説明

ガス検出装置

【課題】従来検出困難であったガス検出装置における半導体式ガスセンサおよびその他の構成要素の故障を検出し、故障の内容を判別できるガス検出装置を提供すること。
【解決手段】検出抵抗切り替え手段12によって、ヒータ電源11より所定のヒーター電圧が供給されている間に、プレート電源Vccとプレート電極3b間にそれぞれ異なる抵抗値を有する第1の検出抵抗R1または第2の検出抵抗R2を切り替え接続する。また、センサ出力差分測定手段10bによって、プレート電極3bに第1の検出抵抗R1が接続されている時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧と、プレート電極3bに第2の検出抵抗R2が接続されている時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧の差分を測定する。第1の故障判定手段10dによって、センサ出力差分測定手段10bで測定された差分が予め設定された正常範囲内にない場合に、半導体式ガスセンサ3の故障と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼器のガス漏れや不完全燃焼等を半導体式ガスセンサを用いて検出するガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼器のガス漏れや不完全燃焼等を検出するガス検出装置に用いられるガスセンサや、抵抗およびトランジスタ等の他の構成要素がショート(短絡)またはオープン(断線)等の故障状態になると、ガスの検出が正常に行えなくなるので、これらが故障状態にあるか否かを認識することは、非常に重要である。
【0003】
複数のガスを検出するガス検出装置などで使用される半導体式ガスセンサのように、検知対象ガス種によってガスセンサの抵抗値が大きく異なるものについて、その抵抗値を正確に計測するため、たとえば、図2に示す構成を有するガス検出装置において、検出するガス種毎に検出抵抗を切り替えて計測することが一般的である。
【0004】
このような半導体式ガスセンサを用いたガス検出装置におけるセンサ故障を検知する場合、図3に示すように、ある1つの検出抵抗(たとえば、抵抗R1)を駆動して得られるセンサ出力の正常範囲を決め、この正常範囲を逸脱した場合に故障と判定する。
【0005】
具体的には、図2の構成を有するガス検出装置において、たとえば、メタン、COのガス種毎にCPU10の出力ポートP1およびP2からの制御信号によってトランジスタTr1、Tr2をオン制御することにより、メタン、COのそれぞれのガスに合わせた検出抵抗R1、R2を切り替え、それぞれのガス種に対して最適なタイミングで計測する。
【0006】
すなわち、図4に示すように、メタンの場合は、ヒーター電圧供給回路11からのヒーター電圧がハイ(Hi)からロー(Lo)に切り替わる直前のタイミングでセンサ出力を計測し、COの場合は、ヒーター電圧がロー(Lo)からハイ(Hi)に切り替わる直前のタイミングでセンサ出力を計測する。
【0007】
メタン計測時のセンサ出力の場合、計測する(故障判別を行うことを踏まえた)センサ抵抗値範囲は、約100Ω〜数100kΩであり、CO計測時のセンサ抵抗値範囲は、約100Ω〜数MΩが一般的である。故障判別のように幅広い抵抗値範囲を計測する必要がある場合は、CO計測時よりもメタン計測時のように、計測する抵抗値範囲が比較的狭い方に対して故障判別を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、1つのガス検出で1つの検出抵抗を使用した時、半導体式ガスセンサおよびガス検出装置の他の構成要素において判別できる故障は、半導体式ガスセンサのプレート電極のGND(接地)へのショートくらいであり、その他の故障状態は、警報状態、待機状態(正常空気中状態)と区別ができない(後述の表1参照)。
【0009】
特に、表1中の条件B(プレート電極とヒーター間のショート)、D(検出抵抗R1のショート)、E(検出抵抗R2のショート)、F(トランジスタTr1のショート)、G(トランジスタTr2のショート)については、フェールアウト状態となるため、これらの故障検出を可能とすることがユーザーにとって必要である。
【0010】
そこで本発明は、上述した課題に鑑み、従来検出困難であったガス検出装置における半導体式ガスセンサおよびその他の構成要素の故障を検出し、故障の内容を判別できるガス検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、ヒーター電源11より所定のヒーター電圧が供給されるヒーター3aと、プレート電源Vccより所定のプレート電圧が供給されるプレート電極3bを有する半導体式ガスセンサ3を用いてガスの濃度を検出するガス検出装置であって、前記ヒータ電源11より所定のヒーター電圧が供給されている間に、前記プレート電源Vccと前記プレート電極3b間にそれぞれ異なる抵抗値を有する第1の検出抵抗R1または第2の検出抵抗R2を切り替え接続する検出抵抗切り替え手段12と、前記プレート電極3bに前記第1の検出抵抗R1が接続されている時の前記半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧と、前記プレート電極3bに前記第2の検出抵抗R2が接続されている時の前記半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧の差分を測定するセンサ出力差分測定手段10bと、前記センサ出力差分測定手段10bで測定された前記差分が予め設定された正常範囲内にない場合に、前記半導体式ガスセンサ3の故障と判定する第1の故障判定手段10dと、を備えたことを特徴とするガス検出装置に存する。
【0012】
