説明

カラー画像形成装置、色ずれ補正方法及びプログラム

【課題】中間転写体に形成された色合わせ用パターン画像を光センサで検出して色ずれ補正を行う際に、拡散反射光の影響を考慮した、より高精度な色ずれ補正を可能とする。
【解決手段】カラー画像形成装置は、各色の画像の色合わせを行うためのパターン画像が形成された中間転写体からの反射光を光センサで受光し、光センサの出力信号の最大ピークに基づいて、パターン画像の形成位置を読み取る。また、カラー画像形成装置は、出力信号の最大ピークを基準とした前後の波形の偏りを解析し、解析された波形の偏りに基づいて、偏りを解消するように、読み取られたパターン画像の形成位置を補正し、補正されたパターン画像の形成位置に基づいて各色の画像の形成位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像形成装置、色ずれ補正方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるタンデム方式のカラー画像形成装置では、中間転写体としての無端状の転写ベルトに沿って複数の感光体等の像担持体を並設し、各像担持体ごとにイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)などの各色に対応した静電潜像を形成し、現像などの電子写真プロセスが実行される。そして、各像担持体上の互いに異なる色のトナー画像が転写媒体に形成されて、最終的に用紙上にカラー画像が形成される。
【0003】
このようなカラー画像形成装置では、中間転写体に形成する各色のトナー画像間に位置ずれある場合、用紙に形成されるカラー画像に色ずれが生じるため、高品位なカラー画像を得ることができない。したがって、カラー画像形成装置では、中間転写体における、各色のトナー画像の形成位置について、正確に位置合わせを行うための色ずれ補正が行われている。この色ずれ補正に関する有用な従来技術としては、特許文献1、2が知られている。
【0004】
特許文献1、2では、色ずれ補正用の各色のパターン画像(色合わせ用パターン画像)を中間転写体に形成した後に、光センサを介してそのパターン画像を読みとり、読み取られたパターン画像に基づいて基準色からの位置ずれ量を演算している。次いで、演算された位置ずれ量に基づいて、基準色以外の色画像の形成位置を、基準色とのずれが無くなるように補正している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
色ずれ補正を行う際の光センサでは、光源からの光が色合わせ用パターン画像で反射した光(以下、「正反射光」という)の他に、光源からの光が色合わせ用パターン画像で拡散した光(以下、「拡散反射光」という)も検出される。しかしながら、上記従来技術では、拡散反射光の影響を考慮した色ずれ補正が行われてはおらず、より高精度な色ずれ補正を行うには十分では無かった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、中間転写体に形成された色合わせ用パターン画像を光センサで検出して色ずれ補正を行う際に、拡散反射光の影響を考慮した、より高精度な色ずれ補正を可能とするカラー画像形成装置、色ずれ補正方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、互いに異なる色の画像を形成する複数の像形成手段を備え、これらが形成する各色の画像を中間転写体に形成し、当該中間転写体に形成した各色の画像を用紙に転写してカラー画像を形成するカラー画像形成装置において、前記各色の画像の色合わせを行うためのパターン画像が形成された中間転写体からの反射光を光センサで受光し、前記光センサの出力信号の最大ピークに基づいて、前記パターン画像の形成位置を読み取る読み取り手段と、前記出力信号の最大ピークを基準とした前後の波形の偏りを解析する解析手段と、前記解析された波形の偏りに基づいて、当該偏りを解消するように、前記読み取られたパターン画像の形成位置を補正する位置補正手段と、前記位置補正手段により補正されたパターン画像の形成位置に基づいて、前記複数の像形成手段が形成する各色の画像の形成位置を補正する色ずれ補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、互いに異なる色の画像を形成する複数の像形成手段を備え、これらが形成する各色の画像を中間転写体に形成し、当該中間転写体に形成した各色の画像を用紙に転写してカラー画像を形成するカラー画像形成装置の色ずれ補正方法であって、前記各色の画像の色合わせを行うためのパターン画像が形成された中間転写体からの反射光を光センサで受光し、前記光センサの