説明

ガス交換弁を操作するためのカムフォロア

本発明は、内燃機関のガス交換弁を操作するためのカムフォロア(1,1′)を提案し、カムフォロアはケーシング(2,2′)と、ケーシングの凹部(4)に支承されている、カム軸のカムに従動するためのカムローラ(3)とを備え、カムローラは、カムローラの軸受孔(13)内を延在している針状ころ軸受(12)を介して、凹部に張架されかつケーシングに支持されている軸受ピン(8)で半径方向に支承されており、針状ころ軸受(12)の幅(B1)は、カムに従動する領域における前記カムローラの幅(B2)よりも明らかに大きい。この構成において、針状ころ軸受の幅は、軸受孔(13)の領域におけるカムローラの幅よりも明らかに大きく、かつ凹部を画成し、カムローラの端面(16)が軸線方向に接触するころ接触面(17,17′)の、内法間隔よりも明らかに大きいことが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のガス交換弁を操作するためのカムフォロアに関し、このカムフォロアは、ケーシングと、このケーシングの凹部に支承されている、カム軸のカムに従動するためのカムローラとを備えている。カムローラは、このカムローラの軸受孔内において延在している針状ころ軸受を介して、凹部に張架されていて、ケーシングに支持されているピンに半径方向に支承されていて、針状ころ軸受の幅が、カムに従動する領域おけるカムローラの幅よりも明らかに大きい。
【0002】
本発明の背景
上記カムローラを備えたカムフォロアは、上位概念を形成するものとして考慮されている、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10121798号明細書において公知になっていて、軸線方向に移動可能なカム群を備えた、ストローク可変の弁装置における使用に特別な寸法でもって適している。カム群の種々異なるカムロブは、カムフォロアにより選択的にガス交換弁に伝達される。隣り合う、つまり、カムローラとは現行では係合していないカムの、カムローラに対する必要な隙間、及びこれと同時に、針状ころ支承部におけるヘルツの接触応力(Hertz'sche Pressung)が、許容される荷重限界を超えないことを保証するために、カムに従動する領域におけるカムローラの幅は、実質的にカムの幅、及び針状ころ軸受の領域おけるカムの幅よりも明らかに大きい幅に相当する。換言すると、引用した先行技術において公知のカムフォロアには、直径において両側で段付けされたカムローラが備え付けられている。カムローラのこの直径段は相応に大きな幅を有している。
【0003】
本発明の目的
本発明の目的は、製造技術的により有利なカムローラを備えた、冒頭で述べた形式のカムフォロアを提供することである。
【0004】
本発明の要約
上記目的を達成する構成は、請求項1に記載した特徴から明らかになる。これに対して、本発明の有利な改良形及び構成は従属請求項から看取可能である。したがって針状ころ軸受の幅は、明らかにかつ有利には、軸受孔の領域におけるカムローラの幅よりも30〜60%大きく、かつころ接触面の内法間隔よりも明らかに大きいことが望ましい。このころ接触面は凹部を画成し、カムローラの端面は軸線方向においてころ接触面に接触する。つまり、冒頭で述べた先行技術とは異なり、ケージ無しの総ころ形の針状ころ軸受、又はケージ案内されている針状ころ軸受は、軸受孔から突出するようになっている。本発明に係る上記構成の根本には、比較的著しく湾曲した内側軌道におけるヘルツの接触応力が、針状ころ軸受の比較的小さく湾曲した外側軌道におけるヘルツの接触応力よりも明らかに大きくなっているので、軸受孔の領域におけるカムローラの幅、つまり外側軌道の幅は、ヘルツの接触応力に重要な、針状ころ軸受の幅、つまり内側軌道の幅よりも明らかに小さく寸法設定することができる、という状況がある。
【0005】
製造技術的に特に有利な構成において、カムローラは平坦な端面を有することが望ましい。つまり、カムローラは、カムに従動する領域及び軸受孔の領域において同じ幅を有しており、移行面又は移行円形部からカム従動面及び軸受孔に向かって見て、製造技術的に手間のかかる直径段を有していない。
【0006】