請求項1記載の発明においては、ガス検出装置は、ヒーター電源11より所定のヒーター電圧が供給されるヒーター3aと、プレート電源Vccより所定のプレート電圧が供給されるプレート電極3bを有する半導体式ガスセンサ3を用いてガスの濃度を検出する。また、検出抵抗切り替え手段12によって、ヒータ電源11より所定のヒーター電圧が供給されている間に、プレート電源Vccとプレート電極3b間にそれぞれ異なる抵抗値を有する第1の検出抵抗R1または第2の検出抵抗R2を切り替え接続する。また、センサ出力差分測定手段10bによって、プレート電極3bに第1の検出抵抗R1が接続されている時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧と、プレート電極3bに第2の検出抵抗R2が接続されている時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧の差分を測定する。そして、第1の故障判定手段10dによって、センサ出力差分測定手段10bで測定された差分が予め設定された正常範囲内にない場合に、半導体式ガスセンサ3の故障と判定する。
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の発明は、請求項1記載のガス検出装置において、前記検出抵抗切り替え手段12は、前記プレート電源Vccと前記第1の検出抵抗R1間に接続された第1のスイッチング素子Tr1と、前記プレート電源Vccと前記第2の検出抵抗R2間に接続された第2のスイッチング素子Tr2と、前記第1または第2のスイッチング素子Tr1またはTr2をオン制御する制御信号を供給する制御手段10aとを含み、前記第1の故障判定手段10dは、前記センサ出力差分測定手段10bで測定された前記差分が予め設定された正常範囲内にない場合に、前記半導体式ガスセンサ3、前記第1の検出抵抗R1、前記第2の検出抵抗R2、前記第1のスイッチング素子Tr1または前記第2のスイッチング素子Tr2のいずれかの故障と判定することを特徴とするガス検出装置に存する。
【0014】
請求項2記載の発明においては、検出抵抗切り替え手段12は、プレート電源Vccと第1の検出抵抗R1間に接続された第1のスイッチング素子Tr1と、プレート電源Vccと第2の検出抵抗R2間に接続された第2のスイッチング素子Tr2と、第1または第2のスイッチング素子Tr1またはTr2をオン制御する制御信号を供給する制御手段10aとを含む。第1の故障判定手段10dは、センサ出力差分測定手段10bで測定された差分が予め設定された正常範囲内にない場合に、半導体式ガスセンサ3、第1の検出抵抗R1、第2の検出抵抗R2、第1のスイッチング素子Tr1または第2のスイッチング素子Tr2のいずれかの故障と判定する。
【0015】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のガス検出装置において、前記ヒータ電源11より所定のヒーター電圧が供給されている間であって、前記プレート電源Vccより前記プレート電極3bに所定のプレート電圧が供給されていない時に、前記半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧を測定するプレート無印加時センサ出力測定手段10cと、前記プレート無印加時センサ出力測定手段10cで測定されたプレート無印加時センサ出力電圧が予め設定された正常範囲内にない場合に前記第1または第2の検出抵抗R1またはR2の故障と判定する第2の故障判定手段10eとをさらに備えたことを特徴とするガス検出装置に存する。
【0016】
請求項3記載の発明においては、プレート無印加時センサ出力測定手段10cと、第2の故障判定手段10eをさらに備えている。プレート無印加時センサ出力測定手段10cは、ヒータ電源11より所定のヒーター電圧が供給されている間であって、プレート電源Vccよりプレート電極3bに所定のプレート電圧が供給されていない時に、半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧を測定する。第2の故障判定手段10eは、プレート無印加時センサ出力測定手段10cで測定されたプレート無印加時センサ出力電圧が予め設定された正常範囲内にない場合に第1または第2の検出抵抗R1またはR2の故障と判定する。
【0017】
上記課題を解決するためになされた請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のガス検出装置において、前記第1または第2の故障判定手段10dまたは10eにより故障判定がなされた場合、前記プレート電極3bに前記第1の検出抵抗R1が接続されている時の前記半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧と、前記プレート電極3bに前記第2の検出抵抗R2が接続されている時の前記半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧がほぼ一致しているときは、前記半導体式ガスセンサ3の故障と判定し、一致していないときは、前記第1の検出抵抗R1、前記第2の検出抵抗R2、前記第1のスイッチング素子Tr1または前記第2のスイッチング素子Tr2のいずれかの故障と判定する第3の故障判定手段10fをさらに備えたことを特徴とするガス検出装置に存する。
【0018】
請求項4記載の発明においては、第3の判定手段10fをさらに備えている。第3の判定手段10fは、第1または第2の故障判定手段10dまたは10eにより故障判定がなされた場合、プレート電極3bに第1の検出抵抗R1が接続されている時の半導体式ガスセンサのセンサ出力電圧と、プレート電極3bに第2の検出抵抗R2が接続されている時の半導体式ガスセンサのセンサ出力電圧がほぼ一致しているときは、半導体式ガスセンサ3の故障と判定し、一致していないときは、第1の検出抵抗R1、第2の検出抵抗R2、第1のスイッチング素子Tr1または第2のスイッチング素子Tr2のいずれかの故障と判定する。
【0019】