出力信号の最大ピークに基づいて、前記パターン画像の形成位置を読み取る読み取り工程と、前記出力信号の最大ピークを基準とした前後の波形の偏りを解析する解析工程と、前記解析された波形の偏りに基づいて、当該偏りを解消するように、前記読み取られたパターン画像の形成位置を補正する位置補正工程と、前記位置補正工程により補正されたパターン画像の形成位置に基づいて、前記複数の像形成手段が形成する各色の画像の形成位置を補正する色ずれ補正工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、互いに異なる色の画像を形成する複数の像形成手段を備え、これらが形成する各色の画像を中間転写体に形成し、当該中間転写体に形成した各色の画像を用紙に転写してカラー画像を形成するカラー画像形成装置のコンピュータに、前記各色の画像の色合わせを行うためのパターン画像が形成された中間転写体からの反射光を光センサで受光し、前記光センサの出力信号の最大ピークに基づいて、前記パターン画像の形成位置を読み取る読み取りステップと、前記出力信号の最大ピークを基準とした前後の波形の偏りを解析する解析ステップと、前記解析された波形の偏りに基づいて、当該偏りを解消するように、前記読み取られたパターン画像の形成位置を補正する位置補正ステップと、前記位置補正ステップにより補正されたパターン画像の形成位置に基づいて、前記複数の像形成手段が形成する各色の画像の形成位置を補正する色ずれ補正ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中間転写体に形成された色合わせ用パターン画像を光センサで検出して色ずれ補正を行う際に、拡散反射光の影響を考慮した、より高精度な色ずれ補正を可能とする、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るカラー画像形成装置の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図2】図2は、中間転写ベルトに形成される色合わせ用パターン画像を例示する図である。
【図3】図3は、色合わせ用パターン画像を検出した際の光センサからの出力信号を例示する図である。
【図4】図4は、色合わせ用パターン画像を検出した光センサ出力信号について、最大ピークの前後における波形の偏り具合の解析を説明する図である。
【図5】図5は、色ずれ補正処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、第2の実施形態に係るカラー画像形成装置の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるカラー画像形成装置の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態にかかるカラー画像形成装置1の全体構成を説明する側面概略構成図である。図1に示すように、カラー画像形成装置1は、電子写真によるタンデム方式のもので、概略的には、像担持体である4つのドラム状の感光体ドラム2Y(イエロー),2C(シアン),2M(マゼンダ),2K(ブラック)と、その感光体ドラム2Y,2C,2M,2K上の静電潜像を現像ユニット3Y,3C,3M,3Kにより現像することにより形成されるトナー画像を、一次転写装置4Y,4C,4M,4Kにより転写媒体としての中間転写ベルト5L上に順次転写し、その中間転写ベルト5L上の画像を二次転写装置6Lにより転写体である用紙P上に一括転写する間接転写方式を採用したものである。
【0014】
中間転写ベルト5Lは、無端状のベルトであって、複数のローラ10L〜13Lによって張架されており、ローラ10L〜13Lのいずれかの軸に連結されたモータ(図示しない)により一定速度で回動方向(副走査方向)D1に駆動される。中間転写ベルト5Lおよび中間転写ベルト5Lの駆動部(モータおよびローラ10L〜13Lなど)により、中間転写ユニットが構成されている。このような中間転写ベルト5Lの上部側には、その中間転写ベルト5Lの回動方向D1に沿って、ブラック、マゼンダ、シアン、イエローの各色用に4個の上述した感光体ドラム2K,2M,2C,2Yを、並列にそれぞれ配置している。
【0015】
感光体ドラム2K,2M,2C,2Yの周回には、帯電装置7K,7M,7C,7Yと、前述した現像ユニット3K,3M,3C,3Yと、一次転写装置4K,4M,4C,4Yと、ブレードやブラシ等で構成されるクリーニング装置8K,8M,8C,8Yと、除電装置9K,9M,9C,9Yとがそれぞれ配設されている。
【0016】
