説明

カードソケット

【課題】カード排出機構の誤動作を防止しつつ、良好な操作性を有し、且つ、小さい投影面積を有するカードソケットを提供すること。
【解決手段】 カードソケットは、カード挿脱方向にスライド可能なスライダ40と、支点部並びに該支点部を挟んで互いに反対側に設けられた第1及び第2の被押圧部62及び64とを有するロッカーアーム60とを備えている。第1の被押圧部62に第1の力が加えられると、ロッカーアーム60はスライダ40側に移動して、スライダ40がカード排出方向に向かってスライドするのを阻止する。第2の被押圧部64に第2の力を加えると、ロッカーアーム60が第1の力に抗ってスライダ40から離れる方向に移動する。それにより、スライダ40はカード排出方向にスライドすることができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード排出機構を備えたカードソケット又はカードコネクタ(以下、単に「カードソケット」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラなど小型機器のデータの利用可能性を広げる手段として小型のメモリカードが用いられている。この種のメモリカード用として、小型機器にはカードソケットが搭載され、メモリカードが該カードソケットに脱着可能に取り付けられる。このようなメモリカードによれば、小型機器とコンピュータとの間でデータの授受を容易に行うことができる。
【0003】
この種の小型のメモリカード用のカードソケットとしては、例えば、特許文献1に示されるものがある。特許文献1に示されたカードソケットは、カードの厚み方向に操作部材を押下することにより、カード排出機構を動作させるものである。
【0004】
上記のメモリカードよりも大きいカードであるPCカード用のカードソケットとしては、例えば、特許文献2に示されるものがある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−351735号公報
【特許文献2】特開2000−340293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されるカードソケットでは、小型のメモリカードの厚さが1,2mm程度であることを考慮すると、外部からの衝撃などにより操作部材に対してカード厚み方向に向かう力が加わり、カード排出機構が意に反して機能してしまう可能性が高い。
【0007】
特許文献1には、かかるカード排出機構の意に反する動きを規制するための手段も開示されているが(例えば、特許文献1の0046欄)、当該手段は操作性に欠ける。
【0008】
一方、特許文献2のカードソケットは、特許文献1のカードソケットと比較すると、カード排出機構が意に反して機能してしまう確率は低く、操作性も良い。
【0009】
しかしながら、特許文献2のカードソケットは、PCカード用に構成されたものであり、上述の小型のメモリカード用としては用いることができない。加えて、単にスケールを小さくしようとすると、各部品の強度が落ちることとなり、各部品の強度を保持しようとすると、カードソケットの投影面積をできる限り小さくするという一般的な小型化に対する要求を満たせなくなってしまう。
【0010】
そこで、本発明は、カード排出機構の誤動作を防止しつつ、良好な操作性を有し、且つ、小さい投影面積を有するカードソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、第1のカードソケットとして、
カードを挿脱可能に保持するためのケースと、
挿入されるカードを受けるためのカード受部を有し、第1及び第2の位置間においてスライド可能に前記ケース内に設けられたスライダであって、カード挿入時には当該カードと共に前記第1の位置に向かってスライドし、カード排出時には当該カードと共に前記第2の位置に向かってスライドするスライダと、
該スライダを前記第2の位置に向けて常時付勢する第1の付勢手段と、
支点部と該支点部を挟んで互いに反対側に設けられた第1及び第2の被押圧部とを有し、第1及び第2の揺動位置間において揺動可能となるように前記支点部を前記ケースに保持されたロッカーアームであって、前記第1の被押圧部と前記支点部との間にストッパ部を有し、且つ、前記スライダが前記第1の位置にあるときには当該ロッカーアームが前記第1の揺動位置に位置することにより前記ストッパ部にて前記スライダが前記第2の位置に向かってスライドするのを阻止するロッカーアームと、
該ロッカーアームの前記第1の被押圧部に第1の力を加えることにより該ロッカーアームを前記第1の揺動位置に向けて常時付勢する第2の付勢手段と、
前記ケースに移動可能に保持された操作部材であって、操作された際に前記ロッカーアームの前記第2の被押圧部に対して第2の力を加えることにより前記第2の付勢手段による第1の力に抗って該ロッカーアームを第2の揺動位置に向けて移動させる操作部材と
を備えるカードソケットが得られる。
【0012】
本発明によれば、第2のカードソケットとして、
前記ケースは、カード収容スペースと、該カード収容スペースに対してカードを第1の方向に沿って挿脱可能とするための開口部とを有しており、
該開口部は、前記第1の方向に沿って見た場合において、前記第1の方向に直交する第2の方向に長く、且つ、前記第1及び第2の方向に直交する第3の方向に短い、略長方形状を有しており、
前記スライダは、前記第1の方向にスライド可能であり、
前記第2の付勢手段は前記第1の方向において前記カード収容スペースよりも前記開口部から遠い領域に位置するように前記ケース内に設けられ、前記第2の方向に沿って前記ロッカーアームの前記第1の被押圧部に対して前記第1の力を常時加える
前記第1のカードソケットが得られる。
【0013】
また、本発明によれば、第3のカードソケットとして、
前記ロッカーアームは、第1及び第2の端部並びにその間に位置する前記支点部を有する主板部と、前記第1の端部に設けられた前記第1の被押圧部と、前記支点部と前記第2の端部との間に設けられた前記第2の被押圧部とを備えており、
該ロッカーアームは、前記主板部が前記第1及び前記第2の方向により規定される面内で揺動可能となるように、前記ケースに取り付けられている
前記第2のカードソケットが得られる。
【0014】
また、本発明によれば、第4のカードソケットとして、
前記第2の付勢手段は圧縮バネを備えており、
前記ケースは、前記第1の方向において前記カード収容スペースよりも前記開口部から遠い領域において前記第2の方向に延びるガイドレール部と、該ガイドレール部から一定距離だけ前記第1の方向に離れるようにして設けられた壁部とを有しており、
前記ケースの前記ガイドレール部と前記壁部とは前記第2の付勢手段の前記圧縮バネを収容するバネ収容部を構成しており、
前記第1の被押圧部は、断面逆U字形状を有し、前記第3の方向に向かって前記第1の端部から突出しており、前記ガイドレール部を跨ぐようにして配置されることにより、前記第2の付勢手段の前記圧縮バネから前記第1の力を受ける
前記第3のカードソケットが得られる。
【0015】
また、本発明によれば、第5のカードソケットとして、
