説明

ガスバリアフィルムおよびこれを用いたデバイスならびに光学部材、ガスバリアフィルムの製造方法

【課題】ラジカル重合性モノマーを真空蒸着してなる有機層を有するガスバリアフィルムであって、有機層が安定に形成されたガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルム上に、少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有し、かつ、前記有機層が、ラジカル重合性モノマーと、1気圧30℃で液状である重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させてなることを特徴とする、ガスバリアフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリアフィルムおよびこれを用いたデバイスならびに光学部材に関する。また、ガスバリアフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機層と無機層とを有するガスバリアフィルムであって、有機層を真空蒸着により設け、アクリル系モノマーを重合させてなるガスバリアフィルムについて広く検討されている。
例えば、特許文献1には、樹脂フィルムの片面に、真空紫外線硬化法により形成されたアクリル樹脂層、及び金属または金属化合物の蒸着薄膜が順次積層されていることを特徴とするガスバリアフィルムが開示されている。該特許文献1では、重合開始剤として室温で粉末状のベンゾフェノン系重合開始剤が用いられている。
また、特許文献2には、高分子材料からなる基材の少なくとも片面に、特定のアクリル系モノマーの蒸着膜用樹脂を真空蒸着させ活性エネルギー線によって架橋させて形成された有機層と無機層とが交互に少なくとも一層以上積層されたガスバリア性プラスチックフィルムが開示されている。該特許文献2では、重合開始剤として、室温で粉末状の非ベンゾフェノン系重合開始剤が用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−278167 号公報
【特許文献2】特開2003−335820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、上記特許文献1または特許文献2では、アクリル系モノマーを真空蒸着して有機層を形成しようとすると、アクリル系モノマーの硬化時に、ムラができたり、未反応のまま残存するアクリル系モノマーが多く、安定した有機層の形成が困難であることがわかった。また、このような残存するアクリル系モノマーや残存する重合開始剤が、無機層等の隣接層に放出し、該隣接層が脱泡破壊し、バリア性を低下させるという問題が起こることを見出した。本発明は、かかる問題点を解決することを目的としたものであって、ラジカル重合性モノマーを真空蒸着してなる有機層を有するガスバリアフィルムであって、有機層が安定に形成されたガスバリアフィルムおよびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点について、本発明者が鋭意検討を行った結果、重合開始剤が粉末状であるため、重合性モノマーを真空蒸着しようとすると、重合開始剤自体が固化しやすく、硬化時にムラが発生することが分かった。また、その結果として、多量の重合開始剤が必要になったり、重合性モノマーが有機層に残存しやすくなったりした。さらに、このような過剰な重合開始剤や重合性モノマーが、無機層等の隣接層に放出され、該隣接層にダメージを与え、バリア性を低下させていることを見出した。かかる状況のもと、本発明者らが鋭意検討を行った結果、液状の重合開始剤を用いることにより、これらの問題点を解決しうることを見出した。従来、この種の分野においては、固体状の重合開始剤の方が融点が高いため無機成膜時に開始剤が揮発しにくいため好ましいと考えられていた。本発明では、驚くべきことに、従来技術と逆転の発想を採用することにより、上記従来技術を解決しうることを見出したものである。
具体的には、下記手段により、上記課題を解決しうることを見出した。
(1)基材フィルム上に、少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有し、かつ、前記有機層が、ラジカル重合性モノマーと、1気圧30℃で液状である重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させてなることを特徴とする、ガスバリアフィルム。
(2)基材フィルム上に、少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有し、かつ、前記有機層が、ラジカル重合性モノマーと、融点が30℃以下である重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させてなることを特徴とする、ガスバリアフィルム。
(3)前記重合開始剤の分子量が170以上であることを特徴とする、(1)または(2)に記載のガスバリアフィルム。
(4)前記組成物中に、重合開始剤を2重量%以下の割合で含むことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
(5)前記重合開始剤が、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R1は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個結合した置換基を表し、R2は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n1は0〜5の整数を表し、n1が2以上のとき、それぞれのR2は同一であっても異なっていてもよい。)
(6)前記重合開始剤が、下記一般式(2)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、R3は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表し、R4は炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n2およびn3は、それぞれ、0〜5の整数を表すが、n2およびn3のいずれもが0になることはない。n2が2以上のとき、それぞれのR3は同一であっても異なっていてもよく、n3が2以上のとき、それぞれのR4は同一でも異なっていてもよい。)
(7)前記有機層が、フラッシュ蒸着により形成されてなる、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
(8)前記有機層を構成するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(4)で表される化合物から選択される少なくとも1種である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
一般式(4)
【化3】

