説明

ガスバリア性射出形成容器及びその製造方法

ガスバリア性、耐熱性、機械的強度に優れるガスバリア性射出形成容器およびその製造方法を提供する。
【課題】ガスバリア性ラベルを装着したキャビティーにポリオレフィン系樹脂を射出成形して容器側部を形成し、前記ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出成形して、平均厚(T)が0.5〜1.0mmであり、外層から内層に向かってポリオレフィン系樹脂層、ガスバリア性樹脂層およびポリオレフィン系樹脂層とからなり、前記ポリオレフィン系樹脂外層はポリオレフィン系樹脂内層よりも厚い容器底部を形成してなる、ガスバリア性射出形成容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドによりガスバリア性射出形成容器の側部を形成し、次いでポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出して容器底部を形成してなる薄型のガスバリア性射出形成容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気中の酸素によって内容物が悪影響を受けないように、ガスバリア性を付与したカップ状の容器があり、食品その他の容器として多用されている。
【0003】
例えば、ポリグリコール酸層と熱可塑性ポリエステル樹脂層とを含む多層容器であって、容器胴部および底部に、少なくとも1層のポリグリコール酸層からなる中間層が熱可塑性樹脂層の中に埋め込まれたカップ状の多層容器がある(特許文献1)。熱可塑性ポリエステル樹脂層としてPETを使用し、共射出によって有底の多層プリフォームを成形し、これを二軸延伸ブロー成形して多層容器を製造する、というものである。EVOHは、融点と熱分解温度とが近く溶融粘度が高いため、PETと組み合わせて共射出延伸ブロー成形を行うことは困難であることに鑑み、ガスバリア性樹脂としてEVOHに代えてポリグリコール酸層を使用したものである。該容器は、炭酸ガス入りの果汁飲料、乳酸菌飲料、ビール、ワイン、醤油、ソース、ジャム、ゼリー、スープ、サラダオイルなどの飲料や食品用容器に好適である、という。
【0004】
また、最外層および最内層を構成する樹脂が熱可塑性ポリエステル樹脂であり、少なくとも1層のガスバリア性樹脂層を有し、前記ガスバリア性樹脂に、酸素捕捉性を付与できかつガスバリア性樹脂の白化を防止しうる添加剤を含ませてなる多層構造体もある(特許文献2)。実施例では、熱可塑性ポリエステル樹脂としてPETを使用し、ガスバリア性樹脂としてポリアミドMXD6を使用してパリソンを成形し、このパリソンを二軸延伸ブロー成形して容量720mlのボトルを製造している。
【0005】
一方、ポリオレフィン系樹脂などにガスバリア性樹脂を積層した多層成形容器として、内層から外層へ、熱可塑性樹脂(1)層/酸素補足性樹脂を含む樹脂層/熱可塑性樹脂(2)層の順に積層し、かつ真空成形により製造したプラスチック多層成形容器も開示されている(特許文献3)。実施例では、各層をウレタン系接着剤で積層して多層シートを形成し、これを真空成形して、直径7cm、容量80ccの略円筒状の容器を製造している。
【0006】
また、合成樹脂の射出成形によって形成された容器であって、容器側部の内側または外側に、ガスバリア性ラベルを一体化したカップ状容器もある(特許文献4)。カップ状容器の金型にガスバリア性ラベルを装着し、前記フィルムと一体化すべくインモールドにより第1合成樹脂を射出して容器側部を形成し、次いで、先に射出された第1合成樹脂の中にガスバリア性を備える第2合成樹脂を射出してカップ状容器の底壁を形成する、というものである。第1合成樹脂としてポリプロピレン系樹脂やポリエチレンが例示され、第2合成樹脂としてEVOH、MXD6ナイロン、PVDCが例示され、底部の厚さは0.5〜1.5mmと記載されている。
【0007】
同様にして、合成樹脂の射出成形によって形成されて、容器底部と側部に、それぞれガスバリア性ラベルを一体化したカップ状容器もある(特許文献5)。底部にガスバリア性ラベルを一体化するため、底面の内側面も外側面も全く凹凸のない形状のカップ状容器を形成し、このカップ状容器の底部に、接着剤によってガスバリア性ラベルを接着する、というものである。
【0008】
更に、多層射出成形用の装置も公知である。多数個取りバルブゲート式三層射出成形方法で、PETの内層と外層の間にバリア材料の中間層を有するプリフォームを形成する装置もある(特許文献6)。バルブゲートからPETとバリア材料との2種の樹脂を、可動ピンの押し出しによって金型に射出するものであり、加熱ノズルの環状通路を通ってバリア材料を射出し、同時にPETをバルブピンの中央溶融物ボアを通して射出することで、サイクル時間を減らしかつPETの内側層を厚くできる、という。
【0009】
また、PETで作られ、ブローストレッチングに好適な成形品の射出成形のためのマルチプレート成形装置もある(特許文献7)。PETと中間層とからなるプリフォームを形成する装置であり、PETが圧力変動と剪断力とに敏感に反応することに鑑み、バルブゲートからPETと中間層との2種の樹脂を可動ピンの押し出しによって金型に射出するものであり、前記可動ピンによって異なる材料の取り出しまたは閉塞を行うための圧縮空気作動のバルブ装置を備えており、該装置によれば均一な密度の多層プリフォームを形成できる、という。
【0010】
更に、射出パターンに対応して瞬時に樹脂の逆流を止める機構を有する射出成形用ホットランナー金型もある(特許文献8)。異なる2種の樹脂からプリフォームを形成する装置であり、内外層樹脂を樹脂供給口から供給し、次いで中間層樹脂を樹脂供給口から供給する場合に、中間層樹脂の供給を中止すると金型内の中間層用樹脂を供給するラインの圧力が低下するので射出中の内外層用樹脂が多重ノズル内の合流部から中間層用樹脂の流路内に侵入するが、内外層用の樹脂の圧力により瞬時にチェックバルブを移動させて流路をシール状に塞いで逆止弁として機能させ、これによって内外層用樹脂の侵入量を極少量に抑制することができ、中間層用樹脂の金型キャビティーへ充填量のばらつきを小さくすることができる、という。
【特許文献1】特開2003−136657号公報
【特許文献2】特開2003−251775号公報
【特許文献3】特開2001−55216号公報
【特許文献4】特開2006−56559号公報
【特許文献5】特開2006−96390号公報
【特許文献6】特表2002−529272号公報
【特許文献7】特開平7−164512号公報
【特許文献8】特開2004−330672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ガスバリア性のカップ状容器は、スープや果汁などの各種飲料、ソースや醤油などの調味料、ゼリーやアイスクリームなどの菓子類の容器として、易酸化性物質や酸素や大気との接触を嫌う小型精密機器部品などの収納容器に使用され、大量に消費される容器である。従って、簡便な工程で大量に製造できることが望まれる。このような大量生産に好適な容器の製造方法として射出成形があり、寸法の安定した製品を製造することができ、後仕上げの必要も少なく能率的な成形ができるなどの優れた特質を有する。基材樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出成形することでガスバリア性のカップ状容器を製造できれば、製造が容易であり、かつ真空成形などと比較して深い容器を形成することも可能であり、同時に複数個を製造できるなどの利点がある。
【0012】
