説明

カム式バルブ

【課題】 ステッピングモータ及びカム機構から成るアクチュエータを上下方向へ微調整してバルブの零点調整を簡単且つ容易に行えるようにする。
【解決手段】 流入通路2a、流出通路2b、弁室2c及び弁座2dを有するボディ2内にステム7を昇降自在に配設し、前記ステム7をステム7の上方位置に配設したステッピングモータ9及びステッピングモータ9の回転運動を直線運動に変えてステム7に伝達するカム機構10から成るアクチュエータにより下降させ、弁室2c内に配設したダイヤフラム3又はステム7の下端部に設けた弁体30を弁座2dへ当座させるようにしたステッピングモータ駆動型のカム式バルブ1に於いて、前記ボディ2の弁室2cを覆うボンネット5にアクチュエータを昇降自在に支持する昇降支持機構11を設け、当該昇降支持機構11にステム7に対するアクチュエータの高さ位置を微調整する高さ微調整機構12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体製造設備等の流体供給ラインやチラーユニットの冷媒循環回路等に介設されてガスや冷媒等の流体の流量調整用に用いられるものであり、特に、ガスや冷媒等の流量を微少且つ精密に制御できるようにしたステッピングモータ駆動型のカム式バルブの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステッピングモータ駆動型のカム式バルブとしては、例えば実開昭61−117971号公報(参考文献1)や実開昭61−117972号公報(参考文献2)等に開示された構造のものが知られている。
【0003】
即ち、前記カム式バルブは、図示していないが、流体通路及び弁座を有する弁箱と、弁箱の弁座に当離座する弁体と、弁体を弁座から離座する方向へ附勢する弾性体と、弁体に連結されて弁箱の上蓋に昇降自在に支持された弁棒と、弁棒の上端部に設けたカムローラに当接して弁棒を押し下げるカム板と、カム板を回転駆動するパルスモータ(ステッピングモータ)等から構成されており、パルスモータによりカム板を回転させ、カム板を介して弁棒を下方へ押し下げることによって、弁棒の下端に設けた弁体を弁座へ当座させるようにしたものである。
このステッピングモータ駆動型のカム式バルブは、高精度な流量制御を行うことができ、優れた実用的効用を奏するものである。
【0004】
ところで、ステッピングモータを用いたカム式バルブは、ステッピングモータに供給するパルス数に応じてカム板が所定の角度だけ回転し、カム板の回転により弁棒及び弁体が微少量変位して流体の流量制御を行わせるものであるから、バルブの全開時又は全開時に弁体及び弁棒等が零点位置(全開位置又は全閉位置)へ正確に位置するように零点調整されていなければならない。
即ち、バルブの全開時には、カム板の最小半径部分がカムローラに当接し且つ弁体と弁座が最も離間した状態となるように調整し、又、バルブの全閉時には、カム板の最大半径部分がカムローラに当接し且つ弁体が弁座に適切な力で当座するように調整しなければならない。
【0005】
しかし、上述した従来のステッピングモータ駆動型のカム式バルブに於いては、弁体等を零点位置へ位置調整する調整機構を全く備えておらず、バルブの零点調整に極めて手間取ると云う問題があった。
又、カム式バルブの各構成部品の加工精度や組立精度等を高めておかないと、弁体が弁座へ過度に押し付けられたり、或いは弁体と弁座の接触が不十分になったりすることがあった。その結果、バルブの弁座等が損傷したり、流体が漏洩したりすると云う問題があった。
【特許文献1】実開昭61−117971号公報
【特許文献2】実開昭61−117972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、ステッピングモータ及びカム機構から成るアクチュエータを上下方向へ微調整できてバルブの零点調整を簡単且つ容易に行えるようにしたステッピングモータ駆動型のカム式バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、流入通路、流出通路、弁室及び弁座を有するボディ内にステムを昇降自在に配設し、前記ステムをステムの上方位置に配設したステッピングモータ及びステッピングモータの回転運動を直線運動に変えてステムに伝達するカム機構から成るアクチュエータにより下降させ、弁室内に配設したダイヤフラム又はステムの下端部に設けた弁体を弁座へ当座させるようにしたステッピングモータ駆動型のカム式バルブに於いて、前記ボディの弁室を覆うボンネットにアクチュエータを昇降自在に支持する昇降支持機構を設け、当該昇降支持機構にステムに対するアクチュエータの高さ位置を微調整する高さ微調整機構を設けたことに特徴がある。
