説明

ガス放出の少ないフォトレジスト組成物

【課題】 ガス放出の少ないフォトレジスト組成物を提供する。
【解決手段】 フォトレジスト組成物中に用いるポリマーは、以下の化学式を有する繰り返し単位を含み、
【化1】


式中、Zはポリマー骨格の繰り返し単位を表し、Xは、アルキレン、アリーレン、アラアルキレン、カルボニル、カルボキシル、カルボキシアルキレン、オキシ、オキシアルキレン、及びこれらの組合せから成る群から選択される連結基であり、Rは、水素、アルキル、アリール、及びシクロアルキル基から成る群から選択され、但し、XとRは同じ環システムの部分ではない。また、フォトレジスト組成物のレリーフ画像をパターン化するためのプロセスが開示され、ここで該フォトレジスト組成物のガス放出速度は6.5E+14分子/cm/s未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト用ポリマー及びそのポリマーを含むフォトレジスト組成物に関する。具体的には、本発明はフォトリソグラフィ処理に適したポリマー及びフォトレジスト組成物に関し、ここでこのポリマーはメルドラム酸(即ち、2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4、6−ジオン)の誘導体をベースとする繰り返し単位を含む。
【背景技術】
【0002】
半導体国際技術ロードマップ(ITRS)2006改訂版によると、EUVリソグラフィは32nmハーフピッチ・デバイス製造のための最有力候補である。ツールの進歩及びレジストの入手可能性に関する現在の欠如はこの主張に疑問を投げかけるが、EUVは依然として当該世代のリソグラフィの候補の1つと考えられる。EUVレジストに関する1つの問題はガス放出であり、これはレジストが真空下において強力なEUV放射で照射されるとき光学系を汚染する可能性がある。EUVのガス放出は特定のレジストに対して193nm及び157nmにおけるガス放出よりも多いことが示されている(非特許文献1)。SEMATECは、現在利用可能なプロトタイプのEUVツール内で用いることができるレジストに対して、6.5E+14分子/cm/secのガス放出限界を設定した(非特許文献2)。大量製造(HVM)ツールが利用可能になると、限界値は下方に修正されると予想される。以前の研究はまた、化学増幅レジストにおいてガス放出される化学種の大部分は、保護基の酸触媒による切断、及び光酸発生剤(PAG)の分解生成物に由来することを示している(非特許文献3)。しかしながら、最近の報告は、ガス放出される混合物中の軽い炭化水素(<〜100amu)はEUV光学系に対して無視できる程度の危険性しかもたらさないことを示唆している(非特許文献4)。
【0003】
従って、レジストのガス放出要件を満たすようにフォトレジスト・ポリマー及び光酸発生剤(PAG)のガス放出を制御することが望まれる。
【0004】
サブ50nmレジームにおいて高解像度を達成するための化学増幅レジストにおいては、低活性化エネルギー(低Ea)の保護基が好ましい(非特許文献5)。しかし、一般に低活性化エネルギーの保護基は照射中に大量のガス放出を生じると考えられる。従って、アセタール及びケタール保護基は、低活性化エネルギーの保護基と見なされるが、また大量のガス放出を生じると予想される。しかし、湿気のない状態では、アセタール及びケタール保護基は、光酸が存在しても脱保護されないであろう。このことは、湿気のない状態での電子ビーム及び248nm照射条件下で行われた、脱保護の速度論的研究及びガス放出研究によって示されている(非特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,731,605号
【特許文献2】米国特許第5,344,742号
【特許文献3】米国特許第4,442,197号
【特許文献4】米国特許第4,603,101号
【特許文献5】米国特許第4,624,912号
【特許文献6】米国特許第4,189,323号
【特許文献7】米国特許第5,679,495号
【特許文献8】米国特許第5,580,694号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】W.D.Domke 他、Proc. SPIE 5753, 1066、2005年。
【非特許文献2】K.R.Dean 他、Proc. SPIE 6519, 65191P-1、2006年。
【非特許文献3】M.M. Chauhan 及び P. J. Nealey、J.Vac. Sci. Technol. B, 18(6), 3402、2000年。
【非特許文献4】J.Hollenshead 他、J. Vac. Sci. Technol. B, 24(1), 64、2006年。
【非特許文献5】G.M. Wallraff 他、J. Vac. Sci. Technol. B, 22(6), 3479、2004年。
【非特許文献6】J.Photopolymer Science and Technology 4, 337-340、1991年。
【非特許文献7】Reichmanis他、Chemistry of Materials 3, 395、1991年
【非特許文献8】Thompson他編集、Introduction to Microlithography.
【非特許文献9】Allen他、J. Photopolym. Sci. Technol. 1995年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
メルドラム酸(Meldrum’s acid)の誘導体をベースとする繰り返し単位を含むポリマーを提供することにより、従来技術の欠点を克服し、付加的な利点をもたらすことが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
種々の実施形態において、EUV、VUV、Eビーム等の最新リソグラフィ用途用のフォトレジスト組成物に用いるのに適したポリマーは、以下に示すメルドラム酸(即ち、2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4、6−ジオン)の誘導体をベースとする繰り返し単位を含む。
【化1】

メルドラム酸は、ラクトン並びにケタール官能基を含む。メルドラム酸の誘導体をベースとする繰り返し単位を含むポリマーを化学増幅レジスト配合物中に用いるとき、メルドラム酸はスイッチング基として作用することになる。高温において光酸(照射中に生成される)と湿気の存在下でメルドラム酸基はジカルボン酸及びアセトンを生成することになる。このことは、当初は不溶であったレジスト膜を塩基現像剤に可溶にする。しかしながら、メルドラム酸の誘導体は、従来技術のレジスト配合物中に用いられる普通のアセタール及び/又はケタールよりも加水分解に安定であり、従ってより良好な貯蔵安定性を有すると予想される。さらに、メルドラム酸誘導体の脱保護反応には化学量論的な量の水が必要であり、EUV及びEビーム・ツールの真空条件下での照射中には反応が起きないと予想される。チャンバ内の残留水蒸気による多少の反応があっても、放出される物質は非常に少量のアセトンだけである。
【0009】
一実施形態において、ポリマーは以下の化学式を有する繰り返し単位を含む。
【化2】

