説明

カメラ装置

【課題】より広い画角を有し、好ましい画像を得ることができるカメラ装置を提供すること。
【解決手段】カメラ装置A1は、読取対象Bからの光を受光する受光手段1と、読取対象Bから受光手段1に至る光路L1上に配置されており、読取対象Bからの光を受光手段1に結像する結像手段2と、読取対象Bから結像手段2に至る光路L1上に配置されており、読取対象Bから入射してくる光を結像手段2に向けて出射する光学手段3と、を備えており、光学手段3は、光路L1が延びる方向と交差し、かつ、互いに直交する第1および第2の方向x,yのうち、第1の方向xにおいて、入射してきた光をより収束させて出射するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラや車載カメラとして利用可能な画角の広いカメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来のカメラ装置の一例を示している(たとえば特許文献1参照)。同図に示されたカメラ装置Xは、広角レンズ91と、撮像手段92と、カメラ信号処理回路93とを備えている。撮像手段92は、複数の光電変換素子を、広角レンズ91の歪特性に応じて歪曲した升目ごとに配置して形成されている。このような撮像手段92を用いることにより、カメラ装置Xでは、歪補正処理の簡略化が図られている。
【0003】
しかしながら、このような撮像手段92は、通常の非広角カメラで用いられるエリアセンサとの互換性を欠き、新たな生産設備を用意する必要があり、製造コストの増大が懸念されている。さらに、広角レンズ91は、製品ごとに歪特性の差異が生じることがあり、そのような場合、撮像手段92の複数の光電変換素子の配置を修正するのは困難であった。また、カメラ装置Xでは、全方位広角化しており、解像度劣化の度合いが大きくなっている問題もあった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−217022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より広い画角を有し、好ましい画像を得ることができるカメラ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供されるカメラ装置は、読取対象からの光を受光する受光手段と、上記読取対象から上記受光手段に至る光路上に配置されており、上記読取対象からの光を上記受光手段に結像する結像手段と、を備えたカメラ装置であって、上記読取対象から上記結像手段に至る光路上に配置されており、上記読取対象から入射してくる光を上記結像手段に向けて出射する光学手段を備えており、上記光学手段は、上記光路が延びる方向と交差し、かつ、互いに直交する第1および第2の方向のうち、上記第1の方向において、入射してきた光をより収束させて出射するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、上記第1の方向における画角をより広くすることができる。さらに、上記第2の方向において解像度劣化の度合いが比較的小さくなるためより好ましい画像を得ることができる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記光学手段は、上記第1の方向における中央が凹むシリンドリカル凹レンズである。このような構成によれば、比較的容易に上記第1の方向における画角をより広くすることができる。さらに、上記第2の方向においては解像度の劣化が生じにくく、好ましい画像を得ることができる。
【0009】
より好ましくは、上記シリンドリカル凹レンズと上記結像手段との間に、上記第1の方向において中央ほど厚く形成された補正用レンズが設置されている。このような構成によれば、上記シリンドリカル凹レンズの厚みの差による解像度劣化を好ましく補正することができる。従って、上記カメラ装置は、より好ましい画像を得ることができる。なお、上記補正用レンズは、たとえばアナモルフィックレンズが好ましい。
【0010】
本発明の別の好ましい実施の形態においては、上記光学手段は、上記第1の方向における中央部分が、上記光路が延びる方向において上記結像手段に近づくように突き出す凸面鏡であり、上記凸面鏡の曲率が、上記第1の方向において上記光路から遠ざかるにつれて徐々に小さくなっている。このような構成によれば、上記凸面鏡による反射により、上記第1の方向における画角をより広くすることができる。さらに、上記凸面鏡の曲率は上記第1の方向の端部ほど小さくなっているため、上記凸面鏡の反射による像の上記第1の方向尺度はより均一化されている。このため上記カメラ装置は、より広い画角を有し、歪みの小さな好ましい画像を得ることができる。
【0011】
より好ましくは、上記第2の方向において、上記結像手段が上記凸面鏡と重ならない位置に設置されている。このような構成によれば、上記結像手段が上記凸面鏡に映り、得られる画像に上記結像手段が写り込むのを避けることができる。従って、このカメラ装置はより好ましい画像を得ることができる。
【0012】
さらにより好ましくは、上記凸面鏡の曲率が、上記第2の方向において上記結像手段に近いほど大きくなっている。このような構成によれば、上記結像手段が上記第2の方向において上記凸面鏡と重ならない位置にあることにより生ずる上記第2の方向における尺度の不均一を解消することができる。従って、このカメラ装置はより好ましい画像を得ることができる。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1および図2は、本発明に係るカメラ装置の第1実施形態を示す互いに異なる方向の断面図である。図1では互いに直交するx方向およびz方向を示しており、図2は、x方向に対して直交するy方向およびz方向を示している。図1および図2に示すカメラ装置A1は、受光手段1、結像手段2、光学手段3、補正用レンズ4、レンズホルダ5、ケース6、および、基板7を備えている。図1および図2には、読取対象Bからの光がz方向に平行な光軸L1に沿って進行する様子を示している。受光手段1、結像手段2、光学手段3および補正用レンズ4は、光軸L1上に配置されている。