【0008】
又、本発明の請求項2の発明は、請求項1の発明に於いて、昇降支持機構が、ボンネットに設けた取付け台と、取付け台にステムと平行に立設したガイド軸と、ガイド軸の上端部に昇降自在に支持され、ステッピングモータ及びカム機構から成るアクチュエータが取り付けられる昇降台と、ガイド軸の上端部に取り付けられ、アクチュエータ及び昇降台を囲繞する収納ケースとから成り、又、高さ微調整機構が、収納ケースの底部に上下方向へ移動調整自在に螺挿され、上端面が昇降台の下面に当接して昇降台を支持する調整ネジと、昇降台の上面と収納ケースの天井部との間に介設され、昇降台を下方へ押圧附勢して調整ネジの上端面へ当接させる弾性体とから成り、調整ネジの締め込み量を調整することによって、アクチュエータを取り付けた昇降台の高さを変え、ステムに対するアクチュエータの高さ位置を微調整するようにしたことに特徴がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカム式バルブは、バルブのボンネットにステッピングモータ及びカム機構から成るアクチュエータを昇降自在に支持する昇降支持機構を設け、当該昇降支持機構にステムに対するアクチュエータの高さ位置を微調整する高さ微調整機構を設ける構成としているため、高さ微調整機構を操作することによって、バルブの零点調整を簡単且つ容易に行うことができる。その結果、本発明のカム式バルブは、バルブのダイヤフラムや弁体が弁座へ過度に押し付けられたり、或いはダイヤフラムや弁体と弁座との接触が不十分になったりすると云うことがなく、ダイヤフラムや弁体、弁座等の損傷を防止することができると共に、バルブの全閉時に於ける流体の漏洩を防止することができ、高精度な流量制御を確実且つ良好に行える。然も、バルブの各構成部品の加工精度や組立精度等を高めなくても、バルブの全開時又は全開時にダイヤフラムや弁体、ステム等を零点位置(全開位置又は全閉位置)へ正確に位置調整することができる。
又、本発明のカム式バルブは、バルブのボンネットに設けた取付け台にガイド軸を立設し、当該ガイド軸の上端部にステッピングモータ及びカム機構から成るアクチュエータが取り付けられる昇降台を昇降自在に支持する構成としているため、アクチュエータがボディから離間した位置に配置されることになる。然も、本発明のカム式バルブは、アクチュエータ及び昇降台を収納ケースで囲繞する構成としている。その結果、本発明のカム式バルブを高温の流体や低温の流体を取り扱う流体供給ラインや冷媒循環回路に介設しても、アクチュエータが高温の流体や低温の流体の悪影響を受け難くなり、アクチュエータの延命化等を図れることになる。
更に、本発明のカム式バルブは、高さ微調整機構が、収納ケースの底部に上下方向へ移動調整自在に螺挿されて昇降台を下面側から支持する調整ネジと、昇降台の上面と収納ケースの天井部との間に介設されて昇降台を下方へ押圧附勢する弾性体とから構成されているため、高さ微調整機構自体の構造も極めて簡単になると共に、高さ微調整機構を昇降支持機構に設けても邪魔になると云うことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は本発明の第1の実施形態に係るステッピングモータ駆動型のカム式バルブ1を示し、当該カム式バルブ1は、例えば半導体製造装置等の二つのチャンバー(ツインチャンバー)に夫々接続された分岐状の流体供給ラインに介設され、両チャンバーへTEOSやN2 等の流体を適宜の比率(例えば5対5〜4対6)で供給する分流制御用のバルブとして用いられるものであり、金属製のダイヤフラムを直接弁座2dへ当離座させて流体通路の開閉を行うようにしたノーマルオープン型のダイヤフラムバルブに構成されている。
【0011】
