説明

カーテン塗工装置およびカーテン塗工方法

【課題】塗工作業に関わる消費エネルギーの削減、および設備投資の大幅な低減を達成し得るとともに、塗工品質の向上を達成することの可能なカーテン塗工装置、およびカーテン塗工方法を提供する。
【解決手段】真空式脱泡装置3に掛けた塗料Cをカーテンヘッド4に供給し、該カーテンヘッド4によって形成した塗料Cのカーテン膜Vを、搬送されるウェブWの表面に供給することにより、上記ウェブWの表面に塗料を塗布するカーテン塗工装置1において、真空式脱泡装置3からカーテンヘッド4に塗料を供給する配管1cに、該配管1cを流通する塗料Cの温度をカーテンヘッド4と近似した温度に加温する加温装置10を設けたカーテン塗工装置1及びカーテン塗工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送されるウェブの表面に塗料のカーテン膜を供給し、上記ウェブの表面に塗料を塗布するカーテン塗工装置、およびカーテン塗工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、コート原紙等のウェブ(基材)の表面に感熱塗料を塗布して感熱紙等を製造する装置の1つとして、塗料のカーテン膜を形成するノズル付チャンバであるカーテンヘッドから、搬送されるウェブの表面に対して塗料のカーテン膜を供給することにより、上記ウェブの表面に塗料を塗布するよう構成したカーテン塗工装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、従来のカーテン塗工装置の一例を示しており、このカーテン塗工装置Aは、配管hを介して供給された塗料Cを貯留する供給タンクTsを有し、この供給タンクTsに貯留された塗料Cは、ポンプP1の介装された配管aを介して真空式脱泡装置Daに供給され、この真空式脱泡装置において脱泡処理の施された塗料Cは、ポンプP2の介装された配管bを介してカーテンヘッドHに供給される。
【0004】
上記カーテンヘッドHは、搬送されるウェブWの上方に配置され、図6に示す如く、ヘッド部Hhとノズル部Hnとを備えており、ヘッド部Hhには長手方向に沿って塗料供給路Hpが延設され、ノズル部Hnには塗料供給路Hpと連通して下方に開放されたスロットHsが長手方向に沿って形成されている。
【0005】
上記カーテンヘッドHの塗料供給路Hpに供給された塗料Cは、スロットHsを通過することによって、ウェブWの幅方向に展開されたカーテン幕Vを形成し、矢印Fで示す如く搬送されるウェブWの表面に対して、カーテンヘッドHから塗料Cのカーテン膜Vを供給することで、ウェブWの表面に塗料Cが連続して塗布される。
【0006】
図7は他の形態のカーテンヘッドを示しており、このカーテンヘッドH′は、ヘッド部Hh′とノズル部Hn′とを備えており、ヘッド部Hh′には長手方向に沿って塗料供給路Hp′が延設され、ノズル部Hn′には塗料供給路Hp′と連通して上方に開放されたスロットHs′が長手方向に沿って形成されている。
【0007】
上記カーテンヘッドH′の塗料供給路Hp′に供給された塗料Cは、スロットHs′を通過したのちガイド面Hg′を流れ下ることにより、ウェブWの幅方向に展開されたカーテン幕Vを形成し、矢印Fで示す如く搬送されるウェブWの表面に対して、カーテンヘッドH′から塗料Cのカーテン膜Vを供給することで、ウェブWの表面に塗料Cが連続して塗布される。
【0008】
なお、以下では、図6に示したカーテンヘッドHを用いたカーテン塗工装置について説明するが、図7に示したカーテンヘッドH′を用いたカーテン塗工装置においても同様であることは言うまでもない。
【0009】
図5に示す如く、ウェブWの上方に配設されているカーテンヘッドHとともに、ウェブWの下方には戻りパンIが設置されており、これらカーテンヘッドHおよび戻りパンIは、上記ウェブWの搬送ラインに沿って設置された断熱ルームRの内部に収容されている。
【0010】
周壁を断熱材から構築した上記断熱ルームRの上部には、エアダクトAdが設置されており、空調機(エアコンディショナー)Acからの冷風が、送風ファンAfによってエアダクトAdに送り込まれ、該エアダクトAdから吹き出した冷風(矢印w、w…)により、上記カーテンヘッドHの冷却が行われている。