しかしながら、特許文献1や特許文献2記載の多層容器は、共射出成形によってプリフォームを製造し、このプリフォームを延伸ブローして容器を製造するというものである。すなわち、共射出成形で製造できるのはプリフォームにとどまり、製品を得るにはプリフォームを延伸ブローする工程が必要であり、生産効率に劣る。また、カップ状容器としては、機械的強度や耐熱性、耐衝撃性、機械的強度に優れることが好ましく、このような特性を有する樹脂としてポリオレフィン系樹脂があるが、前記した特許文献1や特許文献2記載の多層容器は、熱可塑性樹脂としてPETを使用するものであり、ポリオレフィンに関する開示はない。なお、プリフォームは層厚が厚く、容器として直接使用できるものではない。
【0013】
一方、特許文献3では、ポリオレフィン系樹脂層を含む容器を製造しているが、予めポリオレフィン系樹脂を含む積層フィルムを形成した後に真空成形によって容器を調製するというものであり、積層フィルムの調製と、真空形成との少なくとも2段の工程が必要である。なお、真空成形では深い容器を精度高く製造することは困難である。しかも、真空成形による場合は成型後に容器端部を切断するため、端面からガスバリア性樹脂が露出する。ガスバリア性樹脂がEVOHなどの親水性樹脂の場合には、120℃の水に30分程度浸漬させるレトルト殺菌を行う際に、容器使用中に端面のガスバリア性樹脂層から水が浸透して多層構造が破壊され、容器壁を水が透過しEVOHのガスバリア性を損なう恐れがある。
【0014】
更に、特許文献5は、ガスバリア性ラベルを装着したキャビティーを使用してインモールド成形するもので壁厚が薄い容器を製造するに適するが、容器底部は成形後にガスバリア性ラベルを接着するため、工程が多く操作が煩雑である。また、特許文献4は、第1合成樹脂とガスバリア性を備える第2合成樹脂を射出して0.5〜1.5mm厚のカップ状容器の底壁を形成しているが、底壁は薄いため、この部分を構成している内側の第2合成樹脂がこれを包み込んでいる第1合成樹脂の一部から表面側に出ることがあって、完全なサンドイッチ構造とならない場合があると記載しており、多層構造形成の困難さを示している。
【0015】
また、特許文献6、特許文献7、特許文献8もいずれも基材樹脂としてPETを対象とし、プリフォームを形成することを目的とするものであり、ポリオレフィン系樹脂による多層射出成形に関する記載は存在しない。
【0016】
上記現状に鑑み、本発明は、ポリオレフィン系樹脂をインモールド成形によって容器側部を形成し、容器底部をポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との共射出によって平均容器底部の厚さ(T)が0.5〜1.0mmであり、容器底部の外層ポリオレフィン系樹脂層が、内層ポリオレフィン系樹脂層よりも厚い、耐熱性、機械的強度などに優れる、ガスバリア性射出形成容器を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、平均容器底部の厚さ(T)が0.5〜1.0mmであり、耐熱性、機械的強度などに優れるガスバリア性射出形成容器の製造方法であって、特定の共射出成形装置を使用し、容器側部をインモールド成形し、容器底部をポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出成形して2種3層の多層構造した、ガスバリア性射出成形容器を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、ガスバリア性を有する容器について詳細に検討した結果、ガスバリア性ラベルを装着してポリオレフィン系樹脂をインモールド成形すれば、平均容器厚(T)が0.5〜1.0mmである容器側部にガスバリア性を付与し、機械的強度、耐熱性を確保することができ、かつ容器底部をポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出するとガスバリア性樹脂層がポリオレフィン系樹脂層から突出せず、各層が均一な多層構造を形成することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
また、キャビティーにガスバリア性ラベルを装着し、バルブゲート方式でポリオレフィン系樹脂をインモールド成形して容器側部を形成し、容器底部をポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との共射出によって形成すると、従来装置を使用して2種3層の多層構造を有する容器底部を形成することができ、ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを射出した後に、所定時間樹脂圧をそのまま保持させ、その後にキャビティーを冷却すると、容器底部の外層から内層に向かってポリオレフィン系樹脂層、ガスバリア性樹脂層およびポリオレフィン系樹脂層からなり、ポリオレフィン系樹脂層とガスバリア性樹脂層との接着性に優れ、層間剥離のないガスバリア性射出形成容器を製造しうることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、機械的強度、耐熱性、耐衝撃性、ガスバリア性に優れるガスバリア性射出形成容器を、提供することができる。
【0021】
本発明のガスバリア性射出形成容器は、容器厚が0.5〜1.0mmと薄い形状の容器を提供することができる。
【0022】
本発明の容器の製造方法は、バルブゲート方式で少なくとも容器底部を共射出成形によって形成するものであり、寸法精度に優れ、少ない工程で製造でき、樹脂の射出を短時間で制御できるため、同時に大量に生産されうる、大量消費に適する容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の第一は、ガスバリア性ラベルを装着したキャビティーにポリオレフィン系樹脂を射出成形して容器側部を形成し、
前記ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出成形して、平均厚(T)が0.5〜1.0mmであり、外層から内層に向かってポリオレフィン系樹脂層、ガスバリア性樹脂層およびポリオレフィン系樹脂層とからなり、前記ポリオレフィン系樹脂外層はポリオレフィン系樹脂内層よりも厚い容器底部を形成してなる、ガスバリア性射出形成容器である。
【0024】
前記ガスバリア性樹脂層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化物(EVOH)、ポリアミドおよびポリキシリレンジアミンジパミドからなる群から選択される1種以上の樹脂からなる層であることが好ましく、前記ガスバリア性樹脂層が、EVOHからなる場合には、温度210℃におけるMFRが10〜30g/10minであり、および/またはエチレン共重合比率が30〜40モル%であることが好ましい。容器の形状に限定はないが、底部と、前記底部の外周に配された側部と、前記側部の外周に設けられたフランジ部とを有するものであってもよく、その際には、前記フランジ部には、前記ガスバリア性樹脂層が存在しなくてもよい。以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
(1)ガスバリア性射出形成容器
本発明のガスバリア性射出形成容器は、図1に示すように、底部(10)と、前記底部の外周に配された側部(20)とを有し、好ましくは図1に示すように前記側部の外周に設けられたフランジ部(30)とを有する。底部には、糸底(13)が形成されていてもよい。一般に、射出成形の射出用ゲートは容器底部中央に形成されている。
【0026】