即ち、前記カム式バルブ1は、図1及び図2に示す如く、流入通路2a、流出通路2b、弁室2c及び弁座2dを有するボディ2と、上方が開放された弁室2cの気密を保持すると共に、中央部が上下動して弁座2dへ直接当離座する金属製のダイヤフラム3と、ダイヤフラム3の外周縁部上面に配設した環状の押えアダプター4と、ダイヤフラム3の外周縁部を押えアダプター4を介してボディ2との間で気密状に挾持する筒状のボンネット5と、ボンネット5をボディ2に固定するボンネットナット6と、ボディ2内に配設され、ボンネット5に昇降自在に支持されたステム7と、ステム7の下端部に設けられ、ステム7の下降時にダイヤフラム3に当接してダイヤフラム3の中央部を押し下げるダイヤフラム押え8と、ステム7の上方位置に配設され、ステム7を下降させるステッピングモータ9及びカム機構10から成るアクチュエータと、ボンネット5に設けられ、アクチュエータを昇降自在に支持する昇降支持機構11と、昇降支持機構11に設けられ、ステム7に対するアクチュエータの高さ位置を微調整する高さ微調整機構12とから構成されており、ステム7を駆動するアクチュエータを高さ微調整機構12により上下に微調整してアクチュエータの高さ位置を変えることによって、バルブの零点調整を行えるようにしたものである。
尚、このカム式バルブ1の昇降支持機構11、アクチュエータ及び高さ微調整機構12以外の各構成は、従来公知のものと同様構造に構成されているため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0012】
前記昇降支持機構11は、ステム7を駆動するアクチュエータをステム7の上方位置で昇降自在に支持するものであり、ボンネット5の外周面に螺着されて止めネジ13によりボンネット5に固定された筒状の内側部材14′及び内側部材14′に嵌合固定された筒状の外側部材14″から成るフランジ14a付の取付け台14と、取付け台14の外側部材14″のフランジ14a上面にボルト15により立設され、上半分が下半分よりも小径に形成されてステム7と平行な段付きの左右のガイド軸16と、両ガイド軸16の小径部分に上下方向へ摺動自在に支持され、アクチュエータが取り付けられる前面が開放された箱状の昇降台17と、左右のガイド軸16の小径部分にボルト15により取り付けられ、両ガイド軸16の小径部分、アクチュエータ及び昇降台17を囲繞する収納ケース18と、両ガイド軸16の下端部に架設され、アクチュエータのカム機構10を構成するカム棒22の下端部を上下方向へ摺動自在に挿通支持する振れ止め板19等から構成されている。
又、昇降支持機構11の収納ケース18は、箱状に組み立てられたカバープレート18aと、カバープレート18aの底部内面に昇降台17の下面に対向すべくビス20により固定され、カム機構10のカム棒22の上端部を上下方向へ摺動自在に挿通支持する底板18bと、カバープレート18aの天井部内面に昇降台17の上面に対向すべく固定された天井板18cとから成る。
【0013】
前記アクチュエータは、ステッピングモータ9及びカム機構10から成り、ステッピングモータ9の回転運動をカム機構10により上下方向の直線運動に変えてステム7に伝達するものである。
【0014】
即ち、ステッピングモータ9は、収納ケース18内に水平姿勢で収納されており、その出力軸9aがステム7と直交する姿勢になるように昇降台17に固定されている。この実施形態に於いては、ステッピングモータ9には、基本ステップ角が0.9度で励磁方法が1−2相励磁のときにステップ角が0.45度になる2相型のステッピングモータ9が使用されている。
【0015】
一方、カム機構10は、ステッピングモータ9の出力軸9aに止めネジ13により固定され、外周面がカム面21aに形成された円盤状のカム板21と、収納ケース18の底板18b及び振れ止め板19に筒状のメタル37を介して上下方向へ摺動自在に挿通支持され、下端面がステム7の上端面に当接するカム棒22と、カム棒22の二股状に形成した上端部にピン23を介して回転自在に支持され、カム板21のカム面21aに当接するカムローラ24とから成り、カム板21がステッピングモータ9により回転駆動されると、カム板21のカム面21aがカムローラ24を押圧してカム棒22及びこれに当接するステム7を下降させるようになっている。
又、カム板21のカム面21aは、0度〜200度の範囲では最小半径からその半径が漸増して最大半径になり、200度〜360度の範囲では最大半径のままになっている。
更に、カム板21は、360度回転しないように230度の付近にストッパー(図示省略)が取り付けられており、原点(0度)〜200度の間で正逆回転するようになっている。
【0016】
尚、図1及び図2に於いて、25は昇降台17にブラケット26を介して取り付けた全開位置検出用のフォトセンサー、27はカム板21に取り付けられ、フォトセンサーにより位置検出されるセンサープレートである。
【0017】
