ガラスのスクライブ方法
【課題】ガラス基板に対し水平方向に発生する微小クラックの発生を未然に防ぎ、垂直方向の良好な溝形成だけを行うことを可能にする。
【解決手段】パルス幅が100ps以下の短パルスレーザ光を掃引照射することにより、ガラス表面に切断用の溝を形成する。塑性変形に伴う残留応力、熱歪みがそれぞれ原理的に発生しないため、微小クラックの発生を抑制または回避でき、垂直方向の溝のみを良好に形成する。この結果、安定なガラスの切断を実現し、また、切断したガラス基板に対して、安定的かつ十分な曲げ強度を提供する。
【解決手段】パルス幅が100ps以下の短パルスレーザ光を掃引照射することにより、ガラス表面に切断用の溝を形成する。塑性変形に伴う残留応力、熱歪みがそれぞれ原理的に発生しないため、微小クラックの発生を抑制または回避でき、垂直方向の溝のみを良好に形成する。この結果、安定なガラスの切断を実現し、また、切断したガラス基板に対して、安定的かつ十分な曲げ強度を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス切断工程の切断前に、ガラス表面に切断用の溝を形成するガラスのスクライブ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルやプラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)といった表示装置の急速な需要拡大が続いており、これに伴いガラスの生産需要の高まりや加工分野の高精度化、微細化の要求も飛躍的に大きくなってきている。ガラスの切断技術は、一般的には、何らかの固い物体にてガラス表面に傷すなわち浅い溝を形成(スクライブという)し、これを起点にして割る(ブレーク、分断ともいう)ものである。このようにガラスの切断技術は極めて古典的な手法による技術であるが、上述した各種表示装置に対するガラス供給の基本を担う極めて重要な部分を占めている。
ガラスのスクライブ方法においては、マイクロ・クラックと呼ばれる水平方向のクラックの発生を回避し、かつ、適当な深さの溝(ガラスの厚さ方向のクラック)を形成する必要がある。良好にスクライブを行うためには、そのスクライブの溝深さは経験的、理論的にガラスの板厚の10〜15%程度が最適とされている(例えば非特許文献1参照。)。
従来のスクライブ方法としては、ダイヤモンド・カッターによるメカニカルな手法が広く用いられてきた。このようなメカニカルなスクライブの場合、カッターの刃先に適切な工夫を加えないと、塑性変形による残留歪みが発生する。結果として、ガラス基板の表面近傍に水平方向の微小クラックが生じ、曲げ強度の低下を引き起こす。また、刃先の形状はスクライブの速度、ガラスの厚みによってその条件を変える必要があるが、刃先の条件変更は容易ではなく、またコスト面でも不利となる。
【0003】
【非特許文献1】三宅泰明、「FPDガラス基板の切断技術」、砥粒加工学会誌、Vol.45, No.7, 2001) pp.342-347
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対し、近年、レーザによるガラスのスクライブ方法も提案され、既に実用化もされている。レーザ・スクライブの場合、イニシャル・クラックと呼ばれる微小な起点をガラス表面に機械的に付け、これを起点としてスキャン(掃引)しながらレーザの照射(加熱)を行うが、これと平行して照射ビーム後端付近を急冷することにより、筋状の縦方向(深さ方向)にクラックを形成する。ここで急冷とは、空気と噴霧状の水の混合気を使うのが一般的である。
このようなレーザによるスクライブ方法に用いられるレーザ光源としては、CO2レーザ(波長:10.6μm、連続波またはパルス)が一般的である。レーザによるスクライブ方法では、メカニカルなスクライブとは異なり、微小な塑性変形に伴う残留応力が存在しないか微小でしかなく、この状態でSiO2の分子間結合を切断するものである。しかしながら、上述したようにレーザ照射直後の急冷を必要とするので、原理上熱歪みの残留は避けられない。このため、割断するガラス板厚が極端に薄くなってくると、良好なブレークが困難になると予想される。また、装置構成も急冷装置を必須とするため、簡便とは言い難い。
【0005】
以上の問題に鑑みて、本発明は、ガラス表面での熱歪みの発生を抑制ないしは回避してガラスをスクライブすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によるガラスのスクライブ方法は、パルス幅が100ピコ秒以下の短パルスレーザ光をガラス表面に掃引照射することにより、ガラス表面に切断用の溝を形成することを特徴とする。
また、本発明は、上述のガラスのスクライブ方法において、短パルスレーザ光の波長が、ガラスに対し吸収する波長帯域であり、短パルスレーザ光のパルス幅を10ピコ秒以下とすることを特徴とする。
【0007】
上述したように、本発明のガラスのスクライブ方法においては、パルス幅が100ピコ秒以下の短パルスレーザを用いてガラス表面に掃引照射するものである。ここで、パルスレーザの掃引照射とは、パルスレーザをライン状に照射してパルス列によるラインを形成することとする。このように、本発明においては、短パルスレーザ光のパルス幅を100ピコ秒以下とすることによって、ガラスのスクライブの過程において熱振動の影響を少なくし、熱過程によるボンドの切断ではなく、ガラス分子の結合自体が熱を介さずに直接切断される過程を支配的とすることができる。従って、CO2レーザを用いるなどの従来の方法におけるような急冷の必要がなく、熱歪みによるガラス表面へのマイクロ・クラックの発生を抑制ないしは回避できる。