上記課題を解決するためになされた請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載のガス検出装置において、前記ガス検出装置は、ハイレベルおよびローレベルが交互するパルス状のヒーター電圧が前記ヒータ電源11より前記ヒーター3aに供給され、前記ハイレベルのヒーター電圧が供給されている間に前記検出抵抗切り替え手段12で前記プレート電源Vccと前記プレート電極3b間に前記第1の検出抵抗R1が接続されている時の前記半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧により第1のガスの濃度を検出すると共に、前記ローレベルのヒーター電圧が供給されている間に前記検出抵抗切り替え手段12で前記プレート電源Vccと前記プレート電極3b間に前記第2の検出抵抗R2が接続されている時の前記半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧により前記第1のガスとガス種の異なる第2のガスの濃度を検出するガス検出装置であることを特徴とするガス検出装置に存する。
【0020】
請求項5記載の発明においては、ガス検出装置は、ハイレベルおよびローレベルが交互するパルス状のヒーター電圧がヒータ電源11よりヒーターに供給され、ハイレベルのヒーター電圧が供給されている間に検出抵抗切り替え手段12でプレート電源Vccとプレート電極3b間に第1の検出抵抗R1が接続されている時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧により第1のガスの濃度を検出すると共に、ローレベルのヒーター電圧が供給されている間に検出抵抗切り替え手段12でプレート電源Vccとプレート電極3b間に第2の検出抵抗R2が接続されている時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧により第1のガスとガス種の異なる第2のガスの濃度を検出するガス検出装置である。
【0021】
上記課題を解決するためになされた請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載のガス検出装置において、前記第1のガスはメタンであり、前記第2のガスはCOであることを特徴とするガス検出装置に存する。
【0022】
請求項6記載の発明においては、第1のガスはメタンであり、第2のガスはCOである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明によれば、ヒーター電源11より所定のヒーター電圧が供給されるヒーター3aと、プレート電源Vccより所定のプレート電圧が供給されるプレート電極3bを有する半導体式ガスセンサ3を用いてガスの濃度を検出するガス検出装置であって、ヒータ電源11より所定のヒーター電圧が供給されている間に、プレート電源Vccとプレート電極3b間にそれぞれ異なる抵抗値を有する第1の検出抵抗R1または第2の検出抵抗R2を切り替え接続する検出抵抗切り替え手段12と、プレート電極3bに第1の検出抵抗R1が接続されている時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧と、プレート電極3bに第2の検出抵抗R2が接続されている時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧の差分を測定するセンサ出力差分測定手段10bと、センサ出力差分測定手段10bで測定された差分が予め設定された正常範囲内にない場合に、半導体式ガスセンサ3の故障と判定する第1の故障判定手段10dと、を備えているので、従来装置では不可能であった半導体式ガスセンサの故障、たとえばプレート電極の断線、プレート電極−GND(接地)間のショート)、プレート電極−ヒーター間のショート等の故障を判別することができ、従来装置のようにフェールアウト状態となることがなくなる。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、検出抵抗切り替え手段12は、プレート電源Vccと第1の検出抵抗R1間に接続された第1のスイッチング素子Tr1と、プレート電源Vccと第2の検出抵抗R2間に接続された第2のスイッチング素子Tr2と、第1または第2のスイッチング素子Tr1またはTr2をオン制御する制御信号を供給する制御手段10aとを含み、第1の故障判定手段10dは、センサ出力差分測定手段10bで測定された差分が予め設定された正常範囲内にない場合に、半導体式ガスセンサ3、第1の検出抵抗R1、第2の検出抵抗R2、第1のスイッチング素子Tr1または第2のスイッチング素子Tr2のいずれかの故障と判定するので、ガス検出装置における半導体式ガスセンサ3または装置を構成する検出抵抗R1,R2やスイッチング素子Tr1、Tr2の故障も判別することができ、従来装置のようにフェールアウト状態となることがなくなる。
【0025】
請求項3記載の発明によれば、ヒータ電源11より所定のヒーター電圧が供給されている間であって、プレート電源Vccよりプレート電極3bに所定のプレート電圧が供給されていない時に、半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧を測定するプレート無印加時センサ出力測定手段10cと、プレート無印加時センサ出力測定手段10cで測定されたプレート無印加時センサ出力電圧が予め設定された正常範囲内にない場合に第1または第2の検出抵抗R1またはR2の故障と判定する第2の故障判定手段10eとをさらに備えているので、第1または第2の検出抵抗のショートの故障も判別でき、従来装置のようにフェールアウト状態となることがなくなる。
【0026】
請求項4記載の発明によれば、第1または第2の故障判定手段10dまたは10eにより故障判定がなされた場合、プレート電極3bに第1の検出抵抗R1が接続されている時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧と、プレート電極3bに前記第2の検出抵抗R2が接続されている時の前記半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧がほぼ一致しているときは、半導体式ガスセンサ3の故障と判定し、一致していないときは、第1の検出抵抗R1、第2の検出抵抗R2、第1のスイッチング素子Tr1または第2のスイッチング素子Tr2のいずれかの故障と判定する第3の故障判定手段10fをさらに備えているので、半導体式ガスセンサ3の故障なのかそれともその他の構成部品、たとえば検出抵抗R1,R2やスイッチング素子Tr1、Tr2の故障なのかを識別することができる。