前記ロッカーアームの前記主板部は、前記支点部に接続された片刃腰鉈状の第1板部と、該第1板部の先端に接続されたL字状の第2板部と、前記支点部を介して前記第1板部に接続された第3板部とを備えており、
前記第1板部は、前記ロッカーアームが前記第2の揺動位置にあるとき、前記支点部から前記第1の方向に沿うようにして前記壁部に向かって延びると共に、前記片刃腰鉈状の刃部が前記第2の方向に張り出すようにして形成されており、
前記第2板部は、前記第1板部の先端から出発して、前記スライダから離れた後に前記壁部に向かうような形状を有しており、
前記第1の被押圧部は、当該第2板部の先端に設けられており、
前記第3板部は、前記ロッカーアームが前記第1の揺動位置にあるとき、前記支点部から前記第1の方向に沿うようにして前記開口部に向かって延びている
前記第4のカードソケットが得られる。
【0016】
また、本発明によれば、第6のカードソケットとして、
前記スライダは、前記第3の方向に突出した突出部を有し、
前記第1板部の先端は、前記ロッカーアームが前記第1の揺動位置にあるとき、前記突出部を前記第1の方向において受けることにより、前記ストッパ部として機能し、
前記突出部は、前記スライダが前記第2の位置にあり且つ前記ロッカーアームが前記第2の揺動位置にあるとき、前記第1板部の前記刃部を前記第2の方向において受けることにより、前記ロッカーアームが前記第1の揺動位置に向かって移動することを阻止する
前記第5のカードソケットが得られる。
【0017】
また、本発明によれば、第7のカードソケットとして、
前記ロッカーアームの前記第2の被押圧部は、前記第3の方向に突出しており、
前記操作部材は、前記第1の方向に沿って移動可能となるように、前記ケースに保持されており、
該操作部材は、前記第2の被押圧部を収容するための収容穴部を有しており、
該収容穴部は、前記操作部材が前記第1の方向に沿って移動させられた際に、当該移動による前記第1の方向の力を前記第2の力に変換して前記第2の被押圧部に伝達するためのカム面を有する
前記第2乃至第6のいずれかのカードソケットが得られる。
【0018】
また、本発明によれば、第8のカードソケットとして、
前記操作部材は、前記第1の方向において前記ケースの外側に向かって突出するように配置されたボタンであり、
前記操作部材が前記第1の方向に沿うようにして前記ケース内部に向かって押されると、前記カム面が該押力を前記第2の力に変換する
前記第7のカードソケットが得られる。
【0019】
また、本発明によれば、第9のカードソケットとして、
前記ケースは、前記開口部から前記第1の方向に張り出した張出部を有しており、
前記操作部材は、前記第1の方向において該張出部から前記ケースの外側に向かって突出するようにして前記ケースに保持されている
前記第8のカードソケットが得られる。
【0020】
また、本発明によれば、第10のカードソケットとして、
前記スライダは、前記第1の方向に延びる主部と、該主部から前記第2の方向に延びる前記カード受部とを備えており、
前記スライダの前記主部と前記操作部材は、前記第1の方向に延びる仮想直線上に配置されている
前記第7乃至第9のいずれかのカードソケットが得られる。
【0021】
また、本発明によれば、第11のカードソケットとして、
前記スライダの前記主部と前記操作部材とは、前記第2の方向において、前記カード収容スペースの外側に配置されている
前記第10のカードソケットが得られる。
【0022】
また、本発明によれば、第12のカードソケットとして、
前記ロッカーアームの前記支点部は、前記仮想直線から前記第2の方向に離れた位置に設けられている
前記第10又は第11のカードソケットが得られる。
【0023】
また、本発明によれば、第13のカードソケットとして、
前記ロッカーアームは、所定寸法のカードが前記カード収容スペースに完全に収容された際に、当該カードの後縁を受けるための後縁受部を有しており、
該後縁受部は、前記ロッカーアームの前記第2の被押圧部よりも前記開口部に近い位置から前記第3の方向に向かって突出している
前記第2乃至第12のいずれかのカードソケットが得られる。
【0024】
また、本発明によれば、第14のカードソケットとして、
前記ロッカーアームは、且つ、前記所定寸法のカードよりも前記第1の方向において長いカードが当該カードソケットに挿入されて前記スライダが前記第1の位置に位置しているとき、前記第1及び第2の揺動位置間に第3の揺動位置に位置しており、
前記ロッカーアームが前記第3の揺動位置にあるとき、前記ストッパ部は前記スライダが前記第2の位置に向かってスライドするのを阻止する一方、前記後端受部が前記第1の方向から見た場合に前記カード収容スペースと重ならない位置に位置している
前記第13のカードソケットが得られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1のカードソケットは、カード排出機構の誤動作を防止しつつ、良好な操作性を有し、且つ、小さい投影面積を有している。
【0026】
本発明の第2のカードソケットによれば、第2の付勢手段に関し、十分な付勢力を確保しつつ、カードソケットの投影面積を小さくすることができる。ここで、第1乃至第3の方向は、例えば、それぞれカード挿脱方向(カード長さ方向)、カード幅方向、カード厚み方向である。
【0027】
本発明の第3のカードソケットによれば、例えば、ロッカーアームの強度を保持しつつカード厚み方向におけるロッカーアームの厚みを薄くすることができる。それにより、例えば、ロッカーアームの主板部をカード収容スペースの下部に設けることができ、カードソケット全体として小型化を達成することができる。
【0028】
本発明の第4のカードソケットによれば、カードソケットのカード挿脱方向における寸法を大きくすることなく、ロッカーアームの揺動動作に要する十分なトルクをロッカーアームに加えることができる。
【0029】
本発明の第5のカードソケットによれば、カードソケットのカード幅方向における寸法を大きくすることなく、ロッカーアームに必要なトルクを加えることができる。なお、本発明の第5のカードソケットによれば、第1板部の延びる方向と前記第3板部の延びる方向とは0度ではない所定角度をなすこととなる。
【0030】
本発明の第6のカードソケットによれば、カード排出機構の誤動作防止機能を更に高めることができると共に、カード未挿入時にロッカーアームが誤って第1の揺動位置に移動してしまうことを防ぐことができる。
【0031】
本発明の第7又は第8のカードソケットによれば、良好な操作性を保持しつつ、カード排出機構の誤動作防止機能を更に高めることができる。
【0032】
本発明の第9のカードソケットによれば、操作部材をカード挿入方向に押し込んだ場合でも、カード収容スペース内に完全に収容されているカードの後縁を押すことがないので、カードに不要な力が加わることによるカード破損の可能性を下げることができる。
【0033】
本発明の第10のカードソケットによれば、カード幅方向における大型化を避けることができ、投影面積を小さくすることができる。
【0034】
