説明

ガス置換装置を備えた基板搬送装置、基板搬送システム、置換方法

【課題】FOUP内のガス置換と、ウエハ上の汚染物質の除去を短時間で行うことができ、既存装置への適用も可能な基板搬送装置およびその基板搬送装置を搭載した搬送システム、さらにその置換方法を提供する。
【解決手段】基板を載置するフォーク11と、前記フォーク11を支持して移動させる動作部12と、前記動作部12を支持する胴体部19と、を備えた基板搬送装置10において、 前記基板搬送装置10が、基板を収容する容器内の気体を所定のガスに置換するためのガス噴射用ノズル13を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、フラットパネルディスプレイのパネル用などの製造装置に設けられる基板搬送装置に関し、特に、製造装置で使用する各種基板を収納する容器(半導体ウエハの場合であればFOUP(Front Opening Unified Pod))内を清浄にする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程ではウエハをクリーンに保つため、工場全体をクリーンルーム化することでウエハの清浄度を確保していた。しかし、ウエハの大口径化に伴って、各ウエハ処理装置や設備が大型化することで、工場のフットプリントが大きくなり、その結果、清浄状態を保つ空間が大きくなり、工場全体の清浄状態を維持するためのコストアップが問題視されてきた。そこで、半導体業界では300mm用の基板(あるいはウエハと呼ぶ)の搬送形態を大幅に見直し、各ウエハ処理装置、搬送形態およびウエハ保管容器等をミニエンバイロメント(局所的な清浄空間)化することで対応してきた。半導体処理工程で使用される300mmウエハの保管容器、いわゆるFOUP(Front Opening Unified Pod)や、輸送容器として使用されるFOSB(Front Opening Sipping Box)についても、局所クリーンの考えに基づき、密閉性を持たせ、かつ、開閉扉を有した保管容器とすることで、ウエハの清浄度を保つ構成とした。しかし、半導体製造プロセスによっては、前述したFOUPやFOSBなどの保管容器にウエハを保存するだけでは製造プロセスに支障をきたす場合があり、より高清浄状態を保つことができるウエハ保管方法が必要な場合が生じてきた。そこで、ウエハの高清浄状態を保つ方法として、ウエハ容器内の雰囲気をN2やドライエアーに置換する(パージする)方法などが提案されてきた。
【0003】
ここで、半導体デバイスの製造工程における、ミニエンバイロメント方式の構成について図を用いて簡単に説明する。図4はウエハ処理装置70の側面図である。ウエハ処理装置70は、ウエハ搬送室(ウエハ搬送システム)50、ウエハ処理室40、ウエハ(基板)搬送装置10、ロードポート20、およびファン30から構成されている。ファン30は一般的に上方に設置され、ウエハ搬送室50を清浄に保つため、常時清浄な気体を下側のウエハ搬送室内へ送り込み、ウエハ搬送室を経た気体は図示しない下方の開口部より排出される。
【0004】
次にウエハ処理装置70内でのウエハ61の流れについて説明する。ウエハ61が収納されたFOUP60は、図示しないオペレーター、あるいは、図示しないAGVやRGVなどに代表される自動搬送装置を介して、ロードポート20上に設置される。ロードポート20はFOUP60が正常に載置されたことを検知した後フタを開ける動作を開始し、FOUP60に設けられたフタを開ける。FOUP60はSEMI規格等ですでに公知のように、側面(前面)に開閉自在なフタを有する構造で、フタを開放すれば、側面からウエハ61を出し入れできる開口部が露出する。FOUP60のフタを開ける際、また、フタを開けた動作完了時は、FOUP60の開口面とウエハ搬送室50の開口面は接しており、常にFOUP60内の空間は清浄な状態が保たれている。ロードポート20によりFOUP60のフタを開ける動作が完了すると、ウエハ搬送室50内に設置された基板搬送装置10が、FOUP60内のウエハ61を取り出し、ウエハ処理室40へ搬送する。
【0005】
ここで、ウエハ処理のプロセスで汚染物質を使用している場合があり、汚染物質がウエハ61に付着したままFOUP60内に搬送されることがある。ウエハに汚染物質が付着した場合、次のウエハ処理プロセスによっては支障をきたすので、これらの汚染物質を取り除く必要がある。汚染物質を除去する方法として、ロードポート20あるいはウエハ搬送室50内にあらかじめ設けられた給気用および排出用のパージポートを利用し、FOUP60内の気体を置換する方法がある。しかし、この方式ではFOUP60内に微小な間隔で収納されたウエハ間までガスが置換されにくく、完全に置換するためには大量のガスと時間が必要であった。また、時間を要しても完全に置換できない場所が存在する可能性もあった。
