影条件決定手段は、前記相対動き量が比較的小さい場合でも、前記被検体加速度検出手段で検出された被検体加速度が予め定めた所定値以上となる場合には、前記相対動き量が大きくなることを想定して、前記相対動き量が大きい場合に準じた特殊撮影条件に、前記撮影条件を決定することが好ましい。例えばカプセル内視鏡が腸内にあるときに、被検体(患者)の動きにより腸の動きが活発化して、カプセル内視鏡の相対動き量が急激に大きくなった場合でも、相対動き量が大きくなることを想定してフレームレートを予め増加するなど、カプセル内視鏡の動きを先読みした制御をすることができる。
【0013】
前記撮影条件決定手段は、前記特殊撮影条件に決定した後、予め定めた所定時間が経過しても前記相対動き量が大きくならない場合には、そのときの前記相対動き量に基づいた前記撮影条件に決定しなおすことが好ましい。これにより、想定に反して相対動き量が大きくならないのに、特殊撮影条件に従った撮影が継続されることが防止される。
【0014】
前記受信装置は、前記カプセル内視鏡との間で無線通信を行うためのアンテナと、前記アンテナを介して無線受信した前記内視鏡画像を記憶する記憶装置とから構成され、前記被検体加速度検出手段は、前記アンテナに設けられているとともに、前記相対動き量検出手段及び前記撮影条件決定手段は、前記記憶装置に設けられていることが好ましい。
【0015】
前記カプセル内視鏡に設けられ、被検体内での前記カプセル内視鏡の姿勢を検出する内視鏡姿勢検出手段と、前記受信装置に設けられ、前記受信装置を携帯した被検体の姿勢を検出する被検体姿勢検出手段とを備え、前記相対動き量検出手段は、前記内視鏡姿勢検出手段及び前記被検体姿勢検出手段の検出結果を考慮して、前記相対動き量を検出することが好ましい。
【0016】
前記受信装置に設けられ、前記相対動き量に基づき、前記カプセル内視鏡から前記受信装置が無線受信した複数の前記内視鏡画像の中から、読影に供する読影用内視鏡画像を選択する画像選択手段を備えていることが好ましい。これにより、医師は選択された読影用内視鏡画像の読影のみを行えばよいので、医師が読影する内視鏡画像の量が低減される。その結果、内視鏡画像を読影する医師の負担が低減され、読影及び診断に要する時間を短縮することができる。
【0017】
前記画像選択手段は、前記相対動き量が大きくなるのに従って、前記読影用内視鏡画像の選択数を増やすことが好ましい。
【0018】
前記受信装置に設けられ、前記カプセル内視鏡から前記受信装置が無線受信した複数の前記内視鏡画像のうち、前記画像選択手段が選択しなかった前記内視鏡画像に対してデータ量削減処理を施すデータ量削減手段を備えることが好ましい。選択されなかった内視鏡画像のデータ量を削減することができるので、受信装置のストレージ等の記憶媒体として、従来よりも記憶容量の少ないものを用いることができ、その結果としてコストダウンが図れる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、カプセル内視鏡の内視鏡加速度、及び被検体の被検体加速度をそれぞれ検出した結果に基づき、被検体に対するカプセル内視鏡の相対動き量を検出するとともに、検出した相対動き量に基づいて、カプセル内視鏡の撮影条件を決定し、決定した撮影条件に従ってカプセル内視鏡に撮影を行わせるようにしたので、検査中に被検体が動くような場合でも、被検体内でのカプセル内視鏡の動き量を正確に検出することができる。その結果、被検体が動いた場合に、従来のように被検体の動きとカプセル内視鏡の動きの違いを判別できなくなることが防止される。さらに、正確に検出された撮影条件に従ってカプセル内視鏡に撮影を行わせることができる。その結果、例えば、動き量の増減に応じてフレームレートを増減することで、内視鏡画像の撮りこぼしの発生と、類似画像の撮影数とを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1に示すように、カプセル内視鏡システム2は、患者10(被検体)の口部から人体内に嚥下されるカプセル内視鏡(Capsule Endoscope、以下、CEと略す)11と、患者10が携帯する受信装置12と、CE11で得られた画像を取り込んで、医師が読影及び診断を行うためのワークステーション(以下、WSと略す)13とから構成される。
【0021】
CE11は、人体内管路(例えば腸)を通過する際にその内壁面を撮像し、これにより得られた画像データを、電波14aにて受信装置12へ無線送信する。さらに、CE11は、CE11の加速度を示すCE加速度、及び患者体内でのCE11の姿勢(向き)を示すCE姿勢情報も同様に電波14aにて受信装置12へ無線送信する。また、CE11は、受信装置12からの制御コマンドを電波14bで無線受信して、制御コマンドに基づいて動作する。
【0022】
受信装置12は、患者10が身に付けたシールドシャツ15に装着されたアンテナ16と、このアンテナ16に有線接続されており、患者10のベルトなどに取り付けられたレコーダ(記憶装置)17とから構成される。アンテナ16は、CE11との間で電波14a,14bを送受信する。アンテナ16には、CE11からの電波14aの電界強度を測定する電界強度測定センサ18(図4参照)と、患者10の加速度を示す患者加速度を検出する4つの患者加速度センサ19(被検体加速度検出手段)と、患者10の姿勢を検出する患者姿勢検出センサ20(被検体姿勢検出手段)が設けられている。各センサ18〜20の検出結果(電界強度、患者加速度、患者姿勢情報)はレコーダ17に入力される。
【0023】
レコーダ17は、各種設定画面を表示する液晶表示器(以下、LCDと略記する)21、および各種設定を行うための操作部22を備えている。レコーダ17は、アンテナ16を介して、CE11から電波14aで無線送信された画像データを無線受信し、これを記憶する。また、レコーダ17は、アンテナ16を介して、CE11から無線受信したCE加速度・姿勢情報と、患者加速度・姿勢検出センサ19,20から入力された患者加速度・姿勢情報とを元に、CE11の撮影条件を決定する。そして、レコーダ17は、決定した撮影条件を元に制御コマンドを生成し、アンテナ16を介して、制御コマンドを電波14bにてCE11へ無線送信する。
【0024】
撮影条件には、CE11が撮影を行う際のフレームレート、視野範囲、露出が含まれている。なお、露出は、CE11の撮像素子33のシャッタ速度と、照明光源部38から照射される照明光の光量とを可変することで調整可能である(図2及び図3参照)。
【0025】
なお、図中の符号C1は、予め定めた基準座標系であり、互いに直交するX1軸、Y1軸、Z1軸からなる。この基準座標系C1は、レコーダ17にて撮影条件を決定する際に用いられ、Z1軸が重力方向に平行、つまり、床面(地面)に垂直になるように定義されている(図5及び図6参照)。
【0026】
WS13は、プロセッサ24と、キーボードやマウスなどの操作部25と、モニタ26とを備えている。プロセッサ24は、例えば、USBケーブル27(赤外線通信などの無線通信を用いても可)でレコーダ17と接続され、レコーダ17とデータの遣り取りを行う。プロセッサ24は、CE11による検査中、または検査終了後に、レコーダ17から画像データを取り込み、患者毎に画像データを蓄積・管理するとともに、画像データからテレビ画像を生成し、これをモニタ26に表示させる。
【0027】
図2に示すように、CE11は、透明な前カバー30と、この前カバー30に嵌合して水密な空間を形成する後カバー31とからなる。両カバー30、31は、その先端または後端が略半球形状となった筒状に形成されている。両カバー30、31が作る空間内には、被観察部位の像光を取り込むための対物光学系32、被観察部位の像光を撮像するCCDやCMOSなどの撮像素子33が組み込まれている。撮像素子33は、対物光学系32から入射した被観察部位の像光が撮像面に結像され、各画素からこれに応じた撮像信号を出力する。