【0011】
一方、上記断熱ルームR内においてウェブWに対する塗工中、上記カーテンヘッドHの上部から流れ出た、気泡を含む虞れのある塗料Cの一部は、矢印vに示す如く戻りパンIに排出され、上記戻りパンIに溜まった塗料Cは、配管dを介して戻りタンクTrに貯留される。
【0012】
上記戻りタンクTrに貯留された塗料Cは、ポンプP3を介装した配管eを介して簡易な遠心式脱泡装置Dbに供給され、この遠心式脱泡装置Dbにおいて脱泡処理されたのち、配管fを介して供給タンクTsに送り込まれ、以下、供給タンクTs→真空式脱泡装置Da→カーテンヘッドH→戻りパンI→戻りタンクTr→遠心式脱泡装置Db→供給タンクTsの循環を繰り返す。
【0013】
ここで、上述したカーテン塗工装置Aにおいては、断熱ルームRに収容したカーテンヘッドHを、空調機(エアコンディショナー)Acによって冷却しているが、これは、以下に詳述する如く塗工品質の向上を目的としたものである。
【0014】
すなわち、上述した如きカーテン塗工装置Aでは、生産ライン上にドライヤー等の熱源が使用されているため、断熱ルームRの冷却を行わなかった場合、カーテンヘッドHは約30℃〜40℃に加温されることとなる。
【0015】
一方、カーテンヘッドHに供給される塗料Cの温度は、真空式脱泡装置Daを経ることにより、通常、雰囲気温度に比べても低い20℃前後となっている。
【0016】
真空式脱泡装置Daにおいては、塗料Cを15〜50Torr程度の非常に低圧な容器に投入するため、温度が高いと沸騰を起こしてしまうので、塗料Cを20℃程度に冷やして投入する必要があり、このため脱泡後の塗料Cの温度も約20℃となっている。因みに、脱泡中の断熱膨張に起因する冷却現象により、脱泡前よりも脱泡後の方が塗料Cの温度は低いものとなる。
【0017】
このため、カーテンヘッドHの冷却を行わなければ、約30℃〜40℃のカーテンヘッドHに対して、約20℃の塗料Cが供給されることとなり、この塗料Cとの温度差に起因して、カーテンヘッドHが熱変形を起こしてしまう不都合がある。
【0018】
特に、ノズル部HnにおけるスロットHsの幅が変化することで、カーテン幕Vにおける塗料Cの流量が、時間の経過とともに変化したり、ウェブWの幅方向に不均一なものとなったりして、塗工量(ウェブWの表面に対する塗料Cの供給量)の変動を引き起こし、これによって塗工品質の著しい低下を招く虞れがある。
【0019】
そこで、上述した従来のカーテン塗工装置Aにおいては、カーテンヘッドHを断熱ルームRに収容し、空調機(エアコンディショナー)Acによって冷却することで、カーテンヘッドHと塗料Cとの温度を等しいものとし、もって上記カーテンヘッドH、特にノズル部HnにおけるスロットHsの変形を未然に防止して、塗工品質の低下を抑えるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2001−18526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、上述した如く塗工品質の悪化を防止するべく、カーテンヘッドHを冷却している従来のカーテン塗工装置Aにおいては、以下に詳述する如き幾つかの問題点を生じることとなる。
【0022】
すなわち、従来のカーテン塗工装置Aにおいては、断熱ルームRに収容されているカーテンヘッドHを冷却するべく、断熱ルームRの内部に冷風を供給しているため、この冷風が当たることによって塗料カーテンVが揺り動かされ、これによってウェブWに対する塗工不良を招く不都合があった。
【0023】
また、カーテンヘッドHを冷却していることにより、周辺の空気の水蒸気が凝結してカーテンヘッドHの表面に露を生じ、この露が塗工中のウェブW上に落下することで塗工不良を生じる虞れがあり、この不都合を解消するには、断熱ルームR内の空気を必要以上に除湿しておくことが必須となる。
【0024】
