カーブ半径推定装置
【課題】自車両がこれから走行しようとする道路のカーブ半径を推定するために自車両の実ヨーレートを用いるにもかかわらず、実ヨーレートの応答遅れに起因したカーブ半径の推定誤差を縮減する。
【解決手段】自車両の実車速Vnと実ヨーレートYawと実操舵角STRとに基づいて、自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径Ryawを推定する(S701ないしS703およびS708ないしS715)。したがって、自車両の過渡状態において実ヨーレートより正確に自車両の旋回挙動を反映し得る実操舵角を考慮しつつ、実ヨーレートを用いてカーブ半径を推定することが可能となり、よって、カーブ半径を推定するために実ヨーレートを用いるにもかかわらず、実ヨーレートの応答遅れに起因したカーブ半径の推定誤差を縮減することが容易となる。
【解決手段】自車両の実車速Vnと実ヨーレートYawと実操舵角STRとに基づいて、自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径Ryawを推定する(S701ないしS703およびS708ないしS715)。したがって、自車両の過渡状態において実ヨーレートより正確に自車両の旋回挙動を反映し得る実操舵角を考慮しつつ、実ヨーレートを用いてカーブ半径を推定することが可能となり、よって、カーブ半径を推定するために実ヨーレートを用いるにもかかわらず、実ヨーレートの応答遅れに起因したカーブ半径の推定誤差を縮減することが容易となる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定する技術に関するものであり、特に、その推定の精度を向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径(曲率半径)を推定する技術の一従来例が存在する(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−328451号公報
この従来例においては、自車両のステアリングホイールが運転者によって操作された操舵角と自車両のヨーレートとを択一的に用いることにより、自車両の進行路を表す第1のカーブ半径が算出される。さらに、自車両の前方に存在する静止物体(例えば、道路に固設された反射鏡)の位置を利用することにより、自車両の進行路を表す第2のカーブ半径が算出される。さらにまた、それら算出された2種類のカーブ半径に対して平均化処理を行うことにより、自車両の進行路を表す第3のカーブ半径が算出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、自車両の実車速と実ヨーレートとに基づいてカーブ半径を推定する技術について研究を行い、その結果、次のような知見を得た。
【0005】
自車両の実ヨーレートは、自車両から出力される物理量であって、本来自車両の実際の旋回挙動を表す物理量である。したがって、実ヨーレートを用いてカーブ半径を推定する場合には、理論上、自車両に関する車両特性情報(路面のカントに関するファクタを含むスタビリティファクタ)が反映されているため、カーブ半径をほぼ正確に推定することが可能である。
【0006】
これに対し、自車両の実操舵角は、自車両に入力される物理量であるため、実操舵角を用いてカーブ半径を推定するためには、車両特性情報を考慮することが不可欠となる。
【0007】
よって、実ヨーレートを用いてカーブ半径を推定する場合の方が、実操舵角を用いてカーブ半径を推定する場合するより簡単にカーブ半径を推定できることとなる。
【0008】
しかし、自車両がカーブ路を走行している際、自車両の旋回運動が完全に定常状態にあれば、自車両の真の進行方向とそのときに自車両に発生している実ヨーレートとが互いに整合するはずであるが、自車両の旋回運動が定常状態から外れるにつれて、自車両の真の進行方向と実ヨーレートとが互いに整合しない傾向が強くなる。実ヨーレートは、自車両への実操舵角の変化に依拠して自車両から出力される物理量であり、実操舵角の変化が実ヨーレートの変化として現れるまでに時間がかかるからである。実ヨーレートの応答遅れがあるのであり、これは、実ヨーレートが自車両の実際の旋回挙動を正確に反映しない現象を意味する。
【0009】
そのため、実ヨーレートを用いてカーブ半径を推定する場合には、自車両が完全な定常旋回状態にないと、カーブ半径の推定値が実際値からずれてしまう。
【0010】
例えば、自車両がカーブ路の出口に差し掛かり、カーブ路から直線路に移行しようとする段階に至ると、運転者は、ステアリングホイールを旋回位置に保持する保舵操作から、ステアリングホイールを中立位置に戻す切り戻し操作に移行する。このように実操舵角が変化する過渡状態において、実ヨーレートもそれに追従するように変化するはずであるが、その応答に遅れがある。そのため、カーブ路の出口付近においては、実ヨーレートを用いて推定されたカーブ半径が、実際のカーブ半径からずれてしまう傾向がある。
【0011】
そして、本発明者らは、実ヨーレートと実操舵角とを用いてカーブ半径を推定すれば、実ヨーレートは用いるが実操舵角は用いないでカーブ半径を推定する場合に生じ得る不都合を実操舵角を考慮することによって解消できるという知見を得た。
【0012】
本発明者らは、自らの研究によってそのような知見を得たのであり、この知見は前記特許文献1に開示されていない。
【0013】
上述の知見に基づき、本発明は、自車両がこれから走行しようとする道路のカーブ半径を推定するために自車両の実ヨーレートを用いるにもかかわらず、実ヨーレートの応答遅れに起因したカーブ半径の推定誤差を縮減することを課題としてなされたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
(1) 自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径として推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
自車両のステアリングホイールが運転者によって操作された角度を実操舵角として検出する操舵角センサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記ヨーレートセンサにより検出された実ヨーレートと、前記操舵角センサにより検出された実操舵角とに基づいて前記カーブ半径を推定する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【0015】
この装置によれば、自車両の実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいて、自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径が推定される。したがって、この装置によれば、自車両の過渡状態において実ヨーレートより素早く自車両の旋回挙動を反映し得る実操舵角を考慮しつつ、実ヨーレートを用いてカーブ半径を推定することが可能となり、よって、カーブ半径を推定するために実ヨーレートを用いるにもかかわらず、実ヨーレートの応答遅れに起因したカーブ半径の推定誤差を縮減することが容易となる。
【0016】
本項および下記の各項において「カーブ半径」は、カーブ路の曲率半径を意味する場合と、実質的なまたは完全な直線路の曲率半径(無限大または最大の有限値)を意味する場合とがある。
(2) 前記推定器が、
前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記カーブ半径を基礎値として推定する基礎値推定手段と、
前記実操舵角に関する物理量に基づいて前記基礎値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記基礎値を補正することにより、前記カーブ半径を推定する推定手段と
を含む(1)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0017】
この装置の一態様によれば、カーブ半径を推定するために実操舵角を用いるにもかかわらず、前記車両特性情報を考慮することなく、カーブ半径を推定することが可能となる。よって、この態様によれば、実操舵角を用いるにもかかわらず、カーブ半径を推定するための演算を簡単にすることが容易となる。
(3) 前記推定器が、さらに、前記カーブ半径の予想値が設定値以下であり、かつ、前記基礎値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合に、前記カーブ半径の推定を許可する許可手段を含む(2)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0018】
カーブ半径の予想値が設定値より大きい場合には、自車両が走行している道路が実ヨーレートの応答遅れが問題とならない道路であると判定し、一方、カーブ半径の予想値が設定値以下である場合には、自車両が走行している道路が、実ヨーレートの応答遅れが問題になるような曲率半径(旋回半径と等価である。)を有するカーブ路であると判定することが可能である。
【0019】
また、カーブ半径の基礎値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合には、自車両の走行状態が定常状態であると判定することが妥当である。
【0020】
さらに、自車両が走行している道路がカーブ路であり、かつ、そのときの自車両の走行状態が定常旋回状態である場合には、自車両が定常カーブ走行中であると判定することが妥当である。
【0021】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置によれば、カーブ半径の予想値が設定値以下であり、かつ、カーブ半径の基礎値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合に、前記補正量を用いたカーブ半径の推定が許可される。
【0022】
したがって、この装置によれば、自車両の走行状態が狭義の定常旋回状態から大きく外れていない場合に、実ヨーレートおよび実操舵角を用いてカーブ半径が推定される。よって、この装置によれば、カーブ半径の推定精度を容易に向上させ得る。
【0023】
本項および下記の各項における「カーブ半径の予想値」は、例えば、カーブ半径の基礎値として定義したり、実操舵角に基づいて推定されたカーブ半径として定義することが可能である。
(4) 前記推定器が、さらに、前記実車速が大きいほど短くなるように前記設定時間を設定する設定手段を含む(3)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0024】
前記(3)項に係る装置は、カーブ半径の推定を許可するためにカーブ半径の基礎値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が連続すべきであるとして設定された設定時間が固定値である態様で実施することが可能である。ここに「設定時間」は、自車両がカーブ路を走行した距離に対応している。
【0025】
一方、自車両がカーブ路を必要距離走行するのに必要な時間は、自車両の実車速によって異なる。実車速が大きいほど、その時間は短くなる。
【0026】
また、ある瞬間におけるカーブ半径の基礎値(概略的には実ヨーレートに対応する)のみを参照する場合には、自車両がカーブ路を走行している状態と、自車両が直線路上においてレーンチェンジを行っている状態とを互いに区別することは困難である。
【0027】
これに対し、カーブ半径の基礎値が、自車両がある距離を走行する期間中連続して、自車両が旋回状態にあることを示すか否かを判定することとすれば、自車両の旋回がカーブ路走行のために行われた状態と、レーンチェンジのために行われた状態とを互いに区別することが容易となる。
【0028】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置によれば、上記設定時間の長さが、自車両の実車速が大きいほど短くなるように設定される。
【0029】
したがって、この装置によれば、自車両が実際にはカーブ路を走行していない状態においてカーブ半径が不正確に推定されてしまう事態を容易に回避できる。
(5) 前記推定器が、前記カーブ半径の予想値が小さい場合に大きい場合より敏感に前記カーブ半径の推定値が前記実操舵角の変化に対して応答するように、前記カーブ半径を推定する手段を含む(1)ないし(4)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【0030】
カーブ半径の実際値が小さく、カーブ路が急に曲がっている場合であるほど、実操舵角の変化に対する実ヨーレートの応答遅れが大きく、よって、実ヨーレートが自車両の実際の旋回挙動を正確に反映しない傾向が強い。
【0031】
この事実に注目することにより、本項に係る装置によれば、カーブ半径の予想値が小さい場合に大きい場合より敏感にカーブ半径の推定値が実操舵角の変化に対して応答するように、カーブ半径が推定される。
(6) 前記推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記基礎値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記基礎値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記基礎値を補正することにより、前記カーブ半径を推定する手段を含む(2)ないし(4)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【0032】
この装置によれば、実車速および実ヨーレートには基づくが実操舵角には基づかないで推定されたカーブ半径の基礎値を、実操舵角に関連する物理量としての、実操舵角に関する一定角度当たりの基礎値の変化量と、一定時間当たりの実操舵角の変化量とに基づいて補正してカーブ半径を最終的に推定する場合において、カーブ半径の予想値が小さい場合に大きい場合より敏感にカーブ半径の推定値が実操舵角の変化に対して応答するように、カーブ半径を推定する態様の一例が提供される。
(7) 自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
自車両のステアリングホイールが運転者によって操作された角度を実操舵角として検出する操舵角センサと、
前記カーブ半径を推定するために、
(a)前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記カーブ半径を第1推定値として推定する第1推定手段と、
(b)それら実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいて前記カーブ半径を第2推定値として推定する第2推定手段と、
(c)それら推定された第1推定値と第2推定値とを選択的にまたは総合的に用いて前記カーブ半径の推定値の最終値を取得する最終値取得手段と
を有する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【0033】
カーブ半径を推定する手法として、実車速と実ヨーレートとには基づくが実操舵角には基づかないでカーブ半径を第1推定値として推定する第1の手法と、それら実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいてカーブ半径を第2推定値として推定する第2の手法とが考えられる。第2の手法を実施するに際し、前記(2)ないし(6)項のいずれかに記載の特徴を採用することが可能である。
【0034】
それら第1推定値および第2推定値は、共にカーブ半径の推定値である関係上、本来であれば互いに一致するはずであるが、自車両の走行状態によっては、互いに異なる可能性がある。この場合、それら2つの推定値の一方が他方より正確に真のカーブ半径を表していることもあれば、それら2つの推定値の合成値がいずれの推定値よりも正確に真のカーブ半径を表していることもある。いずれにしても、それら2つの推定値のうち必ず同じものをカーブ半径として出力するより、それら2つの推定値を選択的にまたは総合的に用いてカーブ半径を推定する方が、その推定精度を容易に向上させ得る。
【0035】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置によれば、実車速と実ヨーレートとには基づくが実操舵角には基づかないで推定されたカーブ半径と、それら実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいて推定されたカーブ半径とを選択的にまたは総合的に用いてカーブ半径の推定値の最終値が取得される。
(8) 前記最終値取得手段が、前記第1推定値と第2推定値とのうち大きい方を前記カーブ半径の最終値として選択する選択手段を含む(7)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0036】
第1推定値および第2推定値は、その取得に際して実ヨーレートが用いられる点で互いに共通する。一方、前述のように、実ヨーレートの応答遅れが原因となり、例えば、カーブ路の出口付近においては、実ヨーレートを用いて取得されたカーブ半径の推定値が実際値より小さくなる傾向がある。
【0037】
したがって、それら第1推定値および第2推定値のうち大きい方が、小さい方より正確にカーブ半径の実際値を反映していると推論することが妥当である。
【0038】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置によれば、第1推定値と第2推定値とのうち大きい方がカーブ半径の最終値として選択される。
【0039】
本項に係る装置は、後に(18)項において説明するように、自車両が追尾すべき先行車両が存在するか否かを判定する判定器と共に使用することが可能である。
【0040】
一方、カーブ路の出口付近においては、一般に、曲率半径が定常的である曲線ではなく、徐々に曲率半径が大きくなるクロソイド曲線となっている。そのため、自車両が先行車両に追従して走行している状態においては、カーブ路のうち、先行車両が走行している部分の曲率半径が、自車両が走行している部分の曲率半径に対し、自車両が先行車両から離れるにつれて増加し、その結果、先行車両に対応するカーブ半径と自車両に対応するカーブ半径との間に差が発生する。
【0041】
本項に係る装置を実施すれば、カーブ路の出口付近においては、実操舵角は用いずに実ヨーレートは用いて推定されたカーブ半径ではなく、実操舵角も実ヨーレートも用いて推定されたカーブ半径が最終的な推定カーブ半径として選択される傾向が強い。その結果、自車両において推定されるカーブ半径が、先行車両に対応するカーブ半径により近いものとなる。応答性の速い操舵情報を考慮してカーブ半径が推定されるからである。そのようになれば、自車両が先行車両を捕捉し易い程度(先行車両の捕捉性・認識性または先行車両への追従性)を容易に向上させ得る。なお、このことは前記(1)項に係る装置についても該当し得る。