【0028】
対物光学系32は、透明な凸型の光学ドーム32aと、第1レンズホルダ32bと、第1レンズ32cと、ガイドロッド32dと、第2レンズホルダ32eと、第2レンズ32fとから構成される。光学ドーム32aは、前カバー30の先端の略半球形状となった部分に配されている。第1レンズホルダ32bは、光学ドーム32aの後端に取り付けられ、後端に向けて先細に形成されている。第1レンズ32cは、第1レンズホルダ32bに固着されている。
【0029】
ガイドロッド32dは、第1レンズホルダ32bの後端に取り付けられた光軸35に平行なネジ棒である。第2レンズホルダ32eは、ガイドロッド32dが螺入される雌ネジ孔を有し、ガイドロッド32dが回転することにより光軸方向に移動する。第2レンズ32fは、第2レンズホルダ32eに固着されている。
【0030】
第2レンズ32fは、所謂ズームレンズである。ステッピングモータ等により構成されるレンズ駆動部36によりガイドロッド32dが回転されると、第2レンズ32fが光軸方向に移動されてズーム倍率が変更される。これにより、対物光学系32の視野範囲(撮影範囲)が、変更後のズーム倍率に対応した範囲に変更される。レンズ駆動部36は、制御コマンドで設定された視野範囲(ズーム倍率)で撮影が行われるように、対物光学系32のズーム倍率を変更する。そして、対物光学系32は、設定された視野範囲において被観察部位の全方位画像を像光として取り込む。
【0031】
また、両カバー30、31内には、被観察部位に照明光を照射する照明光源部38、各種電子回路(図3参照)が実装された電気回路基板39、ボタン型の電池40、及び電波14a、14bを送受信するためのアンテナ41、CE11のCE加速度を検出するCE加速度センサ42(内視鏡加速度検出手段)、上述の基準座標系C1におけるCE11の姿勢を示すCE姿勢情報を検出するCE姿勢検出センサ43(内視鏡姿勢検出手段)などが収容されている。
【0032】
CE加速度センサ42は、所謂3軸の加速度センサである。CE加速度センサ42は、センサ座標系C2の各軸方向の加速度をそれぞれ検出する。センサ座標系C2は、互いに直交するX2軸、Y2軸、Z2軸からなり、且つ光軸35に平行な方向をZ2軸方向として定めている。なお、CE11は、患者10の体内で様々な姿勢をとるため、CE加速度センサ42の姿勢も一定ではない。このため、センサ座標系C2は、基準座標系C1のように固定された座標系ではなく、CE11の姿勢に応じて任意の軸周りに回転する座標系である(図5(A)参照)。
【0033】
CE11がX2軸の矢印方向に加速した場合、及びこれとは反対方向に移動していた時に減速した場合には、X2軸方向の加速度検出結果が正となる。また、CE11がX2軸の矢印方向とは反対方向に加速した場合、及び矢印方向に移動していた時に減速した場合には、X2軸方向の加速度検出結果は負となる。Y2軸方向及びZ2軸方向の加速度検出結果についても基本的には同じであるので、説明は省略する。
【0034】
CE加速度センサ42は、CE11が任意の方向に加速したとき、または移動中に減速した時に、CE加速度の各軸方向の加速度をそれぞれ検出することで、CE加速度を検出する。CE加速度は、各軸方向の加速度を合成した値であり、センサ座標系C2でのCE11の加速度の大きさと向きとを示す1つのベクトルである。なお、CE加速度の向きは、例えばセンサ座標系C2の各軸からの傾き角等で表される。CE加速度センサ42によるCE加速度の検出は逐次行われ、この検出結果はCPU45(図3参照)に入力される。
【0035】
CE姿勢検出センサ43としては、基準座標系C1におけるCE11の患者体内での姿勢を検知可能な姿勢検知センサであれば特に種類は問わず、例えばCE加速度センサ42と同様の3軸の加速度センサ(重力センサ)、姿勢ジャイロなどが用いられる。なお、各種姿勢検出センサを用いて基準座標系C1におけるCE11の姿勢を検知する方法は周知(例えば、特許第3631265号、特開2006−239053号公報、特開2006−068109号公報を参照)であるので、ここでは説明を省略する。
【0036】
CE姿勢検出センサ43によるCE11の姿勢検出は、CE加速度センサ42によるCE加速度の検出と同期して行われ、この検出結果(CE姿勢情報)はCE11のCPU45(図3参照)に入力される。なお、CE姿勢情報は、例えば、基準座標系C1に対するセンサ座標系C2の回転角度(ヨー方向、ピッチ方向、ロール方向)で表される。
【0037】
図3において、CPU45(撮影制御手段)は、CE11の全体の動作を統括的に制御する。CPU45には、上述のレンズ駆動部36、CE加速度センサ42、CE姿勢検出センサ43の他に、ROM46、RAM47、撮影ドライバ48、変調回路49、復調回路50、電力供給回路51、照明ドライバ52等が接続されている。
【0038】
ROM46には、CE11の動作を制御するための各種プログラムやデータが記憶される。CPU45は、ROM46から必要なプログラムやデータを読み出してRAM47に展開し、読み出したプログラムを逐次処理する。なお、RAM47には、レコーダ17からの制御コマンドによって設定される撮影条件[フレームレート、視野範囲(ズーム倍率)、露出(シャッタ速度、光量)]の各データも一時的に記憶される。
【0039】
撮影ドライバ48には、撮像素子33及び信号処理回路54が接続されている。撮影ドライバ48は、制御コマンドで設定されたフレームレート、シャッタ速度で撮影が行われるように、撮像素子33及び信号処理回路54の動作を制御する。信号処理回路54は、撮像素子33から出力された撮像信号に対して、相関二重サンプリング、増幅、およびA/D変換を施して、撮像信号をデジタルの画像データに変換する。そして、変換した画像データに対して、γ補正等の各種画像処理を施す。
【0040】
変調回路49及び復調回路50には、送受信回路55が接続され、この送受信回路55にはアンテナ41が接続されている。変調回路49は、信号処理回路54から出力されたデジタルの画像データを電波14aに変調し、変調した電波14aを送受信回路55に出力する。また、変調回路49には、CE加速度・姿勢検出センサ42,43で検出されたCE加速度・姿勢情報がそれぞれ入力される。変調回路49は、これらCE加速度・姿勢情報も電波14aに変調して送受信回路55に出力する。
【0041】
復調回路50は、受信装置12からの電波14bを元の制御コマンドに復調し、復調した制御コマンドをCPU45に出力する。送受信回路55は、変調回路49からの電波14aを増幅して帯域通過濾波した後、アンテナ41に出力するとともに、アンテナ41を介して受信した電波14bを増幅して帯域通過濾波した後、復調回路50に出力する。
【0042】
電力供給回路51は、電池40の電力をCE11の各部に供給する。照明ドライバ52は、CPU45の制御の下に、制御コマンドで設定された照明光量で撮影が行われるように、照明光源部38の駆動を制御する。
【0043】
図4において、患者加速度センサ19は、CE加速度センサ42と同様の3軸の加速度センサである。従って、患者加速度センサ19も、その固有の座標系であるセンサ座標系C3(図5(B)参照)のX3軸、Y3軸、Z3軸方向の加速度をそれぞれ検出する。なお、本実施形態では、例えば患者10の上半身が直立しているときに、Z3軸が基準座標系C1のZ1軸とほぼ平行になるように定義されている。なお、図中では図面の煩雑化を防止するために、アンテナ16と各センサ18〜20とは別体で図示している。
【0044】
ここで、内視鏡検査中に患者10が動かなければ、患者加速度センサ19の姿勢もほぼ変わらないので、センサ座標系C3はほぼ固定された座標系となる。しかしながら、CE11を用いた内視鏡検査では、CE11を患者10の体内、例えば腸内でスムーズに移動にさせるため、患者10に体操などをさせて腸の運動を活発化させている。このため、患者10が直立しているとき、座ったとき、前屈しているときなど患者10の姿勢に応じて、患者加速度センサ19の姿勢も変化する(図5(B)参照)。このため、センサ座標系C3は、患者10の姿勢に応じて任意の軸周りに回転する座標系である。
