説明

ガス流路構造体及び基板処理装置

【課題】設置場所を確保する上でレイアウト上の問題がなく、且つ可動する電極に追従して確実にガスを供給することができる信頼性の高いガス流路構造体を提供する。
【解決手段】 内部を減圧可能な処理室11と、処理室11内に配置された対向電極24を載置電極12に対して移動可能に支持するシャフト26と、シャフト26が処理室11の壁面13を貫通する貫通部において壁面13に対する対向電極24の変位を吸収し、シャフト26周辺の雰囲気から処理室11内をシールするようにシャフト26の外周部に、シャフト26と同心状に配置された環状の第1のベローズ31と、第1のベローズ31の外周部に、同心状に配置された第2のベローズ32とを有し、第1のベローズ31と第2のベローズ32で環状のガス流路35を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流路構造体及び基板処理装置に関し、特に、電極可動式の基板処理装置におけるガス流路構造体及び該ガス流路構造体を備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)にプラズマ処理を施す基板処理装置は、ウエハを収容し且つ内部を減圧可能なチャンバ(処理室)と、該チャンバ内部の下方に配されたサセプタ(載置台)と、チャンバ内部においてサセプタに対向するように配されたシャワーヘッドとを備える。サセプタはウエハを載置するとともに、高周波電源が接続されてチャンバ内部に高周波電力を印加する載置電極として機能し、シャワーヘッドはチャンバ内部に処理ガスを導入するとともに、接地されて対向電極として機能する。このような基板処理装置では、チャンバ内部に供給された処理ガスを高周波電力によって励起してプラズマを生成し、該プラズマによってウエハにプラズマ処理を施す。
【0003】
ところで、チャンバ内部のシャワーヘッド及びサセプタの間の空間においてプラズマを適切に分布させるために、従来、サセプタを可動に構成してシャワーヘッド及びサセプタの間の空間の厚さ(以下、「ギャップ」という。)を調整可能な基板処理装置が開発されている。また、近年、基板処理装置の周辺におけるレイアウト上の制約からサセプタではなくシャワーヘッドが可動に構成された基板処理装置が検討されている。
【0004】
図4は、シャワーヘッドが可動に構成された従来の基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0005】
図4の基板処理装置100では、円筒状のチャンバ101内部においてサセプタ102に対向するように配置されたシャワーヘッド103は、チャンバ101の内径とほぼ等しい外径を有する略円板状を呈し、不図示のリフト機構によってチャンバ101内部においてピストンのように上下動する。なお、図4中において、最も下降した場合のシャワーヘッド103を実線で示し、最も上昇した場合のシャワーヘッド103を破線で示す。
【0006】
シャワーヘッド103は、ガス流路104、バッファ室105やガス孔106からなる処理ガス導入系と、該処理ガス導入系に外部より処理ガスを供給するためのガス供給元(図示しない)に接続されるガス供給管107とを有する。また、上下動する電極としてのシャワーヘッド103を釣支するシャフト部分111の外周部には、同心状に、真空遮断機能を備えたベローズ112が配設されている。上述したように、シャワーヘッド103は上下動するが、通常、ガス供給元は固定されており動かないため、ガス供給管107はシャワーヘッド103の上下動に追従して屈曲する必要がある。
【0007】
通常、固定された流体供給元から可動の構成物へ向けて流体を供給するための供給管としてフレキシブルチューブが知られている。例えば、宇宙環境試験装置において、真空容器から可動の扉部シュラウドへ向けて液化窒素を供給するために可撓性断熱配管としてフレキシブルチューブが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
ところが、図5に示すように、フレキシブルチューブ108は、複数の波形の絞り加工が施された薄肉の金属パイプ109と、該金属パイプ109の周りを覆う金属メッシュのブレード110とからなるため、曲げに対する剛性が比較的高く、柔軟性に欠ける。従って、大きく屈曲させた場合に大きな応力が発生し易く、変位量の大きい可動の構成物に適用した場合、早期に破断する虞がある。このため、上下方向の変位量が、例えば70mmと大きく、且つ頻繁に上下動するシャワーヘッド103に処理ガスを供給するガス供給管としてフレキシブルチューブ108を適用するのは困難である。