また本発明において、短パルスレーザ光の波長が、ガラスに対し吸収する波長帯域である場合は、短パルスレーザ光のパルス幅を10ピコ秒以下とすることを特徴とする。すなわち、切断しようとするガラスの材料に対して、用いる短パルスレーザ光の波長が吸収を生じる波長帯域である場合は、パルス幅を10ピコ秒以下とするものである。このようにすることによって、確実に、熱振動の影響を抑制ないしは回避して、熱を介さずにガラス分子の結合を直接切断する過程を支配的とすることができるので、同様に、熱歪みによるガラス表面へのマイクロ・クラックの発生を抑制ないしは回避することが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガラス表面での熱歪みの発生を抑制ないしは回避してガラスをスクライブすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を実施するための最良の形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
本発明によるガラスのスクライブ方法は、上述したようにパルス幅が100ピコ秒以下の短パルスレーザ光を用いるものであり、これにより、熱過程を支配的としないようにしてガラスのスクライブを行うものである。
また短パルスレーザ光の波長が、ガラスに対し吸収する波長帯域である場合は、短パルスレーザ光のパルス幅を10ピコ秒以下とする。これにより、熱振動の影響を回避ないしは抑制して、熱歪みの発生を抑制することができる。
一方、用いる短パルスレーザ光の波長が、ガラスに対し吸収する波長帯域から外れている場合は、パルス幅が10ピコ秒を超えていてもよいが、多光子吸収過程を誘起可能な条件、すなわち照射パワー密度を1GW/cm2を超える照射構成とすることが望ましい。この場合、熱過程ではなく多光子吸収過程を確実に支配的とすることが可能であり、したがって、熱による歪みの発生を効果的に抑制してガラスのスクライブを行うことが可能となる。
なお、短パルスレーザ光の波長がガラスに対し吸収する波長帯域である場合において、短パルスレーザ光のパルス幅を10ピコ秒以下とするとともに、照射パワー密度を1GW/cm2を超える照射構成としてもよい。この場合においても多光子吸収過程を支配的とし、熱による歪みの発生を効果的に抑制してガラスのスクライブを行うことができる。
【0010】
一例として、Nd:YAG(ネオジムドープイットリウム、アルミニウム、ガーネット結晶、波長:1064nm等)やTi:Sapphire(波長:800nm)等の赤外波長の光源を1倍波で用い、100ピコ秒以下のパルス幅で照射することにより、多光子吸収過程を経てガラスのスクライブを行うことが可能である。この場合、前述したように、CO2レーザの場合とは異なり熱振動の影響が少ないため、熱過程によるボンドの切断ではなく、熱を介さずに結合自体を直接切断する部分が支配的となる。つまり、従来のようなレーザ照射後の急冷の必要がなく、熱歪みの軽減または回避が期待できるため、より精細なスクライブ、あるいは、より薄いガラス板への対応も期待できる。また、高調波発生装置を必要としないため、比較的簡易な構成のレーザ装置により行うことができる。
一方、短パルス化と短波長化の組み合わせによる1光子吸収過程による手法も考えられる。この場合はNd:YAGなどのレーザ光源を、高調波発生装置との組み合わせにより3〜4倍波として紫外線領域のレーザ光を発生させた上で、そのパルス幅を10ピコ秒以下のパルス幅として照射してもよい。このようにパルス幅を選定することによって、熱振動を介さずに結合自体を直接切断する部分を支配的とすることが可能であり、同様に、熱歪の発生を抑制ないしは回避して良好にガラスのスクライブを行うことができる。
【0011】
図1は本発明の実施形態例によるガラスのスクライブ方法を行うレーザ装置の一例の概略構成図である。この例においては、光源ユニット10にはレーザ光源1、ミラー2、再生増幅器3、ポンプレーザ4が設けられる。レーザ光源1としてはフェムト秒レーザ、例えばSpectra-Physics社製MaiTai(商品名、Ti:Sapphire レーザ、中心波長800nm、パルス幅約100fs、繰り返し周波数80MHz)を用い、また、再生増幅器3としてSpectra-Physics社製Spitfire(商品名、中心波長800nm、パルス幅約100fs、繰り返し周波数1Hz〜1kHz)を用いて構成することができる。この場合、再生増幅器3からの最大出力パルスエネルギーは約1mJであり、繰り返し周波数は1kHzである。また再生増幅器3のポンプレーザ4としてはNd:YLF(ネオジムドープイットリウム、リチウム、フッ化物)レーザが用いられる。
【0012】
光源ユニット10から出射されたレーザ光は、シャッター11を介した後、フェムト秒オーダーのパルス幅で用いる場合は次の光学系へ、また、数〜数十ps程度のパルス幅で用いる場合は、パルスストレッチャー12へそれぞれ導入される。パルスストレッチャー12としては、一対のグレーティングを用いる。図2に示すように、このパルスストレッチャーにおいては、入射光Linがハーフミラー51によりグレーティング52及び53に入射され、回折光がミラー54により反射されて再びグレーティング53、52の回折を経て外部に矢印Loutとして示すように取り出される。このグレーティングとしては例えばHoriba Jobin Yvon 社製のグレーティング(型番:524 21 090、仕様:1740gr/mm、Auコート、サイズ40×60×10(mm)、回折効率>92%)を用いることができる。
後述する実施形態例においては、このグレーティング・ペアの一方を動かすことにより光軸の高さをずらして伸張の度合いを調整し、図3A及びBに波形を示す2つのパルス幅のパルスを生成した。図3Aにおいてはパルス幅36.7ps、図3Bにおいてはパルス幅57psとした例を示す。
【0013】
パルスストレッチャー12から出射された光(フェムト秒オーダーのパルス幅とする場合は光源系10から出射された光)は、NDフィルター13、ミラー14、15及び16、アフォーカル光学系20を介して、顕微鏡光学系40へ導入される。アフォーカル光学系20はレンズ17、ピンホール18及びレンズ19により構成される。顕微鏡光学系40としては例えばオリンパス(株)製GX51(商品名)を用いることができる。ここで、NDフィルター13は光量調整のために挿入される。また、ミラー14及び15は顕微鏡光学系40に導入する際の面内アライメントのため、アフォーカル光学系20では光軸方向のアライメントのために、それぞれ挿入されている。顕微鏡光学系40に導入された光は、ミラー31により反射された後ハーフミラー32,33を透過して対物レンズ34を経て試料35内へ照射される。対物レンズ34の開口数は例えばNA=0.1とする。