凹部の内側におけるカムローラの軸線方向の案内は、ころ接触面により行われる。このころ接触面の内法間隔は、針状ころ軸受の幅よりも明らかに小さく、カムローラが所定の軸線方向の遊びを持って凹部に支承されているように選択されている。ころ接触面は、有利には、カムローラ及び針状ころ軸受が共通の対称横平面を有しているように位置決めされている。針状ころ軸受及びカムローラの軸線方向の遊びを無視すれば、カムローラの両端面における軸受孔からの針状ころ軸受の軸線方向の突出量は同一ということである。しかし択一的にはころ接触面は、カムローラが針状ころ軸受に対して偏心して回転するように位置決めされていてもよいので、例えば針状ころ軸受は、隣のカムのために隙間が必要であるカムローラの端面側でのみ、カムローラの軸受孔から突出している。
【0007】
針状ころ軸受は、軸受ピンに直接的に又は軸受ピンに取り付けられている軸受ブッシュにおいて転動することができる。この軸受ブッシュは、有利には半径方向に滑動するように軸受ピンに取り付けられている。
【0008】
カムフォロアは、線形に案内されるタペット又は中央若しくは端部側において旋回運動可能に支承されている、シーソタイプのロッカーアーム(Kipphebel)、揺動アーム又はスイングアームタイプのロッカーアーム(Schlepphebel)である。このスイングタイプのロッカーアームの場合、ロッカーアームの縦長のケーシングは、ケーシングの第1の端部区分において、ロッカーアームを旋回運動可能に支承する支持エレメントのジョイントヘッドを収容するためのジョイントソケットを有し、ケーシングの第2の端部区分において、ガス交換弁のための操作面を有し、ケーシングの中央区分において、凹部を画成し、軸受ピンを支持する、2つのケーシング区分を有している。これらのケーシング区分にころ接触面が延在する。
【0009】
廉価な製造コストを鑑みて、ケーシングは、U字形の横断面輪郭を備えた金属薄板変形部分であることが望ましい。この金属薄板変形部分は、カムローラの両側で延在する側壁と、これらの側壁を結合する、ジョイントソケット及び操作面を備えた底部とから構成される。この構成において、底部にはカムローラのための開口が備え付けられており、ころ接触面は、開口の、ケーシング区分の長手方向に延在している内側縁部により形成されている。この構成に対して択一的な構成において、ころ接触面は、互いに向かい合っている側壁の内面における点状の凸部により形成されている。各側壁がカムローラの軸線方向の案内のために1つの凸部で十分である一方で、複数の凸部が各側壁に設けられていてもよい。有利には側壁のエンボス加工により製造された凸部は、カムローラの端面に対して点状又は面によって接触することができる。
【0010】
有利にはU字形の横断面輪郭は、底部に対して側壁及びジョイントソケットが同じ方向に突出しているように配向されている。換言すれば、カムフォロアのU字材は、ガス交換弁に向かって閉鎖されている。択一的には、ガス交換弁に対して開放しているU字材(逆方向のU字材)が設けられていてもよい。このU字材において、側壁及びジョイントソケットは、逆方向に突出している。
【0011】
本発明のさらなる特徴を、以下の記載及び以下の図面において明らかにする。図面において、本発明を2つのロッカーアームを例にして説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1のロッカーアームを斜め上方から見た斜視図である。
【図2】第1のロッカーアームを斜め下方から見た斜視図である。
【図3】第1のロッカーアームを下方から見た図である。
【図4】ロッカーアームの個別部材であるカムローラ支承部の斜視図である。
【図5】図4に記載のカムローラ支承部の平面図である。
【図6】第2のロッカーアームのケーシングの横断面図である。
【0013】
図面の詳細な説明
図1〜3は、内燃機関のガス交換弁装置のための本発明に係るカムフォロアの第1の実施の形態を種々異なる見方で開示している。ロッカーアーム1として形成されているカムフォロアは、金属薄板材から冷間変形プロセスにおいて製造されている縦長のケーシング2を有し、かつこのケーシング2の凹部4において支承され、カム軸のカムに対して低摩擦で従動するために働くカムローラ3を有している。ケーシング2は、このケーシング2の第1の区分に、ロッカーアーム1を旋回運動可能に支承している支持エレメントの球状のジョイントヘッドを収容するための球冠状のジョイントソケット5を有し、ケーシング2の第2の端部区分に、ガス交換弁のための操作面6を有し、ケーシング2の中央区分に、凹部4を画成する2つのケーシング区分7を有する。凹部4に張架されていてかつカムローラ3を半径方向に支承する軸受ピン8が、端面側をかしめることにより、上記ケーシング区分7に支持されている。