本発明の第11又は第12のカードソケットによれば、投影面積をできる限り小さくしつつ、スライダや操作部材の夫々の寸法を比較的大きくとることができる。
【0035】
本発明の第13のカードソケットによれば、所定寸法のカードが挿入された場合には、意に反した当該カードの抜け落ちを防止することができる。
【0036】
例えば、小型のメモリカードの分野においては、カード長さ方向における寸法は異なるがカード幅方向及びカード厚み方向における寸法においては実質的に差異のないカードであって、電極パッドの配置についても互換性のある二種類のカードがある。本発明の第14のカードソケットによれば、一つのカードソケットで上述したような二種類のカードに対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図1乃至図23を用いて、本発明の実施の形態によるカードソケットについて詳細に説明する。
【0038】
図1に示されるように、本発明の実施の形態によるカードソケット100は、インシュレータ10及びカバー20からなるケース30と、スライダ40と、第1の圧縮バネ50と、ロッカーアーム60と、第2の圧縮バネ70と、ボタン80とを備えている。
【0039】
ケース30は、インシュレータ10の底部11とカバー20とで規定されたカード収容スペース32を備えている。インシュレータ10のY方向後端の縁10aとカバー20のY方向後端の縁20aとは、カード収容スペース32にカード200(例えば、図15参照)を挿脱可能とするための開口部34を規定する。開口部34は、Y方向から見た場合、X方向に長く、Z方向に短い、略長方形状を有している。
【0040】
インシュレータ10には、複数の端子36が保持されている。各端子36の一端はZ方向においてカード収容スペース32内に突出している。各端子36がバネ性を有することから、カード200がカード収容スペース32に収容された際には、カード200は端子36によりカバー20側に押し付けられることになる。
【0041】
図2乃至図4に示されるように、インシュレータ10は、底部11に加えて、第1乃至第3の壁部12〜14を有している。第1乃至第3の壁部12〜14は、底部11の三方を囲んでいる。底部11は、カード収容スペース32の底面を形成する第1の底部11aと、第1の底部11aよりも所定深さだけ窪んだ第2の底部11bとを備えている。第2の底部11bは、後述するように、ロッカーアーム60を揺動可能に収容する場所である。なお、本実施の形態において“所定深さ”は、ロッカーアーム60の板厚に等しい。第2の底部11bのY方向略中央には、円板形状を有し且つ第2の底部11bからZ方向に突出した軸11cが設けられている。軸11cは、後述するように、ロッカーアーム60の揺動動作の支点となるものである。軸11cのX方向内側には階段状穴部11dが形成されている。この階段状穴部11dは、底部11の裏面まで達している。
【0042】
図1乃至図3から理解されるように、第2の壁部13は、Y方向において、開口部34から最も遠い位置に存在する壁部であり、比較的厚い厚壁部13aと比較的薄い薄壁部13bとを備えている。薄壁部13bは、厚壁部13aからX方向に沿うようにして延設されている。第2の壁部13は、Y方向において薄壁部13bと一定距離を開けて配置されたガイドレール部13cを備えている。ガイドレール部13cは、第2の底部11bからZ方向に向かって突出し、且つ、厚壁部13aからX方向に沿って延びている。薄壁部13bとガイドレール部13cとの間には、バネ収容溝13dが形成されている。このバネ収容溝13dは、厚壁部13a内にX方向に延びるようにして形成されたバネ収容穴13eと一体となり、第2の圧縮バネ70を収容するためのバネ収容部13fを構成している。
【0043】
図2乃至図4に示されるように、第3の壁部14は、第2の壁部13からY方向に延びる第1部14aと、第1部14aよりもX方向において厚く形成された第2部14bと、第2部14bよりもZ方向において窪んでいる第3部14cと、第3部14c内に形成された溝部14dと、第3部14cから更にY方向に延びる第4部14eを備えている。溝部14dは、Z方向下側に向かって深さを有し且つY方向に延びる溝であり、図4に特に明確に示されるように、溝部14dの内側壁のうちX方向外側の一方と、第4部14eの内壁とは一直線上に並ぶように形成されている。
【0044】
図2及び図4に示されるように、第2の底部11b上には島部15が形成されている。島部15は、X方向において軸11cよりもカード収容スペースから離れた位置に位置し、Y方向の略中央から開口部34に向かって延びるような形状を有している。島部15は軸11cと同じ高さとなるように形成されており、島部15の軸11cに最も近い位置にはY方向に延びる立設壁部15aが形成されている。立設壁部15aは、後述するように、第3の壁部14の第2部14bと共にスライダ40の後端部分を受けるガイド部を構成する。また、島部15のY方向前端の縁部15bは、スライダ40の後端位置を規定する。島部15のY方向後端付近にはZ方向に突出した突台部15cが設けられている。突台部15cの高さは、第3の壁部14の第3部14cの高さに等しい、
【0045】
第2の底部11b上には、更に、第1の突部16が形成されている。第1の突部16は、XZ平面内においてL字上の断面を有するものであり、島部15からY方向において離れた位置からZ方向に突出し、その後、X方向に向かって延びている。第1の突部16は、第2の底部11bとの間に隙間16aを規定している。この隙間16aは後述するようにロッカーアーム60の一部分を収容可能なスペースである。本実施の形態における隙間16aは、ロッカーアーム60の板厚よりも僅かに広くなるように形成されている。なお、本実施の形態においては、図4に示されるように、隙間16aを規定している面16bと島部15の面15dとは略一直線上に配されている。
【0046】
図4に最もよく示されるように、第1の突部16は、第3の壁部14の第4部14eから一定距離を開けて配置されている。第1の突部16と第4部14eとの間の距離は、溝部14dのX方向の幅に等しい。第1の突部16は、島部15との間に、第1の領域11eを規定している。この第1の領域11eの役割については、ロッカーアーム60の説明時に併せて説明する。
【0047】
インシュレータ10は、第1の突部16から更にY方向に離れた位置において、Z方向に突出した第2の突部17を備えている。第2の突部17は、第1の突部16と同様に、第3の壁部14の第4部14eから一定距離を開けて配置されている。第2の突部17と第4部14eとの間の距離もまた、溝部14dのX方向の幅に等しい。第2の突部17は、第1の突部16との間に第2の領域11fを規定している。第2の領域11fの役割については、ロッカーアーム60の説明時に併せて説明する。
【0048】
図1を再び参照すると、インシュレータ10のうち、第2の突部17が形成されている部分10bは、開口部34を規定する縁10aよりもY方向外側に向かって突出している。同様に、カバー20にも、開口部34を規定する縁20aよりもY方向に突出した部分20bが設けられている。これら部分10bと部分20bとは、インシュレータ10とカバー20とが組み合わされることにより、開口部34よりもY方向外側に張り出した張出部38を形成する。この張出部38の機能については、ボタン80の押圧操作の詳細を述べる際に説明する。