一次転写装置4K,4M,4C,4Yは、中間転写ベルト5Lを挟んで感光体ドラム2K,2M,2C,2Yにそれぞれ対向配置されている。すなわち、中間転写ベルト5Lは、各一次転写装置4K,4M,4C,4Yと感光体ドラム2K,2M,2C,2Yとの間には挟まれた状態で回動するようになっている。
【0017】
感光体ドラム2K,2M,2C,2Yは、回転方向D2に回転駆動され、このとき帯電装置7K,7M,7C,7Yによって感光体ドラム2K,2M,2C,2Yの表面が所定の極性に帯電される。次いで、感光体ドラム2K,2M,2C,2Yの帯電面に、LD、LED、EL等による光書き込みユニットである光ビーム走査装置16Lから画像データに応じたレーザ光が照射されることによって、感光体ドラム2K,2M,2C,2Yに静電潜像が形成される。なお、このレーザ光の照射に係る画像データは、制御部20の制御の下で光ビーム走査装置16Lに入力されるデータであり、制御部20や図示しない画像処理用DSP(Digital Signal Processor)などにより所定の画像処理が施されている。このようにして形成された静電潜像は、現像ユニット3K,3M,3C,3Yにより各色のトナー像にそれぞれ現像されて可視像化される。
【0018】
このようにして現像された感光体ドラム2K,2M,2C,2Y上のブラック、マゼンダ、シアン、イエローのトナー像は、一次転写装置4K,4M,4C,4Yの作用によって中間転写ベルト5Lの表面に順次重ね合わされた状態で転写されていき、フルカラーの合成カラー画像が形成される。
【0019】
なお、感光体ドラム2K,2M,2C,2Yは、感光体ドラム2K,2M,2C,2Y上に残っているトナー像をクリーニング装置8K,8M,8C,8Yによりクリーニングされた後、除電装置9K,9M,9C,9Yにより除電される。
【0020】
二次転写装置6Lは、中間転写ベルト5Lを挟んでローラ12Lに対向配置されている。このようなローラ12L(中間転写ベルト5L)と二次転写装置6Lの間には、制御部20の制御の下、給紙ユニット(図示しない)から給紙された用紙Pが所定のタイミングで送り込まれる。ローラ12L(中間転写ベルト5L)と二次転写装置6Lの間に用紙Pが紙搬送方向D3に向けて送り込まれると、中間転写ベルト5Lに担持されている合成カラー画像が二次転写装置6Lの作用により用紙Pに一括して転写される。
【0021】
その後、用紙P上の合成カラー画像は、定着装置14Lにより熱と圧力によって定着され、排紙トレイ(図示しない)上に排出される。一方、合成カラー画像の転写後の中間転写ベルト5Lの表面に付着する転写残トナーは、クリーニング装置15Lによって除去される。
【0022】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)やマイクロコントローラなどであり、カラー画像形成装置1の全体制御を司る。記憶部21は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)などであり、制御部20の制御にかかるデータ、例えばプログラムや各種設定情報を書き換え可能に格納する。
【0023】
光センサ22は、光源(図示しない)から中間転写ベルト5Lに照射した光が、中間転写ベルト5Lで反射又は拡散した光を検出するフォトトランジスタなどである。光センサ22において、中間転写ベルト5Lからの光を検出した信号は制御部20に出力される。光センサ22は、後述する色ずれ補正処理において、中間転写ベルト5L上に形成された色合わせ用パターン画像(トナー像)を検出する。なお、光センサ22は、中間転写ベルト5Lの主走査方向(回動方向と直交する)において、複数個設けられてもよい。この場合は、主走査方向の各位置に設けられた光センサ22から色合わせ用パターン画像を検出することで、傾き補正も行うことができる。
【0024】
制御部20は、記憶部21に記憶されたプログラムを内部RAM(Random Access Memory)に展開して順次実行することで、カラー画像形成装置1の各部に制御信号を出力してカラー画像形成装置1の全体制御を行う。例えば、カラー画像形成装置1では、制御部20の制御の下、上述した用紙Pへのカラー画像の形成が行われる。このカラー画像の形成に際し、制御部20は、記憶部21に格納された色ずれ補正に係る設定情報を読み出し、その設定情報に基づいて光ビーム走査装置16Lが感光体ドラム2K,2M,2C,2Yに静電潜像を形成するタイミングを制御している。したがって、カラー画像形成装置1では、色ずれの無いカラー画像を用紙Pへ形成できる。
【0025】
