ガスセンサ及びガス検知システム
【課題】電界効果型トランジスタ(FET)を用いたFET型ガスセンサの加熱電力を最小化し、長寿命化を図る。
【解決手段】FETのゲート絶縁膜上に成膜される感応電極31に二つの端子10、11を設け、異なる電位を与えて電流を流す。加熱が必要な感応電極31自体に電流を流すことで感応電極31が発熱体となるので、最も効率よくFET型ガスセンサを加熱できる。また、端子10、11は温度検出部の一部を構成し、加熱された感応電極31の温度を測定する。
【解決手段】FETのゲート絶縁膜上に成膜される感応電極31に二つの端子10、11を設け、異なる電位を与えて電流を流す。加熱が必要な感応電極31自体に電流を流すことで感応電極31が発熱体となるので、最も効率よくFET型ガスセンサを加熱できる。また、端子10、11は温度検出部の一部を構成し、加熱された感応電極31の温度を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタを用いたガスセンサと、これを用いたガス検知システムに関し、特に消費電力が小さく寿命の長いセンサと、ガスの種類の判別の可能なガス検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサにはさまざまな種類があり、例えば可燃性ガスセンサに関しては、接触燃焼式、半導体式、熱伝導式、赤外線吸収式などが知られている。また、薄膜や厚膜を用いた方式として、センサズ アンド アクチュエータズ誌B1巻(1990)15から20ページ(Sensors and Actuators, Vol. B1(1990), pp. 15-20)(非特許文献1)に記載の電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor、以下、FETと記す)方式(FETのゲート電極に感応電極を成膜し、検知対象ガスによるゲート電位の変化をFETで読み出す方式)や、ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス誌40巻(2001)、L1232からL1234ページ(Japanese Journal of Applied Physics Vol. 40(2001), pp. L1232-1234)(非特許文献2)に記載の熱電式(検知対象ガスによる熱電変換膜の温度上昇を電圧として読み出す方式)が提案されている。
【0003】
ほとんどのガスセンサは、電気化学的な反応を促進するため100℃から400℃程度に加熱して用いる。FET方式の場合もFETが形成されている素子全体、あるいはFET周辺を局所的に加熱し、FET部分を100℃程度の一定温度に保った状態で用いることが多い。これにより、第4回IEEEセンサ会議録159から162ページ(The 4th IEEE Conference on Sensors, pp. 159-162)(非特許文献3)に記載のように、感応電極部分の温度がFETの電気特性に与える影響を排除し、同時に応答速度を速める効果がある。
【0004】
このFET方式のガスセンサの場合、加熱すべき部分はFETのゲート絶縁膜上に形成される感応電極である。そこで、感応電極付近にヒータを配置する構成がいくつか知られている。例えば、特許第2848818号公報(特許文献1)ではソース・ドレイン電極の外側に延長した、露出表面を持つ感応電極となるゲート電極部と、該ゲート電極部に絶縁膜を介して配設された加熱部を有するFETセンサが開示されている。また特開平9-329576号公報(特許文献2)ではゲート電極の温度を均一に制御し、センサの応答時間および感度の改善を図るために、ゲート電極の上にヒータを配置している。なお、特開平9-329576号公報(特許文献2)のセンサはゲート電極の表面電位と電気的インピーダンスの双方を計測する。このため表面電位を読み出すためのFET構造の他に、電気接続部をゲート電極に直接接続することにより、ゲート電極に通電して電気的インピーダンスを計測する方法が開示される。
【0005】
更に、ガス種の判別もガスセンサの課題として重要である。特定のガス種にしか反応しないセンサ材料の開発なども行われているが、センサの加熱方法と関連する技術としては例えば第10回化学センサ国際会議技術抄録集144から145ページ(The 10th International Meeting on Chemical Sensors, Technical Digest, pp. 144-145)(非特許文献4)に記載されているように、センサ加熱の制御によってセンサの温度を正弦波的に変化させ、温度とセンサ出力の位相差からガスの種類を推定する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特許第2848818号公報
【特許文献2】特開平9-329576号公報
【非特許文献1】センサズ アンド アクチュエータズ誌B1巻15から20ページ
【非特許文献2】ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス誌40巻L1232からL1234ページ
【非特許文献3】第4回IEEEセンサ会議録159から162ページ
【非特許文献4】第10回化学センサ国際会議技術抄録集144から145ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
環境温度や湿度の影響を抑止し、同時に速い応答速度を得るためにはガスセンサを加熱する必要がある。一方で、特にセンサの電源として電池を用いる場合など、センサの消費電力を最小化したいとの相反する要求もある。更に、室温状態にあるセンサを急速に加熱して用いる場合や、センサの温度を時間的に変化させてガス種の判別を行う場合など、加熱に対するセンサ温度の応答性を高めたいという要求もある。
【0008】
本発明の目的は、FET型のガスセンサであって加熱時の消費電力を最小化するガスセンサ、更には加熱時のセンサ温度の応答を早くし、ガス種の判別も可能ならしめることができるガスセンサ、及びガス検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明においては、ガス濃度に依存してゲート電位が変化する電界効果型トランジスタを用いたガスセンサであって、ソース・ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、このゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、この感応電極に接続され、相異なる電位が印加されることにより、感応電極に加熱電流を流し温度を上昇させる二つの端子と、感応電極の温度を検出する温度検出部とを有するガスセンサを提供する。また、本発明においては、ガス濃度に依存してゲート電位が変化するFET型のガスセンサであって、ソース、ドレインにそれぞれ接続されたソース電極、ドレイン電極と、ソース、ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、感応電極に接続され、感応電極に電流を流して感応電極の温度を上昇させる二つの端子と、電界効果型トランジスタが形成される基板と同一基板に形成され、感応電極の温度を検出するダイオードを含む温度検出部とを有するFET型のガスセンサを提供する。
【0010】
更に、ガスの濃度を検出するガス検知システムであって、ソース、ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、感応電極に接続され、感応電極に電流を流して温度を上昇させる二つの端子と、感応電極の温度を検出する温度検出部とからなる少なくとも一個のFET型のガスセンサと、ガスセンサの端子間に与える電位を制御する加熱制御部と、温度検出部に接続される温度読み出し回路と、ガスセンサのソース、ドレインに接続される出力読み出し回路と、これら加熱制御部と温度読み出し回路、出力読み出し回路が共通して接続される制御装置とからなるガス検知システムを提供する。
【0011】