(一般式(4)中、R7は、水素またはメチル基を表し、R8は水素原子を表し、L1は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基を表す。m1は、1〜6の整数を表し、m1が2以上のとき、それぞれのR7およびR8は同一であっても異なっていてもよい。)
(9)前記有機層を構成するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(5)で表される化合物から選択される少なくとも1種である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
一般式(5)
【化4】

(一般式(5)中、R9は、水素またはメチル基を表し、R10は水素原子を表し、L2は炭素数1〜18の置換または無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基を表す。m2は、1〜6の整数を表し、m2が2以上のとき、それぞれのR9およびR10は同一であっても異なっていてもよい。)
(10)基材フィルム上に、少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有するガスバリアフィルムの製造方法であって、前記有機層を、ラジカル重合性モノマーと、1気圧30℃で液状である重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させて形成することを特徴とする、ガスバリアフィルムの製造方法。
(11)基材フィルム上に、少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有するガスバリアフィルムの製造方法であって、前記有機層を、ラジカル重合性モノマーと、融点が30℃以下である重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させて形成することを特徴とする、ガスバリアフィルムの製造方法。
(12)分子量が170以上の重合開始剤を用いることを特徴とする、(10)または(11)に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
(13)前記組成物中に、重合開始剤を2重量%以下の割合で添加することを特徴とする、(10)〜(12)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
(14)下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含む重合開始剤を用いることを特徴とする、(10)〜(13)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
一般式(1)
【化5】

(一般式(1)中、R1は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個結合した置換基を表し、R2は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n1は0〜5の整数を表し、n1が2以上のとき、それぞれのR2は同一であっても異なっていてもよい。)
(15)下記一般式(2)で表される化合物を少なくとも1種含む重合開始剤を用いることを特徴とする、(10)〜(13)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
一般式(2)
【化6】

(一般式(2)中、R3は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表し、R4は炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n2およびn3は、それぞれ、0〜5の整数を表すが、n2およびn3のいずれもが0になることはない。n2が2以上のとき、それぞれのR3は同一であっても異なっていてもよく、n3が2以上のとき、それぞれのR4は同一でも異なっていてもよい。)
(16)前記有機層を、フラッシュ蒸着により形成することを特徴とする、(10)〜(15)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
(17)前記有機層を構成するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(4)で表される化合物から選択される少なくとも1種である、(10)〜(16)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
一般式(4)
【化7】

(一般式(4)中、R7は、水素またはメチル基を表し、R8は水素原子を表し、L1は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基を表す。m1は、1〜6の整数を表し、m1が2以上のとき、それぞれのR7およびR8は同一であっても異なっていてもよい。)
(18)前記有機層を構成するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(5)で表される化合物から選択される少なくとも1種である、(10)〜(16)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
一般式(5)
【化8】