本発明の容器は、ガスバリア性ラベル(70)を装着したキャビティーにポリオレフィン系樹脂をインモールド成形して容器側部を形成し、次いで、ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを射出用ゲートから共射出して平均厚が0.5〜1.0mmの容器底部を形成してなる容器であり、容器底部外層から内層に向かってポリオレフィン系樹脂層(50)、ガスバリア性樹脂層(40)およびポリオレフィン系樹脂層(50')とからなり、容器底部の外層(50)のポリオレフィン系樹脂層は、内層(50')のポリオレフィン系樹脂層よりも厚いことを特徴とする。このガスバリア性樹脂層(40)は容器底部(10)に存在すればよいが、図1に示すように容器側部の下端部に重複して存在してもよく、また重複することが好ましい。また、図1に示すようにフランジ部(30)を有する場合にはフランジ部(30)にはガスバリア性ラベル(70)が存在しなくてもよい。図2に示すように、フランジ部(30)の上部にガスバリア性ラベルからなる蓋部(60)を接着剤層(63)を介して接着することで、フランジ部(30)にガスバリア性を付与することができ、ひいてはこのような蓋部を有する容器全体のガスバリア性を確保することができるからである。
【0027】
本発明の容器は、少なくとも容器底部をポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出して成形して形成されたものであるが、共射出成形に限定したのは、容器底部金型にポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との2種を同時に射出して、短時間に2種3層の多層構造を形成できるからである。しかも特定の共射出によれば、図1に示すように、容器底部のポリオレフィン系樹脂外層(50)の厚さ(T2)がポリオレフィン系樹脂内層(50')の厚さ(T1)よりも厚く(T2>T1)なり、射出用ゲート部における安定した多層構造の形成と、ガスバリア性樹脂の露出回避を図ることができ、容器全体のガスバリア性及び容器底部の機械的強度を増強することができる。好ましくはT2>T1であり、外層(T2)が0.4〜0.75mmであり、内層(T1)が0.03〜0.3mmである。
【0028】
本発明のガスバリア性射出形成容器は、容器底部の平均容器厚(T)が0.5〜1.0mm、好ましくは0.6〜0.9mmである。この範囲の射出成形容器において、ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との共射出による2種3層の多層構造の形成が困難であることから、上記範囲に限定したものである。なお、前記したようにフランジ部(30)を有する場合にはフランジ部にガスバリア性ラベルが存在しなくてもよい。また、本発明の共射出成形容器において、容器底部を構成するポリオレフィン系樹脂層とガスバリア性樹脂層との合計に対するガスバリア性樹脂層の割合は、5〜10質量%である。本発明では、ガスバリア性樹脂層が均一に積層されるため、上記割合で極めて薄く積層される場合であっても、十分なガスバリア性を確保することができるからである。なお、容器外層および/または内層に他の層を積層するものであってもよい。
【0029】
容器側部および容器底部を構成するポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレンなどを好適に使用でき、特にポリプロピレン系樹脂が機械的強度、耐熱性、耐衝撃性に優れる点で好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチックもしくはシンジオタクチック構造を主として有する結晶性のポリプロピレン系樹脂であってもよく、ホモタイプやコモノマーを含むランダムタイプ、もしくは、多段重合によるブロックタイプ等広範な構造のものも好適に使用することができる。尚、該ポリプロピレン系樹脂は、気相重合法、バルク重合法、溶媒重合法及び任意にそれらを組み合わせて多段重合を採用することができる。ポリプロピレン系樹脂としては、得られるガスバリア性射出形成容器の耐熱性を高める観点から、融点が80〜176℃、結晶融解熱量が30〜120J/gであるポリプロピレン系樹脂が好ましく、融点が120〜176℃、結晶融解熱量が60〜120J/gであるポリプロピレン系樹脂がより好ましい。ここで、融点および結晶融解熱量は、それぞれJIS−K−7121およびJIS−K−7122に従い測定された数値である。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂を製造する方法としては、一般的には、いわゆるチタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせて用いるチーグラー・ナッタ型触媒、周期律表第4族〜第6族の遷移金属化合物を必須としてなる触媒、又はシクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期律表第4族〜第6族の遷移金属化合物を必須成分とするメタロセン触媒を用いて、スラリー重合、気相重合、バルク重合、溶液重合等又はこれらを組み合わせた重合法で一段又は多段で、プロピレンを単独重合することによって単独重合体を得たり、又はプロピレンとそれら以外の炭素数2〜12のオレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンとを一段又は多段で共重合させることによって共重合体を得たりする方法をあげることができる。また、多段で単独重合と共重合の組み合わせも可能である。
【0031】
また、本発明で使用するポリオレフィン系樹脂としては、MFRが、温度190℃で10〜90g/10min、より好ましくは30〜70g/10minのものが好適である。本発明で使用するポリオレフィン系樹脂は、市販の該当品を用いることも可能である。
【0032】
なお、本発明では、前記ポリプロピレン系樹脂として、ポリオレフィンに極性基が導入された変性樹脂を含有するものであってもよい。ポリオレフィンは極性がなくガスバリア性樹脂との接着性に劣る場合がある。そこで、ガスバリア性樹脂との接着性を確保するため、極性基を導入した変性樹脂を混合することで、層間剥離のない2種3層のガスバリア性射出形成容器を得ることができる。このような変性樹脂としては市販品でもよく、例えば三菱化学社製の商品名「モディック」、三井化学社製、商品名「アドマー」などがある。このような変性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂中に0〜50質量%の範囲で混合してもよい。
【0033】
また、前記ガスバリア性樹脂層としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化物(EVOH)、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミドおよびMXD6などのポリキシリレンジアミンジパミドからなる群から選択される1種以上の樹脂からなる層であり、より好ましくはEVOH、ポリキシリレンジアミンジパミドである。ガスバリア性に優れるからである。なかでも、温度210℃におけるMFRが10〜30g/10min、好ましくは15〜25g/10minのEVOHである。メルトフローレート(MFR)は、JIS−K−7203に規定された方法に基づき、測定温度は210℃であり、荷重は2.16kgとして測定した本発明では、市販品を使用することもできる。MFRが上記範囲にあれば、共射出成形によって、ポリオレフィン系樹脂と多層構造を形成しうるからである。また、本発明では、EVOHは、エチレン共重合比率が30〜40モル%である。上記範囲で特にガスバリア性に優れる共射出成形容易を得ることができるからである。
【0034】
なお、本発明で使用するポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂には、射出成形容器の使用目的を損なわない範囲で、各種付加成分、たとえば、老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、内部剥離剤、着色剤、分散剤、アンチブロッキング剤、滑剤、防曇剤、充填剤、軟化剤、難燃剤、高周波加工助材、光輝材フィラー、造核剤、可塑剤、抗菌剤、その他を適宜配合することができる。などがある。