【0049】
図1に示されるように、カバー20は、インシュレータ10の溝部14dに対応する位置に片持ちバネ22を備えている。片持ちバネ22は、カバー20から前方下側に向かって延びており、後述するようにボタン80をY方向において突出させる役割を果たす。また、カバー20には、ガイド板部24が形成されている。ガイド板部24は、カバー20からZ方向下側に向かって突出した板状部であり、Y方向に延びている。このガイド板部24は、カバー20の上面にコの字状に切り込みを入れた後、Z方向に折り込むことで形成できる。
【0050】
図5及び図6に示されるように、スライダ40は、Y方向に延びる略直方体形状の主部41と、主部41からX方向に向かって突出したカード受部42とを備えている。主部41とカード受部42との間には、被ガイド溝部43が形成されている。この被ガイド溝部43は、カバー20のガイド板部24を受け入れる部分である。主部41のZ方向下側には突出部44が設けられている。突出部44は、XY平面内において長方形形状の断面を有しており、第2の底面11b上をスライドする。本実施の形態における突出部44の突出量は、後述するロッカーアーム60の厚みに等しい。
【0051】
スライダ40の主部41の後端は、Y方向に延びる被ガイド部45を構成している。被ガイド部45は、X方向において主部41の他の部分よりも幅が狭く構成されており、2つの肩部46,47が形成されている。被ガイド部45は、インシュレータ10において島部15の立設壁部15aと第3の壁部14の第2部14bとにより規定されたガイド部に収容される。このガイド部と上述したカバー20のガイド板部22及びスライダの被ガイド溝部43により、例えば、スライダ40にX方向に向かう力がかかったとしても、Y方向におけるスライド動作が保証される。
【0052】
Y方向においてスライダ40の肩部46,47が立設壁部15aと第2部14bとに当接するとき、スライダ40の突出部44は、島部15の前方の縁部15bに当接し、以降、Y方向後方に移動することを止められる。本実施の形態においては、スライダ40がカード200挿入時にカード200と共に奥まで移動した位置を第1の位置とし、カード200排出時に島部15等によりY方向後方に向かう移動を止められたときのスライダ40の位置を第2の位置とする。
【0053】
スライダ40は、Y方向に延びるようにして主部41内部に形成された穴部48を備えており、当該穴部48内に第1の圧縮バネ50を保持している。第1の圧縮バネ50は、スライダ40と共にインシュレータ10に組み込まれることにより、スライダ40を、常時、第2の位置に向けて付勢する。
【0054】
本実施の形態においては、スライダ40のカード受部42のZ方向位置は、インシュレータ10に設けられたバネ収容部13fのZ方向上端部よりも上方である。即ち、スライダ40がカード挿入に伴い第1の位置まで押された際に、カード受部42は、ガイドレール部13cやバネ収容部13fに収容された第2の圧縮バネ70とぶつかることなく、バネ収容部13fのZ方向上側に位置することができる。従って、全体としてカードソケット100の投影面積を小さくすることができる。
【0055】
図7に示されるように、ロッカーアーム60は、軸穴部61aを形成された主板部61を備えている。主板部61は軸穴部61aを挟んだ2つの端部として、第1及び第2の端部61b及び61cを有している。第1の端部61bには、断面逆U字形状の第1の被押圧部62が形成され、主板部61の第2の端部には後縁受部63が形成されている。第1の被押圧部62はU字の底部分がZ方向上方に向かって突出するように形成されている。後縁受部63は、所定寸法のカード200が挿入された際にカード200の後縁210を受けて、カード200の脱落を防止するためのものであり、第2の端部61cからZ方向に向かって突出している。更に、ロッカーアーム60のうち、軸穴部61aと第2の端部61cとの間には、Z方向に突出する第2の被押圧部64が設けられている。
【0056】
詳しくは、主板部61は、片刃腰鉈状の第1板部61dと、第1板部61dに接続されたL字状の第2板部61eと、第3板部61fとを有している。第1板部61dの先端は僅かにカーブした形状を有しており、後述するように、第1の位置に存するスライダ40の突出部44をY方向において受け止めることにより、スライダ40が第2の位置に移動するのを阻止するストッパ部61d1として機能する。第3板部61fは、軸穴部61aを介して、第1板部61dに接続されるようにして形成されている。第1板部61dの延びる方向と第3板部61fの延びる方向とは同一直線状にはなく、第1板部61dと第3板部61fは“へ”の字状をなしている。主板部61には、更に、規制部65が設けられている。規制部65は、Z方向において、第1及び第2の被押圧部62,64並びに後縁受部63の突出している方向とは逆の方向に向かって軸穴部61aの近傍から突出している。
【0057】
ロッカーアーム60は、軸穴部61aに対して軸11cを回転可能に嵌め込むことにより、インシュレータ10の第2の底部11bに取り付けられる。この際、規制部65はインシュレータ10に設けられた階段状穴部11dに収容され、ロッカーアーム60の揺動動作を規制すると共に、ロッカーアーム60の主板部61がインシュレータ10の第2の底部11bに平行な面内で揺動可能とするように機能する。また、第1の底部11aと第2の底部11bとの段差と、第1板部61d又は第3板部61fとにより、ロッカーアーム60の揺動可能範囲が規定される。本実施の形態においては、ロッカーアーム60の第3板部61fが第1の底部11aと第2の底部11bとの境界部分に当接するとき、ロッカーアーム60が第1の揺動位置にあるものとし、ロッカーアーム60の第1板部61dが第1の底部11aと第2の底部11bとの境界部分に当接するとき、ロッカーアーム60が第2の揺動位置にあるものとする。
【0058】
ロッカーアーム60の第1の被押圧部62は、インシュレータ10のガイドレール部13cを跨ぐようにして配置される。これにより、第1の被押圧部62は、第2の圧縮バネ70から常時スライダ40側に移動するような力を受ける。換言すると、第2の圧縮バネ70はロッカーアーム60を第1の揺動位置に向けて常時付勢している。
【0059】
図1、図2及び図4から理解されるように、インシュレータ10にロッカーアーム60が取り付けられると、第2の被押圧部64は第1の領域11e内において移動可能となり、後縁受部63は第2の領域11f上を移動可能となる。第1及び第2の領域11e及び11fが設けられると共に、第1の突部16と第2の底部11bとの間に隙間16aが設けられていることから、ロッカーアーム60が第1及び第2の揺動位置間において揺動動作をする間、第2の被押圧部64や後縁受部63はスムーズに所定の動作を行うことができる。
【0060】