(一般式(5)中、R9は、水素またはメチル基を表し、R10は水素原子を表し、L2は炭素数1〜18の置換または無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基を表す。m2は、1〜6の整数を表し、m2が2以上のとき、それぞれのR9およびR10は同一であっても異なっていてもよい。)
(19)(10)〜(18)のいずれか1項に記載の製造方法により製造したガスバリアフィルム。
(20)(1)〜(9)、(19)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを封止フィルムに用いたデバイス。
(21)(1)〜(9)、(19)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを基板に用いたデバイス。
(22)前記デバイスが電子デバイスである、(20)または(21)に記載のデバイス。
(23)前記デバイスが有機EL素子である、(20)または(21)に記載のデバイス。
(24)(1)〜(9)、(19)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを基板に用いた光学部材。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、有機層を安定に形成することが可能になり、バリア性に優れたガスバリアフィルムの提供が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明のガスバリアフィルムおよびその製造方法、ならびに、ガスバリアフィルムを用いた有機EL素子等のデバイスについて詳細に説明する。以下に記載する説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0008】
<ガスバリアフィルム>
本発明のガスバリアフィルムは、基材フィルム上に、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層とからなるバリア層を有し、かつ、有機層が、以下の(1)および(2)の少なくとも一方の要件を満たすガスバリアフィルムである。
(1)ラジカル重合性モノマーと、1気圧30℃で液状である重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させてなる有機層である
(2)ラジカル重合性モノマーと、融点が30℃以下である重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させてなる有機層である
さらに、本発明のガスバリアフィルムは、有機層と無機層の領域が明確でない有機領域および無機領域を含んでいてもよい。以降、簡略化のため、有機層と有機領域は「有機層」として、無機層と無機領域は「無機層」として記述する。有機層もしくは無機層が複数の場合、通常、有機層と無機層が交互に積層した構成であることが好ましい。
有機領域と無機領域より構成される場合、各領域が膜厚方向に連続的に変化するいわゆる傾斜材料層であってもよい。前記傾斜材料の例としては、キムらによる論文「Journal of Vacuum Science and Technology A Vol. 23 p971−977(2005 American Vacuum Society) ジャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テクノロジー A 第23巻 971頁〜977ページ(20005年刊、アメリカ真空学会)」に記載の材料や、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機層と無機層が界面を持たない連続的な層等が挙げられる。
本発明のガスバリアフィルムは、有機層と無機層のほかに機能層を有していても良い。機能層の例としては、後述の基材フィルムの項で述べるものと同様の層が好ましく用いられる。
【0009】
(基材フィルム)
本発明におけるガスバリアフィルムに用いられる基材フィルムは、有機層、無機層等の構成層を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。
本発明のガスバリアフィルムを後述する有機EL素子等のデバイスの基板として使用する場合は、基材フィルムは耐熱性を有するプラスチックフィルムであることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上および/または線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0010】
本発明のガスバリアフィルムを偏光板と組み合わせて使用する場合、ガスバリアフィルムのバリア層面(少なくとも1層の無機層と少なくとも1層の有機層を含む積層体を形成した面)がセルの内側に向くようにし、最も内側に(素子に隣接して)配置することが好ましい。このとき偏光板よりセルの内側にガスバリアフィルムが配置されることになるため、ガスバリアフィルムのレターデーション値が重要になる。このような態様でのガスバリアフィルムの使用形態は、レターデーション値が10nm以下の基材フィルムを用いたガスバリアフィルムと円偏光板(1/4波長板+(1/2波長板)+直線偏光板)を積層して使用するか、あるいは1/4波長板として使用可能な、レターデーション値が100nm〜180nmの基材フィルムを用いたガスバリアフィルムに直線偏光板を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0011】
レターデーションが10nm以下の基材フィルムとしてはセルローストリアセテート(富士フイルム(株):富士タック)、ポリカーボネート(帝人化成(株):ピュアエース、(株)カネカ:エルメック)、シクロオレフィンポリマー(JSR(株):アートン、日本ゼオン(株):ゼオノア)、シクロオレフィンコポリマー(三井化学(株):アペル(ペレット)、ポリプラスチック(株):トパス(ペレット))ポリアリレート(ユニチカ(株):U100(ペレット))、透明ポリイミド(三菱ガス化学(株):ネオプリム)等を挙げることができる。
また1/4波長板としては、上記のフィルムを適宜延伸することで所望のレターデーション値に調整したフィルムを用いることができる。
【0012】
本発明のガスバリアフィルムは有機EL素子等のデバイスとして利用されることから、プラスチックフィルムは透明であること、すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
本発明のガスバリアフィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えばポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
本発明のガスバリアフィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるので特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0013】
(有機層)
本発明では、有機層として、ラジカル重合性モノマーを硬化させてなるポリマーの層を有する。具体的には、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂(本明細書では、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂を併せてアクリレート重合物ということがある)、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物、などの熱可塑性樹脂、あるいはポリシロキサン、その他有機珪素化合物の層である。有機層は単独の材料からなっていても混合物からなっていてもよい。2層以上の有機層を積層してもよい。この場合、各層が同じ組成であっても異なる組成であってもよい。
【0014】
本発明の有機層は、少なくとも1つの下記一般式(4)或いは下記一般式(5)で表されるラジカル重合性モノマーを硬化させることにより形成されることが好ましい。
一般式(4)
【化9】

(一般式(4)中、R7は、水素またはメチル基を表し、R8は水素原子を表し、L1は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基を表す。m1は、1〜6の整数を表し、m1が2以上のとき、それぞれのR7およびR8は同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(5)
【化10】

(一般式(5)中、R9は、水素またはメチル基を表し、R10は水素原子を表し、L2は炭素数1〜18の置換または無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基を表す。m2は、1〜6の整数を表し、m2が2以上のとき、それぞれのR9およびR10は同一であっても異なっていてもよい。)
【0015】
本発明の有機層は、上記一般式(5)で表される重合性モノマーからなるアクリレート重合体が主成分であることが好ましい。ここで主成分とは、有機層を構成する重合性モノマーのうち、含量が最も多いことをいい、通常80質量%以上であることをいう。また、アクリレート重合体とは一般式(6)で表される構造単位を有するポリマーである。
一般式(6)
(Z−COO)n−L
(一般式(6)中、Zは下記の(a)または(b)で表され、該構造中のR11およびR12は各々独立に水素原子またはメチル基を表し、*は一般式(6)のカルボニル基と結合する位置を表し、Lはn価の連結基を表す。nは1〜6の整数を示す。n個のZは互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つのZは下記の(a)で表される。)
【化11】