式中、Zはポリマー骨格の繰り返し単位を表し、Xは、アルキレン、アリーレン、アラアルキレン、カルボニル、カルボキシル、カルボキシアルキレン、オキシ、オキシアルキレン、及びこれらの組合せから成る群から選択される連結基であり、Rは、水素、アルキル、アリール、及びシクロアルキル基から成る群から選択され、但し、XとRは同じ環システムの部分ではない。
【0010】
別の実施形態において、フォトレジスト組成物は以下の化学式を有する繰り返し単位を含むポリマー、光酸発生剤、および、溶媒を含む。
【化3】

式中、Zはポリマー骨格の繰り返し単位を表し、Xは、アルキレン、アリーレン、アラアルキレン、カルボニル、カルボキシル、カルボキシアルキレン、オキシ、オキシアルキレン、及びこれらの組合せから成る群から選択される連結基であり、Rは、水素、アルキル、アリール、及びシクロアルキル基から成る群から選択され、但し、XとRは同じ環システムの部分ではない。
【0011】
さらに別の実施形態において、フォトレジスト膜中にレリーフ画像を形成するプロセスは、フォトレジスト組成物を基板上に塗布してフォトレジスト膜を形成することを含み、ここでフォトレジスト組成物は以下の化学式を有する繰り返し単位を含むポリマーを含む。
【化4】

式中、Zはポリマー骨格の繰り返し単位を表し、Xは、アルキレン、アリーレン、アラアルキレン、カルボニル、カルボキシル、カルボキシアルキレン、オキシ、オキシアルキレン、及びこれらの組合せから成る群から選択される連結基であり、Rは、水素、アルキル、アリール、及びシクロアルキル基から成る群から選択され、但し、XとRは同じ環システム、光酸発生剤、及び溶媒の部分ではない。本プロセスはさらに、放射源を用いて膜に放射を照射すること、及びフォトレジスト膜を現像してレリーフ画像を形成することを含む。
【0012】
本発明を要約すると、技術的に発明者等は、例えばEUV又はVUVリソグラフィのような最新のリソグラフィ用途に適した、ポリマー、フォトレジスト組成物、及び、それらをリソグラフィ処理する方法を見出した。光酸及び湿気の存在下において、初めは不溶のポリマーが、塩基水溶液中で現像するとケタール官能基の加水分解の結果として可溶となる。アセトンがこの加水分解反応の揮発性副生成物である。
【0013】
付加的な特徴及び利点が本発明の技術によって実現される。本発明の他の実施形態及び態様が本明細書において詳しく説明され、特許請求される本発明の一部分と見なされる。本発明を利点及び特徴によってより良く理解するために、その説明及び図面を参照されたい。
【0014】
本発明と考えられる主題事項は、本明細書の結論部における特許請求の範囲において具体的に指摘され特許請求される。本発明の前述及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面と関連して記述される以下の詳細な説明から明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によって調製されたフォトレジスト組成物に対する、種々の照射後ベーク温度における対比曲線をグラフで示す。
【図2】本発明によって調製され、248nm照射ツール上で画像形成されたパターン化フォトレジスト組成物の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図3】本発明により調製されたフォトレジスト組成物のEUV照射中のガス放出分子の質量スペクトルをグラフで示す。
【図4】本発明により調製され、EUV照射ツール上で画像形成されたパターン化フォトレジスト組成物の走査電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明は、本発明の好ましい実施形態を利点及び特徴と共に、例証として図面を参照して説明する。
【0017】
本発明を詳しく説明する前に、特に別に指示しない限り本発明は特定の組成物、成分、又はプロセスステップに限定されず、それらは変更し得ることを理解されたい。また、本明細書で用いる専門用語は特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明確に別に指示しない限り複数の指示対象を含む。従って、例えば「1つのモノマー」についての言及は、単一のモノマーだけでなく、同じでも同じでなくてもよい2つ又はそれ以上のモノマーの組合せ又は混合物を含み、1つの「光酸発生剤」は、単一の光酸発生剤と同様に、2つ又はそれ以上の光酸発生剤の組合せ又は混合物を含む。
【0019】
本発明の説明及び特許請求の範囲において、以下の専門用語は下に示す定義に従って用いられることになる。
【0020】
本明細書で用いる用語「アルキル」は、1乃至24個の炭素原子、好ましくは1乃至12個の炭素原子を有する分岐又は非分岐の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなど、並びに、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基を指す。
【0021】
本明細書で用いる用語「アルキレン」は、1乃至24個の炭素原子、好ましくは1乃至12個の炭素原子を有する2官能性飽和分岐又は非分岐の炭化水素鎖を指し、例えば、メチレン(−CH−)、エチレン(−CH−CH−)、プロピレン(−CH−CH−CH−)、2−メチルプロピレン(−CH−CH(CH)−CH−)、ヘキシレン(−(CH−)、シクロアルキレンなどを含む。
【0022】
本明細書で用いる用語「アリール」は、特に別に指定しない限り、1乃至5個の芳香環を有する芳香族部分を指す。1つより多くの芳香環を含むアリール基に関しては、環は縮合環又は連結環とすることができる。アリール基は随意に各環につき1つ又は複数の不活性非水素置換基で置換することができる。適切な不活性非水素置換基には、例えば、ハロゲン、ハロゲンアルキル(好ましくはハロゲン置換低級アルキル)、アルキル(好ましくは低級アルキル)、アルコキシ(好ましくは低級アルコキシ)などが含まれる。特に別に指示しない限り、用語「アリール」はまた複素芳香族部分、即ち、芳香族複素環を含むことを意図する。一般に、必須ではないが、ヘテロ原子は窒素、酸素、又はイオウとなる。
【0023】
用語「ポリマー」は、連結したモノマーを含み、直鎖、分岐又は架橋型とすることができる化合物を指すのに用いる。
【0024】
用語「光生成酸」又は「光酸」は、本明細書では、本発明の組成物に放射を照射することにより生成される酸、即ち、組成物中の放射感受性光酸発生剤の結果としての酸を指すのに、同じ意味で用いる。
【0025】
本明細書で開示するのは、フォトレジスト組成物中に用いるのに適したポリマー、並びにフォトレジスト組成物をフォトリソグラフィにより処理するためのプロセスである。このポリマーは、以下の化学式(I)に示すメルドラム酸(即ち、2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4、6−ジオン)の誘導体をベースとする繰り返し単位を含み、これはラクトン及びケタール官能基の両方を含む。
【化5】