感応電極に2ヶ所以上の端子を接続して、この端子に接続された加熱制御部を用いて電流を流すことにより、感応電極そのものを発熱体、ヒータとして用い、感応電極の温度を50℃以上、好適には100℃程度に上昇させる。こうして加熱された感応電極の温度は、温度検出部によって検出される。なお、本発明における感応電極とは、ゲート電極そのものを一層、または多層の感応膜で形成したり、ゲート電極に感応膜を成膜する等して構成する。また、感応電極はゲート絶縁膜上に形成される場合のみならず、ゲート絶縁膜上以外に形成される場合もある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発熱体と加熱すべき部分が同一なので加熱すべき部分の熱容量は最小となり、加熱電力が大幅に削減できる。即ち、FET型ガスセンサにおいては、ゲート絶縁膜上の感応電極が加熱されていれば十分であるので、感応電極に接続された二端子間に加熱電流を流して、直接感応電極を効率よく加熱することができ、消費電力の削減を図ることができる。また加熱に対する温度の応答も速いので、感応電極の温度変化を利用したガス種の判別も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のFET型ガスセンサ、及びガス検知システムの実施例を図面を用いて詳述する。
【0014】
図1から図7は本発明のFET型ガスセンサの種々の実施例を等価回路図で示した図である。図8は比較のための図であり、従来のFET型ガスセンサの構成の等価回路図である。
【0015】
まず、図8に示す従来の構成では、ヒータ4がどこに配置されているかにかかわらず、ヒータ4と感応電極3は電気的に独立している。感応電極3にはゲート電位を加えるための端子が接続されているが、感応電極3の電位はある一定値に保たれ、感応電極となるゲートに加熱のための電流は流れない。
【0016】
これに対して本発明の実施例の構成では、感応電極となるゲートに加熱のための電流が流れる。図1は第一の実施例の等価回路図である。図1に示す第一の実施例の構造において、感応電極31に加熱のための端子10、11が接続される。端子10、11間には異なる電位が与えられ、感応電極31に加熱のための電流が流れるため、感応電極31全体が発熱体となる。更に、後で説明するように、この端子10、11は温度検出部の一部を構成する場合がある。なお1、2はそれぞれFET型ガスセンサを構成するFETのソース、ドレインに接続されているソース電極(端子)、ドレイン電極(端子)を示している。このソース電極1、ドレイン電極2は、後で説明するFET出力の読み出し回路に接続され、FET出力の電気特性の変化からガスの濃度を読み出すために用いられる。
【0017】
図2に示す第二の実施例では、端子10、11の一方、例えば端子10は、読み出し回路などの接地電極と共通である構造を持つ。図3に示す第三の実施例のように、FETのソース電極1が接地されている場合は、端子10をソース電極1に接続すれば構成はより簡単になる。図1から図3の構成の場合は、感応電極31全体が発熱体として機能しているので、FETのゲートの電位に端子10と端子11の電位差と同じ電位分布が生じる。端子10が接地されている場合、端子11に加熱制御のための電位が印加される。
【0018】
FETの特性上、ゲート電位に分布が少ないほうが望ましい場合は、図4、図5に示す第四、第五の実施例の構成が有効である。図4に示す第四の実施例のように、感応電極31の発熱体の一部だけがゲート絶縁膜上に位置することにより、発熱に必要な電位差の一部しかゲート電位に影響を与えないように構成できる。また、図5に示す第五の実施例のように、感応電極31の発熱体となる部分31Aとゲート絶縁膜の位置をずらして熱伝導でゲート絶縁膜上の感応電極31を加熱するようにしてもよい。図4、図5のいずれの構成であっても、ゲート絶縁膜上の感応電極31には加熱用の電流が流れている。
【0019】
さて、本実施例におけるFET型ガスセンサの温度を検出・制御するため、温度検出部が必要である。この温度検出部として、感応電極そのものを用いて抵抗温度計を構成する、或いは同一基板上に形成したダイオード等の温度計用センサを用いる。後者の場合、後に詳述するように、感応電極をゲート絶縁膜の上だけでなくダイオード等の温度計用センサの上または下にも展延して成膜し、感応電極の温度を直接モニターすることが可能となる。
【0020】
まず、最も簡単な温度検出部として、感応電極自身を抵抗温度計として用いるものを説明する。二つの端子10、11から感応電極31に流す電流と、端子10、11間の電位差の比から感応電極31の温度を換算する。換算処理は、後で説明する温度読み出し回路等で実行される。感応電極31の抵抗値が配線に比べて十分大きければ、図1〜図5に示した実施例のように2端子10、11それ自身を温度検出部として用いる構成であってよい。
【0021】
抵抗温度計を用いる場合、より正確に温度を計測するためには、図6に示す第六の実施例が好適である。すなわち、図6に示すように、感応電極31に端子10、11に加えて端子12、13を設け、このうちの一対の2端子10、11を上述の実施例同様、電流印加用として用い、他の一対の2端子12、13を電位差計測用とする構成を取ることで、より正確に感応電極の抵抗のみが計測でき、正確な温度検出が可能となる。
【0022】
次に、第七の実施例として、感応電極31とは別に、ガスセンサが形成される基板と同一の基板に形成した温度計用センサで、ガスセンサの温度検出部を構成する実施例を説明する。図7に温度検出部としてダイオードからなる温度計用センサを用いた第七の実施例の等価回路図を示す。図7にあって、50はダイオード、51、52はダイオード50の端子である。他の回路構成は図4に示す等価回路のものと同じである。勿論、図1〜3、図5に示す他の回路構成図とダイオードの温度計用センサとの組み合わせであっても良い。
【0023】
図7の実施例のガスセンサの基板上の構成を図9の平面図を用いて説明する。図9はガスセンサの回路要素全体の平面構成を示している。図9において、FETのソース41とドレイン42の間にゲート絶縁膜43が位置する。温度計用センサであるダイオード50はFETの近傍で、FETのチャネル領域の幅方向の延長線上に配置されている。温度発熱体である感応電極31はゲート絶縁膜43と、FETの近傍に配置されたダイオード50を覆うように成膜されている。ソース電極1、ドレイン電極2はそれぞれソース41、ドレイン42に接続されており、FET型ガスセンサのガス濃度に相当する信号を出力する。ダイオード50には電極51、52が接続されている。
【0024】
図9から明らかなように、電位印加に用いられる端子10、11は、チャネルの幅方向に伸びる発熱体である感応電極31の両端に形成されている。後でその断面構造を図示するように、ダイオードなどの温度計用センサで感応電極の温度を計測する構成では、感応電極と温度計の間に絶縁薄膜が必要になり、わずかながら温度差が生じる。しかし、ダイオードのほうが温度計としての信頼性や再現性が高いため、この第七の実施例により実用的な構成のFET型ガスセンサが実現できることになる。なお、このダイオードは通常のダイオードと同様な製法で形成される。
【0025】
さて、上述した各実施例における感応電極31の具体例について説明する。感応電極の材質は検知対象のガス種によって異なり、例えば水素検知の場合はパラジウム、白金、またはパラジウムや白金を含む合金が良く用いられる。触媒金属の厚さは一般に100nm程度以下と薄く、また幅はゲート絶縁膜の長さより若干広い程度、たとえば数μmから数十μm程度なので、図9にその一例を示す通り、電流が感応電極31の長手(長さ)方向、即ちチャネル領域の幅方向に流れるように端子10、11を配置すれば、端子10、11間の感応電極31の抵抗は配線にくらべて十分大きくなる。
【0026】
したがって、端子10、11間に電圧を与えると、もっぱら発熱体である感応電極31が発熱し、50℃以上、好適には100℃程度の温度とすることができる。またダイオード50の温度は、ほぼFETの温度と同じになる。感応電極31の幅を十分狭くすれば基板に漏洩する熱量はわずかで、加熱される領域は感応電極31、ゲート絶縁膜、ダイオード50、およびこれらの周辺に限定され、効率のよい加熱が可能である。例えば、感応電極31に厚さ90nm、幅150μm、長さ1.5mmのパラジウムを用いると、抵抗値は室温で約40Ωとなる。基板の大きさが7.5mm×3mm、厚さ0.7mmと比較的大きくても、発熱体である感応電極31に0.2W程度の電力を与えることによりFETとその周辺は100℃程度まで加熱できる。この結果、感応電極31の抵抗値は50Ω近くまで上昇する。
【0027】
図3に示した第三の実施例の等価回路図に相当するセンサ部の構成を図10に示した。図10より明らかなように、ソース電極1と感応電極の端子の一方が共通になっている点が、図9に示した実施例と異なっているが、その他は同一である。
【0028】
次に、図5に示した第五の実施例の等価回路図に相当する構成を図11に示した。図11から明らかなように、感応電極31の一部31Aの幅が狭くなっている。抵抗は幅が狭い部分ほど大きくなるため、ゲート絶縁膜43上の感応電極31は幅広であるため比較的低抵抗であり、電圧勾配は小さくなる。この構成で発熱体として発熱するのは主に幅の狭い部分31Aであるが、熱伝導によりゲート絶縁膜43やダイオード50上の感応電極31も加熱される。この発熱体31Aとして機能する幅狭い部分も、感応電極31と同一の材質でよいが感応膜として機能する必要はないため、表面を絶縁膜で覆っていてもかまわない。
