説明

カーボンナノチューブグレージング技術

【課題】
【解決手段】本発明は、カーボンナノチューブを含むコーティングが設けられた基材を含むグレージングを提供する。前記グレージングは、窓板間のスペースの境界を画す、空間を介して配置された二枚の窓板を含むIGユニットであり得る。前記IGユニットは、カーボンナノチューブを含む透明導電体コーティングが設けられた少なくとも一つの外部表面を有する。また、前記グレージングは、二枚のガラスの窓板と、その間に挟持されたカーボンナノチューブを含む中間膜とを含む合わせガラスアセンブリであり得る。単体基材の実施形態も提示されている。いくつかの実施形態において、前記コーティングは、誘電体膜およびカーボンナノチューブの両方を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年6月30日出願の米国特許出願第60/817,997号明細書の優先権を主張するものであり、その全開示事項は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、ガラスなどの基材用コーティングを提供する。特に、本発明は、カーボンナノチューブを含むコーティングを提供する。本発明はまた、そのようなコーティングをガラス板や他の基材上に堆積させる方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
ガラス板および他の基材は、積層された透明な金属含有フィルムでコーティングすることによりこのコーティングされた基材の光学特性を変化させることができる。特に望ましいのは、容易に可視光線を透過させる一方で、他の波長の放射、特に赤外線スペクトルにおける放射の透過率を最小限に抑える能力を特徴とするコーティングである。赤外線放射を反射する公知のコーティングとしては、低放射率コーティングや、酸化インジウムスズ(「ITO」)コーティングなどの透明導電体コーティングも挙げられる。これらのコーティングは、可視光透過率を低下させることなく放射伝熱を低減させるのに有用である。この種のコーティングされたガラスは、建築用ガラスとしておよび自動車用ガラスとして有用である。
【0004】
コーティングされたガラス板は、グレージングに組み込まれることが多い。今日、少なくとも3タイプのグレージングが市販されている。これら3タイプは、単層ガラス、複層ガラスおよび三重ガラスと呼ばれることが多い。複層ガラスが最も一般的であり、一般に、二枚のガラス窓板間に密閉空間を有する断熱グレージングユニット(「IGユニット」)を含む。そのガラス上のコーティングは、グレージングに所望の光学特性を付与する。
【0005】
バランスの良く取れた一連の特性を示すグレージングを提供することは難しい。例えば、グレージングが低放射率コーティングなどのコーティングを備えたガラス板を含む場合、所望レベルの可視光透過率、低い可視光反射率、良好な断熱性、中間色および良好な耐久性を得るのは難しい。特に、非常にバランスのよいコーティング特性を実現する膜厚と組成の具体的な組み合わせを特定することは困難である。特定の特性に関して特に優れた結果を得るため、可能性のあるさまざまなコーティング調整を検討することもできる。しかしながら、調整の多くは、他の所望のコーティング特性に悪影響を及ぼす。
【0006】
費用効率の高い方法で製造可能な、コーティングされたガラスを提供することも難しい。例えば、ITOコーティングなどの透明導電体コーティングの製造コストは高くなる可能性がある。ITOコーティング製造用材料はまた、供給量が限られている。そのため、市場においては、代わりの透明導電体コーティングが求められている。ITOコーティングはまた、所望の耐久性より低い場合もある。例えば、ITOコーティングは、比較的引っ掻き傷が付きやすい場合もある。よって、費用効率の高い方法で製造でき、また耐久性も備えた透明導電体コーティングが求められている。
【0007】
コーティングが熱処理される場合、所望の特性を得ることはさらに困難である。ガラスを強化するため、または湾曲した自動車のフロントガラスのように所望の形状に湾曲させることができるようにするため、前記ガラスの融点または融点付近の温度までコーティングされたガラス板を加熱することが必要な場合が多い。自動車窓のガラス、特に自動車のフロントガラス用のガラスは、強化することが大切である。割れた際、強化ガラスは、大きな危険な破片ではなく非常に多くの小さな破片にガラスが粉砕される破損パターンを示すことが望ましい。強化に際し、コーティングされたガラスは、一般に、約700℃程度の高温にさらされる。また、コーティングされたガラスは、多くの場合、かなりの期間そのような温度に耐え得るものでなければならない。特定のコーティング、例えばITOコーティングは、いくらか劣化すること無しにはそのような高温処理に耐えられない場合もある。よって、高温処理に耐え得る透明導電体コーティングが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いくつかのグレージングは、合わせガラスアセンブリを含む。合わせガラスアセンブリは、一般的に、ポリマー中間膜により積層された二枚のガラスの窓板を含む。従来の合わせガラスアセンブリの制限の一つは、ポリマー中間膜の強度にある。場合によっては、前記中間膜が時間と共に劣化する場合もあり、窓板間の接着も劣化する。ポリマー中間膜は、多くの場合厚いため、経時の劣化に耐え得る。薄くおよび/または高強度の合わせガラスアセンブリを提供することが望ましいであろう。また、経時の劣化に対する高度の耐性と高温に対する耐久性を併せ持つ中間膜を備えた合わせガラスアセンブリを提供することも望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
窓板間のスペースの境界を画す、空間を介して配置された二枚の窓板を含む断熱グレージングユニットが提供される。前記断熱グレージングユニットは、カーボンナノチューブを含む透明導電体コーティングが設けられた第4表面を有する。前記透明導電体コーティングは、前記ユニットの△Uが少なくとも約0.03であるように選択された厚さ、ナノチューブ被覆率および組成を有し得る。前記△Uは、前記透明導電体コーティングを備えた前記ユニットのU値と前記透明導電体コーティングの無い前記ユニットのU値との差の絶対値と定義される。いくつかの場合、前記U値は、0.24未満または0.21未満である。前記透明導電体コーティングにより、放射率は約0.25未満になり得る。場合によっては、前記透明導電体コーティングは、△Tvが約5%未満となるように選択された厚さ、ナノチューブ被覆率および組成を有する。前記△Tvは、前記透明導電体コーティングを備えた前記ユニットの可視光透過率と前記透明導電体コーティングの無い前記ユニットの可視光透過率との差の絶対値と定義される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るコーティングを備えた表面を有する基材の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施形態に係るコーティングを備えた表面を有する基材の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態に係るコーティングを備えた表面を有する基材の概略断面図である。
【図4】図4は、本発明のある実施形態に係る、建物の壁のフレームに取り付けられている複層断熱グレージングユニットの一部切欠概略断面側面図である。
【図5】図5は、本発明のある実施形態に係る、建物の壁のフレームに取り付けられている複層断熱グレージングユニットの一部切欠概略断面側面図である。
【図6】図6は、本発明のある実施形態に係る、建物の壁のフレームに取り付けられている複層断熱グレージングユニットの一部切欠概略断面側面図である。
【図7】図7は、本発明のある実施形態に係る、建物の壁のフレームに取り付けられている複層断熱グレージングユニットの一部切欠概略断面側面図である。
【図8】図8は、本発明のある実施形態に係る積層体の断面側面図である。
【図9】図9は、本発明のある実施形態に係る積層体の中間膜の断面側面図である。
【図10】図10は、本発明のある実施形態に係る積層体の中間膜の断面側面図である。
【図11】図11は、カーボンナノチューブを含むコーティングを備えた表面の概略拡大上面像である。
【図12】図12は、カーボンナノチューブを含むコーティングを備えた表面の別の概略拡大上面像である。
【図13】図13は、カーボンナノチューブを含むコーティングを備えた表面のさらに別の概略拡大上面像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態によっては、空間を介して配置された少なくとも二枚の窓板を備えた複層断熱グレージングユニットを提供する。前記断熱グレージングユニットは、少なくとも一つの窓板間のスペースと、カーボンナノチューブを含む透明導電体コーティングが設けられた所望の表面とを有する。ここで、前記所望の表面とは、前記ユニットの窓板間のスペースに曝される内部表面ではなく、前記ユニットの外部表面である。
【0012】
場合によっては、前記断熱グレージングユニットは、約30%〜約75%の可視光透過率を有する。前記ユニットはまた、低放射率コーティングが設けられた第2表面も有し得る。いくつかの場合、前記低放射率コーティングは、銀を含有する少なくとも一つの赤外反射膜を含み、前記赤外反射膜は、二つの透明誘電体膜の間に位置する。前記ユニットはまた、親水性コーティング(water-sheeting coating)が設けられた第1表面も有し得る。前記親水性コーティングは、例えば、シリカ、チタニアまたはその両方を含み得る。前記透明導電体コーティング、低放射率コーティングおよび親水性コーティングの物理的総厚は(そのような三つのコーティングが全て設けられている場合)、約1,000オングストローム〜約10,000オングストローム、例えば、約1,000オングストローム〜約5,000オングストロームであり得る。いくつかの実施形態において、前記断熱グレージングユニットは、ah色座標が約+2〜約−6であり、bh色座標が約+6〜約−6であることを特徴とする外側反射色を有する。同様に、いくつかの実施形態において、前記断熱グレージングユニットは、ah色座標が約0〜約−6であり、bh色座標が約+6〜約−6であることを特徴とする透過色を有する。