【0009】
すなわち、フレキシブルチューブは、繰り返し屈曲させることを前提としたものではなく、不定期の破断による寿命がある。従って、1年程度の定期交換品として取り扱う必要があり、寿命上の安全性に問題がある。また、繰り返し屈曲させることを前提としない一体成型ベローズもフレキシブルチューブと同様の問題があり、頻繁に上下動するシャワーヘッド103に処理ガスを供給するガス供給管として適用するのは困難である。
【0010】
一方、ガス供給管の可動部分に回転ジョイント継ぎ手を適用することも考えられるが、回転ジョイントは、物理的摺動部を有するためにパーティクルの発生を回避することが困難であり、パーティクルの発生が最終製品の品質を大きく左右する基板処理装置においては、実用的でない。
【0011】
ところで、フレキシブルチューブ又は回転ジョイント継ぎ手に代えてベローズを適用することが考えられる。ベローズは、縦断面形状が山形の円環状部材(以下、「コマ(piece)」という。)が幾つも連結されて構成された金属パイプのみからなるために、曲げに対する剛性が比較的低く、柔軟性に富む。従って、頻繁且つ大きく変位するシャワーヘッド103の変位吸収部材として適用しても、大きな応力が発生しないので、早期に破断することはないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−137200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上下動するシャワーヘッドにガスを供給する供給管として、曲げに対する剛性が比較的低く、柔軟性に富むベローズを適用したとしても、ガス配管のためだけにベローズを使用するとなると、そのための設置スペースが必要となり、特に多くの機器が搭載される基板処理装置の上部ユニットの上面部における配置場所を確保することが困難であり、レイアウト上の問題がある。
【0014】
また、ベローズは、フレキシブルチューブ等に比べて高価であり、できるだけ使用長さ、使用数量等を低減する必要もある。
【0015】
本発明の目的は、設置場所を確保する上でレイアウト上の問題がなく、且つ可動する電極に追従して確実にガスを供給することができる信頼性の高いガス流路構造体及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1記載のガス流路構造体は、内部を減圧可能な処理室と、該処理室内に配置され、被処理基板を載置する載置電極と、該載置電極と対向するように配置された対向電極とを備え、ガス流路を介して前記載置電極及び前記対向電極の間に供給される処理ガスを励起してプラズマを生成し、該プラズマによって前記被処理基板にプラズマ処理を施す基板処理装置のガス流路構造体であって、前記載置電極及び対向電極の一方を他方に対して移動可能に支持する支持部材と、該支持部材が前記処理室の壁面を貫通する貫通部において前記壁面に対する前記電極の変位を吸収し、前記支持部材周辺の雰囲気から前記処理室内をシールするように前記支持部材の外周部に、該支持部材と同心状に配置された環状の第1の変位吸収圧力隔壁と、該第1の変位吸収圧力隔壁の外周部に、該第1の変位吸収圧力隔壁と同心状に配置された環状の第2の変位吸収圧力隔壁とを有し、前記第1の変位吸収圧力隔壁と前記第2の変位吸収圧力隔壁とで環状の第1のガス流路を形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項2記載のガス流路構造体は、請求項1記載のガス流路構造体において、前記第2の変位吸収圧力隔壁の外周部に、該第2の変位吸収圧力隔壁と同心状に環状の第3又はそれ以上の変位吸収圧力隔壁を設け、前記第2の変位吸収圧力隔壁の外側に、それぞれ隣接する変位吸収圧力隔壁相互に挟持された環状の第2又はそれ以上のガス流路を形成したことを特徴とする。
【0018】
請求項3記載のガス流路構造体は、請求項1又は2記載のガス流路構造体において、前記第1の変位吸収圧力隔壁の外周部に対向するように、前記第1の変位吸収圧力隔壁の長さ方向に直交する方向への屈曲を制限するガイド部材を設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項4記載のガス流路構造体は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス流路構造体において、前記変位吸収圧力隔壁の断面形状は、円形、楕円形又は矩形であることを特徴とする。
【0020】