また、パルスレーザを照射する試料35は、コンピュータ制御されたステッピング・モータ駆動の3次元ステージ36上に配され、所望の位置への配置、所定のスピードでの掃引がそれぞれ可能な構成とされる。今回の実施形態例においては、掃引速度は約235μm/s、掃引方向の移動距離は5〜10mm、掃引回数は1〜5回とした。レーザ照射時の試料35の観察は、照明光学系37を用いてハーフミラー32を介して試料35に照射して行った。
【0014】
このようなレーザ装置を用いてスクライブを行ったガラス試料35の観察は、別の光学顕微鏡BX51(商品名、オリンパス(株)製)を用いて行った。また、ブレーク前のマイクロ・クラックの確認は、フッ酸処理(HF処理)によってクラックを顕在化させ、その上で光学顕微鏡により観察を行った。ここでフッ酸処理とは、フッ酸の1%水溶液に対象となる試料を10分間浸す作業を指す。
微小な塑性変形やそれに伴う残留応力はクラックの原因になるが、単純な顕微鏡観察では認識する事は極めて困難である。他方、クラックそのものがはじめから認識されていなくても、こうした塑性変形や残留応力が生じている部位は、わずかなきっかけやわずかな起点から大きなクラックが生じる部位である。HF処理は、こうしたわずかなきっかけからフッ酸が入り込み、こうした塑性変形や残留応力が生じている部位(歪んで結合が弱まっている部位など)の結合を切り、クラックの発生を促進させて、結果的にクラックを顕在化させるものである。
下記の各実施形態例及び比較例において用いたガラス試料は、液晶ディスプレイ用の無アルカリ・ガラスで、旭硝子(株)製AN100(商品名)である。
なお、スクライブを行った後のガラスのブレーク方法は、以下の通りである。すなわち図4に模式的に示すように、2つの支点62及び63を有する台座(図示せず)上に、これら支点62及び63の中央付近にスクライブ部位64が位置するように、スクライブ部位64を台座と対向させてガラス基板61を載置する。その上で、スクライブ部位64とは反対の裏面側から圧力を矢印Pで示すように加えることによって、簡単にガラス基板61のブレークすなわち切断を行うことができる。
【0015】
次に具体的な実施形態例と、比較例との対比により検討した結果を示す。以下の順に説明する。
〔1〕第1の実施形態例
〔2〕第2の実施形態例
〔3〕メカニカル強度の比較検討
〔4〕比較例
【0016】
〔1〕第1の実施形態例
この実施形態例においては、フェムト秒オーダーのパルス幅の短パルスレーザ光を照射してガラスのスクライブを行った例を示す。
上述の図1に示す構成のレーザ装置により、フェムト秒オーダーのパルスレーザを照射して板厚0.2mmのガラス試料のスクライブを行った。スクライブは、0.2mm厚のガラス試料に対して同一箇所を5回掃引して行った。スクライブの照射条件は以下の通りである。
波長:800nm
パルス幅:100fs
対物レンズの開口数NA:0.1
繰り返し周波数:1kHz
掃引速度:235μm/s
静止状態でのドリリング加工での加工しきい値エネルギー
:4.9μJ(フルエンス表記で3.3J/cm2)
加工エネルギー:150μJ(フルエンス表記で100J/cm2)
照射パワー密度:106GW/cm2
図5にこのスクライブ後の断面を撮影した顕微鏡写真図を示す。図5からわかるように、このスクライブによるスクライブ深さは100μm程度であり、ガラス試料の板厚の50%程度となっている。
【0017】
なお、起点となる部位に2回以上のパルス照射を行ういわゆるドリリングを行った別の結果から、1回の照射における加工深さは、(特に焦点深度内の照射においては)概ね変化しないため、例えば板厚が0.2mmのガラスであれば1回の掃引によりスクライブ・ラインの形成が可能と考えられる。ただし、起点となる加工部位を確保しないと、掃引開始部分は十分な加工深さが得られない場合があるため、初めに2回以上のパルス照射、いわゆるドリリングを行って起点部位を形成し、その後掃引する方法とすることが望ましい。
一方、上述したように複数回の掃引を行う場合は、起点となる部位に2回以上のパルス照射によるドリリングを行う必要がなく、スクライブ・ラインを比較的簡単に形成することができるという利点を有する。
【0018】
また、偏光顕微鏡での観測では、特に顕著な屈折率分布は見られず、すなわち部分的に応力がかかっている部位は観察されなかった。
上記のスクライブ試料に対し、前述の図4に示す方法によりブレークしたガラス試料の断面を観察した顕微鏡写真図を図6A及びBに示す。図6Aにおいては、スクライブ・ラインの延長方向と直交する方向の断面を示し、図6Bにおいては、スクライブ・ラインの延長方向に沿う方向の断面を示す。図6A及びBから明らかなようにスクライブ部位には溶融痕等は全く観察されず、この実施形態例におけるスクライブ・ラインの形成には多光子吸収過程による非熱的な切断が実現されていることが確認できる。
【0019】
次にフッ酸処理後の様子を図7A及びBに示す。図7Aにおいては、スクライブ・ラインの延長方向と直交する方向の断面を示し、図7Bにおいては、スクライブ・ラインの延長方向に沿う方向の断面を示す。図7A及びBからもわかるように、顕著なマイクロ・クラックは観察されない。
これらの結果として、非熱的な加工プロセスを用いたスクライブでは、メカニカル・スクライブにあるような残留応力がないか、あるいは支障のない範囲でしかなく、また、多光子吸収過程の性質上、加熱急冷による熱歪み起因の課題が元々存在しないため、本質的にマイクロ・クラックを生じないか生じにくく、きわめて良好なガラスのブレークを簡単に行うことが可能であるといえる。
