説明

ガス放出防止機構付きガス容器バルブ

【課題】ガス容器が傾斜したり転倒した場合、ガス容器からのガス放出または液化ガスの流出を防止できるガス放出防止機構付きガス容器バルブを提供する。
【解決手段】ガス放出防止機構付きガス容器バルブ1は、流出口2と、ガス流入口3と、ガス容器に装着するためのガス容器装着部4と、ガス流出口2とガス流入口3とを連通するガス流路5とを有したガス容器バルブ本体6と、ガス容器装着部4の下部に取り付けられたガス放出防止機構7とを備えたガス放出防止機構付きガス容器バルブであって、ガス放出防止機構7は、球状弁体8と、球状弁体8を回動可能に保持する弁座9と、球状弁体8に垂下して取り付けられ球状弁体8と共に回動する錘体10とを有し、ガス容器バルブ本体6の軸方向が鉛直方向に対して設定角度以上になると、ガス容器バルブ本体6のガス流入口3が球状弁体8により閉塞されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LPガス、その他の高圧ガスを収容するガス容器にガスホースを接続し、外部ガス消費機器へのガス供給を制御するためのガス容器バルブに関する。より詳しくは、地震、その他の災害等によりガス容器が転倒又は傾斜した場合に、外部へのガス放出を防止することができるガス放出防止機構付きガス容器バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性ガスや支燃性ガスおよび毒性ガス等の高圧ガスを収容するガス容器は、地震、その他の災害等により衝撃を受けると、大量のガスを外部に放出するおそれがあり、火災や二次災害の要因となっている。
そのような事態を防止するものとして、従来より、ガス容器バルブと高圧ガスホースとの間に介在させるガス放出防止装置が種々使用されている。例えば、そのようなものとして、特開平11−351499号公報の張力作動式ガス放出防止装置(張力式ガス放出防止装置)や実開平6−51652号公報のガス栓用過流出防止弁(過流式ガス放出防止装置)などがある。
【0003】
しかし、それらのガス放出防止装置は、ガス容器の外部に取り付けられるものであるため、ガス容器が傾斜したり転倒するような強い外部衝撃を受けた場合、ガス放出防止装置自体やガス容器バルブ自体または高圧ガスホース等が損傷を受けた際には有効に作動しないおそれがあった。
【特許文献1】特開平11−351499号公報
【特許文献2】実開平6−51652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の課題は、地震、その他の災害等によって高圧ガスを収容するガス容器が傾斜したり転倒するような強い外部衝撃を受けた場合、ガス容器外部に取り付けられたガス放出防止装置やガス容器バルブまたは高圧ガスホース等が損傷を受けても、ガス容器からのガス放出または液化ガスの流出を防止することができるガス放出防止機構付きガス容器バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するものは、外部ガス消費機器にガスを供給するためのガス流出口と、ガス容器よりガスが流入するガス流入口と、前記ガス容器に装着するためのガス容器装着部と、前記ガス流出口と前記ガス流入口とを連通するガス流路とを有したガス容器バルブ本体と、前記ガス容器装着部の下部に取り付けられたガス放出防止機構とを備えたガス放出防止機構付きガス容器バルブであって、前記ガス放出防止機構は、球状弁体と、該球状弁体を回動可能に保持する弁座と、前記球状弁体に垂下して取り付けられ該球状弁体と共に回動する錘体とを有し、前記球状弁体および前記錘体は、前記ガス容器バルブ本体のガス流入口と連通する貫通路を備え、前記ガス容器バルブ本体の軸方向が鉛直方向に対して設定角度以上になると、前記ガス容器バルブ本体のガス流入口と前記貫通路との連通状態が解除され前記ガス流入口が前記球状弁体により閉塞されることを特徴とするガス放出防止機構付きガス容器バルブである。
【0006】
前記球状弁体と前記錘体は、前記貫通路を形成する管状体にて連結されていることが好ましい。前記錘体は、前記球状弁体より重く形成されていることが好ましい。前記ガス容器バルブ本体は、前記ガス流路と気密に区画されたガス流入室と、装着したガス容器内部と前記ガス流入室とを連通させる異常圧ガス流路とを有した安全弁を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、地震、その他の災害等によって高圧ガスを収容するガス容器が傾斜したり転倒するような強い外部衝撃を受けた場合、ガス容器外部に取り付けられたガス放出防止装置やガス容器バルブまたは高圧ガスホース等が損傷を受けても、ガス容器からのガス放出および液化ガスの流出を防止することができる。
