説明

ガスセンサ構造

【課題】ガス検出素子を劣化させる水分等の劣化因子を、ガス検出素子から分離し、外部に排出可能なガスセンサ構造を提供する。
【解決手段】水素が流れるオフガス配管10と、水素を検出するガス検出素子23と、その内部にガス検出素子23を収容すると共に、水素が取り込まれる第1ガス検出室32、第2ガス検出室41及び、オフガス配管10内と第2ガス検出室41の下部とを連通する連通路42を有する素子収容部30と、連通路42を連通又は遮断するバルブ機構と、を備える水素センサ構造Sであって、連通路42は上方に向かっていると共に、連通路42と第2ガス検出室41との連通口43はオフガス配管10よりも上方に配置されており、ガス検出素子23は連通口43よりも上方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型の燃料電池は、固体高分子膜の両側をアノード(燃料極)とカソード(酸素極)で挟み込んでMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)を形成し、この膜電極接合体を一対のセパレータで挟んでなる単セルを複数積層して一つの燃料電池スタックを構成している。そして、アノードには水素(燃料ガス)が供給され、カソードには空気(酸化剤ガス)が供給され、アノード及びカソードで電極反応が起こり、燃料電池が発電する。
【0003】
このような燃料電池からは未反応の水素(被検出ガス)が排出されるので、燃料電池から排出されたオフガスの流路に水素センサを設けて、この水素センサにより、オフガス中の水素濃度の監視がされている。なお、オフガスには電極反応によって生成した水蒸気(水分)が含まれており、多湿である。
【0004】
しかしながら、水素センサに内蔵され、水素をガス接触燃焼式等によって検出するガス検出素子が、オフガス中の水蒸気に長期間にて曝されると、劣化してしまう。そこで、例えば、被検出ガスの侵入を適宜に遮断する弁体を設け、この弁体を温度によって伸縮する形状記憶合金製のコイルバネで動作させるガスセンサが開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】実開平3−40553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のガスセンサで、燃料電池から排出されたオフガス中の水素濃度を監視すると、ガスセンサ内に、オフガス中の水蒸気が結露してなる結露水が溜まってしまい、ガスセンサ素子が劣化する虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、ガス検出素子を劣化させる水分等の劣化因子を、ガス検出素子から分離し、外部に排出可能なガスセンサ構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、被検出ガスが流れるガス配管と、前記被検出ガスを検出するガス検出素子と、その内部に前記ガス検出素子を収容すると共に、被検出ガスが取り込まれるガス検出室、及び、前記ガス配管内と前記ガス検出室の下部とを連通する連通路を有する素子収容部と、前記連通路を連通又は遮断するバルブ機構と、を備えるガスセンサ構造であって、前記連通路は上方に向かっていると共に、当該連通路と前記ガス検出室との連通口は前記ガス配管よりも上方に配置されており、前記ガス検出素子は前記連通口よりも上方に配置されていることを特徴とするガスセンサ構造である。
【0008】
このようなガスセンサ構造によれば、ガス検出素子で被検出ガスを検出しない場合(非検出時)には、バルブ機構によって連通路を遮断し、ガス検出室に、ガス検出素子を劣化させる因子(例えば水分)が侵入することを防止できる。
また、ガス配管内とガス検出室の下部とを連通する連通路は、上方に向かっていると共に、この連通路とガス検出室との連通口はガス配管よりも上方に配置されており、さらに、ガス検出素子は連通口よりも上方に配置されているので、連通路及びガス検出室内のガス検出素子を劣化させる因子(例えば結露水)を、その自重によって、ガス検出素子から分離し、ガス配管に排出することができる。
なお、連通路の向きは、後記する実施形態のように鉛直上方に向かうことに限らず(図1参照)、例えば斜め上方でもよいとする。また、ガス検出素子も連通口の鉛直上方に限らず、斜め上方でもよいとする。さらに、バルブ機構の位置は、連通路の下流部に限らず、中流部、上流部でもよいとする。
【0009】
また、前記バルブ機構は、前記連通路を連通又は遮断する弁体と、当該弁体を作動する電動モータとを備え、前記弁体は、無通電状態における前記電動モータの静止トルクによって、連通位置又は遮断位置に維持されることを特徴とするガスセンサ構造であることが好ましい。