【0020】
〔2〕第2の実施形態例
次に、ピコ秒オーダーのパルス幅のパルスレーザによりガラスのスクライブを行う実施形態例について説明する。
この例においては、第1の実施形態例と同様に、上述の図1に示す構成のレーザ装置により、パルス幅が7psと60psの2種類の短パルスレーザ光を照射して、板厚が0.2mmのガラス試料に対するスクライブを行った。いずれのパルス幅の場合も同一箇所をそれぞれ5回掃引照射した。スクライブの照射条件は以下の通りである。
(1)パルス幅7psの場合
波長:800nm
パルス幅:7ps
対物レンズの開口数NA:0.1
繰り返し周波数:1kHz
掃引速度:235μm/s
掃引幅:7mm
静止状態のドリリング加工での加工しきい値エネルギー
:30μJ(フルエンス表記で40J/cm2)
加工エネルギー:40μJ(フルエンス表記で53.3J/cm2)
照射パワー密度:1.7×104GW/cm2
(2)パルス幅60psの場合
波長:800nm
パルス幅:60ps
対物レンズの開口数NA:0.1
繰り返し周波数:1kHz
掃引速度:235μm/s
掃引幅:7mm
静止状態のドリリング加工での加工しきい値エネルギー
:42μJ(フルエンス表記で56J/cm2)
加工エネルギー:90μJ(フルエンス表記で120J/cm2)
照射パワー密度:1.5×103GW/cm2
【0021】
この場合のスクライブ部位を観察した顕微鏡写真図を図8A及びB、図9A及びBに示す。図8A及びBはパルス幅を7psとした例であり、図8Aにおいては、スクライブ・ラインの延長方向と直交する方向の断面を示し、図8Bにおいては、フッ酸処理後のスクライブ・ラインの上面を示す。また、図9A及びBはパルス幅を60psとした例であり、図9Aにおいては、スクライブ・ラインの延長方向と直交する方向の断面を示し、図9Bにおいては、フッ酸処理後のスクライブ・ラインの上面を示す。
図8及び図9からわかるように、いずれのパルス幅においても20μm程度のスクライブ深さ(すなわち板厚の10%程度)が得られており、また、フッ酸処理後の観察においても、マイクロ・クラックのない、良好なスクライブが行われたことが確認される。
この場合はレーザ光の波長が800nmとガラス試料の吸収帯域から外れていること、また照射パワー密度が十分高いことから、上述の第1の実施形態例と同様に、多光子吸収過程が支配的であると考えられる。このため、パルス幅が60psと比較的長い場合においても、熱歪みの発生が抑制されているといえる。
同様の条件でパルス幅を伸長したところ、パルス幅100psとする場合においても上述の実施形態例と同様に熱歪みの発生が抑制されることが確認された。したがって、本発明においては、パルス幅を100ps以下とするものである。
【0022】
〔3〕メカニカル強度の比較検討
次に、メカニカル・スクライブによるガラス試料と、ピコ秒オーダーのパルス幅をもって短パルスレーザ光を照射したガラス試料に対し曲げ強度試験を試みた。ガラスの板厚は0.2mmである。図10にその結果示す。図10中nは試料のサンプル数を示す。ここで、短パルスレーザ光照射によるスクライブの照射条件は、
波長:800nm
パルス幅:57ps
対物レンズの開口数NA:0.1
繰り返し周波数:1kHz
掃引スピード:470μm/s
掃引幅:29mm
加工エネルギー:47μJ(フルエンス表記で47J/cm2)
照射パワー密度:約0.6TW/cm2
である。
図10からもわかるように、パルス幅がピコ秒オーダーのレーザによりスクライブを行う場合はメカニカル・スクライブとほぼ同等の曲げ強度と安定性を有していることがわかる。また、その強度ばらつきが小さいことから、スクライブ・ラインの形成プロセスが高い再現性を持って実現されているといえる。
【0023】
この場合、パルスレーザ照射によるスクライブでは、照射パルスのピーク・パワーが約0.6TW/cm2と比較的小さく、従って多光子吸収に寄与するエネルギーは比較的少ないが、寄与しなかったエネルギーは1光子では吸収がほとんどないため熱に変換されることなく試料を透過すると考えられる。つまり、熱歪みが発生しているとは考えにくい。
【0024】
また、ピコ秒オーダーのパルスレーザ照射によりガラス・スクライブを行った試料に対して曲げ試験を行い、破壊モードでの破損状態を調べた。この結果を図11A及びBに示す。図11Aはその観察写真図であり、図11Bはその破損状態を模式的に示す平面図である。図11からわかるように、この場合メカニカル・スクライブに近い破損状態を示しており、上述したように、ピコ秒オーダーのパルスレーザ照射による場合、スクライブ・ラインの形成に際し、熱歪みではなく、塑性変形に伴う残留応力が発生している可能性を示唆している。
ただし、実際に顕著な塑性変形があればマイクロ・クラックが発生するので、塑性変形を生じるレベルではなく、良好なメカニカル・スクライブを実現する手法による場合と同様の切断面が形成されていると考えられる。良好なメカニカル・スクライブを実現する手法とは、前述の非特許文献1より、ノコギリ刃状の刃先を利用したメカニカル・スクライブが挙げられる。
実際にピコ秒オーダーのパルスレーザを掃引したパルス列によるスクライブ後の試料の状態は非熱的な加工状態と認められ、ノコギリ刃状の刃先を試料上で走らせる機械的な加工によるスクライブ・ラインと極めて似ている。
このように考えると、100ps秒以下のピコ秒オーダーのパルスレーザによるスクライブを行ったガラスは、メカニカル・スクライブと同等程度の曲げ強度を有し、また、破壊モードにおける破損状態も似ていることは妥当なものと考えられる。曲げ強度の向上については、掃引スピードとパルスの繰り返し周波数の相対的な関係から、試料毎により最適な条件を見いだすことが可能である。
【0025】
〔4〕比較例
最後に、ガラスに対して吸収帯域の波長である短パルスレーザ光を照射してスクライブを行った比較例について説明する。スクライブの照射条件は以下の通りである。
波長:355nm
パルス幅:15ps
掃引速度:400nm
照射パワー:5.6W