前記高さ微調整機構12は、アクチュエータの高さ位置を微調整してバルブの零点調整を行うものであり、収納ケース18の底板18bに上下方向へ移動調整自在に螺挿され、上端面が昇降台17の下面に当接して昇降台17を支持する二本の調整ネジ12aと、昇降台17の上面と収納ケース18の天井板18cとの間に介設され、昇降台17を下方へ押圧附勢して調整ネジ12aの上端面へ常時当接させる弾性体12b(圧縮コイルスプリング)とから成る。
この高さ微調整機構12によれば、カム板21の最小半径部分がカムローラ24に当接している状態で二つの調整ネジ12aの締め込み量を調整してアクチュエータが取り付けられた昇降台17を上下方向に微調整し、アクチュエータの高さ位置を変えてカム機構10のカム棒22の下端面を最上位の位置にあるステム7の上端面へ当接させることによって、バルブの零点調整を行うことができる。即ち、バルブを全開位置へ調整することができる。
【0018】
而して、零点調整を行ったカム式バルブ1に於いては、カム板21の最小半径部分がカムローラ24に当接しているときには、ダイヤフラム3の弾性力やボディ2内の流体圧によりステム7等が最も上昇した状態となり、ダイヤフラム3の中央部と弁座2dとが最も離間した全開位置となっている。
この状態でステッピングモータ9へ所定数のパルス入力信号が加えられると、ステッピングモータ9が入力パルス数に応じたステッピング回転を行い、これによりカム板21が所定の角度だけ回転する。
カム板21が回転すると、カムローラ24が下方へ押圧され、これによりカム棒22及びステム7がダイヤフラム3の弾性力及びボディ2内の流体圧に抗して漸次下降すると共に、ダイヤフラム3の中央部がダイヤフラム押え8を介して下方へ徐々に押し下げられる。その結果、ダイヤフラム3と弁座2dとの間隔が狭くなり、流体の流量が制御されることになる。
【0019】
そして、ダイヤフラム3の中央部が完全に押し下げられてダイヤフラム3の中央部が弁座2dに当座したら、バルブが全閉状態になって流体の流通が完全に遮断される。
この状態でカム板21が反対方向に回転し、カム板21の最小半径部分がカムローラ24に対向すると、ダイヤフラム3がその弾性力やボディ2内の流体圧により元の形状に復元すると共に、ステム7及びカム棒22を上方へ押し上げる。その結果、カム式バルブ1は、ダイヤフラム3と弁座2dとが最も離間した全開位置となる。
【0020】
このカム式バルブ1に於いては、ステム7を駆動するアクチュエータを昇降支持機構11によりステム7に対して昇降自在に支持し、前記支持機構11に昇降台17を支持する調整ネジ12aと昇降台17を下方へ押圧附勢する弾性体12bとから成る高さ微調整機構12を設けているため、ダイヤフラム3が弁座2dへ当座した後は、アクチュエータを取り付けた昇降台17全体が上昇して弾性体12bを圧縮することになる。その結果、このカム式バルブ1に於いては、ダイヤフラム3が弁座2dへ過度に押し付けられると云うことがなく、ダイヤフラム3や弁座2d等の損傷を防止することができると共に、バルブの全閉時に於ける流体の漏洩を確実に防止することができる。然も、バルブの各構成部品の加工精度や組立精度を高めなくても、バルブの全開時(又は全閉時)にダイヤフラム3やステム7等を零点位置(全開位置又は全閉位置)へ正確に位置調整することができる。
又、このカム式バルブ1に於いては、バルブのボンネット5に設けた取付け台14にガイド軸16を立設し、このガイド軸16の上端部にアクチュエータが取り付けられる昇降台17を昇降自在に支持する構成としているため、アクチュエータがボディ2から離間した位置に配置されることになる。然も、このカム式バルブ1は、アクチュエータ及び昇降台17を収納ケース18で囲繞する構成としている。その結果、このカム式バルブ1を高温の流体を取り扱う流体供給ラインに介設しても、アクチュエータが高温の流体の悪影響を受け難くなり、アクチュエータの延命化等を図れることになる。
【0021】
図3及び図4は本発明の第2の実施形態に係るステッピングモータ駆動型のカム式バルブ1を示し、当該カム式バルブ1は、例えば半導体や液晶等の製造装置の冷却、加熱に使用するチラーユニットの冷媒循環回路の高い温度の流体(ハイドロフルオロエーテル等の冷媒)が流れる個所及び冷媒循環回路の低い温度の流体(冷媒)が流れる個所に夫々介設され、冷媒循環回路内を流れる流体を適宜に流量制御して流体の温度調整を行う冷媒制御用のバルブとして用いられるものであり、ステム7の下端部に設けた弁体を弁座2dへ当離座させて開閉を行うと共に、金属製のベローズ31により流体の漏洩を防止するようにしたノーマルオープン型のベローズバルブに構成されている。