【0035】
本発明のガスバリア性射出形成容器の側部を構成するガスバリア性ラベルとしては、従来公知のガスバリア性ラベルを使用することができる。例えば、少なくともガスバリア層を含む基材フィルム層である。
【0036】
基材フィルム層としては、基材フィルムとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアクリロ二トリル系樹脂などがある。特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、ポリアミド系樹脂のフィルムが好ましい。
【0037】
またガスバリア層は、アルミニウム箔や、金属または金属酸化物の蒸着層がある。予め、上記基材フィルムなどに金属または金属酸化物の蒸着層を形成したフィルムを基材フィルム層およびガスバリア層として使用してもよい。
【0038】
ガスバリア性ラベルには紫外線防止、または紫外線防止層を含んでいてもよい。紫外線防止剤としては、ポリサリチル酸エステル、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、アクリロ二トリル系の紫外線吸収剤があり、紫外線防止層としては、上記紫外線吸収剤をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンフィルムなどの未延伸または延伸プラスチックフィルムに含有させたフィルムが例示できる。
【0039】
更に、ガスバリア性ラベルは印刷基材層や表面保護層を備えていてもよい。表面保護層としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルムを用いることができる。
【0040】
更に、ガスバリア性ラベルは、ヒートシール層を有していてもよい。ヒートシール層として130℃以下で軟化して溶融し容器側部に接着しうる熱接着性材料からなるものなどを例示することができる。このような熱接着性材料としては、(a)低密度ポリエチレン、中密度ボリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メチルメタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸その他の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリアミド系樹脂の1種乃至複数種からなるもの、(b)ヒートシール性を有する、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の未延伸または延伸プラスチックフィルム、(c)エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むホットメルト層、或いは(d)エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むヒートシール性層などを適用することができる。
【0041】
ガスバリア性ラベルは、各層を接着剤を介してドライラミネートするか、または、その一部または全部の層を共押出することにより形成することができる。
【0042】
更に、ラベルの接着層にシリコーン、マイクロクリスタリンワックス、炭酸カルシウム等の無機充填剤を添加して弱接着性層とすることにより二軸延伸ブロー成形品本体から剥離可能にした易剥離性ラベルに構成することができる。この形態のラベルは容器本体から剥離可能であるので、容器の廃棄時にインモールドラベル成形用ラベルを容器本体から剥離した後容器本体をリサイクルすることができる。
【0043】
このようなガスバリア性ラベルとして、(i)延伸ポリプロピレンフィルム(印刷用基材層)(30μm)/ポリエチレンテレフタレート(12μm)/酸化珪素蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ガスバリア層)(12μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むヒートシール層を有する延伸ポリプロピレンフィルム(ヒートシール層)(30μm)、(ii)ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/酸化珪素蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(ガスバリア層)(12μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むヒートシール剤層(ヒートシール層)(50μm)、(iii)延伸ポリプロピレンフィルム(印刷用基材層)(25μm)/アルミニウム箔(ガスバリア層)(15μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むヒートシール性を有する延伸ポリプロピレンフィルム(25μm)、(iv)延伸ポリプロピレンフィルム(印刷用基材層)(25μm)/酸化珪素蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μ)(ガスバリア層)/エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むヒートシール層を有する延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ヒートシール層)(25μm)、(v)延伸ポリプロピレンフィルム(25μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(印刷用基材層)(12μm)/酸化珪素蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(ガスバリア層)(12μm)/エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むヒートシール性を有する延伸ポリプロピレンフィルム(ヒートシール層)(25μm)、(vi)延伸ポリプロピレンフィルム(印刷用基材層)(25μm)/酸化珪素蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ガスバリア層)(12μm)/エチレンメタクリル酸共重合体(ヒートシール層)(25μm)、(vii)延伸ポリプロピレンフィルム(印刷用基材層)(25μm)/酸化珪素蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ガスバリア層)(12μm)/エチレンアクリル酸共重合体(ヒートシール層)(25μm)、(viii)延伸ポリプロピレンフィルム(印刷用基材層)(25μm)/酸化珪素蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ガスバリア層)(12μm)/エチレン酢酸ビニル共重合体を含むホットメルト剤層(ヒートシール層)(50μm)、(ix)延伸ポリプロピレンフィルム(60μm)/エチレン酢酸ビニル共重合体を含むホットメルト剤層(ヒートシール層)(25μm)、(x)延伸ポリプロピレンフィルム(60μm)/エチレン酢酸ビニル共重合体を含むホットメルト剤層(ヒートシール層)(25μm)、(xi)延伸ポリプロピレンフィルム(30μm)/無機蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/延伸ポリプロピレンフィルム(30μm)などの構成を例示することができる。なお、上記構成において、ヒートシール層の存在する構成であっても、ヒートシール層を除いたラベル構成で、本件におけるガスバリア性ラベルとして使用することができる。