【0016】
Lの炭素数は、好ましくは3〜18、より好ましくは4〜17、さらに好ましくは5〜16、特に好ましくは6〜15である。
nが2の場合、Lは2価の連結基を表すが、そのような2価の連結基の例として、アルキレン基(例えば、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロピレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基、1,16−ヘキサデシレン基等)、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、およびこれらの2価基が複数個直列に結合した2価残基(例えばポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、プロピオニルオキシエチレン基、ブチロイルオキシプロピレン基、カプロイルオキシエチレン基、カプロイルオキシブチレン基等)を挙げることができる。
これらの中ではアルキレン基が好ましい。
【0017】
Lは置換基を有してもよく、Lを置換することのできる置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、2−エチルヘキシロキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基などが挙げられる。置換基として好ましくは、含酸素官能基を持たない基が後述の理由から好ましく、特にアルキル基である。
すなわち、nが2の場合、Lは含酸素官能基を持たないアルキレン基が最も好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0018】
nが3の場合、Lは3価の連結基を表すが、そのような3価の連結基の例として、前述の2価の連結基から任意の水素原子を1個除いて得られる3価残基、または、前述の2価の連結基から任意の水素原子を1個除き、ここにアルキレン基、エーテル基、カルボニル基、およびこれらを直列に結合した2価基を置換した3価残基を挙げることができる。このうち、アルキレン基から任意の水素原子を1個除いて得られる、含酸素官能基を含まない3価残基が好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
nが4以上の場合、Lは4価以上の連結基を表すが、そのような4価以上の連結基の例も、同様に挙げられる。好ましい例も同様に挙げられる。特に、アルキレン基から任意の水素原子を2個除いて得られる、含酸素官能基を含まない4価残基が好ましい。このような基を採用することにより、水蒸気透過率をより低くすることが可能になる。
【0019】
また、前記ポリマーは一般式(6)で表されない構造単位を有していても構わない。例えば、アクリレートモノマーやメタクリレートモノマーを共重合したときに形成される構造単位を有していてもよい。前記ポリマーにおいて、一般式(6)で表されない構造単位は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。一般式(6)で表される構造単位を有さないポリマーとして、例えばポリエステル、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等が挙げられる。
【0020】
以下において、一般式(5)で表される重合性モノマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
【化12】

【0022】
【化13】

【0023】
【化14】

【0024】
【化15】

【0025】
【化16】

【0026】
本発明に用いるモノマー混合物は、密着性改良のために、リン酸系の(メタ)アクリレートモノマーやシランカップリング基を含有する(メタ)アクリレートモノマーを含んでいてもよい。これらのモノマーの添加量は、その官能基数により、前述の添加量の範囲に合致するように添加される。
以下にリン酸系モノマーもしくはシランカップリング基含有モノマーの好ましい具体例を示すが、本発明で用いることができるものはこれらに限定されるものではない。
【0027】
【化17】