請求項5記載のガス流路構造体は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガス流路構造体において、前記変位吸収圧力隔壁は、ベローズであることを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するために、請求項6記載の基盤処理装置は、内部を減圧可能な処理室と、該処理室内に配置され、被処理基板を載置する載置電極と、該載置電極と対向配置された対向電極とを備え、前記載置電極及び前記対向電極の間に供給される処理ガスを励起してプラズマを生成し、該プラズマによって前記被処理基板にプラズマ処理を施す基板処理装置であって、前記載置電極及び前記対向電極の間に処理ガスを供給するガス流路構造体を有し、該ガス流路構造体は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガス流路構造体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載のガス流路構造体及び請求項6記載の基板処理装置によれば、ガス流路構造体が、載置電極及び対向電極の一方を他方に対して移動可能に支持する支持部材と、この支持部材が処理室の壁面を貫通する貫通部において壁面に対する電極の変位を吸収し、支持部材周辺の雰囲気から処理室内をシールするように支持部材の外周部に、支持部材と同心状に配置された環状の第1の変位吸収圧力隔壁と、第1の変位吸収圧力隔壁の外周部に、第1の変位吸収圧力隔壁と同心状に配置された環状の第2の変位吸収圧力隔壁とを有し、第1の変位吸収圧力隔壁と第2の変位吸収圧力隔壁とで環状の第1のガス流路を形成するので、電極の可動に追従してその変位を吸収するガス流路を処理室内に設けることができる。これによって、設置場所を確保する上でのレイアウト上の問題がなくなり、且つ可動する電極の変位を確実に吸収してガスを安定に供給することができ、またガス流路構造体としての信頼性を向上させることができる。
【0023】
請求項2記載のガス流路構造体によれば、第2の変位吸収圧力隔壁の外周部に、第2の変位吸収圧力隔壁と同心状に環状の第3又はそれ以上の変位吸収圧力隔壁を設け、第2の変位吸収圧力隔壁の外側に、それぞれ隣接する変位吸収圧力隔壁相互に挟持された環状の第2又はそれ以上のガス流路を形成したので、多系統の処理ガスを使用する基板処理装置に適用することができる。
【0024】
請求項3記載のガス流路構造体によれば、第1の変位吸収圧力隔壁の外周部に対向するように、第1の変位吸収圧力隔壁の長さ方向に直交する方向への屈曲を制限するガイド部材を設けたので、内側大気、外側真空に曝される第1の変位吸収隔壁の座屈を抑制することができる。
【0025】
請求項4記載のガス流路構造体によれば、変位吸収圧力隔壁の断面形状を、円形、楕円形又は矩形としたので、適用する変位吸収圧力隔壁のバリエーションを広げることができる。
【0026】
請求項5記載のガス流路構造体によれば、変位吸収圧力隔壁としてベローズを適用したので、可動する電極に追従してその変位を吸収することができ、確実にガスを供給することができ、ガス流路構造体としての信頼性が向上すると共に、パーティクルの発生を極力低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係るガス流路構造体を備える基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1における第1のベローズ(第2のベローズも同様)の部分拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態の変形例の構成を概略的に示す断面図である。
【図4】シャワーヘッドが可動に構成された従来の基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図5】フレキシブルチューブの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係るガス流路構造体を備える基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。この基板処理装置はウエハにドライエッチング処理を施すように構成されている。
【0030】
図1において、基板処理装置10は、直径が、例えば、300mmのウエハWを収容する円筒形状のチャンバ11(処理室)を有し、該チャンバ11内部の図中下方には半導体デバイス用のウエハWを載置する円板形状のサセプタ12(載置電極)が配置されており、チャンバ11の図中上端は開閉自在な円板状の蓋部13によって覆われている。