【0045】
患者加速度センサ19は、上述のCE加速度センサ42での加速度検出で説明したように、センサ座標系C3の各軸方向の加速度を検出する。患者加速度は、各軸方向の加速度を合成したものであり、センサ座標系C3での患者10の加速度の大きさとその向き(例えばX3〜Z3軸からの傾き角)を表したものである。患者加速度センサ19による患者加速度の検出は逐次行われ、この検出結果はレコーダ17に入力される。
【0046】
患者姿勢検出センサ20は、上述の基準座標系C1における患者10の姿勢を示す患者姿勢情報を検出する。この患者姿勢検出センサ20としては、上述のCE姿勢検出センサ43と同様に、各種の姿勢検知センサが用いられる。患者姿勢検出センサ20による患者10の姿勢検出は、患者加速度センサ19による患者加速度の検出と同期して行われ、この検出結果(患者姿勢情報)はレコーダ17に入力される。なお、患者姿勢情報も、上述のCE姿勢情報と同様に、基準座標系C1に対するセンサ座標系C3の回転角度(ヨー方向、ピッチ方向、ロール方向)で表される。
【0047】
レコーダ17のCPU60は、レコーダ全体の動作を統括的に制御する。CPU60には、データバス61を介して、ROM62、RAM63、変調回路64、復調回路65、画像処理回路66、データストレージ67、入力I/F68、位置検出回路69、相対動き量算出回路70(相対動き量検出手段)、データベース71が接続されている。
【0048】
また、データバス61には、LCD21の表示制御を行うLCDドライバ73、USBコネクタ74を介してプロセッサ24とのデータの遣り取りを媒介する通信I/F75、電池76の電力をレコーダ17(各センサ18〜20も含む)の各部に供給する電力供給回路77なども接続されている。
【0049】
ROM62には、レコーダ17の動作を制御するための各種プログラムやデータが記憶される。CPU60は、ROM62から必要なプログラムやデータを読み出してRAM63に展開し、読み出したプログラムを逐次処理する。また、CPU60は、操作部22からの操作入力信号に応じて、レコーダ17の各部を動作させる。
【0050】
変調回路64及び復調回路65は、それぞれ送受信回路79に接続されており、この送受信回路79には、アンテナ16が接続されている。変調回路64は、制御コマンドを電波14bに変調し、変調した電波14bを送受信回路79に出力する。復調回路65は、受信装置12からの電波14aを元の画像データ、CE加速度、CE姿勢情報に復調する。そして、復調回路65は、復調した画像データを画像処理回路66に出力するとともに、CE加速度及びCE姿勢情報を相対動き量算出回路70に出力する。
【0051】
送受信回路79は、変調回路64からの電波14bを増幅して帯域通過濾波した後、アンテナ16に出力するとともに、アンテナ16を介して受信した電波14aを増幅して帯域通過濾波した後、復調回路65に出力する。
【0052】
画像処理回路66は、復調回路65で復調された画像データに対して各種画像処理を施した後、画像処理済みの画像データをデータストレージ67に出力する。データストレージ67は、例えば、記憶容量が1GB程度のフラッシュメモリからなる。データストレージ67は、画像処理回路66から順次出力される画像データを記憶・蓄積する。
【0053】
入力I/F68は、電界強度測定センサ18、患者加速度センサ19、及び患者姿勢検出センサ20にそれぞれ有線接続されている。入力I/F68には、各センサ18〜20からの検出結果が入力される。そして、電界強度測定センサ18の検出結果は、入力I/F68から位置検出回路69に出力されるとともに、患者加速度・姿勢検出センサ19,20の検出結果は、入力I/F68から相対動き量算出回路70に出力される。
【0054】
位置検出回路69は、電界強度測定センサ18による電波14aの電界強度の測定結果を元に、人体内のCE11の現在位置を検出し、この検出結果(以下、位置情報という)をデータストレージ67に出力する。データストレージ67は、位置検出回路69からの位置情報を、画像処理回路66からの画像データに関連付けて記憶する。なお、電界強度の測定結果を元に、人体内のCE11の位置を検出する方法は周知であるため、ここでは説明を省略する。
【0055】
相対動き量算出回路70は、CE加速度・姿勢情報、及び患者加速度・姿勢情報を元に、患者10に対するCE11の相対的な動き量(移動量)を求める。最初に、相対動き量算出回路70は、4個の患者加速度センサ19からそれぞれ入力された患者加速度の平均(平均患者加速度)を求める。次いで、CE加速度と平均患者加速度との差分をとり、患者10に対するCE11の相対的な加速度(相対加速度)を求める。つまり、CE加速度センサ42で検出される患者10の加速度(動き)をキャンセルする。
【0056】
図5(A),(B)に示すように、相対加速度を求める際に、CE加速度センサ42(CE11)のセンサ座標系C2と、患者加速度センサ19のセンサ座標系C3とは向きが異なっている場合があるので、単純に両加速度の差分をとることはできない。そこで、相対動き量算出回路70は、CE加速度及び平均患者加速度をそれぞれ基準座標系C1における加速度(以下、基準CE加速度、基準患者加速度という)に変換してから、基準CE加速度と基準患者加速度との差分をとることで、CE11の相対加速度を求める。
【0057】
なお、相対加速度を求める場合には、差分をとるCE加速度・姿勢情報の検出タイミングと、患者加速度・姿勢情報の検出タイミングとがほぼ一致している必要がある。このため、例えば、レコーダ17(受信装置12)からCE11へ患者加速度・姿勢情報の検出タイミングに同期した同期信号を電波14aにて送信し、この同期信号に従ってCE11でCE加速度・姿勢情報の検出・送信を行えばよい。
【0058】
相対動き量算出回路70は、CE姿勢情報を元に、センサ座標系C2におけるCE加速度を基準CE加速度に変換する。基準CE加速度の大きさは、CE加速度の大きさと同じである。基準CE加速度の向きは、CE加速度の向きを基準座標系C1における向き(例えば、X1軸、Y1軸、Z1軸からの傾き角)で示したものである。この基準CE加速度の向きは、センサ座標系C2におけるCE加速度の向き(X2〜Z2軸からの傾き角)と、CE姿勢情報(基準座標系C1に対するセンサ座標系C2の回転角度)とから容易に求められる。なお、CE姿勢情報を元に、CE加速度を基準CE加速度に変換する方法は、例えば座標変換式等を用いた周知の座標変換方法を用いてもよい。
【0059】
また、相対動き量算出回路70は、同様にして、患者姿勢情報を元に、センサ座標系C3における平均患者加速度を基準患者加速度に変換する。基準患者加速度も、平均患者加速度の向きを基準座標系C1における向きで示したものであり、その大きさは平均患者加速度と同じである。
【0060】
次いで、相対動き量算出回路70は、基準CE加速度及び基準患者加速度を、それぞれ基準座標系C1のX1〜Z1軸方向の加速度(成分)に分解し、各軸方向別に基準CE加速度と基準患者加速度との差分をとる。各軸方向の加速度の差分を合成することで、相対加速度が算出される。
【0061】
そして、相対動き量算出回路70は、算出した相対加速度を予め設定されたサンプリング時間間隔で2回(2重)積分する。これにより、サンプリング時間内におけるCE11の相対動き量が算出される。このサンプリング時間の長さは適宜決定してよい。相対動き量算出回路70は、算出したCE11の相対動き量をCPU60に逐次出力する。
【0062】