【0029】
さて、図12から図14は上述した本発明の実施例の断面構成の一例を示す図である。図12にはシリコン基板70上にFETとダイオードとから構成されるガスセンサ部101と、読み出し回路102、A/D(アナログ/デジタル)コンバータ103が形成された実施例を示す。加熱すべきガスセンサ部101の直下にはバックエッチング71が施されており、より効率よく加熱できる。図12内の楕円図内にはFET型ガスセンサの断面略図を示している。この図は、図9のガスセンサの実施例の平面図における断面A−A´に相当する部分の断面図である。ソース41、ドレイン42の間に位置するゲート絶縁膜43の上に、それ自体が発熱体である感応電極31が成膜されている。このセンサの製造は、通常の半導体プロセスを用いて行われ、上述の通り、検知対象のガス種によって感応電極31の材質を異ならせることになる。
【0030】
同様に、図13と図14はそれぞれ、FET型ガスセンサの温度検出部を構成するダイオード50部分の実施例の断面略図を示している。この図は図9のガスセンサの断面B−B´に相当する断面略図である。図13に示す実施例では、基板中に形成されたダイオード50の上に絶縁膜53を介して、発熱体である感応電極31が位置する構成、図14に示す実施例ではダイオード50の下に発熱体となる感応電極31が位置する構成である。ダイオード部分では発熱体として機能し、感応電極として機能する必要はなく、外気に対して露出している必要はないので、図14のごとく基板の内部に位置していても良いこととなる。
【0031】
以上説明したガスセンサの種々の実施例から明らかなように、感応電極に少なくとも二つの端子を形成し、この端子に加熱制御部から加熱電流を流すことにより、感応電極そのものを発熱体、ヒータとして用いる。よって、FET型ガスセンサの感応電極は発熱体としての機能を有することとなるが、上述してきたように、感応電極の全体が発熱体である必要はなく、また、感応電極の全体がガス感応機能を有する必要はない。言い換えるなら、感応電極の少なくとも一部が発熱体として機能し、感応電極の少なくとも一部が大気に露出する構造とすること等によってガス感応機能を発揮できればよい。
【0032】
次に、これまで説明したガスセンサを利用したガス検知システムの一実施例を図15を用いて説明する。使用するガスセンサの構造は、図9に示した実施例のFET型ガスセンサとダイオードの組を例示するが、他の実施例の構造を用いて良いことは言うまでも無い。また、ガスセンサを3個用いる場合を例示するが、この個数は何個であっても良く、例えば検出するガス種の数によって決められる。
【0033】
図15から明らかなように、本実施例にあっては、3組A、B、Cのガスセンサが同一のシリコン基板110上に形成されている。各組にはそれぞれ温度の読み出し回路A112、B113、C114、FETの出力読み出し回路A115、B116、C117、加熱制御部A118、B119、C120が接続されている。FETの出力読み出し回路A115、B116、C117はFET出力の電気特性の変化からガスの濃度を検出する。
【0034】
これらの回路や装置は共通の制御装置111に接続され、この制御装置111で制御されている。即ち、加熱制御部、FET型ガスセンサの出力を読み出す読み出し回路、温度の読み出し回路は、すべて統一された制御装置で制御されることにより、効率の良い制御が可能となる。制御装置111は、例えばマイクロコンピュータチップなどを用いたコントローラで構成される。各読み出し回路112〜117と加熱制御部118〜120、制御回路111とのインターフェースには、図示が省略してあるが、必要に応じてA/Dコンバータが設置される。各加熱制御部A118、B119、C120は、ガスセンサA、B、Cの各々の感応電極に形成された端子に接続され加熱制御を行う。また、温度読み出し回路A、B、Cは各ガスセンサA、B、Cのダイオードの一対の端子に接続され温度検出部を構成する。
【0035】
さて、本実施例の構成のガス検知システムでは、例えばガスセンサA、B、CのFETの感応電極近傍の構造を異ならせれば、各々のFETの出力の差を制御装置111で処理し、ガス種の判別が可能となる。例えば、全てのFETで感応電極そのものはパラジウム(Palladium:Pd)を用いるものとして、ガスセンサAではパラジウム単体、ガスセンサBではパラジウムとゲート絶縁膜の間に1μm程度の厚さの過フッ化イオン交換樹脂を挿入した構造、ガスセンサCではパラジウムとゲート絶縁膜の間に1μm程度の厚さのYSZ(Yttria-Stabilized Zirconia:イットリウム安定化ジルコニア)を挿入した構造にする。ガスセンサBでは水素ガスへの選択性が高くなり、ガスセンサCでは酸素への応答が高くなるため、水素ガスとメタンやエタン、一酸化炭素との判別がより容易となる。
【0036】
また、FETの温度変化に対するFET出力の追随特性がガス種ごとに異なる性質を利用する方法もある。即ち、ガスセンサA、B、CのFETの構成が全く同一であっても、図15の加熱制御部A118、B119、C120のそれぞれの枠内に模式的に示したように、加熱制御を各々異ならせることによりガス種の判別が可能となる。加熱制御を各々異ならせるとは、それぞれのガスセンサの発熱体に印加する電力に変化を与えることで実現できる。このような加熱制御部それぞれから出力する電力の制御は、制御装置111の制御によって実現される。
【0037】
FETの温度変化に対するFET出力の追随特性はガスの種類と濃度の双方に依存する。そこで、例えばガスセンサAのセンサは、加熱制御部A118内に模式的に示すように、ある一定温度にできるだけ早く達してその温度を保つようにPID(Proportional・Integral・Differential)制御して、ガスセンサ出力の飽和値からガスの濃度を判定するようにする。また、ガスセンサBのセンサは、対応する発熱体に印加する電力を加熱制御部B119内に模式的に示すように制御することにより、急速に加熱してセンサ出力の追随を計測するようにする。更に、ガスセンサCのガスセンサは加熱制御部C120内に模式的に示すように、温度を周期的に増減させてその出力の位相遅れを計測するようにすればガス種が判別できる。
【0038】
図15から明らかなように、本実施例の構造によれば、加熱領域が各センサの発熱体として機能する感応電極に限定されているため各FETは事実上熱分離されており、各FETの温度応答が速いこと、更にこの感応電極の温度をその近傍に設置されたダイオードと温度読み出し回路112〜113を含む温度検出部で検出することにより、温度変化を利用したガス種の分離を短時間に行うことができる。
【0039】
以上、種々のガスセンサ、及びガス検知システムの実施例を詳述してきたが、本発明は上述した実施例に限定されるものでないことは言うまでも無い。上述の実施例のように特定の位置におけるガス濃度を計測するだけでなく、施設全体のガスの濃度分布を計測したり、この結果を用いて漏洩拡散のモニタリングや漏洩箇所の特定を行ったりする検知システムが今後普及することが予想されるが、上述の実施例はそのような検知システムにも適用できる。
【0040】
例えば、燃料電池自動車に水素ガスを供給する水素ステーションは、市街地に建設されて高い安全性が要求される点から、こういった検知システムを必要とする施設の好例である。多数のガスセンサを任意の位置に設置するには各センサを電池駆動にしたり、無線通信で情報をやりとりしたりして各センサと指示・表示装置間の配線をなくすことが望ましい。この場合、特にガスセンサには低消費電力であることが求められる。また水素ガスセンサを燃料電池自動車に搭載する場合でも、電源は自動車のバッテリーであり、やはりガスセンサには低消費電力であることが要求される。センサを長期間加熱したままにしておくと、センサの寿命を縮める可能性があることにも鑑み、本出願人は、通常はセンサを加熱せずに室温に保持しておき、ガスの漏洩の可能性がある場合にセンサのヒータに通電して急速に加熱する技術を開発し、特願2004-341897号「ガス検知システム」において開示しているが、そのようなガス検知システムにも上述してきた種々のガスセンサ等が適用可能である。
【0041】