【0031】
チャンバ11内部はTMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)(ともに図示しない)等によって減圧され、また、チャンバ11内部の圧力はAPCバルブ(図示しない)によって制御される。なお、半導体デバイスにナノレベルのパーティクルが付着しても欠陥の原因となるため、チャンバ11内部にはドライエッチング処理に先立って清浄処理が施されてパーティクルが除去される。
【0032】
サセプタ12には第1の高周波電源14が第1の整合器15を介して接続され、且つ第2の高周波電源16が第2の整合器17を介して接続されており、第1の高周波電源14は比較的低い周波数、例えば、3.2MHzの高周波電力であるバイアス電力をサセプタ12に印加し、第2の高周波電源16は比較的高い周波数、例えば、40MHzの高周波電力であるプラズマ生成電力をサセプタ12に印加する。そして、サセプタ12はチャンバ11内部にプラズマ生成電力を印加する。
【0033】
サセプタ12の上部には、静電電極18を内部に有する静電チャック19が配置されている。静電チャック19は円板状のセラミックス部材で構成され、静電電極18には直流電源20が接続されている。静電電極18に正の直流電圧が印加されると、ウエハWにおける静電チャック19側の面(以下、「裏面」という。)には負の電位が生じて静電電極18及びウエハWの裏面の間に電位差が生じ、該電位差に起因するクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、ウエハWは静電チャック19に吸着保持される。
【0034】
また、サセプタ12には、吸着保持されたウエハWを囲うように、リング状部材であるフォーカスリング21が載置される。フォーカスリング21は、導電体、例えば、ウエハWを構成する材料と同じ単結晶シリコンによって構成される。フォーカスリング21は導電体からなるので、プラズマの分布域をウエハW上だけでなく該フォーカスリング21上まで拡大してウエハWの周縁部上におけるプラズマの密度を該ウエハWの中央部上におけるプラズマの密度と同程度に維持する。これにより、ウエハWの全面に施されるドライエッチング処理の均一性を維持することができる。
【0035】
サセプタ12の図中上部には、サセプタ12と対向するようにシャワーヘッド22が配置されている。シャワーヘッド22は、多数のガス孔23を有する導電性の上部電極24と、該上部電極24を着脱可能に釣支するクーリングプレート25と、該クーリングプレート25をさらに釣支する支持部材としてのシャフト26とを有する。上部電極24は接地されてチャンバ11内部に印加されるプラズマ生成電力に対する接地電極(対向電極)として機能する。上部電極24の外径はチャンバ11の内径とほぼ等しく、上部電極24はチャンバ11内部に遊合するように配置される。
【0036】
シャフト26は蓋部13(壁面)を貫通し、該シャフト26の上部は基板処理装置10の上方に配置されたリフト機構(図示しない)に接続される。該リフト機構はシャフト26を図中上下方向に移動させるが、このとき、上部電極24を備えたシャワーヘッド22がチャンバ11内部においてピストンのように上下動する。これにより、シャワーヘッド22及びサセプタ12の間の空間の厚さであるギャップを調整することができる。シャワーヘッド22の図中上下方向に関する移動量の最大値は、例えば、70mmである。
【0037】
シャフト26は蓋部13と擦れる可能性があり、パーティクルの発生源となりうる。従って、シャフト26の外周面は、第1の変位吸収隔壁としての第1のベローズ31で覆われている。シャフト26は円柱状を呈しており、円筒状の第1のベローズ31は、シャフト26と同心円状に配置される。第1のベローズ31の図中上方の一端は蓋部13の下面に接合されており、図中下方の一端はシャワーヘッド22のクーリングプレート25の上面に接合されている。これによって、シャフト26が蓋部13を貫通する貫通部において蓋部13(壁面)に対する電極の変位を吸収し、シャフト26周辺の雰囲気と処理室11内とがシールされ、チャンバ11内部と大気との隔絶状態が保持される。
【0038】