また、カラー画像形成装置1では、制御部20の制御の下、ブラック、マゼンダ、シアン、イエローの各色が互いにずれること無く用紙Pに形成されるよう、上述した色ずれ補正に係る設定情報を記憶部21に設定する色ずれ補正を行う。より具体的には、カラー画像形成装置1では、制御部20の制御の下、ブラック、マゼンダ、シアン、イエローの各色の色合わせ用パターン画像を中間転写ベルト5Lに形成し、光センサ22からの出力信号に基づいて各色の色合わせ用パターン画像の形成位置を検出する。そして、制御部20は、中間転写ベルト5Lに形成された各色の色合わせ用パターン画像の相対的な位置関係から、色ずれが生じないように各色のトナー像が形成されるよう、光ビーム走査装置16Lが感光体ドラム2K,2M,2C,2Yのそれぞれに静電潜像を形成するタイミングを補正するための色ずれ補正に係る設定情報を算出し、算出した設定情報を記憶部21に格納する。
【0026】
図2は、中間転写ベルト5Lに形成される色合わせ用パターン画像を例示する図である。色ずれ補正時には、例えば図2に示すように、イエロー(Y)、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンダ(M)を1セットとした色合わせ用パターン画像が中間転写ベルト5Lの主走査方向にn個形成される。制御部20は、1セット分の色合わせ用パターン画像を光センサ22で検出した際の光センサ22からの出力信号に基づいて、基準となる色のパターン画像と他の色のパターン画像との形成位置のずれを検出し、検出したずれを画像形成のタイミングに換算することで、色ずれ補正に係る設定情報を算出する。
【0027】
例えば基準となる色をBkとする場合は、BkとYとの距離を示すFRy1…FRynにより、Bkに対するYのずれを画像形成のタイミングに換算し、Yの画像を形成するタイミングを、Bkの画像を形成するタイミングに合わせる色ずれ補正係る設定情報を算出する(Y用)。また、BkとCとの距離を示すFRc1…FRcnにより、Bkに対するCのずれを画像形成のタイミングに換算し、Cの画像を形成するタイミングを、Bkの画像を形成するタイミングに合わせる色ずれ補正係る設定情報を算出する(C用)。また、BkとMとの距離を示すFRm1…FRmnにより、Bkに対するMのずれを画像形成のタイミングに換算し、Mの画像を形成するタイミングを、Bkの画像を形成するタイミングに合わせる色ずれ補正係る設定情報を算出する(M用)。このY、C、M用の色ずれ補正に係る設定情報に基づいて、Y、C、Mの画像形成を行うことで、基準となるBkに対する色ずれが補正されることとなる。
【0028】
図3は、色合わせ用パターン画像を検出した際の光センサ22からの出力信号を例示する図である。図3に示すように、色合わせ用パターン画像を検出した際の光センサ22からの光センサ出力信号P1には、光源からの光が色合わせ用パターン画像で反射した正反射光成分P2の他に、光源からの光が色合わせ用パターン画像で拡散した拡散反射光成分P3が含まれている。
【0029】
色合わせ用パターン画像を検出した場合、正反射光成分P2のピーク位置が色合わせ用パターン画像の位置に対応している。また、拡散反射光成分P3も正反射光成分P2と同様なピークを示す。しかしながら、色合わせ用パターン画像の位置に対応したピークについては、拡散反射光成分P3より正反射光成分P2の方が支配的な成分である。したがって、光センサ出力信号P1における最大ピークの位置(正反射光成分P2のピーク位置)を検出することで、色合わせ用パターン画像の位置が検出可能である。
【0030】
また、各種誤差要因により、焦点距離変動、あおり、スキューが発生することで正反射光成分P2と拡散反射光成分P3とのピーク位置がずれる、スポットずれが生じることがある。図3において、R1はスポットずれが生じていない場合、R2は正反射光成分P2のピークに対して拡散反射光成分P3のピークが前にずれたスポットずれの場合、R3は正反射光成分P2のピークに対して拡散反射光成分P3のピークが後にずれたスポットずれの場合を示す。
【0031】
R1のように、スポットずれが無い場合は、正反射光成分P2と拡散反射光成分P3とのピーク位置が一致しているため、光センサ出力信号P1の最大ピークの位置に対して、前後の波形が偏りのない、ほぼ対称な形となる。なお、光センサ出力信号P1の最大ピークに対する前後の波形については、正反射光成分P2より拡散反射光成分P3の方が支配的な成分である。これに対して、R2、R3のようにスポットずれが有る場合は、正反射光成分P2と拡散反射光成分P3とのピーク位置が一致していないため、光センサ出力信号P1の最大ピークの位置(正反射光成分P2のピーク位置)に対して、前後の波形が対称な形とはならず、拡散反射光成分P3により偏りのある波形となる。
【0032】