【0010】
このようなガスセンサ構造によれば、無通電状態における電動モータの静止トルクによって、弁体を、連通路を連通させる連通位置、又は、連通路を遮断する遮断位置に維持することができる。すなわち、電動モータで電力を消費せずに、弁体を連通位置又は遮断位置に維持することができる。
【0011】
また、前記連通路を取り囲む壁面、及び、前記ガス検出室を取り囲む壁面の少なくとも一方には、撥水コーティング層が形成されていることを特徴とするガスセンサ構造であることが好ましい。
【0012】
このようなガスセンサ構造によれば、連通路を取り囲む壁面、及び、ガス検出室を取り囲む壁面の少なくとも一方には、撥水コーティング層が形成されているので、この少なくとも一方の壁面に、ガス検出素子を劣化させる一因子である水分が付着しにくくなる。これにより、水分がガス配管内に排出されやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガス検出素子を劣化させる水分等の劣化因子を、ガス検出素子から分離し、外部に排出可能なガスセンサ構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図1、図2を参照して説明する。
【0015】
≪水素センサ構造の構成≫
図1に示す、本実施形態に係る水素センサ構造S(ガスセンサ構造)は、例えば、燃料電池システム(図示しない)に組み込まれた構造である。前記燃料電池システム(図示しない)は、燃料電池自動車(燃料電池移動体)に搭載されている。
そして、水素センサ構造Sを構成するガス検出素子23によって、固体高分子型の燃料電池(図示しない)から排出された多湿のオフガス中の水素(被検出ガス)濃度を検出するようになっている。ただし、ガスセンサ構造の適用箇所はこれに限定されず、燃料電池以外の機器から排出されたオフガス中の被検出ガスを検出する構造でもよく、また、被検出ガスは水素以外のものでもよい。
なお、燃料電池を構成する固体高分子膜を湿潤状態に確保すべく、燃料電池には加湿された水素や空気が供給されるため、また、燃料電池は発電によって水(水蒸気)を生成するため、オフガスは多湿となっている。因みに、オフガスは、燃料電池のアノードから排出されたアノードオフガス、カソードから排出されたカソードオフガス、これらが混合されたもの、のいずれでもよい。
【0016】
水素センサ構造Sは、燃料電池(図示しない)から排出されたオフガスが流れるオフガス配管10と、オフガス中の水素を検出する水素センサ20と、後記する連通路42の最下流位置の連通口43(図2参照)を開閉するボールねじ50と、ボールねじ50のねじ棒51(弁体)を進退(作動)させるアクチュエータとしての超音波モータ60と、を主に備えている。つまり、本実施形態では、連通路42を連通又は遮断するバルブ機構が、ボールねじ50と、超音波モータ60とを備えて構成されている場合を例示する。
【0017】
<オフガス配管>
オフガス配管10は、燃料電池の下流に接続されており、その内部を多湿のオフガスが流れるようになっている。そして、オフガス配管10の上壁には、オフガスの通路となる貫通孔11が形成されている。
【0018】
<水素センサ>
水素センサ20は、センサ用の回路がパターニングされた基板21と、基板21を収容したケース22と、基板21に接続すると共にケース22の下面に下方に向かって突設されたガス検出素子23と、ガス検出素子23を収容した素子収容部30と、を主に備えている。
ケース22はボルト(図示しない)によって素子収容部30の後記する第2素子収容部40に固定されており、第2素子収容部40はボルト(図示しない)によってオフガス配管10に固定されている。
【0019】
ガス検出素子23は、後記する第1ガス検出室32に配置されており、第1ガス検出室32に取り込まれたオフガス中の水素を検出する素子である。そして、ガス検出素子23は、検出した水素濃度に応じて、基板21に電気信号を出力するようになっている。基板21は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、ガス検出素子23からの電気信号に基づいて水素濃度を算出し、図示しないECU(Electronic Control Unit)に出力するようになっている。
【0020】
ガス検出素子23の種類及び数は、水素濃度の検出方式に応じて決定される。
例えば、水素の検出方式がガス接触燃焼式である場合、ガス検出素子23は検出素子と温度補償素子との対により構成される。そして、水素が各素子に接触し、燃焼した際に発生する熱を利用し、検出素子と温度補償素子と間の電気抵抗差に基づいて水素濃度が検出される。