メルドラム酸の誘導体をベースとする繰り返し単位を含むポリマーを形成し、化学増幅レジスト配合物中に用いるとき、メルドラム酸の誘導体によって与えられるラクトン及びケタール基はスイッチング基として作用することになる。高温において光酸(照射中に生成される)と湿気の存在下でメルドラム酸基はジカルボン酸及びアセトンを生成することになる。このことは、当初は不溶であったレジスト膜を塩基現像剤に可溶にする。しかしながら、メルドラム酸の誘導体は、現在の低エネルギーのフォトレジスト配合物内に用いられる普通のアセタール及び/又はケタールよりも加水分解に安定であり、従ってより良好な貯蔵安定性を有すると予想される。さらに、メルドラム酸誘導体の脱保護反応には化学量論的な量の水が必要であり、EUV及びEビーム・リソグラフィ処理ツールの真空条件下での照射中には反応が起きないと予想される。チャンバ内の残留水蒸気による多少の反応があっても、放出される物質は非常に少量のアセトンだけである。
【0026】
一実施形態において、ポリマーは、以下の化学式(II)で示されるメルドラム酸の誘導体をベースとする1つ又は複数の繰り返し単位を含む。
【化6】


式中、Zはポリマー骨格の繰り返し単位を表し、Xは、アルキレン、アリーレン、アラアルキレン、カルボニル、カルボキシル、カルボキシアルキレン、オキシ、オキシアルキレン、及びこれらの組合せから成る群から選択される連結基であり、Rは、水素、アルキル、アリール、及びシクロアルキル基から成る群から選択され、但し、XとRは同じ環システムの部分ではない。
【0027】
化学式(II)で定義される繰り返し単位を含むポリマーは、塩基水溶液に可溶な基、例えばフェノール、フルオロアルコール、及び/又は極性基、例えばラクトン、無水物、アルコール基、スルホンアミド基、他の酸に不安定な基などを含有するコモノマーを含むことができる。異なるモノマー単位の割合を限定することは意図しない。例えば、以下の実施例4に、ポリ[4−ヒドロキシスチレン−co−2,2-ジメチル-5−(4−ビニルベンジル)-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン]コポリマーの合成を詳述する。この実施例において示すm:nの比は75:25(ここで、nは化学式(II)で定義されるメルドラム酸の誘導体を表す)としたが、本開示を考慮すれば、モノマー比を変化させることにより、m:nの比が、それぞれ、[0モル%より大きく99.99モル%まで]
:[0.01モル%から100モル%未満]の比となるコポリマーを得ることができる。他の実施形態において、m:nの比は、それぞれ、[50モル%より大きく100モル%未満]:[0モル%より大きく50モル%未満]である。さらに他の実施形態において、m:nの比は、それぞれ、[60モル%より大きく90モル%未満]:[10モル%より大きく40モル%未満]である。同様に異なるモノマーの数を限定することは意図しない。より高次のポリマー、例えばターポリマーなどを作成することもできる。一実施形態において、分子量は1,000乃至100,000ダルトン、他の実施形態において分子量は5,000乃至10,000ダルトンである。
【0028】
化学式(II)の構造を有するモノマーは、関連する教科書及び文献に記載の方法、又は当業者に既知の方法を用いて容易に合成することができる。典型的なモノマー及びポリマーの合成法は実施例において説明する。
【0029】
例えば、化学式(II)の構造を有する繰り返し単位を含むコポリマーは、適切なフリーラジカル開始剤を用いたラジカル共重合によって調製することができる。ラジカル重合は行い易く、経済的であり、レジストポリマーの調製には非常に適している。開始剤は、何れかの通常のフリーラジカル発生重合開始剤とすることができる。適切な開始剤の例としては、O−t−アミル−O−(2エチルヘキシル)モノペロキシカーボネート、ジプロピリペルオキシジカーボネート、及びベンジルペルオキシド(BPO)のようなペルオキシド、並びに、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−アミジノ−プロパン)ジヒドロクロリド、及び2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジハイドレートのようなアゾ化合物が挙げられる。開始剤は、一般に、モノマーに対して約0.2乃至20モル%の量で重合混合物中に存在する。
【0030】
ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、及び核磁気共鳴分光(NMR)によって特徴付けることができる。
【0031】
本発明はまた、化学式(II)の繰り返し単位を含むフォトレジスト・ポリマー、光酸発生剤、及び有機溶媒を含むフォトレジスト組成物を提供する。
【0032】
本発明の組成物中には、様々な光酸発生剤を用いることができる。フォトレジスト組成物中に用いる感光性酸発生剤は、フォトレジスト分野で既知であり、フォトレジスト組成物の他の成分と適合する任意の適切な感光性酸発生剤とすることができる。好ましいフォトレジスト酸発生剤(PAG)の例としては、α-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン-2,3−ジカルボキシイミド(MDT)、オニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、及びN−ヒドロキシアミド又はイミドのスルホン酸エステルが挙げられ、これらは特許文献1に開示されている。また、N−ヒドロキシ-ナフタルイミドのドデカンスルホン酸塩(DDSN)のような弱酸を生成するPAGを用いることもできる。同じくPAGの組合せを用いることができる。
【0033】
一般に、適切な酸発生剤は高い熱的安定性(典型的には140°Cを上回る温度まで)を有し、それ故それらは照射前処理中には分解しない。MDT及びDDSNに加えて、他の適切なPAGには他のスルホン酸塩並びにスルホン酸エステル及びスルホニルオキシケトンが含まれる。ベンゾイントシレート、t−ブチルフェニルα-(p−トルエンスルホニルオキシ)-アセテート、及びt−ブチルα-(p−トルエンスルホニルオキシ)-アセテートを含む適切なスルホネートPAGの開示に関しては、Sinta他による特許文献2、及び非特許文献6を参照されたい。
【0034】