上述したように、各種誤差要因によるスポットずれが生じている場合に、光センサ出力信号P1における最大ピークの位置から色合わせ用パターン画像の位置を検出すると、光センサ出力信号P1において支配的な成分である正反射光成分P2のみで色合わせ用パターン画像の形成位置を検出したこととなる。このようにして検出された色合わせ用パターン画像から色ずれ補正を行うと、スポットずれ分の誤差を含んだ色ずれ補正が行われることとなる。
【0033】
本実施形態では、色合わせ用パターン画像を検出した際の、光センサ出力信号P1の最大ピークの位置に対し、拡散反射光成分P3が支配的な成分である前後の波形の偏り具合を解析し、スポットずれ分の誤差を補正するための補正量を算出する。次いで、光センサ出力信号P1における最大ピークの位置から検出した色合わせ用パターン画像の位置を、波形の偏り具合から算出した補正量で補正することで、スポットずれ分の誤差を解消している。すなわち、拡散反射光成分P3の影響を考慮した、より高精度な色ずれ補正を可能としている。
【0034】
なお、ブラックは拡散反射光の影響を受けにくい。したがって、イエロー、シアン、マゼンダに関する色合わせ用パターン画像を検出する場合にのみ、上述した拡散反射光成分P3の影響を考慮した色ずれ補正を行うものとする。
【0035】
図4は、色合わせ用パターン画像を検出した光センサ出力信号について、最大ピークC5の前後における波形の偏り具合の解析を説明する図である。図4に示すように、色合わせ用パターン画像を検出した光センサ出力信号には、正反射光成分のピークに対応した最大ピークC5の前後の波形のそれぞれにおいて、第2のピークが現れる。この第2のピークは拡散反射光成分が支配的な成分である。この最大ピークC5の前後の波形におけるピーク(前の波形におけるピークを第1のピーク、後の波形におけるピークを第2のピークとする)の最大電圧値をA、Bとする。
【0036】
前述したとおり、スポットずれが無い場合は最大ピークC5に対する前後の波形がほぼ対称な形となることから、スポットずれが無い場合における第1、第2のピークの最大電圧値(Vave)は、次の(1)式のとおりに見込まれる。
(1):Vave=(A−B)/2
【0037】
また、最大ピークC5の前後における波形の立ち下がり及び立ち上がりの傾きをF1、F2とし、最大ピークC5の前の立ち下がりにおいて所定の傾き算出基準電圧値A2、B2と交わる点をC1、C2とし、最大ピークC5の後の立ち上がりにおいて傾き算出基準電圧値A2、B2と交わる点をC3、C4とする。なお、傾き算出基準電圧値A2、B2は、A2−B2=Δ1Vの関係があるとする。
【0038】
上述したF1、F2のそれぞれは、次の式(2)、(3)のとおりとなる。
(2):F1=−1/(C2−C1)
(3):F2= 1/(C4−C3)
【0039】
式(1)によるVave及び式(2)、(3)によるF1、F2から、最大ピークC5の前後における補正時間(T1、T2)は次の式(4)、(5)のとおりとなる。
(4):T1=(A−B)×(C2−C1)/2
(5):T2=(A−B)×(C4−C3)/2
【0040】
したがって、スポットずれ分の誤差を補正するための補正量T(この場合はスポットずれ分の誤差を画像形成のタイミングで換算した補正時間)は、次の式(6)のとおりである。
(6):T=d×(T1+T2)/2(dは所定の補正係数)
【0041】
よって、カラー画像形成装置1では、光センサ出力信号の最大ピークから色合わせ用パターン画像の位置を検出して色ずれ補正を行う際に、式(1)〜(6)により算出された補正量Tを用いて色画像を形成するタイミングを補正することで、拡散反射光成分の影響を考慮してスポットずれ分の誤差を解消した、より高精度な色ずれ補正を行うことができる。
【0042】
ここで、カラー画像形成装置1が制御部20の制御の下で行う色ずれ補正処理について、図5を参照して説明する。図5は、色ずれ補正処理を示すフローチャートである。
【0043】
色ずれ補正処理が開始されると、制御部20は、中間転写ベルト5Lに色合わせ用パターン画像を形成して色ずれ補正をnセット行うためのループ処理を開始する(S10〜S20)。カラー画像形成装置1では、上述したnセットのループ処理を行い、nセット分の色ずれ補正で取得した補正値の平均をとることで、精度の高い色ずれ補正を行うことができる。
【0044】
ループ処理の開始により、制御部20は、色合わせ用パターン画像を中間転写ベルト5L上に形成し(S11)、中間転写ベルト5Lに形成した色合わせ用パターン画像を光センサ22により検出する(S12)。
【0045】
次いで、制御部20は、S12において色合わせ用パターン画像を検出した際の光センサ22の出力信号から前述した最大電圧値A、Bを検出する(S13)。具体的には、S13では、光センサ22の出力信号の最大ピークの前後にある第1、2のピークの最大電圧値を検出する。