また、水素の検出方式が半導体方式である場合、ガス検出素子23は、検出素子と検知素子との対により構成される。そして、水素が各素子表面の酸素と接触・離脱した際に発生する抵抗値に基づいて、水素濃度が検出される。
さらに、水素の検出方式が熱伝導方式である場合、ガス検出素子23(水素の検出部)は水素を加熱するヒータと、温度センサとの対により構成される。そして、水素が他の気体よりも熱伝導が大きいことに基づいて、水素濃度が検出される。
【0021】
素子収容部30は、ガス検出素子23を二重に取り囲んで収容するハウジングであって、内側の第1素子収容部31と、外側の第2素子収容部40と、を主に備えている。
【0022】
第1素子収容部31は、ケース22の下面に突設された略有底円筒体であって、その内部に第1ガス検出室32を有している。第1素子収容部31の底壁にはガス流通孔33が形成されており、そして、このガス流通孔33に蓋をするようにフィルタ34が設けられている。フィルタ34は、防爆性を確保しつつ、ガス(気体)の流通を許容するフィルタであり、例えば、撥水フィルタと防爆フィルタとを重ねたものによって構成される。撥水フィルタは、ガスを透過しつつ、ガスに含まれる液体を透過しないフィルタであり、例えば、テトラフルオロエチレン膜から構成される。防爆フィルタは、防爆性を確保するためのフィルタであり、例えば、液体状の水を通すことが可能な程度の金属製のメッシュや多孔質体から構成される。
【0023】
第2素子収容部40は、第1素子収容部31に外嵌するように設けられており、その内部に、第2ガス検出室41と連通路42とを有している。第2ガス検出室41は、フィルタ34を介して第1ガス検出室32と連通路42とにそれぞれ連通している。言い換えると、第2ガス検出室41と連通路42との連通部分は連通口43(図2参照)として機能しており、連通口43は連通路42の最下流に位置している。そして、連通口43周りの第2素子収容部40は、弁体として機能するねじ棒51が当接する弁座44となっている。
また、連通路42は、第2ガス検出室41の他、オフガス配管10の貫通孔11を介して、オフガス配管10内に連通している。
【0024】
そして、図2に示すように、ねじ棒51が連通口43から後退し開位置に配置された場合、連通口43が開き、連通路42が連通するようになっている。このように連通路42が連通した場合、連通路42を介して、オフガス配管10内と第2ガス検出室41とが連通し、オフガスが、貫通孔11、連通路42、連通口43を介して、第2ガス検出室41に取り込まれ、さらに、フィルタ34を介して第1ガス検出室32に取り込まれるようになっている。
【0025】
一方、図1に示すように、ねじ棒51が連通口43に対して前進し、その先端51cが弁座44に当接する閉位置に配置された場合、連通口43が閉じ、連通路42が遮断されるようになっている。このように連通路42が遮断された場合、オフガス配管10内と第2ガス検出室41とが遮断され、オフガスが第2ガス検出室41に侵入しないようになっている。
【0026】
また、ねじ棒51の先端51cと弁座44とが当接する双方の当接面は、先端51cが弁座44に良好に密着し、連通口43が好適に閉じられるように、テーパ面となっている。ただし、これに限定されず、先端51c及び弁座44の少なくとも一方がテーパ面であればよい。
【0027】
ここで、オフガス配管10の貫通孔11、ガス検出素子23、第1ガス検出室32、第2ガス検出室41、連通路42、連通口43の高さ方向における位置関係について説明する。
連通路42は、オフガス配管10の天壁に形成された貫通孔11から、略鉛直上方に向かって形成されている。これにより、連通路42を取り囲む壁面に結露水が付着した場合、結露水は、その自重よって、オフガス配管10内に排出されるようになっている。よって、連通路42を囲む壁面が、結露水等によって劣化しにくくなっている。
【0028】
第2ガス検出室41は連通路42から水平方向にずれた位置で略鉛直方向で形成されている。そして、連通路42は、略水平方向の連通口43を介して、第2ガス検出室41の下部に連通している。そして、ガス検出素子23が配置された第1ガス検出室32は、第2ガス検出室41の略鉛直上方に配置されており、第1ガス検出室32と第2ガス検出室41とはフィルタ34で仕切られている。つまり、ガス検出素子23は、連通口43の略鉛直上方に配置されている。
【0029】
これにより、フィルタ34や、第2ガス検出室41を取り囲む壁面に結露水が付着した場合、結露水は、その自重によって落下した後、連通口43を介して、連通路42に排出され、さらに、オフガス配管10内に排出されるようになっている。よって、ガス検出素子23や、第2ガス検出室41を囲む壁面等が、結露水によって劣化しにくくなっている。ゆえに、結露水の排出が促進されるように、第2ガス検出室41の底面をテーパ面としたり、連通口43を斜めに形成してもよい。