第1のベローズ31に隣接するように、その外周部に同心円状に断面円形の第2の変位吸収圧力隔壁として第2のベローズ32が配置されている。第2のベローズ32は、第1のベローズ31との間の所定の空隙を有する直径を有している。第2のベローズ32の図中上方の一端は蓋部13の下面に接合されており、図中下方の一端はシャワーヘッド22のクーリングプレート25の上面に接合されている。第1のベローズ31と第2のベローズ3との間の間隙はガス流路35となる。ガス流路35は、蓋部13を貫通する処理ガス供給管36を介してガス供給系(不図示)に接続されている。また、ガス流路35は、ガス孔38を介してクーリングプレート25の内部のバッファ室29と連通している。バッファ室29は、複数のガス孔23によってチャンバ11内部と連通している。処理ガスは、ガス供給系から、処理ガス供給管36を経て第1のベローズ31と第2のベローズ32とで形成されるガス流路35に流入し、その後、ガス孔38を経てクーリングプレート25の内部のバッファ室29に流入し、複数のガス孔23を介してチャンバ11内部に導入される。
【0039】
図2は、図1における第1のベローズ(第2のベローズも同様)の部分拡大図である。図2において、左半分は断面を示し、右半分は側面を示す。
【0040】
図2において、第1のベローズ31は、縦断面(長さ方向に沿う断面)形状が山形の円環状部材(以下、「コマ(piece)」という。)31aが長さ方向に多数連結されて構成された金属パイプからなる。各コマ31aではテーパ状に成形された2つの金属の円環板31bがその裾同士を溶接することによって接合されている。すなわち、山形の頂部は溶接部31cで接合されているのみなので、図中矢印A方向の伸縮に対する剛性は低く、柔軟性に富み、矢印A方向に容易に伸縮する。また、各コマ31aの長さ方向に垂直な断面形状は円環であり、各コマ31aは金属からなるため、第1のベローズ31は殆どねじれることがない。
【0041】
図1に戻り、シャワーヘッド22を上下方向に移動させる際は、図示省略したリフト機構を稼働させる。リフト機構が稼働することによって、シャフト26に連結されたシャワーヘッド22のサセプタ12に対する相対位置が変化するが、ガス流路35を形成する第1のベローズ31及び第2のベローズ32がそれぞれシャワーヘッド22の上下方向の移動に追従して伸縮し、相対位置の変化を吸収する。その結果、ガス流路35は、シャワーヘッド22が図中上下方向に移動しても、常に処理ガスを供給可能に処理ガス導入系に接続される。
【0042】
上述した基板処理装置10の各構成部品、例えば、第1の高周波電源14や第2の高周波電源16の動作は、基板処理装置10が備える制御部(図示しない)のCPUがドライエッチング処理に対応するプログラムに応じて制御する。
【0043】
このような構成の基板処理装置10において、先ず、プラズマを適切に分布させるためには、リフト機構(図示しない)を駆動させてシャフト26を図1中上下方向に移動させてサセプタ12とシャワーヘッド22との間のギャップを調整する。次いで、処理ガス供給管36を経てチャンバ11内に処理ガスを供給する。処理ガス供給管36内を流れる処理ガスは、例えば、処理ガス供給管36の途中に設けられたフィルタによってパーティクルが除去された後、ガス流路35に流入し、その後、クーリングプレート25の内部のバッファ室29及びガス孔23を経てチャンバ11内部へ流入する。チャンバ11内に流入した処理ガスは、チャンバ11内部へ印加されたプラズマ生成電力によって励起されてプラズマとなる。
【0044】
プラズマ中の陽イオンは、サセプタ12に印加されるバイアス電力に起因する負のバイアス電位によってサセプタ12に載置されたウエハWに向けて引きこまれ、該ウエハWにドライエッチング処理を施す。
【0045】
本実施の形態によれば、基板処理装置10のサセプタ12とシャワーヘッド22との間に処理ガスを導入するガス流路を、シャワーヘッド22を支持するシャフト26の周りに同心円状に配置された伸縮自在の第1のベローズ31及び第2のベローズ32で形成したので、ガス流路の設置場所を確保し易くなり、しかもシャワーヘッド22の上下方向の移動に追従してその変位を吸収することができ、これによって処理ガスを安定、且つ確実にシャワーヘッドに供給することができ、信頼性も向上する。
【0046】
本実施の形態によれば、シャワーヘッドが上下動する構成の基板処理装置に、予め設けられている、チャンバ内空間を大気から隔絶する圧力隔壁としての第1のベローズ31を伸縮するガス流路35の構成部材として活用するようにしたので、ガス流路を伸縮させる構造と、シャワーヘッドの上下動を吸収する構成を一体化することができ、これによって、部品点数の増加を必要最小限に抑えることができる。また、伸縮するガス流路35をチャンバ内に設けたので、チャンバ上方の構成が複雑になることもない。
【0047】