【0013】
カーボンナノチューブを含むコーティングが設けられた主表面を有する透明窓板を含むグレージングも提供される。前記コーティングは、透明誘電体膜および前記カーボンナノチューブの両方を含む。前記コーティングの厚さは、200オングストロームより厚く4,000オングストロームより薄い。前記窓板の主表面は、前記カーボンナノチューブが前記主表面の全表面積の約50パーセント未満または約30パーセント未満を被覆する全表面積を有し得る。前記コーティングの表面抵抗は、約100オーム/スクエア未満または約20オーム/スクエア未満であり得る。前記透明誘電体膜は、金属酸化物膜であってもよく、前記カーボンナノチューブの少なくとも一部を覆っていてもよい。
【0014】
カーボンナノチューブを含むコーティングが設けられた透明窓板を含むグレージングも提供される。前記コーティングの厚さは、約4,000オングストローム未満である。前記コーティングは、前記透明窓板の主表面上に位置し、且つ、前記カーボンナノチューブによる被覆率は、前記主表面の少なくとも約1〜2パーセントである。前記コーティングされた透明窓板の単体(monolithic)透過率は、少なくとも約70パーセントであり得る。前記コーティングは、厚さが約1,500オングストローム未満、表面抵抗が約100オーム/スクエア未満であり得る。前記ナノチューブ被覆率は、約100パーセントにすることができる。場合によって、前記グレージングは、それぞれが銀を含む三つの赤外反射膜を含むコーティングが設けられたさらなる窓板を含む。
【0015】
実施形態によっては、本質的に誘電体膜およびカーボンナノチューブから成るコーティングが設けられた主表面を備えた透明窓板を含むグレージングを提供する。これらの実施形態において、前記コーティングの厚さは、10,000オングストローム未満であり、前記コーティングの誘電体/カーボンナノチューブ重量比は、約2.3〜約9999である。前記誘電体/カーボンナノチューブ重量比は、前記カーボンナノチューブの全重量に対する前記誘電体膜の全重量と定義される。
【0016】
二枚のガラスの窓板と、その二枚のガラスの窓板の間に挟持されたカーボンナノチューブを含むコーティングとを含む合わせガラスアセンブリも提供される。場合によっては、前記コーティングは、高分子層に隣接している。
【0017】
一実施形態においては、第一および第二のガラスの窓板を含む合わせガラスアセンブリが提供される。この実施形態においては、前記第一の窓板が、接合された内部表面および露出した外部表面を有し、前記第二の窓板が、接合された内部表面および露出した外部表面を有する。前記第一および第二のガラスの窓板の間には、前記二枚のガラス窓板を結合する中間膜があり、前記第一および第二の窓板の内部表面が、前記中間膜に接合されている。ここでの前記中間膜はカーボンナノチューブを含む。
【0018】
建物の壁のフレームに取り付けられ、屋外環境に曝される第1表面と、前記ユニットの窓板間のスペースに曝される第2表面とを有する断熱グレージングユニットも提供される。前記ユニットが、前記建物の屋内環境に曝される室内側表面を備えた内側の窓板を有し、カーボンナノチューブを含むコーティングが前記室内側表面上にあり、前記カーボンナノチューブが、前記室内側表面の100%未満を被覆し、且つ、前記コーティングは前記カーボンナノチューブ上に透明誘電体膜を含む。カーボンナノチューブを含む前記コーティングの厚さは、約4,000オングストローム未満または約1,500オングストローム未満であり得る。前記カーボンナノチューブは、前記室内側表面の約50パーセント未満または約30パーセント未満を被覆し得る。
【0019】
断熱グレージングユニットも提供され、建物の壁のフレームに取り付けられる前記ユニットが提供される。前記ユニットは、屋外環境に曝される第1表面を有する。親水性コーティングが前記第1表面上にあり、前記ユニットは、前記建物の屋内環境に曝される室内側表面を備えた内側の窓板を有する。カーボンナノチューブを含む前記コーティングは、室内側表面上にあり、前記ユニットは、前記ユニットの窓板間のスペースに曝される、コーティングされた内面を有する。低放射率コーティングが前記内面上にあり、カーボンナノチューブを含む前記コーティング、低放射率コーティングおよび親水性コーティングの総厚が、約1,000オングストローム〜約10,000オングストローム、例えば、約1,000オングストローム〜約5,000オングストロームである。
【0020】
以下の詳細な説明は、図面を参照しながら解釈されるべきであり、異なる図面における同様の要素には同様の参照符号を付している。図面は、必ずしも共通の尺度を持つとは限らず、選択された実施形態を示すものであって、本発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば、挙げられた実施例には本発明の範囲内にある多くの代替例があることが分かるであろう。
【0021】
本発明の多くの実施形態は、コーティングされた基材を含む。幅広い種類の基材が、本発明における使用に適している。いくつかの実施形態において、基材10、10’は、概ね対向する第1の主表面12、16および第2の主表面14、18を有するシート状基材である。例えば、前記基材は、透明材料からなるシート(すなわち、透明シート)であり得る。しかしながら、前記基材は、シートである必要も無いし、透明である必要も無い。
【0022】
前記基材は、任意に、様々な建材のいずれかの構成材であり得る。予想される用途例としては、前記基材が、サッシ(例えば、窓サッシまたはドアサッシ)、羽目板(例えば、アルミニウム羽目板)、テントパネル、防水シート(例えば、フルオロカーボン重合体から成る防水シート)、プラスチックフィルム(例えば、フルオロカーボンプラスチックフィルム)、シングル屋根板、窓用ブラインド(金属、プラスチックまたは紙から成る窓用ブラインドなど)、紙製間仕切り(例えば、障子)、手すり、手すり子、または飾り座金である実施形態が挙げられる。一実施形態において、前記基材は、壁、天井または床タイルなどのセラミックタイルである。別の実施形態において、前記基材は、ガラスブロックである。様々な好適なガラスブロックが、サンゴバン・オーバーランド(Saint−Gobain Oberland (ドイツ国コブレンツ(Koblenz))より市場において入手可能である。さらに他の実施形態において、前記基材は、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、テレフタレートフィルムなどである。この種の好適なフィルムは、日本曹達株式会社(日本国東京)より市場において入手可能である。さらなる実施形態において、前記基材は、フェンスまたは壁、例えば、ノイズ低減フェンスまたは壁などである。
【0023】
多くの用途に関して、前記基材は、ガラスまたは透明プラスチックなどの透明(または少なくとも半透明)材料を含むであろう。例えば、いくつかの実施形態において、前記基材はガラス板(例えば、窓板)である。様々な公知のタイプのガラスが使用でき、一般に、ソーダ石灰ガラスが好ましい。特定の好適な実施形態において、前記基材は、窓、天窓、ドア、シャワードアまたは他のグレージングの一部である。場合によっては、前記基材は、自動車のフロントガラスまたは自動車の横窓用の合わせガラスアセンブリの一部である。他の場合、前記基材は、外部または内部バックミラー、バンパー、ホイールキャップ、ワイパーまたは自動車のボンネットパネル、サイドパネル、トランクパネルまたはルーフパネルの一部である。他の実施形態において、前記基材は、一枚の水槽ガラス、プラスチック製水槽窓または一枚の温室ガラスである。これらの実施形態において、前記基材は、任意に、合わせガラスアセンブリの一部であり得る。さらなる実施形態において、前記基材は、冷蔵庫パネル、例えば、冷蔵庫のドアまたは窓の一部などである。さらに別の実施形態において、前記基材は、電磁波遮蔽装置の一部である。
【0024】
本発明においては、様々なサイズの基材を使用することができる。一般に、大面積基材が使用される。実施形態によっては、主要寸法(例えば、長さまたは幅)が少なくとも約0.5メートル、好ましくは少なくとも約1メートル、あるいは、より好ましくは少なくとも約1.5メートル(例えば、約2メートル〜約4メートル)、そして、場合によっては少なくとも約3メートルである基材10を含む。いくつかの実施形態において、前記基材は、長さおよび/または幅が約3メートル〜約10メートルである大型ガラス板、例えば、幅が約3.5メートルおよび長さが約6.5メートルのガラス板である。長さおよび/または幅が約10メートルを超える基材もあり得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記基材10’は、一般に正方形または矩形のガラス板である。これらの実施形態における前記基材は、前段落および/または下記段落に記載したいずれの寸法でも可能である。特定の一実施形態において、前記基材は、一般に、幅が約3メートル〜約5メートル、例えば、約3.5メートル、長さが約6メートル〜約10メートル、例えば、約6.5メートルの矩形のガラス板である。
【0026】