【0015】
受光手段1は、x,y方向に沿って碁盤目状に規則正しく配置された複数の光電変換素子によって構成されている。この受光手段1では、y方向に沿って並ぶ光電変換素子の数よりもx方向に沿って並ぶ光電変換素子の数の方が多くなっている。
【0016】
結像手段2は、たとえば、入射角が25°以内の光に対して歪みの小さい好ましい像を形成なレンズであり、レンズホルダ5に保持されている。この結像手段2は、光学手段3および補正用レンズ4を経た読取対象Bからの光を受光手段1に結像させる。
【0017】
光学手段3は、x方向における中央が凹むように形成されたシリンドリカル凹レンズである。この光学手段3に入射した光は、x方向にのみ収束されて出射される。このため、図1に示すように、x方向においてより広い範囲からの光を、結像手段2に入射角が25°以内で入射させることが可能となっている。
【0018】
補正用レンズ4は、光学手段3と結像手段2との間に設置されており、x方向において中央ほど厚く形成されている。この補正用レンズ4は、たとえばアナモルフィックレンズである。
【0019】
ケース6は、箱状であり、z方向において読取対象B寄りの端部にレンズホルダ5が連結されており、反対側の端部に基板7を保持している。基板7には、受光手段1および受光手段1からの信号を処理するための信号処理手段(図示略)が搭載されている。
【0020】
次に、このようなカメラ装置A1の作用について説明する。
【0021】
本実施形態によれば、光学手段3によってx方向においてより広い範囲から光を集めることができるため、広角レンズを用いることなく、x方向における画角を広げることが可能となる。さらに、広角レンズを用いていないため、得られる画像に歪が生じにくくなっている。このようなカメラ装置A1は、たとえば歩道を歩く人々を広範囲に撮影する監視カメラに用いるのに適している。
【0022】
さらに、本実施形態では、z方向視において中央が凹む光学手段3と重なるように中央が厚く形成された補正用レンズ4が設置されているため、レンズの厚みの差による解像度劣化が抑制される。このため、カメラ装置A1は、より好ましい画像を得ることができる。
【0023】
図3〜図7は、本発明にかかるカメラ装置の第2実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。図3に示すカメラ装置A2では、開口部8aを有する外ケース8内に、光学手段3、レンズホルダ5およびケース6が収容されている。このカメラ装置A2における光学手段3は、図4〜図7に示す凸面鏡である。また、カメラ装置A2では、レンズホルダ5およびケース6のy方向における位置は、光学手段3のy方向における位置からずらされている。
【0024】
このカメラ装置A2においては、光軸L1に沿って光学手段3に入射した光は、光学手段3に反射され光軸L2に沿ってレンズホルダ5に保持された結像手段2(図示略)に入射している。なお、光軸L1,L2は、x方向において光学手段3の中央と交差している。
【0025】
光学手段3は、図4に示すようにxy平面視において台形状に形成されている。なお、y方向においてレンズホルダ5およびケース6に近いほど光学手段3のx方向長さは短くなっている。さらに、光学手段3は、図3に示すように、x方向中央におけるz方向厚みがy方向の全長に渡って一定となるように形成されている。このため、図5〜図7に示すように、光学手段3の曲率は、y方向においてレンズホルダ5およびケース6に近いほど大きくなっている。またさらに、光学手段3は、x方向において、中央から遠ざかるほどその曲率が小さくなるように形成されている。
【0026】
このようなカメラ装置A2では、光学手段3の凸面に映った像を結像手段2(図示略)により受光手段1(図示略)に結像させる構成となっている。このため、カメラ装置A1と同様に、広角レンズを用いずに、x方向における画角を広げることが可能となっている。さらに、広角レンズを用いていないため、カメラ装置A2で得られる画像には歪が生じにくくなっている。
【0027】
さらに本実施形態によれば、光学手段3の凸面は、x方向において、中央から遠ざかるほどその曲率が小さくなるように形成されているため、x方向における尺度が均一化されやすくなっている。このため、より好ましい画像を得ることができる。
【0028】
またさらに本実施形態によれば、レンズホルダ5およびケース6のy方向における位置は光学手段3のy方向における位置とずれているため、得られる画像にレンズホルダ5およびケース6が写り込むことはない。さらに、光学手段3の曲率は、y方向においてレンズホルダ5およびケース6に近いほど大きくなっているため、レンズホルダ5およびケース6と光学手段3とのy方向におけるずれにより生じる寸法のずれを修正することができる。従って、カメラ装置A2は、歪がなく、x,y方向における尺度も一定な好ましい画像を得ることができる。
【0029】
さらに、カメラ装置A2では、光学手段3の曲率を大きくすることにより、180°以上の画角を実現することも可能である。
【0030】
さらに、カメラ装置A2では、鏡面反射による広角化を図っており、波長依存性がないため、レンズによる広角化の場合に生じるような色収差が生じない。従って、より好ましい画像を得ることができる。
【0031】
図8および図9は、本発明にかかるカメラ装置の第3実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。図8および図9に示すカメラ装置A3における光学手段3は、x,y方向に対して45°傾斜する斜面31aを有する三角柱31と、斜面31aに設けられた凸面鏡32とを備えている。このカメラ装置A3では、z方向に沿って延びる光軸L1に沿って凸面鏡32に入射した光は、y方向に沿って延びる光軸L2に沿って反射されて下方のレンズホルダ5に保持された結像レンズ2に入射する。
【0032】