次に、図6を用いて相対動き量算出回路70による相対動き量算出処理を説明する。内視鏡検査が開始されると、CE11内のCE加速度・姿勢検出センサ42,43がそれぞれCE加速度・姿勢情報の検出を開始するとともに、アンテナ16に設けられた4個の患者加速度センサ19及び患者姿勢検出センサ20がそれぞれ患者加速度・姿勢情報の検出を開始する。なお、上述したようにCE加速度・姿勢情報の検出と、患者加速度・姿勢情報の検出とは同期して行われる。
【0063】
CE加速度・姿勢検出センサ42,43の検出結果は、CE11から電波14aにて無線送信された後、アンテナ16で受信されてレコーダ17に入力される。そして、復調回路65にて元のCE加速度・姿勢情報に復調された後、相対動き量算出回路70に入力される。また、患者加速度・姿勢検出センサ19,20の検出結果は、レコーダ17の入力I/F68を経て相対動き量算出回路70に入力される。
【0064】
相対動き量算出回路70は、CE姿勢情報を元にCE加速度を基準座標系C1における基準CE加速度に変換する。また、相対動き量算出回路70は、4個の患者加速度センサ19から入力された患者加速度の平均を求め、求めた平均患者加速度を、患者姿勢情報を元に基準患者加速度に変換する。次いで、相対動き量算出回路70は、基準CE加速度及び基準患者加速度をそれぞれ基準座標系C1の各軸方向の加速度(成分)に分解し、各軸方向別に加速度の差分をとる。そして、相対動き量算出回路70は、各軸方向別の加速度の差分を合成して、CE11の相対加速度を算出する。
【0065】
次いで、相対動き量算出回路70は、算出した相対加速度を予め設定されたサンプリング時間間隔で2回積分して、患者10に対するCE11の相対動き量を算出し、この算出結果をCPU60へ出力する。以下同様にして、相対動き量算出回路70は、内視鏡検査が終了するまでの間、CE11の相対動き量を逐次算出するとともに、算出したCE11の相対動き量をCPU60へ逐次出力する。
【0066】
図4に戻って、CPU60の撮影条件決定回路81(撮影条件決定手段)は、相対動き量算出回路70から入力されるCE11の相対動き量に基づき、データベース71内の撮影条件テーブル82を参照して、CE11の撮影条件であるフレームレート、視野範囲(ズーム倍率)、露出(シャッタ速度、光量)を決定する。
【0067】
図7に示すように撮影条件テーブル82には、相対動き量M(mm)の各範囲において、最適なフレームレートF(fps:フレーム/秒)、視野範囲D(ズーム倍率)、露出(シャッタ速度S(1/秒)、照明光量I(mA))がそれぞれ定められている。なお、照明光量Iは、照明光源部38に与えられる駆動電流である。相対動き量Mが0、0<M≦m1、m1<M≦m2、・・・・M>mN(m1<m2<・・・<mN、Nは1以上の自然数)の順に大きくなるのに従い、フレームレートFをf0、f1、f2、・・・fN(f0<f1<f2<・・・<fN)の順に増加させる。CE11の相対動き量Mが大きくなるのに従ってフレームレートFを増加させることで、撮りこぼしの発生が低減する。さらに、CE11の相対動き量Mが小さくなるのに従ってフレームレートFを減少させることで、類似画像の撮影数が低減する。
【0068】
また、相対動き量Mが大きくなるのに従い、視野範囲Dを決定するズーム倍率を、d0、d1、d2、・・・dN(テレ端側:d0>d1>d2>・・・>dN:ワイド端側)の順に変化させる。つまり、相対動き量Mが大きくなるのに従って視野範囲が拡大し、逆に相対動き量Mが小さくなるのに従って視野範囲Dが縮小する。これは、CE11の相対動き量Mが大きくなるのに従ってCE11の移動速度が増大するため、被観察部位の写り変わりが激しくなるため、撮影できない部分が出てくる。これを防止するため、フレームレートFの拡大及び視野範囲Dの拡大を行う。
【0069】
また、相対動き量Mが大きくなるのに従い、シャッタ速度Sをs0、s1、s2、・・・sN(s0>s1>s2>・・・>sN)の順に速くするとともに、照明光量Iをi0、i1、i2、・・・iN(i0<i1<i2<・・・<iN)の順に増加させる。CE11の相対動き量Mが大きくなるのに従ってシャッタ速度を速くし、且つ照明光量Iを増加させることで、内視鏡画像のブレが防止される。これは、被観察部位の写り変わりが激しいと像がブレるため、シャッタ速度Sを速くすると、照明光の光量が足りなくなるためである。さらに、CE11の相対動き量Mが小さくなったときは、シャッタ速度Sを遅くするとともに、照明光量Iを減少させることで、CE11の消費電力を低減することができる。
【0070】
図4に示すように、CPU60は、撮影条件決定回路81が相対動き量と撮影条件テーブル82とに基づいて撮影条件を決定したら、決定した撮影条件に対応する制御コマンドを生成する。次いで、CPU60は、生成した制御コマンドを変調回路64に出力する。制御コマンドは、変調回路64にて電波14bに変調され、送受信回路79にて増幅、帯域通過濾波された後、アンテナ16に出力される。これにより、受信装置12からCE11へ制御コマンドが無線送信される。
【0071】
図3に示すように、CE11のアンテナ41で受信された電波14bは、送受信回路55及び復調回路50を経て元の制御コマンドに復調され、CPU45に出力される。そして、制御コマンドで設定されたフレームレート、視野範囲(ズーム倍率)、露出(シャッタ速度、照明光量)が、RAM47に一時的に記憶される。
【0072】
RAM47に記憶されたフレームレート、シャッタ速度は、撮影ドライバ48に読み出される。撮影ドライバ48は、制御コマンドで設定されたフレームレート、シャッタ速度で内視鏡画像の撮影が行われるように、撮像素子33及び信号処理回路54の動作を制御する。
【0073】
RAM47に記憶された視野範囲(ズーム倍率)は、レンズ駆動部36に読み出される。レンズ駆動部36は、制御コマンドで設定されたズーム倍率で内視鏡画像の撮影が行われるように、第2レンズ32fを動かして対物光学系32のズーム倍率を調整する。これにより、制御コマンドで設定された視野範囲で内視鏡画像の撮影が行われる。
【0074】
RAM47に記憶された照明光量は、照明ドライバ52に読み出される。照明ドライバ52は、制御コマンドで設定された照明光量で内視鏡画像の撮影が行われるように、照明光源部38に与える駆動電流を制御する。これにより、CE11は、制御コマンドで設定された撮影条件で内視鏡画像の撮影を行う。これら一連の処理は、内視鏡検査が終了して受信装置12(レコーダ17)からCE11へ終了コマンドが送信されるまで続けられる。
【0075】
図8に示すように、CPU85は、WS13の全体の動作を統括的に制御する。CPU85には、データバス86を介して、モニタ26の表示制御を行うドライバ87、USBコネクタ88を経由した受信装置12(レコーダ17)とのデータの遣り取りを媒介し、受信装置12からの画像データを受信する通信I/F89、データストレージ90、およびRAM91が接続されている。
【0076】
データストレージ90には、WS13の動作に必要な各種プログラムやデータ、医師の診断を扶ける支援ソフトのプログラムなどとともに、診断情報が患者毎に整理して記憶されている。RAM91には、データストレージ90から読み出したデータや、各種演算処理により生じる中間データが一時記憶される。支援ソフトを立ち上げると、例えば、モニタ26に支援ソフトの作業ウィンドウが表示される。この作業ウィンドウ上で医師が操作部25を操作することにより、画像の表示・編集、診断情報の入力などを行うことができる。
【0077】
次に、図9を用いて上記のように構成されたカプセル内視鏡システム2の作用について説明する。まず、検査前の準備として、医師は、シールドシャツ15(アンテナ16)、レコーダ17を患者10に装着させ、CE11の電源を投入して患者10に嚥下させる。
【0078】
CE11が患者10に嚥下され、内視鏡検査の準備が整えられると、照明光源部38で人体内の被観察部位が照明されつつ、撮像素子33により人体内管路の内壁面が撮像される。このとき、対物光学系32から入射した人体内の被観察部位の像光は、撮像素子33の撮像面に結像され、これにより撮像素子33から撮像信号が出力される。撮像素子33から出力された撮像信号は、信号処理回路54で相関二重サンプリング、増幅、およびA/D変換が施され、デジタルの画像データに変換された後、各種信号処理が施される。