(9) 前記推定器が、前記カーブ半径の予想値が設定値以下であり、かつ、前記第1推定値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合に、前記第2推定値の取得を許可する許可手段を含む(7)または(8)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0042】
この装置によれば、前記(3)項に係る装置と同様な作用効果が得られる。
(10) 前記推定器が、前記実車速が大きいほど短くなるように前記設定時間を設定する設定手段を含む(9)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0043】
この装置によれば、前記(4)項に係る装置と同様な作用効果が得られる。
(11) 前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量とに基づいて前記第2推定値を取得する手段を含む(7)ないし(10)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
(12) 前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記第2推定値を取得する手段を含む(7)ないし(10)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
(13) 前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記第1推定値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記第1推定値を補正することにより、前記第2推定値を取得する手段を含む(7)ないし(10)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【0044】
この装置によれば、前記(6)項に係る装置と同様な作用効果が得られる。
(14) 前記第1推定手段が、前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記第1推定値の元値を取得し、その取得された元値に対してフィルタ処理を、その元値に対する応答性が、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域においては低い特性、旋回走行状態に近いと予想される領域においては高い特性で行うことにより、前記第1推定値の最終値を取得する手段を含む(7)ないし(13)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【0045】
この装置によれば、後述の(15)項に係る装置と同様な作用効果が得られる。
(15) 自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記ヨーレートセンサにより検出された実ヨーレートとに基づいて前記カーブ半径の推定値の元値を取得し、その取得された元値に対してフィルタ処理を、その元値に対する応答性が、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域においては低い特性、旋回走行状態に近いと予想される領域においては高い特性で行うことにより、前記カーブ半径の推定値の最終値を取得し、それにより、前記カーブ半径を推定する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【0046】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径は、自車両の実ヨーレートを用いて推定することが可能である。実ヨーレートを検出するヨーレートセンサは、通常、自車両に発生するヨーモーメントが0であるとき(自車両が直進走行しているかまたは停止しているとき)に、検出値が0点を示すように設計される。しかし、実ヨーレートの検出値は、それの0点付近において、ヨーレートセンサが搭載されている自車両の車体振動や、ヨーレートセンサの内部ノイズの影響を受け易く、そのためにふらつきも生じ易い。そのため、自車両の走行状態が直進走行状態に近い場合には、ヨーレートセンサの検出値のふらつきが原因で、ヨーレートセンサの検出値に基づくカーブ半径の推定値に誤差が発生し易い。
【0047】
そのふらつきに起因した推定誤差を縮減するために、ヨーレートセンサの検出値に基づくカーブ半径の推定値に対してフィルタ処理を行うことが考えられる。
【0048】
しかし、フィルタ処理の特性、すなわち、フィルタ処理前の推定値に対するフィルタ処理後の推定値の応答性をその推定値の変化可能領域の全域において一様に設定したのでは、車両の進行につれてカーブ半径が変化し易いカーブ路上において、カーブ半径の実際の変化に対するカーブ半径の推定値の応答性が鈍感になり過ぎてしまう可能性がある。すなわち、フィルタ処理後の推定値が、カーブ半径の変化を迅速に反映することが困難となってしまう可能性があるのである。
【0049】
そこで、本項に係る装置においては、実車速と実ヨーレートとに基づいてカーブ半径の推定値の元値が取得され、その取得された元値に対してフィルタ処理が、その元値に対する応答性が、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域においては低い特性、旋回走行状態に近いと予想される領域においては高い特性で行われることにより、カーブ半径の推定値の最終値が取得される。これにより、カーブ半径が推定される。
【0050】
したがって、この装置によれば、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域において、ヨーレートセンサの検出値のふらつきに起因した推定誤差を縮減することと、自車両の走行状態が旋回走行状態に近いと予想される領域において、カーブ半径の実際の変化に対するカーブ半径の推定値の応答性を良好にすることとを容易に両立させ得る。
【0051】
本項に係る技術的特徴は、前記(1)に記載の装置のように、実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいてカーブ半径を推定する装置に採用することが可能である。
(16) 前記推定器が、前記実車速が設定車速以下である場合には、前記実ヨーレートの検出値の如何を問わず、自車両が直進走行状態にあると判定する判定手段を含む(1)ないし(15)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【0052】
実ヨーレートを検出するヨーレートセンサは、通常、自車両の実車速が極低速(例えば、時速10km以下)である場合には、それの出力が微小であるために、ヨーレートセンサのS/N比が低く、正確にヨーモーメントを検出することが困難であるい。そのため、この場合には、実ヨーレートを用いたカーブ半径の推定を高精度で行うことが困難となり易い。
【0053】
一方、自車両においてカーブ半径の推定値を用いる他の装置の実用的観点からすると、自車両の実車速が極低速である場合には、そうでない場合ほどに高い精度がカーブ半径の推定値に要求されないことが多い。
【0054】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置によれば、実車速が設定車速以下である場合には、実ヨーレートの検出値の如何を問わず、自車両が直進走行状態にあると判定される。
【0055】
したがって、この装置によれば、ヨーレートセンサの検出値を用いる他の装置がその検出値のふらつきの影響を受けずに済む。
(17) 自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の旋回状態を表す旋回状態量を検出する旋回状態量センサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記旋回状態量センサにより検出された旋回状態量とのうちの少なくとも旋回状態量に基づいて前記カーブ半径を推定する推定器であって、前記実車速が設定車速以下である場合には、前記旋回状態量の検出値の如何を問わず、自車両が直進走行状態にあると判定するものと
を含むカーブ半径推定装置。
【0056】
この装置によれば、前記(16)項に係る装置と同様な作用効果が得られる。
【0057】
本項における「旋回状態量センサ」は、例えば、前記ヨーレートセンサとしたり、前記操舵角センサとしたり、自車両の実横加速度を検出する横加速度センサとしたり、自車両のタイヤに作用する実横力を検出するタイヤ横力センサとしたり、自車両における横方向の荷重移動量を検出する荷重移動量センサとすることが可能である。
(18) (1)ないし(17)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置と、
自車両に設けられてそれの前方に位置する物体を検出するセンサと、
そのセンサにより検出された物体が移動物体としての先行車両である場合に、前記センサの出力信号と、前記カーブ半径推定装置により推定されたカーブ半径とに基づき、先行車両が自車両と同じカーブ路の同じ車線を走行している確率である自車線確率を、先行車両が前記車線から車幅方向に外れた第1距離と、先行車両が自車両から前記車線に沿って車両進行方向に外れた第2距離とのうちの少なくとも一方と前記自車線確率との間に予め定られた関係に従って決定し、その決定された自車線確率が設定確率以上である場合に、自車両が追尾すべき先行車両が存在すると判定する判定器と
を含む先行車両存否判定装置。
【0058】
この装置によれば、推定誤差が縮減されたカーブ半径の推定値を用いて、自車両が追尾すべき先行車両が存在するか否かを判定することが可能となるため、追尾すべき先行車両の発見の迅速化および確実化を容易に実現可能となる。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0060】
図1には、本発明の第1実施形態に従うカーブ半径推定装置を含む車間距離制御装置のハードウエア構成がブロック図で概念的に示されている。
【0061】
この車間距離制御装置は車両に搭載されている。その車両は、動力源としてのエンジン(モータでも可。)の駆動力がトランスミッション(有段式でも無段式でも可。)を経て複数の駆動車輪に伝達されることによって駆動される。
【0062】
この車両は、それら複数の駆動車輪を含む複数の車輪をそれぞれ制動するブレーキ(例えば、摩擦式、回生制動式等)10を備えている。それら複数の車輪は、左右の前輪と左右の後輪とを含むように構成されている。図1において「FL」は左前輪、「FR」は右前輪、「RL」は左後輪、「RR」は右後輪をそれぞれ意味している。車両は、各車輪のブレーキ10を電気的に制御するブレーキ・アクチュエータ12(例えば、モータ駆動式、電磁圧力制御式等)を備えている。
【0063】
エンジンは、それの吸気マニホールド内においてスロットルを備えており、そのスロットルの開度に応じてエンジンの出力が変化させられる。スロットルの開度は、スロットル・アクチュエータ20(例えば、電動モータ)によって電気的に制御可能となっている。
【0064】
トランスミッションにおいては、それの入力シャフトと出力シャフトとの変速比が変化させられる。その変速比を電気的に制御するために、トランスミッション・アクチュエータ22(例えば、ソレノイド)が設けられている。
【0065】
この車両は、さらに、ブレーキ・アクチュエータ12によってブレーキ10を制御するブレーキECU(Electronic Control Unit)30を備えるとともに、スロットル・アクチュエータ20およびトランスミッション・アクチュエータ22によってエンジンおよびトランスミッションをそれぞれ制御するエンジンECU32を備えている。それらブレーキECU30およびエンジンECU32は、CPU、ROMおよびRAMを含むコンピュータを主体として構成されている。このことは、後述の他のECUについても同様である。
【0066】
図1に示すように、本実施形態に従う車間距離制御装置は、自車両の前方に位置する物体を検出するセンサとしてレーダ40を備えている。レーダ40は、電磁波(光、音等を含む)を放射し、その放射された電磁波のうち、レーダ40の検出ゾーン内の目標物によって反射した電磁波を受けることにより、目標物の自車両からの距離と、目標物の自車両に対する相対的な方向とを探知する装置である。レーダ40は、例えば、電磁波のビームをそれの進行方向と交差する方向に設定角度範囲内で往復揺動させてレーダ40の前方をスキャンすることにより、概して扇状を成す検出ゾーンの全域をカバーする。
【0067】
レーダ40により探知される目標物が先行車両である場合には、レーダ40は、先行車両の自車両からの距離である車間距離と、先行車両の自車両に対する相対的な方位とを探知することとなる。図2には、自車両のレーダ40の検出ゾーン内に1台の先行車両が存在する様子の一例が示されている。
【0068】
レーダ40が放射する電磁波としては、例えば、レーザ光(例えば、レーザビーム)やミリ波を選ぶことができる。ところで、あらゆる車両は、一般に、それの後面に、左右に隔たった一対のリフレクタを有している。各車両における一対のリフレクタからの反射波を利用することにより、レーダ40は、それの検出ゾーン内において各車両を他の車両から識別することが可能である。
【0069】
このレーダ40の出力信号に基づき、自車両と先行車両との車間距離が目標距離に近づくように自車両の走行を制御する車間距離ECU50が、図1に示すように、車間距離制御装置に設けられている。
【0070】
この車間距離ECU50は、自車両の減速のためには、基本的には、ブレーキECU30およびブレーキ・アクチュエータ12を介してブレーキ作動力を制御し、一方、自車両の加速のためには、エンジンECU32、スロットル・アクチュエータ20およびトランスミッション・アクチュエータ22を介してスロットル開度および変速比を制御する。
【0071】
図1に示すように、本実施形態に従う車間距離制御装置は、さらに、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、操舵角センサ64とを備えている。
【0072】
車速センサ60は、自車両の車速を実測または推定によって検出するセンサである。この車速センサ60は、例えば、各車輪ごとに車輪速度を検出する複数の車輪速度センサを有し、それらの出力信号を用いて自車両の車速を推定する形式とすることが可能である。
【0073】
ヨーレートセンサ62は、自車両に実際に発生したヨーレートを検出するセンサである。このヨーレートセンサ62は、音叉型の振動子を有し、自車両のヨーモーメントに基づいて振動子に生じた歪を検出することによって自車両のヨーレートを検出する形式とすることが可能である。
【0074】
操舵角センサ64は、自車両の運転者により自車両のステアリングホイールが回転操作された角度を操舵角として検出するセンサである。
【0075】
図1に示すように、本実施形態に従う車間距離制御装置は、さらに、制御許可スイッチ70と、モード選択スイッチ72とを備えている。
【0076】
制御許可スイッチ70は、車間距離制御を許可するか否かに関する運転者の意思表示を車間距離ECU50に入力するために運転者により操作されるスイッチである。
【0077】
モード選択スイッチ72は、車間距離を制御するために予め用意された複数の制御モードの中から、運転者が希望する制御モードを選択するために運転者による操作されるスイッチである。
【0078】
それら複数の制御モードは、例えば、ある瞬間に先行車両が通過した位置と同じ位置をそのある瞬間から自車両が通過するまでに経過することが予想される時間である車間時間に関して用意される。この場合、それら複数の制御モードは、例えば、長い車間時間を実現すべく、先行車両との間に長い車間距離が維持されるように車間距離を制御する長時間制御モードと、短い車間時間を実現すべく、先行車両との間に短い車間距離が維持されるように車間距離を制御する短時間制御モードと、それら2つのモードの中間に位置する中時間制御モードとを含むように定義することが可能である。
【0079】
本実施形態においては、レーダ40を用いた車間距離制御により、先行車両との間に設定車間距離を保持しつつ先行車両に追従するように自車両の走行が制御される。車間距離制御により、自車両が先行車両を自動的に追尾するのである。
【0080】
このように自車両が先行車両に追従している状態から、自車両が先行車両を喪失する状態、すなわち、先行車両が自車両と同じ車線から離脱した状態に移行すると、本実施形態においては、車間距離制御により、自車両が自動的に加速させられてそれの実車速が目標車速に上昇させられ、以後、自車両がその設定車速で定速走行させられる。
【0081】
次に、本実施形態に従う車間距離制御装置のソフトウエア構成を説明する。
【0082】
図3には、車間距離ECU50のソフトウエア構成が機能ブロック図で概念的に表されている。同図に示すように、車間距離ECU50は、それの機能に着目すると、カーブ半径推定部100と、レーダ信号処理部102と、車間距離制御部104とを含むように構成されている。
【0083】
カーブ半径推定部100は、ヨーレートセンサ62、操舵角センサ64および車速センサ60と接続されている。レーダ信号処理部102は、レーダ40と接続されている。車間距離制御部104は、エンジンECU32と接続されるとともに、そのエンジンECU32を介してブレーキECU30と接続されている。
【0084】
カーブ半径推定部100は、レーダ40が捕捉している車両が、自車両と同じ車線上を走行している先行車両であって、自車両が追従すべき車両であるか否かを判定するために使用されるカーブ半径を推定する部分である。
【0085】
自車両の定常的な旋回挙動に着目する場合には、操舵角よりヨーレートの方が自車両の進行方向すなわち自車両が走行しているカーブ路の半径を正確に反映する。操舵角からカーブ半径を推定する場合には、車両特性情報(スタビリティファクタを含む。)を考慮しないと正確なカーブ半径を推定することが困難であるのに対し、ヨーレートからカーブ半径を推定する場合には、そのような車両特性情報が反映された物理量としてヨーレートを利用することが合理的であるからである。
【0086】
しかし、自車両の過渡的な旋回挙動に着目する場合には、操舵角は、自車両の旋回挙動の原因となる物理量であるため、操舵角を見れば、応答遅れなく、自車両の旋回挙動すなわちカーブ半径を推定することが容易である。これに対して、ヨーレートは、自車両の旋回挙動の結果を表す物理量であるため、ヨーレートを見ても、その瞬間における自車両の旋回挙動すなわちカーブ半径を正確に推定できるとは限らない。
【0087】
図4には、自車両がカーブ路の入口に進入してからそれの出口から退出するまでのカーブ路走行が、ヨーレートを参照して得られる推定カーブ半径を有する推定進路と、ヨーレートと、ステアリングホイールの操作とに着目して概念的に表されている。
【0088】
自車両がカーブ路入口に進入して旋回を開始すると、その後ヨーレートが変化する。
【0089】