請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1の効果を奏するガス放出防止機構付きガス容器バルブをより簡素な構造で作製できる。
請求項3に記載の発明によれば、回転モーメントが大きくなり、球状弁体によってガス流入口をより確実に閉塞できる。
請求項4に記載の発明によれば、球状弁体によってガス流入口が閉塞された状態でも安全弁を作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、ガス容器が傾斜したり転倒するような強い外部衝撃を受けた場合、たとえ、ガス放出防止装置自体、ガス容器バルブ自体または高圧ガスホース等が損傷を受けても、ガス容器バルブ本体のガス流入口を球状弁体が閉塞することにより、ガス容器からのガス放出または液化ガスの流出を防止することができるガス放出防止機構付きガス容器バルブを実現した。
【実施例1】
【0009】
図1は本発明のガス放出防止機構付きガス容器バルブの一実施例の縦断面概略図であり、図2は図1に示したガス放出防止機構付きガス容器バルブの作用を説明するための縦断面概略図である。
【0010】
この実施例のガス放出防止機構付きガス容器バルブ1は、図1に示すように、外部ガス消費機器にガスを供給するためのガス流出口2と、ガス容器よりガスが流入するガス流入口3と、ガス容器に装着するためのガス容器装着部4と、ガス流出口2とガス流入口3とを連通するガス流路5とを有したガス容器バルブ本体6と、ガス容器装着部4の下部に取り付けられたガス放出防止機構7とを備えたガス放出防止機構付きガス容器バルブであって、ガス放出防止機構7は、球状弁体8と、球状弁体8を回動可能に保持する弁座9と、球状弁体8に垂下して取り付けられ球状弁体8と共に回動する錘体10とを有し、球状弁体8および錘体10は、ガス容器バルブ本体6のガス流入口2と連通する貫通路11を備え、ガス容器バルブ本体6の軸方向が鉛直方向に対して設定角度以上になると、ガス容器バルブ本体6のガス流入口3と貫通路11との連通状態が解除されガス流入口3が球状弁体8により閉塞されるものである。以下、各構成について順次詳述する。
【0011】
このガス放出防止機構付きガス容器バルブ1は、ガスボンベなどのガス容器のバルブ装着部に取り付けられ、ガス容器からのガスの流出およびガスの封止を制御するものである。
【0012】
ガス流出口2は、外部ガス消費機器にガスを供給するための開口部であり、この部位に高圧ガスホースが装着されて外部ガス消費機器へのガス供給が行われる。
【0013】
ガス流入口3は、ガス容器内のガスをガス容器バルブ本体6内に流入させるための開口部であり、装着するガス容器の内部と連通可能な部位(後述するガス容器装着部4の下端面)に配されている。
【0014】
ガス容器装着部4は、ガス容器にガス容器バルブ本体6を装着させるための部位であり、中空の筒状体4aと筒状体4aの外面に形成された螺合部4bとを有している。そして、この筒状体4aをガス容器内に挿入し、螺合部4bと、ガス容器のバルブ装着部の内面に形成され螺合部とを係合させることにより、ガス容器バルブ本体6がガス容器に装着されるよう構成されている。
【0015】
ガス流路5は、ガス流出口2とガス流入口3とを連通させるガスの流路であり、ガス流入口3から流入したガスがガス流出口2に至るように容器バルブ本体6内に形成されている。
【0016】
このガス流路5の中途には、ハンドル12の回転によりガス流路5を閉塞可能な弁板13とこの弁板13が当接する弁シート14が設けられている。具体的には、ハンドル12を右回りに回転させると、弁板13が降下して弁シート14に当接しガス流路5が閉塞され、装着したガス容器のガスがガス容器バルブ本体6内に流入不能となる。他方、ハンドル12を左回りに回転させると、弁板13が上昇して弁シート14と離間しガス流路5内をガスが流通可能となる。なお、図1の状態は、後者の状態であり、ガス容器内のガスがガス流入口3から流入してガス流出口2へ移行し、外部ガス消費機器へカズを供給可能な状態となっている。そして、通常、ガス容器は、ガス供給が可能なこの状態で家庭等に配備されている。
【0017】