【0006】
汚染物質を除去する方法、つまりFOUP60内の気体を所定のガスに置換する方法として特許文献1乃至3などが開示されている。
特許文献1では、ウエハ搬送室の開口面、つまり、FOUPの開口面と接続される場所の上方に所定のガスを噴射できるノズルを装備した構成としている。FOUPのフタが開口した状態で、任意のタイミングでノズルから所定のガスを噴射することでFOUP内の気体を置換する方法を開示している。
特許文献2では、FOUP内の雰囲気を置換するガスを流入させるノズルを、FOUPのフタを開閉するためのロードポートドアの上部に具備している。ロードポートはFOUPのフタを開けた後、フタを把持したロードポートドアをドア移動手段によって下方に移動させることでフタの開放を完了する。ロードポートドアを下方に移動させる際に、ロードポートドア上に具備したノズルからガスを噴射することで、FOUP内の雰囲気をパージするロードポートを開示している。
特許文献3では、FOUPを載置するための載置台と、FOUPのフタを開閉するためのフタ開閉機構と、フタ開閉機構とは別の位置にFOUP内の雰囲気を置換するガスを流入させるノズルとを備え、FOUP内の雰囲気を所定のガスへ置換するロードポートを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−45933号公報
【特許文献2】特開2005−033118号公報
【特許文献3】WO2005/124853
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方式では、FOUP内部空間に対して、上方向からの噴射となるためFOUP内の気体を置換するために必要なガスの量が多くなり、気体を置換するための時間が長くなることが懸念される。さらに、FOUPの開口面に対してノズルが上方位置に固定されているので、噴射時間を長くしてもFOUP内に10mmの間隔で並べられたウエハ上の汚染物質を完全に除去することがしにくいと思われる。また、これらの構成部品はウエハ搬送室の内部に取り付けているため、ウエハ搬送室内面からのロードポートの作業領域はSEMI規格によって100mm以内に定められているものの、この領域内に収まらない恐れがある。すると、特許文献1の構成を既存のウエハ搬送室へ適用することができなくなる可能性が高く、専用のウエハ搬送室を新たに製作する必要が生じる。また、搬送室が大きくなりフットプリントが大きくなる問題がある。
特許文献2の方式では、パージするための装置をロードポートのドア上部に設置しているため、SEMI規格で定められた上記作業領域100mm内に収まらないことが考えられる。さらに、FOUPのフタを開けた状態で噴射するため、噴射するノズルとFOUP内部空間までの距離が大きくなり、ガスの置換効率が悪くなる。また、ガスを噴射するノズルの移動速度はロードポートのドア移動速度に依存してしまい、最適な速度での移動ができないという問題がある。
特許文献3の方式では(特許文献1、2もそうであるが)、一般的にロードポートはウエハ処理装置に対して複数台が搭載されるにもかかわらず、ロードポートの台数分パージする装置を搭載する必要がある。つまり、コスト高となり、装置重量も大きくなる可能性がある。また、パージする装置は複数の駆動機構を具備しているため、制御方法が複雑となり、ガス配管等も含めた状態で既存のウエハ搬送室に適用するには困難であることが予想される。そもそも、FOUPの置換作業は、FOUPのフタを閉めるときに必要なことが多い作業であるにも関わらず、パージするための装置をロードポートごとに設けることは効率的ではない。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、FOUP内の気体の置換と、ウエハ上の汚染物質の除去を短時間で行うことができ、既存のウエハ搬送室への適用も可能な基板搬送装置または搬送システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
本発明は、基板を載置するフォークと、前記フォークを支持して移動させる動作部と、前記動作部を支持する胴体部と、を備えた基板搬送装置において、前記基板搬送装置が、前記基板を収容する容器内の気体を所定のガスに置換するためのガス噴射用ノズルを備えたことを特徴とする基板搬送装置とするものである。