やがて、自車両は定常旋回状態に移行し、その状態においては、ヨーレートがほぼ一定に保たれ、それに基づいて自車両の進路が正しく推定される。ヨーレートを参照して得られた推定カーブ半径が真のカーブ半径を正確に反映しているのである。
【0090】
その後、自車両がカーブ路の出口付近に差し掛かり、旋回を終了する時点に近づくと、運転者によってステアリングホイールが中立位置に向かって切り返されるが、それに伴う自車両の挙動変化がヨーレートに現れるまでに時間がかかる。ステアリグホイールの切り返しに対してヨーレートの戻りが遅れてしまう傾向があるのである。そのため、カーブ路の出口付近においてヨーレートを参照してカーブ半径を推定すると、実際には道路がカーブ路から直進路に向かうにつれてカーブ半径が増加するにもかかわらず、依然として同じカーブ路が続いているとの過った進路推定がなされてしまう傾向がある。
【0091】
そこで、本実施形態においては、ヨーレートを参照してカーブ半径を推定する際の利点を享受しつつ、ヨーレートを参照してカーブ半径を推定する際の欠点を操舵角を参照することによって解消し、それにより、カーブ半径を精度よく推定できるようになっている。
【0092】
具体的には、図3のカーブ半径推定部100が、ヨーレートと車速とに基づいて推定された第1推定カーブ半径と、それを操舵角に基づいて補正して得た第2推定カーブ半径とを互いに比較し、それらのうち大きい方を真のカーブ半径に近い値であるとして、最終的な推定カーブ半径に選択する。
【0093】
その結果、カーブ路の出口におけるように、自車両の挙動変化に応答してヨーレートが変化する際に遅れがある走行環境において、ヨーレートを参照してカーブ半径が推定されるにもかかわらず、そのような応答遅れが減殺されてカーブ半径が推定される。
【0094】
図3を参照しつつ、さらに具体的に説明すれば、このカーブ半径推定部100には、ヨーレートセンサ62により検出された元ヨーレートがフィルタ処理されることにより、ヨーレートYawとして取り込まれる。同様にして、操舵角センサ64により検出された元操舵角がフィルタ処理されることにより、操舵角STRとして取り込まれる。
【0095】
その取り込まれたヨーレートYawと、車速センサ60により検出された車速Vnとに基づき、後に詳述するロジックに従い、第1推定カーブ半径Ryaw1(これが前記基礎値の一例であるとともに前記第1推定値の一例である。)が演算される。
【0096】
その後、その演算された第1推定カーブ半径Ryaw1が、前記取り込まれた操舵角STRに基づいて補正され、その補正値が第2推定カーブ半径Ryaw2(これが前記第2推定値の一例である。)として出力される。
【0097】
続いて、その出力された第2推定カーブ半径Ryaw2と、前記演算された第1推定カーブ半径Ryaw1とのうちの大きい方が選択され、それが最終的な推定カーブ半径R(これが前記最終値の一例である。)とされる。その最終的なカーブ半径Rは、レーダ40の出力信号を処理するレーダ信号処理部102に供給される。
【0098】
そのレーダ信号処理部102は、その供給されたカーブ半径Rに基づいて自車両がこれから走行する車線の形状を想定することにより、自車両が追尾すべき先行車両がレーダ40により捕捉されたか否かを判定する。
【0099】
そして、車間距離制御部104は、そのようにして捕捉された先行車両と自車両との車間距離を始めとする各種走行情報に基づき、先行車両との間に設定車間距離を保持しつつ先行車両に追従するように自車両の走行を制御するための信号をエンジンECU32とブレーキECU30とに送信する。
【0100】
車間距離ECU50のコンピュータのROMには、上述の車間距離制御を実施するために各種プログラムが予め格納されている。図5には、そのうちの一つである減速制御プログラムの内容が概念的にフローチャートで表されている。ただし、図5においては、その減速制御プログラムのうち、本発明を理解するために不可欠ではない部分についての図示が省略されている。
【0101】
この減速制御プログラムにおいては、まず、ステップS151(以下、単に「S151」で表す。他のステップについても同じとする。)において、車間距離情報に基づいて自車両の目標減速度GTが算出される。車間距離情報と目標減速度GTとの関係がマップ、テーブル等の形式で前記ROMに予め格納されており、その関係に従い、今回の車間距離情報に対応する目標減速度GTが今回の目標減速度GTとして決定される。
【0102】
ここに「車間距離情報」は、例えば、自車両に対する先行車両の相対速度Vrと前述の車間時間Tとの双方を含むように定義することが可能である。
【0103】
ここに「相対速度Vr」は、それの符号が正であれば、自車両が先行車両から離間して車間距離が増加する離間傾向があることを示し、一方、それの符号が負であれば、自車両が先行車両に接近して車間距離が減少する傾向があることを示す。
【0104】
換言すれば、相対速度Vrは、自車両の先行車両に対する現在の相対位置が前回の相対位置に対して、自車両が先行車両に接近する向きにずれているのか、先行車両から離間する向きにずれているのか、すなわち、自車両の先行車両に対する相対移動の向きを表すとともに、その程度を表す物理量の一例である。
【0105】
これに対して、「車間時間T」は、同じ車速のもとに車間時間Tが長い場合と短い場合とを互いに比較すると、車間時間Tが長いほど車間距離が長いことを意味する。適正車間距離は、一定値とするのではなくむしろ、車速に応じて決まる可変値とするのが望ましく、そうすると、適正車間距離が長いか短いかを判断するためにはいちいちそのときの車速を参照しなければならない。それに対し、車間時間Tを採用すれば、それ単独で、自車両が先行車両に追突しないようにするために自車両の運転者が払うべき注意の程度を表現することが可能となる。このように、車間時間Tは、運転者の感覚をより忠実に表現するパラメータなのである。
【0106】
換言すれば、車間時間Tは、自車両の先行車両に対する実際の相対位置が目標の相対位置に対して、自車両が先行車両に接近する向きにずれているのか、先行車両から離間する向きにずれているのか、すなわち、自車両の先行車両に対する相対位置の偏差(誤差)の向きを表すとともに、その程度を表す物理量の一例である。
【0107】
次に、S152において、レーダ40の出力信号に基づき、自車両にとっての先行車両が存在するか否かが判定される。具体的には、自車両の前方位置においてレーダ40によって捕捉された対象物が、自車両と一緒に移動している移動物体であるか否かが判定される。
【0108】
今回は、先行車両が存在しないと仮定すれば、S152の判定がNOとなり、S151に戻るが、今回は、先行車両が存在すると仮定すれば、S152の判定がYESとなり、S153に移行する。
【0109】
このS153においては、先行車両が自車両と同じ車線上に存在する確率である自車線確率Piが算出される。この自車線確率Piは、レーダ40によって捕捉された先行車両の位置(先行車両を代表する一点の位置であって、例えば、先行車両における一対のリフレクタ間の中央位置)が上記車線から車幅方向に外れる第1距離と、先行車両の位置が自車両から上記車線に沿って車両進行方向に外れる第2距離とのうちの少なくとも一方に基づき、それら2種類の距離のうち該当するものと自車線確率Piとの間に予め定められた関係に従って算出される。この算出の一例が前記特開2001−328451号公報に記載されている。
【0110】
このS153においては、自車両が走行している車線であって自車両がこれから走行すべき部分を有するもの、すなわち、自車両がこれから描くべき走行軌跡を予測するために、自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定することが必要である。その推定を行うために、車間距離ECU50のコンピュータのROMにはカーブ半径推定プログラムも予め格納されている。このカーブ半径推定プログラムの詳細については後述する。
【0111】
その後、S154において、前記算出された自車線確率Piがしきい値Pi0以上であるか否かが判定される。今回は、しきい値Pi0以上ではないと仮定すると、S154の判定がNOとなり、S151に戻るが、今回は、しきい値Pi0以上であると仮定すると、S154の判定がYESとなり、S155に移行する。
【0112】
このS155においては、減速度偏差ΔGが算出される。減速度偏差ΔGは、実減速度GRから目標減速度GTを差し引くことによって算出される。続いて、S156において、その算出された減速度偏差ΔGがしきい値ΔG0より大きいか否かが判定される。今回は、しきい値ΔG0より大きくはないと仮定すれば、S156の判定がNOとなり、S151に戻るが、しきい値ΔG0より大きい場合には、S156の判定がYESとなり、S157に移行する。
【0113】
このS157においては、車速センサ60により自車両の車速Vnが検出される。その後、S158において、その検出された車速Vnに基づいてブレーキ制御許可距離D0が決定される。このブレーキ制御許可距離D0は、車間距離Dがそれより長い場合にはブレーキ制御によって自車両を減速させることは不要であるが、それ以下である場合にはブレーキ制御によって自車両を減速させることが必要であることを前提に設定されている。
【0114】
このブレーキ制御許可距離D0は、図6にグラフで概念的に表すように、車速Vnと共に増加するように決定される。
【0115】
したがって、本実施形態によれば、車速Vnの増加につれてブレーキ制御許可距離D0が延びるため、自車両の高速走行中において低速走行中におけるよりブレーキ制御の開始タイミングが早められ、その結果、車間距離制御の信頼性および運転者の安心感が向上する。
【0116】
続いて、図5のS159において、レーダ40により車間距離Dが検出される。その後、S160において、その検出された車間距離Dが、前記決定されたブレーキ制御許可距離D0以下であるか否かが判定される。
【0117】
今回は、車間距離Dがブレーキ制御許可距離D0以下ではないと仮定すれば、S160の判定がNOとなり、S151に戻るが、今回は、車間距離Dがブレーキ制御許可距離D0以下であると仮定すれば、S160の判定がYESとなり、S161において、ブレーキ制御が許可され、その後、S162において、ブレーキ制御がブレーキECU30に対して要求される。その結果、ブレーキECU30により、目標減速度GTが実現されるように自車両が減速させられる。
【0118】
以上で、このブレーキ制御許可判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0119】
図7には、前記カーブ半径推定プログラムの内容が概念的にフローチャートで表されている。ただし、図7においては、そのカーブ半径推定プログラムのうち、本発明を理解するために不可欠ではない部分についての図示が省略されている。
【0120】
すなわち、本実施形態においては、車間距離ECU50のうちこのカーブ半径推定プログラムを実行するための部分によって前記カーブ半径推定部100が構成されているのである。
【0121】
このカーブ半径推定プログラムにおいては、まず、S701において、車速センサ60から自車両の車速Vnが取り込まれる。次に、S702において、ヨーレートセンサ62からヨーレートYawが必要なフィルタ処理を施されて取り込まれる。
【0122】
続いて、S703において、それら取り込まれた車速VnとヨーレートYawとを用いることにより、第1推定カーブ半径Ryaw1が取得される。この第1推定カーブ半径Ryaw1は、例えば、車速VnをヨーレートYawで割り算することにより取得される。
【0123】
その後、S704において、自車両が一定距離のカーブ路を走行するために必要な時間が設定時間TCとして決定される。設定時間TCは、例えば、定数KCを車速Vnで割り算することによって決定される。ここに、「定数KC」は、自車両が同じカーブ路上において定常カーブ走行を行っている事実を正しく検出するために自車両が走行しなければならない距離を意味する。
【0124】
続いて、S705において、自車両が定常カーブ走行を行っているか否かが判定される。具体的には、前記第1推定カーブ半径Ryaw1(これが前記予想値の一例である。)が設定値Ryaw0以下であり、かつ、第1推定カーブ半径Ryaw1(これが前記基礎値の一例であるとともに前記第1推定値の一例である。)の最大変動幅ΔRyaw1の絶対値が設定値ΔRyaw1(これが前記設定状態の一例である。)以下である状態が、前記決定された設定時間TC以上連続したか否かが判定される。
【0125】
ここに、第1推定カーブ半径Ryaw1の最大変動幅ΔRyaw1の絶対値が設定値ΔRyaw1以下である状態とは、自車両の走行状態が実質的に定常である場合に第1推定カーブ半径Ryaw1に関して成立すべき状態を意味する。
【0126】
今回は、第1推定カーブ半径Ryaw1が設定値Ryaw0以下であり、かつ、第1推定カーブ半径Ryaw1の最大変動幅ΔRyaw1の絶対値が設定値ΔRyaw1以下である状態が設定時間TC以上連続したという条件が成立しないと仮定すれば、判定がNOとなり、S714において、第1推定カーブ半径Ryaw1が最終的なカーブ半径Rとされる。以上で、このカーブ半径推定プログラムの一回の実行が終了する。
【0127】
これに対し、今回は、上記条件が成立すると仮定すれば、S705の判定がYESとなり、S706において、第1推定カーブ半径Ryaw1の補正が許可される。
【0128】
続いて、S707において、上記設定時間TC内に取得された複数の第1推定カーブ半径Ryaw1(S701ないしS703の反復的実行により取得される)のうちの最大値MAX(Ryaw1)と最小値MIN(Ryaw1)との平均値AVEが算出される。この平均値AVEは、それら複数の第1推定カーブ半径Ryaw1を代表する値の一例である。
【0129】
その後、S708において、操舵角センサ64から操舵角STRが必要なフィルタ処理を施されて取り込まれる。続いて、S709において、その取り込まれた操舵角STRの今回値STRnから前回値STRn−1を引き算した値が、操舵角変化量ΔSTRとされる。
【0130】
その後、S710において、第1推定カーブ半径Yraw1に応じて係数KSが決定される。係数KSは、例えば、図8にグラフで概念的に表されているように、第1推定カーブ半径Ryaw1が減少するにつれて(すなわち、自車両が走行している道路が直線路からカーブ路に近づくにつれて)、増加するように定義されている。
【0131】
後に詳述するが、本実施形態においては、実際のカーブ半径RRと操舵角STRnとの間に比例関係が存在すると仮定し、それの比例係数と、操舵角変化量ΔSTRとの積を用いて第1推定カーブ半径Ryaw1の補正量ACが算出される。しかし、上記比例係数は、実際のカーブ半径RRの大小にかかわらず一定であると考えることは妥当ではなく、むしろ、実際のカーブ半径RRが小さいほど、すなわち、自車両が走行中の道路の曲がりがきついほど、大きな値となると考える方が自然である。
【0132】
そこで、本実施形態においては、第1推定カーブ半径Ryaw1の補正量ACが、前記比例係数と操舵角変化量ΔSTRとの積と係数KSとの積として算出されるとともに、その係数KSが、第1推定カーブ半径Ryaw1が減少するにつれて増加するように決定される。このように、この係数KSは、自車両の運転者がカーブ路の出口付近においてステアリングホイールを切り返す操作に対するヨーレートYawの応答遅れ量、ひいては、第1推定カーブ半径Ryaw1の応答遅れ量を反映するために設けられている。
【0133】
その後、S711において、上述のようにして第1推定カーブ半径Ryaw1の補正量ACが算出される。具体的には、
AC=(AVE/STRn)・ΔSTR・KS
なる式を用いて補正量ACが算出される。
【0134】
続いて、S712において、その算出された補正量ΔACを用いて第1推定カーブ半径Ryaw1が補正される。具体的には、平均値AVE(第1推定カーブ半径Ryaw1の代表値)と補正量ACとの和として第2推定カーブ半径Ryaw2が算出される。
【0135】
その後、S713において、第1推定カーブ半径Ryaw1が第2推定カーブ半径Ryaw2以上であるか否かが判定される。第1推定カーブ半径Ryaw1が第2推定カーブ半径Ryaw2以上である場合には、判定がYESとなり、S714において、第1推定カーブ半径Ryaw1が最終的な推定カーブ半径Rに選択される。これに対し、第1推定カーブ半径Ryaw1が第2推定カーブ半径Ryaw2以上ではない場合には、判定がNOとなり、S715において、第2推定カーブ半径Ryaw2が最終的な推定カーブ半径Rに選択される。
【0136】
いずれの場合にも、以上で、このカーブ半径推定プログラムの一回の実行が終了する。
【0137】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、カーブ半径推定部100が前記(1)項における「推定器」の一例を構成しているのである。さらに、車間距離ECU50のうちS703を実行するための部分が前記(2)項における「基礎値推定手段」の一例を構成し、S707ないしS712を実行するための部分が同項における「推定手段」の一例を構成しているのである。
【0138】
さらに、本実施形態においては、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、操舵角センサ64と、カーブ半径推定部100とが互いに共同して同項に係る「カーブ半径推定装置」の一例を構成しているのである。
【0139】
さらに、本実施形態においては、車間距離ECU50のうちS705およびS706を実行するための部分が前記(3)項における「許可手段」の一例を構成し、S704を実行するための部分が前記(4)項における「設定手段」の一例を構成し、S710およびS711を実行するための部分が前記(5)項における「手段」の一例を構成し、S707ないしS712を実行するための部分が前記(6)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0140】
さらに、本実施形態においては、車間距離ECU50のうちS703を実行するための部分が前記(7)項における「第1推定手段」の一例を構成し、S707ないしS712を実行するための部分が同項における「第2推定手段」の一例を構成し、S713ないしS715を実行するための部分が同項における「最終値取得手段」の一例を構成しているのである。
【0141】
さらに、本実施形態においては、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、操舵角センサ64と、カーブ半径推定部100とが互いに共同して同項に係る「カーブ半径推定装置」の一例を構成しているのである。
【0142】
さらに、本実施形態においては、車間距離ECU50のうちS713ないしS715を実行するための部分が前記(8)項における「選択手段」の一例を構成しているのである。
【0143】
さらに、本実施形態においては、車間距離ECU50のうちS152ないしS154を実行するための部分が前記(18)項における「判定器」の一例を構成し、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、操舵角センサ64と、レーダ40と、カーブ半径推定部100を含む車間距離ECU50とが互いに共同して同項に係る「先行車両存否判定装置」の一例を構成しているのである。