さらに、カーテンヘッドHを冷却するべく、断熱ルームR内に供給する空気を冷却したり、カーテンヘッドHへの結露を防止するべく、断熱ルームR内の空気を除湿することで、多大なエネルギーを必要とするばかりでなく、上述の如くエアコンディショナAc、送風ファンAf、エアダクトAd、および断熱ルームRと併せ、様々な関連設備をも必要とすることにより、多大な設備投資を必要とする不都合を免れ得なかった。
【0025】
本発明は上記実状に鑑みて、塗工作業に関わる消費エネルギーの削減、および設備投資の大幅な低減を達成し得るとともに、塗工品質の向上を達成することの可能なカーテン塗工装置、およびカーテン塗工方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するべく、請求項1の発明に関わるカーテン塗工装置は、真空式脱泡装置に掛けた塗料をカーテンヘッドに供給し、該カーテンヘッドによって形成した塗料のカーテン膜を、搬送されるウェブの表面に供給することにより、上記ウェブの表面に塗料を塗布するカーテン塗工装置において、真空式脱泡装置からカーテンヘッドに塗料を供給する配管に、該配管を流通する塗料の温度をカーテンヘッドと近似した温度に加温する加温装置を設けたことを特徴としている。
【0027】
請求項2の発明に関わるカーテン塗工装置は、請求項1の発明に関わるカーテン塗工装置において、加温装置により加温されてカーテンヘッドに供給される塗料の温度を、カーテンヘッドの温度に対して±5℃の温度範囲内に設定することを特徴としている。
【0028】
請求項3の発明に関わるカーテン塗工装置は、請求項1の発明に関わるカーテン塗工装置において、カーテンヘッドの温度を検知する温度センサと、温度センサが検出した温度に基づいてカーテンヘッドに供給される塗料の温度をカーテンヘッドと近似した温度に加温するべく加温装置を動作制御する制御装置とを備えて成ることを特徴としている。
【0029】
請求項4の発明に関わるカーテン塗工方法は、真空式脱泡装置に掛けた塗料をカーテンヘッドに供給し、該カーテンヘッドによって形成した塗料のカーテン膜を、搬送されるウェブの表面に供給することにより、前記ウェブの表面に塗料を塗布するカーテン塗工方法において、真空式脱泡装置からカーテンヘッドに供給される塗料を、加温装置によりカーテンヘッドと近似した温度に加温することを特徴としている。
【0030】
請求項5の発明に関わるカーテン塗工方法は、請求項4の発明に関わるカーテン塗工方法において、加温装置により加温されてカーテンヘッドに供給される塗料の温度を、カーテンヘッドの温度に対して±5℃の温度範囲内に設定することを特徴としている。
【0031】
請求項6の発明に関わるカーテン塗工方法は、請求項4の発明に関わるカーテン塗工方法において、カーテンヘッドの温度に基づいて、カーテンヘッドに供給される塗料の温度を、カーテンヘッドに近似した温度とするべく、加温装置を動作制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0032】
請求項1の発明に関わるカーテン塗工装置においては、真空式脱泡装置からカーテンヘッドに塗料を供給する配管に設けた加温装置により、上記配管を流通する塗料の温度をカーテンヘッドと近似した温度に加温することで、上記カーテンヘッドを強制的に冷却することなく、該カーテンヘッドと塗料との温度差を抑えることができる。
このように、カーテンヘッドと塗料との温度差が抑えられるとともに、冷却に伴う送風によって塗料のカーテン膜が揺れ動かされることがないため、塗工品質の大幅な向上を達成することが可能となる。
さらに、上記カーテンヘッドを冷却するための諸設備が不要となり、上記冷却設備の設置に伴う設備投資を低減することができ、併せて塗工作業に伴う消費エネルギーの大幅な削減を達成することが可能となる。
【0033】
請求項2の発明に関わるカーテン塗工装置においては、加温装置により加温されてカーテンヘッドに供給される塗料の温度を、カーテンヘッドの温度に対して±5℃の温度範囲内に設定することで、カーテンヘッドと塗料との温度差が小さく抑えられ、上記温度差に起因するカーテンヘッドの変形を防止することができ、もって塗工品質の大幅な向上を達成することが可能となる。
【0034】