【0079】
また、内視鏡検査が開始されると、受信装置12(レコーダ17)からCE11へ患者加速度・姿勢情報の検出タイミングに同期した同期信号が電波14bにて無線送信される。CE11のアンテナ41で受信された電波14bは、復調回路50にて元の同期信号に復調された後、CPU45に入力される。CPU45は、入力された同期信号に従って、CE加速度・姿勢検出センサ42,43によるCE加速度・姿勢情報の検出を行わせる。検出されたCE加速度・姿勢情報は、CPU45を経て変調回路49に入力される。
【0080】
信号処理回路54から出力されたデジタルの画像データ、及びCE加速度・姿勢検出センサ42,43で検出されたCE加速度・姿勢情報は、変調回路49にて電波14aに変調される。変調された電波14aは、送受信回路55で増幅、帯域通過濾波された後、アンテナ41から送信される。これにより、画像データ、CE加速度・姿勢情報がCE11から受信装置12へ無線送信される。
【0081】
また、このとき、アンテナ16に装着された電界強度測定センサ18、4つの患者加速度センサ19、患者姿勢検出センサ20でそれぞれ電波14aの電界強度、患者加速度、患者姿勢情報が検出され、これら検出結果がレコーダ17の入力I/F68へ出力される。なお、患者加速度・姿勢検出センサ19,20による検出は、レコーダ17から入力される同期信号に従って行われる。
【0082】
受信装置12のアンテナ16で受信された電波14aは、レコーダ17に入力される。レコーダ17に入力された電波14aは、送受信回路79を経て復調回路65にて元の画像データ、CE加速度・姿勢情報に復調される。復調された画像データは画像処理回路66へ出力され、CE加速度・姿勢情報は相対動き量算出回路70へ出力される。画像データは、画像処理回路66にて各種画像処理が施された後、データストレージ67へ出力される。
【0083】
入力I/F68に入力された電界強度は位置検出回路69へ出力され、患者加速度・姿勢情報は相対動き量算出回路70へ出力される。位置検出回路69は、電波14aの電界強度の測定結果を元に、患者10の体内のCE11の現在位置を検出し、この検出結果をデータストレージ67に出力する。データストレージ67は、位置検出回路69からの位置情報を、画像処理回路66からの画像データに関連付けて記憶する。
【0084】
相対動き量算出回路70は、先に図6を用いて説明したように、入力されたCE加速度・姿勢情報と患者加速度・姿勢情報を元に、患者10の体内でのCE11の相対動き量を算出し、この算出結果をCPU60へ出力する。
【0085】
CPU60の撮影条件決定回路81は、相対動き量算出回路70から入力されたCE11の相対動き量に基づき、データベース71内の撮影条件テーブル82を参照して、CE11の撮影条件[フレームレート、視野範囲(ズーム倍率)、露出(シャッタ速度、照明光量)]を決定する。CPU60は、決定した撮影条件に基づき、制御コマンドを生成し、生成した制御コマンドを変調回路64に出力する。制御コマンドは、変調回路64にて電波14bに変調された後、送受信回路79を経てアンテナ16に出力される。これにより、受信装置12からCE11へ制御コマンドが無線送信される。
【0086】
CE11のアンテナ41で受信された電波14bは、送受信回路55及び復調回路50を経て元の制御コマンドに復調され、CPU45に出力された後、RAM47に一時的に記憶される。RAM47に記憶されたフレームレート及びシャッタ速度、視野範囲(ズーム倍率)、照明光量は、それぞれ撮影ドライバ48、レンズ駆動部36、照明ドライバ52に読み出される。
【0087】
撮影ドライバ48は、制御コマンドで設定されたフレームレート、シャッタ速度で内視鏡画像の撮影が行われるように、撮像素子33及び信号処理回路54の動作を制御する。また、レンズ駆動部36は、制御コマンドで設定された視野範囲(ズーム倍率)で内視鏡画像の撮影が行われるように、対物光学系32のズーム倍率を調整する。また、照明ドライバ52は、制御コマンドで設定された照明光量で内視鏡画像の撮影が行われるように、照明光源部38に与える駆動電流を制御する。これにより、CE11は、制御コマンドで設定された撮影条件で内視鏡画像の撮影を行う。
【0088】
以下同様に、内視鏡検査が終了して受信装置12からCE11へ終了コマンドが送信されるまで、(1)CE加速度・姿勢情報の検出及び患者加速度・姿勢情報の検出、(2)受信装置12により相対動き量の算出・撮影条件の決定、(3)受信装置12からCE11への制御コマンドの送信、(4)CE11による撮影、(6)CE11から受信装置12へ画像データの送信、(7)受信装置12による画像データの記憶からなる一連の処理が続けられる。
【0089】
以上のように本発明のカプセル内視鏡システム2では、CE11の加速度検出結果と、患者10の加速度検出結果とを元に、患者に対するCE11の相対動き量を算出し、この算出結果に基づいてCE11の撮影条件を決定するようにしたので、内視鏡検査中に患者10が動いた場合でも、患者10の動き(加速度)をキャンセルして、CE11のみの動き量を精度よく検出した結果に基づいてCE11の撮影条件を決定することができる。これにより、内視鏡検査中に患者が動いた場合に、患者の動きとCEの動きの違いを判別することができなくなり、実際とは異なるCEの動き量の算出結果に基づいて撮影条件を決定することが防止される。
【0090】
次に、本発明の第2実施形態のカプセル内視鏡システムについて説明を行う。上記第1実施形態のカプセル内視鏡システム2では、相対動き量算出回路70で算出されるCE11の相対動き量が小さい場合には、フレームレート等の撮影条件も一義的に決まるものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、CE11が腸内にあるときに患者10が動くと、腸の動きが活発になるためCE11の相対動き量が急に大きくなり、その変化に撮影条件の変更が間に合わない場合がある。
【0091】
そこで、第2実施形態のカプセル内視鏡システムでは、患者10の動き、つまり、患者加速度センサ19の検出結果から、CE11の相対動き量の増加が予測される場合には、現在のCE11の相対動き量が小さい場合でもCE11の撮影条件を変更する。第2実施形態のカプセル内視鏡システムは、基本的に上述の第1実施形態のカプセル内視鏡システム2と同じ構成であるので、その構成については上述の図1〜図4等を参照されたい。
【0092】
第2実施形態のカプセル内視鏡システムでは、患者加速度センサ19の検出結果が相対動き量算出回路70だけではなく、CPU60にも入力される。CPU60の撮影条件決定回路81は、上記第1実施形態で説明したように、基本的にはCE11の相対動き量の算出結果と撮影条件テーブル82とに基づいた撮影条件(以下、通常撮影条件という)を決定する。
【0093】
ただし、撮影条件決定回路81は、CE11の相対動き量が所定の閾値Tm未満で、且つ患者加速度が所定の閾値Ta以上となる場合には、通常撮影条件よりもフレームレートを増加させた撮影条件(以下、特殊撮影条件)を決定する。なお、特殊撮影条件でフレームレートをどの程度だけ増加させるのかについては、適宜決定してよい。また、閾値Taを幾つか設定しておき、患者加速度が増加するに従って、フレームレートを次第に増加してもよい。
【0094】
また、撮影条件決定回路81は、特殊撮影条件が決定された後、所定時間が経過してもCE11の相対動き量がほとんど大きくならない場合、例えば上記閾値Tmを超えない場合には、CE11の撮影条件を特殊撮影条件から通常撮影条件に戻す。なお、上記所定時間の計時は、CPU60の時計回路(図示せず)等を用いればよい。
【0095】