【0046】
次いで、制御部20は、最大電圧値A、Bが正常に検出されたか否かを判定する(S14)。具体的には、S14では、最大電圧値A、Bが予め設定された所定値以上である場合には正常に検出され、所定値未満である場合には正常に検出されていないものと判定する。
【0047】
これは、第1、2のピークは拡散反射光成分が支配的な成分であるため、最大電圧値A、Bが所定値未満の場合は、このループの光センサ22の出力信号における拡散反射光成分の影響が少ないか、その検出に失敗したものとし、このループの光センサ22の出力信号において、拡散反射光成分の影響を考慮した色ずれ補正を行わないようにするためである。同様に、S14では、最大電圧値A、Bの差が予め設定された所定値未満である場合には正常に検出され、所定値未満である場合には正常に検出されていないものと判定してもよい。
【0048】
S14において正常に検出された場合(YES)、制御部20は、S12において色合わせ用パターン画像を検出した際の光センサ22の出力信号について、最大ピークの前後における立ち下がり及び立ち上がりの傾き(前述したF1、F2に該当)を算出する(S15)。
【0049】
次いで、制御部20は、S13で検出した最大電圧値A、Bと、S15で算出した傾きとに基づいて、S12で光センサ22が検出したピークの中心位置(色合わせ用パターン画像の位置)を補正する中心位置補正値(前述した補正量Tに該当)を算出し(S16)、算出した中心位置補正値を記憶部21に格納する(S17)。
【0050】
次いで、制御部20は、S12で光センサ22が検出したピークの中心位置を記憶部21に格納されている中心位置補正値を元に補正する。すなわち、拡散反射光成分の影響を考慮してスポットずれ分の誤差を解消した、より高精度な色ずれ補正を行う。
【0051】
なお、S14において正常に検出されなかった場合(NO)、制御部20は、記憶部21に格納されている中心位置補正値を読み出し(S18)、その読み出した中心位置補正値を元に、S12で光センサ22が検出したピークの中心位置を補正する(S19)。すなわち、今回のループにおいて最大電圧値A、Bが正常に検出されなかった場合は、今回のループでは中心位置補正値の算出を行わない代わりに、以前のループの光センサ22の出力信号で算出した中心位置補正値、すなわち、直近に算出された中心位置補正値を元に、拡散反射光成分の影響を考慮した色ずれ補正を行う。このように、以前のセットで算出された直近の中心位置補正値を用いることで、常に高精度な色ずれ補正を行うことができる。
【0052】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態にかかるカラー画像形成装置について図6、7を参照して説明する。図6は、第2の実施形態に係るカラー画像形成装置の動作を示すフローチャートである。図7は、第2の実施形態に係るカラー画像形成装置1aの全体構成を説明する側面概略構成図である。なお、前述した第1の実施形態と同一の要素については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0053】
図6に示すように、第2の実施形態に係るカラー画像形成装置において、制御部20は、記憶部21などのカウンタでカウントされた中間転写ベルト5Lの回転数(使用履歴)が予め設定された所定の回転数に達したか否かを判定し(S30)、所定の回転数に達した場合(YES)は前述した色ずれ補正処理を行う(S34)。これにより、例えば中間転写ベルト5Lが500回転する度に色ずれ補正処理を行うことができ、用紙へのカラー画像形成を常に高品位な状態に維持することが可能となる。
【0054】
また、S30:NOの場合、制御部20は、記憶部21などのカウンタでカウントされた印刷枚数が予め設定された所定の枚数に達したか否かを判定し(S31)、所定の枚数に達した場合(YES)も色ずれ補正処理を行う(S34)。これにより、例えば9万ページの印刷を行う度に色ずれ補正処理を行うことができ、用紙へのカラー画像形成を常に高品位な状態に維持することが可能となる。
【0055】
また、S31:NOの場合、制御部20は、所定のメンテナンス処理を行ったか否かを判定し(S32)、所定のメンテナンス処理を行った場合(YES)も色ずれ補正処理を行う(S34)。これにより、メンテナンス処理が行われた後であっても、用紙へのカラー画像形成を高品位な状態に維持することが可能となる。
【0056】
なお、所定のメンテナンス処理とは、例えばインクカートリッジの交換、中間転写ベルト5Lの交換などである。インクカートリッジの交換の有無については、インクカートリッジに備えられたEEPROMのデータを読み出して、インクカートリッジごとに割り当てられたユニークな識別情報を比較することで検出する。また、中間転写ベルト5Lの交換などについては、操作キー(図示しない)によるメンテナンス処理の開始指示などを元に検出することが可能である。