請求項3の発明に関わるカーテン塗工装置においては、温度センサが検出したカーテンヘッドの温度に基づき、制御装置によって加温装置を動作制御して、塗料の温度をカーテンヘッドと近似した温度に加温することにより、カーテンヘッドと塗料との温度差を可及的に小さく抑えることができ、もって上記温度差に起因するカーテンヘッドの変形が未然に防止され、塗工品質の大幅な向上を達成することが可能となる。
【0035】
請求項4の発明に関わるカーテン塗工方法においては、真空式脱泡装置からカーテンヘッドに塗料を供給する配管に設けた加温装置により、上記配管を流通する塗料の温度をカーテンヘッドと近似した温度に加温することで、上記カーテンヘッドを強制的に冷却することなく、該カーテンヘッドと塗料との温度差を可及的に抑えることができる。
このように、カーテンヘッドと塗料との温度差が抑えられるとともに、冷却に伴う送風によって塗料のカーテン膜が揺れ動かされることがないことで、塗工品質の大幅な向上を達成することが可能となる。
さらに、上記カーテンヘッドを冷却するための諸設備が不要となり、上記冷却設備の設置に伴う設備投資を低減することができ、併せて塗工作業に伴う消費エネルギーの大幅な削減をも達成することが可能となる。
【0036】
請求項5の発明に関わるカーテン塗工方法においては、加温装置により加温されてカーテンヘッドに供給される塗料の温度を、カーテンヘッドの温度に対して±5℃の温度範囲内に設定したことで、カーテンヘッドと塗料との温度差が小さく抑えられ、上記温度差に起因するカーテンヘッドの変形を防止することができ、もって塗工品質の大幅な向上を達成することが可能となる。
【0037】
請求項6の発明に関わるカーテン塗工方法においては、カーテンヘッドの温度に基づいて、カーテンヘッドに供給される塗料の温度を、カーテンヘッドに近似した温度とするべく、加温装置を動作制御することにより、カーテンヘッドと塗料との温度差を可及的に小さく抑えることができ、もって上記温度差に起因するカーテンヘッドの変形が未然に防止され、塗工品質の大幅な向上を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るカーテン塗工装置の第1の実施例を示す概念的な全体図。
【図2】本発明に係るカーテン塗工装置の第2の実施例を示す概念的な全体図。
【図3】本発明に係るカーテン塗工装置の第3の実施例を示す概念的な全体図。
【図4】本発明に係るカーテン塗工装置の第4の実施例を示す概念的な全体図。
【図5】従来のカーテン塗工装置を示す概念的な全体図。
【図6】(a)はカーテンヘッドを示す概念的な正面図、(b)はカーテンヘッドの断面を示す(a)中のb−b線断面図。
【図7】他の形態のカーテンヘッドを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係るカーテン塗工装置、およびカーテン塗工方法について、実施例を示す図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明に係るカーテン塗工装置の第1の実施例を示しており、この実施例のカーテン塗工装置1は、コート原紙等のウェブ(基材)の表面に感熱塗料を塗布した感熱紙の製造に供される装置である。
【0041】
上記カーテン塗工装置1は、配管1aを介して供給された塗料Cを貯留する供給タンク2を有し、この供給タンク2に貯留された塗料Cは、ポンプP1の介装された配管1bを介して真空式脱泡装置3に供給され、この真空式脱泡装置3において脱泡処理の施された塗料Cは、ポンプP2および後述する加温装置10の介装された配管1cを介してカーテンヘッド4に供給される。
【0042】
上記カーテンヘッド4は、搬送されるウェブWの上方に配置されており、図示していないヘッド部とノズル部とを備え、ヘッド部には長手方向に沿って塗料供給路が延設され、ノズル部には塗料供給路と連通して下方に開放されたスロットが長手方向に沿って形成されており、図6に示した従前のカーテンヘッドHと何ら変わるところはない。
【0043】