【0030】
また、オフガス配管10の貫通孔11から、連通路42、連通口43、第2ガス検出室41、第1ガス検出室32に至るオフガスの通路は、蛇行し、長くなっている。これにより、この通路を囲む壁面とオフガスとの接触面積は大きくなり、燃料電池(図示しない)から排出された多湿のオフガス中の水蒸気(水分)が、ガス検出素子23にたどり着くまでに結露し、ガス検出素子23が水分によって劣化しにくくなっている。
【0031】
さらに、第2ガス検出室41を取り囲む壁面、弁座44の表面を含む連通路42を取り囲む壁面には、フッ素樹脂等によって、撥水コーティング層(図示しない)が形成されている。これにより、第2ガス検出室41、連通口43、及び、連通路42には、結露水が溜まりにくく、結露水がオフガス配管10内に排出されるようになっている。
ただし、これに限定されず、第2ガス検出室41を取り囲む壁面、及び、弁座44の表面を含む連通路42を取り囲む壁面の少なくとも一方に、撥水コーティング層が形成されてもよい。
【0032】
<ボールねじ>
ボールねじ50は、連通口43を開閉するためのものであって、弁座44に対して進退し連通口43を開閉する弁体として機能するねじ棒51(シャフト)と、ナット52と、ねじ棒51とナット52の間で転動する複数のボール53と、を主に備えている。ナット52は、超音波モータ60の後記するロータ61に固定されると共に、ナット52と後記する非回転のステータ65及びハウジング70との間には、ラジアル軸受54、ラジアル軸受55が介在されている。そして、ロータ61及びナット52は、一体となって、ステータ65、ハウジング70等に対して回転するようになっている。
【0033】
ねじ棒51の外周面には、螺旋状のねじ溝51aの他、軸方向にガイド溝51bが形成されている。そして、このガイド溝51bには、その基端部が超音波モータ60のベース69に固定された、非回転のガイド部材75の先端が差し込まれており、ねじ棒51が回転しないようになっている。なお、ガイド溝51bの深さは、ねじ溝51aの深さよりも浅く設計されており、ボール53がねじ溝51aから飛散しないようになっている。
これにより、ロータ61とナット52とが一体に回転すると、その回転方向に対応して、ねじ棒51が、ガイド部材75にガイドされながら、その軸方向において、つまり、弁座44(連通口43)に対して進退するようになっている。つまり、ガイド溝51bとガイド部材75は、ねじ棒51とナット52とが供回りすることを防止する、供回り防止機構を構成している。
【0034】
ガイド溝51bの長さは、ねじ棒51のストローク長に対応し、軸方向におけるガイド溝51bの両端位置は、ねじ棒51の開位置又は閉位置に対応して設定される。また、ガイド溝51bに、例えば、前進するねじ棒51が弁座44を押され過ぎないように、ストッパの機能を付加することも可能となっている。
【0035】
<超音波モータ>
超音波モータ60は、ボールねじ50のねじ棒51を進退させると共に、無通電状態における静止トルク(保持トルク)よって、ねじ棒51を閉位置(図1参照)又は開位置(図2参照)で維持するモータである。このような超音波モータ60は、ステータ65(固定子)と、ロータ61(回転子)とを主に備えている。そして、図示しない外部電源(例えば燃料電池、バッテリ)から電力が供給されると、ロータ61が回転するようになっている。
【0036】
ステータ65はリング状を呈しており、振動体66と圧電体67と緩衝部材68とを主に備えており、振動体66は、圧電体67、緩衝部材68を介して、ベース69に固定されている。ベース69は、第2素子収容部40に固定された略円筒状のハウジング70の図示左側端部に固定されている。そして、圧電体67に外部電源から90°の位相差を有する高周波電圧が印加されると、振動体66には周方向に振動波が発生するようになっている。なお、緩衝部材68は、振動体66及び圧電体67からベース69への振動伝達を、やわらげるものである。
【0037】
ロータ61は、厚手でリング状の金属製板からなる駆動体62と、駆動体62に貼り付けられたカーボン繊維入りの樹脂製の摺動部材63と、を主に備えている。そして、ロータ61は、ハウジング70に取り付けられた皿バネ71によって、スラスト軸受72を介して、ステータ65の振動体66に押し付けられている。これにより、超音波モータ60が無通電状態であっても、ステータ65に対してロータ61が周方向にずれにくくなっており、大きな静止(保持)トルクが発生するようになっている。その結果、ロータ61に固定されたねじ棒51が、無通電状態における静止トルクによって、現状の位置(開位置又は閉位置)で維持されるようになっている。