本発明においては、様々な厚さの基材が使用できる。いくつかの実施形態において、前記基材10’(任意に、ガラス板であり得る)の厚さは、約1〜5mmである。実施形態によっては、厚さが約2.3mm〜約4.8mm、あるいは、より好ましくは約2.5mm〜約4.8mmである基材10’を含む。特定の一実施形態においては、厚さ約3mmの一枚のガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス)が使用される。一群の実施形態において、前記基材(ガラス、プラスチックまたは別の材料であり得る)の厚さは、約4mm〜約20mmである。この範囲の厚さは、例えば、水槽(この場合、前記基材は、任意に、ガラスまたはアクリルであり得る)に有用である場合もある。前記基材がフロートガラスである場合、一般に、その厚さは、約4mm〜約19mmであろう。別の一群の実施形態において、前記基材は、厚さ約0.35mm〜約1.9mmの薄板(例えば、ガラス製)である。この種の実施形態は、任意に、一枚のディスプレイガラスなどである基材10’を含み得る。
【0027】
一部の実施形態において、本発明は、カーボンナノチューブを含むコーティングが設けられた基材、例えば、透明窓板を含むグレージングを提供する。前記グレージングは、例えば、単層ガラス、複層ガラスまたは三重ガラスであり得る。いくつかの場合において、前記グレージングは、単層単体窓、単層単体ドア、単層単体天窓などである。他の場合において、前記グレージングは、二重窓、二重ドア、二重天窓などである。多くの場合において、前記グレージングは、断熱グレージングユニットを含むであろう。一般に、前記断熱グレージングユニットは、窓板間のスペースの境界を画す、二枚の透明窓板(任意に、ガラス製)を含む。前記窓板間のスペースにより断熱性が得られ、この断熱効果は、任意に、アルゴンまたはクリプトンなどの断熱ガスを前記スペースに充填することにより高められる。
【0028】
前記グレージングの透明窓板は、カーボンナノチューブを含むコーティングを備えているのが好ましい。前記カーボンナノチューブは、当技術分野において公知のいかなるタイプのものであってもよい。一般的に言えば、カーボンナノチューブは、並はずれた強度、電気特性および導電性を示す円筒状炭素分子である。カーボンナノチューブには、二つのタイプ:単層および多層がある。単層ナノチューブは、一層の円筒からなり、一方、多層ナノチューブは、いくつかの同心円筒を有する。ナノチューブは、直径が数ナノメートル程度であり、長さが数センチメートル以下(例えば、100nm〜700cm、例えば、数百ナノメートル〜数センチメートルなど)である場合が多い。いくつかの実施形態において、当該コーティングは、平均長が500nmを超える、例えば、500nm〜5cm、あるいは、好ましくは5ミクロン〜5cmである、複数のカーボンナノチューブを含む。いくつかの場合においては、前記カーボンナノチューブの大部分(任意に、実質的に全て)の長さが、この段落に記載されている一つまたは複数の範囲内にある。前記コーティングは、前記カーボンナノチューブに加えて、他の炭素形態または他の材料、例えば、ナノチューブの堆積または合成プロセスの副産物として前記コーティング内に残った物質などを含み得る。例えば、金属触媒は、ナノチューブの合成に使用される場合が多く、副産物として前記コーティング内に残り得る。
【0029】
カーボンナノチューブを含む前記コーティングは、いくつかの所望の特性を前記グレージングに付与する。カーボンナノチューブは、各チューブの軸に沿っては優れた熱導体および導電体であり、チューブ軸に垂直方向では良好な断熱材である。そのため、それらは、前記グレージングに低シート抵抗および低放射率を付与することができる。よって、前記コーティングは、透明導電体コーティングとして機能し得る。カーボンナノチューブコーティングはまた、熱処理に対する耐性も非常に高い。よって、それらは、多くの処理法、例えば、ガラス強化や他の高温処理などに対する耐性が特に高い場合もある。特に、それらの耐性は、ITO透明導電体コーティングよりも高くなると考えられる。
【0030】
いくつかの場合において、カーボンナノチューブを含む前記コーティング(または、前記コーティングのすくなくとも一層若しくは領域)は、本質的にカーボンナノチューブから成り、任意に他の炭素含有材料を共に含む。他の場合において、前記コーティング(または、前記コーティングのすくなくとも一層若しくは領域)は、カーボンナノチューブおよび高分子フィルムの両方を含む。前記高分子フィルムは、場合によって、導電性高分子フィルムであり、前記ナノチューブ(任意に、少なくとも一部、実質的に全部、または全部)の保護に使用される。いくつかの実施形態において、前記高分子フィルムは、ポリアニリンポリマーを含む。例えば、いくつかの実施形態において、前記フィルムは、米国オハイオ州クリーブランド(Cleveland)にある会社、ハイテクポリマーズ(Hi Tech Polymers)から市販されている材料、ポリエーテルウレタン4901を含む。
【0031】
好適な一群の実施形態において、前記コーティングは、カーボンナノチューブおよび透明誘電体膜の両方を含む。この種のいくつかの実施形態は、セラミックマトリック(例えば、金属酸化物などの透明誘電体材料のマトリックス)に配置されたカーボンナノチューブを設ける。前記透明誘電体膜は、酸化チタン、窒化チタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズおよび/またはその他を含み得る。好適な一実施形態において、前記コーティングの透明誘電性成分は、本質的に、金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物からなる群から選択される無機材料から成る。
【0032】
前記カーボンナノチューブは、任意に、誘電体膜と組み合わせることにより、前記誘電体膜の特性を変えることができる。例えば、前記誘電体膜の粗さ(および表面積)、硬度、伝導性および/または他の特性を高めるために前記ナノチューブを設けることができる。一実施形態において、前記コーティング50は、酸化チタン(例えば、TiO2)およびカーボンナノチューブを含む(また、任意に、本質的にそれらからなる)。ここで、前記酸化チタンは、任意に、カーボンナノチューブの層上に堆積されたフィルムであり得る。その結果得られたコーティングは、前記カーボンナノチューブにより生じた粗さ/表面積の増加により特に高いレベルの光活性を有することもある。前記ナノチューブはまた、コーティングされた基材に対し、特に低いシート抵抗および/または高い強度を付与することもある。場合によって、このようにコーティングされた基材は、前記コーティングの特性に影響を与える、強化(tempering)、半強化(heat strengthening)または別の熱処理などの堆積後の熱処理に曝される。これらの場合、前記コーティングは、結晶性チタニアおよび前記カーボンナノチューブの両方を含んでいてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記コーティング50は、特定の誘電体/カーボンナノチューブ重量比を有する。前記比は、例えば、約2.3〜9999(例えば、約2.3〜999)、あるいは9〜9999(例えば、約9〜999)であり得る。前記誘電体/カーボンナノチューブ重量比は、前記カーボンナノチューブの全重量に対する前記誘電体材料の全重量と定義される。これらの範囲は、例であり、用途によって、前記比の変更が望ましい場合もある。例えば、電磁波遮蔽の実施形態においては、より低い比が望ましい場合もあり、一方、特に高い可視光透過率が望まれる場合は、より高い比が選択される場合もある。
【0034】
前記誘電体膜が設けられている場合、前記誘電体膜は前記コーティングの耐久性を向上させることができる。いくつかの場合において、前記コーティングは、カーボンナノチューブおよびシリカの両方を含む。他の場合において、前記コーティングは、カーボンナノチューブおよび窒化ケイ素(または酸窒化ケイ素)の両方を含む。前記酸窒化ケイ素の実施形態は、例えば、様々なレベルの屈折率を得るように、(例えば、酸化物および窒化物の相対量において)変化させることができる。より広範な群の実施形態において設けられる場合もあるように、例えば、非晶質または実質的に非晶質の誘電体膜をカーボンナノチューブと併用するのが望ましい場合、これらの実施形態が好ましい場合もある。
【0035】
このように、一群の実施形態では、カーボンナノチューブおよび非晶質または実質的に非晶質の誘電体膜を含む(任意に、本質的にそれらから成る)コーティングが提供される。前記カーボンナノチューブは、例えば、非晶質または実質的に非晶質の誘電体材料のマトリックスに埋設されてもよい。前記誘電体材料は、例えば、シリカ、窒化ケイ素および酸窒化ケイ素からなる群から選択できる。一実施形態では、例えば、耐久性を目的として、前記カーボンナノチューブ上に(任意に、前記カーボンナノチューブを完全に包み込むように)前記非晶質の誘電体膜を設ける。
【0036】
一部の実施形態における前記コーティング50は、強化、半強化、光パルス、プラズマパルスまたは別の熱処理に曝される。これらの実施形態のいくつかは、前記コーティングを酸化雰囲気(例えば、空気)に曝しながら、前記カーボンナノチューブ含有コーティングを(例えば、300℃を超えるまたはさらに600℃をも超える温度まで)熱処理すること含む。いくつかの実施形態では、そのような熱処理によりコーティングが褐色化または不透明になるのではなく透明のままであるそのような熱処理に対する耐性を有する一つまたは複数のフィルムの形態で前記コーティングが得られる。これらの実施形態における前記コーティングは、例えば、本質的にカーボンナノチューブおよび無機材料(任意に、金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物から選択)からなるのが有利であり得る。
【0037】