図12は上述の条件によりガラス表面をスクライブした後HF処理を行った状態の試料の顕微鏡写真図を示す。横方向(すなわちガラスの表面に沿う水平方向)にひげ状のマイクロ・クラックが発生していることが分かる。
すなわちこの場合は、ガラスに対し吸収が生じる波長帯域の短パルスレーザ光を用いており、パルス幅が10psを超えることから、光を吸収して熱振動が伝わってしまい、熱歪みが発生しているものと思われる。
したがって、本発明において、短パルスレーザの波長がガラスに対して吸収帯域である場合においては、パルス幅を10ps以下とするものである。
【0026】
以上の結果から、本発明によれば、パルス幅が100ピコ秒以下の短パルスレーザ光照射によりスクライブを行うことにより、非接触の簡易な光学系をもって、メカニカル・スクライブ方法による場合と同等の良好なブレーク品質を確保することができる。また、メカニカル・スクライブによる場合に問題とされる塑性変形に伴う残留応力の影響を抑制ないしは回避することができる。
更に、本発明によれば、熱歪みの影響が原理的に存在しないため、CO2レーザを用いた従来の冷却を必要とする一般的なレーザ・スクライブ方法と比較すると、より安定なスクライブ品質をもってガラスのスクライブを行うことが可能である。またガラスに対して光吸収を生じる波長帯域の短パルスレーザ光を用いる場合は、パルス幅を10ps以下とすることによって、同様に熱歪みの影響を抑制ないしは回避することができる。
【0027】
すなわち、本発明のガラスのスクライブ方法においては、以下の効果が得られる。
(ア)従来の刃物による機械的手法による場合に問題となる微小な塑性変形に伴う残留応力や、CO2レーザを用いた従来のレーザによるスクライブ方法における熱歪みの発生をそれぞれ原理的に抑制ないしは回避できる。残留応力や熱歪みに起因する切断時における水平方向の微小なクラックの発生を未然に抑制ないしは回避し、垂直方向の溝形成のみを良好に行うことができる。
(イ)水平方向のクラックが発生すると曲げ強度を著しく低下させるので、上記(ア)に示すように、このような水平方向のクラックの発生を抑制ないし回避できる本発明によれば、安定なガラスの切断を実現し、また、切断したガラス基板に対して、安定的かつ十分な曲げ強度を提供することが可能である。
(ウ)上記(ア)〜(イ)の結果、非常に簡便かつ安定的なスクライブ手法を、ガラス試料に対して非接触な装置で実施できる。更に、冷却手段が不要であることから装置構成や条件を大きく簡素化できるため、安価な装置の提供が可能となる。
【0028】
なお、本発明のガラスのスクライブ方法は、上述の各実施形態例に限定されるものではなく、本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。また本発明方法を実施するレーザ装置としては、上述の図1及び図2に示すレーザ装置及びパルス伸長方法を採用する場合に限定されるものではなく、その他種々の構成のレーザ装置により実施可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法を実施するレーザ装置の一例の概略構成図である。
【図2】パルス伸長方法の説明図である。
【図3】A及びBは本発明の実施形態例に係るパルスレーザのパルス波形の一例を示す図である。
【図4】ガラスのブレーク方法の説明図である。
【図5】本発明の実施形態例によるガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料の断面図である。
【図6】A及びBは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料の断面の観察写真図である。
【図7】A及びBは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料のフッ酸処理後の観察写真図である。
【図8】Aは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料の断面の観察写真図である。Bは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料のフッ酸処理後の観察写真図である。
【図9】Aは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料の断面の観察写真図である。Bは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料のフッ酸処理後の観察写真図である。
【図10】本発明の実施形態例及び比較例に係るガラス・スクライブ後の曲げ強度を示す図である。
【図11】A及びBは本発明の実施形態例に係るガラス・スクライブ後の破壊モードにおけるガラスの観察写真図及びその模式図である。
【図12】比較例によるガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料の断面の観察写真図である。
【符号の説明】
【0030】
1.レーザ光源、2.ミラー、3.再生増幅器、4.ポンプレーザ、5.コリメータ、10.光源ユニット、11.シャッター、12.パルスストレッチャー、13.NDフィルター、14〜16.ミラー、17.レンズ、18.ピンホール、19.レンズ、20.アフォーカル光学系、31.ミラー、32,33.ハーフミラー、34.対物レンズ、35.試料、36.3次元ステージ、37.照明光学系、40.顕微鏡光学系、51.ハーフミラー、52,53.グレーティング、54.ミラー、61.ガラス試料、62,63.支点、64.スクライブ部位