【0044】
本発明で使用するガスバリア性ラベルとして、基材フィルムに無機酸化物の蒸着層を形成し、この蒸着層に基材フィルムを積層したものであれば、透明ラベルとして使用することができる。なお、無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法、物理気相成長法またはこれらを複合して、無機酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができる。化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法等のいずれでもよい。具体的には、基材フィルム層の一方の面に、有機珪素化合物、酸化アルミ等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0045】
一方、基材フィルムにアルミ箔を接着したガスバリア性ラベルは、不透明ラベルとなり、好適に使用することができる。アルミ箔を有する場合には、ガスバリア性と共に遮光性を確保することができる。例えば、延伸ポリプロピレンフィルム(30μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/アルミ箔(7μm)/延伸ポリプロピレンフィルム(30μm)などの層構成のガスバリア性ラベルが例示できる。
【0046】
本発明のガスバリア性射出形成容器は上記構成により、酸素透過度が0.005〜0.05cc/pkg・day・atmである。なお、酸素透過度は、後記する実施例で記載する方法で測定した値とする。
【0047】
(2)ガスバリア性射出形成容器の製造方法
上記ガスバリア性射出形成容器は、ガスバリア性ラベルをキャビティーに装着し、インモールドによりポリオレフィン系樹脂を射出して容器側部を形成し、ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出して容器底部を成形したものであれば特に製造方法に限定はない。しかしながら、特定構造のバルブゲート方式で製造すれば、短時間に、均一かつ接着性に優れる多層構造を有する容器を形成することができるため好ましい。すなわち本発明の第二は、
射出用ゲートと、前記射出用ゲートから延設されるポリオレフィン系樹脂供給路と、前記ポリオレフィン系樹脂供給路から延設されるガスバリア性樹脂供給路と、前記ポリオレフィン系樹脂供給路とガスバリア性樹脂供給路に内接して樹脂供給を制御する可動ピンとを有するバルブゲート方式多層射出成形装置で射出成形容器を製造する方法であって、
平均容器底厚(T)が0.5〜1.0mmである容器用金型の内壁にガスバリア性ラベルを装着し、
可動ピンをポリオレフィン系樹脂供給路から離脱させてポリオレフィン系樹脂を射出して容器側部を形成し、
可動ピンをポリオレフィン系樹脂供給路およびガスバリア性樹脂供給路から離脱させて、前記ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出し、ついで
前記可動ピンをガスバリア性樹脂供給路に内接させてポリオレフィン系樹脂のみを射出して容器底部を形成し、
前記ポリオレフィン系樹脂の射出終了後に樹脂圧を保持し、およびキャビティーを冷却することを特徴とする、外層から内層に向かってポリオレフィン系樹脂層、ガスバリア性樹脂層およびポリオレフィン系樹脂層とからなるガスバリア性射出形成容器の製造方法である。
【0048】
ガスバリア性ラベルを装着したキャビティーに射出用ゲートからポリオレフィン系樹脂を射出して容器側部を形成し、ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出し次いでポリオレフィン系樹脂の射出を行うことで容器底部を形成して製造することができる。また、キャビティーに樹脂を射出および充填した後に樹脂圧を保持する保圧を行うことで、容器底部の外層から内層に向かってポリオレフィン系樹脂層、ガスバリア性樹脂層およびポリオレフィン系樹脂層が均一に積層され、かつ容器底部のポリオレフィン系樹脂外層がポリオレフィン系樹脂内層よりも厚いガスバリア性射出形成容器を製造することができる。
【0049】
本発明のガスバリア性射出形成容器は、射出用ゲートと、前記射出用ゲートから延設されるポリオレフィン系樹脂供給路と、前記ポリオレフィン系樹脂供給路から延設されるガスバリア性樹脂供給路と、前記ポリオレフィン系樹脂供給路とガスバリア性樹脂供給路に内接して樹脂供給を制御する可動ピンとを有するバルブゲート方式多層射出成形装置を使用して製造することが好ましい。上記装置によれば、可動ピンの移動によって射出用ゲートから溶融樹脂の射出および停止を制御しうるため、短時間で樹脂供給の制御を行うことができ、大量生産に適し、かつ容器底部の全面が外層から内層に向かってポリオレフィン系樹脂層、ガスバリア樹脂層、ポリオレフィン系樹脂層が積層され、外層が内層よりも厚いガスバリア性射出形成容器を製造することができるからである。このような共射出成形装置の一例を図3を用いて説明する。
【0050】
本発明で好適に使用する共射出成形装置は、可塑化されたポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とが、射出用ゲート(130)から延設されるポリオレフィン系樹脂供給路(110)と、ポリオレフィン系樹脂供給路(110)に延設されるガスバリア性樹脂供給路(120)とを経て射出用ゲート(130)から射出される。ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とは、図示しない樹脂可塑化装置で可塑化され、ついでポリオレフィン系樹脂供給管(113)、ガスバリア性樹脂供給管(123)を経て、ポリオレフィン系樹脂供給路(110)、ガスバリア性樹脂供給路(120)に供給されている。
【0051】
ポリオレフィン系樹脂供給路(110)やガスバリア性樹脂供給路(120)の形状、その他に制限はないが、図3では、可動ピン(160)の外周にガスバリア性樹脂供給路(120)が環状に配置され、更にその外周にポリオレフィン系樹脂供給路(110)が環状に配置される。図9に、図3のA−A'線の断面模式図を示す。ガスバリア性樹脂供給路(120)の中央に可動ピン(160)が挿入され、ガスバリア性樹脂供給路(120)の外周を一周するようにポリオレフィン系樹脂供給路(110)が環状に配設されている。
【0052】
可動ピン(160)は、射出用ゲート(130)と嵌合でき、かつポリオレフィン系樹脂供給路(110)やガスバリア性樹脂供給路(120)と内接することで樹脂の供給を停止でき、前記供給路から離脱することで樹脂を供給できる構造である。可動ピン(160)の移動は、図示しない空気圧ポンプなどによって制御することができる。図10に、射出用ゲート(130)、前記射出用ゲートから延設されるポリオレフィン系樹脂供給路(110)、および前記ポリオレフィン系樹脂供給路(110)から延設されるガスバリア性樹脂供給路(120)との関係を示す。可動ピン(160)の先端位置がP1にある場合にはいずれの樹脂も供給されず、先端位置がP2にある場合には、ポリオレフィン系樹脂供給路(110)からポリオレフィン系樹脂のみが供給される。また、先端位置がP3にある場合には、ガスバリア性樹脂がガスバリア性樹脂供給路(120)およびポリオレフィン系樹脂供給路(110)を経て射出用ゲート(130)に向い、ポリオレフィン系樹脂供給路(110)から射出用ゲート(130)に向うポリオレフィン系樹脂と共に、射出用ゲート(130)から共射出される。各供給路の断面積は、多層成形体の個々の層についての樹脂供給量や射出圧力などに対応して適宜選択することができる。上記構成によれば、可動ピン(160)の上下動によって2種の樹脂の射出の開始および停止を短時間に制御できるため、生産効率を向上させることができる。