前記誘電体−カーボンナノチューブコーティングの実施形態の一サブグループにおいて、前記コーティングは、非導電性誘電体材料を含む。例えば、これは、2〜3例を挙げると、TiO2、SiO2またはTiO2およびSiO2の各種混合物の使用を伴う場合もある。前記コーティング50の誘電性成分は、任意に、本質的に非導電性誘電体材料から成り得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記コーティングの厚さは、約4,000オングストローム未満である。この種のいくつかの実施形態において、前記コーティング50の厚さは、200〜4,000オングストロームの範囲内である。いくつかの場合における前記コーティングは、約1,500オングストローム未満(あるいは、1,000オングストローム未満)である。しかしながら、別の群の実施形態において、前記コーティングの厚さは、4,000〜10,000オングストローム、例えば、約6,000〜7,000オングストロームである。そして、より一般的には、前記厚さは200〜10,000オングストロームの範囲内で変えてもよい。この段落に記載した前記厚さの範囲は、本発明の開示におけるあらゆる実施形態に使用することもできる。
【0039】
前記カーボンナノチューブは多くの公知の方法を用いて前記基材上に設けられる。ナノチューブを合成する方法としては、これらに限定されはしないが、アーク放電、レーザーアブレーション、化学蒸着、プラズマ化学気相成長、熱分解堆積および電気泳動堆積が挙げられる。前記カーボンナノチューブを合成またはその他の方法で得た後、それらを前記基材上に堆積させることができる。典型的な堆積法としては、スプレー蒸着、インクジェット印刷、分配法、スピンコーティング、はけ塗り、ディッピングおよびスクリーン印刷が挙げられる。いくつかの実施形態において、前記カーボンナノチューブは、化学蒸着により堆積される。ナノチューブの堆積に適した化学蒸着法は、米国特許出願第09/556,816号および第10/945,814号明細書に記載されており、ナノチューブの合成/堆積に関するその内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。他の実施形態において、前記カーボンナノチューブは、スプレー蒸着により堆積される。いくつかの実施形態において、あらかじめ合成されたナノチューブは、例えば、米国カリフォルニア州リバーサイド(Riverside)にある会社、カーボン・ソリューションズ社(Carbon Solutions、Inc.)から入手可能である。前記合成されたナノチューブは、溶媒(例えば、水、イソプロピルアルコール、トルエンなど)に懸濁させることができ、その後、前記溶媒およびナノチューブを基材上に噴霧することができる。いくつかの場合において、前記ナノチューブは、(例えば、OH基、COOH基などを前記ナノチューブ表面に付加することにより)官能基を持たせ、前記溶媒に溶解し易くすることができる。前記ナノチューブおよび溶媒は、超音波混合し、前記ナノチューブの溶解を促進することもできる。前記カーボンナノチューブを堆積する他の適した方法は、米国特許出願第10/984,079号および第10/468,145号明細書に記載されており、ナノチューブの合成/堆積に関するその内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0040】
前記カーボンナノチューブを基材上に供給した後、任意に、誘電体膜を前記ナノチューブ上に堆積する。前記誘電体膜は、これらに制限されはしないが、スパッタリング、化学蒸着、熱分解堆積、蒸発、ゾルゲル成膜およびイオンアシスト蒸着を含む公知の方法を用いて堆積することができる。いくつかの実施形態において、前記誘電体膜は、スパッタリング、例えば、DC、ACおよび/またはパルスDCスパッタリングなどにより堆積される。好適な一方法は、一般に当該業界で使用されるDCマグネトロンスパッタリングを利用し、その一実施形態はチャピン(Chapin)の米国特許第4,166,018号明細書に記載されており、スパッタリング技術および装置に関するその教示事項は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0041】
いくつかの実施形態において、誘電体膜は、カーボンナノチューブであらかじめコーティングされた基材上に、前記基材を、誘電体膜を塗布するスパッタコーター内を通過させることにより堆積される。前記スパッタコーターは、スパッタリングにより前記誘電体膜を堆積させることのできる一つまたは複数のターゲットを含む。場合によって、前記コーターは、誘電体(例えば、酸化亜鉛アルミニウムまたは二酸化チタン、任意に、その亜酸化物)から成るスパッタ可能材料を含む複数のターゲットを備える。前記ターゲットを、不活性雰囲気(例えば、アルゴン雰囲気)または弱酸化雰囲気または弱窒化雰囲気においてスパッタし、前記基材上に所望の誘電体材料を堆積してもよい。しかしながら、より一般的には、金属ターゲットが設けられ、前記誘電体膜は、反応性雰囲気において金属ターゲットをスパッタすることにより堆積される。前記金属は、前記雰囲気において反応ガス(例えば、酸素および/または窒素)と反応し、誘電体を形成する。例えば、酸化亜鉛膜は、酸化雰囲気において亜鉛ターゲットをスパッタすることにより堆積することができる。同様に、酸化チタン膜は、酸化雰囲気においてチタンターゲットをスパッタすることにより堆積することができる。また、窒化ケイ素膜は、窒素雰囲気においてシリコンターゲット(アルミニウムなどでドープし、伝導性を向上させてもよい)をスパッタすることにより堆積することができる。シリカフィルムは、酸化雰囲気においてシリコンターゲット(またはSi−Alターゲット)をスパッタすることにより堆積することができる。当然ながら、一連の所望のターゲットが、通常使用されるであろう。このように堆積されたフィルムの厚さは、基材の速度を変化させることによりおよび/または各個別のターゲットのパワーおよびスパッタ速度を変化させることにより制御できる。誘電体膜をスパッタ堆積する特定の好適な方法は、出願者自身の米国特許第5,318,685号明細書および特許出願第09/024,240号、第09/759,661号、第09/044,681号、第09/966,636号、第10/032,901号および第10/008,949号明細書に記載されており、スパッタ蒸着技術および装置に関するその教示事項は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0042】
図1〜3はそれぞれ、様々な実施形態に係るコーティング50を備えた表面18を有する基材10’を示す。コーティング50は、例えば、これは決して必須ではないが、透明導電体コーティングであり得る。
【0043】
図1の実施形態において、コーティング50は、本質的にカーボンナノチューブから成り、任意に、他の炭素含有材料(および/または前記カーボンナノチューブの作製に使用された触媒に含まれていた材料)を共に含む。カーボンナノチューブ20は、表面18上(任意に、直ぐ上)に設けられている。さらに、前記カーボンナノチューブは、ここでは露出している(すなわち、それらが前記コーティングの最外部を画定している)。場合によって、前記ナノチューブは、実質的に表面18全体を被覆する。図11は、被覆率100パーセントの状態を概略的に示す。この概略図において、図示されているチューブの下のナノチューブは示されていない。しかし、100パーセントの被覆率が得られるように、この平面図ではオープンスペースに見える領域において、実際は、これらのスペースの下には他のカーボンナノチューブが存在しているであろう(しかし、これは、図12および13の場合には当てはまらない)。他の場合において、前記ナノチューブは、表面18の一部のみを被覆する。例えば、前記被覆率は、任意に、約60パーセント以下、約50パーセント以下または約30パーセント以下であり得る。図12および13は、前記被覆率が60パーセント未満および50パーセント未満である実施形態を概略的に示し、図13は、前記被覆率が30パーセント未満である実施形態を概略的に示す。前記ナノチューブは、表面18の少なくとも約1〜2パーセント被覆するのが好ましい。
【0044】
図2の実施形態において、コーティング50はカーボンナノチューブ20および透明誘電体膜30を含む。カーボンナノチューブ20は、例えば、上記の被覆率範囲などの所望の被覆率が得られるように前記表面上に設けられる。透明誘電体膜30は、カーボンナノチューブ20の少なくとも一部上に(例えば、埋設するように)設けられるのが好ましい。図示されている実施形態において、誘電体膜30は、ナノチューブ20全体を覆っている。他の場合において、膜30は、ナノチューブの一部のみまたはいくつかを被覆する。例えば、ナノチューブのいくつかが被覆されている一方、他のナノチューブは、膜30の上面から幾分突出していてもよい。前記コーティングの厚さは、ここでは、例えば、10,000オングストローム未満、4,000オングストローム未満または1,500オングストローム未満であり得る。
【0045】
図3は、コーティング50がカーボンナノチューブ20および透明誘電体膜30の両方を含む漸変コーティングである実施形態を示す。いくつかの場合において、前記漸変コーティングは、基材表面18から外側に向かって、通常連続的に濃度が増加する透明誘電体膜30および通常連続的に濃度が低下するカーボンナノチューブ20を含む。他の場合において、前記漸変コーティングは、基材表面18から外側に向かって、通常連続的に濃度が増加するカーボンナノチューブ20および通常連続的に濃度が低下する透明誘電体膜30を含む。これは、前記カーボンナノチューブの前(例えば、下)に透明誘電体膜を堆積させる方法により得られる。
【0046】
図示されている実施形態のいずれかにおけるコーティング50の厚さは、前記コーティングの所望の伝導性および透過性によって、約100オングストローム〜約30,000オングストロームの間であればいくらでもよい。さらに、用途によっては、さらなる厚さが必要とされる場合もある。上記のより狭い典型的な厚さ範囲が、当該開示の実施形態において好ましい場合もある。
【0047】
前記基材をコーティングした後、任意に、コーティングされた基材に対し熱処理を行うこともできる。これは、強化、半強化、光パルスまたはプラズマパルスを用いてコーティングされた基材にエネルギーを送達することなどを含む場合もある。しかしながら、全実施形態において、前記コーティングされた基材の熱処理は、決して必須ではない。
【0048】