【0057】
また、S32:NOの場合、制御部20は、記憶部21などに格納された前回の色ずれ補正処理時の機内温度と、現在の機内温度との温度差が予め設定された所定値以上であるか否かを判定し(S33)、温度差が所定値以上である場合(YES)も色ずれ補正処理を行う(S34)。これにより、機内の温度環境が変化する場合であっても、用紙へのカラー画像形成を高品位な状態に維持することが可能となる。次いで、制御部20は、S34の色ずれ補正処理時における温度を記憶部21に格納し(S35)、中間転写ベルトの回転数、印刷枚数などに応じてS34における色ずれ補正処理を行った場合は、その回転数や印刷枚数をリセットする(S36)。
【0058】
なお、機内温度の測定は、図7に示すとおりである。具体的には、カラー画像形成装置1aは、機内の温度を検出する温度センサ23を光センサ22近傍に備えている。温度センサ23の検出信号は制御部20に出力され、制御部20は、この検出信号に基づいて現在の機内温度を測定する。また、前述した色ずれ補正処理時において、制御部20は温度センサ23により機内温度を測定し、測定した機内温度を記憶部21に格納している。
【0059】
なお、上述した実施形態のカラー画像形成装置で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。上述した実施形態のカラー画像形成装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。さらに、上述した実施形態のカラー画像形成装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上述した実施形態のカラー画像形成装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0060】
また、上述したプログラムは、I/F部を介してカラー画像形成装置と接続する、PC(Personal Computer)等の情報機器が実行するプリンタドライバであってもよい。すなわち、カラー画像形成装置は、PC等の情報機器がプリンタドライバなどのプログラムを実行することで、色ずれ補正に係る制御が行われるものであってよい。
【0061】
なお、上記実施形態におけるカラー画像形成装置は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機や、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1、1a カラー画像形成装置
5L 中間転写ベルト
16L 光ビーム走査装置
20 制御部
21 記憶部
22 光センサ
23 温度センサ
P1 光センサ出力信号
P2 正反射光成分
P3 拡散反射光成分
C5 最大ピーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特許第3564042号公報
【特許文献2】特開2007−178981号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる色の画像を形成する複数の像形成手段を備え、これらが形成する各色の画像を中間転写体に形成し、当該中間転写体に形成した各色の画像を用紙に転写してカラー画像を形成するカラー画像形成装置において、
前記各色の画像の色合わせを行うためのパターン画像が形成された中間転写体からの反射光を光センサで受光し、前記光センサの出力信号の最大ピークに基づいて、前記パターン画像の形成位置を読み取る読み取り手段と、
前記出力信号の最大ピークを基準とした前後の波形の偏りを解析する解析手段と、
前記解析された波形の偏りに基づいて、当該偏りを解消するように、前記読み取られたパターン画像の形成位置を補正する位置補正手段と、
前記位置補正手段により補正されたパターン画像の形成位置に基づいて、前記複数の像形成手段が形成する各色の画像の形成位置を補正する色ずれ補正手段と、
を備えたことを特徴とするカラー画像形成装置。
【請求項2】
前記解析手段は、前記出力信号の最大ピークを基準とした前の波形における第1のピークと、後の波形における第2のピークを解析し、
前記位置補正手段は、前記解析された第1及び第2のピークの値に基づいて、前記第1及び第2のピーク値の偏りが解消するように、前記読み取られたパターン画像の形成位置を補正することを特徴とする請求項1に記載のカラー画像形成装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記出力信号の最大ピークの前後における立ち上がり及び立ち下がりの傾きを更に解析し、