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス切断工程の切断前に、ガラス表面に切断用の溝を形成するガラスのスクライブ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルやプラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)といった表示装置の急速な需要拡大が続いており、これに伴いガラスの生産需要の高まりや加工分野の高精度化、微細化の要求も飛躍的に大きくなってきている。ガラスの切断技術は、一般的には、何らかの固い物体にてガラス表面に傷すなわち浅い溝を形成(スクライブという)し、これを起点にして割る(ブレーク、分断ともいう)ものである。このようにガラスの切断技術は極めて古典的な手法による技術であるが、上述した各種表示装置に対するガラス供給の基本を担う極めて重要な部分を占めている。
ガラスのスクライブ方法においては、マイクロ・クラックと呼ばれる水平方向のクラックの発生を回避し、かつ、適当な深さの溝(ガラスの厚さ方向のクラック)を形成する必要がある。良好にスクライブを行うためには、そのスクライブの溝深さは経験的、理論的にガラスの板厚の10〜15%程度が最適とされている(例えば非特許文献1参照。)。
従来のスクライブ方法としては、ダイヤモンド・カッターによるメカニカルな手法が広く用いられてきた。このようなメカニカルなスクライブの場合、カッターの刃先に適切な工夫を加えないと、塑性変形による残留歪みが発生する。結果として、ガラス基板の表面近傍に水平方向の微小クラックが生じ、曲げ強度の低下を引き起こす。また、刃先の形状はスクライブの速度、ガラスの厚みによってその条件を変える必要があるが、刃先の条件変更は容易ではなく、またコスト面でも不利となる。
【0003】
【非特許文献1】三宅泰明、「FPDガラス基板の切断技術」、砥粒加工学会誌、Vol.45, No.7, 2001) pp.342-347
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対し、近年、レーザによるガラスのスクライブ方法も提案され、既に実用化もされている。レーザ・スクライブの場合、イニシャル・クラックと呼ばれる微小な起点をガラス表面に機械的に付け、これを起点としてスキャン(掃引)しながらレーザの照射(加熱)を行うが、これと平行して照射ビーム後端付近を急冷することにより、筋状の縦方向(深さ方向)にクラックを形成する。ここで急冷とは、空気と噴霧状の水の混合気を使うのが一般的である。
このようなレーザによるスクライブ方法に用いられるレーザ光源としては、CO2レーザ(波長:10.6μm、連続波またはパルス)が一般的である。レーザによるスクライブ方法では、メカニカルなスクライブとは異なり、微小な塑性変形に伴う残留応力が存在しないか微小でしかなく、この状態でSiO2の分子間結合を切断するものである。しかしながら、上述したようにレーザ照射直後の急冷を必要とするので、原理上熱歪みの残留は避けられない。このため、割断するガラス板厚が極端に薄くなってくると、良好なブレークが困難になると予想される。また、装置構成も急冷装置を必須とするため、簡便とは言い難い。
【0005】
以上の問題に鑑みて、本発明は、ガラス表面での熱歪みの発生を抑制ないしは回避してガラスをスクライブすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によるガラスのスクライブ方法は、パルス幅が100ピコ秒以下の短パルスレーザ光をガラス表面に掃引照射することにより、ガラス表面に切断用の溝を形成することを特徴とする。
また、本発明は、上述のガラスのスクライブ方法において、短パルスレーザ光の波長が、ガラスに対し吸収する波長帯域であり、短パルスレーザ光のパルス幅を10ピコ秒以下とすることを特徴とする。
【0007】
上述したように、本発明のガラスのスクライブ方法においては、パルス幅が100ピコ秒以下の短パルスレーザを用いてガラス表面に掃引照射するものである。ここで、パルスレーザの掃引照射とは、パルスレーザをライン状に照射してパルス列によるラインを形成することとする。このように、本発明においては、短パルスレーザ光のパルス幅を100ピコ秒以下とすることによって、ガラスのスクライブの過程において熱振動の影響を少なくし、熱過程によるボンドの切断ではなく、ガラス分子の結合自体が熱を介さずに直接切断される過程を支配的とすることができる。従って、CO2レーザを用いるなどの従来の方法におけるような急冷の必要がなく、熱歪みによるガラス表面へのマイクロ・クラックの発生を抑制ないしは回避できる。
また本発明において、短パルスレーザ光の波長が、ガラスに対し吸収する波長帯域である場合は、短パルスレーザ光のパルス幅を10ピコ秒以下とすることを特徴とする。すなわち、切断しようとするガラスの材料に対して、用いる短パルスレーザ光の波長が吸収を生じる波長帯域である場合は、パルス幅を10ピコ秒以下とするものである。このようにすることによって、確実に、熱振動の影響を抑制ないしは回避して、熱を介さずにガラス分子の結合を直接切断する過程を支配的とすることができるので、同様に、熱歪みによるガラス表面へのマイクロ・クラックの発生を抑制ないしは回避することが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガラス表面での熱歪みの発生を抑制ないしは回避してガラスをスクライブすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を実施するための最良の形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
本発明によるガラスのスクライブ方法は、上述したようにパルス幅が100ピコ秒以下の短パルスレーザ光を用いるものであり、これにより、熱過程を支配的としないようにしてガラスのスクライブを行うものである。
また短パルスレーザ光の波長が、ガラスに対し吸収する波長帯域である場合は、短パルスレーザ光のパルス幅を10ピコ秒以下とする。これにより、熱振動の影響を回避ないしは抑制して、熱歪みの発生を抑制することができる。