また、ガス容器バルブ本体6は、安全弁15を有している。この安全弁15はガス流路5内に異常な圧力が発生した場合に、ガスを外部に放出するためのものであり、安全弁弁体16と、安全弁シート17と、安全弁弁体16を安全弁シート17側へ付勢するスプリング18とを有している。そして、ガス流路5内に異常な圧力が発生した場合、安全弁弁体16がその圧力によって外側に向かって押圧されスプリング18の付勢力以上の圧力になると、安全弁弁体16が安全弁シート17より離間し、それらの間隙からガスが外部に放出されるように構成されている。
【0018】
ガス放出防止機構7は、ガス容器が傾斜したり転倒するような強い外部衝撃を受けた場合、ガス容器の外部に取り付けられたガス放出防止装置やガス容器バルブまたは高圧ガスホース等が損傷を受けても、ガス容器からのガス放出および液化ガスの流出を防止するものである。
【0019】
このガス放出防止機構7は、ガス容器バルブ本体6のガス容器装着部4の下部に取り付けられているため、ガス容器バルブ本体6をガス容器に装着するとガス容器内に位置し、強い外部衝撃を受けた場合でも損傷することがなく、ガス放出防止機能を発揮する。
【0020】
ガス放出防止機構7は、球状弁体8と、球状弁体8を回動可能に保持する弁座9と、球状弁体8に垂下して取り付けられ球状弁体8と共に回動する錘体10とを有しており、弁座9の上面がガス容器装着部4の下面に溶接されて取り付けられている。
【0021】
具体的には、弁座9は内部に球状弁体8を上側から保持して落下させない半球面以上の球状面、換言すれば、球状弁体8の中心点を含む水平面より下方まで延在する球状面を備えており、この球状面が球状弁体8を捕捉していると共に、この球状面と球状弁体8の球面とが気密状態を保って摺動可能に構成されている。このように、弁座9は球状弁体8を回動可能に保持する機能と、ガス容器バルブ本体6にガス放出防止機構7を取り付ける機能とを兼務している。
【0022】
球状弁体8と錘体10は管状体19を介して連結されており、球状弁体8の下方に錘体10が垂下するように構成されている。管状体19は貫通路11を構成しており、球状弁体8および錘体10は、平常時においては、この貫通路11を介してガス容器バルブ本体6のガス流入口3と装着したガス容器内部とを連通させているため、ガス容器内のガスは貫通路11を介してガス流路5に流入可能となっている。
【0023】
他方、錘体10はそれ自体にかかる重力により、球状弁体8を支点として、球状弁体8の下半球側、半径方向全方位に振幅可能であるため、ガス容器バルブ本体6が傾斜すると、図2に示すように、錘体10および管状体19は振幅した後、鉛直方向に延在する。このため、ガス容器バルブ本体6の軸方向が鉛直方向に対して設定角度以上になると、ガス容器バルブ本体6のガス流入口3と貫通路11との連通状態が解除されガス流入口3が球状弁体8により閉塞される。
【0024】
なお、錘体10は球状弁体8に比して重いことが好ましく、また、管状体19の長さもガス容器内で振幅可能な範囲内でより長く形成される方が、回転モーメントが大きくなり、球状弁体8によってガス流入口3をより確実に閉塞できる。また、前述した設定角度は、球状弁体の大きさ、ガス流入口や貫通路の径等により適宜設計変更可能であるが、好ましくは30〜45度である。さらに、ガス流入口の形状とガス流入口と連通する貫通路の横断面形状とは同一であることが好ましく、この実施例では、ガス流入口3の径と貫通路11の径(管状体19の内径)は同一に形成されている。さらに、この実施例のガス放出防止機構7は、溶接にてガス容器装着部の下面に固着させているが、これに限定されるものではなく、ガス容器装着部の筒状体内に挿入して固定するための挿入部を有するもの(例えばスリーブを筒状体内に嵌入するもの)、或いはこの挿入部が表面に螺合部を有し、ガス容器装着部の筒状体の内面に形成された螺合部と係合させて固定するものなども本発明の範疇に包含される。さらに、この実施例のガス放出防止機構7は、既存のガス容器バルブにも取り付け可能に構成されたものであるが、ガス容器装着部と弁座とが一体に形成されたものも本発明の範疇に包含される。
【0025】
つぎに、図3に示した本発明のガス放出防止機構付きガス容器バルブ20について説明する。