【0027】
請求項5記載の発明によれば、請求項1から4のいずれか1項に記載のガス検出装置において、ガス検出装置は、ハイレベルおよびローレベルが交互するパルス状のヒーター電圧がヒータ電源11よりヒーター3aに供給され、ハイレベルのヒーター電圧が供給されている間に検出抵抗切り替え手段12でプレート電源Vccとプレート電極3b間に第1の検出抵抗R1が接続されている時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧により第1のガスの濃度を検出すると共に、ローレベルのヒーター電圧が供給されている間に検出抵抗切り替え手段12でプレート電源Vccとプレート電極3b間に第2の検出抵抗R2が接続されている時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧により第1のガスとガス種の異なる第2のガスの濃度を検出するガス検出装置であるので、第1のガス検出用の第1の検出抵抗と、第1のガスとガス種の異なる第2のガス検出用の第2の検出抵抗を利用して、半導体式ガスセンサやその他の構成部品の故障を判別することができる。
【0028】
請求項6記載の発明によれば、第1のガスはメタンであり、第2のガスはCOであるであるので、メタン検出用の第1の検出抵抗と、CO検出用の第2の検出抵抗を利用して、半導体式ガスセンサやその他の構成部品の故障を判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
(第1の実施形態)図2は、本発明の第1の実施形態に係るガス検出装置の構成を示す回路図である。図2において、ガス検出装置1は、半導体式ガスセンサ3、マイコン(以下、CPUという)10、ヒーター電圧供給回路11、検出抵抗切替回路12および警報回路13から構成される。
【0031】
CPU10は、出力ポートP1,P2,P4およびP5と入力ポートP3を有する。半導体式ガスセンサ3は、ヒータ電圧供給回路11に接続されたヒーター3aと、CPU10の入力ポートP3に接続されたプレート電極3bを有する。CPU10は、請求項における制御手段10a、センサ出力差分測定手段10b、プレート無印加時センサ出力測定手段10c、第1の故障判定手段10d、第2の故障判定手段10eおよび第3の故障判定手段10fとして働く。
【0032】
ヒーター電圧供給回路11は、半導体式ガスセンサ3のヒーター3aに、ハイ(Hi)レベルおよびロー(Lo)レベルが交互するパルス状のヒーター電圧を供給する。ヒーター電圧のロー(Lo)レベルは、半導体式ガスセンサ3をCO検出に好適な温度に加熱するレベルに設定され、ハイ(Hi)レベルは、メタン検出に好適な温度に加熱するレベルに設定されている。ヒーター電圧供給回路11は、請求項におけるヒーター電源として働く。
【0033】
検出抵抗切替回路12は、半導体式ガスセンサ3のプレート電極3bに接続されたメタン検出用抵抗R1およびCO検出用抵抗R2と、検出抵抗R1と電源Vcc間にコレクタおよびエミッタが接続され、CPU10の出力ポートP1に抵抗R3を介してベースが接続されたpnp型のトランジスタTr1と、検出抵抗R2と電源Vcc間にコレクタおよびエミッタが接続され、CPU10の出力ポートP2に抵抗R4を介してベースが接続されたpnp型のトランジスタTr2とを有する。検出抵抗切替回路12は、請求項における検出抵抗切り替え手段としてはたらく。検出抵抗R1およびR2は、それぞれ、請求項における第1および第2の検出抵抗として働く。トランジスタTr1およびTr2は、それぞれ、請求項における第1および第2のスイッチング素子として働く。
【0034】
警報回路13は、CPU10の出力ポートP4にベースが接続されたnpn型のトランジスタTr3と、トランジスタTr3のコレクタと電源Vcc間に接続された警報表示手段としてのLED(発光ダイオード)14と、CPU10の出力ポートP5にベースが接続されたnpn型のトランジスタTr4と、トランジスタTr4のコレクタと電源Vcc間に接続された警報音出力手段としてのブザー(BZ)15とを有する。警報回路13は、警報手段として働く。
【0035】
上述の構成を有するガス検出装置において、ヒーター電圧供給回路11から供給されるヒーター電圧がハイ(Hi)レベルの時にメタンガスを検出するために、図5に示すように、CPU10の出力ポートP1およびP2からの制御信号でトランジスタTr1およびTr2を順次オンになるように駆動し、2つの検出抵抗R1およびR2を時分割的に切り替えて半導体式ガスセンサ3のプレート電極3bにプレート電圧を印加し、その時の半導体式ガスセンサ3のセンサ出力Vrs1およびVrs2を計測する。
【0036】
この計測により、得られるセンサ出力電圧と、ガス濃度の関係は図6に示される。本発明では、この2つの検出抵抗により計測された検出抵抗R1使用時センサ出力電圧Vrs1と、検出抵抗R2使用時センサ出力電圧Vrs2の差の関係から、半導体式ガスセンサ3のセンサ故障およびその他の構成要素のハードウェア故障を判別する。
【0037】
まず、シミュレーション上にて、計測する半導体式ガスセンサ3のセンサ抵抗値Rsとセンサ出力電圧Vrsの関係から、通常時の計測範囲を求める。具体例として、Vcc=5V、メタン計測時のセンサ抵抗値計測範囲を100Ω〜200kΩ、検出抵抗R1=1kΩ(メタン3000ppm検出時)、R2=4.7kΩ(CO50ppm検出時)としている。この場合に、センサ抵抗値Rsと、検出抵抗R1に切り替えたときのセンサ出力電圧Vrs1および検出抵抗R2に切り替えたときのセンサ出力電圧Vrs2の関係は、図7に示される。
【0038】
図7の関係から、センサ出力電圧Vrs1とセンサ出力電圧Vrs2の差分ΔVrsの上下限値を算出し、図8に示すように故障判定のしきい値とする。図7および図8より、センサ出力(検出抵抗R1、R2切り替え時)の差分ΔVrsの最小値V1は0.082V、最大値V2は1.765Vとなる。そこで、センサ出力(検出抵抗R1、R2切り替え時)の差分ΔVrsが、図7の正常範囲で示される上下限値の範囲内から逸脱した場合、すなわち、