【0028】
有機層の形成方法としては、本発明では真空蒸着法を用いる。真空蒸着法としては、特に制限はないが、米国特許4842893号、4954371号、5032461号各明細書に記載のフラッシュ蒸着法やプラズマCVD法などが好ましく用いられ、特にフラッシュ蒸着法はモノマー中の溶存酸素を低下させる効果を有し、重合率を高めることができるためより好ましい。
【0029】
モノマー重合法としては特に限定は無いが、加熱重合、光(紫外線、可視光線)重合、電子ビーム重合、プラズマ重合、あるいはこれらの組み合わせが好ましく用いられる。これらのうち、光重合が特に好ましい。
【0030】
照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.5J/cm2以上が好ましく、2J/cm2以上がより好ましい。アクリレート、メタクリレートは、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。このような方法としては不活性ガス置換法(窒素置換法、アルゴン置換法など)、減圧法が挙げられる。このうち、減圧硬化法はモノマー中の溶存酸素濃度を低下させる効果を有するため、より好ましい。
窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。フラッシュ蒸着法で形成したモノマー皮膜を、減圧条件下、2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが最も好ましい。このような方法を取ることで、重合率を高めることができ、硬度の高い有機層を得ることができる。モノマーの重合は、モノマー混合物を蒸着により目的の場所に配置した後に行うことが好ましい。
【0031】
モノマーの重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0032】
有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難になるし、厚すぎると外力によりクラックを発生してバリア性が低下する。かかる観点から、有機層の厚みは50nm〜2000nmが好ましく、200nm〜1500nmがより好ましい。
また、有機層は先に記載したとおり平滑であることが好ましい。有機層の平滑性は10μm角の平均粗さ(Ra値)として2nm以下が好ましく、1nm以下であることがより好ましい。有機層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
有機層は2層以上積層してもよい。この場合、各層が同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、2層以上積層する場合は、各々の有機層が上記の好ましい範囲内にあるように設計することが好ましい。
【0033】
(重合開始剤)
本発明のガスバリアフィルムは、有機層が、ラジカル重合性モノマーと、重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させてなることを特徴とする。
本発明で用いる重合開始剤は、融点が30℃以下である重合開始剤であるか、1気圧30℃で液状である重合開始剤である。ここで、融点とは、固体状態から液体状態に変化する温度をいう。また、液状とは、1気圧30℃において重合開始剤を入れた容器を傾けた時に流動性を示すことをいう。
本発明における重合開始剤は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。例えば、2種類以上を混合することにより、液状となる重合開始剤も本発明では好ましく用いることができる。
このような重合開始剤は、実際に、有機層を真空蒸着する際に、液体状態となるため、少ない量の重合開始剤で、ラジカル重合性モノマーを良好に硬化させることができる。また、このように安定した有機層は、残存する重合性モノマーや重合開始剤がガスとして、隣接する無機層等に放出しにくくなり、無機層の脱泡破壊を低減させることができる。
本発明では、残存重合性モノマーの量が、有機層中に5重量%以下であることが好ましい。
【0034】
本発明で用いる重合開始剤は、分子量が170以上であることが好ましく、190以上であることがより好ましい。このように分子量の大きい重合性モノマーを用いることにより、重合開始剤が揮発しにくくなり、さらに、安定に硬化した有機層が得られやすくなる。重合開始剤の分子量の上限は特に定めるものではないが、通常、500以下である。
本発明で用いる重合開始剤は、有機層を形成するためのラジカル重合性モノマーと重合開始剤とを含む組成物中に、2重量%以下の割合で含むことが好ましく、1重量%以下の割合で含むことがより好ましい。本発明では、有機層を真空蒸着できるため、有機層を溶剤塗布により形成する場合よりも、重合開始剤の添加量を少なくしても、重合性モノマーを十分に反応させることができるので、重合開始剤の添加量を減らすことができる。また、重合開始剤の添加量を減らせることから、残存する重合開始剤の量も少なくでき、より重合開始剤由来のガスの発生を低減でき、隣接する無機層等へのダメージを低減できる。
【0035】
本発明の重合開始剤は、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物或いは下記一般式(2)で表される化合物の少なくとも1種からなる。
【0036】
一般式(1)
【化18】

(一般式(1)中、R1は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個結合した置換基を表し、R2は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n1は0〜5の整数を表し、n1が2以上のとき、それぞれのR2は同一であっても異なっていてもよい。)
ここで、R1は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、或いは、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基が好ましく、R2は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基が好ましい。R1が炭素数1〜18の置換アルキル基の場合は、カルボニル基に連結する炭素が、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基で置換されていることが好ましい。n1は0〜3が好ましい。
このような化合物として例えば、ダロキュア1173(製造元:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)等の市販品を採用できる。
一般式(2)
【化19】