また、前記容器内の気体を吸引するガス吸引用ノズルをさらに備えるとよい。
また、前記ガス噴射用ノズルが、前記フォークに設けられるようにするとよい。
また、前記容器内の気体を吸引するガス吸引用ノズルをさらに備え、前記ガス噴射用ノズルと前記ガス吸引用ノズルとが、前記フォークに設けられるようにするとよい。
また、前記フォークの先端が二股に分かれるように形成され、前記ガス噴射ノズルが前記二股のうち一方に設けられ、前記ガス吸引用ノズルが前記二股のうち他方に設けられるようにするとよい。
また、前記ガス噴射用ノズルが、前記動作部に設けられるようにしてもよい。
また、前記容器内の気体を吸引するガス吸引用ノズルをさらに備え、前記ガス噴射用ノズルと前記ガス吸引用ノズルとが、前記動作部に設けられるようにしてもよい。
また、前記基板を収納する容器の開口部を覆うことが可能な遮蔽プレートと、前記遮蔽プレートを駆動する遮蔽プレート駆動手段と、をさらに備え、前記容器の開口部を前記遮蔽プレートで覆いながら、前記ガス噴出用ノズルによって前記置換をおこなうようにしてもよい。
また、前記基板を収納する容器の開口部を覆うことが可能な遮蔽プレートと、前記遮蔽プレートを駆動する遮蔽プレート駆動手段と、をさらに備え、前記遮蔽プレートに、前記ガス噴射用ノズルが設けられるようにしてもよい。
また、前記基板を収納する容器の開口部を覆うことが可能な遮蔽プレートと、前記遮蔽プレートを駆動する遮蔽プレート駆動手段と、前記容器内の気体を吸引するガス吸引用ノズルと、をさらに備え、前記ガス噴射用ノズルと前記ガス吸引用ノズルとが、前記遮蔽プレートに設けられるようにしてもよい。
また、前記遮蔽プレートに、少なくとも前記容器内の前記所定のガスの濃度を検出できる濃度センサを備え、前記濃度センサからの情報に応じて、前記ガス噴射用ノズルのガス噴射の噴射時間が決定されるようにしてもよい。
また、前記容器内の前記基板の位置を検出可能なマッピング機構をさらに備え、前記マッピング機構が検出した検出結果に応じて、前記ガス噴射ノズルのガス噴射のタイミングが決定されるようにしてもよい。
また、前記胴体部を走行させる走行機構をさらに備え、前記ガス噴射用ノズルが、前記胴体部とともに前記走行機構によって走行するようにしてもよい。
また、前記胴体部を走行させる走行機構をさらに備え、前記ガス噴射用ノズルが、前記胴体部とともに前記走行機構によって走行するようにしてもよい。
また、区画内を清浄な雰囲気に保つ筐体と、前記筐体の側面に設置され、基板を収容する容器を搭載して前記容器のフタを開放させ、前記区画内に向かって前記容器の開口部を露出させるロードポートと、前記容器内の前記基板を搬送する基板搬送装置と、を備えた基板搬送システムにおいて、前記基板搬送装置が、前記基板を収容する容器内の気体を所定のガスに置換するためのガス噴射用ノズルを備えたことを特徴とする基板搬送システムとしてもよい。
また、基板を収容する容器を搭載して前記容器のフタを開閉させるロードポートと、 前記容器内の前記基板を搬送可能であるとともに、前記基板を収容する容器内の気体を所定のガスに置換するためのガス噴射用ノズルを備えた基板搬送装置と、を備えた基板搬送システムにおける前記容器内の気体を前記所定のガスに置換する置換方法であって、前記ロードポートによって前記容器の前記フタを開放させ、前記基板搬送装置が前記ガス噴射用ノズルを前記容器の開放面の前まで動作させ、前記ガス噴射用ノズルから前記所定のガスを前記容器内に向かって噴射させ、前記ロードポートによって前記容器の前記フタを閉鎖させる、ガス置換方法としてもよい。
また、前記ガス噴射用ノズルから前記所定のガスを前記容器内に向かって噴射させるとき、前記ロードポートによって前記容器の前記フタを閉鎖させながら前記噴射をさせるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガス噴射ノズルを基板搬送装置に搭載しているため、FOUP内のウエハ位置の近傍までノズルを移動させることができ、FOUP内の気体を効率良く置換することが可能となる。また、ウエハの収納状態や処理状態と照合し、FOUP内のスロットに応じてノズルの移動速度を任意に変更することができ、ウエハ上の汚染物質を確実に除去することが可能となる。また、FOUP内の気体を置換する際に、FOUP内部との気密性が高い遮蔽プレートを併用することで、短時間でのガス置換が可能となる。これらの発明は、ウエハ搬送装置内の基板搬送装置だけに搭載すれば良いため、一般的なウエハ処理装置の場合でいうと1台分の搭載のみでよいことになる。その結果、既存装置に対しても簡便で安価にシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】基板搬送装置のフォーク上にガス置換装置を搭載した本発明の基板搬送装置を含むウエハ搬送室の一部を示す側面図である。