【0144】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
【0145】
第1実施形態においては、ヨーレートYawと車速Vnとには基づくが操舵角STRには基づかないで第1推定カーブ半径Ryaw1が演算される。第2実施形態においては、第1実施形態のうち、第1推定カーブ半径Ryaw1を演算する部分の一具体例が採用されている。この具体例は、第1実施形態におけるカーブ半径推定技術のうち第1推定カーブ半径Ryaw1を演算する部分を除く部分と共に実施することが可能であるが、その部分から切り離して実施することも可能である。
【0146】
図9には、本実施形態に従う車間距離制御装置における車間距離ECU50のソフトウエア構成が機能ブロック図で概念的に表されている。同図に示すように、車間距離ECU50は、第1実施形態と同様に、カーブ半径推定部100と、レーダ信号処理部102と、車間距離制御部104とを含むように構成されている。
【0147】
ところで、ヨーレートセンサ62においては、自車両の旋回にその車体に発生するヨーモーメントを利用して車体のヨーレートを検出する形式が存在する。一方、ヨーモーメントの大きさは、カーブ半径のみならず自車両の車速にも依存する。そのため、上記形式のヨーレートセンサ62を使用する場合には、自車両が極低速(例えば、10km/h以下)で走行しているためにそれの車体に発生するヨーモーメントが小さいと、正規の信号がノイズ成分に埋もれてしまい、ヨーレートを正確に検出することが困難となる。それにもかかわらず、その検出値を用いて先行車両を認識しようとすると、不都合が生ずるおそれがある。
【0148】
一方、車間距離制御は、自車両の極低速走行時には、推定カーブ半径が高精度であることをそれほど必要とはしない。
【0149】
さらに、前記形式のヨーレートセンサ62においては、自車両の車体(ばね上部材)の振動やヨーレートセンサ62の内部ノイズにより、ヨーレートの検出値のうち、0点付近の値にふらつきが発生し易い。一方、ヨーレートの検出値が0点にあることは、自車両が直進走行していることに相当するため、ヨーレートの検出値が0点付近でふらつくと、自車両の実際の直進走行中に、推定カーブ半径がカーブ路走行を表すこととなってしまう傾向がある。
【0150】
ヨーレートの検出値のふらつきに起因したカーブ半径の推定誤差を縮減するための対策として、ヨーレートの検出値に基づく推定カーブ半径に対してフィルタ処理を、推定カーブ半径の変化可能領域の全体において一様な応答特性で施す対策が考えられる。
【0151】
しかし、この対策を講ずると、車両進行につれてカーブ半径が変化し易いカーブ半径を有するカーブ路を自車両が走行する際に、実際のカーブ半径に対する推定カーブ半径の応答性が悪化し、例えば、レーダ40によって先行車両を捕捉する際の遅れにつながるおそれがある。
【0152】
本実施形態においては、図9に示すように、ヨーレートセンサ62により検出されたヨーレートYawと、車速センサ60により検出された車速Vnとに基づき、元推定カーブ半径RyawAが算出される。
【0153】
その算出された元推定カーブ半径RyawAに対してフィルタ処理(バタワース型のローパスフィルタ処理)が施される。ただし、このフィルタ処理は、後に詳述するように、それのカットオフ周波数がカーブ半径の予想値の一例である元推定カーブ半径RyawAに応じて変化させられる。フィルタ処理が施された元推定カーブ半径RyawAは、なまし推定カーブ半径RyawBとされ、それが最終カーブ半径Rとされる。
【0154】
さらに、本実施形態においては、図9に示すように、車速センサ60により検出された車速Vnに基づき、自車両が直進走行しているか否かが判定される。直進走行していると判定された場合には、最終カーブ半径Rが最大値RMAXを有するものとされる。
【0155】
いずれにしても、その最終カーブ半径Rは、レーダ40の出力信号を処理するレーダ信号処理部102に供給される。
【0156】
図10には、本実施形態におけるカーブ半径推定プログラムの内容が概念的にフローチャートで表されている。ただし、図10においては、そのカーブ半径推定プログラムのうち、本発明を理解するために不可欠ではない部分についての図示が省略されている。
【0157】
すなわち、本実施形態においては、車間距離ECU50のうち図10のカーブ半径推定プログラムを実行するための部分によって前記カーブ半径推定部100が構成されているのである。
【0158】
このカーブ半径推定プログラムにおいては、まず、S801において、車速センサ60によって自車両の車速Vnが検出される。次に、S802において、ヨーレートセンサ62によってヨーレートYawが検出される。
【0159】
続いて、S803において、上記検出された車速Vnが設定値Vn0以上であるか否かが判定される。自車両が極低速走行中ではないか否かが判定される。今回は、極低速走行中であると仮定すると、判定がNOとなり、S804において、自車両が直進走行中であると判定され、続いて、S805において、最終カーブ半径Rが、予め定められた最大値RMAXに決定される。
【0160】
以上で、このカーブ半径推定プログラムの一回の実行が終了する。
【0161】
これに対し、今回は、自車両が極低速走行中ではないと仮定すると、S803の判定がYESとなり、S806において、前記検出された車速VnとヨーレートYawとを用いることにより、元推定カーブ半径RyawAが算出される。この元推定カーブ半径RyawAは、例えば、車速VnをヨーレートYawで割り算することにより算出される。
【0162】
その後、S807において、その算出された元推定カーブ半径RyawAが設定値Ryaw0以上であるか否かが判定される。自車両が現在走行している道路が直線路であるかまたはそれに近い道路であるか否かが判定されるのである。
【0163】
今回は、元推定カーブ半径RyawAが設定値Ryaw0以上であると仮定すると、判定がYESとなり、S808において、カットオフ周波数が低側周波数fLOであるローパスフィルタLPFによるフィルタ処理が、元推定カーブ半径RyawAの最新値を含む過去複数値に対して施される。
【0164】
このフィルタ処理においては、例えば、それら過去複数値に対して重み付き平均化が行われるとともに、各過去値に乗じられる重み係数の値が所望のカットオフ周波数が実現されるように予め調整される。
【0165】
その後、S809において、そのようなフィルタ処理の結果、なまし推定カーブ半径RyawBが取得される。続いて、S810において、その取得されたなまし推定カーブ半径RyawBとして最終カーブ半径Rが取得される。
【0166】
以上で、このカーブ半径推定プログラムの一回の実行が終了する。
【0167】
以上、元推定カーブ半径RyawAが設定値Ryaw0以上である場合を説明したが、そうではない場合には、S807の判定がNOとなり、S811において、カットオフ周波数が高側周波数fHI(前記低側周波数fLOより高い。)であるローパスフィルタLPFによるフィルタ処理が、元推定カーブ半径RyawAの最新値を含む過去複数値に対して施される。
【0168】
このフィルタ処理は、S808におけるフィルタ処理より広い周波数領域において元の信号をスムーズに通過する特性を有するように作用する。したがって、このフィルタ処理によれば、実際のカーブ半径の変化に対してより敏感に応答するようになまし推定カーブ半径RyawBを取得することが可能となる。
【0169】
その後、S809を経てS810に移行し、以上で、このカーブ半径推定プログラムの一回の実行が終了する。
【0170】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、図9のカーブ半径推定部100が前記(14)項における「手段」の一例および前記(15)項における「推定器」の一例を構成し、車間距離ECU50のうちS803ないしS805を実行するための部分が前記(16)項における「判定手段」の一例を構成しているのである。
【0171】
さらに、本実施形態においては、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、図9のカーブ半径推定部100とが互いに共同して前記(15)項に係る「カーブ半径推定装置」の一例を構成しているのである。
【0172】
さらに、本実施形態においては、ヨーレートセンサ62が前記(17)項における「旋回状態量センサ」の一例を構成し、カーブ半径推定部100が同項における「推定器」の一例を構成し、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、カーブ半径推定部100とが互いに共同して同項に係る「カーブ半径推定装置」の一例を構成しているのである。
【0173】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に従うカーブ半径推定装置を含む車間距離制御装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図2】図1におけるレーダ40により先行車両が検出される様子を概念的に説明するための平面図である。
【図3】図1における車間距離ECU50のソフトウエア構成を概念的に表す機能ブロック図である。
【図4】自車両のヨーレートに基づいて推定される進路がカーブ路の出口付近において誤差を有する理由を説明するための平面図である。
【図5】図1における車間距離ECU50のコンピュータにより実行される減速制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図6】図5の減速制御プログラムにおける車速Vnとブレーキ制御許可距離D0との関係を説明するためのグラフである。
【図7】図1における車間距離ECU50のコンピュータにより実行されるカーブ半径推定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図8】図7のカーブ半径推定プログラムにおける第1推定カーブ半径Ryaw1と係数KSとの関係を説明するためのグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態に従うカーブ半径推定装置を含む車間距離制御装置における車間距離ECU50のソフトウエア構成を概念的に表す機能ブロック図である。
【図10】図9における車間距離ECU50のコンピュータにより実行されるカーブ半径推定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ブレーキ
12 ブレーキ・アクチュエータ
30 ブレーキECU
40 レーダ
50 車間距離ECU
60 車速センサ
62 ヨーレートセンサ
64 操舵角センサ
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定する技術に関するものであり、特に、その推定の精度を向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径(曲率半径)を推定する技術の一従来例が存在する(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−328451号公報
この従来例においては、自車両のステアリングホイールが運転者によって操作された操舵角と自車両のヨーレートとを択一的に用いることにより、自車両の進行路を表す第1のカーブ半径が算出される。さらに、自車両の前方に存在する静止物体(例えば、道路に固設された反射鏡)の位置を利用することにより、自車両の進行路を表す第2のカーブ半径が算出される。さらにまた、それら算出された2種類のカーブ半径に対して平均化処理を行うことにより、自車両の進行路を表す第3のカーブ半径が算出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、自車両の実車速と実ヨーレートとに基づいてカーブ半径を推定する技術について研究を行い、その結果、次のような知見を得た。
【0005】
自車両の実ヨーレートは、自車両から出力される物理量であって、本来自車両の実際の旋回挙動を表す物理量である。したがって、実ヨーレートを用いてカーブ半径を推定する場合には、理論上、自車両に関する車両特性情報(路面のカントに関するファクタを含むスタビリティファクタ)が反映されているため、カーブ半径をほぼ正確に推定することが可能である。
【0006】
これに対し、自車両の実操舵角は、自車両に入力される物理量であるため、実操舵角を用いてカーブ半径を推定するためには、車両特性情報を考慮することが不可欠となる。
【0007】
よって、実ヨーレートを用いてカーブ半径を推定する場合の方が、実操舵角を用いてカーブ半径を推定する場合するより簡単にカーブ半径を推定できることとなる。
【0008】
しかし、自車両がカーブ路を走行している際、自車両の旋回運動が完全に定常状態にあれば、自車両の真の進行方向とそのときに自車両に発生している実ヨーレートとが互いに整合するはずであるが、自車両の旋回運動が定常状態から外れるにつれて、自車両の真の進行方向と実ヨーレートとが互いに整合しない傾向が強くなる。実ヨーレートは、自車両への実操舵角の変化に依拠して自車両から出力される物理量であり、実操舵角の変化が実ヨーレートの変化として現れるまでに時間がかかるからである。実ヨーレートの応答遅れがあるのであり、これは、実ヨーレートが自車両の実際の旋回挙動を正確に反映しない現象を意味する。
【0009】
そのため、実ヨーレートを用いてカーブ半径を推定する場合には、自車両が完全な定常旋回状態にないと、カーブ半径の推定値が実際値からずれてしまう。
【0010】
例えば、自車両がカーブ路の出口に差し掛かり、カーブ路から直線路に移行しようとする段階に至ると、運転者は、ステアリングホイールを旋回位置に保持する保舵操作から、ステアリングホイールを中立位置に戻す切り戻し操作に移行する。このように実操舵角が変化する過渡状態において、実ヨーレートもそれに追従するように変化するはずであるが、その応答に遅れがある。そのため、カーブ路の出口付近においては、実ヨーレートを用いて推定されたカーブ半径が、実際のカーブ半径からずれてしまう傾向がある。
【0011】
そして、本発明者らは、実ヨーレートと実操舵角とを用いてカーブ半径を推定すれば、実ヨーレートは用いるが実操舵角は用いないでカーブ半径を推定する場合に生じ得る不都合を実操舵角を考慮することによって解消できるという知見を得た。
【0012】
本発明者らは、自らの研究によってそのような知見を得たのであり、この知見は前記特許文献1に開示されていない。
【0013】
上述の知見に基づき、本発明は、自車両がこれから走行しようとする道路のカーブ半径を推定するために自車両の実ヨーレートを用いるにもかかわらず、実ヨーレートの応答遅れに起因したカーブ半径の推定誤差を縮減することを課題としてなされたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。
(1) 自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径として推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
自車両のステアリングホイールが運転者によって操作された角度を実操舵角として検出する操舵角センサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記ヨーレートセンサにより検出された実ヨーレートと、前記操舵角センサにより検出された実操舵角とに基づいて前記カーブ半径を推定する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【0015】
この装置によれば、自車両の実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいて、自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径が推定される。したがって、この装置によれば、自車両の過渡状態において実ヨーレートより素早く自車両の旋回挙動を反映し得る実操舵角を考慮しつつ、実ヨーレートを用いてカーブ半径を推定することが可能となり、よって、カーブ半径を推定するために実ヨーレートを用いるにもかかわらず、実ヨーレートの応答遅れに起因したカーブ半径の推定誤差を縮減することが容易となる。
【0016】
本項および下記の各項において「カーブ半径」は、カーブ路の曲率半径を意味する場合と、実質的なまたは完全な直線路の曲率半径(無限大または最大の有限値)を意味する場合とがある。
(2) 前記推定器が、
前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記カーブ半径を基礎値として推定する基礎値推定手段と、
前記実操舵角に関する物理量に基づいて前記基礎値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記基礎値を補正することにより、前記カーブ半径を推定する推定手段と
を含む(1)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0017】
この装置の一態様によれば、カーブ半径を推定するために実操舵角を用いるにもかかわらず、前記車両特性情報を考慮することなく、カーブ半径を推定することが可能となる。よって、この態様によれば、実操舵角を用いるにもかかわらず、カーブ半径を推定するための演算を簡単にすることが容易となる。
(3) 前記推定器が、さらに、前記カーブ半径の予想値が設定値以下であり、かつ、前記基礎値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合に、前記カーブ半径の推定を許可する許可手段を含む(2)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0018】
カーブ半径の予想値が設定値より大きい場合には、自車両が走行している道路が実ヨーレートの応答遅れが問題とならない道路であると判定し、一方、カーブ半径の予想値が設定値以下である場合には、自車両が走行している道路が、実ヨーレートの応答遅れが問題になるような曲率半径(旋回半径と等価である。)を有するカーブ路であると判定することが可能である。
【0019】
また、カーブ半径の基礎値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合には、自車両の走行状態が定常状態であると判定することが妥当である。
【0020】
さらに、自車両が走行している道路がカーブ路であり、かつ、そのときの自車両の走行状態が定常旋回状態である場合には、自車両が定常カーブ走行中であると判定することが妥当である。
【0021】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置によれば、カーブ半径の予想値が設定値以下であり、かつ、カーブ半径の基礎値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合に、前記補正量を用いたカーブ半径の推定が許可される。