オニウム塩もまた、一般的に、本発明の組成物の好ましい酸発生剤である。弱求核性陰イオンを含むオニウム塩は、特に適していることが見出されている。そのような陰イオンの例は、例えば、Sb、B、P、及びAsなどの2価乃至7価の金属又は非金属のハロゲン錯陰イオンである。適切なオニウム塩の例は、アリール−ジアゾニウム塩、ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩及びスルホキソニウム塩又はセレニウム塩(例えば、トリアリールスルホニウム及びジアリールヨードニウムのヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩、及びトリフルオロメタンスルホン酸塩)である。好ましいオニウム塩の例は特許文献3、特許文献4、及び特許文献5に見出すことができる。
【0035】
他の有用な酸発生剤には、ニトロベンジルエステル及びs−トリアジン誘導体の一群が含まれる。適切なs−トリアジンの酸発生剤は、例えば、特許文献6に開示されている。
【0036】
さらに他の適切な酸発生剤には、それらに限定されないが、N−カンファースルホニルオキシナフタルイミド、N−ペンタフルオロフェニルスルホニルオキシナフタルイミド、イオン性ヨードニウムスルホン酸塩(例えば、ジアリールヨードニウム(アルキル又はアリール)スルホン酸塩及びビス−(ジ−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファニルスルホン酸塩)、イオン性ヨードニウムペルフルオロアルカンスルホン酸塩(例えば、ジ−(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムペンタフルオロオクタンスルホン酸塩、「IPFOS」)、アリール(例えば、フェニル又はベンジル)トリフラート及び誘導体及びその類似物(例えば、トリフェニルスルホニウムトリフラート又はビス-(t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフラート)、ピロガロール誘導体(例えば、ピロガロールのトリメシラート)、ヒドロキシイミドのトリフルオロメタンスルホン酸エステル、α,α’-ビス−スルホニル−ジアゾメタン、ニトロ置換ベンジルアルコールのスルホン酸エステル、ナフトキノン−4−ジアジド、並びにアルキルジスルホンが含まれる。
【0037】
他の適切な光酸発生剤は、Reichmains他による非特許文献7及びYamachika他による特許文献7に開示されている。本発明の組成物及び方法と関連して有用な付加的な適切な酸発生剤は当業者には既知であり及び/又は関連文献に説明されている。
【0038】
溶媒の選択は、多くの要因によって決定され、レジスト成分の溶解度及び混和性、コーティング・プロセス、並びに安全性及び環境規制に限定されない。さらに、他のレジスト成分に対して不活性であることが望ましい。さらに、溶媒が適当な揮発性を有して膜の均一なコーティングを可能にし、それにも関わらず塗布後ベークプロセス中に残留溶媒の大幅な減少又は完全な除去を可能にすることが望ましい。例えば、Thompson他編集の非特許文献8を参照されたい。上記の成分に加えて、本発明のフォトレジスト組成物は、一般に、他の成分を溶かして全組成物を基板表面上に均一に塗布し、無欠陥コーティングをもたらすことができるキャスト溶媒を含む。フォトレジスト組成物が多層画像形成プロセスに用いられる場合、画像形成層のフォトレジストに用いられる溶媒は、下層の材料に対する溶解力がないことが好ましい。そうでなければ不要な混合が起こり得る。適切なキャスト溶媒の例としては、エトキシエチルプロピオネート(EEP)、EEPとγ−ブチロラクトン(GBL)の組合せ、PGMEA、及び乳酸エチルが挙げられる。本発明はいかなる特定の溶媒の選択には限定されない。溶媒は通常、エーテル含有、エステル含有、ヒドロキシ含有、及びケトン含有化合物、又はこれら化合物の混合物から選択することができる。適切な溶媒の例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、乳酸エチルなどの乳酸エステル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルエステル、メチルセロソルブのようなアルキレングリコールモノアルキルエステル、酢酸ブチル、2−エトキシエタノール、及び、エチル−3−エトキシプロピオネートが挙げられる。好ましい溶媒はPGMEA、EEP、及びそれらの混合物を含む。
【0039】
上記の溶媒のリストは例証目的のためだけであり、包括的であると考えるべきではなく、決して溶媒の選択が本発明を限定すると考えるべきではない。当業者であれば、様々な溶媒又は溶媒混合物を使用できることを認識するであろう。通常、レジスト調合物の全質量の50パーセント超、好ましくは80パーセント超は溶媒から成る。
【0040】
フォトレジスト・ポリマーは、組成物中に含まれる固形分の最大で約99重量%までに相当し、光酸発生剤は、組成物中に含まれる固形分の約0.5乃至10重量%に相当する。他の成分及び添加剤もまた存在することができる。
【0041】
例えば、ポシティブ・フォトレジスト組成物は溶解抑制剤を含むことができ、ネガティブ・フォトレジスト組成物は架橋剤を含むことになる。溶解抑制剤及び架橋剤が存在する場合、それらは典型的には、全固形分の約1重量%乃至40重量%、好ましくは約5重量%乃至30重量%の範囲で存在することになる。適切な溶解抑制剤は、当業者には既知であり及び/又は関連する文献に記載されているであろう。好ましい溶解抑制剤は、レジスト組成物、及びレジスト組成物の溶液を調製するのに用いる溶媒(例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、又は「PGMEA」)の両方に高い溶解度を有し、強い溶解抑制を示し、高い照射溶解速度を有し、関心のある波長において実質的に透明であり、Tgに対する穏やかな影響、強いエッチ耐性を示し、優れた熱安定性(即ち、約140℃又はそれ以上の温度における安定性)を示す。適切な溶解抑制剤には、それらに限定されないが、ビスフェノールA誘導体及びカーボネート誘導体、例えば、一方又は両方のヒドロキシル部分が、t−ブトキシカルボニル又はt−ブトキシカルボニルメチル基のようなt−ブトキシ置換基又はその誘導体に変換されたビスフェノールA誘導体、CF-ビスフェノールA―OCH(CO)―O−tBu(t−ブトキシカルボニルメチル基で保護された6F−ビスフェノールA)のようなフッ素化ビスフェノールA誘導体、直鎖又は分岐鎖アセタール基、例えば、1−エトキシエチル、1−プロポキシエチル、1−n−ブトキシエチル、1−イソブトキシエチル、1−t−ブチルオキシエチル、及び1−t−アミルオキシエチル基など、環状アセタール基、例えば、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、及び2−メトキシテトラヒドロピラニル基など、並びに、17−位置における17−アルキルカルボキシレートが典型的に低級アルキルであるアンドロスタン-17−アルキルカルボキシレート及びその類似物、が含まれる。そのような化合物の例としては、コール酸メチル、リトコール酸メチル、ウルソコール酸メチル、コール酸t−ブチル、リトコール酸t−ブチル、ウルソコール酸t−ブチルなどを含む、コール酸、ウルソコール酸、及びリトコール酸の低級アルキルエステル(例えば、非特許文献9、上記引用文献を参照されたい)、それら化合物のヒドロキシル置換類似物(前掲文献)、並びに、1つ乃至3つのC−Cフルオロアルキルカルボニルオキシ置換基、例えばトリフルオロアセチルリトコール酸t−ブチルで置換されたアンドロスタン−17−アルキルカルボキシレート(例えば、Allen他による特許文献8を参照されたい)が挙げられる。