【0053】
なお、ガスバリア性ラベルのキャビティーへの装着、樹脂の可塑化、樹脂射出のための空気圧装置などは従前公知の装置と同様に理解することができるため、以下に、ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との射出方法に限定し、可動ピン(160)の上下動による射出ゲート(130)の開閉、およびポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との共射出の状態、可動ピン(160)の移動と樹脂の射出との関係を図4〜図8を用いて説明する。
【0054】
図4は、可動ピン(160)の先端が射出用ゲート(130)に嵌合し、いずれの樹脂も射出用ゲート(130)からキャビティー(150)に射出されない状態を示す。なお、キャビティー(150)は、予めガスバリア性ラベル(70)が装着され、かつ凝固温度、通常は温度5〜30℃、より好ましくは15〜20℃に冷却されている。
【0055】
この状態で、ポリオレフィン系樹脂供給路(110)内のポリオレフィン系樹脂に圧力を付加しながら可動ピン(160)を装置上方に移動させると、ポリオレフィン系樹脂供給路(110)から可動ピンが離脱し、図5に示すように、ポリオレフィン系樹脂供給路(110)からポリオレフィン系樹脂のみが射出される。キャビティー(150)は温度5〜30℃に冷却されているため、キャビティー(150)内に射出されたポリオレフィン系樹脂は、キャビティー(150)の内壁に接触して凝固し、キャビティー(150)の内壁から樹脂内部に向かってポリオレフィン系樹脂の温度勾配が形成される。なお、ポリオレフィン系樹脂の射出温度は、150〜300℃、より好ましくは200〜250℃である。本発明で使用するポリオレフィン系樹脂としては、MFRが温度190℃で10〜90g/10minのものであり、流動性に優れるため射出された樹脂が平均容器厚0.5〜1.0mmのキャビティー(150)内を長さ60〜250mmに亘って前進でき、容器先端部および容器側部をポリオレフィン系樹脂で充填させることができる。
【0056】
次いで、ガスバリア性樹脂供給路(120)の樹脂に圧力を加えながら更に可動ピン(160)を装置上方に移動して、可動ピンをポリオレフィン系樹脂供給路(110)およびガスバリア性樹脂供給路(120)から離脱させると、図6に示すように、前記ポリオレフィン系樹脂の略中央にガスバリア性樹脂が供給され、ポリオレフィン系樹脂の略中央にガスバリア性樹脂が存在する状態でキャビティー(150)に共射出される。ガスバリア性樹脂によってポリオレフィン系樹脂が2層に分割され、ポリオレフィン系樹脂はキャビティー(150)内で容器底部の内層(50')と外層(50)とを形成する。
【0057】
可動ピン(160)を装置上方に移動してガスバリア性樹脂の射出を開始する時間は、ポリオレフィン系樹脂の射出圧力や射出速度、キャビティー(150)の容量やキャビティー(150)の形状などによって適宜選択することができる。ガスバリア性樹脂は、容器底部を形成するものであるから、一般には、ポリオレフィン系樹脂が容器側部を構成するにたる量をキャビティー(150)に供給された後である。ガスバリア性樹脂の射出温度は、ガスバリア性樹脂がEVOHである場合には、190〜240℃、より好ましくは210〜230℃とする。EVOHのMFRは210℃において10〜30g/10minのものであり、上記射出温度であれば、キャビティー(150)内に形成されたポリオレフィン系樹脂層の温度勾配の最も高温部、すなわち最も流動性が高い部分にガスバリア性樹脂層が形成され、均一な多層構造が形成されるからである。この点を詳記すれば、キャビティー(150)内のポリオレフィン系樹脂は濃度勾配を形成するため、射出時のポリオレフィン系樹脂のMFRが15〜70g/10minであっても、ガスバリア性樹脂を射出した時点でのポリオレフィン系樹脂層中央部の流動性は低下する。EVOHを上記温度で射出すると、ポリオレフィン系樹脂の温度勾配と適合してポリオレフィン系樹脂の中央部にガスバリア性樹脂が射出され、ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とが均一な多層構造を維持しつつキャビティー(150)内の容器底部に充填される。なお、EVOHのエチレン共重合比率は30〜40モル%であることが好ましい。この範囲で、優れたガスバリア性を確保することができるからである。
【0058】
一方、ガスバリア性樹脂としてポリアミドを用いる場合は、ポリアミドの場合の射出温度は、220〜270℃、より好ましくは240〜260℃である。また、ポリキシリレンジアミンジパミドの場合、例えば商品名「MXD6」を使用する場合の射出温度は、250〜290℃、より好ましくは260〜280℃である。この範囲で、共射出されたポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とが同じ流速でキャビティー(150)内を移動することができるからである。
【0059】
次いで、図7に示すように、可動ピン(160)を装置下方に移動させ、前記可動ピン(160)をガスバリア性樹脂供給路(120)に内接させてガスバリア性樹脂の供給を停止する。本発明では、射出用ゲート(130)からポリオレフィン系樹脂供給路(110)およびガスバリア性樹脂供給路(120)がこの順に延設される装置を使用するため、これにより射出用ゲート(130)内に残存するガスバリア性樹脂をポリオレフィン系樹脂と共に射出させ、次いでポリオレフィン系樹脂のみを射出させることができる。しかも、射出用ゲートの付近では、ガスバリア性樹脂層が容器内側向かって圧力を受け、ガスバリア性樹脂層が容器内側に偏在しやすくなっている。この偏在により、射出用ゲートの外層は内層よりも厚くなる。また、外層が内層よりも厚いために、従来は射出用ゲート近傍ではガスバリア性樹脂の露出が発生しやすかったのであるが、この露出を回避することができ、かつ容器底部の耐熱性、機械的強度を増強することができる。可動ピン(160)の下方移動によってガスバリア性樹脂の供給を停止する時間は、キャビティー(150)の容量やキャビティー(150)の形状などによって適宜選択することができるが、キャビティー(150)の容器側部および容器底部の大半に樹脂を充填した後である。
【0060】
なお、本発明では、上記装置を使用することで、図6に示すポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との共射出から図7に示すポリオレフィン系樹脂のみの射出への移行期間に、可動ピン(160)を図6の状態にし、ガスバリア性樹脂の圧力を制御して、ガスバリア性樹脂がポリオレフィン系樹脂供給路(110)側には移行せず、ガスバリア性樹脂供給路(120)側に逆流しない程度の保圧を付加した状態を形成することができ、この保圧の付加によって共射出された樹脂がキャビティー(150)内で多層を均一に維持することができる。
【0061】
次いで、図8に示すように可動ピン(160)を更に装置下方に移動して射出用ゲート(130)の位置に戻して、ポリオレフィン系樹脂の供給も停止する。なお、図7に示すポリオレフィン系樹脂のみの射出から、図8に示すポリオレフィン系樹脂の供給停止への移行期間に、可動ピン(160)を射出用ゲートから僅かに浮かせた状態に維持し、ポリオレフィン系樹脂が逆流しない程度の保圧を付加することができ、この保圧の付加によってキャビティー(150)内に射出された樹脂が最端部にも充填され、かつ均一な多層を形成および維持することができる。
【0062】