特定の一実施形態において、ソーダ石灰ガラス板をカーボンナノチューブにより、被覆率約30%、厚さ約100Åでコーティングする。前記カーボンナノチューブは、スプレー蒸着により堆積させる。合成されたナノチューブ(カーボン・ソリューションズ社から市場において入手できるチューブなど)を、溶媒(例えば、水またはイソプロパノールなどの有機材料)に溶解させる。場合によって、前記ナノチューブは、官能化することにより、所望の溶媒に溶解するであろう。イソプロパノール、水、または他の溶媒中、超音波発生装置(ultrasonicator)において、60分間処理することが有用な場合もある。他の場合において、前記チューブは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤を使用し、安定溶液中に懸濁させることもできる。前記溶液は、約30%の被覆率が得られるように前記ガラス板上に(例えば、超音波噴霧器を使用して)噴霧することができる。多くの場合において、前記溶媒はガラス板から蒸発するため、主にナノチューブが残る。いくつかの場合においては、前記基材を加熱し、溶媒の蒸発速度を上げることが望ましい場合もある。そして、このようにしてその一主表面がカーボンナノチューブでコーティングされたガラス板を、酸化チタン膜をカーボンナノチューブ20上に理論厚さ約40Åでスパッタ堆積するスパッタコーター内を通過させる。このフィルムは、酸化雰囲気においてチタンターゲットをスパッタすることにより、または不活性雰囲気において酸化チタンターゲット(準化学量論的チタニアターゲットなど)をスパッタすることにより堆積し得る。有用な準化学量論的チタニアターゲットは、ベカルトVDS社(Bekaert VDS)(ベルギー、ダインゼ(Deinze))から市場において入手できる。この種のターゲットおよび有用なスパッタ蒸着法は、米国特許第6,511,587号、第6,468,402号および第6,461,682号明細書に記載されており、チタニアターゲットおよび有用な堆積法に関するその主要な教示事項は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0049】
本発明はまた、カーボンナノチューブを含むコーティングを備えた少なくとも一透明窓板を有するIGユニットも提供する。いくつかの場合において、前記コーティングは、前記ユニットの第1表面上にある。他の場合において、前記コーティングは、前記ユニットの第4表面上または第6表面上にある。さらに、前記ユニットは、そのようなコーティングを、例えば、第1および第4表面の両方にまたは第1および第6表面の両方に有することも可能である。よって、前記ユニットは、二重窓板ユニット(double−pane unit)、三重窓板ユニットなどであり得る。図4〜6を参照すると、いくつかの実施形態においては、窓板間のスペース800により分離された第一の窓板10および第二の窓板10’を有するIGユニット110が提供される。スペーサー900(任意に、サッシ、フレームなどの一体部分であり得る)は、一般に、窓板10および10’を分離するために設けられる。図示されている実施形態において、前記IGユニットは、これは決して必須ではないが、建物2000に取り付けられているフレーム1000に取り付けられている。前記スペーサーは、接着剤700を用いて前記窓板の内面に固定できる。場合によっては、端部封止材600も設けられる。図示されている実施形態において、前記第一の窓板10は、外面12(第1表面)および内面14(第2表面)を有する。図示されている第二の窓板10’は、内面16(第3表面)および外面18(第4表面)を有する。第一の窓板10は、任意に、外側窓板であり得る。例えば、それは、その外面12が屋外環境に曝されるようにフレーム1000(窓枠、ドア枠、天窓フレームなど)に取り付けることができる。図示されている内面14および16はいずれも、前記IGユニットの窓板間のスペース800内の雰囲気(任意に、アルゴンまたは別の断熱ガスを含む)に曝される。第二の窓板10は、任意に、その外面18が室内側表面(すなわち、屋内環境に曝される表面)である、内側窓板であり得る。
【0050】
コーティング50がIGユニットの前記第1表面上にある実施形態に関しては、前記ユニットは、有利な結露防止断熱グレージングユニットであり得る。
【0051】
図4〜6において、前記ユニットの表面18(第4表面)は、カーボンナノチューブを含むコーティング50を備えている。単体グレージングを含むいくつかの実施形態において、前記第2表面が、そのようなコーティングを有することも可能である。さらに、三重ガラスの実施形態において、前記第6表面がそのようなコーティングを有することも可能である。コーティング50は、図1〜3を参照して既に説明したコーティングの実施形態のいずれか一つであり得る。図示されている実施形態において、第二の窓板10’は、コーティング50を備えている。しかしながら、第一の窓板10がさらに(または代わりに)、カーボンナノチューブを含むコーティングを備えることも可能である。図4の実施形態において、前記ユニット110は、カーボンナノチューブを含むコーティング50のみが設けられている。つまり、第二の窓板10’の外面18のみにコーティング50が設けられており、表面12、14および16はコーティングされていない。
【0052】
他の場合において、IGユニット110は、別の表面(例えば、第2表面または第3表面)上に機能性コーティング(例えば、低放射率コーティング)も有する。図5に示されている実施形態において、IGユニット110は、低放射率コーティング60を備えた第2表面とカーボンナノチューブを含むコーティング50を備えた第4表面とを有する。(図7に示されているような)別の実施形態において、三重窓板IGユニットは、第2表面または第4表面上の低放射率コーティング(または低放射率コーティングは、第二および第4表面の両方にあってもよい)と共に、カーボンナノチューブを含むコーティングを第6表面上に有する。低放射率コーティング60は、当該技術分野において公知のそのようないかなるコーティングであってもよい。前記コーティングは、一つ、二つ、三つまたはそれ以上の赤外反射膜を有することも可能である。一つまたは二つの赤外反射膜を有する低放射率コーティングは、当該技術分野において公知となっている。三つまたはそれ以上の赤外反射膜を有する適切な低放射率コーティングは、出願人自身の米国特許出願第11/360,266号明細書に記載されており、その全内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0053】
特定の一実施形態群は、カーボンナノチューブを含むコーティングを備えた一主表面(好ましくは、第4表面または第6表面)と三つの赤外反射膜領域(それぞれ、任意に、銀を含む)を含む低放射率を有する別の主表面とを備えた多層IGユニットを提供する。この種のいくつかの実施形態において、前記IGユニットはまた、親水性および/または光触媒コーティングなどの低保守コーティングを備えた主表面(好ましくは、第1表面)も有する。特定の一実施形態において、前記低保守コーティング、低放射率コーティングおよびカーボンナノチューブを含むコーティングの総厚は、10,000オングストローム未満(例えば、1,000〜10,000オングストローム)、あるいは、さらに約5,000オングストローム未満(例えば、約1,000オングストローム〜約5,000オングストローム)である。これにより、特に良好な組み合わせの機能性コーティング特性が得られる一方で、同時に所望の光学/外観特性をもたらすことができる。
【0054】
図6を参照すると、IGユニット110は、外部表面12(第1表面)上に低保守コーティング70を備え得る。前記低保守コーティングは、例えば、シリカおよび/またはチタニアを含み得る。適切な低保守コーティングは、出願人自身の米国特許出願第11/021,482号、第11/179,178号、第11/179,852号、第11/129,820号および第11/293,032号明細書に記載されており、それぞれの全内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。この実施形態において、IGユニット110は、低保守コーティング70を備えた第1表面と、低放射率コーティング60(任意に、銀含有層を一層、二層または三層有する)を備えた第2表面と、カーボンナノチューブを含むコーティング50を備えた第4表面とを有する。いくつかの場合において、低保守コーティング70、低放射率コーティング60およびカーボンナノチューブを含むコーティング50の物理的総厚は、約5,000オングストローム未満、例えば、約1,000オングストローム〜約5,000オングストロームである。例えば、一実施形態では、シリカの直ぐ上の約25〜40ÅのTiO2を有する第1表面の直ぐ上にある約75Åのシリカフィルム(任意に、アルミナなどを含む)により形成された低保守コーティングと、30%被覆率で厚さ約100Åの、第4表面の直ぐ上のカーボンナノチューブにより形成されたコーティングと、前記第2表面上に下記順番のフィルムにより形成された低放射率コーティングとを有する二重窓板IGユニットを提供する:約130ÅのTiO2/約120ÅのAg/約20ÅのTi(任意に、少なくとも部分的に酸化されている)/約470ÅのTiO2/約150ÅのAg/(任意に、少なくとも部分的に酸化された)約20ÅのTi/約550ÅのTiO2/約205ÅのAg/(任意に、少なくとも部分的に酸化された)約20ÅのTi/約280ÅのTiO2
【0055】