図8に示すように、凸面鏡32は、y方向において下方ほどx方向に短くなるように形成されている。さらに、図9に示すように、凸面鏡32のx方向中央の斜面31aと直交する方向における厚みは、斜面31aと平行な方向に沿って一定となっている。このため凸面鏡32の曲率は、y方向における下方ほど大きくなっている。またさらに、凸面鏡32は、x方向において、中央から遠ざかるほどその曲率が小さくなるように形成されている。
【0033】
このようなカメラ装置A3では、凸面鏡32に映った像を結像手段2により受光手段1に結像させる構成となっている。このため、カメラ装置A1およびA2と同様に、広角レンズを用いずに、x方向における画角を広げることが可能となっている。さらに、広角レンズを用いていないため、カメラ装置A3で得られる画像には歪が生じにくくなっている。
【0034】
さらに本実施形態によれば、凸面鏡32は、x方向において、中央から遠ざかるほどその曲率が小さくなるように形成されているため、x方向における尺度が均一化されやすくなっている。このため、より好ましい画像を得ることができる。
【0035】
またさらに本実施形態によれば、レンズホルダ5およびケース6はy方向において凸面鏡32の下方に設置されているため、得られる画像にレンズホルダ5およびケース6が写り込むことはない。さらに、凸面鏡32の曲率は、y方向における下方ほど大きくなっているため、凸面鏡32が上方ほど結像手段2から遠ざかる形状であることにより生じる寸法のずれを修正することができる。従って、カメラ装置A3は、歪がなく、x,y方向における尺度も一定な好ましい画像を得ることができる。
【0036】
さらに、カメラ装置A3では、凸面鏡32の曲率を大きくすることにより、180°以上の画角を実現することも可能である。
【0037】
さらに、カメラ装置A3では、カメラ装置A2と同様に、鏡面反射による広角化を図っており、波長依存性がないため、レンズによる広角化の場合に生じるような色収差が生じない。従って、より好ましい画像を得ることができる
【0038】
本発明に係るカメラ装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るカメラ装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、上記第1実施形態においては、光学手段3としてシリンドリカル凹レンズのかわりにフレネルレンズを用いてもよい。この場合、補正用レンズ4を省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にかかるカメラ装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すカメラ装置の別方向からの断面図である。
【図3】本発明にかかるカメラ装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図4】図3に示すカメラ装置における光学手段を示す平面図である。
【図5】図4のV-V線に沿う断面における光の反射を示す図である。
【図6】図4のVI-VI線に沿う断面における光の反射を示す図である。
【図7】図4のVII-VII線に沿う断面における光の反射を示す図である。
【図8】本発明にかかるカメラ装置の第3実施形態を示す要部平面図である。
【図9】図8のIX-IX線に沿う断面図である。
【図10】従来のカメラ装置の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0040】
A1,A2,A3 カメラ装置
B 読取対象物
L1,L2 光軸
x,y,z 方向
1 受光手段
2 結像手段
3 光学手段
4 補正用レンズ
5 レンズホルダ
6 ケース
7 基板
8 外ケース
8a 開口部
31 三角柱
31a 斜面
32 凸面鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象からの光を受光する受光手段と、
上記読取対象から上記受光手段に至る光路上に配置されており、上記読取対象からの光を上記受光手段に結像する結像手段と、
を備えたカメラ装置であって、
上記読取対象から上記結像手段に至る光路上に配置されており、上記読取対象から入射してくる光を上記結像手段に向けて出射する光学手段を備えており、
上記光学手段は、上記光路が延びる方向と交差し、かつ、互いに直交する第1および第2の方向のうち、上記第1の方向において、入射してきた光をより収束させて出射するように構成されていることを特徴とする、カメラ装置。
【請求項2】
上記光学手段は、上記第1の方向における中央が凹むシリンドリカル凹レンズである、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項3】
上記シリンドリカル凹レンズと上記結像手段との間に、上記第1の方向において中央ほど厚く形成された補正用レンズが設置されている、請求項2に記載のカメラ装置。
【請求項4】
上記光学手段は、上記第1の方向における中央部分が、上記光路が延びる方向において上記結像手段に近づくように突き出す凸面鏡であり、上記凸面鏡の曲率が、上記第1の方向において上記光路から遠ざかるにつれて徐々に小さくなっている、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項5】
上記第2の方向において、上記結像手段が上記凸面鏡と重ならない位置に設置されている、請求項4に記載のカメラ装置。
【請求項6】
上記凸面鏡の曲率が、上記第2の方向において上記結像手段に近いほど大きくなっている、請求項5に記載のカメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−128435(P2010−128435A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306195(P2008−306195)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】