上記カーテンヘッド4に供給された塗料Cは、図6に示した従前のカーテンヘッドHに供給された塗料Cと同様、ウェブWの幅方向に展開されたカーテン幕Vを形成し、搬送されるウェブWの表面に対して、カーテンヘッド4から塗料のカーテン膜Vを供給することで、ウェブWの表面に塗料Cが連続して塗布される。
【0044】
上述した如く、ウェブWの上方にはカーテンヘッド4が配設されている一方、ウェブWの下方には戻りパン5が設置されており、これらカーテンヘッド4および戻りパン5は、上記ウェブWの搬送ラインに沿って設置されたルーム6の内部に収容されている。
【0045】
上記ルーム6は、カーテンヘッド4において形成された塗料のカーテン膜Vが揺れることのないよう、外部からの風の吹き込みを阻止するために設置されており、例えばビニールシート等の安価な材料を用いて簡易に構成されているため、設備投資は極めて廉価なものとなっている。
【0046】
上記ルーム6内においてウェブWに対する塗工中、上記カーテンヘッド4の上部から流れ出た、気泡を含む虞れのある塗料Cの一部は、矢印vに示す如く戻りパン5に排出され、上記戻りパン5に溜まった塗料Cは、配管1dを介して戻りタンク7に貯留される。
【0047】
上記戻りタンク7に貯留された塗料Cは、ポンプP3を介装した配管1eを介して簡易な遠心式脱泡装置8に供給され、この遠心式脱泡装置8において脱泡処理されたのち、配管1fを介して供給タンク2に送り込まれ、以下、供給タンク2→真空式脱泡装置3→カーテンヘッド4→戻りパン5→戻りタンク7→遠心式脱泡装置8→供給タンク2の循環を繰り返す。
【0048】
ところで、上述したカーテン塗工装置1においては、生産ライン上にドライヤー等の熱源が使用されているため、カーテンヘッド4は約30℃〜40℃に加温された状態にある。
【0049】
一方、真空脱泡装置3から配管1cを介してカーテンヘッド4に供給される塗料Cは、上記配管1cに設置した加温装置10によって、上記カーテンヘッド4と近似した温度に加温されている。
【0050】
すなわち、上記加温装置10は、配管1cを流通する塗料Cの温度を、カーテンヘッド4と近似した温度に加温するものであり、具体的には、配管1cの周囲をジャケットによって囲繞し、上記ジャケットの内部に温風や温水等の熱媒体を供給することで、上記塗料Cを適温に加温するよう構成されている。
【0051】
なお、上記加温装置10においては、配管1cと熱媒体(温風、温水)との伝熱面積を大きくするために、螺旋状に形成した配管1cの周囲に熱媒体を供給するように構成することも有効である。
【0052】
また、上記加温装置10の具体的な構成としては、上述した如き温風や温水を使用する以外にも、配管1cの周囲に電熱ヒータやランプヒータを設ける等、様々な構成を採用し得ることは勿論である。
【0053】
上述した如き実施例のカーテン塗工装置1、およびカーテン塗工方法によれば、カーテンヘッド4に供給される塗料Cを加温することで、該塗料Cとカーテンヘッド4との温度差を抑えることにより、上記温度差に起因するカーテンヘッド4の熱変形を未然に防止し、ウェブWに対する塗工量の変動を抑制することによって、塗工品質の向上を達成することを可能としている。
【0054】
また、上述した如き実施例の構成によれば、塗料Cを加温してカーテンヘッド4との温度差を抑えること、言い換えれば、従来の如きカーテンヘッドを冷却する構成(図5参照)を採用することなく、上記カーテンヘッド4と塗料Cとの温度差を抑えているので、塗料Cのカーテン膜Vが冷却に伴う送風によって不用意に揺れ動かされる等の問題がなく、もって塗工品質の大幅な向上を達成することができる。
【0055】
また、上述した実施例の構成においては、カーテンヘッド4を冷却していないため、カーテンヘッドを冷却している従来のカーテン塗工装置(図5参照)のように、“周辺の空気の水蒸気が凝結してカーテンヘッドの表面に生じた露が、塗工中のウェブW上に落下することで塗工不良を生じる”等の不都合を招くことはない。
【0056】
また、実施例の構成においては、カーテンヘッド4を冷却していないことから、カーテンヘッドの結露を防止するための除湿を行う必要もなく、さらにカーテンヘッドを冷却するための諸設備が不要となることと併せ、本実施例の加温装置10は、従来の冷風による冷却装置(図5参照)に比べてコンパクト、かつ必要熱量も少なくて済むために、カーテン塗工装置1の構築に関わる設備投資を低減することができるとともに、塗工作業に伴う消費エネルギーの大幅な削減をも達成することが可能となる。