(Vrs1−Vrs2)≦V1(0.082V)・・・(1)
または
(Vrs1−Vrs2)≧V2(1.765V)・・・(2)
のいずれかとなる範囲を検出した場合、センサまたはハードウエア故障と判断する。
【0039】
この判定値を用い、図9に示される条件A(半導体式ガスセンサ3のプレート電極の断線)、条件B(検出抵抗R1のオープン)、条件C(検出抵抗R2のオープン)、条件D(トランジスタTr1のエミッタ−コレクタ間のオープン)、条件E(トランジスタTr2のエミッタ−コレクタ間のオープン)、条件F(半導体式ガスセンサ3のプレート電極−GND(接地)間のショート)、条件G(半導体式ガスセンサ3のプレート電極−ヒーター間のショート)、条件H(検出抵抗R1のショート)、条件I(検出抵抗R2のショート)、条件J(トランジスタTr1のエミッタ−コレクタ間のショート)および条件K(トランジスタTr2のエミッタ−コレクタ間のショート)の各部の故障を判別する。
【0040】
下記の表1は、ガス検出装置における半導体式ガスセンサ3の故障およびその他の構成要素の故障について、従来装置で検出可能なものと本発明の装置で検出可能なものを比較したものである。表1において、○印は検出可能な故障、×印は検出不可能な故障を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
なお、表1において、※1〜※4は以下の通りである。
※1)従来装置は、本発明の装置と同様に検出抵抗R1をメタン計測用、検出抵抗R2をCO計測用としたときの条件で記載している。
※2)従来技術では、この部品の故障は、検出ができず故障警報を発することができないフェールアウトモードとなる故障である。
※3)常に電源Vccの電圧がプレート電極に印加される状態となるため、プレート電圧を常時印加することができないタイプのガスセンサに関しては、センサ故障につながる。
※4)本発明でも、正常空気状態では故障検出ができない(ガス濃度警報中は検出可能))が、検出抵抗R2をガス濃度の検出抵抗として使用すれば、フェールアウト状態になるのを防ぐことができる。また、その状態でガス濃度を検出した場合は、故障判断ができる。
【0043】
(ガス検出装置の動作)次に、マイコン10の制御の下に行われる上述の構成のガス検出装置の動作の詳細について、図10のフローチャートを参照して説明する。
【0044】
まず、ガス警報器の電源オン時は、マイコン10の出力ポートP1およびP2はハイ(H)レベル、出力ポートP4およびP5はロー(L)レベルになっており、トランジスタTr1〜Tr4はいずれもオフ状態になっている。
【0045】
次に、ヒーター電圧供給回路11からハイ(Hi)レベルおよびロー(Lo)レベルが交互するパルス状のヒーター電圧を半導体式ガスセンサ3のヒーター3aに印加し、ヒーター電圧がハイ(H)レベルの時に、入力ポートP3に入力されるセンサ出力電圧Vrs0を計測する(ステップS1)。
【0046】
次に、ヒーター電圧が次のハイ(H)レベルになっている間に、出力ポートP1からロー(L)レベルの制御信号を出力してトランジスタTr1をオンになるように制御し(ステップS2)、検出抵抗R1を駆動してその時の入力ポートP3に入力されるセンサ出力電圧Vrs1を計測する(ステップS3)。次に、ヒーター電圧がハイ(H)レベルになっている間に、出力ポートP2からロー(L)レベルの制御信号を出力してトランジスタTr2をオンになるように制御し(ステップS4)、検出抵抗R2を駆動してその時の入力ポートP3に入力されるセンサ出力電圧Vrs2を計測する(ステップS5)。
【0047】
次に、計測したセンサ出力電圧の差分(Vrs1−Vrs2)が、上述の最小電圧V1と最大電圧V2の範囲内にある(V1<(Vrs1−Vrs2)<V2)か否かを判定する(ステップS6)。センサ出力電圧の差分が、最小電圧V1と最大電圧V2の範囲内になければ(ステップS6のNo)、次いで、故障警報処理を行う(ステップS7)。このこの故障警報処理は、出力ポートP4よりハイ(H)レベルとロー(L)レベルの交互するPWM状の制御信号を出力してトランジスタTr3をオンになるように制御すると共にし、出力ポートP5よりハイ(H)レベルの制御信号を出力してトランジスタTr4をオンになるように制御して、LED14を点滅させると共にブザー15より故障警報音を発することにより行われる。ステップS7に続いて、ステップS1に戻る。
【0048】
一方、センサ出力電圧の差分が、最小電圧V1と最大電圧V2の範囲内にあれば(ステップS6のYes)、次いで、センサ出力電圧Vrs0が、V3とV4の範囲内にある(V3<Vrs0<V4)か否かを判定する(ステップS8)。この判定は、ステップS1でプレート電極3bに電圧を印加しないときに計測されたセンサ出力Vrs0に対して、半導体式ガスセンサ3のバラツキを考慮して設定したバラツキの下限値および上限値の範囲内にあるか否かを問うものである。たとえば、ヒーター電圧を0.9Vとした場合、プレート電極無印加時のセンサ出力電圧Vrs0は、半導体式ガスセンサ3の仕様によりヒーター電圧の1/2(0.45V)になり、下限値V3=0.1V、上限値V4=0.8Vに設定される。
【0049】
次に、センサ出力電圧Vrs0が、下限値V3と上限値V4の範囲内になければ(ステップS8のNo)、ステップS7に進み、故障警報処理が行われる。
【0050】
一方、センサ出力電圧Vrs0がV3とV4の範囲内にあれば(ステップS8のYes)、次いで、故障警報を解除し(ステップS9)、次いで警報判定処理を行う(ステップS10)。この警報判定処理は、従来のガス濃度に対する警報処理と同様の処理である。すなわち、ステップS3で計測されたセンサ出力電圧Vrs1が、予め設定されマイコン10の内部メモリに記憶されている警報しきい値を超えた場合に、出力ポートP4よりハイ(H)レベルとロー(L)レベルの交互するPWM状の制御信号を出力してトランジスタTr3を断続的にオンになるように制御すると共にし、出力ポートP5よりハイ(H)レベルの制御信号を出力してトランジスタTr4をオンになるように制御して、LED14を点滅させると共にブザー15よりガス濃度警報音を発することにより行われる。なお、故障検出時のLED14の点滅とブザー15の故障警報音と、ガス濃度検出時のLED14の点滅とブザー15のガス濃度警報音は、それぞれ識別できるように異なる形態とすることができる。ステップS10に続いて、ステップS1に戻る。