【0042】
他の通常の添加剤には、調合されたレジストの光学密度を調節するのに用いることができる染料、及び、放射を吸収しそれを光酸発生剤に伝達することによって光酸発生剤の作用を強化する増感剤が含まれる。例としては、官能基を有するベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ビフェニレン、インデン、ナフタレン、アントラセン、クマリン、アントラキノン、他の芳香族ケトン、及び上述のいずれかの誘導体及び類似物などの芳香族化合物が挙げられる。
【0043】
様々な塩基性度を有する種々様々な化合物を安定剤及び酸拡散制御剤として用いることができる。それらには、窒素含有化合物、例えば、脂肪族第1、第2、及び第3アミン、環状アミン、例えば、ピペリジン、ピリミジン、モルホリンなど、芳香族複素環化合物、例えば、ピリジン、ピリミジン、プリンなど、イミン、例えば、ジアザビシクロウンデセン、グアニジン、イミド、アミドなど、及び他の化合物が含まれる。アルコキシド(例えば、ヒドロキシド、フェノラート、カルボキシレート、アリール及びアルキルスルホネート、スルホンアミドなど)の1級、2級、3級、及び4級のアルキル及びアリールアンモニウム塩を含むアンモニウム塩を用いることもできる。アルコキシド(例えば、ヒドロキシド、フェノラート、カルボキシレート、アリール及びアルキルスルホネート、スルホンアミドなど)のような陰イオンを含むピリジニウム塩及び他の複素環窒素含有化合物を含む、他の陽イオン性窒素含有化合物を用いることもできる。界面活性剤を用いて、コーティングの均一性を向上させることができ、種々様々なイオン性及び非イオン性の単量体種、オリゴマー種、及びポリマー種を含めることができる。
【0044】
同様に、種々様々の消泡剤を用いて、コーティング欠陥を抑制することができる。同じく接着促進剤を用いることができる。ここでもやはり種々様々な化合物を用いてこの機能を果たさせることができる。種々様々な単量体、オリゴマー及びポリマーの可塑剤(例えば、オリゴ及びポリエチレングリコールエーテル、脂環式エーテル、及び非酸反応性ステロイド誘導物質)を所望であれば可塑剤として用いることができる。しかしながら、上記の化合物群も特定の化合物も、包括的及び/又は限定的であることを意図したものではない。当業者であれば、これらの通常の添加剤が果たす種類の作用を行うように用いることができる広範囲の市販の製品を認識するであろう。
【0045】
リソグラフィによりフォトレジスト・パターンを形成するのに有用な、例示的な放射又は照射源には、制限なく、VUV(157nm)、ArF(193nm)、KrF(248nm)、EUV(13nm)、Eビーム、X線、及びイオンビームが含まれる。照射エネルギーは約1mJ/cm乃至約100mJ/cmの範囲内にあることが好ましい。
【0046】
本発明はまた、上で説明したフォトレジスト組成物を用いて製造される半導体デバイスを提供する。以下の実施例において、特に別に指示しない限り、部は重量部であり、温度は℃における温度であり、圧力は大気圧又はその近くである。さらに全ての出発物質は市販のもの又は既知の手順で合成したものとした。4−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)スチレンのモノマーはセントラル硝子株式会社(Central Grass Company)から入手した。
【0047】
適切な場合には、実施例において以下の技術及び装置を用いた。H及び13CNMRスペクトルは、アバンス(Avance)400分光器により室温で測定した。定量的13CNMRはアバンス400分光器により、室温でアセトンd中において、反転ゲートHデカップルモードにおいて、緩和剤としてCr(acac)3を用いて、走査した。ポリマー組成分析に関しては、19FNMR(379MHz)をまたブルカーのアバンス400分光器を用いて測定した。熱重量分析(TGA)はTAインスツルメントHi−ReaTGA2950熱重量アナライザにより、N中で5℃/minの加熱速度で行った。示差走査熱量測定(DSC)は、TAインスツルメントDSC2920改良型示差走査熱力計により10℃/minの加熱速度で行った。分子量は、ウオーター(Water)モデル150クロマトグラフにより、テトラヒドロフラン中でポリスチレン標準に対して測定した。IRスペクトルはニコレー(Nicolet)510FT−IR分光計により、KBr板上にキャストした膜について記録した。膜厚はナノメトリック社(Nanometric Inc.)のNanoSpec6100又はテンコア(Tencor)のアルファ−ステップ2000によって測定した。水晶微量天秤(QCM)を用いて、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(CD−26)中のレジスト膜の溶解速度を調べた。
【0048】
193nm照射は、0.60NAのISIのミニステッパー上で行った。248nm照射はASMLの0.60NAのステッパー上で行った。Eビーム照射はライカ(Leica)の100kV照射ツールにより行った。EUV照射は、カルフォルニア州、バークレイ所在のローレンス・バークレイ国立研究所におけるプロトタイプのEUVツール上で行った。
【0049】
以下の実施例や例証目的のためだけに提示するもので、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。数(例えば、量、温度など)に関する精度を確保する努力を行ったが、誤差及び偏差の可能性を考慮に入れるべきである。
【実施例】
【0050】
実施例1
2,2−ジメチル−5−(4−ビニルベンジル)−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(VBMMA)の合成。
【化7】