上述した種々の実施例から明らかなように、感応電極に加熱電流を流すことにより、感応電極そのものを発熱体、ヒータとして用い、且つ温度検出部で感応電極の温度を検出しながら温度制御を行うことが可能となり、加熱電力が大幅に削減でき、更には感応電極の温度変化を利用したガス種の判別ができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第一の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図2】本発明の第二の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図3】本発明の第三の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図4】本発明の第四の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図5】本発明の第五の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図6】本発明の第六の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図7】本発明の第七の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図8】従来構造のガスセンサの等価回路図。
【図9】図7に示した本発明の実施例のガスセンサの等価回路に相当する構成の一実施例を示す平面図。
【図10】本発明の第三の実施例のガスセンサの構造を示す図。
【図11】本発明の第五の実施例のガスセンサの構造を示す図。
【図12】本発明のガスセンサの断面構成の一実施例を示す図であり、楕円内は図9のA-A'に相当するFETセンサ部分の断面略図。
【図13】本発明のガスセンサの断面構成の一実施例を示す図であり、図9のB-B'に相当するダイオード温度計50部分の断面略図。
【図14】本発明のガスセンサの断面構成の他の実施例を示す図であり、図9のB-B'に相当するダイオード温度計50部分の断面略図。
【図15】本発明のガス検知システムの一実施例を示す図。
【符号の説明】
【0043】
1…ソース電極、2…ドレイン電極、3…ゲート電極、4…ヒータ、10…感応電極の端子、11…感応電極の端子、31…ヒータを兼ねた感応電極、41…ソース、42…ドレイン、43…ゲート絶縁膜、50…ダイオード、51…ダイオード用電極、52…ダイオード用電極、70…シリコン基板、71…シリコン基板のバックエッチ部、101…ガスセンサ部、102…駆動回路部分、103…A/Dコンバータなどの周辺回路、110…シリコン基板、111…制御装置、112、113、114…温度読み出し回路、115、116、117…出力読み出し回路、118、119、120…加熱制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタを用いたガスセンサと、これを用いたガス検知システムに関し、特に消費電力が小さく寿命の長いセンサと、ガスの種類の判別の可能なガス検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサにはさまざまな種類があり、例えば可燃性ガスセンサに関しては、接触燃焼式、半導体式、熱伝導式、赤外線吸収式などが知られている。また、薄膜や厚膜を用いた方式として、センサズ アンド アクチュエータズ誌B1巻(1990)15から20ページ(Sensors and Actuators, Vol. B1(1990), pp. 15-20)(非特許文献1)に記載の電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor、以下、FETと記す)方式(FETのゲート電極に感応電極を成膜し、検知対象ガスによるゲート電位の変化をFETで読み出す方式)や、ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス誌40巻(2001)、L1232からL1234ページ(Japanese Journal of Applied Physics Vol. 40(2001), pp. L1232-1234)(非特許文献2)に記載の熱電式(検知対象ガスによる熱電変換膜の温度上昇を電圧として読み出す方式)が提案されている。
【0003】
ほとんどのガスセンサは、電気化学的な反応を促進するため100℃から400℃程度に加熱して用いる。FET方式の場合もFETが形成されている素子全体、あるいはFET周辺を局所的に加熱し、FET部分を100℃程度の一定温度に保った状態で用いることが多い。これにより、第4回IEEEセンサ会議録159から162ページ(The 4th IEEE Conference on Sensors, pp. 159-162)(非特許文献3)に記載のように、感応電極部分の温度がFETの電気特性に与える影響を排除し、同時に応答速度を速める効果がある。
【0004】
このFET方式のガスセンサの場合、加熱すべき部分はFETのゲート絶縁膜上に形成される感応電極である。そこで、感応電極付近にヒータを配置する構成がいくつか知られている。例えば、特許第2848818号公報(特許文献1)ではソース・ドレイン電極の外側に延長した、露出表面を持つ感応電極となるゲート電極部と、該ゲート電極部に絶縁膜を介して配設された加熱部を有するFETセンサが開示されている。また特開平9-329576号公報(特許文献2)ではゲート電極の温度を均一に制御し、センサの応答時間および感度の改善を図るために、ゲート電極の上にヒータを配置している。なお、特開平9-329576号公報(特許文献2)のセンサはゲート電極の表面電位と電気的インピーダンスの双方を計測する。このため表面電位を読み出すためのFET構造の他に、電気接続部をゲート電極に直接接続することにより、ゲート電極に通電して電気的インピーダンスを計測する方法が開示される。
【0005】
更に、ガス種の判別もガスセンサの課題として重要である。特定のガス種にしか反応しないセンサ材料の開発なども行われているが、センサの加熱方法と関連する技術としては例えば第10回化学センサ国際会議技術抄録集144から145ページ(The 10th International Meeting on Chemical Sensors, Technical Digest, pp. 144-145)(非特許文献4)に記載されているように、センサ加熱の制御によってセンサの温度を正弦波的に変化させ、温度とセンサ出力の位相差からガスの種類を推定する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特許第2848818号公報
【特許文献2】特開平9-329576号公報
【非特許文献1】センサズ アンド アクチュエータズ誌B1巻15から20ページ
【非特許文献2】ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス誌40巻L1232からL1234ページ
【非特許文献3】第4回IEEEセンサ会議録159から162ページ
【非特許文献4】第10回化学センサ国際会議技術抄録集144から145ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
環境温度や湿度の影響を抑止し、同時に速い応答速度を得るためにはガスセンサを加熱する必要がある。一方で、特にセンサの電源として電池を用いる場合など、センサの消費電力を最小化したいとの相反する要求もある。更に、室温状態にあるセンサを急速に加熱して用いる場合や、センサの温度を時間的に変化させてガス種の判別を行う場合など、加熱に対するセンサ温度の応答性を高めたいという要求もある。
【0008】
本発明の目的は、FET型のガスセンサであって加熱時の消費電力を最小化するガスセンサ、更には加熱時のセンサ温度の応答を早くし、ガス種の判別も可能ならしめることができるガスセンサ、及びガス検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明においては、ガス濃度に依存してゲート電位が変化する電界効果型トランジスタを用いたガスセンサであって、ソース・ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、このゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、この感応電極に接続され、相異なる電位が印加されることにより、感応電極に加熱電流を流し温度を上昇させる二つの端子と、感応電極の温度を検出する温度検出部とを有するガスセンサを提供する。また、本発明においては、ガス濃度に依存してゲート電位が変化するFET型のガスセンサであって、ソース、ドレインにそれぞれ接続されたソース電極、ドレイン電極と、ソース、ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、感応電極に接続され、感応電極に電流を流して感応電極の温度を上昇させる二つの端子と、電界効果型トランジスタが形成される基板と同一基板に形成され、感応電極の温度を検出するダイオードを含む温度検出部とを有するFET型のガスセンサを提供する。