【図2】基板搬送装置のフォーク上にガス置換装置を搭載し、かつ、遮蔽プレートを搭載した本発明の基板搬送装置を含むウエハ搬送室の一部を示す側面図である。
【図3】ガス置換装置を内蔵した遮蔽プレートを基板搬送装置に搭載し、その基板搬送装置を含むウエハ搬送室の一部を示す側面図である。
【図4】一般的なウエハ処理装置を含むウエハ搬送室の側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1(a)は、本実施形態の基板搬送装置を含むウエハ搬送室の側面図の一部である。図1(b)は、図1(a)中の矢印Aで示す基板搬送装置のフォーク11の上面図である。図1(a)において、50はウエハ搬送室の空間を示す。上述したように、ウエハ搬送室50は外部雰囲気に対して筐体を形成し、閉ざされた清浄な空間となっている。10は基板搬送装置である。基板搬送装置10はウエハ搬送室50内に設置されている。60はFOUPであり、FOUP60は図示しない開閉可能なフタを有している。FOUP60の内部にはウエハ61を水平多段に収納でき、FOUP60内に最大で25枚保管することが可能である。20はロードポートであり、FOUP60のフタを開閉するための装置である。21はロードポートドアであり、FOUP60のフタを開閉するために、フタを保持して図1(a)において上下および若干量前後に動作する。11は基板搬送装置の先端に取り付けられたフォークである。フォーク11はウエハ61を吸着あるいは把持などして保持することができる。基板搬送装置10は、フォーク11でウエハ61を保持した状態で任意の位置にウエハを搬送する。12はフォークを自由に移動させることができる動作部である。動作部12は複数のアームが連結されて互いに回転することでフォーク11を所望の位置に位置させるものや、フォーク11を直線状にスライドさせるものなど、形態を問わないが、少なくともフォーク11をFOUP60内の全段のウエハ61にアクセスさせることができればよい。また、動作部12は、胴体部19に対して動作し、図示しない昇降機構や旋回機構によって、動作部12が胴体部19に対して昇降したり旋回したりする。13はフォーク11の先端に取り付けられたガス噴射および吸引用のノズルである。14はノズル13に接続された配管である。15はノズルから噴射されるガスを示す。ノズル13はフォーク11の先端に取り付けられ、13aおよび13bの2つがある。13aはガス噴射用ノズルであり、13bはガス吸引用ノズルである。本実施形態の場合、フォーク11は、図1(b)のように先端が二股に分かれるように形成されていて、その基端が動作部12に固定されている。二股のどちらか一方にガス噴射用ノズル13aが設けられ、他方にガス吸引用ノズル13bが設けられている。14aは噴射用の配管であり、14bは吸引用の配管であって、動作部12側へ配管されている。15aはガスを噴射している状態を示しており、15bはガスを吸引している状態を示している。配管14aは図示しないガス供給源に接続されていて、配管14aを経由して、噴射ノズル13aでガスが均一化され、ウエハ61に対して略平行なガス15aとして噴射される。一方、吸引用配管14bは図示しないガス排気装置などに接続されていて、配管14bを経由して、FOUP60内のガスは吸引用ノズル13bより吸引される。
【0014】
次に、本発明の基板搬送装置10を含む、ウエハ搬送室50内でのウエハ61の流れを説明する。まず、FOUP60は、図示しないオペレーター、あるいは、図示しないAGVやRGVなどに代表される自動搬送装置を介して、ロードポート20上に載置される。ロードポート20はFOUP60が正常に載置されたことを検知した後、FOUP60のフタを開ける動作を開始し、ロードポートドア21がFOUP60のフタを保持してこれを開ける。ロードポート20は、フタを開ける際に図示しないウエハマッピング機構によってウエハマッピング動作を行うことがある。ウエハマッピング動作とは、FOUP60内のウエハ収納状態を、図示しないウエハマッピング機構のセンサによりFOUP60内の各段(各スロット)におけるウエハの有無や収容状態を検出することである。フタを開けた時点でロードポート20の動作は完了である。また、ロードポート20がウエハマッピング機構を備えない場合は、基板搬送装置10側にこれが備えられることがあり、ウエハマッピング動作を基板搬送装置10が実施することもある。ウエハマッピング動作が完了すると、この情報をもとに、基板搬送装置10がFOUP60内からウエハ61を取り出す。ウエハ61は図示しない保持手段によりフォーク11に保持される。基板搬送装置10は、ウエハ61を処理するための図示しないウエハ処理室40に搬送する。ウエハ処理室40においてウエハ処理が完了すると、基板搬送装置10が再びウエハ処理室40からウエハ61を取り出し、FOUP60内の所定位置に収納する。これらの動作を繰り返し行い、FOUP60内のすべてのウエハ61について処理が施される。処理が終了した時点でのすべてのウエハ61はFOUP60に収納された状態となる。