【0022】
したがって、この装置によれば、自車両の走行状態が狭義の定常旋回状態から大きく外れていない場合に、実ヨーレートおよび実操舵角を用いてカーブ半径が推定される。よって、この装置によれば、カーブ半径の推定精度を容易に向上させ得る。
【0023】
本項および下記の各項における「カーブ半径の予想値」は、例えば、カーブ半径の基礎値として定義したり、実操舵角に基づいて推定されたカーブ半径として定義することが可能である。
(4) 前記推定器が、さらに、前記実車速が大きいほど短くなるように前記設定時間を設定する設定手段を含む(3)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0024】
前記(3)項に係る装置は、カーブ半径の推定を許可するためにカーブ半径の基礎値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が連続すべきであるとして設定された設定時間が固定値である態様で実施することが可能である。ここに「設定時間」は、自車両がカーブ路を走行した距離に対応している。
【0025】
一方、自車両がカーブ路を必要距離走行するのに必要な時間は、自車両の実車速によって異なる。実車速が大きいほど、その時間は短くなる。
【0026】
また、ある瞬間におけるカーブ半径の基礎値(概略的には実ヨーレートに対応する)のみを参照する場合には、自車両がカーブ路を走行している状態と、自車両が直線路上においてレーンチェンジを行っている状態とを互いに区別することは困難である。
【0027】
これに対し、カーブ半径の基礎値が、自車両がある距離を走行する期間中連続して、自車両が旋回状態にあることを示すか否かを判定することとすれば、自車両の旋回がカーブ路走行のために行われた状態と、レーンチェンジのために行われた状態とを互いに区別することが容易となる。
【0028】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置によれば、上記設定時間の長さが、自車両の実車速が大きいほど短くなるように設定される。
【0029】
したがって、この装置によれば、自車両が実際にはカーブ路を走行していない状態においてカーブ半径が不正確に推定されてしまう事態を容易に回避できる。
(5) 前記推定器が、前記カーブ半径の予想値が小さい場合に大きい場合より敏感に前記カーブ半径の推定値が前記実操舵角の変化に対して応答するように、前記カーブ半径を推定する手段を含む(1)ないし(4)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【0030】
カーブ半径の実際値が小さく、カーブ路が急に曲がっている場合であるほど、実操舵角の変化に対する実ヨーレートの応答遅れが大きく、よって、実ヨーレートが自車両の実際の旋回挙動を正確に反映しない傾向が強い。
【0031】
この事実に注目することにより、本項に係る装置によれば、カーブ半径の予想値が小さい場合に大きい場合より敏感にカーブ半径の推定値が実操舵角の変化に対して応答するように、カーブ半径が推定される。
(6) 前記推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記基礎値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記基礎値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記基礎値を補正することにより、前記カーブ半径を推定する手段を含む(2)ないし(4)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【0032】
この装置によれば、実車速および実ヨーレートには基づくが実操舵角には基づかないで推定されたカーブ半径の基礎値を、実操舵角に関連する物理量としての、実操舵角に関する一定角度当たりの基礎値の変化量と、一定時間当たりの実操舵角の変化量とに基づいて補正してカーブ半径を最終的に推定する場合において、カーブ半径の予想値が小さい場合に大きい場合より敏感にカーブ半径の推定値が実操舵角の変化に対して応答するように、カーブ半径を推定する態様の一例が提供される。
(7) 自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
自車両のステアリングホイールが運転者によって操作された角度を実操舵角として検出する操舵角センサと、
前記カーブ半径を推定するために、
(a)前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記カーブ半径を第1推定値として推定する第1推定手段と、
(b)それら実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいて前記カーブ半径を第2推定値として推定する第2推定手段と、
(c)それら推定された第1推定値と第2推定値とを選択的にまたは総合的に用いて前記カーブ半径の推定値の最終値を取得する最終値取得手段と
を有する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【0033】
カーブ半径を推定する手法として、実車速と実ヨーレートとには基づくが実操舵角には基づかないでカーブ半径を第1推定値として推定する第1の手法と、それら実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいてカーブ半径を第2推定値として推定する第2の手法とが考えられる。第2の手法を実施するに際し、前記(2)ないし(6)項のいずれかに記載の特徴を採用することが可能である。
【0034】
それら第1推定値および第2推定値は、共にカーブ半径の推定値である関係上、本来であれば互いに一致するはずであるが、自車両の走行状態によっては、互いに異なる可能性がある。この場合、それら2つの推定値の一方が他方より正確に真のカーブ半径を表していることもあれば、それら2つの推定値の合成値がいずれの推定値よりも正確に真のカーブ半径を表していることもある。いずれにしても、それら2つの推定値のうち必ず同じものをカーブ半径として出力するより、それら2つの推定値を選択的にまたは総合的に用いてカーブ半径を推定する方が、その推定精度を容易に向上させ得る。
【0035】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置によれば、実車速と実ヨーレートとには基づくが実操舵角には基づかないで推定されたカーブ半径と、それら実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいて推定されたカーブ半径とを選択的にまたは総合的に用いてカーブ半径の推定値の最終値が取得される。
(8) 前記最終値取得手段が、前記第1推定値と第2推定値とのうち大きい方を前記カーブ半径の最終値として選択する選択手段を含む(7)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0036】
第1推定値および第2推定値は、その取得に際して実ヨーレートが用いられる点で互いに共通する。一方、前述のように、実ヨーレートの応答遅れが原因となり、例えば、カーブ路の出口付近においては、実ヨーレートを用いて取得されたカーブ半径の推定値が実際値より小さくなる傾向がある。
【0037】
したがって、それら第1推定値および第2推定値のうち大きい方が、小さい方より正確にカーブ半径の実際値を反映していると推論することが妥当である。
【0038】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置によれば、第1推定値と第2推定値とのうち大きい方がカーブ半径の最終値として選択される。
【0039】
本項に係る装置は、後に(18)項において説明するように、自車両が追尾すべき先行車両が存在するか否かを判定する判定器と共に使用することが可能である。
【0040】
一方、カーブ路の出口付近においては、一般に、曲率半径が定常的である曲線ではなく、徐々に曲率半径が大きくなるクロソイド曲線となっている。そのため、自車両が先行車両に追従して走行している状態においては、カーブ路のうち、先行車両が走行している部分の曲率半径が、自車両が走行している部分の曲率半径に対し、自車両が先行車両から離れるにつれて増加し、その結果、先行車両に対応するカーブ半径と自車両に対応するカーブ半径との間に差が発生する。
【0041】
本項に係る装置を実施すれば、カーブ路の出口付近においては、実操舵角は用いずに実ヨーレートは用いて推定されたカーブ半径ではなく、実操舵角も実ヨーレートも用いて推定されたカーブ半径が最終的な推定カーブ半径として選択される傾向が強い。その結果、自車両において推定されるカーブ半径が、先行車両に対応するカーブ半径により近いものとなる。応答性の速い操舵情報を考慮してカーブ半径が推定されるからである。そのようになれば、自車両が先行車両を捕捉し易い程度(先行車両の捕捉性・認識性または先行車両への追従性)を容易に向上させ得る。なお、このことは前記(1)項に係る装置についても該当し得る。
(9) 前記推定器が、前記カーブ半径の予想値が設定値以下であり、かつ、前記第1推定値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合に、前記第2推定値の取得を許可する許可手段を含む(7)または(8)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0042】
この装置によれば、前記(3)項に係る装置と同様な作用効果が得られる。
(10) 前記推定器が、前記実車速が大きいほど短くなるように前記設定時間を設定する設定手段を含む(9)項に記載のカーブ半径推定装置。
【0043】
この装置によれば、前記(4)項に係る装置と同様な作用効果が得られる。
(11) 前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量とに基づいて前記第2推定値を取得する手段を含む(7)ないし(10)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
(12) 前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記第2推定値を取得する手段を含む(7)ないし(10)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
(13) 前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記第1推定値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記第1推定値を補正することにより、前記第2推定値を取得する手段を含む(7)ないし(10)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【0044】
この装置によれば、前記(6)項に係る装置と同様な作用効果が得られる。
(14) 前記第1推定手段が、前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記第1推定値の元値を取得し、その取得された元値に対してフィルタ処理を、その元値に対する応答性が、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域においては低い特性、旋回走行状態に近いと予想される領域においては高い特性で行うことにより、前記第1推定値の最終値を取得する手段を含む(7)ないし(13)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【0045】
この装置によれば、後述の(15)項に係る装置と同様な作用効果が得られる。
(15) 自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記ヨーレートセンサにより検出された実ヨーレートとに基づいて前記カーブ半径の推定値の元値を取得し、その取得された元値に対してフィルタ処理を、その元値に対する応答性が、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域においては低い特性、旋回走行状態に近いと予想される領域においては高い特性で行うことにより、前記カーブ半径の推定値の最終値を取得し、それにより、前記カーブ半径を推定する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【0046】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径は、自車両の実ヨーレートを用いて推定することが可能である。実ヨーレートを検出するヨーレートセンサは、通常、自車両に発生するヨーモーメントが0であるとき(自車両が直進走行しているかまたは停止しているとき)に、検出値が0点を示すように設計される。しかし、実ヨーレートの検出値は、それの0点付近において、ヨーレートセンサが搭載されている自車両の車体振動や、ヨーレートセンサの内部ノイズの影響を受け易く、そのためにふらつきも生じ易い。そのため、自車両の走行状態が直進走行状態に近い場合には、ヨーレートセンサの検出値のふらつきが原因で、ヨーレートセンサの検出値に基づくカーブ半径の推定値に誤差が発生し易い。
【0047】
そのふらつきに起因した推定誤差を縮減するために、ヨーレートセンサの検出値に基づくカーブ半径の推定値に対してフィルタ処理を行うことが考えられる。
【0048】
しかし、フィルタ処理の特性、すなわち、フィルタ処理前の推定値に対するフィルタ処理後の推定値の応答性をその推定値の変化可能領域の全域において一様に設定したのでは、車両の進行につれてカーブ半径が変化し易いカーブ路上において、カーブ半径の実際の変化に対するカーブ半径の推定値の応答性が鈍感になり過ぎてしまう可能性がある。すなわち、フィルタ処理後の推定値が、カーブ半径の変化を迅速に反映することが困難となってしまう可能性があるのである。
【0049】
そこで、本項に係る装置においては、実車速と実ヨーレートとに基づいてカーブ半径の推定値の元値が取得され、その取得された元値に対してフィルタ処理が、その元値に対する応答性が、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域においては低い特性、旋回走行状態に近いと予想される領域においては高い特性で行われることにより、カーブ半径の推定値の最終値が取得される。これにより、カーブ半径が推定される。
【0050】
したがって、この装置によれば、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域において、ヨーレートセンサの検出値のふらつきに起因した推定誤差を縮減することと、自車両の走行状態が旋回走行状態に近いと予想される領域において、カーブ半径の実際の変化に対するカーブ半径の推定値の応答性を良好にすることとを容易に両立させ得る。
【0051】
本項に係る技術的特徴は、前記(1)に記載の装置のように、実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいてカーブ半径を推定する装置に採用することが可能である。
(16) 前記推定器が、前記実車速が設定車速以下である場合には、前記実ヨーレートの検出値の如何を問わず、自車両が直進走行状態にあると判定する判定手段を含む(1)ないし(15)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【0052】
実ヨーレートを検出するヨーレートセンサは、通常、自車両の実車速が極低速(例えば、時速10km以下)である場合には、それの出力が微小であるために、ヨーレートセンサのS/N比が低く、正確にヨーモーメントを検出することが困難であるい。そのため、この場合には、実ヨーレートを用いたカーブ半径の推定を高精度で行うことが困難となり易い。
【0053】
一方、自車両においてカーブ半径の推定値を用いる他の装置の実用的観点からすると、自車両の実車速が極低速である場合には、そうでない場合ほどに高い精度がカーブ半径の推定値に要求されないことが多い。
【0054】
以上説明した知見に基づき、本項に係る装置によれば、実車速が設定車速以下である場合には、実ヨーレートの検出値の如何を問わず、自車両が直進走行状態にあると判定される。
【0055】
したがって、この装置によれば、ヨーレートセンサの検出値を用いる他の装置がその検出値のふらつきの影響を受けずに済む。
(17) 自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の旋回状態を表す旋回状態量を検出する旋回状態量センサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記旋回状態量センサにより検出された旋回状態量とのうちの少なくとも旋回状態量に基づいて前記カーブ半径を推定する推定器であって、前記実車速が設定車速以下である場合には、前記旋回状態量の検出値の如何を問わず、自車両が直進走行状態にあると判定するものと
を含むカーブ半径推定装置。
【0056】
この装置によれば、前記(16)項に係る装置と同様な作用効果が得られる。
【0057】
本項における「旋回状態量センサ」は、例えば、前記ヨーレートセンサとしたり、前記操舵角センサとしたり、自車両の実横加速度を検出する横加速度センサとしたり、自車両のタイヤに作用する実横力を検出するタイヤ横力センサとしたり、自車両における横方向の荷重移動量を検出する荷重移動量センサとすることが可能である。
(18) (1)ないし(17)項のいずれかに記載のカーブ半径推定装置と、
自車両に設けられてそれの前方に位置する物体を検出するセンサと、
そのセンサにより検出された物体が移動物体としての先行車両である場合に、前記センサの出力信号と、前記カーブ半径推定装置により推定されたカーブ半径とに基づき、先行車両が自車両と同じカーブ路の同じ車線を走行している確率である自車線確率を、先行車両が前記車線から車幅方向に外れた第1距離と、先行車両が自車両から前記車線に沿って車両進行方向に外れた第2距離とのうちの少なくとも一方と前記自車線確率との間に予め定られた関係に従って決定し、その決定された自車線確率が設定確率以上である場合に、自車両が追尾すべき先行車両が存在すると判定する判定器と
を含む先行車両存否判定装置。
【0058】
この装置によれば、推定誤差が縮減されたカーブ半径の推定値を用いて、自車両が追尾すべき先行車両が存在するか否かを判定することが可能となるため、追尾すべき先行車両の発見の迅速化および確実化を容易に実現可能となる。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0060】
図1には、本発明の第1実施形態に従うカーブ半径推定装置を含む車間距離制御装置のハードウエア構成がブロック図で概念的に示されている。
【0061】