【0051】
このように、本発明の第1の実施形態によれば、半導体式ガスセンサ3およびその他の構成部品の故障、たとえば図9に示される条件A(半導体式ガスセンサ3のプレート電極の断線)、条件B(検出抵抗R1のオープン)、条件C(検出抵抗R2のオープン)、条件D(トランジスタTr1のエミッタ−コレクタ間のオープン)、条件E(トランジスタTr2のエミッタ−コレクタ間のオープン)、条件F(半導体式ガスセンサ3のプレート電極−GND(接地)間のショート)、条件G(半導体式ガスセンサ3のプレート電極−ヒーター間のショート)、条件H(検出抵抗R1のショート)、条件I(検出抵抗R2のショート)、条件J(トランジスタTr1のエミッタ−コレクタ間のショート)および条件K(トランジスタTr2のエミッタ−コレクタ間のショート)の各部の故障を判別することができ、従来装置のようにフェールアウト状態となることがなくなる。
【0052】
(第2の実施形態)次に、上述の故障検出動作の詳細について、図11のフローチャートを参照して説明する。上述の第1の実施形態では、半導体式ガスセンサ3およびその他の構成部品の故障を判別できるが、この第2の実施形態では、半導体式ガスセンサ3の故障とその他の構成部品の故障を識別することができるようになっているものである。なお、この第2の実施形態におけるガス検出装置の構成は、図2の第1の実施形態の構成と同じであり、フローチャートのみ異なっている。
【0053】
まず、ガス警報器の電源オン時は、マイコン10の出力ポートP1およびP2はハイ(H)レベル、出力ポートP4およびP5はロー(L)レベルになっており、トランジスタTr1〜Tr4はいずれもオフ状態になっている。
【0054】
次に、ヒーター電圧供給回路11からハイ(Hi)レベルおよびロー(Lo)レベルが交互するパルス状のヒーター電圧を半導体式ガスセンサ3のヒーター3aに印加し、ヒーター電圧がハイ(H)レベルの時に、入力ポートP3に入力されるセンサ出力電圧Vrs0を計測する(ステップS21)。
【0055】
次に、ヒーター電圧が次のハイ(H)レベルになっている間に、出力ポートP1からロー(L)レベルの制御信号を出力してトランジスタTr1をオンになるように制御し(ステップS22)、検出抵抗R1を駆動してその時の入力ポートP3に入力されるセンサ出力電圧Vrs1を計測する(ステップS23)。次に、ヒーター電圧がハイ(H)レベルになっている間に、出力ポートP2からロー(L)レベルの制御信号を出力してトランジスタTr2をオンになるように制御し(ステップS24)、検出抵抗R2を駆動してその時の入力ポートP3に入力されるセンサ出力電圧Vrs2を計測する(ステップS25)。
【0056】
次に、計測したセンサ出力電圧の差分(Vrs1−Vrs2)が、上述の最小電圧V1と最大電圧V2の範囲内にある(V1<(Vrs1−Vrs2)<V2)か否かを判定する(ステップS26)。センサ出力電圧の差分が、最小電圧V1と最大電圧V2の範囲内になければ(ステップS26のNo)、次いで、計測したセンサ出力電圧Vrs1およびVrs2がほぼ等しくなっているか否かを判定する(ステップS27)。計測したセンサ電圧Vrs1およびVrs2がほぼ等しくなっていなければ(ステップS27のNo)、次いで、回路故障と判断し(ステップS28)、次いで、故障警報処理を行う(ステップS29)。この故障警報処理は、出力ポートP4よりハイ(H)レベルとロー(L)レベルの交互するPWM状の制御信号を出力してトランジスタTr3を断続的にオンになるように制御すると共にし、出力ポートP5よりハイ(H)レベルの制御信号を出力してトランジスタTr4をオンになるように制御して、LED14を点滅させると共にブザー15より故障警報音を発することにより行われる。ステップS29に続いて、ステップS21に戻る。
【0057】
一方、センサ出力電圧Vrs1およびVrs2がほぼ等しくなっていれば(ステップS27のYes)、次いで、センサ故障と判断し(ステップS30)、次いで、上述のステップS29と同様の故障警報処理を行い(ステップS31)、次いで、ステップS21に戻る。
【0058】
センサ出力電圧の差が、最小電圧V1と最大電圧V2の範囲内にあれば(ステップS26のYes)、次いで、センサ出力電圧Vrs0がV3とV4の範囲内にある(V3<Vrs0<V4)か否かを判定する(ステップS32)。この判定は、ステップS21でプレート電極3bに電圧を印加しないときに計測されたセンサ出力Vrs0に対して、半導体式ガスセンサ3のバラツキを考慮して設定したバラツキの下限値および上限値の範囲内にあるか否かを問うものであり、第1の実施形態におけるステップS8と同様に行われる。
【0059】
次に、センサ出力電圧Vrs0が、下限値V3と上限値V4の範囲内になければ(ステップS32のNo)、ステップS27に進む。
【0060】
一方、センサ出力電圧Vrs0がV3とV4の範囲内にあれば(ステップS32のYes)、次いで、故障警報を解除し(ステップS33)、次いで警報判定処理を行う(ステップS34)。この警報判定処理は、従来のガス濃度に対する警報処理と同様の処理である。すなわち、ステップS23で計測されたセンサ出力電圧Vrs1が、予め設定されマイコン10の内部メモリに記憶されている警報しきい値を超えた場合に、出力ポートP4よりハイ(H)レベルとロー(L)レベルの交互するPWM状の制御信号を出力してトランジスタTr3をオンになるように制御すると共にし、出力ポートP5よりハイ(H)レベルの制御信号を出力してトランジスタTr4をオンになるように制御して、LED14を点滅させると共にブザー15よりガス濃度警報音を発することにより行われる。
【0061】
なお、回路故障検出時のLED14の点滅とブザー15の故障警報音と、センサ故障検出時のLED14の点滅とブザー15の故障警報音と、ガス濃度検出時のLED14の点滅とブザー15のガス濃度警報音は、それぞれ識別できるように異なる形態とすることができる。ステップS34に続いて、ステップS21に戻る。