次に、基板搬送装置10のフォーク11上にウエハ61が無い状態で、フォーク11の先端に取り付けられたノズル13が、動作部12の動作によって、FOUP60内の最下段に収納されたウエハ61の近傍に移動する。ノズル13の移動が完了したら、図示しないガス供給装置よりガスが配管14aを経由して送られ、ガス噴射用ノズル13aから所望のガスをウエハ61に対して略平行に噴射する。同時にノズル13bでは、FOUP60内のガスの吸引を行う。ノズル13aから噴射、ノズル13bから吸引する状態を保つことでFOUP60内の気体が循環する。基板搬送装置10は、ノズル13からガスを噴射および吸引している状態を保ちながら、FOUP60内の最下段のウエハから最上段のウエハまで、上昇動作を続ける。あるいは、ロードポートドア21がFOUPのフタを閉塞させるときの上昇動作に同期して、FOUP60内の最下段のウエハから最上段のウエハまで、つまり図1(a)における上方向に移動し、全段のウエハ全面に所望のガスが行き渡る動作を行う。それと同時に、FOUP60内のガスもすべて所望のガスに置換される。
【0015】
ここで、例えば図1(c)のように、ノズル13を動作部12の一部に取り付けても良い。図1(c)の例では、複数のアームを備え、いわゆる水平多関節型のアームの形態となっている動作部12において、アーム部の先端にノズル13を備えている。動作部12がいずれの形態であるにしても、ノズル13が基板搬送基板搬送装置10に備えられていて、ノズル13が上述のようにFOUP60の開口面からウエハに接近できれば、上記の置換動作を行うことができる。
また、ウエハを保持するためのフォーク11とは別に、第2のフォーク11aを動作部12に設けてこれにノズル13を取り付けても良い。例えば図1(d)のように、フォーク11の動作部12に対して旋回する軸と同軸に第2のフォーク11aを設け、フォーク11と11aとが互いに同軸上で自由に旋回できるように構成する。置換動作をおこなうときは、第2のフォーク11aのみをFOUP開口面に向けることができる。第2のフォーク11aはこの場合、ガス置換を目的とした専用のフォークとすることができる。あるいは、上述したマッピング動作を行うためのマッピングセンサとともにノズル13を設け、ウエハ保持用であるフォーク11と機能的に分けても良い。第2のフォークの構成であれば、これにウエハを載置させる必要が無いので、ノズル13の寸法を大きくすることができ、かつ、取り付ける位置を任意にできるという利点がある。
以上のように、動作部12の一部や第2のフォーク11aに、つまりフォーク11以外の箇所にノズル13を設ければ、フォーク11がFOUP60以外の位置に搬送もしくは待機している位置にあっても、ノズル13をFOUP60内に向けることが可能になるので、より効率的に本目的であるガス置換を行うことが可能となる。
また、基板搬送装置60にマッピング機構を搭載していた場合、この検出結果に基づいて、ガス噴射のタイミングを決定するとよい。さらに、FOUP内のガス濃度を検出できる濃度センサを基板搬送基板搬送装置に備えて、この信号を基板搬送装置にフィードバックしてガス濃度の検出結果に応じてガス噴射の噴射時間を決定しても良い。さらに、ウエハ搬送室50の筐体内に酸素濃度計を設置して筐体内の酸素濃度に応じて、あるいは、FOUP60内の空間とウエハ搬送室50との差圧を計測できる圧力計を設置し、その差圧に応じて、ガス噴射の制御を行なうとより効率的にかつ安全にFOUP内の気体の置換作業ができる。
また、図示しないガス供給装置にイオンガスを封入し、任意のタイミングでノズル13からウエハに対してイオンガスを噴射しウエハ61を除電する目的として使用しても良い。
【0016】