一方、用いる短パルスレーザ光の波長が、ガラスに対し吸収する波長帯域から外れている場合は、パルス幅が10ピコ秒を超えていてもよいが、多光子吸収過程を誘起可能な条件、すなわち照射パワー密度を1GW/cm2を超える照射構成とすることが望ましい。この場合、熱過程ではなく多光子吸収過程を確実に支配的とすることが可能であり、したがって、熱による歪みの発生を効果的に抑制してガラスのスクライブを行うことが可能となる。
なお、短パルスレーザ光の波長がガラスに対し吸収する波長帯域である場合において、短パルスレーザ光のパルス幅を10ピコ秒以下とするとともに、照射パワー密度を1GW/cm2を超える照射構成としてもよい。この場合においても多光子吸収過程を支配的とし、熱による歪みの発生を効果的に抑制してガラスのスクライブを行うことができる。
【0010】
一例として、Nd:YAG(ネオジムドープイットリウム、アルミニウム、ガーネット結晶、波長:1064nm等)やTi:Sapphire(波長:800nm)等の赤外波長の光源を1倍波で用い、100ピコ秒以下のパルス幅で照射することにより、多光子吸収過程を経てガラスのスクライブを行うことが可能である。この場合、前述したように、CO2レーザの場合とは異なり熱振動の影響が少ないため、熱過程によるボンドの切断ではなく、熱を介さずに結合自体を直接切断する部分が支配的となる。つまり、従来のようなレーザ照射後の急冷の必要がなく、熱歪みの軽減または回避が期待できるため、より精細なスクライブ、あるいは、より薄いガラス板への対応も期待できる。また、高調波発生装置を必要としないため、比較的簡易な構成のレーザ装置により行うことができる。
一方、短パルス化と短波長化の組み合わせによる1光子吸収過程による手法も考えられる。この場合はNd:YAGなどのレーザ光源を、高調波発生装置との組み合わせにより3〜4倍波として紫外線領域のレーザ光を発生させた上で、そのパルス幅を10ピコ秒以下のパルス幅として照射してもよい。このようにパルス幅を選定することによって、熱振動を介さずに結合自体を直接切断する部分を支配的とすることが可能であり、同様に、熱歪の発生を抑制ないしは回避して良好にガラスのスクライブを行うことができる。
【0011】
図1は本発明の実施形態例によるガラスのスクライブ方法を行うレーザ装置の一例の概略構成図である。この例においては、光源ユニット10にはレーザ光源1、ミラー2、再生増幅器3、ポンプレーザ4が設けられる。レーザ光源1としてはフェムト秒レーザ、例えばSpectra-Physics社製MaiTai(商品名、Ti:Sapphire レーザ、中心波長800nm、パルス幅約100fs、繰り返し周波数80MHz)を用い、また、再生増幅器3としてSpectra-Physics社製Spitfire(商品名、中心波長800nm、パルス幅約100fs、繰り返し周波数1Hz〜1kHz)を用いて構成することができる。この場合、再生増幅器3からの最大出力パルスエネルギーは約1mJであり、繰り返し周波数は1kHzである。また再生増幅器3のポンプレーザ4としてはNd:YLF(ネオジムドープイットリウム、リチウム、フッ化物)レーザが用いられる。
【0012】
光源ユニット10から出射されたレーザ光は、シャッター11を介した後、フェムト秒オーダーのパルス幅で用いる場合は次の光学系へ、また、数〜数十ps程度のパルス幅で用いる場合は、パルスストレッチャー12へそれぞれ導入される。パルスストレッチャー12としては、一対のグレーティングを用いる。図2に示すように、このパルスストレッチャーにおいては、入射光Linがハーフミラー51によりグレーティング52及び53に入射され、回折光がミラー54により反射されて再びグレーティング53、52の回折を経て外部に矢印Loutとして示すように取り出される。このグレーティングとしては例えばHoriba Jobin Yvon 社製のグレーティング(型番:524 21 090、仕様:1740gr/mm、Auコート、サイズ40×60×10(mm)、回折効率>92%)を用いることができる。
後述する実施形態例においては、このグレーティング・ペアの一方を動かすことにより光軸の高さをずらして伸張の度合いを調整し、図3A及びBに波形を示す2つのパルス幅のパルスを生成した。図3Aにおいてはパルス幅36.7ps、図3Bにおいてはパルス幅57psとした例を示す。
【0013】
パルスストレッチャー12から出射された光(フェムト秒オーダーのパルス幅とする場合は光源系10から出射された光)は、NDフィルター13、ミラー14、15及び16、アフォーカル光学系20を介して、顕微鏡光学系40へ導入される。アフォーカル光学系20はレンズ17、ピンホール18及びレンズ19により構成される。顕微鏡光学系40としては例えばオリンパス(株)製GX51(商品名)を用いることができる。ここで、NDフィルター13は光量調整のために挿入される。また、ミラー14及び15は顕微鏡光学系40に導入する際の面内アライメントのため、アフォーカル光学系20では光軸方向のアライメントのために、それぞれ挿入されている。顕微鏡光学系40に導入された光は、ミラー31により反射された後ハーフミラー32,33を透過して対物レンズ34を経て試料35内へ照射される。対物レンズ34の開口数は例えばNA=0.1とする。
また、パルスレーザを照射する試料35は、コンピュータ制御されたステッピング・モータ駆動の3次元ステージ36上に配され、所望の位置への配置、所定のスピードでの掃引がそれぞれ可能な構成とされる。今回の実施形態例においては、掃引速度は約235μm/s、掃引方向の移動距離は5〜10mm、掃引回数は1〜5回とした。レーザ照射時の試料35の観察は、照明光学系37を用いてハーフミラー32を介して試料35に照射して行った。
【0014】
このようなレーザ装置を用いてスクライブを行ったガラス試料35の観察は、別の光学顕微鏡BX51(商品名、オリンパス(株)製)を用いて行った。また、ブレーク前のマイクロ・クラックの確認は、フッ酸処理(HF処理)によってクラックを顕在化させ、その上で光学顕微鏡により観察を行った。ここでフッ酸処理とは、フッ酸の1%水溶液に対象となる試料を10分間浸す作業を指す。