次に、図10を用いて本発明の第2実施形態のカプセル内視鏡システムの作用について説明を行う。なお、レコーダ17以外の動作は、上述の第1実施形態(図9参照)と基本的に同じであるため、説明及び図示は省略する。また、レコーダ17の動作についても、CE11の相対動き量を算出するまでは、上述の第1実施形態と基本的に同じであるため、説明及び図示は省略する。
【0096】
レコーダ17の撮影条件決定回路81は、相対動き量算出回路70から入力されるCE11の相対動き量が閾値Tm以上、または患者加速度センサ19で検出された患者加速度が閾値Ta未満のいずれかの条件を満たすときは、CE11の相対動き量に基づいて通常撮影条件を決定する。
【0097】
そして、撮影条件決定回路81は、CE11の相対動き量が閾値Tm未満、且つ患者加速度が閾値Ta以上の条件が満たされたら、CE11の撮影条件としてフレームレートを増加させた特殊撮影条件を決定する。なお、前回の相対動き量が閾値Tm未満、且つ患者加速度が閾値Ta以上の状態が所定時間以上継続している場合、つまり、前回の特殊撮影条件が決定されてから、相対動き量が閾値Tm未満の状態で所定時間以上経過している場合には、撮影条件決定回路81は、通常撮影条件を決定する。
【0098】
CPU60は、撮影条件決定回路81で決定した撮影条件(通常撮影条件、特殊撮影条件)に従って、制御コマンドを生成する。生成された制御コマンドは、上述したようにCE11へ無線送信される。
【0099】
撮影条件決定回路81は、特殊撮影条件を決定した後、CPU60の時計回路等を用いて計時を開始する。そして、撮影条件決定回路81は、特殊撮影条件が決定されてから所定時間以上経過しても相対動き量が大きくならない場合には、CE11の撮影条件を特殊撮影条件から通常撮影条件に戻す。以下同様にして、これら一連の処理は、内視鏡検査が終了するまで続けられる。
【0100】
以上のように本発明の第2実施形態のカプセル内視鏡システムでは、CE11の相対動き量が小さい場合でも、患者加速度が閾値Ta以上になる場合には、CE11の相対動き量が増加することを想定してフレームレートを増やした特殊撮影条件を決定することで、例えば、患者10の動きにより腸の動きが活発化して、腸内のCE11の相対動き量が急激に大きくなった場合でも、撮りこぼしの発生を抑えることができる。
【0101】
また、特殊撮影条件が決定されてから、所定時間が経過してもCE11の相対動き量が大きくならない場合には、CE11の撮影条件を通常撮影条件に戻すようにしたので、想定に反して相対動き量が大きくならない場合でも、特殊撮影条件に従った撮影が長く継続することが防止される。つまり、フレームレートを増加させる本例の場合には、類似画像の撮影数の増加が抑えられる。
【0102】
なお、上記第2実施形態では、CE11の相対動き量が大きくなることを想定してフレームレートのみを増加させる場合を例に挙げて説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、視野範囲の拡大、シャッタ速度の高速化、照明光量の増加も併せて行うようにしてもよい。この場合には、上述の撮影条件テーブルを利用することができる。例えば、通常撮影条件よりもNを1または2だけ増加させて特殊撮影条件とする。また、相対動き量が閾値Tm未満を例示したが、相対動き量に関わらず特殊撮影条件に従った撮影を行ってもよい。つまり、患者加速度から相対動き量の増加を予測して、予測した相対動き量に応じた撮影条件に決定すればよい。
【0103】
次に、本発明の第3実施形態のカプセル内視鏡システムについて説明を行う。上記第1及び第2実施形態では、レコーダ17においてCE11の相対動き量の算出と、CE11の撮影条件の決定とを行っているが、第3実施形態では、相対動き量の算出と撮影条件の決定とをCEにて行う。
【0104】
図11に示すように、第3実施形態のカプセル内視鏡システムを構成するCE95は、基本的には上記第1実施形態のCE11と同じ構成であり、上記第1実施形態と機能・構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0105】
CE95には、レコーダ17(第1実施形態)の相対動き量算出回路70及び撮影条件決定回路81と同じ機能を有する相対動き量算出回路96及び撮影条件決定回路97と、レコーダ17のデータベース71に相当するメモリ98とが設けられている。メモリ98には、上述の撮影条件テーブル82が格納されている。なお、RAM、ROM、電池、電力供給回路等は図示を省略している。また、撮影条件決定回路97は、CPU45と別体に設けられているが、CPU45内に設けられていてもよい。
【0106】
第3実施形態のレコーダは、相対動き量算出回路70、撮影条件決定回路81、データベース71が設けられていない点を除けば、上述の第1実施形態のレコーダ17と同じ構成であるため、説明及び図示は省略する(図4参照)。
【0107】
次に、図12を用いて本発明の第3実施形態のカプセル内視鏡システムの作用について説明を行う。第3実施形態のレコーダは、患者加速度・患者姿勢検出センサ19,20の検出結果を変調回路64にて変調した後、送受信回路79を介してアンテナ16に出力する。これにより、患者加速度・患者姿勢情報がCE95へ無線送信される。
【0108】
CE95のアンテナ41で受信された電波14bは、送受信回路55を経て復調回路50にて元の患者加速度・患者姿勢情報に復調された後、CPU45を経て相対動き量算出回路96に入力される。また、CPU45は、レコーダから入力される患者加速度・患者姿勢情報に同期して、内視鏡加速度・姿勢情報の検出が行われるようにCE加速度・姿勢検出センサ42,43を制御する。CE加速度・姿勢検出センサ42,43の検出結果は、相対動き量算出回路96に入力される。
【0109】
相対動き量算出回路96は、上記第1実施形態(図6参照)で説明したように、患者10に対するCE95の相対動き量を検出する。この検出結果は、撮影条件決定回路97に入力される。撮影条件決定回路97は、相対動き量算出回路96から入力されたCE95の相対動き量に基づき、メモリ98に格納された撮影条件テーブル82(図7参照)を参照して、CE95の撮影条件を決定する。
【0110】
撮影条件決定回路97により決定された撮影条件は、図示しないRAM等に一時的に記憶される。以下、上記第1実施形態で説明したように、CE95は、撮影条件決定回路97により決定された撮影条件に従って撮影を行う。なお、CE95で撮影した画像データについては、上記第1実施形態で説明したうように、受信装置(レコーダ)へ無線送信され、そのデータストレージ67に格納される。
【0111】
以上のように本発明の第3実施形態のカプセル内視鏡システムは、CE95において相対動き量の算出と撮影条件の決定とを行う以外は、上記第1実施形態と基本的に同じであるため、上記第1実施形態で説明した効果と同様の効果が得られる。
【0112】
なお、上記各実施形態では、CE11,95の視野範囲の可変を、対物光学系32のズーム倍率を変倍することで行うようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電子ズーム方式により撮像素子33から得られる撮像信号に信号処理を施して被写体像(内視鏡画像)に変倍処理を施すことで、CE11,95の視野範囲を可変してもよい。
【0113】
また、上記各実施形態では、撮影条件決定回路81,97が、撮影条件テーブル82を参照してCE11,95の撮影条件を決定しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、CE11,95の相対動き量と撮影条件(フレームレート、視野範囲、露出)との関係を示す演算式を各条件別に予め求めておき、これら演算式を用いてCE11,95の相対動き量から撮影条件を決定してもよい。
【0114】