本実施の形態において、第1のベローズ31と第2のベローズ32として、例えば、100mmφ以上の内径のものを適用することが好ましい。これによって、通常のガス管に比べてガス流路35のコンダクタンスが大きくなり、例えば、第1のベローズ31と第2のベローズ32との間の間隙を極力小さくすることができる。すなわち、第1のベローズ31と第2のベローズ32との間隙の設定は、大半がベローズの動作マージンの設計に依存する。但し、座屈等の垂直動作を妨げる現象に対処し得る最低限の間隙、例えば、10mm程度を確保する必要がある。
【0048】
本実施の形態において、ベローズは伸縮に対する柔軟性に富み、伸縮時に大きな応力が発生しないため、ガス流路35が早期に破断するのを防止することができ、信頼性が向上する。
【0049】
本実施の形態において、第1のベローズ31及び第2のベローズ32の断面形状を、円形としたが、円形以外、例えば楕円形、矩形等であってもよい。
【0050】
本実施の形態において、第1のベローズ31のみがチャンバ内空間を大気から隔絶する圧力隔壁として機能する。従って、第1のベローズ31は、第2のベローズ32に比べて「内圧>>外圧」という圧力状態に耐える必要があるため、座屈防止の施策(例えばガイド設置)に留意する必要がある。従って、座屈防止用のガイド部材を第1のベローズの外周部に設けることが好ましい。
【0051】
第2のベローズ32は、ガス流路35を形成するためのものであり、ガス流路35はチャンバ11内と連通しており、チャンバ11内部と同様に減圧される。従って、第2のベローズ31には、特に、真空と大気とを隔絶する第1のベローズ31ほどの機能は要求されない。また、多系統のガス流路を形成するためにベローズを3個又はそれ以上同心状に配置する場合であっても、第1のベローズ以外のベローズに作用する真空応力が極端に増大することはない。
【0052】
本実施の形態において、変位吸収隔壁としてベローズを適用したが、ベローズに代えて磁性流体シールを有する摺動シール構造を適用することもできる。但し、摺動シール構造は摺動部を有するので、パーティクル対策を施す必要がある。
【0053】
本実施の形態では、シャワーヘッド22が上下方向に移動する場合について説明したが、本発明は、例えば、チャンバ11内部の下方に配置されたサセプタ12が上下方向に移動する場合についても同様に適用することができる。具体的には、サセプタ12が上下方向に移動し、且つ該サセプタ12へガスを外部から供給する必要がある場合、外部のガス供給元に接続された基板処理装置内のガス流路を、サセプタ12を移動可能に支持するシャフトにベローズを同心状に複数配置して形成することができる。
【0054】
図3は、本実施の形態の変形例の構成を概略的に示す断面図である。
【0055】
図3において、この基板処理装置は、図1の基板処理装置における処理ガス供給系及びガス流路を2系統とし、チャンバ11内に2系統のガスを供給するようにしたものである。図3において、図1と同様の構成については同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0056】
この基板処理装置50が、図1と異なるところは、第2のベローズ32の外周部に所定の間隔を隔てて、第3のベローズ33を設けて第2のベローズ32と第3のベローズ33との間隙を第2のガス流路45とした点である。また、バッファ室29を内側バッファ室29aと外側バッファ室29bに区画し、第1のガス流路35をガス孔38を介して内側バッファ室29aと連通させ、第2のガス流路45をガス孔39を介して外側バッファ室29bと連通させたものである。
【0057】
このような構成の基板処理装置50において、処理ガス供給管36及び46を経て第1のガス流路35及び第2のガス流路45へそれぞれ異なる2系統の処理ガスが供給される。処理ガス供給管36及び46の途中には、例えば処理ガス中に含まれる微小且つ微量のパーティクルを除去するフィルタが設けられる。第1系統の処理ガスは、フィルタによってパーティクルが除去された後、ガス流路35に流入し、その後、ガス孔38、バッファ室29a及びガス孔23を経てチャンバ11内部へ導入される。また第2系統の処理ガスは、フィルタによってパーティクルが除去された後、ガス流路45に流入し、その後ガス孔39、バッファ室29b及び別のガス孔23を経てチャンバ11内部へ導入される。チャンバ11内に導入された2系統の処理ガスは、チャンバ11内部へ印加されたプラズマ生成電力によって励起されてプラズマとなる。
【0058】
プラズマ中の陽イオンは、サセプタ12に印加されるバイアス電力に起因する負のバイアス電位によってサセプタ12に載置されたウエハWに向けて引きこまれ、該ウエハWにドライエッチング処理を施す。