【0010】
更に、ガスの濃度を検出するガス検知システムであって、ソース、ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、感応電極に接続され、感応電極に電流を流して温度を上昇させる二つの端子と、感応電極の温度を検出する温度検出部とからなる少なくとも一個のFET型のガスセンサと、ガスセンサの端子間に与える電位を制御する加熱制御部と、温度検出部に接続される温度読み出し回路と、ガスセンサのソース、ドレインに接続される出力読み出し回路と、これら加熱制御部と温度読み出し回路、出力読み出し回路が共通して接続される制御装置とからなるガス検知システムを提供する。
【0011】
感応電極に2ヶ所以上の端子を接続して、この端子に接続された加熱制御部を用いて電流を流すことにより、感応電極そのものを発熱体、ヒータとして用い、感応電極の温度を50℃以上、好適には100℃程度に上昇させる。こうして加熱された感応電極の温度は、温度検出部によって検出される。なお、本発明における感応電極とは、ゲート電極そのものを一層、または多層の感応膜で形成したり、ゲート電極に感応膜を成膜する等して構成する。また、感応電極はゲート絶縁膜上に形成される場合のみならず、ゲート絶縁膜上以外に形成される場合もある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発熱体と加熱すべき部分が同一なので加熱すべき部分の熱容量は最小となり、加熱電力が大幅に削減できる。即ち、FET型ガスセンサにおいては、ゲート絶縁膜上の感応電極が加熱されていれば十分であるので、感応電極に接続された二端子間に加熱電流を流して、直接感応電極を効率よく加熱することができ、消費電力の削減を図ることができる。また加熱に対する温度の応答も速いので、感応電極の温度変化を利用したガス種の判別も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のFET型ガスセンサ、及びガス検知システムの実施例を図面を用いて詳述する。
【0014】
図1から図7は本発明のFET型ガスセンサの種々の実施例を等価回路図で示した図である。図8は比較のための図であり、従来のFET型ガスセンサの構成の等価回路図である。
【0015】
まず、図8に示す従来の構成では、ヒータ4がどこに配置されているかにかかわらず、ヒータ4と感応電極3は電気的に独立している。感応電極3にはゲート電位を加えるための端子が接続されているが、感応電極3の電位はある一定値に保たれ、感応電極となるゲートに加熱のための電流は流れない。
【0016】
これに対して本発明の実施例の構成では、感応電極となるゲートに加熱のための電流が流れる。図1は第一の実施例の等価回路図である。図1に示す第一の実施例の構造において、感応電極31に加熱のための端子10、11が接続される。端子10、11間には異なる電位が与えられ、感応電極31に加熱のための電流が流れるため、感応電極31全体が発熱体となる。更に、後で説明するように、この端子10、11は温度検出部の一部を構成する場合がある。なお1、2はそれぞれFET型ガスセンサを構成するFETのソース、ドレインに接続されているソース電極(端子)、ドレイン電極(端子)を示している。このソース電極1、ドレイン電極2は、後で説明するFET出力の読み出し回路に接続され、FET出力の電気特性の変化からガスの濃度を読み出すために用いられる。
【0017】
図2に示す第二の実施例では、端子10、11の一方、例えば端子10は、読み出し回路などの接地電極と共通である構造を持つ。図3に示す第三の実施例のように、FETのソース電極1が接地されている場合は、端子10をソース電極1に接続すれば構成はより簡単になる。図1から図3の構成の場合は、感応電極31全体が発熱体として機能しているので、FETのゲートの電位に端子10と端子11の電位差と同じ電位分布が生じる。端子10が接地されている場合、端子11に加熱制御のための電位が印加される。
【0018】
FETの特性上、ゲート電位に分布が少ないほうが望ましい場合は、図4、図5に示す第四、第五の実施例の構成が有効である。図4に示す第四の実施例のように、感応電極31の発熱体の一部だけがゲート絶縁膜上に位置することにより、発熱に必要な電位差の一部しかゲート電位に影響を与えないように構成できる。また、図5に示す第五の実施例のように、感応電極31の発熱体となる部分31Aとゲート絶縁膜の位置をずらして熱伝導でゲート絶縁膜上の感応電極31を加熱するようにしてもよい。図4、図5のいずれの構成であっても、ゲート絶縁膜上の感応電極31には加熱用の電流が流れている。
【0019】
さて、本実施例におけるFET型ガスセンサの温度を検出・制御するため、温度検出部が必要である。この温度検出部として、感応電極そのものを用いて抵抗温度計を構成する、或いは同一基板上に形成したダイオード等の温度計用センサを用いる。後者の場合、後に詳述するように、感応電極をゲート絶縁膜の上だけでなくダイオード等の温度計用センサの上または下にも展延して成膜し、感応電極の温度を直接モニターすることが可能となる。
【0020】
まず、最も簡単な温度検出部として、感応電極自身を抵抗温度計として用いるものを説明する。二つの端子10、11から感応電極31に流す電流と、端子10、11間の電位差の比から感応電極31の温度を換算する。換算処理は、後で説明する温度読み出し回路等で実行される。感応電極31の抵抗値が配線に比べて十分大きければ、図1〜図5に示した実施例のように2端子10、11それ自身を温度検出部として用いる構成であってよい。
【0021】
抵抗温度計を用いる場合、より正確に温度を計測するためには、図6に示す第六の実施例が好適である。すなわち、図6に示すように、感応電極31に端子10、11に加えて端子12、13を設け、このうちの一対の2端子10、11を上述の実施例同様、電流印加用として用い、他の一対の2端子12、13を電位差計測用とする構成を取ることで、より正確に感応電極の抵抗のみが計測でき、正確な温度検出が可能となる。
【0022】
次に、第七の実施例として、感応電極31とは別に、ガスセンサが形成される基板と同一の基板に形成した温度計用センサで、ガスセンサの温度検出部を構成する実施例を説明する。図7に温度検出部としてダイオードからなる温度計用センサを用いた第七の実施例の等価回路図を示す。図7にあって、50はダイオード、51、52はダイオード50の端子である。他の回路構成は図4に示す等価回路のものと同じである。勿論、図1〜3、図5に示す他の回路構成図とダイオードの温度計用センサとの組み合わせであっても良い。
【0023】
図7の実施例のガスセンサの基板上の構成を図9の平面図を用いて説明する。図9はガスセンサの回路要素全体の平面構成を示している。図9において、FETのソース41とドレイン42の間にゲート絶縁膜43が位置する。温度計用センサであるダイオード50はFETの近傍で、FETのチャネル領域の幅方向の延長線上に配置されている。温度発熱体である感応電極31はゲート絶縁膜43と、FETの近傍に配置されたダイオード50を覆うように成膜されている。ソース電極1、ドレイン電極2はそれぞれソース41、ドレイン42に接続されており、FET型ガスセンサのガス濃度に相当する信号を出力する。ダイオード50には電極51、52が接続されている。
【0024】
図9から明らかなように、電位印加に用いられる端子10、11は、チャネルの幅方向に伸びる発熱体である感応電極31の両端に形成されている。後でその断面構造を図示するように、ダイオードなどの温度計用センサで感応電極の温度を計測する構成では、感応電極と温度計の間に絶縁薄膜が必要になり、わずかながら温度差が生じる。しかし、ダイオードのほうが温度計としての信頼性や再現性が高いため、この第七の実施例により実用的な構成のFET型ガスセンサが実現できることになる。なお、このダイオードは通常のダイオードと同様な製法で形成される。
【0025】
さて、上述した各実施例における感応電極31の具体例について説明する。感応電極の材質は検知対象のガス種によって異なり、例えば水素検知の場合はパラジウム、白金、またはパラジウムや白金を含む合金が良く用いられる。触媒金属の厚さは一般に100nm程度以下と薄く、また幅はゲート絶縁膜の長さより若干広い程度、たとえば数μmから数十μm程度なので、図9にその一例を示す通り、電流が感応電極31の長手(長さ)方向、即ちチャネル領域の幅方向に流れるように端子10、11を配置すれば、端子10、11間の感応電極31の抵抗は配線にくらべて十分大きくなる。