この車間距離制御装置は車両に搭載されている。その車両は、動力源としてのエンジン(モータでも可。)の駆動力がトランスミッション(有段式でも無段式でも可。)を経て複数の駆動車輪に伝達されることによって駆動される。
【0062】
この車両は、それら複数の駆動車輪を含む複数の車輪をそれぞれ制動するブレーキ(例えば、摩擦式、回生制動式等)10を備えている。それら複数の車輪は、左右の前輪と左右の後輪とを含むように構成されている。図1において「FL」は左前輪、「FR」は右前輪、「RL」は左後輪、「RR」は右後輪をそれぞれ意味している。車両は、各車輪のブレーキ10を電気的に制御するブレーキ・アクチュエータ12(例えば、モータ駆動式、電磁圧力制御式等)を備えている。
【0063】
エンジンは、それの吸気マニホールド内においてスロットルを備えており、そのスロットルの開度に応じてエンジンの出力が変化させられる。スロットルの開度は、スロットル・アクチュエータ20(例えば、電動モータ)によって電気的に制御可能となっている。
【0064】
トランスミッションにおいては、それの入力シャフトと出力シャフトとの変速比が変化させられる。その変速比を電気的に制御するために、トランスミッション・アクチュエータ22(例えば、ソレノイド)が設けられている。
【0065】
この車両は、さらに、ブレーキ・アクチュエータ12によってブレーキ10を制御するブレーキECU(Electronic Control Unit)30を備えるとともに、スロットル・アクチュエータ20およびトランスミッション・アクチュエータ22によってエンジンおよびトランスミッションをそれぞれ制御するエンジンECU32を備えている。それらブレーキECU30およびエンジンECU32は、CPU、ROMおよびRAMを含むコンピュータを主体として構成されている。このことは、後述の他のECUについても同様である。
【0066】
図1に示すように、本実施形態に従う車間距離制御装置は、自車両の前方に位置する物体を検出するセンサとしてレーダ40を備えている。レーダ40は、電磁波(光、音等を含む)を放射し、その放射された電磁波のうち、レーダ40の検出ゾーン内の目標物によって反射した電磁波を受けることにより、目標物の自車両からの距離と、目標物の自車両に対する相対的な方向とを探知する装置である。レーダ40は、例えば、電磁波のビームをそれの進行方向と交差する方向に設定角度範囲内で往復揺動させてレーダ40の前方をスキャンすることにより、概して扇状を成す検出ゾーンの全域をカバーする。
【0067】
レーダ40により探知される目標物が先行車両である場合には、レーダ40は、先行車両の自車両からの距離である車間距離と、先行車両の自車両に対する相対的な方位とを探知することとなる。図2には、自車両のレーダ40の検出ゾーン内に1台の先行車両が存在する様子の一例が示されている。
【0068】
レーダ40が放射する電磁波としては、例えば、レーザ光(例えば、レーザビーム)やミリ波を選ぶことができる。ところで、あらゆる車両は、一般に、それの後面に、左右に隔たった一対のリフレクタを有している。各車両における一対のリフレクタからの反射波を利用することにより、レーダ40は、それの検出ゾーン内において各車両を他の車両から識別することが可能である。
【0069】
このレーダ40の出力信号に基づき、自車両と先行車両との車間距離が目標距離に近づくように自車両の走行を制御する車間距離ECU50が、図1に示すように、車間距離制御装置に設けられている。
【0070】
この車間距離ECU50は、自車両の減速のためには、基本的には、ブレーキECU30およびブレーキ・アクチュエータ12を介してブレーキ作動力を制御し、一方、自車両の加速のためには、エンジンECU32、スロットル・アクチュエータ20およびトランスミッション・アクチュエータ22を介してスロットル開度および変速比を制御する。
【0071】
図1に示すように、本実施形態に従う車間距離制御装置は、さらに、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、操舵角センサ64とを備えている。
【0072】
車速センサ60は、自車両の車速を実測または推定によって検出するセンサである。この車速センサ60は、例えば、各車輪ごとに車輪速度を検出する複数の車輪速度センサを有し、それらの出力信号を用いて自車両の車速を推定する形式とすることが可能である。
【0073】
ヨーレートセンサ62は、自車両に実際に発生したヨーレートを検出するセンサである。このヨーレートセンサ62は、音叉型の振動子を有し、自車両のヨーモーメントに基づいて振動子に生じた歪を検出することによって自車両のヨーレートを検出する形式とすることが可能である。
【0074】
操舵角センサ64は、自車両の運転者により自車両のステアリングホイールが回転操作された角度を操舵角として検出するセンサである。
【0075】
図1に示すように、本実施形態に従う車間距離制御装置は、さらに、制御許可スイッチ70と、モード選択スイッチ72とを備えている。
【0076】
制御許可スイッチ70は、車間距離制御を許可するか否かに関する運転者の意思表示を車間距離ECU50に入力するために運転者により操作されるスイッチである。
【0077】
モード選択スイッチ72は、車間距離を制御するために予め用意された複数の制御モードの中から、運転者が希望する制御モードを選択するために運転者による操作されるスイッチである。
【0078】
それら複数の制御モードは、例えば、ある瞬間に先行車両が通過した位置と同じ位置をそのある瞬間から自車両が通過するまでに経過することが予想される時間である車間時間に関して用意される。この場合、それら複数の制御モードは、例えば、長い車間時間を実現すべく、先行車両との間に長い車間距離が維持されるように車間距離を制御する長時間制御モードと、短い車間時間を実現すべく、先行車両との間に短い車間距離が維持されるように車間距離を制御する短時間制御モードと、それら2つのモードの中間に位置する中時間制御モードとを含むように定義することが可能である。
【0079】
本実施形態においては、レーダ40を用いた車間距離制御により、先行車両との間に設定車間距離を保持しつつ先行車両に追従するように自車両の走行が制御される。車間距離制御により、自車両が先行車両を自動的に追尾するのである。
【0080】
このように自車両が先行車両に追従している状態から、自車両が先行車両を喪失する状態、すなわち、先行車両が自車両と同じ車線から離脱した状態に移行すると、本実施形態においては、車間距離制御により、自車両が自動的に加速させられてそれの実車速が目標車速に上昇させられ、以後、自車両がその設定車速で定速走行させられる。
【0081】
次に、本実施形態に従う車間距離制御装置のソフトウエア構成を説明する。
【0082】
図3には、車間距離ECU50のソフトウエア構成が機能ブロック図で概念的に表されている。同図に示すように、車間距離ECU50は、それの機能に着目すると、カーブ半径推定部100と、レーダ信号処理部102と、車間距離制御部104とを含むように構成されている。
【0083】
カーブ半径推定部100は、ヨーレートセンサ62、操舵角センサ64および車速センサ60と接続されている。レーダ信号処理部102は、レーダ40と接続されている。車間距離制御部104は、エンジンECU32と接続されるとともに、そのエンジンECU32を介してブレーキECU30と接続されている。
【0084】
カーブ半径推定部100は、レーダ40が捕捉している車両が、自車両と同じ車線上を走行している先行車両であって、自車両が追従すべき車両であるか否かを判定するために使用されるカーブ半径を推定する部分である。
【0085】
自車両の定常的な旋回挙動に着目する場合には、操舵角よりヨーレートの方が自車両の進行方向すなわち自車両が走行しているカーブ路の半径を正確に反映する。操舵角からカーブ半径を推定する場合には、車両特性情報(スタビリティファクタを含む。)を考慮しないと正確なカーブ半径を推定することが困難であるのに対し、ヨーレートからカーブ半径を推定する場合には、そのような車両特性情報が反映された物理量としてヨーレートを利用することが合理的であるからである。
【0086】
しかし、自車両の過渡的な旋回挙動に着目する場合には、操舵角は、自車両の旋回挙動の原因となる物理量であるため、操舵角を見れば、応答遅れなく、自車両の旋回挙動すなわちカーブ半径を推定することが容易である。これに対して、ヨーレートは、自車両の旋回挙動の結果を表す物理量であるため、ヨーレートを見ても、その瞬間における自車両の旋回挙動すなわちカーブ半径を正確に推定できるとは限らない。
【0087】
図4には、自車両がカーブ路の入口に進入してからそれの出口から退出するまでのカーブ路走行が、ヨーレートを参照して得られる推定カーブ半径を有する推定進路と、ヨーレートと、ステアリングホイールの操作とに着目して概念的に表されている。
【0088】
自車両がカーブ路入口に進入して旋回を開始すると、その後ヨーレートが変化する。
【0089】
やがて、自車両は定常旋回状態に移行し、その状態においては、ヨーレートがほぼ一定に保たれ、それに基づいて自車両の進路が正しく推定される。ヨーレートを参照して得られた推定カーブ半径が真のカーブ半径を正確に反映しているのである。
【0090】
その後、自車両がカーブ路の出口付近に差し掛かり、旋回を終了する時点に近づくと、運転者によってステアリングホイールが中立位置に向かって切り返されるが、それに伴う自車両の挙動変化がヨーレートに現れるまでに時間がかかる。ステアリグホイールの切り返しに対してヨーレートの戻りが遅れてしまう傾向があるのである。そのため、カーブ路の出口付近においてヨーレートを参照してカーブ半径を推定すると、実際には道路がカーブ路から直進路に向かうにつれてカーブ半径が増加するにもかかわらず、依然として同じカーブ路が続いているとの過った進路推定がなされてしまう傾向がある。
【0091】
そこで、本実施形態においては、ヨーレートを参照してカーブ半径を推定する際の利点を享受しつつ、ヨーレートを参照してカーブ半径を推定する際の欠点を操舵角を参照することによって解消し、それにより、カーブ半径を精度よく推定できるようになっている。
【0092】
具体的には、図3のカーブ半径推定部100が、ヨーレートと車速とに基づいて推定された第1推定カーブ半径と、それを操舵角に基づいて補正して得た第2推定カーブ半径とを互いに比較し、それらのうち大きい方を真のカーブ半径に近い値であるとして、最終的な推定カーブ半径に選択する。
【0093】
その結果、カーブ路の出口におけるように、自車両の挙動変化に応答してヨーレートが変化する際に遅れがある走行環境において、ヨーレートを参照してカーブ半径が推定されるにもかかわらず、そのような応答遅れが減殺されてカーブ半径が推定される。
【0094】
図3を参照しつつ、さらに具体的に説明すれば、このカーブ半径推定部100には、ヨーレートセンサ62により検出された元ヨーレートがフィルタ処理されることにより、ヨーレートYawとして取り込まれる。同様にして、操舵角センサ64により検出された元操舵角がフィルタ処理されることにより、操舵角STRとして取り込まれる。
【0095】
その取り込まれたヨーレートYawと、車速センサ60により検出された車速Vnとに基づき、後に詳述するロジックに従い、第1推定カーブ半径Ryaw1(これが前記基礎値の一例であるとともに前記第1推定値の一例である。)が演算される。
【0096】
その後、その演算された第1推定カーブ半径Ryaw1が、前記取り込まれた操舵角STRに基づいて補正され、その補正値が第2推定カーブ半径Ryaw2(これが前記第2推定値の一例である。)として出力される。
【0097】
続いて、その出力された第2推定カーブ半径Ryaw2と、前記演算された第1推定カーブ半径Ryaw1とのうちの大きい方が選択され、それが最終的な推定カーブ半径R(これが前記最終値の一例である。)とされる。その最終的なカーブ半径Rは、レーダ40の出力信号を処理するレーダ信号処理部102に供給される。
【0098】
そのレーダ信号処理部102は、その供給されたカーブ半径Rに基づいて自車両がこれから走行する車線の形状を想定することにより、自車両が追尾すべき先行車両がレーダ40により捕捉されたか否かを判定する。
【0099】
そして、車間距離制御部104は、そのようにして捕捉された先行車両と自車両との車間距離を始めとする各種走行情報に基づき、先行車両との間に設定車間距離を保持しつつ先行車両に追従するように自車両の走行を制御するための信号をエンジンECU32とブレーキECU30とに送信する。
【0100】
車間距離ECU50のコンピュータのROMには、上述の車間距離制御を実施するために各種プログラムが予め格納されている。図5には、そのうちの一つである減速制御プログラムの内容が概念的にフローチャートで表されている。ただし、図5においては、その減速制御プログラムのうち、本発明を理解するために不可欠ではない部分についての図示が省略されている。
【0101】
この減速制御プログラムにおいては、まず、ステップS151(以下、単に「S151」で表す。他のステップについても同じとする。)において、車間距離情報に基づいて自車両の目標減速度GTが算出される。車間距離情報と目標減速度GTとの関係がマップ、テーブル等の形式で前記ROMに予め格納されており、その関係に従い、今回の車間距離情報に対応する目標減速度GTが今回の目標減速度GTとして決定される。
【0102】
ここに「車間距離情報」は、例えば、自車両に対する先行車両の相対速度Vrと前述の車間時間Tとの双方を含むように定義することが可能である。
【0103】
ここに「相対速度Vr」は、それの符号が正であれば、自車両が先行車両から離間して車間距離が増加する離間傾向があることを示し、一方、それの符号が負であれば、自車両が先行車両に接近して車間距離が減少する傾向があることを示す。
【0104】
換言すれば、相対速度Vrは、自車両の先行車両に対する現在の相対位置が前回の相対位置に対して、自車両が先行車両に接近する向きにずれているのか、先行車両から離間する向きにずれているのか、すなわち、自車両の先行車両に対する相対移動の向きを表すとともに、その程度を表す物理量の一例である。
【0105】
これに対して、「車間時間T」は、同じ車速のもとに車間時間Tが長い場合と短い場合とを互いに比較すると、車間時間Tが長いほど車間距離が長いことを意味する。適正車間距離は、一定値とするのではなくむしろ、車速に応じて決まる可変値とするのが望ましく、そうすると、適正車間距離が長いか短いかを判断するためにはいちいちそのときの車速を参照しなければならない。それに対し、車間時間Tを採用すれば、それ単独で、自車両が先行車両に追突しないようにするために自車両の運転者が払うべき注意の程度を表現することが可能となる。このように、車間時間Tは、運転者の感覚をより忠実に表現するパラメータなのである。
【0106】
換言すれば、車間時間Tは、自車両の先行車両に対する実際の相対位置が目標の相対位置に対して、自車両が先行車両に接近する向きにずれているのか、先行車両から離間する向きにずれているのか、すなわち、自車両の先行車両に対する相対位置の偏差(誤差)の向きを表すとともに、その程度を表す物理量の一例である。
【0107】
次に、S152において、レーダ40の出力信号に基づき、自車両にとっての先行車両が存在するか否かが判定される。具体的には、自車両の前方位置においてレーダ40によって捕捉された対象物が、自車両と一緒に移動している移動物体であるか否かが判定される。
【0108】
今回は、先行車両が存在しないと仮定すれば、S152の判定がNOとなり、S151に戻るが、今回は、先行車両が存在すると仮定すれば、S152の判定がYESとなり、S153に移行する。
【0109】
このS153においては、先行車両が自車両と同じ車線上に存在する確率である自車線確率Piが算出される。この自車線確率Piは、レーダ40によって捕捉された先行車両の位置(先行車両を代表する一点の位置であって、例えば、先行車両における一対のリフレクタ間の中央位置)が上記車線から車幅方向に外れる第1距離と、先行車両の位置が自車両から上記車線に沿って車両進行方向に外れる第2距離とのうちの少なくとも一方に基づき、それら2種類の距離のうち該当するものと自車線確率Piとの間に予め定められた関係に従って算出される。この算出の一例が前記特開2001−328451号公報に記載されている。
【0110】
このS153においては、自車両が走行している車線であって自車両がこれから走行すべき部分を有するもの、すなわち、自車両がこれから描くべき走行軌跡を予測するために、自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定することが必要である。その推定を行うために、車間距離ECU50のコンピュータのROMにはカーブ半径推定プログラムも予め格納されている。このカーブ半径推定プログラムの詳細については後述する。
【0111】
その後、S154において、前記算出された自車線確率Piがしきい値Pi0以上であるか否かが判定される。今回は、しきい値Pi0以上ではないと仮定すると、S154の判定がNOとなり、S151に戻るが、今回は、しきい値Pi0以上であると仮定すると、S154の判定がYESとなり、S155に移行する。
【0112】
このS155においては、減速度偏差ΔGが算出される。減速度偏差ΔGは、実減速度GRから目標減速度GTを差し引くことによって算出される。続いて、S156において、その算出された減速度偏差ΔGがしきい値ΔG0より大きいか否かが判定される。今回は、しきい値ΔG0より大きくはないと仮定すれば、S156の判定がNOとなり、S151に戻るが、しきい値ΔG0より大きい場合には、S156の判定がYESとなり、S157に移行する。
【0113】
このS157においては、車速センサ60により自車両の車速Vnが検出される。その後、S158において、その検出された車速Vnに基づいてブレーキ制御許可距離D0が決定される。このブレーキ制御許可距離D0は、車間距離Dがそれより長い場合にはブレーキ制御によって自車両を減速させることは不要であるが、それ以下である場合にはブレーキ制御によって自車両を減速させることが必要であることを前提に設定されている。
【0114】
このブレーキ制御許可距離D0は、図6にグラフで概念的に表すように、車速Vnと共に増加するように決定される。
【0115】
したがって、本実施形態によれば、車速Vnの増加につれてブレーキ制御許可距離D0が延びるため、自車両の高速走行中において低速走行中におけるよりブレーキ制御の開始タイミングが早められ、その結果、車間距離制御の信頼性および運転者の安心感が向上する。
【0116】
続いて、図5のS159において、レーダ40により車間距離Dが検出される。その後、S160において、その検出された車間距離Dが、前記決定されたブレーキ制御許可距離D0以下であるか否かが判定される。
【0117】
今回は、車間距離Dがブレーキ制御許可距離D0以下ではないと仮定すれば、S160の判定がNOとなり、S151に戻るが、今回は、車間距離Dがブレーキ制御許可距離D0以下であると仮定すれば、S160の判定がYESとなり、S161において、ブレーキ制御が許可され、その後、S162において、ブレーキ制御がブレーキECU30に対して要求される。その結果、ブレーキECU30により、目標減速度GTが実現されるように自車両が減速させられる。