【0057】
さらに、上述した実施例おいては、カーテンヘッド4との温度差を抑えるべく塗料Cを加熱していること、言い換えれば、従来のカーテン塗工装置がカーテンヘッドを冷却しているために塗料Cの温度が20℃前後であるのに対し、本実施例においては塗料Cを35℃前後に加温していることで、従来の構成よりも塗料Cの粘度が低下し、流動性が良好なものとなって滑らかに伸びるため、塗工品質が大幅に向上する作用効果を奏することとなる。
【0058】
ところで、加温装置10によって塗料Cを加温する場合には、塗料Cの供給されるカーテンヘッド4の実際の温度を事前の観測により把握しておき、この実際の温度にできるだけ近似した温度、望ましくはカーテンヘッド4の温度に対して±5℃の温度範囲内とするべく、上記塗料Cを加温するよう構成することが極めて有効である。
【0059】
上述の如く、加温装置10により加温されてカーテンヘッド4に供給される塗料Cの温度を、カーテンヘッド4の温度に対して±5℃の温度範囲内に設定することで、カーテンヘッド4と塗料Cとの温度差が小さく抑えられ、上記温度差に起因するカーテンヘッド4の変形を防止することができ、もって塗工品質の大幅な向上を達成することが可能となる。
【0060】
さらに、カーテンヘッド4に供給される塗料Cの温度としては、カーテンヘッド4に対して塗料Cの温度が大幅に高い場合、乾燥固化した塗料Cがノズル部に付着してカーテン膜Vを傷付け、塗工面に筋としての欠陥を生じる等の事象を考慮して、カーテンヘッド4に対して約−5℃の温度から、カーテンヘッド4よりも少し低い温度までの間、言い換えればカーテンヘッド4を超えない温度までの範囲とすることが理想的である。
【0061】
図2は、本発明に係るカーテン塗工装置の第2の実施例を示しており、この実施例のカーテン塗工装置1Aは、真空式脱泡装置3において脱泡処理の施された塗料Cを、ポンプP2の介装された配管1gを介してカーテンヘッド4に供給しており、この配管1gは全長を稼ぐ目的でスパイラル状に形成されている。
【0062】
ここで、カーテン塗工装置1Aを設置している工場建屋の室内は、既述の如くドライヤー等の熱源が使用されていることから、約30℃〜40℃の雰囲気温度となっているため、真空式脱泡装置3から配管1gを介してカーテンヘッド4に供給される塗料Cは、スパイラル状に形成された上記配管1gを流通する間に、工場建屋内の雰囲気温度によって加温されることとなる。
【0063】
すなわち、上述した如くスパイラル状に形成された配管1gは、工場建屋内における雰囲気温度を熱源とした加温装置を構成するものであり、この配管1gを通過することによって、塗料Cは同じ工場建屋内の雰囲気温度に晒されているカーテンヘッド4と近似した温度に加温されることとなる。
【0064】
なお、上述したカーテン塗工装置1Aの構成は、スパイラル状に形成された配管1g以外、第1の実施例のカーテン塗工装置1と基本的に同一なので、図2においてカーテン塗工装置1と同一の作用を成す要素に、図1と同一の符号を附すことで詳細な説明を省略する。
【0065】
上述した如き第2の実施例の構成によれば、第1の実施例におけるカーテン塗工装置、およびカーテン塗工方法と同様に、塗工作業に関わる消費エネルギーの削減、および設備投資の大幅な低減を達成し得るとともに、塗工品質の向上を達成することが可能となる。
【0066】
図3は、本発明に係るカーテン塗工装置の第3の実施例を示しており、この実施例のカーテン塗工装置1Bは、真空式脱泡装置3において脱泡処理の施された塗料Cを、ポンプP2の介装された配管1hを介して貯留タンク9に供給しており、この貯留タンク9に貯留された塗料Cは、配管1iを介してカーテンヘッド4に供給される。
【0067】
ここで、カーテン塗工装置1Aを設置している工場建屋の室内は、既述の如くドライヤー等の熱源が使用されていることから、約30℃〜40℃の雰囲気温度となっているため、真空式脱泡装置3から配管1hを介して貯留タンク9に供給された塗料Cは、該貯留タンク9において暫時滞留している間に、工場建屋内の雰囲気温度によって加温されることとなる。