(一般式(2)中、R3は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表し、R4は炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n2およびn3は、それぞれ、0〜5の整数を表すが、n2およびn3のいずれもが0になることはない。n2が2以上のとき、それぞれのR3は同一であっても異なっていてもよく、n3が2以上のとき、それぞれのR4は同一でも異なっていてもよい。)
3は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基であることが好ましく、R4は炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基が好ましい。n2は、0〜3であることが好ましく、n3は、0〜3であることが好ましい。
このような化合物として、2−メチルベンゾフェノン等が挙げられ、例えば、エザキュアTZT(製造元:ランベルティ)等の市販品を採用できる。
【0037】
(無機層)
無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。この中では、無機層形成時の基材フィルムへの熱の影響を回避することができ、生産速度が速く、均一な薄膜層を得やすい点で、物理的気相成長法(PVD)や化学的気相成長法(CVD)を用いることが好ましい。無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、特にSiまたはAlの金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
【0038】
本発明では、上記の平滑で硬い有機層の上に無機層を形成するため、平滑性の高い無機層を形成することができる。これによって無機層の膜厚が薄くても高いバリア性が得られる。このような効果は、有機層が平滑で硬いという2つの条件を兼ね備えていることによるものである。例えば、スパッタ等の無機製膜法を採用する場合、有機層上に着膜する無機物は運動エネルギーを有している。このため、平滑であるが軟らかい有機層の上に無機層を形成しようとすると、無機物が着膜する際の衝撃によって有機層が粗面化し、生成する無機層の平滑性が悪くなる。本発明では有機層の平滑性を維持しながら硬度を高くしているため、前記衝撃に耐えることができ、生成する無機層が平滑で、薄くても高いバリア性を実現することができる。
本発明により形成される無機層の平滑性は、10μm角の平均粗さ(Ra値)として2nm未満であることが好ましく、1nm以下がより好ましい。このため、無機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
【0039】
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmの範囲内である。本発明のガスバリアフィルムは無機層が薄くても高いバリア性を示すものであることから、生産性を上げてコストを下げるために無機層はできるだけ薄くすることが好ましい。無機層の厚みは、好ましくは20〜200nmである。
無機層は2層以上積層してもよい。この場合、各層が同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、2層以上積層する場合は、各々の無機層が上記の好ましい範囲内にあるように設計することが好ましい。
【0040】
(有機層と無機層の積層)
有機層と無機層の積層は、所望の層構成に応じて有機層と無機層を順次繰り返し製膜することにより行うことができる。無機層を、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などの真空製膜法で形成する場合、有機層も前記フラッシュ蒸着法のような真空製膜法で形成することが好ましい。バリア層を製膜する間、途中で大気圧に戻すことなく、常に1000Pa以下の真空中で有機層と無機層を積層することが特に好ましい。圧力は100Pa以下であることがより好ましく、50Pa以下であることがさらに好ましく、20Pa以下であることが特に好ましい。
【0041】
<デバイス>
本発明のガスバリアフィルムは空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく用いることができる。前記デバイスの例としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池等)等の電子デバイスを挙げることができ有機EL素子に好ましく用いられる。
【0042】
本発明のガスバリアフィルムは、デバイスの基板や固体封止法による封止のためのフィルムとして用いることができる。固体封止法とはデバイスの上に保護層を形成した後、接着剤層、ガスバリアフィルムを重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
【0043】
(有機EL素子)
ガスバリアフィルム用いた有機EL素子の例は、特開2007−30387号公報に詳しく記載されている。
【0044】
(液晶表示素子)
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明におけるガスバリアフィルムは、前記透明電極基板および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明の基板は、前記上透明電極および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型またはHAN(Hybrid Aligned Nematic)型、VA(Vertically Alignment)型、ECB型(Electrically Controlled Birefringence)、OCB型(Optically Compensated Bend)、CPA型(Continuous Pinwheel Alignment) ) 、 IPS型(In-Plane Switching)であることが好ましい。
【0045】
(その他)
その他の適用例としては、特表平10−512104号公報に記載の薄膜トランジスタ、特開平5-127822号公報、特開2002-48913号公報等に記載のタッチパネル、特開2000−98326号公報に記載の電子ペーパー、特願平7−160334号公報に記載の太陽電池等が挙げられる。
【0046】
<光学部材>
本発明のガスバリアフィルムを用いる光学部材の例としては円偏光板等が挙げられる。
(円偏光板)
本発明におけるガスバリアフィルムを基板としλ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、有機層、無機層の形成は特に断りがない限り、いずれもクラス1000のクリーンルーム内で行った。
【0048】
1.ガスバリアフィルムの作成
表1に記載した試料101〜110のガスバリアフィルムを以下の手順で形成した。
(1−1)第1層(有機層)の形成
ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、帝人デュポン社製、商品名:テオネックスQ65FA)を20cm角に裁断し、その平滑面側に有機無機積層製膜装置(ヴァイテックス・システムズ社製、Guardian200)を用いて試料101〜108の有機層を成膜した。この装置は、有機層と無機層を真空一貫製膜するものであるため、バリア層が完成するまで大気に開放されることがない。この装置の有機層製膜法は内圧3Paでのフラッシュ蒸着であり、重合のための紫外線の照射エネルギーは2J/cm2である。有機層の原料として、BEPGA(60g)、TMPTA(40g)、紫外線重合開始剤(1.5g)の混合溶液を使用した。用いた重合開始剤は表1にまとめて示した。
【化20】

【0049】
重合開始剤の添加量効果を明確にするため、重合開始剤の添加量を0.6gに変更した以外は上記1−1の試料101と同様にして、試料109の有機層を作製した。また、重合開始剤の添加量を2.3gに変更した以外は上記1−1の試料101と同様にして、試料110の有機層を作製した。
【0050】
(1−2)第2層(無機層)の形成
引き続き(3−1)で用いたGuardian200を用いて、試料101〜110のガスバリアフィルムを作成した。試料101〜110は真空から取り出すことなく、有機層、無機層を一貫して製膜したことになる。無機層の成膜方法はアルミニウムをターゲットとする直流パルスによる反応性スパッタ法(反応性ガスは酸素)による酸化アルミニウム製膜により行った。得られた無機層(酸化アルミニウム)の膜厚は60nmであった。得られたガスバリアフィルムの特性値(水蒸気透過率)を表1に示した。
【0051】
(1−3)Ca法による水蒸気透過率の測定
下記の参考文献に記載の方法を用いて、40℃相対湿度90%における水蒸気透過率を測定した。
<参考文献>
G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERらSID Conference Record of the International Display Research Conference 1435-1438頁
【0052】
2.重合開始剤の評価
(室温形状の決定)
1気圧30℃の条件のもとで、重合開始剤を入れた容器を静かに約15度に傾けて約10分放置し、内容物が流動性を示して移動したものを液状とした。
【0053】
(分子量の決定方法)
2種類以上の化合物が混合した重合開始剤の場合、各々の分子量に含有率を掛け合わせ合算した平均分子量を採用した。また含有率がわからない場合は、含有する開始剤の分子量範囲で規定した。
【0054】
表1の結果から明らかなように、液状の重合開始剤を用いた場合のほうが粉末の重合開始剤よりも水蒸気透過率が低くバリア性に優れていることがわかる。また液状の重合開始剤で分子量が大きいほど水蒸気透過率が低くバリア性に優れていることがわかる
【0055】
【表1】