この実施例のガス放出防止機構付きガス容器バルブ20と前述したガス放出防止機構付きガス容器バルブ1との基本的な相違は、ガス容器バルブ本体6が、ガス流路5と気密に区画されたガス流入室21と、装着したガス容器内部とガス流入室21とを連通させる異常圧ガス流路22とを有した安全弁23を備えている点のみであり、他は同じである。ガス放出防止機構付きガス容器バルブ1と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0026】
具体的には、この実施例のガス放出防止機構付きガス容器バルブ20は、ガス流路5と気密に区画されたガス流入室21が、安全弁弁体16に隣接して設けられており、装着したガス容器内部とガス流入室21とを連通させる異常圧ガス流路22がガス容器装着部4の筒状体4a内に設けられている。より具体的には、ガス容器装着部4の螺合部4aは、筒状体4aの下部付近には設けられておらず、筒状体4a内において縦断面L字型に形成された異常圧ガス流路22は、螺合部4aが形成されていない筒状体4aの下部付近に開口するように形成されている。そして、球状弁体8によってガス流入口3が閉塞された状態においてガス容器内に異常ガス圧が発生しても、ガスが異常圧ガス流路22の下部開口を経由してガス流入室21内に流入し安全弁23を作動させることができるように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0027】
上記実施例はガスまたは液化ガスを収容するガス容器に装着する容器バルブに関するものであるが、液体のみを収容する容器バルブにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のガス放出防止機構付きガス容器バルブの一実施例の縦断面概略図である。
【図2】図1に示したガス放出防止機構付きガス容器バルブの作用を説明するための縦断面概略図である。
【図3】本発明のガス放出防止機構付きガス容器バルブの他の実施例の縦断面概略図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ガス放出防止機構付きガス容器バルブ
2 ガス流出口
3 ガス流入口
4 ガス容器装着部
4a 筒状体
4b 螺合部
5 ガス流路
6 ガス容器バルブ本体
7 ガス放出防止機構
8 球状弁体
9 弁座
10 錘体
11 貫通路
12 ハンドル
13 弁板
14 弁シート
15 安全弁
16 安全弁弁体
17 安全弁シート
18 スプリング
19 管状体
20 ガス放出防止機構付きガス容器バルブ
21 ガス流入室
22 異常圧ガス流路
23 安全弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部ガス消費機器にガスを供給するためのガス流出口と、ガス容器よりガスが流入するガス流入口と、前記ガス容器に装着するためのガス容器装着部と、前記ガス流出口と前記ガス流入口とを連通するガス流路とを有したガス容器バルブ本体と、
前記ガス容器装着部の下部に取り付けられたガス放出防止機構とを備えたガス放出防止機構付きガス容器バルブであって、
前記ガス放出防止機構は、球状弁体と、該球状弁体を回動可能に保持する弁座と、前記球状弁体に垂下して取り付けられ該球状弁体と共に回動する錘体とを有し、前記球状弁体および前記錘体は、前記ガス容器バルブ本体のガス流入口と連通する貫通路を備え、
前記ガス容器バルブ本体の軸方向が鉛直方向に対して設定角度以上になると、前記ガス容器バルブ本体のガス流入口と前記貫通路との連通状態が解除され前記ガス流入口が前記球状弁体により閉塞されることを特徴とするガス放出防止機構付きガス容器バルブ。
【請求項2】
前記球状弁体と前記錘体は、前記貫通路を形成する管状体にて連結されている請求項1に記載のガス放出防止機構付きガス容器バルブ。
【請求項3】
前記錘体は、前記球状弁体より重く形成されている請求項1または2に記載のガス放出防止機構付きガス容器バルブ。
【請求項4】
前記ガス容器バルブ本体は、前記ガス流路と気密に区画されたガス流入室と、装着したガス容器内部と前記ガス流入室とを連通させる異常圧ガス流路とを有した安全弁を備えている請求項1ないし3のいずれかに記載のガス放出防止機構付きガス容器バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−150526(P2009−150526A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331201(P2007−331201)
【出願日】平成19年12月22日(2007.12.22)
【出願人】(507419987)
【Fターム(参考)】