【0038】
一方、高周波電圧が印加され、振動体66に周方向で振動波が発生すると、この振動波を駆動力としてロータ61が回転し、これと一体にナット52が回転し、ねじ棒51が弁座44に対して進退するようになっている。
【0039】
また、ハウジング70には、リング状のシール部材74が略円筒状のスペーサ73を介して設けられている。そして、ねじ棒51は、シール部材74の中空部に挿通されており、シール部材74はねじ棒51をシールしている。シール部材74は、二トリルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等のゴム材料や、四ふっ化エチレン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料から形成されている。
これにより、多湿のオフガスが、連通路42からナット52内に侵入しにくくなっており、ボールねじ50、超音波モータ60が水分、水素等によって腐食されにくくなっており、耐久性を高めることができる。
【0040】
≪水素センサ構造の効果≫
このような水素センサ構造Sによれば、次の作用効果を主に得ることができる。
(1)超音波モータ60によって、ガス検出素子23で水素を検出しない場合(非検出時)には、ねじ棒51を前進させて連通路42を遮断し、第2ガス検出室41、第1ガス検出室32に、ガス検出素子23を劣化させる水分が侵入することを防止できる。なお、ガス検出素子23で水素を検出しない場合としては、例えば、燃料電池自動車が停止しており、燃料電池が発電していない場合である。
一方、燃料電池が発電し、オフガスが排出されている場合、ねじ棒51を後退させて連通路42を開き、第2ガス検出室41、第1ガス検出室32に、オフガスを取り込み、ガス検出素子23によって水素濃度を検出できる。
【0041】
(2)高さ方向において、連通路42と第2ガス検出室41の下部との連通口43はオフガス配管10よりも上方に配置され、ガス検出素子23は連通口43及び第2ガス検出室41よりも上方位置にある第1ガス検出室32に配置されているので、結露水を、その自重によって、ガス検出素子23から分離させ、オフガス配管10内に排出することができる。これにより、ガス検出素子23の劣化を抑えることができる。
【0042】
(3)第2ガス検出室41を取り囲む壁面、連通路42を取り囲む壁面、弁座44の表面には、撥水コーティング層(図示しない)が形成されているので、オフガス配管10内に、結露水を効率的に排出することができる。
(4)静止トルクの大きい超音波モータ60によって、ねじ棒51を進退させるので、無通電状態の大きな静止(保持)トルクによって、ねじ棒51を開位置又は閉位置に配置することができる。これにより、超音波モータ60の消費電力を少なくできる。その結果、例えば、燃料電池自動車の停止後におけるバッテリ(蓄電装置)の電力消費を抑えることができる。
【0043】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば以下のような変更をすることができる。
前記した実施形態では、超音波モータ60によって、弁体として機能するボールねじ50のねじ棒51を進退する場合を例示したが、その他の方式のモータ、ソレノイド等によって、弁体(バタフライ弁、ゲート弁、グローブ弁、ボール弁等)を作動する構成としてもよい。
【0044】
前記した実施形態では、ガイド溝51b、ガイド部材75が、連通口43と反対側に配置された場合を例示したが、ガイド溝51b、ガイド部材75が連通口43側に配置された構成でもよい。
また、ガイド溝51bの軸方向に長さによって、ねじ棒51が開位置又は閉位置に位置決めされると例示したが、その他に例えば、開位置に配置された場合にねじ棒51が当接する開位置当接部材を設けてもよい。
【0045】
前記した実施形態では、連通路42の最下流の連通口43を、ねじ棒51(弁体)で開閉し、連通路42を連通又は遮断する場合を例示したが、開閉位置(連通/遮断位置)はこれに限定されず、連通路42の中流位置や、上流位置であってもよい。
【0046】
前記した実施形態では、ロータ61とナット52とが一体に回転し、ねじ棒51がその軸方向に進退するバルブ機構を説明したが(図1、図2参照)、図3、図4に示すバルブ機構であってもよい。
【0047】