撹拌バー、サーモウェル、及び、窒素ラインに接続された冷却器を取り付けた500mlの3つ口丸底フラスコに、10.0グラム(0.0632モル)の2,2,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、10.6グラム(0.0632モル)のp−(クロロメチル)スチレン、35グラム(0.2528モル)の炭酸カリウム、及び200mlのアセトンを加えた。約1グラムのフェノチアジンを安定剤として添加した。混合物を一晩撹拌しながら還流させ、その時点で冷却させ、200mlの酢酸エチルで希釈し、セライトのベッドを通してろ過した。ろ液を水及び塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で一晩乾燥させた。懸濁液をろ過し、ろ液をロータリ・エバポレータ上で蒸発させて淡褐色オイルにし、これは自発的に結晶した。この結晶を収集し、35−65石油エーテルで洗浄して、3.5gの2,2−ジメチル−5−(4−ビニルベンジル)−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(化学式(III)で示す)を得た。
【0051】
実施例2
2,2−ジメチル−5−アリル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(ALMMA)の合成。
【化8】


撹拌バー、サーモウェル、及び、窒素ラインに接続された冷却器を取り付けた500mLの3つ口丸底フラスコに、10.0グラム(0.0632モル)の2,2,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、7.7グラム(0.0632モル)の臭化アリル、21グラム(0.152モル)の炭酸カリウム、及び200mlのアセトンを加えた。混合物を一晩撹拌しながら還流させ、その時点で冷却させ、200mlのエチルエーテルで希釈し、セライトのベッド/活性炭を通してろ過した。ろ液を水洗し、塩水処理し、無水硫酸ナトリウム上で一晩乾燥させた。懸濁液をろ過し、ろ液をロータリ・エバポレータ上で蒸発させて11gの2,2−ジメチル−5−アリル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン化合物(化学式(IV)で示す)を無色透明なオイルとして得た。
【0052】
実施例3
4−(2,2−ジメチル−4,6−ジオキソ−[1,3]−ジオキサン−5−イル)−ブチル酸2−(2−メチル−アクリロイルオキシ)−エチルエステルの合成。
【化9】


モノ(2−メチルアクリロイルオキシ)エチルスクシネート(3.9g、20ミリモル)、メルドラム酸(3.20g、22ミリモル)、4−ジメチルアミノピリジン(3.85g、32ミリモル)及びフェノチアジン(46mg)を、温度計、窒素/真空注入口、及びジクロロメタン(50ml)中のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(4.74g、23ミリモル)の溶液を入れた添加フラスコを取り付けた250mlの3つ口丸底フラスコ中のジクロロメタン(100ml)に溶解させた。このシステムを窒素で脱酸素し、反応フラスコを酸/アセトン中で冷却し、DCC溶液を1時間にわたって添加した。反応は冷却槽内で一晩進行させた。白色沈殿物をろ過除去した。ろ液を10%のKHSO水溶液(100ml×3)及び塩水(100ml)で洗浄し、MgSO上で乾燥し、ろ過し、4−(2,2−ジメチル−4,6−ジオキソ−[1,3]ジオキシン−5−イリデン)−4−ヒドロキシ−ブチル酸2−2−メチル−アクリロイルオキシ)−エチルエステル溶液を直接にアセトキシホウ化水素還元のために用いた。
【0053】
4−(2,2−ジメチル−4,6−ジオキソ−[1,3]ジオキシン−5−イリデン)−4−ヒドロキシ−ブチル酸2−2−メチル−アクリロイルオキシ)−エチルエステル溶液を氷/アセトン槽中で冷却し、酢酸(13.5ml)を加えた。次に水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)(1.85g、50ミリモル)を1時間かけて加えた。反応物を冷却槽中に一晩保持し、塩水(100ml×2)及び水(100ml×2)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過した。別の部分のフェノチアジン(46mg)を加え、溶液を真空下で濃縮し、酢酸エチルに溶解させ、ろ過し、ヘキサンを加えて再結晶させ、上の化学式(V)に示す4−(2,2−ジメチル−4,6−ジオキソ−[1,3]−ジオキサン−5−イル)−ブチル酸2−(2−メチル−アクリロイルオキシ)−エチルエステルの2ロットの淡黄色固体3.91gを得た(収率57%)。
【0054】
実施例4
ポリ[4−ヒドロキシスチレン−co−2,2−ジメチル−5−(4−ビニルベンジル)−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン];ポリ(4HS−co−VBMMA)(75:25)の合成。
【化10】