以上のように、本実施形態における基板搬送装置は、基板を把持するフォークと、基板を保持した状態でフォークを所定方向に移動可能な動作部と、前記フォークあるいは動作部に取り付けられたガス噴射用ノズルと、同じく前記フォークあるいは動作部に取り付けられたガス吸引用ノズルと、所定のガスが充填可能な配管等と、所定ガスの濃度やFOUP内の圧力を検出するセンサ等と、を備えているので、FOUP内の気体を確実に短時間で置換することができ、かつ、ウエハ上の汚染物質を除去することができる。さらに、帯電したウエハを除電することが可能となる。また、本実施形態の発明は、既存の搬送装置に適用することができ、安価な提供が可能である。
【実施例2】
【0017】
次に、本発明の第2の実施形態となる基板搬送装置について説明する。本実施例は図2(a)、(b)、(c)および(d)に示す。図2(a)において、16aはロードポート20がFOUP60のフタを開けた時のFOUP開口部を塞ぐための遮蔽プレートである。遮蔽プレート16aは、動作部12とは独立して設けてあり、本実施形態の場合、基板搬送装置10の胴体部に取り付けられている。遮蔽プレート16aは同じく胴体部に設けられる遮蔽プレート駆動手段によって図2(a)における上下方向に移動するとともに、若干量左右にも移動する。遮蔽プレート16aには、基板搬送装置10のノズル13、あるいはノズル13を設けたフォーク11の一部分が進入できる最低限の開口部が設けてある。なお、17は遮蔽プレート16aを支持した状態で所定方向に移動可能な支持部材であり、18が支持部材17を所定方向に移動させることが可能な遮蔽プレート移動手段である。それ以外の構成については、第1の実施例と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0018】
次に、本実施形態における一連の動作について説明する。FOUP60内に収納されているすべてのウエハ61を基板搬送装置10が取り出し、図1に示すウエハ処理室40でウエハ61の処理を施し、再びFOUP60内の所定位置にウエハ61を収納する工程までは、第1の実施例と同一なので省略する。処理されたウエハ61がFOUP60内にすべて収納されたことを確認した後、支持部材17と、その支持部材17に固定された遮蔽プレート16aが移動手段18によって図2(b)、図2(c)に示す位置に順次移動する。遮蔽プレート16aは、図示しないが、FOUP60の開口部を覆う構成となっており、開口部とのその接合面は、遮蔽プレート16aの枠に設けられたシール材等により図2(c)の状態において、FOUP60の内部の空間と遮蔽プレート16aとの空間の密閉度を上げている。その後、フォーク11あるいは動作部12に具備されたガス置換装置(ノズル13等)により、FOUP60内の気体を所定ガスに置換する。基板搬送装置10によるガス置換方法は実施例1の方法と同一詳細は省略する。FOUP60内が所定ガスに置換されると、ロードポート20がFOUP60のフタを閉じる動作を行う。ロードポート20の動作が完了すると、遮蔽プレート16aおよび支持部材17は、移動手段18により図2aで示す位置に移動する。
【0019】
以上のように、本実施形態によれば、フォーク11や動作部12とは独立した遮蔽プレート16aによってFOUP60との開口部を塞ぐことが可能となり、これによってフォーク11や動作部12に搭載されたガス置換装置による所定ガスへの置換効率が良くなり、使用するガス量を減らすことができる。また、これによりコストダウンが図れる。さらにガス置換に要する時間も短くなるのでウェハ搬送装置としてのスループット向上の効果も期待できる。
【実施例3】
【0020】
次に、本発明の第3の実施形態となる基板搬送装置について説明する。図3に示すように、13cは遮蔽プレート16bの内部に取り付けられた噴射用ノズルである。図示しないが、第1の実施例と同様に、吸引用のノズルも遮蔽プレート16bに実装している。14cは噴射用の配管であり、14dは吸引用の配管である。また、遮蔽プレート16bには、図示しないが、第2の実施形態の遮蔽プレート16aと同様に、FOUP60の開口部を覆う構成となっており、その接合面にはシール材が取り付いている。しかし、遮蔽プレートaと違い、FOUP60の開口部との接合面以外には実質的な開口部が無い構成となっている。それ以外の構成については、第1の実施例および第2の実施例と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0021】