なお、上記各実施形態では、CE11,95の撮影条件として、フレームレート、視野範囲(ズーム倍率)、露出(シャッタ速度、照明光量)を例に挙げて説明を行ったが、これら以外のCEの撮影に係わる各種条件を撮影条件としてもよい。例えば絞りがある場合には、シャッタ速度、照明光量に加えて、絞り値を入れてもよい。また、照明光量も電流ではなく電圧でもよい。
【0115】
また、上記各実施形態では、患者加速度・姿勢検出センサ19,20をシールドシャツ15に装着されているアンテナ16に設けた場合を例に挙げて説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、患者10(特に胴体)に装着されるもの、例えばレコーダ17等に両センサ19,20を設けてもよい。また、アンテナ16やレコーダ17とは別に、両センサ19,20を患者10に直接取り付けてもよい。
【0116】
なお、上記各実施形態では、レコーダ17(第1及び第2実施形態)またはCE95(第3実施形態)のいずれか一方に、相対動き量算出回路及び撮影条件決定回路(以下、単に両回路という)を設けた場合を例に挙げて説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、CE及びレコーダにそれぞれ両回路を設けてもよい。この場合には、CE及びレコーダにそれぞれ設けられている両回路のいずれを使用するかは、例えば選択スイッチ等で選択できるようにすればよい。また、CEに両回路の一方を設け、レコーダに他方を設けるようにしてもよい。
【0117】
また、上記各実施形態では、CE姿勢検出センサ43の検出結果に基づき、基準座標系C1におけるC11(CE95も同様)の姿勢及び移動方向を判別可能である。このため、CE11が特定の姿勢で特定の方向に移動している場合、例えばCE11の向き及び移動方向が共に下方向であるとき(移動方向と撮影方向とが一致しているとき)に、フレームレートの増加、視野範囲の拡大、シャッタ速度の高速化、照明光量の増加の少なくともいずれか1つを実行してもよい。
【0118】
なお、上記各実施形態では、CE加速度センサ42とCE姿勢検出センサ43とが別体である場合を例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、CEの加速度及び姿勢の両方を検出可能な各種加速度センサを用いてもよい。また、同様に患者10の加速度及び姿勢の両方を検出可能な各種加速度センサを用いてもよい。
【0119】
また、上記各実施形態において撮影条件決定回路81,97は、CE11(CE95も同様)の相対動き量に基づき、CE11の撮影条件を決定しているが、本発明はこれに限定されず、患者10に対するCE11の相対速度(単位時間あたりの相対動き量)に基づいて撮影条件を決定してもよい。この場合には、CE11の相対加速度を1回積分してCE11の相対速度を算出する相対速度算出回路を設ければよい。
【0120】
なお、上記各実施形態では、CE11(CE95も同様)の相対動き量が小さくなっても、レコーダ17は、CE11から無線受信した画像データに対して全て同じように画像処理等を施した後、データストレージ67に記憶させている。CE11の相対動き量が小さくなり、CE11が体内で滞留した場合には、同じ内視鏡画像(類似画像)が複数撮影されるため、データストレージ67に記憶される類似画像の数が増加してしまう。この場合には、医師は同じような内視鏡画像の読影を繰り返さなければならず、読影の負担が増えてしまう。また、画像データを記憶するストレージ67として記憶容量が大きなものを用意しなければならず、コストアップの要因となる。
【0121】
そこで、図13に示すレコーダ100では、CE11の相対動き量に基づいて、CE11から無線受信した複数の画像データの中から、WS13において医師の読影に供する読影用画像データの選択を行う。レコーダ100は、基本的には上記第1実施形態のレコーダ17と同じ構成である。ただし、レコーダ100には、画像選択回路101(画像選択手段)と、画像圧縮回路102(データ量削減手段)とが設けられている。なお、電池76、電力供給回路77等は図示を省略している。
【0122】
画像選択回路101には、相対動き量算出回路70からCE11の相対動き量の算出結果が逐次入力されるとともに、画像処理回路66から画像処理済みの画像データが逐次入力される。画像選択回路101は、画像処理回路66から入力される一連の画像データを、K(Kは1以上の自然数)コマおきに抽出し、抽出した画像データを読影用画像データとしてデータストレージ67へ出力する。
【0123】
この際に、画像選択回路101は、CE11の相対動き量が大きくなるのに従って、Kの値を次第に小さくする。従って、CE11の相対動き量が小さい場合、つまり、CE11が体内で停滞している場合には、読影用画像データの抽出数が減る。逆にCE11の相対動き量が大きい場合、つまり、CE11が体内でスムーズに移動している場合には、読影用画像データの抽出数が増える。なお、読影用画像データの抽出(選択)方法は、これに限定されるものではなく、CE11の相対動き量が大きくなるのに従って読影用画像データの選択数が増加するような選択方法であれば、特に限定はされない。例えば、相対動き量がある閾値以下のものは抽出せず、閾値以上のものは全て抽出するようにしてもよい。
【0124】
また、画像選択回路101にて選択されなかった残りの画像データ、つまり、類似画像であると判定された画像データ(以下、不要画像データという)は、画像圧縮回路102へ逐次出力される。画像圧縮回路102は、不要画像データに任意の圧縮形式で圧縮処理を施し、圧縮処理した圧縮画像データをデータストレージ67に逐次出力する。データストレージ67は、画像圧縮回路102からの圧縮画像データを、読影用画像データとは別に記憶する。なお、圧縮に限らず、不要画像データのデータ量を削減できればよく、例えば間引きを行ってもよい。
【0125】
以上のように、CE11の相対動き量に基づいて、CE11から無線受信した複数の画像データの中から、読影に供する読影用画像データを選択するようにしたので、医師が読影する内視鏡画像の量が低減される。これにより、内視鏡画像を読影する医師の負担を低減させることができ、その結果として読影及び診断に要する時間を短縮することができる。また、読影用画像データとして選択されなかった不要画像データについては、圧縮処理を施してからデータストレージ67に記憶させることで、データストレージ67として、従来よりも記憶容量の少ないものを用いることができ、その結果としてコストダウンが図れる。
【0126】
なお、上記第1実施形態などでは、1回の撮影ごとに制御コマンドの生成・送信を行っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、同じ条件で何回か撮影を行うようにしてもよい。また、所定撮影回数或いは所定時間経過ごとに撮影条件の決定を行うようにしてもよい。また、撮影条件決定回路81で新たに決定された撮影条件が、現在のCE11の撮影条件+α以上、或いは−α以下となるときに、CE11の撮影条件を変更するようにしてもよい。
【0127】
なお、上記各実施形態では、カプセル内視鏡検査を行う被検体が人である場合を例に挙げて説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、人以外の動物等が被検体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】カプセル内視鏡システム(第1実施形態)の構成を示す概略図である。
【図2】カプセル内視鏡の内部構成を示す断面図である。
【図3】カプセル内視鏡の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】レコーダの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】CE加速度センサの座標系と患者加速度センサの座標系とが異なる場合があることを説明するための説明図である。