なお、ガスバリア性樹脂供給路(120)内に可動ピン(160)が内接されている場合に可動ピン(160)を装置上方に移動させると、ガスバリア性樹脂も可動ピン(160)の移動に伴って装置上方に移動して逆流し、ひいてはポリオレフィン系樹脂も逆流するおそれがある。したがって、樹脂供給時には、上記逆流を防止して所定の圧力を提供できるように、ポリオレフィン系樹脂供給路(110)およびガスバリア性樹脂供給路(120)には、可動ピン(160)の移動に対応する圧力を付加して制御することが好ましい。
【0063】
本発明のガスバリア性射出形成容器は、平均容器底厚(T)が0.5〜1.0mmという薄型の容器である。このため、ポリオレフィン系樹脂およびガスバリア性樹脂の射出量も少なく、射出時間を極めて短時間に正確に制御して製造する必要がある。上記方法によれば、バルブゲート方式によって可動ピン(160)の上下動のみで異なる2種の樹脂を一つの射出用ゲート(130)から共射出させることができ、極めて短時間内の樹脂の供給制御が可能となり、短時間にガスバリア性射出形成容器を製造することができる。更に、上記特定の装置を使用することで、ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との共射出についでポリオレフィン系樹脂のみを射出することができるため、容器底部の全面を2種3層の多層構造とすることができる。また、射出用ゲートの付近は、ガスバリア性樹脂層が容器内側向かって圧力を受けるためガスバリア性樹脂層が容器内側に偏在しやすくなり、この偏在によって、射出用ゲートのガスバリア性樹脂の露出を回避することができ、容器底部の外層にポリオレフィン系樹脂層を厚く配置することができ、耐熱性、機械的強度を増強することができる。
【0064】
(3)用途
本発明のガスバリア性射出形成容器は、容器側壁にガスバリア性ラベルをインモールド成形され、容器底部外層から内層に向かってポリオレフィン系樹脂層、ガスバリア性樹脂層およびポリオレフィン系樹脂層とからなる。例えば、図2に示すようにガスバリア性の蓋部を設けることで、ガスバリア性樹脂層を有するため酸素ガスバリア性を必要とする内容物の収納、例えば飲料用容器、ジャム、ゼリーなどの菓子用容器、醤油、ソース、サラダオイルなどの調味料用容器に好適である。更に、医薬、写真用薬剤、化粧品原料、IC製造用薬品などの易酸化性または酸化されてはならない化学薬品類、ぶどう酒、ビール、ソフトドリンク、お茶、コーヒーなどのように香気を必要とする飲料や粉末または酸素もしくは大気との接触を嫌う小型精密機器部品にも好適に使用することができる。
【0065】
特に、本発明のガスバリア性射出形成容器は、容器底部においてガスバリア性樹脂が露出していないため、レトルト殺菌などを行ってもガスバリア性樹脂層が溶解する恐れがない。なお、本発明のガスバリア性射出形成容器は、更に外層に印刷層や遮光層、その他の層を形成してもよい。
【実施例】
【0066】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0067】
なお、各測定は以下の方法で行った。
【0068】
(1)酸素透過度
下記に従いモコン法によって測定した。
【0069】
(i)直径1mmの管を2本装着した厚さ10mmのアクリル板で、実施例1で製造した容器の口部を密封する。
【0070】
(ii)前記アクリル板に装着した管の一本を測定機器に連設し、他の一本から窒素ガスを導入する。
【0071】
(iii)容器内に導入された窒素ガスを、他の管を通して測定機に導入させ、容器の側部を通過して入ってくる酸素の量を測定する。なお、測定は、温度23℃、40%RHの雰囲気下で行う。
【0072】
(2)レトルト殺菌性
圧力230kPa、121℃で20分の含気レトルト殺菌を行い、容器の変形、層間剥離について外観観察を行った。
【0073】
(実施例1)
底径50mm、フランジ外径70mm、フランジ内径61mm、底面肉厚0.9mm、側部肉厚0.7mmの容器を、共射出成形によって製造した。
【0074】
ポリオレフィン系樹脂として、PP(ブロックコポリマータイプ、MFR60g/10min(190℃))、ガスバリア性樹脂として、EVOH(MFR、210℃で20g/10min、エチレン共重合比率35モル%)を使用した。なお、ガスバリア性樹脂層を肉眼で検出するため、青色色素を添加して使用した。
【0075】
共射出装置としてNETSTAL社製、Co−Injection成形機を使用した。該装置は、図3に示すと同様に、射出用ゲートと、該射出用ゲートからこの順に延設されるポリオレフィン系樹脂供給路およびガスバリア性樹脂供給路と、前記供給路に内接して樹脂供給を制御しうる可動ピンとを有するバルブゲート方式多層射出成形装置である。
【0076】
厚さ30μmのOPP、厚さ12μmの無機蒸着PET、厚さ30μmのOPPを積層したガスバリア性ラベルを使用し、キャビティー内壁に装着した。このキャビティーを冷却し、ポリオレフィン系樹脂を温度230℃に加熱して可溶化し、ポリオレフィン系樹脂供給路に導入した。また、ガスバリア性樹脂を温度230℃に加熱して可溶化し、ガスバリア性樹脂供給路に導入し、可動ピンを射出用ゲートに嵌合させた状態で射出成形を開始した。
【0077】
可動ピンを装置上方に移動させ、ポリオレフィン系樹脂を射出して容器側部を形成した。
【0078】
次いで、可動ピンを更に装置上方に移動させてポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出し、次いで、可動ピンを装置下方に移動してガスバリア性樹脂の供給を停止し、ポリオレフィン系樹脂のみを射出して、容器底部を形成した。
【0079】
前記樹脂の射出終了後に樹脂圧を保持し、およびキャビティーを冷却し、樹脂凝固後にキャビティーから容器を取り出した。
【0080】
得られた容器は、容器底部および容器側部は、外層から内層に向かってポリオレフィン系樹脂層、ガスバリア性樹脂層およびポリオレフィン系樹脂層とから構成されていた。
【0081】
前記容器最端部および容器側部にはガスバリア性樹脂層が存在しなかった。ガスバリア性樹脂層は、容器底部全面および容器側部最下部に形成されていた。
【0082】
得られた容器の酸素透過度を測定したところ、0.05〜0.06cc/pkg・day・atmであった。容器底部の平均厚さ(T)は、900μmであった。なお、容器底部のポリオレフィン系樹脂外層(T2)は650〜700μmであり、ポリオレフィン系樹脂内層(T1)は50〜100μmであった。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例2)
厚さ30μmのOPP、厚さ12μmのPET、厚さ7μmのアルミ箔、および厚さ30μmのOPPを順次積層したガスバリア性ラベルを使用した以外は実施例1と同様に操作して、共射出容器を製造した。
【0084】
得られた容器の酸素透過度を測定したところ、0.003〜0.004cc/pkg・day・atmであった。容器底部の平均厚さ(T)は、900μmであった。なお、容器底部のポリオレフィン系樹脂外層(T2)は650〜700μmであり、ポリオレフィン系樹脂内層(T1)は50〜100μmであった。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のガスバリア性射出形成容器は、ポリオレフィン系樹脂をインモールド成形して容器側部を形成し、ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との2種を共射出して容器側部の外層、中間層、内層を構成してなる容器であり、耐熱性、ガスバリア性に優れる。この容器は、共射出成形よって大量に製造することができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の、ガスバリア性射出形成容器の層構成その他を説明するための容器断面図である。
【図2】本発明の、ガスバリア性射出形成容器に蓋部を設けた容器の断面図である。