4−ヒドロキシスチレン(2.50gの72%テトラヒドロフラン溶液、0.015モル)、2,2−ジメチル−5−(4−ビニルベンジル)−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(VBMMA)(1.37グラム、0.005モル)及び8.9グラムのテトラヒドロフランを、冷却器及び窒素注入口を取り付けた丸底フラスコに入れた。この溶液に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.131グラム、0.0008モル)を加え、溶解するまで撹拌した。次に、この溶液を4回の真空/窒素パージにより脱気した。次に内容物を加熱して18時間還流させた。その後、溶液をヘキサン(300ml)中に滴下した。析出したポリマーをろ過し(フリット(frit))、ヘキサン(50ml)で2回洗浄し、3時間吸引乾燥した。次にこのポリマーを、アセトン中からそれぞれDI水及びHFE−7100中へ入れて、2回再結晶させた。最終的なポリマーを真空下500℃において乾燥させた。収量は1.86グラムであり、Mw=6,508、PDI=1.58であった。
【0055】
実施例5
ポリ[4−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)スチレン−co−2,2−ジメチル−5−(4−ビニルベンジル)−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン];ポリ(4HFA−ST−co−VBMMA)(65:35)の合成。
【化11】


4−(2−ヒドロキシヘキサフルオロ−2−プロピル)スチレン(4HFA−ST)(1.40g、0.0052モル)、2,2−ジメチル−5−(4−ビニルベンジル)−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(VBMMA)(0.77g、0.0028モル)及び6.6グラムのテトラヒドロフランを、冷却器及び窒素注入口を取り付けた丸底フラスコに入れた。この溶液に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.052グラム、0.00032モル)及び1−ドデカンチオール(0.048g、0.00024モル)を加え、溶解するまで撹拌した。次に、この溶液を4回の真空/窒素パージにより脱気した。次に内容物を加熱して18時間還流させた。その後、溶液をヘキサン(200ml)中に滴下した。析出したポリマーをろ過し(フリット(frit))、ヘキサン(50ml)で2回洗浄し、このポリマーを真空下500℃において乾燥させた。収量は1.58グラムであり、Mw=10,480、PDI=1.84であった。
【0056】
実施例6
ポリ(4HS−co−VBMMA)(75:25)をベースとするフォトレジスト組成物。
実施例4により調製したポリマー1.0グラム、2つのスルホニウム光酸発生剤(PAG)の混合物50mg、及び有機塩基3.3mgを、7.3gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させた。この溶液を0.2マイクロメートルのシリンジフィルターを通してろ過した。
【0057】
実施例6のフォトレジスト組成物を、多数のシリコンウェハの上にスピンコートし、塗布後ベークを110℃で60秒間行った。図1は、90秒間の種々の照射後ベーク温度におけるフォトレジスト組成物に対する対比曲線をグラフで示す。照射線量の関数としての厚さを、種々の照射後ベーク温度に対して測定した。
【0058】
さらに、実施例6のフォトレジスト組成物を、62nmの反射防止被膜(Brewer Science DUV−42P)でコーティングされたシリコンウェハの上に、厚さ267nmでスピンコートし、0.60NAのASML248nmのステッパーを用いて画像形成した。フォトレジスト組成物には60秒間110℃で塗布後ベークし、60秒間108℃で照射後ベークし、0.26NのTMAH水溶液中で現像した。図2は、150nm及び160nmのフィーチャ・サイズにおけるパターン化されたフォトレジスト組成物に対する1:1線間隔対の走査電子顕微鏡写真を示す。
【0059】
実施例7
EUV照射用のポリ(4HS−co−VBMMA)(75:25)をベースとするフォトレジスト組成物。
実施例4により調製したポリマー0.25g、2つのスルホニウム光酸発生剤(PAG)の混合物15.0mg、及び有機塩基0.825mgを、4.1gのPGMEAに溶解させた。この溶液を0.2マイクロメートルのシリンジフィルターを通してろ過した。
【0060】
フォトレジスト組成物のガス放出を、EUV照射中に分析した。実験はアルバニー大学のセマテック−ノース(SEMATECH-North)におけるEUVレジスト試験センターで行った。厚さ100nmのレジスト膜を、単独型EUV源からの56mJ/cm(2xE0)のEUV放射で照射した。これを100℃で60秒間ベークした。ガス放出速度を、四重極質量分析計(QMS)で測定された関心のある質量を合計することにより決定した。このレジストに対して得られた値は2.0E+14分子/cm/sであった。これは、セマテックにより設定された6.5E+14分子/cm/sの限界値よりも小さい。
【0061】
図3は、与えられた質量スペクトルを示し、これはポリマーから出てくるアセトン以外にはなにもフラグメントが存在しないことを明確に示す。全ての他のフラグメントは光酸発生剤に帰することができる。
【0062】
図4は、パターン化したフォトレジスト組成物の走査電子顕微鏡写真を示す。実施例7に類似のフォトレジスト組成物を、62nmの反射防止被膜(Brewer Science DUV−42P)で既にコーティングされたシリコンウェハの上に105nmの厚さでスピンコートし、EUVプロトタイプ・ツールを用いて67.38mJの照射線量で画像形成した。フォトレジスト組成物を110℃で60秒間塗布後ベークし、100℃で60秒間照射後ベークし、0.26NのTMAH水溶液中で60秒間現像した。
【0063】
本発明のポリマーは有利に以下の特性を有する。
a)保護基は真空条件下の画像形成ツール内で脱保護しない。
b)照射中に脱保護した場合、フラグメントは何らかの仕方でポリマーに付着するのでそれらはガス放出しない。
c)フラグメントは100原子質量単位(amu)より小さい分子量を有する軽質炭化水素である。
【0064】
本発明の好ましい実施形態を説明したが、当業者であれば、現在及び将来にわたり、以下の特許請求の範囲に入る様々な改良及び強化を行うことができることを理解されたい。これらの特許請求の範囲は、初めて記述された本発明に対する適切な保護を主張するものと解釈されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式を有する繰り返し単位を備えたポリマーであって、
【化1】