図7は、三重窓板IGユニット110を示す。ここでは、第一の窓板10、第二の中間窓板10’および第三の窓板10’’を有するIGユニット110が提供されている。第一の窓板10と第二の窓板10’は、窓板間のスペース800により分離され、第二の窓板10’と第三の窓板10’’は窓板間のスペース800’ により分離されている。スペーサー900(任意に、サッシ、フレームなどの一体部分であり得る)は、一般に、窓板10および10’を分離するために設けられており、スペーサー900’は、窓板10’および10’’を分離するために設けられている。前記スペーサーは、接着剤700を用いて前記窓枠の内面に固定できる。場合によっては、端部封止材600も設けられる。図示されている実施形態において、第一の窓板10は、外面12(第1表面)および内面14(第2表面)を有する。図示されている第二の窓板10’は、表面13(第3表面)および表面15(第4表面)を有する。図示されている第三の窓板10’’は内面16(第5表面)および外面18(第6表面)を有する。第一の窓板10は、任意に、外側窓板であり得る。例えば、それは、その外面12が、屋外環境に曝されるようにフレーム1000(窓枠、ドア枠、天窓フレームなど)に取り付けることができる。図示されている内面14、13、15、16は、前記IGユニットの窓板間のスペース800、800’内の雰囲気に曝される。第三の窓板10’’は、その外面18が室内側表面であるように、任意に、内側窓板であり得る。
【0056】
引き続き図7を参照すると、前記ユニットの表面18(第6表面)は、カーボンナノチューブを含むコーティング50を備えている。コーティング50は、図1〜3を参照し既に説明したコーティングの実施形態のいずれか一つであり得る。表面15(第4表面)は、低放射率コーティング60を備えている。当然ながら、低放射率コーティングは、表面14(第2表面)、表面13(第3表面)または表面16(第5表面)上に(さらにまたは代わりに)設けることもできる。低放射率コーティング60は、当該技術分野において公知のそのようないかなるコーティングであってもよい。低保守コーティング70は、図示されている実施形態において外部表面12(第1表面)上にも設けられている。一変形例において、前記IGユニット上の唯一のコーティングは、第6表面上のコーティング50である。別の変形例においては、コーティング50および70のみが設けられる。
【0057】
カーボンナノチューブを含む当該コーティングは、多くの有用な特性を有する。以下、これらの特性の幾つかについて述べる。いくつかの場合においては、一表面上に本発明のコーティング50を備える単体(すなわち、モノリシック)窓板に関する特性をここでは報告する。他の場合においては、これらの特性は、その第4表面18上に本発明のコーティング50を有する二重窓板IGユニットに関して報告する。これらの場合において、報告される特性は、いずれの窓板も、2.2mmの透明なソーダ石灰フロートガラスであり、窓板間の1/2インチの空間に、アルゴン90%と空気10%との断熱混合ガスを充填した二重窓板IGユニットに関して算出されている。当然ながら、これらの詳細は、決して本発明を限定するものではない。異なる明確な記述がない場合、本明細書での記述は、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)規格条件の下、周知のウインドウ(WINDOW)5.2aコンピュータプログラムを用いて(例えば、ガラスデータの中心(CENTER)を算出して)行われる測定を反映するものである。
【0058】
前記カーボンナノチューブの導電性により、コーティング50は特に優れた断熱性を付与することができる。いくつかの実施形態において、コーティング50の厚さ、ナノチューブ被覆率および組成は、コーティング50が約100オーム/スクエア未満、約50オーム/スクエア未満または約20オーム/スクエア未満のシート抵抗を示すように選択される。前記コーティングのシート抵抗は、4点プローブを用いて標準的な方法で計測可能である。シート抵抗の算出に有用な、当該技術分野において公知の他の方法を採用することも可能である。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明は、U値が0.24未満、より好ましくは0.21未満であるIGユニットを提供する。周知の通り、グレージングのU値は、前記ユニットの断熱性の測定値である。U値が小さいほど断熱特性が良好である。U値という用語は、当該技術分野においては周知である。ここで、前記IGユニットは、図4に示すタイプ(コーティング50のみを有する)、図5に示すタイプ(コーティング50および60の両方を有する)または図6に示すタイプ(コーティング50、60および70を有する)であり得る。よって、いくつかの場合において、コーティング50の厚さ、ナノチューブ被覆率および組成は、このコーティング50のみを前記IGユニットに設けることにより、前記ユニットが、本段落に記載した一つまたは複数の範囲内のU値を有するよう選択される。他の場合において、前記IGユニットは、二つ以上のコーティング、例えば、コーティング50および60の併用効果により、所望の低いU値を達成する。
【0060】
場合によって、前記コーティングは、前記IGユニットの△Uが少なくとも約0.03であるように選択された厚さ、ナノチューブ被覆率および組成を有する。前記△Uは、コーティング50を備えた前記ユニットのU値とコーティング50の無い前記ユニットのU値との差の絶対値と定義される。
【0061】
コーティング50はまた、非常に低い放射率も有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、コーティング50の放射率は、約0.25未満である。「放射率」という用語は、当該技術分野において周知である。本明細書において、この用語は周知の意味通り使用し、同一温度で、ある表面が発する放射の、黒体が発する放射に対する比のことを言う。放射率は、吸収と反射双方の特徴であり、通常、式E=1−(反射率)で表される。本明細書の放射率の値は、「分光測定を用いた鏡面反射体の放射率に関する標準試験方法(Standard Test Method For Emittance Of Specular Surfaces Using Spectrometric Measurements)」NFRC301−93に規定されている通りに測定可能であり、その全教示事項は引用することにより本明細書の一部とされる。放射率は、測定したシート抵抗に0.016866を掛けることにより算出できる。この方法を用いると、シート抵抗が約1.25のコーティング50は、例えば、放射率が約0.021であることが求められる。
【0062】
低シート抵抗および低放射率に加えて、本発明のコーティング50によれば、高い可視光透過率が得られる。いくつかの実施形態において、コーティング50によれば、約30%〜約75%の(単体窓板またはIGユニットに関する)可視光透過率が得られる。例えば、コーティング50を備えた窓板は、この範囲内に単体透過率を有していてもよく、且つ/または、コーティング50を有する窓板を備えたIGユニット(任意に、コーティング60および/または70も適した表面上に有する)は、当該範囲内に絶縁透過率(insulated transmission)を有していてもよい。その主表面の一つに被覆率50%および厚さ50Åでカーボンナノチューブにより形成されたコーティングを有する単体ガラス窓板の可視光透過率は、少なくとも70%と考えられる。
【0063】
「可視光透過率」という用語は、当該技術分野において周知であり、本明細書においては、その周知の意味通り使用する。可視光透過率は、可視光反射率と同様、NFRC300「窓板材料の太陽および赤外線光学特性およびシステムの退色度を測定するための標準試験方法(Standard Test Method for Determining the Solar and Infrared Optical Properties of Glazing Materials and Fading Resistance of Systems)」(ナショナル フェネストレーション レーティング カウンシル インコーポレーティッド(National Fenestration Rating Council Incorporated)、2001年12月採択、2002年1月発行)に従って求めることができる。これらおよび他の報告されている光学特性を計算する際には、周知のウインドウ5.2aコンピュータプログラムを使用することができる。
【0064】
ある一定の場合において、コーティング50は、△Tvが約5%未満またはさらに約2%未満であるグレージング(例えば、IGユニット)となるように選択された厚さ、ナノチューブ被覆率および組成を有する。前記△Tvは、コーティング50を備えた前記グレージングの可視光透過率とコーティング50の無い前記グレージングの透過率との差の絶対値と定義される。よって、コーティング50を設けることにより、付随する可視光透過率の低下を最小限にし、導電性および/または強度を付与することができる。一実施形態において、コーティング50は、厚さ約100オングストロームで基材表面上に堆積された表面被覆率約30%のカーボンナノチューブにより形成される。本実施形態に係るコーティングは、△Tvが約5%未満になると考えられる。
【0065】
これらの有益な特性に加えて、本発明のコーティング50は、満足のいく色特性を促進するのが望ましい。透過色および反射色に関する以下の記載は、周知の色座標「a」および「b」を用いて報告する。特に、本明細書において、これらの色座標は、周知のハンターLab表色系(Hunter Lab Color System)(ハンター法/ユニット、III.D65、10度視野(Hunter methods/units、III。D65、10 degree observer))の通常使用を表す下付き文字h(すなわち、ahおよびbh)を用いて示す。本発明の色特性は、ASTM D−2244−93、「器機で測定された色座標からの色差算出のための標準試験法(Standard Test Method For Calculation Of Color Differences From Instrumentally Measured Color Coordinates)」1993年9月15日に規定され、ASTM E−308−85、ASTM規格年報、Vol.06.01「CIE系を用いた物体の色計算のための標準方法(Standard Method For Computing The Colors Of Objects ByUsing The CIE System)」により増補されたようにして測定することができ、そのそれぞれの全教示事項は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0066】