【0022】
即ち、前記カム式バルブ1は、図3及び図4に示す如く、流入通路2a、流出通路2b、弁室2c及び弁座2dを有するボディ2と、弁室2c内の上方位置にシール材28を介して配設されたベローズフランジ29と、ベローズフランジ29の外周縁部をボディ2との間で気密状に挾持する筒状のボンネット5と、ボンネット5をボディ2に固定するボンネットナット6と、ボディ2内に配設され、ベローズフランジ29の中央部に摺動自在に挿通されたステム7と、ステム7の下端部に設けられ、弁座2dに当離座する弁体30と、上端部がベローズフランジ29に溶接により気密状に固着されていると共に、下端部がステム7の下端部に溶接により気密状に固着された金属製のベローズ31と、ステム7の上端部にピン23′を介して取り付けられ、ボンネット5内に摺動自在に収納されてステム7の上端部をボンネット5内で保持するホルダー32と、ベローズフランジ29とホルダー32との間に介設され、ホルダー32を介してステム7を上方へ附勢保持する開弁用の圧縮コイルスプリング33と、ホルダー32の上端部に螺着され、カム機構10のカム棒22の下端部が当接する押えボルト34と、ステム7の上方位置に配設され、ステム7を下降させるステッピングモータ9及びカム機構10から成るアクチュエータと、ボンネット5に設けられ、アクチュエータを昇降自在に支持する昇降支持機構11と、昇降支持機構11に設けられ、ステム7に対するアクチュエータの高さ位置を微調整する高さ微調整機構12とから構成されており、ステム7を駆動するアクチュエータを高さ微調整機構12により上下に微調整してアクチュエータの高さ位置を変えることによって、バルブの零点調整を行えるようにしたものである。
尚、カム式バルブ1の昇降支持機構11、アクチュエータ及び高さ微調整機構12以外の構成は、従来公知のものと同様構造に構成されているため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0023】
前記昇降支持機構11は、ステム7を駆動するアクチュエータをステム7の上方位置で昇降自在に支持するものであり、ボンネット5の外周面に嵌合固定されたフランジ14a付きの筒状の取付け台14と、取付け台14のフランジ14a上面にボルト15により立設され、上半分が下半分よりも小径に形成されてステム7と平行な段付きの左右のガイド軸16と、両ガイド軸16の小径部分に上下方向へ摺動自在に支持され、アクチュエータが取り付けられる前面が開放された箱状の昇降台17と、左右のガイド軸16の小径部分にボルト15により取り付けられ、両ガイド軸16の小径部分、アクチュエータ及び昇降台17を囲繞する収納ケース18と、ガイド軸16の下端部に架設され、アクチュエータのカム機構10を構成するカム棒22の下端部を上下方向へ摺動自在に挿通支持する振れ止め板19等から構成されている。
又、昇降支持機構11の収納ケース18は、箱状に組み立てられたカバープレート18aと、カバープレート18aの底部内面に昇降台17の下面に対向すべくビス20により固定され、カム機構10のカム棒22の上端部を上下方向へ摺動自在に挿通支持する底板18bと、カバープレート18aの天井部内面に昇降台17の上面に対向すべく固定された天井板18cとから成る。
【0024】
前記アクチュエータは、ステッピングモータ9及びカム機構10から成り、ステッピングモータ9の回転運動をカム機構10により上下方向の直線運動に変えてステム7に伝達するものである。
【0025】
即ち、ステッピングモータ9は、収納ケース18内に水平姿勢で収納されており、その出力軸9aがステム7と直交する姿勢になるように昇降台17に固定されている。この実施形態に於いては、ステッピングモータ9には、基本ステップ角が0.25度で励磁方法が1−2相励磁のときにステップ角が0.125度になる2相型のステッピングモータ9が使用されている。
【0026】
一方、カム機構10は、外周面がカム面21aに形成され、一側面に突設形成した支持軸21bが収納ケース18の底板18b上面に固定した軸受台35にベアリング35aを介して回転自在に支持されていると共に、他側面に突設形成した支持軸21bがカップリング36を介してステッピングモータ9の出力軸9aに連結された円盤状のカム板21と、収納ケース18の底板18b及び振れ止め板19に筒状のメタル37を介して上下方向へ摺動自在に挿通支持され、下端面が押えボルト34の頭部上面に当接するカム棒22と、カム棒22の二股状に形成した上端部にピン23を介して回転自在に支持され、カム板21のカム面21aに当接するカムローラ24とから成り、カム板21がステッピングモータ9により回転駆動されると、カム板21のカム面21aがカムローラ24を押圧してカム棒22、押えボルト34、ホルダー32及びステム7を下降させるようになっている。