【0056】
【化21】

【0057】
3.多層積層ガスバリアフィルムの作成
必要に応じて適宜積層すること以外は上記1のガスバリアフィルムの作成方法と同様の方法で表2に示す層構成(有機層をY、無機層をXで表す)を有するガスバリアフィルムの試料201〜207を作成した。
【0058】
4.有機EL素子の作成と評価
(4−1)有機EL素子の作成
ITO膜を有する導電性のガラス基板(表面抵抗値10Ω/□)を2−プロパノールで洗浄した後、10分間UV−オゾン処理を行った。この基板(陽極)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
(第1正孔輸送層)
銅フタロシアニン 膜厚10nm
(第2正孔輸送層)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジン 膜厚40nm
(発光層兼電子輸送層)
トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム 膜厚60nm
最後にフッ化リチウムを1nm、金属アルミニウムを100nm順次蒸着して陰極とし、その上に厚さ5μm窒化珪素膜を平行平板CVD法によって付け、有機EL素子を作成した。
【0059】
(4−2)有機EL素子上へのガスバリア層の設置
熱硬化型の接着剤(ダイゾーニチモリ(株)製、エポテック310)を用いて、ガスバリアフィルムの試料201〜207とそれぞれ貼り合せ、65℃で3時間加熱して接着剤を硬化させた。このようにして封止された有機EL素子を各20素子ずつ作成した。
【0060】
(4−3)有機EL素子発光面状の評価
作成直後の有機EL素子をKeithley社製SMU2400型ソースメジャーユニットを用いて7Vの電圧を印加して発光させた。顕微鏡を用いて発光面状を観察したところ、いずれの素子もダークスポットの無い均一な発光を与えることが確認された。
次に各素子を60℃・相対湿度90%の暗い室内に500時間静置した後、発光面状を観察した。直径300μmよりも大きいダークスポットが観察された素子の比率を故障率と定義し、各素子の故障率を表2に示した。
【0061】
【表2】

【0062】
表2の結果から明らかなように、本発明のガスバリアフィルムの試料201〜203および試料205〜207を用いて封止した有機EL素子は湿熱耐久性に優れていることがわかった。また、重合開始材料が少ない本発明のガスバリアフィルムは、有機EL素子に実装したときの故障率が低く、特に好ましいことがわかった。
【0063】
また、上記において、ガラス基板に代えて、上記試料201〜207のガスバリアフィルムを基板に用いて、有機EL素子を作成し、TV等に必要な500cd/m2で連続点灯させて、輝度を測定した。本発明のガスバリアフィルムを基板に用いた場合故障率は低かったが、比較例のガスバリアフィルムを用いた場合は、早く劣化した。
【0064】
5.低レターデーション基材フィルムを用いたガスバリアフィルムの作成
基材フィルムを、ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、帝人デュポン社製、商品名:テオネックスQ65FA)から、シクロオレフィンポリマーフィルム(COPフィルム、日本ゼオン社製、商品名:ゼオノアZF−16)、透明ポリイミドフィルム(PIフィルム、三菱ガス化学社製、商品名:ネオプリム)、ポリカーボネートフィルム(帝人化成社製、商品名:ピュアエースT−138(1/4波長板)、パンライトD−92)の4種類に変更した以外は、表2に記載した試料207の作成手順と同様に行って、試料301〜304のガスバリアフィルムを作成した。また、上記(4−2)に従って試料301〜304のガスバリアフィルムで封止した有機EL素子を作成し(4−3)に従って評価したところ、故障率は全て0%であった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の製造方法により製造されたガスバリアフィルムは、水蒸気透過率が低い。また、本発明はガスバリアフィルムを容易に製造することができる。さらに、本発明の有機EL素子は、水蒸気透過性も故障率も低いため、産業上の利用可能性が高く、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有し、かつ、前記有機層が、ラジカル重合性モノマーと、1気圧30℃で液状である重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させてなることを特徴とする、ガスバリアフィルム。
【請求項2】
基材フィルム上に、少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有し、かつ、前記有機層が、ラジカル重合性モノマーと、融点が30℃以下である重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させてなることを特徴とする、ガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記重合開始剤の分子量が170以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記組成物中に、重合開始剤を2重量%以下の割合で含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
前記重合開始剤が、下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R1は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個結合した置換基を表し、R2は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n1は0〜5の整数を表し、n1が2以上のとき、それぞれのR2は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記重合開始剤が、下記一般式(2)で表される化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、R3は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表し、R4は炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n2およびn3は、それぞれ、0〜5の整数を表すが、n2およびn3のいずれもが0になることはない。n2が2以上のとき、それぞれのR3は同一であっても異なっていてもよく、n3が2以上のとき、それぞれのR4は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記有機層が、フラッシュ蒸着により形成されてなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項8】
前記有機層を構成するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(4)で表される化合物から選択される少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
一般式(4)
【化3】