コーティング50により、満足のいく透過色を有するIGユニットが得られるのが望ましい。一般に、窓は、青色または青緑色の色調を示すことが望ましく、一般に青色が特に望ましい。いくつかの実施形態において、前記IGユニットは、ah色座標が約0〜約−6であり、bh色座標が約+6〜約−6であることを特徴とする透過色を有する。この種の典型的な一実施形態は、二重窓板IGユニットを含み、前記第4表面は、被覆率50%および平均厚さ約50Åでカーボンナノチューブにより形成されたコーティングを有し、前記第2表面は、下記順番のフィルムにより形成された低放射率コーティングを有する:前記第2表面から外側に向かって、約165Åの酸化亜鉛スズ/約120ÅのAg/約20ÅのTi(任意に、少なくとも部分的に酸化されている/約590Åの酸化亜鉛スズ/約155ÅのAg/約20ÅのTi(任意に、少なくとも部分的に酸化されている)/約665Åの酸化亜鉛スズ/約205ÅのAg/約20ÅのTi(任意に、少なくとも部分的に酸化されている)/約315Åの酸化亜鉛スズ(最外部の100Åの酸化亜鉛スズは、任意に、100Åの窒化ケイ素と置き換えられる)。
【0067】
コーティング50により、満足のいく反射色を有するIGユニットが得られるのが望ましい。本明細書において報告されている反射色は、前記IGユニットの第1表面から測定される。いくつかの実施形態において、前記コーティングは、ah色座標が約+2〜約−6であり、bh色座標が約+6〜約−6であることを特徴とする外側反射色を有するIGユニット上にある。すぐ上の段落で詳述した前記典型的な実施形態が、有用であろう。
【0068】
本発明はまた、合わせガラスアセンブリも提供する。合わせガラスアセンブリは、例えば、自動車のフロントガラスなどに広く使用されている。これらのアセンブリは通常、二枚のガラス板を含み、前記ガラス板を結合する中間膜をその間に挟持する。これらの実施形態において、前記中間膜は、カーボンナノチューブ(任意に、高分子材料に、埋設されるおよび/または積層される)を含み、場合によっては、本質的にカーボンナノチューブからなる。
【0069】
図7を参照すると、いくつかの実施形態においては、二枚のガラスの窓板10、10’および前記二枚の窓板10、10’の間に挟持されたカーボンナノチューブを含む中間膜70を有する合わせガラスアセンブリ210が提供される。図8を参照すると、中間膜70は、任意に、本質的にカーボンナノチューブ20から成るか、あるいは、所望の接着剤および/またはバインダーと共にカーボンナノチューブを含み得る。
【0070】
合わせガラスの一実施形態において、前記積層体は、カーボンナノチューブおよびポリマーを含む中間膜70を有し、前記カーボンナノチューブ/ポリマー重量比は、約0.0001〜約1.0である。前記カーボンナノチューブ/ポリマー重量比は、前記中間膜における、前記ポリマーの重量に対する前記カーボンナノチューブの全重量である。
【0071】
一方、図9を参照すると、中間膜80は、カーボンナノチューブおよび高分子材料の両方を含み得る。図9において、中間膜80は、カーボンナノチューブに隣接した高分子材料(の層に対し任意に積層された)からなる膜90を含む。前記高分子材料は、場合によって、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーンまたはイオノプラスト(Ionoplast)プラスチックである。フィルム90およびナノチューブ20はいずれも二枚の窓板10、10’の間に挟持されている。場合によって、この種の合わせガラスアセンブリ210は、高分子フィルム90の一つまたは複数の表面上にまずカーボンナノチューブ20を堆積させることにより組み立てられる。そして、ナノチューブ20を有する高分子フィルム90を、前記二枚のガラス板の間に配置し、サンドイッチを形成した後、加熱してもよい。または、カーボンナノチューブ20は、高分子フィルム90を前記二枚の窓板の間に配置する前に、前記二枚の窓板の一つまたは複数の表面上に直接堆積することも可能である。別の例では、単体(例えば、自己支持型)中間膜は、シート状の高分子材料に埋設されたカーボンナノチューブを含む。さらに別の例では、前記積層グレージングアセンブリは、二枚の窓板を含み、その間に、それぞれカーボンナノチューブを含む二つのコーティングが位置し、そのような二つのコーティングの間に挟まれているのが、PVD、シリコーンおよびイオノプラスト・プラスチックからなる群から選択される材料を含む層である。
【0072】
前記合わせガラスを組立てた後、アセンブリ210は、場合によって、加熱し(一般に、約120°F〜約170°Fの温度まで)、またローラーでプレスすることにより中間膜とガラス窓板の間に閉じ込められた空気の除去を開始し、且つ、前記中間膜のガラス窓板への接着を開始する。いくつかの実施形態においては、その後、オートクレーブ法を用いてアセンブリ210を加工する。オートクレーブ動作は一般に、中間膜70が前記ガラスに接着され、閉じ込められた空気の中間膜70への溶解が完了するまで、アセンブリ210を高温(一般に、約275°F〜約300°F)および高い大気圧(一般に、約150〜190psig)に曝すことを含む。当該実施形態の合わせガラスアセンブリの加工に使用できる好適なオートクレーブ法は、米国特許第3,234,062号明細書および米国特許第5,536,347号明細書に記載されており、オートクレーブ技術および装置に関するそれらそれぞれの内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0073】
他の実施形態において、アセンブリ210は、非オートクレーブ法を用いて加工する。使用できる好適な一非オートクレーブ工程は、出願人自身の米国特許出願第10/393,197号および第10/943,797号明細書に記載されており、非オートクレーブ技術および装置に関するそれらそれぞれの全内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。いかなる好適な加工法も、前記ガラス窓板に対する前記中間膜の接着を確保するために使用することができる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、当然のことながら、本発明の精神および添付のクレームの範囲から逸脱することなく、様々な変更、応用、および改良が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 基材
10’ 基材
12 第1の主表面
14 第2の主表面
16 第1の主表面
18 第2の主表面
20 カーボンナノチューブ
30 透明誘電体膜
50 コーティング
60 低反射率コーティング
70 コーティング
80 中間膜
90 高分子フィルム
110 IGユニット
600 端部封止材
700 接着剤
800 スペース
900 スペーサー
900’ スペーサー
1000 フレーム
2000 建物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を介して配置された少なくとも二枚の窓板を含む複層断熱グレージングユニットであって、前記断熱グレージングユニットは、少なくとも一つの窓板間のスペースを有し、且つ、カーボンナノチューブを含む透明導電体コーティングが設けられた所望の表面を有し、前記所望の表面が、前記ユニットの窓板間のスペースに面する内部表面ではなく、前記ユニットの外部表面である、複層断熱グレージングユニット。
【請求項2】
前記透明導電体コーティングは、前記ユニットの△Uが少なくとも約0.03であるように選択された厚さ、ナノチューブ被覆率および組成を有し、前記△Uが、前記透明導電体コーティングを備えた前記ユニットのU値と前記透明導電体コーティングの無い前記ユニットのU値との差の絶対値と定義される、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項3】
前記透明導電体コーティングの厚さが、10,000オングストローム未満であり、さらに前記△Uが少なくとも約0.03である、請求項2に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項4】
前記透明導電体コーティングが、カーボンナノチューブと無機材料とから本質的になり、600℃を超える高温での熱処理により、前記コーティングが、褐色化または不透明になるのではなく、透明のままであるように、前記コーティングが前記熱処理に対する耐性を有する、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項5】
前記透明導電体コーティングが、カーボンナノチューブと誘電体材料とから本質的になり、前記コーティングは、誘電体/カーボンナノチューブ重量比が約2.3〜約999であることを特徴とし、前記誘電体/カーボンナノチューブ重量比が、前記カーボンナノチューブの全重量に対する前記誘電体材料の全重量と定義される、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項6】
前記誘電体/カーボンナノチューブ重量比が約9〜約999である、請求項5に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項7】
前記誘電体材料が、金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物からなる群から選択される、請求項5に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブが、前記誘電体材料のマトリックス内に包み込まれている、請求項5に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項9】