次に、本実施形態における一連の動作について説明する。ウエハ61の処理工程は第1あるいは第2の実施形態と同一である。処理されたウエハ61がFOUP60内にすべて収納されたことを確認した後、支持部材17と、その支持部材17に固定された遮蔽プレート16bが遮蔽プレート駆動手段18によって図3の位置に移動する。その後、図示しないガス供給源から、噴射用配管14cを経由して、遮蔽プレート16b内に設置されている噴射用ノズル13cより所定のガスが噴射される。同時に、図示しない吸引用ノズルによってFOUP60内の空間を吸引する。吸引されたガスは排気用配管14bを経由して、図示しないガス排気装置に送られる。FOUP60内が所定ガスに置換されると、ロードポート20がFOUP60のフタを閉じる動作を行う。ロードポート20の動作が完了すると、遮蔽プレート16bおよび支持部材17は、移動手段18により図2aで示す位置に移動する。
【0022】
以上のように、本実施例によれば、遮蔽プレート16bの密閉性が高く、より効率的にガス置換が行うことができるため、使用するガス量が減らすことができる。また、それによるコストダウンが図れる。さらに、基板搬送装置10のフォーク11や動作部12上にガス置換装置を設置していないので、フォーク11や動作部12によるウエハ搬送動作とは独立してガス置換装置を作動させることができ、更なるスループット向上の効果も期待できる。
【0023】
なお、第2あるいは第3の実施形態における遮蔽プレート16、支持部材17、遮蔽プレート駆動手段18は、基板搬送装置10に設けられた走行機構によって走行できるようにしてもよい。ウェハ搬送室50の筐体の一面には、通常、複数のロードポート20が並んで取り付けられ、複数のFOUPからウエハを出し入れすることが多い。それら複数のロードポート20に載置された各FOUPにアクセスするため、基板搬送装置10には、胴体部19がロードポート20の並びに沿って走行できるようにするための走行機構が備えられることがある。従って、第2あるいは第3の実施形態のガス置換装置を、基板搬送装置10の胴体部19、動作部12、フォーク11とともに走行できるように構成すると、複数のFOUPに対して遮蔽プレート16を移動させることができる。
またこのように走行機構を備える場合、基板搬送装置10の胴体部19、動作部12、フォーク11とは独立して遮蔽プレート16を走行させるようにすれば、フォーク11や動作部12によるウエハ搬送動作とは離れた位置で独立してガス置換装置を作動させることができ、更なるスループット向上の効果も期待できる。
なお、以上で説明した各実施形態の組み合わせによっても、本発明による効果が得られることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0024】
10 基板搬送装置
11 フォーク
12 動作部
13 ノズル
13a フォーク上に搭載したガス噴射用ノズル
13b フォーク上に搭載したガス吸引用ノズル
13c 遮蔽パネル上に搭載したガス噴射用ノズル
14 配管
14a フォーク上に搭載したガス噴射用配管
14b フォーク上に搭載したガス吸引用配管
14c 遮蔽パネル上に搭載したガス噴射用配管
14d 遮蔽パネル上に搭載したガス吸引用配管
15a ガス噴射の状態
15b ガス吸引の状態
16a 遮蔽プレート
16b ガス置換装置を搭載した遮蔽プレート
17 遮蔽プレートの支持部材
18 遮蔽プレート駆動手段
19 胴体部
20 ロードポート
21 ロードポートドア
30 ファン
40 ウエハ処理室
50 ウエハ搬送室
60 FOUP
61 ウエハ
70 ウエハ処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するフォークと、前記フォークを支持して移動させる動作部と、前記動作部を支持する胴体部と、を備えた基板搬送装置において、
前記基板搬送装置が、前記基板を収容する容器内の気体を所定のガスに置換するためのガス噴射用ノズルを備えたことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記容器内の気体を吸引するガス吸引用ノズルをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記ガス噴射用ノズルが、前記フォークに設けられたことを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記容器内の気体を吸引するガス吸引用ノズルをさらに備え、
前記ガス噴射用ノズルと前記ガス吸引用ノズルとが、前記フォークに設けられたことを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記フォークの先端が二股に分かれるように形成され、前記ガス噴射ノズルが前記二股のうち一方に設けられ、前記ガス吸引用ノズルが前記二股のうち他方に設けられたことを特徴とする請求項4記載の基板搬送装置。