更に詳しくは、ロッカーアーム60の第1板部61dは、例えば、図16に示されるように、ロッカーアーム60が第2の揺動位置にあるとき、Y方向に沿うようにして第2の壁部13に向かって延びると共に、片刃腰鉈状の刃部61d2がX方向外側(第3の壁部14に向かって)に張り出すような形状を有している。また、第2板部61eは、ロッカーアーム60が第2の揺動位置にあるとき、第1板部61dの先端から出発して、スライダから離れるようにしてX方向に突出した後に第2の壁部13に向かうような形状を有している。すなわち、第2板部61eは、ロッカーアーム60が第2の揺動位置にあるとき、第1板部61dの先端から出発して、第1の壁部12に向かうようにしてX方向に突出した後に第2の壁部13に向かうような形状を有している。
【0061】
一方、ロッカーアーム60の第3板部61fは、例えば、図19に示されるように、ロッカーアーム60が第1の揺動位置にあるとき、Y方向に沿うようにして開口部34に向かって延びている。
【0062】
上述した位置的関係により、ロッカーアーム60とスライダ40とは、図14に示されるような動作を行う。図14において、スライダ40に関して点線で示される位置は第1の位置であり、実線で示される位置は第2の位置である。一方、ロッカーアーム60に関して点線で示される位置は第1の揺動位置であり、実線で示される位置は第2の揺動位置である。図14を参照すると、ロッカーアーム60は第2の圧縮バネ70により第1の被押圧部62に対して常時白抜き矢印で示される力(「第1の力」と呼ぶ)を受けているが、スライダ40が第2の位置にあるときには、スライダ40の突出部44により、第1の揺動位置に移動することを阻止されている。スライダ40が挿入されたカードと共にY方向にスライドさせられると、ロッカーアーム60は点線で示されるように第2の揺動位置に移動可能となり、今度は逆に、スライダ40が第2の位置に移動することを阻止する。この状態において、黒矢印で示される力(「第2の力」と呼ぶ)を第2の被押圧部64に加えると、ロッカーアーム60は実線で示される第2の揺動位置に向かって移動する。それにより、スライダ40の移動を阻害するものがなくなり、スライダ40も実線で示される第2の位置に向かって移動する。このスライダ40のY方向に向かう移動により、カードがカード受部42からの力を受け、カードソケット100から排出される。
【0063】
かかる動作において、ロッカーアーム60の第2の被押圧部64に対して第2の力(図14において黒矢印で示される力)を加えるための部材がボタン80である。ボタン80は、図8乃至図13に示されるように、長板状の主部81と、主部のY方向後端からZ方向下側に向かって突出した被押圧部82を備えている。ここで、被押圧部82は、ケース30からカード排出方向に向かって突出する部分であり、カード排出動作を行う際に、ユーザにより押圧される部分である。
【0064】
図15,18及び22を参照して、ボタン80、特にその主部81とスライダ40の主部41とはY方向に延びる単一の仮想直線上に配置されている。この仮想直線は、図15及び図18から明らかなように、X方向においてカード収容スペース32の外側に位置している。すなわち、ボタン80及びスライダ40の主部41は、カード200の挿脱動作の間、カード200と接触することはない。一方、ロッカーアーム60の軸穴部61a及びインシュレータ10の軸11cは、X方向において該仮想直線から離れた位置に設けられている。特に、本実施の形態においては、ロッカーアーム60の軸穴部61a及びインシュレータ10の軸11cは、該仮想直線よりX方向内側、即ち、第1の壁部12に近い位置に位置している。これにより、ボタン80及びスライダ40の主部41とロッカーアーム60とは概略並列配置されることになり、カードソケット100のY方向における寸法を小さくすることができる。
【0065】
ボタン80の主部81には、ロッカーアーム60の第2の被押圧部64を収容するための収容穴部83が形成されている。本実施の形態における収容穴部83は、Z方向に貫通する貫通穴(孔)である。収容穴部83よりも被押圧部82に近い位置には空間84が形成される。空間84は、ロッカーアーム60が第2の揺動位置にあるとき、ロッカーアーム60の後縁受部63を収容する部分である。即ち、空間84は、インシュレータ10の第2の領域11fに対応して設けられるものである。空間84を規定するため、主部81は、空間84に対応する部分のみ薄く形成されている。その結果、主部81の下面81aは空間84の上面84aよりもZ方向において低い位置にある。なお、主部81の下面81aは、インシュレータ10に組み込まれた際に、Z方向において突台部15cの上面と同じ高さに位置する。一方、空間84の上面84aは、インシュレータ10に組み込まれた際に、Z方向において第1の突起16の上面と同じ高さに位置する。
【0066】
ボタン80の後端に位置する被押圧部82には突部収容部82aが設けられている。この突部収容部82aは、ボタン80がY方向に押し込まれた際に、インシュレータ10の第2の突起17を収容するためのものである。突部収容部82aが第2の突起17を収容すると、ボタン80はそれ以上Y方向に押し込めなくなる。このことから、第2の突部17は、ボタン80のY方向前方に向かう動きを規制するものであると言える。
【0067】
ボタン80の主部81前端からは、突出頭部85がY方向に向かって突出している。突出頭部85は、主部81からY方向に向かって突出した略直方体状の第1部85aと、第1部85aから更にY方向前方に突出した第2部85bとを有している。第2部85bはY方向前方に向かうにしたがってZ方向に向かってカーブする曲面を有しており、ボタン80がカードソケット100内に組み込まれた際には、カバー20に設けられた片持ちバネ22により、Y方向後方に向かう力を受ける。即ち、カバー20に設けられた片持ちバネ22は、ボタン80をケース30から外側に突出させる方向に常時付勢するものである。なお、図13に最も良く示されるように、突出頭部85における第2部85bは第1部85aよりもX方向外側に向かって突出しており、その結果、第1部85aと第2部85bとの境界部分には肩部85cが形成されている。この肩部85は、ボタン80がY方向後端に向かって移動させられた際に、インシュレータ10の第3の壁部14の第4部14eの前端部分に当接して、ボタン80の動きを止める機能を有する。すなわち、肩部85は、ボタン80のケース30からの突出量を規定するものである。
【0068】
図9乃至図12に示されるように、主部81のX方向外側に位置する縁の下部及び突出頭部85の下部には、Z方向下側に向かって突出した被ガイドレール86が設けられている。被ガイドレール86は、Y方向にまっすぐ延びている。被ガイドレール86は、インシュレータ10の溝部14dに、Y方向に移動可能となるように、嵌め込まれる。それにより、ボタン80は、Y方向に沿ってスライド可能となるようにインシュレータ10に保持される。なお、第1及び第2の突部16,17と第3の壁部14の第4部14eとの間には、上述したように、溝部14dに対応する幅の隙間が設けられていることから、被ガイドレール86は、第1及び第2の突部16,17と第3の壁部14の第4部14eとによってもX方向に移動することを防止され、ボタン80は適切にY方向に移動することができる。