【0026】
したがって、端子10、11間に電圧を与えると、もっぱら発熱体である感応電極31が発熱し、50℃以上、好適には100℃程度の温度とすることができる。またダイオード50の温度は、ほぼFETの温度と同じになる。感応電極31の幅を十分狭くすれば基板に漏洩する熱量はわずかで、加熱される領域は感応電極31、ゲート絶縁膜、ダイオード50、およびこれらの周辺に限定され、効率のよい加熱が可能である。例えば、感応電極31に厚さ90nm、幅150μm、長さ1.5mmのパラジウムを用いると、抵抗値は室温で約40Ωとなる。基板の大きさが7.5mm×3mm、厚さ0.7mmと比較的大きくても、発熱体である感応電極31に0.2W程度の電力を与えることによりFETとその周辺は100℃程度まで加熱できる。この結果、感応電極31の抵抗値は50Ω近くまで上昇する。
【0027】
図3に示した第三の実施例の等価回路図に相当するセンサ部の構成を図10に示した。図10より明らかなように、ソース電極1と感応電極の端子の一方が共通になっている点が、図9に示した実施例と異なっているが、その他は同一である。
【0028】
次に、図5に示した第五の実施例の等価回路図に相当する構成を図11に示した。図11から明らかなように、感応電極31の一部31Aの幅が狭くなっている。抵抗は幅が狭い部分ほど大きくなるため、ゲート絶縁膜43上の感応電極31は幅広であるため比較的低抵抗であり、電圧勾配は小さくなる。この構成で発熱体として発熱するのは主に幅の狭い部分31Aであるが、熱伝導によりゲート絶縁膜43やダイオード50上の感応電極31も加熱される。この発熱体31Aとして機能する幅狭い部分も、感応電極31と同一の材質でよいが感応膜として機能する必要はないため、表面を絶縁膜で覆っていてもかまわない。
【0029】
さて、図12から図14は上述した本発明の実施例の断面構成の一例を示す図である。図12にはシリコン基板70上にFETとダイオードとから構成されるガスセンサ部101と、読み出し回路102、A/D(アナログ/デジタル)コンバータ103が形成された実施例を示す。加熱すべきガスセンサ部101の直下にはバックエッチング71が施されており、より効率よく加熱できる。図12内の楕円図内にはFET型ガスセンサの断面略図を示している。この図は、図9のガスセンサの実施例の平面図における断面A−A´に相当する部分の断面図である。ソース41、ドレイン42の間に位置するゲート絶縁膜43の上に、それ自体が発熱体である感応電極31が成膜されている。このセンサの製造は、通常の半導体プロセスを用いて行われ、上述の通り、検知対象のガス種によって感応電極31の材質を異ならせることになる。
【0030】
同様に、図13と図14はそれぞれ、FET型ガスセンサの温度検出部を構成するダイオード50部分の実施例の断面略図を示している。この図は図9のガスセンサの断面B−B´に相当する断面略図である。図13に示す実施例では、基板中に形成されたダイオード50の上に絶縁膜53を介して、発熱体である感応電極31が位置する構成、図14に示す実施例ではダイオード50の下に発熱体となる感応電極31が位置する構成である。ダイオード部分では発熱体として機能し、感応電極として機能する必要はなく、外気に対して露出している必要はないので、図14のごとく基板の内部に位置していても良いこととなる。
【0031】
以上説明したガスセンサの種々の実施例から明らかなように、感応電極に少なくとも二つの端子を形成し、この端子に加熱制御部から加熱電流を流すことにより、感応電極そのものを発熱体、ヒータとして用いる。よって、FET型ガスセンサの感応電極は発熱体としての機能を有することとなるが、上述してきたように、感応電極の全体が発熱体である必要はなく、また、感応電極の全体がガス感応機能を有する必要はない。言い換えるなら、感応電極の少なくとも一部が発熱体として機能し、感応電極の少なくとも一部が大気に露出する構造とすること等によってガス感応機能を発揮できればよい。
【0032】
次に、これまで説明したガスセンサを利用したガス検知システムの一実施例を図15を用いて説明する。使用するガスセンサの構造は、図9に示した実施例のFET型ガスセンサとダイオードの組を例示するが、他の実施例の構造を用いて良いことは言うまでも無い。また、ガスセンサを3個用いる場合を例示するが、この個数は何個であっても良く、例えば検出するガス種の数によって決められる。
【0033】
図15から明らかなように、本実施例にあっては、3組A、B、Cのガスセンサが同一のシリコン基板110上に形成されている。各組にはそれぞれ温度の読み出し回路A112、B113、C114、FETの出力読み出し回路A115、B116、C117、加熱制御部A118、B119、C120が接続されている。FETの出力読み出し回路A115、B116、C117はFET出力の電気特性の変化からガスの濃度を検出する。
【0034】
これらの回路や装置は共通の制御装置111に接続され、この制御装置111で制御されている。即ち、加熱制御部、FET型ガスセンサの出力を読み出す読み出し回路、温度の読み出し回路は、すべて統一された制御装置で制御されることにより、効率の良い制御が可能となる。制御装置111は、例えばマイクロコンピュータチップなどを用いたコントローラで構成される。各読み出し回路112〜117と加熱制御部118〜120、制御回路111とのインターフェースには、図示が省略してあるが、必要に応じてA/Dコンバータが設置される。各加熱制御部A118、B119、C120は、ガスセンサA、B、Cの各々の感応電極に形成された端子に接続され加熱制御を行う。また、温度読み出し回路A、B、Cは各ガスセンサA、B、Cのダイオードの一対の端子に接続され温度検出部を構成する。
【0035】
さて、本実施例の構成のガス検知システムでは、例えばガスセンサA、B、CのFETの感応電極近傍の構造を異ならせれば、各々のFETの出力の差を制御装置111で処理し、ガス種の判別が可能となる。例えば、全てのFETで感応電極そのものはパラジウム(Palladium:Pd)を用いるものとして、ガスセンサAではパラジウム単体、ガスセンサBではパラジウムとゲート絶縁膜の間に1μm程度の厚さの過フッ化イオン交換樹脂を挿入した構造、ガスセンサCではパラジウムとゲート絶縁膜の間に1μm程度の厚さのYSZ(Yttria-Stabilized Zirconia:イットリウム安定化ジルコニア)を挿入した構造にする。ガスセンサBでは水素ガスへの選択性が高くなり、ガスセンサCでは酸素への応答が高くなるため、水素ガスとメタンやエタン、一酸化炭素との判別がより容易となる。
【0036】
また、FETの温度変化に対するFET出力の追随特性がガス種ごとに異なる性質を利用する方法もある。即ち、ガスセンサA、B、CのFETの構成が全く同一であっても、図15の加熱制御部A118、B119、C120のそれぞれの枠内に模式的に示したように、加熱制御を各々異ならせることによりガス種の判別が可能となる。加熱制御を各々異ならせるとは、それぞれのガスセンサの発熱体に印加する電力に変化を与えることで実現できる。このような加熱制御部それぞれから出力する電力の制御は、制御装置111の制御によって実現される。
【0037】
FETの温度変化に対するFET出力の追随特性はガスの種類と濃度の双方に依存する。そこで、例えばガスセンサAのセンサは、加熱制御部A118内に模式的に示すように、ある一定温度にできるだけ早く達してその温度を保つようにPID(Proportional・Integral・Differential)制御して、ガスセンサ出力の飽和値からガスの濃度を判定するようにする。また、ガスセンサBのセンサは、対応する発熱体に印加する電力を加熱制御部B119内に模式的に示すように制御することにより、急速に加熱してセンサ出力の追随を計測するようにする。更に、ガスセンサCのガスセンサは加熱制御部C120内に模式的に示すように、温度を周期的に増減させてその出力の位相遅れを計測するようにすればガス種が判別できる。
【0038】
図15から明らかなように、本実施例の構造によれば、加熱領域が各センサの発熱体として機能する感応電極に限定されているため各FETは事実上熱分離されており、各FETの温度応答が速いこと、更にこの感応電極の温度をその近傍に設置されたダイオードと温度読み出し回路112〜113を含む温度検出部で検出することにより、温度変化を利用したガス種の分離を短時間に行うことができる。