【0068】
すなわち、上述した如く、真空式脱泡装置3からの塗料Cを貯留する目的で設置された貯留タンク9は、工場建屋内における雰囲気温度を熱源とした加温装置を構成するものであり、上記貯留タンク9において滞留することによって、塗料Cは同じ工場建屋内の雰囲気温度に晒されているカーテンヘッド4と近似した温度に加温され、配管1iを介して上記カーテンヘッド4に供給されることとなる。
【0069】
なお、上述したカーテン塗工装置1Bの構成は、貯留タンク9および配管1h、1i以外、第1の実施例のカーテン塗工装置1と基本的に同一なので、図3においてカーテン塗工装置1と同一の作用を成す要素に、図1と同一の符号を附すことで詳細な説明を省略する。
【0070】
上述した如き第3の実施例の構成によれば、第1の実施例におけるカーテン塗工装置、およびカーテン塗工方法と同様に、塗工作業に関わる消費エネルギーの削減、および設備投資の大幅な低減を達成し得るとともに、塗工品質の向上を達成することが可能となる。
【0071】
図4は、本発明に係るカーテン塗工装置の第4の実施例を示しており、この実施例のカーテン塗工装置1′は、カーテンヘッド4′の温度を検知する温度センサSと、この温度センサSが検出した温度に基づいて加温装置10′を動作制御する制御装置100′とを具備している。
【0072】
上記温度センサSは、カーテンヘッド4′のヘッド部、あるいはノズル部等、カーテンヘッド4′の実質的な温度を計測し得る適宜な箇所に設置されており、この温度センサSからの検出信号は制御装置100′に入力される。
【0073】
上記制御装置100′においては、温度センサSの検知したカーテンヘッド4′の温度に基づいて、カーテンヘッド4′に供給される塗料Cの温度を、上記カーテンヘッド4′と近似した温度に加温するべく、加温装置10′を動作制御(フィードバック制御)する。
【0074】
ここで、上記加温装置10′は、図1に示した加温装置10と同じく、配管1c′の周囲をジャケットによって囲繞し、上記ジャケットの内部に温風や温水等の熱媒体を供給することで、上記塗料Cを適温に加温するよう構成されており、上記制御装置100′からの指令に基づいて、ジャケット内部へ供給される熱媒体の供給量や温度を調整することで、塗料Cをカーテンヘッド4′と近似した温度に加温するよう構成されている。
【0075】
なお、上述したカーテン塗工装置1′のセンサS、および制御装置100′以外の構成は、図1に示したカーテン塗工装置1と基本的に同一なので、カーテン塗工装置1′の構成要素において、カーテン塗工装置1の構成要素と同一の作用を成すものに、図4において図1と同一の符号に′(ダッシュ)を附すことで、カーテン塗工装置1′に対する詳細な説明を省略する。
【0076】
上述した如き実施例の構成によれば、図1に示した実施例のカーテン塗工装置、およびカーテン塗工方法と同様に、塗工作業に関わる消費エネルギーの削減、および設備投資の大幅な低減を達成し得るとともに、塗工品質の向上を達成することが可能となる。
【0077】
併せて、上述した実施例の構成によれば、温度センサSが検出したカーテンヘッド4′の温度に基づき、制御装置100′によって加温装置10′を動作制御して、塗料Cの温度をカーテンヘッド4′と近似した温度に加温することにより、カーテンヘッド4′と塗料Cとの温度差を可及的に小さく抑えることができ、もって上記温度差に起因するカーテンヘッド4′の変形が未然に防止され、塗工品質の大幅な向上を達成することが可能となる。
【0078】
因みに、上述した実施例の構成において、加温装置10′が配管1c′の周囲に電熱ヒータやランプヒータを設けた構成でも、制御装置100′からの指令に基づいて、電熱ヒータやランプヒータへの給電量を調整することで、塗料Cをカーテンヘッド4′と近似した温度に調整し得ることは勿論である。
【0079】