【0069】
主部81のX方向内側の縁からは、被ガイドレール86に対してX方向において対向するようにしてZ方向に突出した壁部87が更に設けられている。壁部87は、被ガイドレール86が溝部14dにガイドされ、ボタン80がY方向にスライドする際、島部15の上面であって、突台部15cの内側をスライドする。これに加えて、前述したように、空間84の上面84aが第1の突部16の上面の上をスライドするように構成されていることから、Z方向おけるボタン80の動きも適切に規制されている。
【0070】
図13に最も良く示されるように、収容穴部83におけるY方向後端側の面は、インシュレータ10にボタン80が取り付けられた状態において、X方向内側且つY方向前方に向かってカーブするようなカム面83aを形成している。カム面83aのX方向両端部分とY方向において対向する部分には第1受部83b及び第2受部83cが形成されている。第1受部83bは、ロッカーアーム60が第1の揺動位置にあるとき、第2の被押圧部64をY方向において受ける部分であり、第2受部83cは、ロッカーアーム60が第2の揺動位置にあるとき、第2の被押圧部64をY方向において受ける部分である。本実施の形態においては、更に、ポケット83dが設けられている。このポケット83dは、所定長さ以上のカードが挿入された際に役立つものである。所定長さ以上のカードが挿入された場合の動作については後で詳述する。
【0071】
上述したように、ボタン80はカバー20の片持ちバネ22によりケース30の外側に向かって突出する方向に常時付勢されている。そのため、ロッカーアーム60が第1の揺動位置に位置し、スライダ40がカード排出方向に向かうのを阻止しているとき、ボタン80は片持ちバネ22によりカード排出方向に向かう力を加えられ、第1受部83bにて第2の被押圧部64を受け止めている。この状態で、ボタン80を片持ちバネ22のバネ力に抗ってカード挿入方向(Y方向に沿って第2の壁部13に向かって)に押し込むと、第2の被押圧部64は第1受部83bを離れ、カム面83aに当接する。その状態で、ボタン80をカード挿入方向に更に押し込むと、第2の被押圧部64はカム面83aにガイドされて、X方向外側に向かう力、即ち図14において黒矢印で示される第2の力を受ける。即ち、カム面83aは、ボタン80に加えられたY方向の押力をX方向に向かう第2の力に変換して、第2の被押圧部64に伝達する。これにより、ロッカーアーム60は、点線で示される第1の揺動位置から実線で示される第2の揺動位置に向かって移動させられる。その状態で、ボタン80を離すと、ボタン80はカバー20の片持ちバネ22による付勢のため、カード排出方向に若干移動させられ、その結果、第2の被押圧部64は第2受部83cによって受け止められる。
【0072】
ここで、図13、図15乃至図17、並びに、図18乃至図20を参照して、カード200をY方向に沿ってカードソケット100内部に挿入する際の各部の動作について更に総括的に説明する。
【0073】
図15乃至図17に示されるように、カード200を挿入する前の状態においては、スライダ40が第1の圧縮バネ50によりカード排出方向に向かって付勢され、第2の位置に位置している。この状態においては、ロッカーアーム60の第1板部61dの片刃腰鉈状の刃部61d2のX方向外側にスライダ40の突出部44が位置していることから、ロッカーアーム60は第2の圧縮バネ70による第1の力(図14における白抜き矢印参照)を受けているにもかかわらず、第1の揺動位置に移動することができない。その状態では、ロッカーアーム60の第2の被押圧部64は収容穴部83内の第2受部83cによる受け止められている。
【0074】
この状態において、図18乃至図20に示されるように、カード200をカード収容スペース32内に収まるまで挿入すると、カード受部42にカード200の挿入に伴う力が加えられ、それによりスライダ40は第1の位置に向けてスライドさせられる。それにより、スライダ40の突出部44がロッカーアーム60の刃部61d2をX方向において抑えていた状態が解除されると、ロッカーアーム60は、第2の圧縮バネ70から第1の力を第1の被押圧部62に加えられていることから、軸11cを中心に回転し、ストッパ部61d1がスライダ40の突出部44のY方向後端側に入り込むことになる。スライダ40は、第1の圧縮バネ50により第2の位置に向かうように常時付勢されていることから、カード挿入に伴う力が除かれた後は、Y方向後方(カード排出方向)に戻ろうとする、即ち、第2の位置に戻ろうとするのであるが、その動きをロッカーアーム60のストッパ部61d1によって阻止される。
【0075】
この動作の間、ボタン80は、カバー20の片持ちバネ22がボタン80をカード排出方向に付勢していることに加え、ロッカーアーム60が第2の揺動位置から第1の揺動位置に移動したことに伴い、第2の被押圧部64が第2受部83cにより受け止められていた状態が解除されることから、ボタン80はカード排出方向に移動し、第1受部83bが第2の被押圧部64を受け止めた状態にて止まることとなる。その結果、ボタン80の後端に位置する被押圧部82は、ケース外部に突出することとなる。なお、この状態において、ロッカーアーム60の後縁受部63はカード200の後縁210の後方に回り込んでいることから、カード200がカードソケット100から脱落することが防止される。
【0076】
ボタン80が片持ちバネ22によりカード排出方向に付勢され且つロッカーアーム60が第2の圧縮バネ70により第1の揺動位置に付勢されていることからも明らかなように、ボタン80がケース外部に突出した状態は、ボタン80を意図的に押し込まなければ解除できないので、例えば、カードソケット100が搭載された機器に多少の衝撃が加わった程度では、ロッカーアーム60が第2の揺動位置に移動することはなく、カード排出機構が誤動作するおそれもない。加えて、カード挿入時にはカード200をカードソケット100内に挿入する以外に何らわずらわしい作業を行わずに、図18乃至図20に示されるような状態が維持されることから、操作性においても優れている。加えて、ロッカーアーム60を揺動動作させるための第1及び第2の力が加えられる第1及び第2の被押圧部62及び64をロッカーアーム60の支点(軸11c及び軸穴部61a)と挟んで互いに反対側に位置するように構成したことから、全体的にカードソケット100の投影面積を大きくすることなく、上記の高信頼性及び高操作性を得ることができている。
【0077】
図21に示されるように、ボタン80の被押圧部82をカード挿入方向(Y方向前方)に押し込むと、図13を用いてボタン80のカム面83aと第2の被押圧部64とについて詳述したようにして、第2の被押圧部64に第2の力が加えられ、ロッカーアーム60が第2の揺動位置まで移動させられる。それにより、ストッパ部61d1がスライダ40の突出部44を受け止めていた状態が解除され、スライダ40は、第1の圧縮バネ50に付勢されて、第2の位置まで移動させられる。この移動はカード受部42によりカード200に伝えられ、その結果、カード200はカードソケット100から排出される。