【図6】患者に対するカプセル内視鏡の相対動き量の算出処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】撮影条件テーブルの一例を説明するための説明図である。
【図8】ワークステーションの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】カプセル内視鏡システムにおけるカプセル内視鏡の撮影条件の設定処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】第2実施形態のカプセル内視鏡システムにおけるカプセル内視鏡の撮影条件の設定処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】第3実施形態のカプセル内視鏡システムのカプセル内視鏡の電気的構成を示すブロックである。
【図12】第3実施形態のカプセル内視鏡システムにおけるカプセル内視鏡の撮影条件の設定処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】カプセル内視鏡の相対動き量の算出結果に基づき、カプセル内視鏡から無線受信した画像データ中から、読影に供する画像データを選択する他の実施形態のレコーダの電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0129】
2 カプセル内視鏡システム
10 患者
11 カプセル内視鏡(CE)
12 受信装置
15 シールドシャツ
16 アンテナ
17 レコーダ
19 患者加速度センサ
20 患者姿勢検出センサ
42 CE加速度センサ
43 CE姿勢検出センサ
70 相対動き量算出回路
81 撮影条件決定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に嚥下され、被検体内の被観察部位を撮影するカプセル内視鏡と、被検体に携帯されるとともに、前記カプセル内視鏡と無線通信により接続されており、前記カプセル内視鏡で得られた内視鏡画像を無線受信して、これを記憶する受信装置とを備えるカプセル内視鏡システムにおいて、
前記カプセル内視鏡に設けられ、前記カプセル内視鏡の加速度を検出する内視鏡加速度検出手段と、
前記受信装置に設けられ、前記受信装置を携帯した被検体の加速度を検出する被検体加速度検出手段と、
前記カプセル内視鏡または前記受信装置の少なくともいずれか一方に設けられ、前記内視鏡加速度検出手段及び前記被検体加速度検出手段の検出結果に基づき、前記被検体に対する前記カプセル内視鏡の相対的な動き量を検出する相対動き量検出手段とを備えることを特徴とするカプセル内視鏡システム。
【請求項2】
前記カプセル内視鏡または前記受信装置の少なくともいずれか一方に設けられ、前記相対動き量検出手段で検出された前記カプセル内視鏡の相対動き量に基づき、前記カプセル内視鏡の撮影条件を決定する撮影条件決定手段と、
前記カプセル内視鏡に設けられ、前記撮影条件決定手段で決定された前記撮影条件に従って前記カプセル内視鏡に前記撮影を行わせる撮影制御手段とを備えることを特徴とする請求項1記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項3】
前記撮影条件は、前記撮影を行う際のフレームレート、視野範囲、露出の少なくともいずれか一つを含んでいることを特徴とする請求項2記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項4】
前記撮影条件決定手段は、前記相対動き量が大きくなるのに従って前記フレームレートが増加するように、前記撮影条件を決定することを特徴とする請求項3記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項5】
前記撮影条件決定手段は、前記相対動き量が大きくなるのに従って前記視野範囲が拡大するように、前記撮影条件を決定することを特徴とする請求項3または4記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項6】
前記撮影条件決定手段は、前記相対動き量が大きくなるのに従って前記撮影のシャッタ速度が速くなり、且つ前記被観察部位を照明する照明光の光量が増加するように、前記撮影条件を決定することを特徴とする請求項3ないし5いずれか1項記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項7】
前記撮影条件決定手段は、前記相対動き量が比較的小さい場合でも、前記被検体加速度検出手段で検出された被検体加速度が予め定めた所定値以上となる場合には、前記相対動き量が大きくなることを想定して、前記相対動き量が大きい場合に準じた特殊撮影条件に、前記撮影条件を決定することを請求項2ないし6いずれか1項記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項8】
前記撮影条件決定手段は、前記特殊撮影条件に決定した後、予め定めた所定時間が経過しても前記相対動き量が大きくならない場合には、そのときの前記相対動き量に基づいた前記撮影条件に決定しなおすことを特徴とする請求項7記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項9】
前記受信装置は、前記カプセル内視鏡との間で無線通信を行うためのアンテナと、前記アンテナを介して無線受信した前記内視鏡画像を記憶する記憶装置とから構成され、
前記被検体加速度検出手段は、前記アンテナに設けられているとともに、前記相対動き量検出手段及び前記撮影条件決定手段は、前記記憶装置に設けられていることを特徴とする請求項2ないし8いずれか1項記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項10】
前記カプセル内視鏡に設けられ、被検体内での前記カプセル内視鏡の姿勢を検出する内視鏡姿勢検出手段と、
前記受信装置に設けられ、前記受信装置を携帯した被検体の姿勢を検出する被検体姿勢検出手段とを備え、
前記相対動き量検出手段は、前記内視鏡姿勢検出手段及び前記被検体姿勢検出手段の検出結果を考慮して、前記相対動き量を検出することを特徴とする請求項1ないし9いずれか1項記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項11】
前記受信装置に設けられ、前記相対動き量に基づき、前記カプセル内視鏡から前記受信装置が無線受信した複数の前記内視鏡画像の中から、読影に供する読影用内視鏡画像を選択する画像選択手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし10いずれか1項記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項12】
前記画像選択手段は、前記相対動き量が大きくなるのに従って、前記読影用内視鏡画像の選択数を増やすことを特徴とする請求項11記載のカプセル内視鏡システム。
【請求項13】
前記受信装置に設けられ、前記カプセル内視鏡から前記受信装置が無線受信した複数の前記内視鏡画像のうち、前記画像選択手段が選択しなかった前記内視鏡画像に対してデータ量削減処理を施すデータ量削減手段を備えることを特徴とする請求項11または12記載のカプセル内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−195271(P2009−195271A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37056(P2008−37056)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】