【0039】
以上、種々のガスセンサ、及びガス検知システムの実施例を詳述してきたが、本発明は上述した実施例に限定されるものでないことは言うまでも無い。上述の実施例のように特定の位置におけるガス濃度を計測するだけでなく、施設全体のガスの濃度分布を計測したり、この結果を用いて漏洩拡散のモニタリングや漏洩箇所の特定を行ったりする検知システムが今後普及することが予想されるが、上述の実施例はそのような検知システムにも適用できる。
【0040】
例えば、燃料電池自動車に水素ガスを供給する水素ステーションは、市街地に建設されて高い安全性が要求される点から、こういった検知システムを必要とする施設の好例である。多数のガスセンサを任意の位置に設置するには各センサを電池駆動にしたり、無線通信で情報をやりとりしたりして各センサと指示・表示装置間の配線をなくすことが望ましい。この場合、特にガスセンサには低消費電力であることが求められる。また水素ガスセンサを燃料電池自動車に搭載する場合でも、電源は自動車のバッテリーであり、やはりガスセンサには低消費電力であることが要求される。センサを長期間加熱したままにしておくと、センサの寿命を縮める可能性があることにも鑑み、本出願人は、通常はセンサを加熱せずに室温に保持しておき、ガスの漏洩の可能性がある場合にセンサのヒータに通電して急速に加熱する技術を開発し、特願2004-341897号「ガス検知システム」において開示しているが、そのようなガス検知システムにも上述してきた種々のガスセンサ等が適用可能である。
【0041】
上述した種々の実施例から明らかなように、感応電極に加熱電流を流すことにより、感応電極そのものを発熱体、ヒータとして用い、且つ温度検出部で感応電極の温度を検出しながら温度制御を行うことが可能となり、加熱電力が大幅に削減でき、更には感応電極の温度変化を利用したガス種の判別ができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第一の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図2】本発明の第二の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図3】本発明の第三の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図4】本発明の第四の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図5】本発明の第五の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図6】本発明の第六の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図7】本発明の第七の実施例のガスセンサの等価回路図。
【図8】従来構造のガスセンサの等価回路図。
【図9】図7に示した本発明の実施例のガスセンサの等価回路に相当する構成の一実施例を示す平面図。
【図10】本発明の第三の実施例のガスセンサの構造を示す図。
【図11】本発明の第五の実施例のガスセンサの構造を示す図。
【図12】本発明のガスセンサの断面構成の一実施例を示す図であり、楕円内は図9のA-A'に相当するFETセンサ部分の断面略図。
【図13】本発明のガスセンサの断面構成の一実施例を示す図であり、図9のB-B'に相当するダイオード温度計50部分の断面略図。
【図14】本発明のガスセンサの断面構成の他の実施例を示す図であり、図9のB-B'に相当するダイオード温度計50部分の断面略図。
【図15】本発明のガス検知システムの一実施例を示す図。
【符号の説明】
【0043】
1…ソース電極、2…ドレイン電極、3…ゲート電極、4…ヒータ、10…感応電極の端子、11…感応電極の端子、31…ヒータを兼ねた感応電極、41…ソース、42…ドレイン、43…ゲート絶縁膜、50…ダイオード、51…ダイオード用電極、52…ダイオード用電極、70…シリコン基板、71…シリコン基板のバックエッチ部、101…ガスセンサ部、102…駆動回路部分、103…A/Dコンバータなどの周辺回路、110…シリコン基板、111…制御装置、112、113、114…温度読み出し回路、115、116、117…出力読み出し回路、118、119、120…加熱制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象ガスの濃度に依存してゲート電位が変化する電界効果型トランジスタを用いたガスセンサであって、
ソース、ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、
前記感応電極に接続され、相異なる電位を与えることにより、前記感応電極に電流を流し、前記感応電極の温度を上昇させる二つの端子と、
前記感応電極の温度を検出する温度検出部とを
有するガスセンサ。
【請求項2】
請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記ソース、ドレイン各々に接続されるソース、ドレイン電極を有し、
前記端子の一つが、前記ソース電極、前記ドレイン電極の一方と電気的に接続されているガスセンサ。
【請求項3】
請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記温度検出部は、前記端子から前記感応電極に流す電流と、前記感応電極両端の電位差を検出するガスセンサ。
【請求項4】
請求項2記載のガスセンサにおいて、
前記温度検出部は、前記端子から前記感応電極に流す電流と、前記感応電極両端の電位差を検出するガスセンサ。
【請求項5】
請求項3記載のガスセンサにおいて、
前記端子は、前記感応電極の一方の端部に接続される第1端子、第2端子と、他方の端部に接続される第3端子、第4端子とからなり、前記第1端子と前記第3端子間に電流を流し、前記温度検出部は、前記第2端子、前記第4端子を用いて前記感応電極両端間の電位差を検出するガスセンサ。
【請求項6】
請求項4記載のガスセンサにおいて、
前記端子は、前記感応電極の一方の端部に接続される第1端子、第2端子と、他方の端部に接続される第3端子、第4端子とからなり、前記第1端子と前記第3端子間に電流を流し、前記温度検出部は、前記第2端子、前記第4端子を用いて前記感応電極両端間の電位差を検出するガスセンサ。
【請求項7】
請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記温度検出部は、前記電界効果型トランジスタが形成される基板に形成されるダイオードを含むガスセンサ。
【請求項8】
請求項7記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極は、絶縁膜を介して前記温度検出部の前記ダイオードの上部にも形成されるガスセンサ。
【請求項9】
請求項7記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極は、絶縁膜を介して前記温度検出部の前記ダイオードの下部にも形成されるガスセンサ。
【請求項10】
請求項2記載のガスセンサにおいて、
前記温度検出部は、前記電界効果型トランジスタが形成される基板に形成されるダイオードを含み、前記感応電極は、絶縁膜を介して前記ダイオードの上部にも形成されるガスセンサ。
【請求項11】
請求項2記載のガスセンサにおいて、
前記温度検出部は、前記電界効果型トランジスタが形成される基板に形成されるダイオードを含み、前記感応電極は、絶縁膜を介して前記ダイオードの下部にも形成されるガスセンサ。
【請求項12】
請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極の温度を50℃以上になるよう加熱するガスセンサ。
【請求項13】
請求項2記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極の温度を50℃以上になるよう加熱するガスセンサ。
【請求項14】
ガス濃度に依存してゲート電位が変化する電界効果型トランジスタを用いたガスセンサであって、
ソース、ドレインにそれぞれ接続されたソース電極、ドレイン電極と、
前記ソース、ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、
前記感応電極に接続され、前記感応電極に電流を流し前記感応電極の温度を上昇させる二つの端子と、
前記電界効果型トランジスタが形成される基板と同一基板に形成されたダイオードを含み、前記感応電極の温度を検出する温度検出部とを
有するガスセンサ。