【0078】
ここで、再び図21を参照すれば明らかなように、本実施の形態におけるケース30は、ボタン80の突出部たる被押圧部82の近辺において開口部34よりもY方向後方に張り出した張出部38を有している。従って、ボタン80を押し込んでもカード200の後縁210を押し込むことはないことから、カード200を誤って押し込むことにより破損させるという事態を避けることができる。加えて、ボタン80を押し込み、それによりカード排出機構が動作してカード200が排出されてもボタン80を押した指に当って止まることから、カード200が意図しない場所まで飛び出してしまうという問題も回避される。
【0079】
更に、本実施の形態において、ロッカーアーム60は、第1及び第2の揺動位置間に第3の揺動位置を有する。この第3の揺動位置にロッカーアーム60が位置しているとき、図22及び図23に示されるように、後縁受部63はボタン80の空間84内に位置しているが、ストッパ部61d1はスライダ40の突出部44をY方向において受け止めている。逆に言うと、ロッカーアーム60の第1板部61dと第3板部61fとのなす角や第1板部61dにおける刃部61d2の張出量(即ち、ストッパ部61d1の縁部長さ)は上記第3の揺動位置を可能とするようにして選択されている。
【0080】
ロッカーアーム60が第3の揺動位置を有することにより、カードソケット100はY方向の長さにおいて異なる2種類のカードに対応することができることとなる。すなわち、スライダ40が第1の位置にあるときのカード受部42から、ロッカーアーム60が第1の揺動位置にあるときの後縁受部63までのY方向距離(「所定長さ」という)よりもY方向長さの短いカード200を挿入した際には、カード200を挿入しきってしまえば、後縁受部63の動作を邪魔する部材はないので、カード挿入に伴って、ロッカーアーム60が第2の揺動位置から第1の揺動位置まで移動することができる。しかし、所定長さよりもY方向長さの長いカードを挿入した場合、スライダ40を第1の位置まで押し込んで、ロッカーアーム60が第2の圧縮バネ70からの第1の力に従って回転可能となっても、後縁受部63がカードの側部に当ってしまうことから、ロッカーアーム60は第1の揺動位置には到達することができず、第3の揺動位置に位置することとなる。この場合でも、ストッパ部61d1は適切なサイズに設計されていることからスライダ40の突出部44をY方向後方において受け止めることができる。
【0081】
この際、第2の被押圧部64は第2受部83cからは離れるものの第1受部83bに到達する前に、ロッカーアーム60の揺動動作が停止してしまう。仮に、ボタン80の収容穴部83がカム面83aとそれに略平行な面とで規定される穴部であってポケット部83dを有しないものとすると、ボタン80のケース30からの突出量を十分なものとすることができないことから、その後のボタン80の操作がしづらくなる。しかしながら、本実施の形態においては、収容穴部83内にポケット部83dを設けていることから、ボタン80はカバー20の片持ちバネ22により付勢されることにより、カード排出方向に移動してケース外部に突出する一方、第2の被押圧部64はポケット部63dのY方向前端に設けられた第3受部83eにて受け止められる。このようにして、ロッカーアーム60は第3の揺動位置にあるとき、その状態を適切に保持されることとなる。
【0082】
なお、本実施の形態においては、ボタン80をカード排出方向に付勢する手段として、カバー20に設けられた片持ちバネ22を例示して説明してきたが、ボタン80をカード排出方向に付勢する手段であればよく、当該付勢手段が片持ちバネ22に限定されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態によるカードソケットの分解斜視図である。
【図2】図1に示されるインシュレータの斜視図である。
【図3】図2に示されるインシュレータの部分拡大図である。
【図4】図2に示されるインシュレータの他の部分に関する部分拡大図である。
【図5】図1に示されるスライダの斜視図である。
【図6】図5に示されるスライダを図5とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
【図7】図1に示されるロッカーアームの斜視図である。
【図8】図1に示されるボタンの斜視図である。
【図9】図8に示されるボタンを図8とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
【図10】図8に示されるボタンの正面図である。
【図11】図8に示されるボタンの側面図である。
【図12】図8に示されるボタンの他の側面図である。
【図13】図8に示されるボタンの上面図である。
【図14】本発明の実施の形態によるカードソケットにおけるスライダとロッカーアームとの関係を示す模式図である。
【図15】カード挿入開始時のカードソケットの状態を示す斜視図である。
【図16】図15に示される状態に対応した断面図である。
【図17】図15に示される状態をカードソケットの底部側から見た場合の図であって、主要な部品の関係を示す図である。
【図18】カード収容時のカードソケットの状態を示す斜視図である。
【図19】図18に示される状態に対応した断面図である。
【図20】図18に示される状態をカードソケットの底部側から見た場合の図であって、主要な部品の関係を示す図である。
【図21】ボタンの被押圧部とケースの張出部との関係を示す図である。
【図22】長めのカードが挿入された場合のカードソケットにおける各部の状態を示す斜視図である。
【図23】図22に示される状態をカードソケットの底部側から見た場合の図であって、主要な部品の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
10 インシュレータ
10a 縁
11 底部
11a 第1の底部
11b 第2の底部
11c 軸
11d 階段状穴部
11e 第1の領域
11f 第2の領域
12 第1の壁部
13 第2の壁部
13a 厚壁部
13b 薄壁部
13c ガイドレール部
13d バネ収容溝
13e バネ収容穴
13f バネ収容部
14 第3の壁部
14a 第1部
14b 第2部
14c 第3部
14d 溝部
14e 第4部
15 島部
15a 立設壁部
15b 縁部
15c 突台部
16 第1の突部
17 第2の突部
20 カバー
20a 縁
22 片持ちバネ
24 ガイド板部
30 ケース
32 カード収容スペース
34 開口部
36 端子
38 張出部
40 スライダ
41 主部
42 カード受部
43 被ガイド溝部
44 突出部
45 被ガイド部
46 肩部
47 肩部
48 穴部
50 第1の圧縮バネ
60 ロッカーアーム
61 主板部
61a 軸穴部
61b 第1の端部
61c 第2の端部
61d 第1板部
61d1 ストッパ部
61d2 刃部
61e 第2板部
61f 第3板部
62 第1の被押圧部
63 後縁受部
64 第2の被押圧部
65 規制部
70 第2の圧縮バネ
80 ボタン
81 主部
82 被押圧部