又、カム板21のカム面21aは、0度〜200度の範囲では最小半径からその半径が漸増して最大半径になり、200度〜360度の範囲では最大半径のままになっている。
更に、カム板21は、360度回転しないように230度の付近にストッパー(図示省略)が取り付けられており、原点(0度)〜200度の間で正逆回転するようになっている。
【0027】
尚、図3及び図4に於いて、25は昇降台17にブラケット26を介して取り付けた全開位置検出用のフォトセンサー、27はカム板21に取り付けられ、フォトセンサーにより位置検出されるセンサープレートである。
【0028】
前記高さ微調整機構12は、アクチュエータの高さ位置を微調整してバルブの零点調整を行うものであり、収納ケース18の底板18bに上下方向へ移動調整自在に螺挿され、上端面が昇降台17の下面に当接して昇降台17を支持する二本の調整ネジ12aと、昇降台17の上面と収納ケース18の天井板18cとの間に介設され、昇降台17を下方へ押圧附勢して調整ネジ12aの上端面へ常時当接させる弾性体12b(圧縮コイルスプリング33)とから成る。
この高さ微調整機構12によれば、カム板21の最小半径部分がカムローラ24に当接している状態で二つの調整ネジ12aの締め込み量を調整してアクチュエータが取り付けられた昇降台17を上下方向に微調整し、アクチュエータの高さ位置を変えてカム機構10のカム棒22の下端面を最上位の位置にある押えボルト34の頭部上面へ当接させることによって、バルブの零点調整を行うことができる。即ち、バルブを全開位置へ調整することができる。
【0029】
而して、零点調整を行ったカム式バルブ1に於いては、カム板21の最小半径部分がカムローラ24に当接しているときには、開弁用の圧縮コイルスプリング33の弾性力によりステム7及びカム棒22等が最も上昇した状態となり、ステム7の下端部に設けた弁体30と弁座2dとが最も離間した全開位置となっている。
この状態でステッピングモータ9へ所定数のパルス入力信号が加えられると、ステッピングモータ9が入力パルス数に応じたステッピング回転を行い、これによりカム板21が所定の角度だけ回転する。
カム板21が回転すると、カムローラ24が下方へ押圧され、これによりカム棒22、押えボルト34、ホルダー32及びステム7が開弁用の圧縮コイルスプリング33の弾性力に抗して漸次下降する。その結果、ステム7の下端部に設けた弁体30と弁座2dとの間隔が狭くなり、流体の流量が制御されることになる。
【0030】
そして、ステム7が最下位の位置へ下降してステム7の下端部に設けた弁体30が弁座2dに当座したら、バルブが全閉状態になって流体の流通が完全に遮断される。
この状態でカム板21が反対方向に回転し、カム板21の最小半径部分がカムローラ24に対向すると、開弁用の圧縮コイルスプリング33の弾性力によりステム7及びカム棒22等を上方へ押し上げる。その結果、カム式バルブ1は、ステム7の下端部に設けた弁体30と弁座2dとが最も離間した全開位置となる。
【0031】
このカム式バルブ1に於いては、ステム7を駆動するアクチュエータを昇降支持機構11によりステム7に対して昇降自在に支持し、前記支持機構11に昇降台17を支持する調整ネジ12aと昇降台17を下方へ押圧附勢する弾性体12bとから成る高さ微調整機構12を設けているため、ダイヤフラム3が弁座2dへ当座した後は、アクチュエータを取り付けた昇降台17全体が上昇して弾性体12bを圧縮することになる。その結果、このカム式バルブ1に於いては、ダイヤフラム3が弁座2dへ過度に押し付けられると云うことがなく、弁体30や弁座2d等の損傷を防止することができると共に、バルブの全閉時に於ける流体の漏洩を確実に防止することができる。然も、バルブの各構成部品の加工精度や組立精度を高めなくても、バルブの全開時(全閉時)に弁体30及びステム7等を零点位置(全開位置又は全閉位置)へ正確に位置調整することができる。