式中、Zはポリマー骨格の繰り返し単位を表し、Xは、アルキレン、アリーレン、アラアルキレン、カルボニル、カルボキシル、カルボキシアルキレン、オキシ、オキシアルキレン、及びこれらの組合せから成る群から選択される連結基であり、Rは、水素、アルキル、アリール、及びシクロアルキル基から成る群から選択され、但し、XとRは同じ環システムの部分ではない、
ポリマー。
【請求項2】
フェノール、フルオロアルコール、ラクトン、無水物、アルコール基、スルフォンアミド基、及び酸に不安定な基から成る群から選択される1つ又は複数の官能基を有する少なくとも1つの付加的な繰り返し単位をさらに備える、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーは1,000乃至100,000ダルトンの分子量を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記繰り返し単位は、
【化2】

である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
前記繰り返し単位は、以下の化学式を有するコポリマーであり、
【化3】

式中、mとnは、それぞれ、0mol%より大きく99.99mol%まで、対、0.01mol%から100mol%未満まで、の比を有する、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
前記繰り返し単位は、以下の化学式を有するコポリマーであり、
【化4】

式中、mとnは、それぞれ、0mol%より大きく99.99mol%まで、対、0.01mol%から100mol%未満まで、の比を有する、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
以下の化学式を有する繰り返し単位を備えたポリマー、光酸発生剤、及び、溶媒を含むフォトレジスト組成物であって、
【化5】

式中、Zはポリマー骨格の繰り返し単位を表し、Xは、アルキレン、アリーレン、アラアルキレン、カルボニル、カルボキシル、カルボキシアルキレン、オキシ、オキシアルキレン、及びこれらの組合せから成る群から選択される連結基であり、Rは、水素、アルキル、アリール、及びシクロアルキル基から成る群から選択され、但し、XとRは同じ環システムの部分ではない、
フォトレジスト組成物。
【請求項8】
前記光酸発生剤は、前記ポリマーの0.5乃至10重量%の量で存在する、請求項7に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項9】
前記繰り返し単位は、以下の化学式を有するコポリマーであり、
【化6】

式中、mとnは、それぞれ、0mol%より大きく99.99mol%まで、対、0.01mol%から100mol%未満まで、の比を有する、
請求項7に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項10】
前記繰り返し単位は、以下の化学式を有するコポリマーであり
【化7】

式中、mとnは、それぞれ、0mol%より大きく99.99mol%まで、対、0.01mol%から100mol%未満まで、の比を有する、
請求項7に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項11】
前記繰り返し単位は、
【化8】

である、請求項7に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項12】
前記ポリマーは1,000乃至100,000ダルトンの分子量を有する、請求項7に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項13】
フォトレジスト膜内にレリーフ画像を形成する方法であって、
フォトレジスト組成物を基板上に塗布して前記フォトレジスト膜を形成するステップであって、前記フォトレジスト組成物は以下の化学式を有する繰り返し単位を備えるポリマー、光酸発生剤、及び、溶媒を含み、
【化9】

式中、Zはポリマー骨格の繰り返し単位を表し、Xは、アルキレン、アリーレン、アラアルキレン、カルボニル、カルボキシル、カルボキシアルキレン、オキシ、オキシアルキレン、及びこれらの組合せから成る群から選択される連結基であり、Rは、水素、アルキル、アリール、及びシクロアルキル基から成る群から選択され、但し、XとRは同じ環システムの部分ではなく、
前記膜に放射源を用いて放射を照射するステップと、
前記フォトレジスト膜を現像して前記レリーフ画像を形成するステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記光酸発生剤は、前記ポリマーの0.5乃至10重量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記繰り返し単位は、
【化10】

である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記繰り返し単位は、以下の化学式を有するコポリマーであり、
【化11】

式中、mとnは、それぞれ、0mol%より大きく99.99mol%まで、対、0.01mol%から100mol%未満まで、の比を有する、
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記繰り返し単位は、以下の化学式を有するコポリマーであり、
【化12】

式中、mとnは、それぞれ、0mol%より大きく99.99mol%まで、対、0.01mol%から100mol%未満まで、の比を有する、
請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記放射は、VUV(157nm)、ArF(193nm)、KrF(248nm)、EUV(13nm)、Eビーム、X線、及びイオンビームを含む放射源からのものである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記膜に、1mJ/cm乃至100mJ/cmの範囲の照射線量を照射するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フォトレジスト組成物は、6.5E+14分子/cm/s未満のガス放出速度を有する、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−502123(P2012−502123A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525481(P2011−525481)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059160
【国際公開番号】WO2010/025983
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】