83 収容穴部
83a カム面
83b 第1受部
83c 第2受部
83d ポケット部
83e 第3受部
84 空間
85 突出頭部
85a 第1部
85b 第2部
85c 肩部
86 被ガイドレール
87 壁部
100 カードソケット
200 カード
210 (カードの)後縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを挿脱可能に保持するためのケースと、
挿入されるカードを受けるためのカード受部を有し、第1及び第2の位置間においてスライド可能に前記ケース内に設けられたスライダであって、カード挿入時には当該カードと共に前記第1の位置に向かってスライドし、カード排出時には当該カードと共に前記第2の位置に向かってスライドするスライダと、
該スライダを前記第2の位置に向けて常時付勢する第1の付勢手段と、
支点部と該支点部を挟んで互いに反対側に設けられた第1及び第2の被押圧部とを有し、第1及び第2の揺動位置間において揺動可能となるように前記支点部を前記ケースに保持されたロッカーアームであって、前記第1の被押圧部と前記支点部との間にストッパ部を有し、且つ、前記スライダが前記第1の位置にあるときには当該ロッカーアームが前記第1の揺動位置に位置することにより前記ストッパ部にて前記スライダが前記第2の位置に向かってスライドするのを阻止するロッカーアームと、
該ロッカーアームの前記第1の被押圧部に第1の力を加えることにより該ロッカーアームを前記第1の揺動位置に向けて常時付勢する第2の付勢手段と、
前記ケースに移動可能に保持された操作部材であって、操作された際に前記ロッカーアームの前記第2の被押圧部に対して第2の力を加えることにより前記第2の付勢手段による第1の力に抗って該ロッカーアームを第2の揺動位置に向けて移動させる操作部材と
を備えるカードソケット。
【請求項2】
前記ケースは、カード収容スペースと、該カード収容スペースに対してカードを第1の方向に沿って挿脱可能とするための開口部とを有しており、
該開口部は、前記第1の方向に沿って見た場合において、前記第1の方向に直交する第2の方向に長く、且つ、前記第1及び第2の方向に直交する第3の方向に短い、略長方形状を有しており、
前記スライダは、前記第1の方向にスライド可能であり、
前記第2の付勢手段は前記第1の方向において前記カード収容スペースよりも前記開口部から遠い領域に位置するように前記ケース内に設けられ、前記第2の方向に沿って前記ロッカーアームの前記第1の被押圧部に対して前記第1の力を常時加える
請求項1記載のカードソケット。
【請求項3】
前記ロッカーアームは、第1及び第2の端部並びにその間に位置する前記支点部を有する主板部と、前記第1の端部に設けられた前記第1の被押圧部と、前記支点部と前記第2の端部との間に設けられた前記第2の被押圧部とを備えており、
該ロッカーアームは、前記主板部が前記第1及び前記第2の方向により規定される面内で揺動可能となるように、前記ケースに取り付けられている
請求項2記載のカードソケット。
【請求項4】
前記第2の付勢手段は圧縮バネを備えており、
前記ケースは、前記第1の方向において前記カード収容スペースよりも前記開口部から遠い領域において前記第2の方向に延びるガイドレール部と、該ガイドレール部から一定距離だけ前記第1の方向に離れるようにして設けられた壁部とを有しており、
前記ケースの前記ガイドレール部と前記壁部とは前記第2の付勢手段の前記圧縮バネを収容するバネ収容部を構成しており、
前記第1の被押圧部は、断面逆U字形状を有し、前記第3の方向に向かって前記第1の端部から突出しており、前記ガイドレール部を跨ぐようにして配置されることにより、前記第2の付勢手段の前記圧縮バネから前記第1の力を受ける
請求項3記載のカードソケット。
【請求項5】
前記ロッカーアームの前記主板部は、前記支点部に接続された片刃腰鉈状の第1板部と、該第1板部の先端に接続されたL字状の第2板部と、前記支点部を介して前記第1板部に接続された第3板部とを備えており、
前記第1板部は、前記ロッカーアームが前記第2の揺動位置にあるとき、前記支点部から前記第1の方向に沿うようにして前記壁部に向かって延びると共に、前記片刃腰鉈状の刃部が前記第2の方向に張り出すようにして形成されており、
前記第2板部は、前記第1板部の先端から出発して、前記スライダから離れた後に前記壁部に向かうような形状を有しており、
前記第1の被押圧部は、当該第2板部の先端に設けられており、
前記第3板部は、前記ロッカーアームが前記第1の揺動位置にあるとき、前記支点部から前記第1の方向に沿うようにして前記開口部に向かって延びている
請求項4記載のカードソケット。
【請求項6】
前記スライダは、前記第3の方向に突出した突出部を有し、
前記第1板部の先端は、前記ロッカーアームが前記第1の揺動位置にあるとき、前記突出部を前記第1の方向において受けることにより、前記ストッパ部として機能し、
前記突出部は、前記スライダが前記第2の位置にあり且つ前記ロッカーアームが前記第2の揺動位置にあるとき、前記第1板部の前記刃部を前記第2の方向において受けることにより、前記ロッカーアームが前記第1の揺動位置に向かって移動することを阻止する
請求項5記載のカードソケット。
【請求項7】
前記ロッカーアームの前記第2の被押圧部は、前記第3の方向に突出しており、
前記操作部材は、前記第1の方向に沿って移動可能となるように、前記ケースに保持されており、
該操作部材は、前記第2の被押圧部を収容するための収容穴部を有しており、
該収容穴部は、前記操作部材が前記第1の方向に沿って移動させられた際に、当該移動による前記第1の方向の力を前記第2の力に変換して前記第2の被押圧部に伝達するためのカム面を有する
請求項2乃至6のいずれかに記載のカードソケット。
【請求項8】
前記ロッカーアームは、所定寸法のカードが前記カード収容スペースに完全に収容された際に、当該カードの後縁を受けるための後縁受部を有しており、
該後縁受部は、前記ロッカーアームの前記第2の被押圧部よりも前記開口部に近い位置から前記第3の方向に向かって突出している
請求項2乃至7のいずれかに記載のカードソケット。
【請求項9】
前記ロッカーアームは、且つ、前記所定寸法のカードよりも前記第1の方向において長いカードが当該カードソケットに挿入されて前記スライダが前記第1の位置に位置しているとき、前記第1及び第2の揺動位置間に第3の揺動位置に位置しており、
前記ロッカーアームが前記第3の揺動位置にあるとき、前記ストッパ部は前記スライダが前記第2の位置に向かってスライドするのを阻止する一方、前記後端受部が前記第1の方向から見た場合に前記カード収容スペースと重ならない位置に位置している
請求項8記載のカードソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−40588(P2006−40588A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214885(P2004−214885)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】