又、このカム式バルブ1に於いては、バルブのボンネット5に設けた取付け台14にガイド軸16を立設し、このガイド軸16の上端部にアクチュエータが取り付けられる昇降台17を昇降自在に支持する構成としているため、アクチュエータがボディ2から離間した位置に配置されることになる。然も、このカム式バルブ1は、アクチュエータ及び昇降台17を収納ケース18で囲繞する構成としている。その結果、このカム式バルブ1を冷媒を取り扱う冷媒循環回路に介設しても、アクチュエータが冷媒の悪影響を受け難くなり、アクチュエータの延命化等を図れることになる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るカム式バルブ1は、主として半導体製造設備等の流体供給ラインやチラーユニットの冷媒循環回路に於いて利用されるが、その利用対象は上記半導体製造装置等に限定されるものではなく、化学産業や薬品産業、食品産業等の各種装置に於ける流体供給ライン等に於いても利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るステッピングモータ駆動型のカム式バルブ(カム式ダイヤフラムバルブ)の縦断正面図である。
【図2】図1に示すカム式バルブの縦断側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るステッピングモータ駆動型のカム式バルブ(カム式ベローズバルブ)の縦断正面図である。
【図4】図3に示すカム式バルブの縦断側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1はカム式バルブ、2はボディ、2aは流入通路、2bは流出通路、2cは弁室、2dは弁座、3はダイヤフラム、5はボンネット、7はステム、9はステッピングモータ、10はカム機構、11は昇降支持機構、12は高さ微調整機構、12aは調整ネジ、12bは弾性体、14は取付け台、16はガイド軸、17は昇降台、18は収納ケース、30は弁体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入通路(2a)、流出通路(2b)、弁室(2c)及び弁座(2d)を有するボディ(2)内にステム(7)を昇降自在に配設し、前記ステム(7)をステム(7)の上方位置に配設したステッピングモータ(9)及びステッピングモータ(9)の回転運動を直線運動に変えてステム(7)に伝達するカム機構(10)から成るアクチュエータにより下降させ、弁室(2c)内に配設したダイヤフラム(3)又はステム(7)の下端部に設けた弁体(30)を弁座(2d)へ当座させるようにしたステッピングモータ駆動型のカム式バルブ(1)に於いて、前記ボディ(2)の弁室(2c)を覆うボンネット(5)にアクチュエータを昇降自在に支持する昇降支持機構(11)を設け、当該昇降支持機構(11)にステム(7)に対するアクチュエータの高さ位置を微調整する高さ微調整機構(12)を設けたことを特徴とするカム式バルブ。
【請求項2】
昇降支持機構(11)が、ボンネット(5)に設けた取付け台(14)と、取付け台(14)にステム(7)と平行に立設したガイド軸(16)と、ガイド軸(16)の上端部に昇降自在に支持され、ステッピングモータ(9)及びカム機構(10)から成るアクチュエータが取り付けられる昇降台(17)と、ガイド軸(16)の上端部に取り付けられ、アクチュエータ及び昇降台(17)を囲繞する収納ケース(18)とから成り、又、高さ微調整機構(12)が、収納ケース(18)の底部に上下方向へ移動調整自在に螺挿され、上端面が昇降台(17)の下面に当接して昇降台(17)を支持する調整ネジ(12a)と、昇降台(17)の上面と収納ケース(18)の天井部との間に介設され、昇降台(17)を下方へ押圧附勢して調整ネジ(12a)の上端面へ常時当接させる弾性体(12b)とから成り、調整ネジ(12a)の締め込み量を調整することによって、アクチュエータを取り付けた昇降台(17)の高さを変え、ステム(7)に対するアクチュエータの高さ位置を微調整するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカム式バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−57594(P2008−57594A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232906(P2006−232906)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】