【0062】
このように、本発明の第1の実施形態によれば、半導体式ガスセンサ3の故障なのかそれともその他の構成部品、たとえば検出抵抗R1,R2やスイッチング素子Tr1、Tr2の故障なのかを識別することができる。
【0063】
図12は、センサまたはその他の構成要素における故障の各条件において発生する半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧Vrs1およびVrs2の波形を示す図である。なお、点線は、故障がない正常時の波形を示す。図11において、
(1)条件A(プレート電極がオープン状態)の場合・・・Vrs1=Vrs2=Vcとなり、故障判定条件はVrs1−Vrs2≦V1となって、故障が発生していることが判別できる。
(2)条件B(抵抗R1がオープン状態)または条件D(トランジスタTr1がオープン状態)の場合・・・Vrs1=VH(ヒーター電圧)/2となり、故障判定条件はVrs1−Vrs2≦V1となって、故障が発生していることが判別できる。
(3)条件C(抵抗R2がオープン状態)または条件E(トランジスタTr2がオープン状態)の場合・・・Vrs2=VH/2となり、故障判定条件はVrs1−Vrs2≧V2となって、故障が発生していることが判別できる。
(4)条件F(プレート電極が接地に対してショート状態)の場合・・・Vrs1=Vrs2=0Vとなり、判定条件はVrs1−Vrs2≦V1となって、故障が発生していることが判別できる。
(5)条件G(プレート電極がヒーターに対してショート状態)の場合・・・Vrs1=Vrs2=VH(0.2Vまたは0.9V)となり、判定条件はVrs1−Vrs2≦V1となって、故障が発生していることが判別できる。
(6)条件H(抵抗R1がショート状態)の場合・・・Vrs1=Vccとなり、故障判定条件はVrs1−Vrs2≧V2となって、正常空気中では故障は判別できないが、ガス濃度警報中は故障を判別できる。
(7)条件I(抵抗R2がショート状態)の場合・・・Vrs2=Vccとなり、故障判定条件はVrs1−Vrs2≦V1となって、故障が発生していることが判別できる。
(8)条件J(トランジスタTr1がショート状態)の場合・・・常に検出抵抗R1が動作しており、故障判定条件はVrs1−Vrs2≦V1、またはプレート電極に電圧を印加していない時のセンサ出力電圧を計測する。
(9)条件K(トランジスタTr2がショート状態の場合)常に検出抵抗R2が動作しており、判定条件はプレート電極に電圧を印加していない時のセンサ出力電圧を計測する。
【0064】
このように、表1にある各故障状態に対する実際のセンサ出力の状態が図12に示される。表1中条件H(R1ショート)、条件J,K(Tr1またはTr2ショート)以外の条件においては、上記判定値の範囲をそのまま適用することで故障状態を判別できる。また、上記判定条件のみでは判別できない条件について、下記の条件を満たすことで、故障検出またはフェイルアウトの状態を回避できる。
【0065】
図8中条件D(R1がショートした時)の実施例では、警報状態に近いセンサ抵抗値にならなければ、(Vrs1−Vrs2)≧1.765Vとはならず、通常状態で故障検出ができない。
【0066】
しかし、従来のように、1つの検出抵抗で1つの検知ガスを計測するのではなく、1つのガスに対して2つの検出抵抗をガスセンサの抵抗値に対して最適に選択するようにすれば、検出抵抗R1ショート時は、検出抵抗R2でガス濃度計測を行うことができ、フェイルアウトに至らない。
【0067】
また警報中など、ガスを検知しセンサ出力電圧が低下し、上記最大値V2を超えた場合は、警報の発生の有無によらず、LED等で故障を知らせることが可能である。
【0068】
条件J,K(Tr1またはTr2ショートした時)は、常に半導体式ガスセンサ3のプレート電極3bに電圧が印加されている状態のため、トランジスタTr1、Tr2がオンしていないタイミングでセンサ出力を計測することで、通常状態と故障状態を判別できる(図13)。
【0069】
図13は、ヒーター電圧とセンサ出力電圧Vrs0、Vrs1およびVrs2とデータ計測ポイントのタイミングを示す図である。
【0070】
以上の通り、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0071】
たとえば、第1および第2の実施形態の他にも、1つのガスの検知ポイントに対して、計測に使用する検出抵抗をたとえば3つ以上としても、故障検出は可能である。その場合、検出抵抗とセンサ出力電圧の関係を考慮し、正常範囲の上下限値は決められる。ガス検出装置の故障箇所が同時に複数存在する場合を除き、半導体式ガスセンサ3の故障かそれ以外の回路構成部品の故障かを、計測されるデータから判別することが可能である。半導体式ガスセンサ3に起因する故障時のセンサ出力電圧は常に一定であることに対して、その他の回路構成部品の故障時は、その条件によって検出抵抗毎にセンサ出力は異なる。これを利用し、センサ故障か回路故障かを見分ける。
【0072】
また、故障の内容をEEPROMなどの不揮発性メモリに記憶したり、LED等の表示手段がある場合は、故障表示させる(故障内容によって表示方法を変えるなど)ことで、市場で発生した警報器の故障解析時に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガス検出装置の基本構成図である。
【図2】ガス検出装置の具体的構成を示す回路図である。(従来例および第1の実施形態)
【図3】従来のガス検出装置におけるセンサ出力特性を示す図である。(従来例)
【図4】従来のガス検出装置における各部の信号のタイミングチャートである。(従来例)
【図5】本発明のガス検出装置における各部の信号のタイミングチャートである。((第1の実施形態)
【図6】本発明のガス検出装置におけるセンサ出力特性を示す図である。(第1の実施形態)
【図7】本発明のガス検出装置におけるセンサ抵抗値Rsと、検出抵抗R1に切り替えたときのセンサ出力電圧Vrs1および検出抵抗R2に切り替えたときのセンサ出力電圧Vrs1の関係を示す図である。(第1の実施形態)
【図8】本発明のガス検出装置における故障判定に適用されるしきい値(上下限値)および正常範囲を示す図である。(第1の実施形態)