【請求項6】
前記ガス噴射用ノズルが、前記動作部に設けられたことを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項7】
前記容器内の気体を吸引するガス吸引用ノズルをさらに備え、
前記ガス噴射用ノズルと前記ガス吸引用ノズルとが、前記動作部に設けられたことを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項8】
前記基板を収納する容器の開口部を覆うことが可能な遮蔽プレートと、前記遮蔽プレートを駆動する遮蔽プレート駆動手段と、をさらに備え、
前記容器の開口部を前記遮蔽プレートで覆いながら、前記ガス噴出用ノズルによって前記置換をおこなうことを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項9】
前記基板を収納する容器の開口部を覆うことが可能な遮蔽プレートと、前記遮蔽プレートを駆動する遮蔽プレート駆動手段と、をさらに備え、
前記遮蔽プレートに、前記ガス噴射用ノズルが設けられたことを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項10】
前記基板を収納する容器の開口部を覆うことが可能な遮蔽プレートと、
前記遮蔽プレートを駆動する遮蔽プレート駆動手段と、
前記容器内の気体を吸引するガス吸引用ノズルと、をさらに備え、
前記ガス噴射用ノズルと前記ガス吸引用ノズルとが、前記遮蔽プレートに設けられたことを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項11】
前記遮蔽プレートに、少なくとも前記容器内の前記所定のガスの濃度を検出できる濃度センサを備え、前記濃度センサからの情報に応じて、前記ガス噴射用ノズルのガス噴射の噴射時間が決定されることを特徴とする請求項9または10記載の基板搬送装置。
【請求項12】
前記容器内の前記基板の位置を検出可能なマッピング機構をさらに備え、
前記マッピング機構が検出した検出結果に応じて、前記ガス噴射ノズルのガス噴射のタイミングが決定されることを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項13】
前記胴体部を走行させる走行機構をさらに備え、
前記ガス噴射用ノズルが、前記胴体部とともに前記走行機構によって走行することを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項14】
前記所定のガスが、前記基板の除電を目的としたイオンガスであることを特徴とする請求項1記載の基板搬送装置。
【請求項15】
区画内を清浄な雰囲気に保つ筐体と、
前記筐体の側面に設置され、基板を収容する容器を搭載して前記容器のフタを開放させ、前記区画内に向かって前記容器の開口部を露出させるロードポートと、
前記容器内の前記基板を搬送する基板搬送装置と、を備えた基板搬送システムにおいて、
前記基板搬送装置が、前記基板を収容する容器内の気体を所定のガスに置換するためのガス噴射用ノズルを備えたことを特徴とする基板搬送システム。
【請求項16】
基板を収容する容器を搭載して前記容器のフタを開閉させるロードポートと、
前記容器内の前記基板を搬送可能であるとともに、前記基板を収容する容器内の気体を所定のガスに置換するためのガス噴射用ノズルを備えた基板搬送装置と、を備えた基板搬送システムにおける前記容器内の気体を前記所定のガスに置換する置換方法であって、
前記ロードポートによって前記容器の前記フタを開放させ、
前記基板搬送装置が前記ガス噴射用ノズルを前記容器の開放面の前まで動作させ、
前記ガス噴射用ノズルから前記所定のガスを前記容器内に向かって噴射させ、
前記ロードポートによって前記容器の前記フタを閉鎖させる、
ことを特徴とする基板搬送システムにおけるガス置換方法。
【請求項17】
前記ガス噴射用ノズルから前記所定のガスを前記容器内に向かって噴射させるとき、前記ロードポートによって前記容器の前記フタを閉鎖させながら前記噴射をさせること、を特徴とする請求項16記載の基板搬送システムにおけるガス置換方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−159834(P2011−159834A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20748(P2010−20748)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】