前記誘電体材料が、シリカ、窒化ケイ素および酸窒化ケイ素からなる群から選択される非晶質または実質的に非晶質の誘電体材料である、請求項5に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項10】
前記所望の表面が、前記ユニットの第4表面または第6表面のいずれかであり、前記ユニットが、建物の壁のフレームに取り付けられ、屋外環境に曝される第1表面と前記ユニットの窓板間のスペースに曝される第2表面とを有し、前記所望の表面が、前記建物の屋内環境に曝される室内側表面であり、且つ、前記カーボンナノチューブが前記室内側表面の100%未満を被覆し、前記コーティングが前記カーボンナノチューブを包み込む透明誘電体膜を含む、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブが、前記室内側表面の約50パーセント未満を被覆する、請求項10に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブが、前記室内側表面の約30パーセント未満を被覆する、請求項10に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項13】
前記ユニットのU値が0.24未満である、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項14】
前記U値が0.21未満である、請求項13に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項15】
前記透明導電体コーティングの放射率が約0.25未満である、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項16】
前記透明導電体コーティングが、△Tvが約5%未満となるように選択された厚さ、ナノチューブ被覆率および組成を有し、前記△Tvが、前記透明導電体コーティングを備えた前記ユニットの可視光透過率と前記透明導電体コーティングの無い前記ユニットの可視光透過率との差の絶対値と定義される、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項17】
前記ユニットの可視光透過率が、約30%〜約75%である、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項18】
前記ユニットが、低放射率コーティングが設けられた第2表面を有し、前記低放射率コーティングが、銀を含有する少なくとも一つの赤外反射膜を含み、前記赤外反射膜が二つの透明誘電体膜の間に位置する、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項19】
前記ユニットが、親水性コーティングが設けられた第1表面を有する、請求項18に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項20】
前記親水性コーティングが、シリカ、チタニアまたはその両方を含み、且つ、前記透明導電体コーティング、前記低放射率コーティングおよび前記親水性コーティングの物理的総厚が1,000オングストローム〜10,000オングストロームである、請求項19に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項21】
前記透明導電体コーティング、前記低放射率コーティングおよび前記親水性コーティングの物理的総厚が、約1,000オングストローム〜約5,000オングストロームである、請求項19に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項22】
前記ユニットが、ah色座標が約0〜約−6であり、bh色座標が約+6〜約−6であることを特徴とする透過色を有する、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項23】
前記ユニットが、ah色座標が約+2〜約−6であり、bh色座標が約+6〜約−6であることを特徴とする外側反射色を有する、請求項10に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項24】
前記透明導電体コーティングの厚さが、10,000オングストローム未満である、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項25】
前記透明導電体コーティングの厚さが、約1,500オングストローム未満である、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項26】
前記所望の表面が、前記ユニットの第1表面であり、前記ユニットが建物の壁のフレームに取り付けられ、前記第1表面が屋外環境に曝され、前記ユニットが、前記ユニットの窓板間のスペースに曝される第2表面を有する、請求項1に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項27】
前記ユニットが、屋内環境に曝される室内側表面を有し、前記室内側表面がカーボンナノチューブを含む第二の透明導電体コーティングを備えている、請求項26に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項28】
前記室内側表面が、前記ユニットの第4表面または前記ユニットの第6表面のいずれかである、請求項27に記載の断熱グレージングユニット。
【請求項29】
誘電体膜およびカーボンナノチューブから本質的に成る厚さ10,000オングストローム未満のコーティングが設けられた主表面を有する透明窓板を含むグレージングであって、前記コーティングの誘電体/カーボンナノチューブ重量比が約2.3〜約9999であり、前記誘電体/カーボンナノチューブ重量比が、前記カーボンナノチューブの全重量に対する前記誘電体膜の全重量と定義される、グレージング。
【請求項30】
前記コーティングが、金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物からなる群から選択される誘電体材料と、カーボンナノチューブとから本質的になり、且つ、600℃を超える高温での熱処理により、前記コーティングが、褐色化または不透明になるのではなく、透明のままであるように、前記コーティングが前記熱処理に対する耐性を有する、請求項29に記載のグレージング。
【請求項31】
前記誘電体膜が非導電性誘電体材料である、請求項29に記載のグレージング。
【請求項32】
前記誘電体膜が、シリカ、窒化ケイ素および酸窒化ケイ素からなる群から選択される非晶質または実質的に非晶質の誘電体材料である、請求項29に記載のグレージング。
【請求項33】
前記カーボンナノチューブが前記誘電体膜に包み込まれている、請求項29に記載のグレージング。
【請求項34】
前記コーティングの厚さが4,000オングストローム未満である、請求項29に記載のグレージング。
【請求項35】
前記厚さが1,500オングストローム未満である、請求項34に記載のグレージング。
【請求項36】
前記主表面は、前記カーボンナノチューブが約50パーセント未満を被覆する全表面積を有する、請求項29に記載のグレージング。
【請求項37】
前記カーボンナノチューブが、前記主表面の全表面積の約30パーセント未満を被覆する、請求項36に記載のグレージング。
【請求項38】
前記カーボンナノチューブによる被覆率が、前記主表面の少なくとも約1〜2パーセントである、請求項29に記載のグレージング。
【請求項39】
前記コーティングの表面抵抗が約20オーム/スクエア未満である、請求項29に記載のグレージング。
【請求項40】
前記のコーティングされた透明窓板の単体透過率が少なくとも約70パーセントである、請求項29に記載のグレージング。
【請求項41】
前記グレージングが、それぞれ銀を含む三つの赤外反射膜を含むコーティングが設けられたさらなる窓板を含む、請求項29に記載のグレージング。
【請求項42】
第一および第二のガラスの窓板を含み、前記第一の窓板が、接合された内部表面と露出した外部表面とを有し、前記第二の窓板が、接合された内部表面と露出した外部表面とを有する合わせガラスアセンブリであって、ガラスの前記第一および第二の窓板の間に、前記二枚のガラス窓板を結合する中間膜があり、前記第一および第二の窓板の内部表面が、前記中間膜に接合されており、且つ、前記中間膜がカーボンナノチューブを含む、合わせガラスアセンブリ。
【請求項43】
前記中間膜が高分子層を含み、前記カーボンナノチューブが前記高分子層に埋設されているかあるいは隣接されている、請求項42に記載の合わせガラスアセンブリ。
【請求項44】
前記中間膜が前記カーボンナノチューブとポリマーを含み、前記中間膜のカーボンナノチューブ/ポリマー重量比が約0.0001〜約1.0であり、前記カーボンナノチューブ/ポリマー重量比が、前記中間膜中の前記ポリマーの重量に対する前記カーボンナノチューブの全重量と定義される、請求項42に記載の合わせガラスアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−513175(P2010−513175A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518584(P2009−518584)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/072534
【国際公開番号】WO2008/085541
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(502058127)カーディナル・シージー・カンパニー (4)
【氏名又は名称原語表記】CARDINAL CG COMPANY
【Fターム(参考)】