【図9】本発明のガス検出装置における故障の条件を示す図である。(第1の実施形態)
【図10】本発明のガス検出装置の動作を説明するフローチャートである。(第1の実施形態)
【図11】本発明の第2の実施形態に係るガス検出装置の動作を説明するフローチャートである。(第2の実施形態)
【図12】センサまたはその他の構成要素における故障の各条件において発生する半導体式ガスセンサ3のセンサ出力電圧Vrs1およびVrs2の波形を示す図である。(第1および第2の実施形態)
【図13】ヒーター電圧とセンサ出力電圧Vrs0、Vrs1およびVrs2とデータ計測ポイントのタイミングを示す図である。(第1および第2の実施形態)
【符号の説明】
【0074】
1 ガス検出装置
3 半導体式ガスセンサ
3a ヒーター
3b プレート電極
10 マイコン(CPU)
10a 制御手段
10b センサ出力差分測定手段
10c プレート無印加時センサ出力測定手段
10d 第1の故障判定手段
10e 第2の故障判定手段
10f 第3の故障判定手段
11 ヒーター電圧供給回路(ヒーター電源)
12 検出抵抗切り替え回路(検出抵抗切り替え手段)
13 警報回路
R1 検出抵抗(第1の検出抵抗)
R2 検出抵抗(第2の検出抵抗)
Tr1 トランジスタ(第1のスイッチング素子)
Tr2 トランジスタ(第2のスイッチング素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーター電源より所定のヒーター電圧が供給されるヒーターと、プレート電源より所定のプレート電圧が供給されるプレート電極を有する半導体式ガスセンサを用いてガスの濃度を検出するガス検出装置であって、
前記ヒータ電源より所定のヒーター電圧が供給されている間に、前記プレート電源と前記プレート電極間にそれぞれ異なる抵抗値を有する第1の検出抵抗または第2の検出抵抗を切り替え接続する検出抵抗切り替え手段と、
前記プレート電極に前記第1の検出抵抗が接続されている時の前記半導体式ガスセンサのセンサ出力電圧と、前記プレート電極に前記第2の検出抵抗が接続されている時の前記半導体式ガスセンサのセンサ出力電圧の差分を測定するセンサ出力差分測定手段と、
前記センサ出力差分測定手段で測定された前記差分が予め設定された正常範囲内にない場合に、前記半導体式ガスセンサの故障と判定する第1の故障判定手段と、
を備えたことを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス検出装置において、
前記検出抵抗切り替え手段は、前記プレート電源と前記第1の検出抵抗間に接続された第1のスイッチング素子と、前記プレート電源と前記第2の検出抵抗間に接続された第2のスイッチング素子と、前記第1または第2のスイッチング素子をオン制御する制御信号を供給する制御手段とを含み、
前記第1の故障判定手段は、前記センサ出力差分測定手段で測定された前記差分が予め設定された正常範囲内にない場合に、前記半導体式ガスセンサ、前記第1の検出抵抗、前記第2の検出抵抗、前記第1のスイッチング素子または前記第2のスイッチング素子のいずれかの故障と判定する
ことを特徴とするガス検出装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のガス検出装置において、
前記ヒータ電源より所定のヒーター電圧が供給されている間であって、前記プレート電源より前記プレート電極に所定のプレート電圧が供給されていない時に、前記半導体式ガスセンサのセンサ出力電圧を測定するプレート無印加時センサ出力測定手段と、
前記プレート無印加時センサ出力測定手段で測定されたプレート無印加時センサ出力電圧が予め設定された正常範囲内にない場合に前記第1または第2の検出抵抗の故障と判定する第2の故障判定手段とをさらに備えた
ことを特徴とするガス検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のガス検出装置において、
前記第1または第2の故障判定手段により故障判定がなされた場合、前記プレート電極に前記第1の検出抵抗が接続されている時の前記半導体式ガスセンサのセンサ出力電圧と、前記プレート電極に前記第2の検出抵抗が接続されている時の前記半導体式ガスセンサのセンサ出力電圧がほぼ一致しているときは、前記半導体式ガスセンサの故障と判定し、一致していないときは、前記第1の検出抵抗、前記第2の検出抵抗、前記第1のスイッチング素子または前記第2のスイッチング素子のいずれかの故障と判定する第3の故障判定手段をさらに備えた
ことを特徴とするガス検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のガス検出装置において、
前記ガス検出装置は、ハイレベルおよびローレベルが交互するパルス状のヒーター電圧が前記ヒータ電源より前記ヒーターに供給され、前記ハイレベルのヒーター電圧が供給されている間に前記検出抵抗切り替え手段で前記プレート電源と前記プレート電極間に前記第1の検出抵抗が接続されている時の前記半導体式ガスセンサのセンサ出力電圧により第1のガスの濃度を検出すると共に、前記ローレベルのヒーター電圧が供給されている間に前記検出抵抗切り替え手段で前記プレート電源と前記プレート電極間に前記第2の検出抵抗が接続されている時の前記半導体式ガスセンサのセンサ出力電圧により前記第1のガスとガス種の異なる第2のガスの濃度を検出するガス検出装置である
ことを特徴とするガス検出装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガス検出装置において、
前記第1のガスはメタンであり、前記第2のガスはCOである
ことを特徴とするガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−198940(P2007−198940A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18702(P2006−18702)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】