(一般式(4)中、R7は、水素またはメチル基を表し、R8は水素原子を表し、L1は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基を表す。m1は、1〜6の整数を表し、m1が2以上のとき、それぞれのR7およびR8は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記有機層を構成するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(5)で表される化合物から選択される少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
一般式(5)
【化4】

(一般式(5)中、R9は、水素またはメチル基を表し、R10は水素原子を表し、L2は炭素数1〜18の置換または無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基を表す。m2は、1〜6の整数を表し、m2が2以上のとき、それぞれのR9およびR10は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項10】
基材フィルム上に、少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有するガスバリアフィルムの製造方法であって、前記有機層を、ラジカル重合性モノマーと、1気圧30℃で液状である重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させて形成することを特徴とする、ガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項11】
基材フィルム上に、少なくとも1つの有機層と、少なくとも1つの無機層とを有するガスバリアフィルムの製造方法であって、前記有機層を、ラジカル重合性モノマーと、融点が30℃以下である重合開始剤とを含む組成物を真空蒸着し、硬化させて形成することを特徴とする、ガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項12】
分子量が170以上の重合開始剤を用いることを特徴とする、請求項10または11に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記組成物中に、重合開始剤を2重量%以下の割合で添加することを特徴とする、請求項10〜12のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項14】
下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含む重合開始剤を用いることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
一般式(1)
【化5】

(一般式(1)中、R1は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個結合した置換基を表し、R2は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n1は0〜5の整数を表し、n1が2以上のとき、それぞれのR2は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項15】
下記一般式(2)で表される化合物を少なくとも1種含む重合開始剤を用いることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
一般式(2)
【化6】

(一般式(2)中、R3は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表し、R4は炭素数1〜18の置換または無置換のアルキル基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリール基、アミノ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基を表す。n2およびn3は、それぞれ、0〜5の整数を表すが、n2およびn3のいずれもが0になることはない。n2が2以上のとき、それぞれのR3は同一であっても異なっていてもよく、n3が2以上のとき、それぞれのR4は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項16】
前記有機層を、フラッシュ蒸着により形成することを特徴とする、請求項10〜15のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項17】
前記有機層を構成するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(4)で表される化合物から選択される少なくとも1種である、請求項10〜16のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
一般式(4)
【化7】

(一般式(4)中、R7は、水素またはメチル基を表し、R8は水素原子を表し、L1は、炭素数1〜18の置換または無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基を表す。m1は、1〜6の整数を表し、m1が2以上のとき、それぞれのR7およびR8は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項18】
前記有機層を構成するラジカル重合性モノマーが、下記一般式(5)で表される化合物から選択される少なくとも1種である、請求項10〜16のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
一般式(5)
【化8】

(一般式(5)中、R9は、水素またはメチル基を表し、R10は水素原子を表し、L2は炭素数1〜18の置換または無置換のアルキレン基、炭素数1〜18の置換または無置換のアリーレン基、エーテル基、イミノ基、カルボニル基、またはこれらの基が複数個直列に結合した1価以上の連結基を表す。m2は、1〜6の整数を表し、m2が2以上のとき、それぞれのR9およびR10は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項19】
請求項10〜18のいずれか1項に記載の製造方法により製造したガスバリアフィルム。
【請求項20】
請求項1〜9、19のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを封止フィルムに用いたデバイス。
【請求項21】
請求項1〜9、19のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを基板に用いたデバイス。
【請求項22】
前記デバイスが電子デバイスである、請求項20または21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記デバイスが有機EL素子である、請求項20または21に記載のデバイス。
【請求項24】
請求項1〜9、19のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを基板に用いた光学部材。

【公開番号】特開2009−172993(P2009−172993A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49576(P2008−49576)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】