【0014】
ケーシング2は、カムローラ3の両側で延在している側壁9と、これらの側壁9を結合する、ジョイントソケット5及び操作面6を備えた底部10とから構成されるU字形の横断面輪郭を有する。この横断面輪郭は、ガス交換弁に対して閉じられているので、底部10に対して側壁9及びジョイントソケット5が同じ方向に突出しているように配向されている。底部10には、カムローラ3のための開口11が設けられている。
【0015】
図4に基づけば、軸受ピン8におけるカムローラ3の支承は、カムローラ3の軸受孔13により形成されている外側軌道を備えた、総ころ形の、つまりケージのない針状ころ軸受12によっても、軸受ピン8に半径方向に滑動するように収容されていてかつ針状ころ軸受12の内側軌道を形成する軸受ブッシュ14によっても行われる。図5から、針状ころ軸受12の幅B1が、カムに従動する領域におけるカムローラ3の幅、つまりカムローラ3の外周面15の幅よりも明らかに大きいだけでなく、カムローラ3の軸受孔13の領域におけるカムローラ3の幅B2よりも明らかに大きいことも明らかになるので、針状ころ軸受12及び軸受ブッシュ14は、この実施の形態において、カムローラ3の平坦に形成されている端面16に対して突出している。この実施の形態においてB1はB2よりも約40%大きい。
【0016】
図3に示した寸法は、側壁9に内側で接触する針状ころ軸受12の幅B1が、ころ接触面17の内法間隔B3よりも明らかに大きいことも示している。ころ接触面17に、カムローラ3の端面16が軸線方向において接触する。ころ接触面17は、ケーシング区分7の長手方向に延在している開口11の内側縁部により形成されており、カムローラ3、針状ころ軸受12及び軸受ブッシュ14は、共通の対称横平面を有するように位置決めされている。つまり、各軸線方向の遊びを無視すれば(凹部4におけるカムローラ3の軸線方向の遊びは、B3−B2の差により与えられている)、カムローラ3の両端面16における軸受孔13からの針状ころ軸受12及び軸受ブッシュ14の突出量は同一である。
【0017】
本発明に係るカムフォロアの第2の実施の形態は、図6から明らかである。図6においては、ロッカーアーム1′として同様に形成されているカムフォロアのケーシング2′だけを横断面にして示す。ロッカーアーム1′は、ロッカーアーム1とは、ころ接触面17′でのみ異なっている。ころ接触面17′は、この実施の形態において、側壁9′の互いに向かい合っている内面にエンボス加工された点状の凸部により形成されている。
【0018】
ころ接触面に対して、他の択一的な実施の形態(図示せず)の特徴は、側壁9の間隔を、ケーシング2の第2の端部区分において(図3参照)ではなく、既にケーシング2の中央区分において幅B3にまで縮小することにある。この実施の形態において、カムローラ3の端面16は、側壁の互いに向かって延在している内面で軸線方向に接触する。
【符号の説明】
【0019】
1 カムフォロア/ロッカーアーム
2 ケーシング
3 カムローラ
4 凹部
5 ジョイントソケット
6 操作面
7 ケーシング区分
8 軸受ピン
9 側壁
10 底部
11 開口
12 針状ころ軸受
13 軸受孔
14 軸受ブッシュ
15 カムローラの外周面
16 カムローラの端面
17 ころ接触面
B1 針状ころ軸受の幅
B2 カムローラの幅
B3 ころ接触面の内法間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のガス交換弁を操作するためのカムフォロア(1,1′)であって、ケーシング(2,2′)と、該ケーシング(2,2′)の凹部(4)に支承されている、カム軸のカムに従動するためのカムローラ(3)とを備え、該カムローラ(3)は、該カムローラ(3)の軸受孔(13)内を延在している針状ころ軸受(12)を介して、前記凹部(4)に張架されていて、前記ケーシング(2,2′)に支持されている軸受ピン(8)において半径方向に支承されており、前記針状ころ軸受(12)の幅(B1)は、カムに従動する領域における前記カムローラ(3)の幅(B2)よりも明らかに大きい、内燃機関のガス交換弁を操作するためのカムフォロアにおいて、