図3、図4に示すバルブ機構は、ボールねじ90と、超音波モータ60Aとを備えて構成されている。ボールねじ90のねじ棒91はロータ61に固定されており、ねじ棒91とロータ61とが一体に回転するようになっている。ボールねじ90のナット92には弁体94が固定されており、弁体94の外周面には軸方向にガイド溝94bが形成され、このガイド溝94bにはガイド部材95が差し込まれている。ガイド部材95の基端部は、超音波モータ60Aのハウジング80に固定されており、ハウジング80は第2素子収容部40に固定されている。また、ねじ棒91の外周面にはねじ溝91aが形成されており、ねじ溝91aには複数のボール93が装填されている。
【0048】
そして、超音波モータ60Aが回転した場合、ロータ61とねじ棒91とは一体に回転するが、ナット92及び弁体94はガイド部材95によって供回りせず、ねじ棒91の回転力は、ねじ棒91に螺合するナット92によって軸方向の推進力に変換され、弁体94が連通口43に対して進退するようになっている。
これにより、弁体94は、その先端94cが弁座44に当接し、連通口43を閉じ、連通路42を遮断する閉位置(図3参照)と、その先端94cが弁座44から離間し、連通口43が開き、連通路42を連通させる開位置(図4参照)と、に配置されるようになっている。
なお、ガイド溝94bの軸方向における長さは、弁体94のストローク長に対応しており、弁体94が閉位置(図3参照)又は開位置(図4参照)で位置決めされるように構成されている。
【0049】
また、連通路42から超音波モータ60A内に水蒸気、水素等が浸入しないように、弁体94はシール部材82に挿通され、シール部材82によってシールされている。シール部材82は、スペーサ81を介して第2素子収容部40に固定されている。
ここで、ボールねじ91の軸方向視において、例えば、シール部材82を多角形(例えば四角形)とし、これに挿通される弁体94の部分(挿通部)を多角形(例えば四角形)とした場合、弁体94及びナット92は、シール部材82に対して回転不能となり、ねじ棒91とナット92とが供回りしないように構成される。
【0050】
このような構成のバルブ機構によれば、超音波モータ60Aの中心軸線上のねじ棒91が、その軸方向に移動しないので、ロータ61、ステータ65近傍の摺動部分が減り、ロータ61、ステータ65近傍に、水分等が侵入しにくくなる。これにより、超音波モータ60Aの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態に係る水素センサ構造の側断面図であり、連通口の閉状態を示す。
【図2】本実施形態に係る水素センサ構造の側断面図であり、連通口の開状態を示す。
【図3】変形例に係る水素センサ構造におけるバルブ機構部分の側断面図であり、連通口の閉状態を示す。
【図4】変形例に係る水素センサ構造におけるバルブ機構部分の側断面図であり、連通口の開状態を示す。
【符号の説明】
【0052】
S 水素センサ構造(ガスセンサ構造)
10 オフガス配管
20 水素センサ
23 ガス検出素子
30 素子収容部
31 第1素子収容部
32 第1ガス検出室
40 第2素子収容部
41 第2ガス検出室
42 連通路
43 連通口
44 弁座
50 ボールねじ(バルブ機構)
51 ねじ棒
60 超音波モータ(バルブ機構)
61 ロータ
65 ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出ガスが流れるガス配管と、
前記被検出ガスを検出するガス検出素子と、
その内部に前記ガス検出素子を収容すると共に、被検出ガスが取り込まれるガス検出室、及び、前記ガス配管内と前記ガス検出室の下部とを連通する連通路を有する素子収容部と、
前記連通路を連通又は遮断するバルブ機構と、
を備えるガスセンサ構造であって、
前記連通路は上方に向かっていると共に、当該連通路と前記ガス検出室との連通口は前記ガス配管よりも上方に配置されており、
前記ガス検出素子は前記連通口よりも上方に配置されている
ことを特徴とするガスセンサ構造。
【請求項2】
前記バルブ機構は、前記連通路を連通又は遮断する弁体と、当該弁体を作動する電動モータとを備え、
前記弁体は、無通電状態における前記電動モータの静止トルクによって、連通位置又は遮断位置に維持される
ことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ構造。
【請求項3】
前記連通路を取り囲む壁面、及び、前記ガス検出室を取り囲む壁面の少なくとも一方には、撥水コーティング層が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−191019(P2008−191019A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26285(P2007−26285)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】