【図3】本発明のガスバリア性射出形成容器を製造しうる多層射出成形装置の仕組みを説明するための概略断面図である。
【図4】図3に示す多層射出成形装置を使用して、本発明のガスバリア性射出形成容器を製造する際の、可動ピンとポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との射出状況を説明する図であり、可動ピンが射出ゲートに嵌合し、いずれの樹脂も射出されない状態を示す図である。
【図5】図3に示す多層射出成形装置を使用して、本発明のガスバリア性射出形成容器を製造する際の、可動ピンとポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との射出状況を説明する図であり、可動ピンを装置上方に移動させ、射出ゲートからポリオレフィン系樹脂のみを射出させている状態を示す図である。
【図6】図3に示す多層射出成形装置を使用して、本発明のガスバリア性射出形成容器を製造する際の、可動ピンとポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との射出状況を説明する図であり、可動ピンを更に装置上方に移動させ、射出ゲートからポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出させている状態を示す図である。
【図7】図3に示す多層射出成形装置を使用して、本発明のガスバリア性射出形成容器を製造する際の、可動ピンとポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との射出状況を説明する図であり、可動ピンを装置下方に移動させ、ガスバリア性樹脂の射出を停止した状態を示す図である。
【図8】図3に示す多層射出成形装置を使用して、本発明のガスバリア性射出形成容器を製造する際の、可動ピンとポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂との射出状況を説明する図であり、可動ピンを更に装置下方に移動して射出ゲートに嵌合させ、樹脂も射出を停止した状態を示す図である。
【図9】図3のA−A'線における、可動ピンとポリオレフィン系樹脂用環状通路とガスバリア性樹脂用環状通路との関係を示す図である。
【図10】図3に示す多層射出成形装置における可動ピンとポリオレフィン系樹脂供給路とガスバリア性樹脂供給路との関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0088】
10・・・容器底部、
13・・・糸底、
20・・・容器側部、
30・・・フランジ部、
40・・・容器底部ガスバリア性樹脂層、
50・・・容器底部外層、
50' ・・・容器底部内層、
60・・・容器蓋部、
63・・・接着剤層、
70・・・ガスバリア性ラベル、
110・・・ポリオレフィン系樹脂供給用環状通路、
113・・・ポリオレフィン系樹脂供給管、
120・・・ガスバリア性樹脂供給用環状通路、
123・・・ガスバリア性樹脂供給管、
130・・・射出ゲート、
150・・・キャビティー、
160・・・可動ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性ラベルを装着したキャビティーにポリオレフィン系樹脂を射出成形して容器側部を形成し、
前記ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出成形して、平均厚(T)が0.5〜1.0mmであり、外層から内層に向かってポリオレフィン系樹脂層、ガスバリア性樹脂層およびポリオレフィン系樹脂層とからなり、前記ポリオレフィン系樹脂外層はポリオレフィン系樹脂内層よりも厚い容器底部を形成してなる、ガスバリア性射出形成容器。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂である、請求項1または2記載のガスバリア性射出形成容器。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂は、ポリオレフィンに極性基が導入された変性樹脂を含有することを特徴とする、請求項2記載のガスバリア性射出形成容器。
【請求項4】
前記ガスバリア性樹脂層は、エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化物(EVOH)、ポリアミドおよびポリキシリレンジアミンジパミドからなる群から選択される1種以上の樹脂からなる層である、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性射出形成容器。
【請求項5】
前記ガスバリア性樹脂層は、EVOHからなることを特徴とする、請求項4記載のガスバリア性射出形成容器。
【請求項6】
前記EVOHは、温度210℃におけるMFRが10〜30g/10minである、請求項5記載のガスバリア性射出形成容器。
【請求項7】
前記EVOHは、エチレン共重合比率が30〜40モル%である、請求項5または6記載のガスバリア性射出形成容器。
【請求項8】
前記容器は、底部と、前記底部の外周に配された側部と、前記側部の外周に設けられたフランジ部とを有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性射出形成容器。
【請求項9】
前記フランジ部は、前記ガスバリア性ラベルが存在しないことを特徴とする、請求項8に記載のガスバリア性射出形成容器。
【請求項10】
酸素透過度が、0.005〜0.05cc/pkg・day・atmである、請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリア性射出形成容器。
【請求項11】
射出用ゲートと、前記射出用ゲートから延設されるポリオレフィン系樹脂供給路と、前記ポリオレフィン系樹脂供給路から延設されるガスバリア性樹脂供給路と、前記ポリオレフィン系樹脂供給路とガスバリア性樹脂供給路に内接して樹脂供給を制御する可動ピンとを有するバルブゲート方式多層射出成形装置で射出成形容器を製造する方法であって、
平均容器底厚(T)が0.5〜1.0mmである容器用金型の内壁にガスバリア性ラベルを装着し、
可動ピンをポリオレフィン系樹脂供給路から離脱させてポリオレフィン系樹脂を射出して容器側部を形成し、
可動ピンをポリオレフィン系樹脂供給路およびガスバリア性樹脂供給路から離脱させて、前記ポリオレフィン系樹脂とガスバリア性樹脂とを共射出し、ついで
前記可動ピンをガスバリア性樹脂供給路に内接させてポリオレフィン系樹脂のみを射出して容器底部を形成し、
前記ポリオレフィン系樹脂の射出終了後に樹脂圧を保持し、およびキャビティーを冷却することを特徴とする、外層から内層に向かってポリオレフィン系樹脂層、ガスバリア性樹脂層およびポリオレフィン系樹脂層とからなるガスバリア性射出形成容器の製造方法。
【請求項12】
前記ポリオレフィン系樹脂は、温度150〜300℃で射出することを特徴とする、請求項11記載のガスバリア性射出形成容器の製造方法。
【請求項13】
前記ガスバリア性樹脂はEVOHであり、温度190〜240℃で射出することを特徴とする、請求項11または12記載のガスバリア性射出形成容器の製造方法。
【請求項14】
前記EVOHは、温度210℃におけるMFRが10〜30g/10minであり、エチレン共重合比率が30〜40モル%のEVOHある、請求項13記載のガスバリア性射出形成容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−307847(P2008−307847A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160057(P2007−160057)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】