【0118】
以上で、このブレーキ制御許可判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0119】
図7には、前記カーブ半径推定プログラムの内容が概念的にフローチャートで表されている。ただし、図7においては、そのカーブ半径推定プログラムのうち、本発明を理解するために不可欠ではない部分についての図示が省略されている。
【0120】
すなわち、本実施形態においては、車間距離ECU50のうちこのカーブ半径推定プログラムを実行するための部分によって前記カーブ半径推定部100が構成されているのである。
【0121】
このカーブ半径推定プログラムにおいては、まず、S701において、車速センサ60から自車両の車速Vnが取り込まれる。次に、S702において、ヨーレートセンサ62からヨーレートYawが必要なフィルタ処理を施されて取り込まれる。
【0122】
続いて、S703において、それら取り込まれた車速VnとヨーレートYawとを用いることにより、第1推定カーブ半径Ryaw1が取得される。この第1推定カーブ半径Ryaw1は、例えば、車速VnをヨーレートYawで割り算することにより取得される。
【0123】
その後、S704において、自車両が一定距離のカーブ路を走行するために必要な時間が設定時間TCとして決定される。設定時間TCは、例えば、定数KCを車速Vnで割り算することによって決定される。ここに、「定数KC」は、自車両が同じカーブ路上において定常カーブ走行を行っている事実を正しく検出するために自車両が走行しなければならない距離を意味する。
【0124】
続いて、S705において、自車両が定常カーブ走行を行っているか否かが判定される。具体的には、前記第1推定カーブ半径Ryaw1(これが前記予想値の一例である。)が設定値Ryaw0以下であり、かつ、第1推定カーブ半径Ryaw1(これが前記基礎値の一例であるとともに前記第1推定値の一例である。)の最大変動幅ΔRyaw1の絶対値が設定値ΔRyaw1(これが前記設定状態の一例である。)以下である状態が、前記決定された設定時間TC以上連続したか否かが判定される。
【0125】
ここに、第1推定カーブ半径Ryaw1の最大変動幅ΔRyaw1の絶対値が設定値ΔRyaw1以下である状態とは、自車両の走行状態が実質的に定常である場合に第1推定カーブ半径Ryaw1に関して成立すべき状態を意味する。
【0126】
今回は、第1推定カーブ半径Ryaw1が設定値Ryaw0以下であり、かつ、第1推定カーブ半径Ryaw1の最大変動幅ΔRyaw1の絶対値が設定値ΔRyaw1以下である状態が設定時間TC以上連続したという条件が成立しないと仮定すれば、判定がNOとなり、S714において、第1推定カーブ半径Ryaw1が最終的なカーブ半径Rとされる。以上で、このカーブ半径推定プログラムの一回の実行が終了する。
【0127】
これに対し、今回は、上記条件が成立すると仮定すれば、S705の判定がYESとなり、S706において、第1推定カーブ半径Ryaw1の補正が許可される。
【0128】
続いて、S707において、上記設定時間TC内に取得された複数の第1推定カーブ半径Ryaw1(S701ないしS703の反復的実行により取得される)のうちの最大値MAX(Ryaw1)と最小値MIN(Ryaw1)との平均値AVEが算出される。この平均値AVEは、それら複数の第1推定カーブ半径Ryaw1を代表する値の一例である。
【0129】
その後、S708において、操舵角センサ64から操舵角STRが必要なフィルタ処理を施されて取り込まれる。続いて、S709において、その取り込まれた操舵角STRの今回値STRnから前回値STRn−1を引き算した値が、操舵角変化量ΔSTRとされる。
【0130】
その後、S710において、第1推定カーブ半径Yraw1に応じて係数KSが決定される。係数KSは、例えば、図8にグラフで概念的に表されているように、第1推定カーブ半径Ryaw1が減少するにつれて(すなわち、自車両が走行している道路が直線路からカーブ路に近づくにつれて)、増加するように定義されている。
【0131】
後に詳述するが、本実施形態においては、実際のカーブ半径RRと操舵角STRnとの間に比例関係が存在すると仮定し、それの比例係数と、操舵角変化量ΔSTRとの積を用いて第1推定カーブ半径Ryaw1の補正量ACが算出される。しかし、上記比例係数は、実際のカーブ半径RRの大小にかかわらず一定であると考えることは妥当ではなく、むしろ、実際のカーブ半径RRが小さいほど、すなわち、自車両が走行中の道路の曲がりがきついほど、大きな値となると考える方が自然である。
【0132】
そこで、本実施形態においては、第1推定カーブ半径Ryaw1の補正量ACが、前記比例係数と操舵角変化量ΔSTRとの積と係数KSとの積として算出されるとともに、その係数KSが、第1推定カーブ半径Ryaw1が減少するにつれて増加するように決定される。このように、この係数KSは、自車両の運転者がカーブ路の出口付近においてステアリングホイールを切り返す操作に対するヨーレートYawの応答遅れ量、ひいては、第1推定カーブ半径Ryaw1の応答遅れ量を反映するために設けられている。
【0133】
その後、S711において、上述のようにして第1推定カーブ半径Ryaw1の補正量ACが算出される。具体的には、
AC=(AVE/STRn)・ΔSTR・KS
なる式を用いて補正量ACが算出される。
【0134】
続いて、S712において、その算出された補正量ΔACを用いて第1推定カーブ半径Ryaw1が補正される。具体的には、平均値AVE(第1推定カーブ半径Ryaw1の代表値)と補正量ACとの和として第2推定カーブ半径Ryaw2が算出される。
【0135】
その後、S713において、第1推定カーブ半径Ryaw1が第2推定カーブ半径Ryaw2以上であるか否かが判定される。第1推定カーブ半径Ryaw1が第2推定カーブ半径Ryaw2以上である場合には、判定がYESとなり、S714において、第1推定カーブ半径Ryaw1が最終的な推定カーブ半径Rに選択される。これに対し、第1推定カーブ半径Ryaw1が第2推定カーブ半径Ryaw2以上ではない場合には、判定がNOとなり、S715において、第2推定カーブ半径Ryaw2が最終的な推定カーブ半径Rに選択される。
【0136】
いずれの場合にも、以上で、このカーブ半径推定プログラムの一回の実行が終了する。
【0137】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、カーブ半径推定部100が前記(1)項における「推定器」の一例を構成しているのである。さらに、車間距離ECU50のうちS703を実行するための部分が前記(2)項における「基礎値推定手段」の一例を構成し、S707ないしS712を実行するための部分が同項における「推定手段」の一例を構成しているのである。
【0138】
さらに、本実施形態においては、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、操舵角センサ64と、カーブ半径推定部100とが互いに共同して同項に係る「カーブ半径推定装置」の一例を構成しているのである。
【0139】
さらに、本実施形態においては、車間距離ECU50のうちS705およびS706を実行するための部分が前記(3)項における「許可手段」の一例を構成し、S704を実行するための部分が前記(4)項における「設定手段」の一例を構成し、S710およびS711を実行するための部分が前記(5)項における「手段」の一例を構成し、S707ないしS712を実行するための部分が前記(6)項における「手段」の一例を構成しているのである。
【0140】
さらに、本実施形態においては、車間距離ECU50のうちS703を実行するための部分が前記(7)項における「第1推定手段」の一例を構成し、S707ないしS712を実行するための部分が同項における「第2推定手段」の一例を構成し、S713ないしS715を実行するための部分が同項における「最終値取得手段」の一例を構成しているのである。
【0141】
さらに、本実施形態においては、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、操舵角センサ64と、カーブ半径推定部100とが互いに共同して同項に係る「カーブ半径推定装置」の一例を構成しているのである。
【0142】
さらに、本実施形態においては、車間距離ECU50のうちS713ないしS715を実行するための部分が前記(8)項における「選択手段」の一例を構成しているのである。
【0143】
さらに、本実施形態においては、車間距離ECU50のうちS152ないしS154を実行するための部分が前記(18)項における「判定器」の一例を構成し、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、操舵角センサ64と、レーダ40と、カーブ半径推定部100を含む車間距離ECU50とが互いに共同して同項に係る「先行車両存否判定装置」の一例を構成しているのである。
【0144】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
【0145】
第1実施形態においては、ヨーレートYawと車速Vnとには基づくが操舵角STRには基づかないで第1推定カーブ半径Ryaw1が演算される。第2実施形態においては、第1実施形態のうち、第1推定カーブ半径Ryaw1を演算する部分の一具体例が採用されている。この具体例は、第1実施形態におけるカーブ半径推定技術のうち第1推定カーブ半径Ryaw1を演算する部分を除く部分と共に実施することが可能であるが、その部分から切り離して実施することも可能である。
【0146】
図9には、本実施形態に従う車間距離制御装置における車間距離ECU50のソフトウエア構成が機能ブロック図で概念的に表されている。同図に示すように、車間距離ECU50は、第1実施形態と同様に、カーブ半径推定部100と、レーダ信号処理部102と、車間距離制御部104とを含むように構成されている。
【0147】
ところで、ヨーレートセンサ62においては、自車両の旋回にその車体に発生するヨーモーメントを利用して車体のヨーレートを検出する形式が存在する。一方、ヨーモーメントの大きさは、カーブ半径のみならず自車両の車速にも依存する。そのため、上記形式のヨーレートセンサ62を使用する場合には、自車両が極低速(例えば、10km/h以下)で走行しているためにそれの車体に発生するヨーモーメントが小さいと、正規の信号がノイズ成分に埋もれてしまい、ヨーレートを正確に検出することが困難となる。それにもかかわらず、その検出値を用いて先行車両を認識しようとすると、不都合が生ずるおそれがある。
【0148】
一方、車間距離制御は、自車両の極低速走行時には、推定カーブ半径が高精度であることをそれほど必要とはしない。
【0149】
さらに、前記形式のヨーレートセンサ62においては、自車両の車体(ばね上部材)の振動やヨーレートセンサ62の内部ノイズにより、ヨーレートの検出値のうち、0点付近の値にふらつきが発生し易い。一方、ヨーレートの検出値が0点にあることは、自車両が直進走行していることに相当するため、ヨーレートの検出値が0点付近でふらつくと、自車両の実際の直進走行中に、推定カーブ半径がカーブ路走行を表すこととなってしまう傾向がある。
【0150】
ヨーレートの検出値のふらつきに起因したカーブ半径の推定誤差を縮減するための対策として、ヨーレートの検出値に基づく推定カーブ半径に対してフィルタ処理を、推定カーブ半径の変化可能領域の全体において一様な応答特性で施す対策が考えられる。
【0151】
しかし、この対策を講ずると、車両進行につれてカーブ半径が変化し易いカーブ半径を有するカーブ路を自車両が走行する際に、実際のカーブ半径に対する推定カーブ半径の応答性が悪化し、例えば、レーダ40によって先行車両を捕捉する際の遅れにつながるおそれがある。
【0152】
本実施形態においては、図9に示すように、ヨーレートセンサ62により検出されたヨーレートYawと、車速センサ60により検出された車速Vnとに基づき、元推定カーブ半径RyawAが算出される。
【0153】
その算出された元推定カーブ半径RyawAに対してフィルタ処理(バタワース型のローパスフィルタ処理)が施される。ただし、このフィルタ処理は、後に詳述するように、それのカットオフ周波数がカーブ半径の予想値の一例である元推定カーブ半径RyawAに応じて変化させられる。フィルタ処理が施された元推定カーブ半径RyawAは、なまし推定カーブ半径RyawBとされ、それが最終カーブ半径Rとされる。
【0154】
さらに、本実施形態においては、図9に示すように、車速センサ60により検出された車速Vnに基づき、自車両が直進走行しているか否かが判定される。直進走行していると判定された場合には、最終カーブ半径Rが最大値RMAXを有するものとされる。
【0155】
いずれにしても、その最終カーブ半径Rは、レーダ40の出力信号を処理するレーダ信号処理部102に供給される。
【0156】
図10には、本実施形態におけるカーブ半径推定プログラムの内容が概念的にフローチャートで表されている。ただし、図10においては、そのカーブ半径推定プログラムのうち、本発明を理解するために不可欠ではない部分についての図示が省略されている。
【0157】
すなわち、本実施形態においては、車間距離ECU50のうち図10のカーブ半径推定プログラムを実行するための部分によって前記カーブ半径推定部100が構成されているのである。
【0158】
このカーブ半径推定プログラムにおいては、まず、S801において、車速センサ60によって自車両の車速Vnが検出される。次に、S802において、ヨーレートセンサ62によってヨーレートYawが検出される。
【0159】
続いて、S803において、上記検出された車速Vnが設定値Vn0以上であるか否かが判定される。自車両が極低速走行中ではないか否かが判定される。今回は、極低速走行中であると仮定すると、判定がNOとなり、S804において、自車両が直進走行中であると判定され、続いて、S805において、最終カーブ半径Rが、予め定められた最大値RMAXに決定される。
【0160】
以上で、このカーブ半径推定プログラムの一回の実行が終了する。
【0161】
これに対し、今回は、自車両が極低速走行中ではないと仮定すると、S803の判定がYESとなり、S806において、前記検出された車速VnとヨーレートYawとを用いることにより、元推定カーブ半径RyawAが算出される。この元推定カーブ半径RyawAは、例えば、車速VnをヨーレートYawで割り算することにより算出される。
【0162】
その後、S807において、その算出された元推定カーブ半径RyawAが設定値Ryaw0以上であるか否かが判定される。自車両が現在走行している道路が直線路であるかまたはそれに近い道路であるか否かが判定されるのである。
【0163】
今回は、元推定カーブ半径RyawAが設定値Ryaw0以上であると仮定すると、判定がYESとなり、S808において、カットオフ周波数が低側周波数fLOであるローパスフィルタLPFによるフィルタ処理が、元推定カーブ半径RyawAの最新値を含む過去複数値に対して施される。
【0164】
このフィルタ処理においては、例えば、それら過去複数値に対して重み付き平均化が行われるとともに、各過去値に乗じられる重み係数の値が所望のカットオフ周波数が実現されるように予め調整される。
【0165】
その後、S809において、そのようなフィルタ処理の結果、なまし推定カーブ半径RyawBが取得される。続いて、S810において、その取得されたなまし推定カーブ半径RyawBとして最終カーブ半径Rが取得される。
【0166】
以上で、このカーブ半径推定プログラムの一回の実行が終了する。
【0167】
以上、元推定カーブ半径RyawAが設定値Ryaw0以上である場合を説明したが、そうではない場合には、S807の判定がNOとなり、S811において、カットオフ周波数が高側周波数fHI(前記低側周波数fLOより高い。)であるローパスフィルタLPFによるフィルタ処理が、元推定カーブ半径RyawAの最新値を含む過去複数値に対して施される。
【0168】
このフィルタ処理は、S808におけるフィルタ処理より広い周波数領域において元の信号をスムーズに通過する特性を有するように作用する。したがって、このフィルタ処理によれば、実際のカーブ半径の変化に対してより敏感に応答するようになまし推定カーブ半径RyawBを取得することが可能となる。
【0169】
その後、S809を経てS810に移行し、以上で、このカーブ半径推定プログラムの一回の実行が終了する。
【0170】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、図9のカーブ半径推定部100が前記(14)項における「手段」の一例および前記(15)項における「推定器」の一例を構成し、車間距離ECU50のうちS803ないしS805を実行するための部分が前記(16)項における「判定手段」の一例を構成しているのである。
【0171】
さらに、本実施形態においては、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、図9のカーブ半径推定部100とが互いに共同して前記(15)項に係る「カーブ半径推定装置」の一例を構成しているのである。
【0172】
さらに、本実施形態においては、ヨーレートセンサ62が前記(17)項における「旋回状態量センサ」の一例を構成し、カーブ半径推定部100が同項における「推定器」の一例を構成し、車速センサ60と、ヨーレートセンサ62と、カーブ半径推定部100とが互いに共同して同項に係る「カーブ半径推定装置」の一例を構成しているのである。
【0173】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[課題を解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に従うカーブ半径推定装置を含む車間距離制御装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図2】図1におけるレーダ40により先行車両が検出される様子を概念的に説明するための平面図である。
【図3】図1における車間距離ECU50のソフトウエア構成を概念的に表す機能ブロック図である。
【図4】自車両のヨーレートに基づいて推定される進路がカーブ路の出口付近において誤差を有する理由を説明するための平面図である。
【図5】図1における車間距離ECU50のコンピュータにより実行される減速制御プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図6】図5の減速制御プログラムにおける車速Vnとブレーキ制御許可距離D0との関係を説明するためのグラフである。