なお、図1に示したカーテン塗工装置1、図2に示したカーテン塗工装置1A、図3に示したカーテン塗工装置1B、および図4に示したカーテン塗工装置1′は、何れも感熱紙の製造に供されるものであるが、本発明に係るカーテン塗工装置およびカーテン塗工方法は、例えばアート紙やコート紙、あるいは感圧紙、板紙等、様々な用紙を製造する場合においても、有効に適用し得る技術であることは言うまでもない。
【0080】
また、図1に示したカーテン塗工装置1、図2に示したカーテン塗工装置1A、図3に示したカーテン塗工装置1B、および図4に示したカーテン塗工装置1′は、何れもウェブWの表面に1層の塗料を塗布する装置であるが、本発明に係るカーテン塗工装置およびカーテン塗工方法は、搬送されるウェブの表面に、第1塗料カーテン膜と第2塗料カーテン膜とから成る2層状塗料カーテン膜を供給し、第1塗料と第2塗料とを2層に重ねて塗布する場合においても、有効に適用し得る技術であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0081】
1,1A,1B,1′…カーテン塗工装置、
1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h,1i,
1a′,1b′,1c′,1d′,1e′,1f′…配管、
2,2′…供給タンク、
3,3′…真空式脱泡装置、
4,4′…カーテンヘッド、
5,5′…戻りパン、
6,6′…ルーム、
7,7′…戻りタンク、
8,8′…遠心式脱泡装置、
9…貯留タンク、
10′…加温装置、
100′…制御装置、
C…塗料、
V…カーテン膜、
W…ウェブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空式脱泡装置に掛けた塗料をカーテンヘッドに供給し、該カーテンヘッドによって形成した塗料のカーテン膜を、搬送されるウェブの表面に供給することにより、前記ウェブの表面に塗料を塗布するカーテン塗工装置において、
前記真空式脱泡装置から前記カーテンヘッドに塗料を供給する配管に、該配管をを流通する塗料の温度を前記カーテンヘッドと近似した温度に加温する加温装置を設けて成ることを特徴とするカーテン塗工装置。
【請求項2】
前記加温装置により加温されて前記カーテンヘッドに供給される塗料の温度を、前記カーテンヘッドの温度に対して±5℃の温度範囲内に設定することを特徴とする請求項1記載のカーテン塗工装置。
【請求項3】
前記カーテンヘッドの温度を検知する温度センサと、
前記温度センサが検出した温度に基づいて、前記カーテンヘッドに供給される塗料の温度を、前記カーテンヘッドと近似した温度に加温するべく、前記加温装置を動作制御する制御装置と、
を備えて成ることを特徴とする請求項1記載のカーテン塗工装置。
【請求項4】
真空式脱泡装置に掛けた塗料をカーテンヘッドに供給し、該カーテンヘッドによって形成した塗料のカーテン膜を、搬送されるウェブの表面に供給することにより、前記ウェブの表面に塗料を塗布するカーテン塗工方法において、
前記真空式脱泡装置から前記カーテンヘッドに供給される塗料を、加温装置により前記カーテンヘッドと近似した温度に加温することを特徴とするカーテン塗工方法。
【請求項5】
前記加温装置により加温されて前記カーテンヘッドに供給される塗料の温度を、前記カーテンヘッドの温度に対して±5℃の温度範囲内に設定することを特徴とする請求項4記載のカーテン塗工方法。
【請求項6】
前記カーテンヘッドの温度に基づいて、前記カーテンヘッドに供給される塗料の温度を、前記カーテンヘッドに近似した温度とするべく、前記加温装置を動作制御することを特徴とするカーテン塗工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−50817(P2011−50817A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200349(P2009−200349)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(506294244)ボイス パテント ゲーエムベーハー (57)
【氏名又は名称原語表記】Voith Patent GmbH
【Fターム(参考)】