【請求項15】
請求項14記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極は、絶縁膜を介して前記ダイオードの上部にも形成されるガスセンサ。
【請求項16】
請求項14記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極の温度が50℃以上になるよう加熱するガスセンサ。
【請求項17】
ガスの濃度を検出するガス検知システムであって、
ソース、ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、前記感応電極に接続され、相異なる電位を与えることにより、前記感応電極に電流を流して温度を上昇させる二つの端子と、前記感応電極の温度を検出する温度検出部とからなる電界効果型トランジスタを用いたガスセンサと、
前記ガスセンサの前記端子間に与える前記電位を制御する加熱制御部と、
前記ガスセンサの前記温度検出部に接続される温度読み出し回路と、
前記ガスセンサの前記ソース、ドレインに接続される出力読み出し回路と、
前記加熱制御部と前記温度読み出し回路と前記出力読み出し回路が共通して接続される制御装置と
からなるガス検知システム。
【請求項18】
請求項17記載のガス検知システムにおいて、
前記ガスセンサは複数であり、前記加熱制御部、前記温度読み出し回路、前記出力読み出し回路は、複数の前記ガスセンサ各々に対応して設置され、
各々の前記ガスセンサの前記端子間に与える前記電位は、対応する前記加熱制御部によりそれぞれ制御されるガス検知システム。
【請求項19】
請求項17に記載のガス検知システムにおいて、
前記ガスセンサは複数であり、複数の前記ガスセンサのそれぞれが検出する検査対象ガスが異なるガス検知システム。
【請求項1】
検知対象ガスの濃度に依存してゲート電位が変化する電界効果型トランジスタを用いたガスセンサであって、
ソース、ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、
前記感応電極に接続され、相異なる電位を与えることにより、前記感応電極に電流を流し、前記感応電極の温度を上昇させる二つの端子と、
前記感応電極の温度を検出する温度検出部とを
有するガスセンサ。
【請求項2】
請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記ソース、ドレイン各々に接続されるソース、ドレイン電極を有し、
前記端子の一つが、前記ソース電極、前記ドレイン電極の一方と電気的に接続されているガスセンサ。
【請求項3】
請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記温度検出部は、前記端子から前記感応電極に流す電流と、前記感応電極両端の電位差を検出するガスセンサ。
【請求項4】
請求項2記載のガスセンサにおいて、
前記温度検出部は、前記端子から前記感応電極に流す電流と、前記感応電極両端の電位差を検出するガスセンサ。
【請求項5】
請求項3記載のガスセンサにおいて、
前記端子は、前記感応電極の一方の端部に接続される第1端子、第2端子と、他方の端部に接続される第3端子、第4端子とからなり、前記第1端子と前記第3端子間に電流を流し、前記温度検出部は、前記第2端子、前記第4端子を用いて前記感応電極両端間の電位差を検出するガスセンサ。
【請求項6】
請求項4記載のガスセンサにおいて、
前記端子は、前記感応電極の一方の端部に接続される第1端子、第2端子と、他方の端部に接続される第3端子、第4端子とからなり、前記第1端子と前記第3端子間に電流を流し、前記温度検出部は、前記第2端子、前記第4端子を用いて前記感応電極両端間の電位差を検出するガスセンサ。
【請求項7】
請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記温度検出部は、前記電界効果型トランジスタが形成される基板に形成されるダイオードを含むガスセンサ。
【請求項8】
請求項7記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極は、絶縁膜を介して前記温度検出部の前記ダイオードの上部にも形成されるガスセンサ。
【請求項9】
請求項7記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極は、絶縁膜を介して前記温度検出部の前記ダイオードの下部にも形成されるガスセンサ。
【請求項10】
請求項2記載のガスセンサにおいて、
前記温度検出部は、前記電界効果型トランジスタが形成される基板に形成されるダイオードを含み、前記感応電極は、絶縁膜を介して前記ダイオードの上部にも形成されるガスセンサ。
【請求項11】
請求項2記載のガスセンサにおいて、
前記温度検出部は、前記電界効果型トランジスタが形成される基板に形成されるダイオードを含み、前記感応電極は、絶縁膜を介して前記ダイオードの下部にも形成されるガスセンサ。
【請求項12】
請求項1記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極の温度を50℃以上になるよう加熱するガスセンサ。
【請求項13】
請求項2記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極の温度を50℃以上になるよう加熱するガスセンサ。
【請求項14】
ガス濃度に依存してゲート電位が変化する電界効果型トランジスタを用いたガスセンサであって、
ソース、ドレインにそれぞれ接続されたソース電極、ドレイン電極と、
前記ソース、ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、
前記感応電極に接続され、前記感応電極に電流を流し前記感応電極の温度を上昇させる二つの端子と、
前記電界効果型トランジスタが形成される基板と同一基板に形成されたダイオードを含み、前記感応電極の温度を検出する温度検出部とを
有するガスセンサ。
【請求項15】
請求項14記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極は、絶縁膜を介して前記ダイオードの上部にも形成されるガスセンサ。
【請求項16】
請求項14記載のガスセンサにおいて、
前記感応電極の温度が50℃以上になるよう加熱するガスセンサ。
【請求項17】
ガスの濃度を検出するガス検知システムであって、
ソース、ドレイン間のチャネル領域上に形成されるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられた感応電極と、前記感応電極に接続され、相異なる電位を与えることにより、前記感応電極に電流を流して温度を上昇させる二つの端子と、前記感応電極の温度を検出する温度検出部とからなる電界効果型トランジスタを用いたガスセンサと、
前記ガスセンサの前記端子間に与える前記電位を制御する加熱制御部と、
前記ガスセンサの前記温度検出部に接続される温度読み出し回路と、
前記ガスセンサの前記ソース、ドレインに接続される出力読み出し回路と、
前記加熱制御部と前記温度読み出し回路と前記出力読み出し回路が共通して接続される制御装置と
からなるガス検知システム。
【請求項18】
請求項17記載のガス検知システムにおいて、
前記ガスセンサは複数であり、前記加熱制御部、前記温度読み出し回路、前記出力読み出し回路は、複数の前記ガスセンサ各々に対応して設置され、
各々の前記ガスセンサの前記端子間に与える前記電位は、対応する前記加熱制御部によりそれぞれ制御されるガス検知システム。
【請求項19】
請求項17に記載のガス検知システムにおいて、
前記ガスセンサは複数であり、複数の前記ガスセンサのそれぞれが検出する検査対象ガスが異なるガス検知システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−322355(P2007−322355A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155829(P2006−155829)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 水素安全利用等基盤技術開発 委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 水素安全利用等基盤技術開発 委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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