【図7】図1における車間距離ECU50のコンピュータにより実行されるカーブ半径推定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【図8】図7のカーブ半径推定プログラムにおける第1推定カーブ半径Ryaw1と係数KSとの関係を説明するためのグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態に従うカーブ半径推定装置を含む車間距離制御装置における車間距離ECU50のソフトウエア構成を概念的に表す機能ブロック図である。
【図10】図9における車間距離ECU50のコンピュータにより実行されるカーブ半径推定プログラムの内容を概念的に表すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ブレーキ
12 ブレーキ・アクチュエータ
30 ブレーキECU
40 レーダ
50 車間距離ECU
60 車速センサ
62 ヨーレートセンサ
64 操舵角センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
自車両のステアリングホイールが運転者によって操作された角度を実操舵角として検出する操舵角センサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記ヨーレートセンサにより検出された実ヨーレートと、前記操舵角センサにより検出された実操舵角とに基づいて前記カーブ半径を推定する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【請求項2】
前記推定器が、
前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記カーブ半径を基礎値として推定する基礎値推定手段と、
前記実操舵角に関する物理量に基づいて前記基礎値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記基礎値を補正することにより、前記カーブ半径を推定する推定手段と
を含む請求項1に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項3】
前記推定器が、さらに、前記カーブ半径の予想値が設定値以下であり、かつ、前記基礎値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合に、前記カーブ半径の推定を許可する許可手段を含む請求項2に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項4】
前記推定器が、さらに、前記実車速が大きいほど短くなるように前記設定時間を設定する設定手段を含む請求項3に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項5】
前記推定器が、前記カーブ半径の予想値が小さい場合に大きい場合より敏感に前記カーブ半径の推定値が前記実操舵角の変化に対して応答するように、前記カーブ半径を推定する手段を含む請求項1ないし4のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項6】
前記推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記基礎値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記基礎値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記基礎値を補正することにより、前記カーブ半径を推定する手段を含む請求項2ないし4のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項7】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
自車両のステアリングホイールが運転者によって操作された角度を実操舵角として検出する操舵角センサと、
前記カーブ半径を推定するために、
(a)前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記カーブ半径を第1推定値として推定する第1推定手段と、
(b)それら実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいて前記カーブ半径を第2推定値として推定する第2推定手段と、
(c)それら推定された第1推定値と第2推定値とを選択的にまたは総合的に用いて前記カーブ半径の推定値の最終値を取得する最終値取得手段と
を有する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【請求項8】
前記最終値取得手段が、前記第1推定値と第2推定値とのうち大きい方を前記カーブ半径の最終値として選択する選択手段を含む請求項7に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項9】
前記推定器が、前記カーブ半径の予想値が設定値以下であり、かつ、前記第1推定値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合に、前記第2推定値の取得を許可する許可手段を含む請求項7または8に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項10】
前記推定器が、前記実車速が大きいほど短くなるように前記設定時間を設定する設定手段を含む請求項9に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項11】
前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量とに基づいて前記第2推定値を取得する手段を含む請求項7ないし10のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項12】
前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記第2推定値を取得する手段を含む請求項7ないし10のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項13】
前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記第1推定値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記第1推定値を補正することにより、前記第2推定値を取得する手段を含む請求項7ないし10のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項14】
前記第1推定手段が、前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記第1推定値の元値を取得し、その取得された元値に対してフィルタ処理を、その元値に対する応答性が、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域においては低い特性、旋回走行状態に近いと予想される領域においては高い特性で行うことにより、前記第1推定値の最終値を取得する手段を含む請求項7ないし13のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項15】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記ヨーレートセンサにより検出された実ヨーレートとに基づいて前記カーブ半径の推定値の元値を取得し、その取得された元値に対してフィルタ処理を、その元値に対する応答性が、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域においては低い特性、旋回走行状態に近いと予想される領域においては高い特性で行うことにより、前記カーブ半径の推定値の最終値を取得し、それにより、前記カーブ半径を推定する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【請求項16】
前記推定器が、前記実車速が設定車速以下である場合には、前記実ヨーレートの検出値の如何を問わず、自車両が直進走行状態にあると判定する判定手段を含む請求項1ないし15のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項17】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の旋回状態を表す旋回状態量を検出する旋回状態量センサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記旋回状態量センサにより検出された旋回状態量とのうちの少なくとも旋回状態量に基づいて前記カーブ半径を推定する推定器であって、前記実車速が設定車速以下である場合には、前記旋回状態量の検出値の如何を問わず、自車両が直進走行状態にあると判定するものと
を含むカーブ半径推定装置。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかに記載のカーブ半径推定装置と、
自車両に設けられてそれの前方に位置する物体を検出するセンサと、
そのセンサにより検出された物体が移動物体としての先行車両である場合に、前記センサの出力信号と、前記カーブ半径推定装置により推定されたカーブ半径とに基づき、先行車両が自車両と同じ道路の同じ車線を走行している確率である自車線確率を、先行車両が前記車線から車幅方向に外れた第1距離と、先行車両が自車両から前記車線に沿って車両進行方向に外れた第2距離とのうちの少なくとも一方と前記自車線確率との間に予め定られた関係に従って決定し、その決定された自車線確率が設定確率以上である場合に、自車両が追尾すべき先行車両が存在すると判定する判定器と
を含む先行車両存否判定装置。
【請求項1】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
自車両のステアリングホイールが運転者によって操作された角度を実操舵角として検出する操舵角センサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記ヨーレートセンサにより検出された実ヨーレートと、前記操舵角センサにより検出された実操舵角とに基づいて前記カーブ半径を推定する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【請求項2】
前記推定器が、
前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記カーブ半径を基礎値として推定する基礎値推定手段と、
前記実操舵角に関する物理量に基づいて前記基礎値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記基礎値を補正することにより、前記カーブ半径を推定する推定手段と
を含む請求項1に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項3】
前記推定器が、さらに、前記カーブ半径の予想値が設定値以下であり、かつ、前記基礎値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合に、前記カーブ半径の推定を許可する許可手段を含む請求項2に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項4】
前記推定器が、さらに、前記実車速が大きいほど短くなるように前記設定時間を設定する設定手段を含む請求項3に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項5】
前記推定器が、前記カーブ半径の予想値が小さい場合に大きい場合より敏感に前記カーブ半径の推定値が前記実操舵角の変化に対して応答するように、前記カーブ半径を推定する手段を含む請求項1ないし4のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項6】
前記推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記基礎値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記基礎値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記基礎値を補正することにより、前記カーブ半径を推定する手段を含む請求項2ないし4のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項7】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
自車両のステアリングホイールが運転者によって操作された角度を実操舵角として検出する操舵角センサと、
前記カーブ半径を推定するために、
(a)前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記カーブ半径を第1推定値として推定する第1推定手段と、
(b)それら実車速と実ヨーレートと実操舵角とに基づいて前記カーブ半径を第2推定値として推定する第2推定手段と、
(c)それら推定された第1推定値と第2推定値とを選択的にまたは総合的に用いて前記カーブ半径の推定値の最終値を取得する最終値取得手段と
を有する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【請求項8】
前記最終値取得手段が、前記第1推定値と第2推定値とのうち大きい方を前記カーブ半径の最終値として選択する選択手段を含む請求項7に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項9】
前記推定器が、前記カーブ半径の予想値が設定値以下であり、かつ、前記第1推定値の時間的変動状態が設定状態を超えない状態が設定時間以上連続した場合に、前記第2推定値の取得を許可する許可手段を含む請求項7または8に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項10】
前記推定器が、前記実車速が大きいほど短くなるように前記設定時間を設定する設定手段を含む請求項9に記載のカーブ半径推定装置。
【請求項11】
前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量とに基づいて前記第2推定値を取得する手段を含む請求項7ないし10のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項12】
前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記第2推定値を取得する手段を含む請求項7ないし10のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項13】
前記第2推定手段が、前記実操舵角に関する一定角度当たりの前記第1推定値の変化量と、一定時間当たりの前記実操舵角の変化量と、前記カーブ半径の予想値が小さいほど増加する係数との積を用いて前記第1推定値の補正量を決定し、その決定された補正量を用いて前記第1推定値を補正することにより、前記第2推定値を取得する手段を含む請求項7ないし10のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項14】
前記第1推定手段が、前記実車速と前記実ヨーレートとには基づくが前記実操舵角には基づかないで前記第1推定値の元値を取得し、その取得された元値に対してフィルタ処理を、その元値に対する応答性が、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域においては低い特性、旋回走行状態に近いと予想される領域においては高い特性で行うことにより、前記第1推定値の最終値を取得する手段を含む請求項7ないし13のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項15】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記ヨーレートセンサにより検出された実ヨーレートとに基づいて前記カーブ半径の推定値の元値を取得し、その取得された元値に対してフィルタ処理を、その元値に対する応答性が、自車両の走行状態が直進走行状態に近いと予想される領域においては低い特性、旋回走行状態に近いと予想される領域においては高い特性で行うことにより、前記カーブ半径の推定値の最終値を取得し、それにより、前記カーブ半径を推定する推定器と
を含むカーブ半径推定装置。
【請求項16】
前記推定器が、前記実車速が設定車速以下である場合には、前記実ヨーレートの検出値の如何を問わず、自車両が直進走行状態にあると判定する判定手段を含む請求項1ないし15のいずれかに記載のカーブ半径推定装置。
【請求項17】
自車両がこれから走行すべき道路のカーブ半径を推定するカーブ半径推定装置であって、
自車両の実車速を検出する車速センサと、
自車両の旋回状態を表す旋回状態量を検出する旋回状態量センサと、
前記車速センサにより検出された実車速と、前記旋回状態量センサにより検出された旋回状態量とのうちの少なくとも旋回状態量に基づいて前記カーブ半径を推定する推定器であって、前記実車速が設定車速以下である場合には、前記旋回状態量の検出値の如何を問わず、自車両が直進走行状態にあると判定するものと
を含むカーブ半径推定装置。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかに記載のカーブ半径推定装置と、
自車両に設けられてそれの前方に位置する物体を検出するセンサと、
そのセンサにより検出された物体が移動物体としての先行車両である場合に、前記センサの出力信号と、前記カーブ半径推定装置により推定されたカーブ半径とに基づき、先行車両が自車両と同じ道路の同じ車線を走行している確率である自車線確率を、先行車両が前記車線から車幅方向に外れた第1距離と、先行車両が自車両から前記車線に沿って車両進行方向に外れた第2距離とのうちの少なくとも一方と前記自車線確率との間に予め定られた関係に従って決定し、その決定された自車線確率が設定確率以上である場合に、自車両が追尾すべき先行車両が存在すると判定する判定器と
を含む先行車両存否判定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2004−217178(P2004−217178A)
【公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−9987(P2003−9987)
【出願日】平成15年1月17日(2003.1.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年1月17日(2003.1.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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