前記位置補正手段は、前記解析された第1及び第2のピークの値と、前記解析された立ち上がり及び立ち下がりの傾きとに基づいて、前記第1及び第2のピーク値の偏りが解消する補正量を算出し、当該算出された補正量に基づいて前記読み取られたパターン画像の形成位置を補正することを特徴とする請求項2に記載のカラー画像形成装置。
【請求項4】
前記解析された第1及び第2のピークの値が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記位置補正手段は、前記解析された第1及び第2のピークの値が前記閾値以上である場合に、前記補正量を算出し、当該算出された補正量に基づいて前記読み取られたパターン画像の形成位置を補正し、
前記解析された第1及び第2のピークの値が前記閾値未満である場合に、予め記憶された補正量に基づいて前記読み取られたパターン画像の形成位置を補正することを特徴とする請求項3に記載のカラー画像形成装置。
【請求項5】
前記予め記憶された補正量は、前記読み取り手段が複数の前記パターン画像の形成位置を順次読み取って、前記位置補正手段が順次算出した補正量であって、直近に算出された補正量であることを特徴とする請求項4に記載のカラー画像形成装置。
【請求項6】
機内温度を検出する温度検出手段と、
前記色ずれ補正手段による補正を行った際に前記温度検出手段により検出された機内温度を記憶する記憶手段と、
前記記憶された機内温度と、前記温度検出手段により検出された現在の温度との温度差が、予め設定された所定値以上である場合に、前記パターン画像を前記中間転写体に形成させて、前記色ずれ補正手段による補正を開始させる制御手段と、
を更にことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のカラー画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記中間転写体の使用履歴が所定の条件を満たす場合、前記カラー画像を形成した用紙の枚数が所定の枚数に達した場合、又は、所定のメンテナンス処理が行われた場合にも、前記パターン画像を前記中間転写体に形成させて、前記色ずれ補正手段による補正を開始させることを特徴とする請求項6に記載のカラー画像形成装置。
【請求項8】
互いに異なる色の画像を形成する複数の像形成手段を備え、これらが形成する各色の画像を中間転写体に形成し、当該中間転写体に形成した各色の画像を用紙に転写してカラー画像を形成するカラー画像形成装置の色ずれ補正方法であって、
前記各色の画像の色合わせを行うためのパターン画像が形成された中間転写体からの反射光を光センサで受光し、前記光センサの出力信号の最大ピークに基づいて、前記パターン画像の形成位置を読み取る読み取り工程と、
前記出力信号の最大ピークを基準とした前後の波形の偏りを解析する解析工程と、
前記解析された波形の偏りに基づいて、当該偏りを解消するように、前記読み取られたパターン画像の形成位置を補正する位置補正工程と、
前記位置補正工程により補正されたパターン画像の形成位置に基づいて、前記複数の像形成手段が形成する各色の画像の形成位置を補正する色ずれ補正工程と、
を含むことを特徴とする色ずれ補正方法。
【請求項9】
互いに異なる色の画像を形成する複数の像形成手段を備え、これらが形成する各色の画像を中間転写体に形成し、当該中間転写体に形成した各色の画像を用紙に転写してカラー画像を形成するカラー画像形成装置のコンピュータに、
前記各色の画像の色合わせを行うためのパターン画像が形成された中間転写体からの反射光を光センサで受光し、前記光センサの出力信号の最大ピークに基づいて、前記パターン画像の形成位置を読み取る読み取りステップと、
前記出力信号の最大ピークを基準とした前後の波形の偏りを解析する解析ステップと、
前記解析された波形の偏りに基づいて、当該偏りを解消するように、前記読み取られたパターン画像の形成位置を補正する位置補正ステップと、
前記位置補正ステップにより補正されたパターン画像の形成位置に基づいて、前記複数の像形成手段が形成する各色の画像の形成位置を補正する色ずれ補正ステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−217556(P2010−217556A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64771(P2009−64771)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】