【0059】
本実施の形態においても、上記実施の形態と同様、ガス流路の設置場所を確保し易くなり、しかもシャワーヘッド22の上下方向の移動に追従してその変位を吸収し、処理ガスを安定、且つ確実にシャワーヘッドに導入することができるので、信頼性が向上する。
【0060】
本実施の形態において、ガス流路は2系統に限定されるものではなく、同心状に配置したベローズの数を順次増加させることによって、3系統又はそれ以上に対応することもできる。
【0061】
なお、上述した本実施の形態では、ドライエッチング処理が施される基板を半導体デバイス用のウエハとして説明したが、ドライエッチング処理が施される基板はこれに限られず、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)を含むFPD(Flat Panel Display)等のガラス基板であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
W ウエハ
10 基板処理装置
11 チャンバ
12 サセプタ
22 シャワーヘッド
31 第1のベローズ
32 第2のベローズ
33 第3のベローズ
35 (第1の)ガス流路
45 第2のガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を減圧可能な処理室と、該処理室内に配置され、被処理基板を載置する載置電極と、該載置電極と対向するように配置された対向電極とを備え、ガス流路を介して前記載置電極及び前記対向電極の間に供給される処理ガスを励起してプラズマを生成し、該プラズマによって前記被処理基板にプラズマ処理を施す基板処理装置のガス流路構造体であって、
前記載置電極及び対向電極の一方を他方に対して移動可能に支持する支持部材と、
該支持部材が前記処理室の壁面を貫通する貫通部において前記壁面に対する前記電極の変位を吸収し、前記支持部材周辺の雰囲気から前記処理室内をシールするように前記支持部材の外周部に、該支持部材と同心状に配置された環状の第1の変位吸収圧力隔壁と、
該第1の変位吸収圧力隔壁の外周部に、該第1の変位吸収圧力隔壁と同心状に配置された環状の第2の変位吸収圧力隔壁とを有し、
前記第1の変位吸収圧力隔壁と前記第2の変位吸収圧力隔壁とで環状の第1のガス流路を形成したことを特徴とするガス流路構造体。
【請求項2】
前記第2の変位吸収圧力隔壁の外周部に、該第2の変位吸収圧力隔壁と同心状に環状の第3又はそれ以上の変位吸収圧力隔壁を設け、前記第2の変位吸収圧力隔壁の外側に、それぞれ隣接する変位吸収圧力隔壁相互に挟持された環状の第2又はそれ以上のガス流路を形成したことを特徴とする請求項1記載のガス流路構造体。
【請求項3】
前記第1の変位吸収圧力隔壁の外周部に対向するように、前記第1の変位吸収圧力隔壁の長さ方向に直交する方向への屈曲を制限するガイド部材を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のガス流路構造体。
【請求項4】
前記変位吸収圧力隔壁の断面形状は、円形、楕円形又は矩形であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガス流路構造体。
【請求項5】
前記変位吸収圧力隔壁は、ベローズであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガス流路構造体。
【請求項6】
内部を減圧可能な処理室と、該処理室内に配置され、被処理基板を載置する載置電極と、該載置電極と対向配置された対向電極とを備え、前記載置電極及び前記対向電極の間に供給される処理ガスを励起してプラズマを生成し、該プラズマによって前記被処理基板にプラズマ処理を施す基板処理装置であって、
前記載置電極及び前記対向電極の間に処理ガスを供給するガス流路構造体を有し、該ガス流路構造体は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガス流路構造体であることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−238961(P2010−238961A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86036(P2009−86036)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】