前記針状ころ軸受(12)の幅(B1)は、前記軸受孔(13)の領域における前記カムローラ(3)の幅(B2)よりも明らかに大きく、かつ前記凹部(4)を画成し、前記カムローラ(3)の端面(16)が軸線方向に接触するころ接触面(17,17′)の内法間隔よりも明らかに大きいことを特徴とする、カムフォロア。
【請求項2】
前記カムローラ(3)の端面(16)は、平坦に形成されていることを特徴とする、請求項1記載のカムフォロア。
【請求項3】
前記ころ接触面(17,17′)は、前記カムローラ(3)及び前記針状ころ軸受(12)が共通の対称横平面を有しているように位置決めされていることを特徴とする、請求項1記載のカムフォロア。
【請求項4】
前記針状ころ軸受(12)の幅(B1)は、前記軸受孔(13)の領域における前記カムローラ(3)の幅(B2)よりも、30〜60%大きいことを特徴とする、請求項1記載のカムフォロア。
【請求項5】
前記針状ころ軸受(12)は、前記軸受ピン(8)に取り付けられている軸受ブッシュ(14)において転動することを特徴とする、請求項1記載のカムフォロア。
【請求項6】
前記軸受ブッシュ(14)は、半径方向に滑動するように前記軸受ピン(8)に取り付けられていることを特徴とする、請求項5記載のカムフォロア。
【請求項7】
前記カムフォロアはロッカーアーム(1)として形成されており、該ロッカーアーム(1)の縦長のケーシング(2)は、該ケーシング(2)の第1の端部区分に、前記ロッカーアーム(1)を旋回運動可能に支承する支持エレメントのジョイントヘッドを収容するためのジョイントソケット(5)を有し、前記ケーシング(2)の第2の端部区分に、前記ガス交換弁のための操作面(6)を有し、前記ケーシング(2)の中間区分に、前記凹部(4)を画成し、かつ前記軸受ピン(8)を支持する2つのケーシング区分(7)を有し、該ケーシング区分(7)において前記ころ接触面(17)は延在していることを特徴とする、請求項1記載のカムフォロア。
【請求項8】
前記ケーシング(2)はU字形の横断面輪郭を備えた金属薄板変形部分であって、該金属薄板変形部分は、前記カムローラ(3)の両側で延在している側壁(9)と、該側壁(9)を結合する、前記ジョイントソケット(5)及び前記操作面(6)を備えた底部(10)とから構成され、該底部(10)に、前記カムローラ(3)のための開口(11)が設けられており、前記ころ接触面(17)は、前記ケーシング区分(7)の長手方向に延在している、前記開口(11)の内側縁部により形成されていることを特徴とする、請求項7記載のカムフォロア。
【請求項9】
前記ケーシング(2′)はU字形の横断面輪郭を備えた金属薄板変形部分であり、該金属薄板変形部分は、前記カムローラ(3)の両側で延在している側壁(9′)と、該側壁(9′)を結合する、前記ジョイントソケット(5)及び前記操作面(6)を備えた底部(10)とから構成され、前記ころ接触面(17′)は、前記側壁(9′)の互いに向かい合う内面における点状の凸部により形成されていることを特徴とする、請求項7記載のカムフォロア。
【請求項10】
前記U字形の横断面輪郭は、前記底部(10)に対して、前記側壁(9,9′)及び前記ジョイントソケット(5)が同じ方向に突出しているように配向されていることを特徴とする、請求項8又は9記載のカムフォロア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−518207(P2013−518207A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550338(P2012−550338)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068277
【国際公開番号】WO2011/088924
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(512006239)シェフラー テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (59)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】