微小な塑性変形やそれに伴う残留応力はクラックの原因になるが、単純な顕微鏡観察では認識する事は極めて困難である。他方、クラックそのものがはじめから認識されていなくても、こうした塑性変形や残留応力が生じている部位は、わずかなきっかけやわずかな起点から大きなクラックが生じる部位である。HF処理は、こうしたわずかなきっかけからフッ酸が入り込み、こうした塑性変形や残留応力が生じている部位(歪んで結合が弱まっている部位など)の結合を切り、クラックの発生を促進させて、結果的にクラックを顕在化させるものである。
下記の各実施形態例及び比較例において用いたガラス試料は、液晶ディスプレイ用の無アルカリ・ガラスで、旭硝子(株)製AN100(商品名)である。
なお、スクライブを行った後のガラスのブレーク方法は、以下の通りである。すなわち図4に模式的に示すように、2つの支点62及び63を有する台座(図示せず)上に、これら支点62及び63の中央付近にスクライブ部位64が位置するように、スクライブ部位64を台座と対向させてガラス基板61を載置する。その上で、スクライブ部位64とは反対の裏面側から圧力を矢印Pで示すように加えることによって、簡単にガラス基板61のブレークすなわち切断を行うことができる。
【0015】
次に具体的な実施形態例と、比較例との対比により検討した結果を示す。以下の順に説明する。
〔1〕第1の実施形態例
〔2〕第2の実施形態例
〔3〕メカニカル強度の比較検討
〔4〕比較例
【0016】
〔1〕第1の実施形態例
この実施形態例においては、フェムト秒オーダーのパルス幅の短パルスレーザ光を照射してガラスのスクライブを行った例を示す。
上述の図1に示す構成のレーザ装置により、フェムト秒オーダーのパルスレーザを照射して板厚0.2mmのガラス試料のスクライブを行った。スクライブは、0.2mm厚のガラス試料に対して同一箇所を5回掃引して行った。スクライブの照射条件は以下の通りである。
波長:800nm
パルス幅:100fs
対物レンズの開口数NA:0.1
繰り返し周波数:1kHz
掃引速度:235μm/s
静止状態でのドリリング加工での加工しきい値エネルギー
:4.9μJ(フルエンス表記で3.3J/cm2)
加工エネルギー:150μJ(フルエンス表記で100J/cm2)
照射パワー密度:106GW/cm2
図5にこのスクライブ後の断面を撮影した顕微鏡写真図を示す。図5からわかるように、このスクライブによるスクライブ深さは100μm程度であり、ガラス試料の板厚の50%程度となっている。
【0017】
なお、起点となる部位に2回以上のパルス照射を行ういわゆるドリリングを行った別の結果から、1回の照射における加工深さは、(特に焦点深度内の照射においては)概ね変化しないため、例えば板厚が0.2mmのガラスであれば1回の掃引によりスクライブ・ラインの形成が可能と考えられる。ただし、起点となる加工部位を確保しないと、掃引開始部分は十分な加工深さが得られない場合があるため、初めに2回以上のパルス照射、いわゆるドリリングを行って起点部位を形成し、その後掃引する方法とすることが望ましい。
一方、上述したように複数回の掃引を行う場合は、起点となる部位に2回以上のパルス照射によるドリリングを行う必要がなく、スクライブ・ラインを比較的簡単に形成することができるという利点を有する。
【0018】
また、偏光顕微鏡での観測では、特に顕著な屈折率分布は見られず、すなわち部分的に応力がかかっている部位は観察されなかった。
上記のスクライブ試料に対し、前述の図4に示す方法によりブレークしたガラス試料の断面を観察した顕微鏡写真図を図6A及びBに示す。図6Aにおいては、スクライブ・ラインの延長方向と直交する方向の断面を示し、図6Bにおいては、スクライブ・ラインの延長方向に沿う方向の断面を示す。図6A及びBから明らかなようにスクライブ部位には溶融痕等は全く観察されず、この実施形態例におけるスクライブ・ラインの形成には多光子吸収過程による非熱的な切断が実現されていることが確認できる。
【0019】
次にフッ酸処理後の様子を図7A及びBに示す。図7Aにおいては、スクライブ・ラインの延長方向と直交する方向の断面を示し、図7Bにおいては、スクライブ・ラインの延長方向に沿う方向の断面を示す。図7A及びBからもわかるように、顕著なマイクロ・クラックは観察されない。
これらの結果として、非熱的な加工プロセスを用いたスクライブでは、メカニカル・スクライブにあるような残留応力がないか、あるいは支障のない範囲でしかなく、また、多光子吸収過程の性質上、加熱急冷による熱歪み起因の課題が元々存在しないため、本質的にマイクロ・クラックを生じないか生じにくく、きわめて良好なガラスのブレークを簡単に行うことが可能であるといえる。
【0020】
〔2〕第2の実施形態例
次に、ピコ秒オーダーのパルス幅のパルスレーザによりガラスのスクライブを行う実施形態例について説明する。
この例においては、第1の実施形態例と同様に、上述の図1に示す構成のレーザ装置により、パルス幅が7psと60psの2種類の短パルスレーザ光を照射して、板厚が0.2mmのガラス試料に対するスクライブを行った。いずれのパルス幅の場合も同一箇所をそれぞれ5回掃引照射した。スクライブの照射条件は以下の通りである。
(1)パルス幅7psの場合
波長:800nm
パルス幅:7ps
対物レンズの開口数NA:0.1
繰り返し周波数:1kHz
掃引速度:235μm/s
掃引幅:7mm
静止状態のドリリング加工での加工しきい値エネルギー
:30μJ(フルエンス表記で40J/cm2)
加工エネルギー:40μJ(フルエンス表記で53.3J/cm2)
照射パワー密度:1.7×104GW/cm2
(2)パルス幅60psの場合
波長:800nm
パルス幅:60ps
対物レンズの開口数NA:0.1
繰り返し周波数:1kHz
掃引速度:235μm/s
掃引幅:7mm
静止状態のドリリング加工での加工しきい値エネルギー
:42μJ(フルエンス表記で56J/cm2)
加工エネルギー:90μJ(フルエンス表記で120J/cm2)
照射パワー密度:1.5×103GW/cm2
【0021】
この場合のスクライブ部位を観察した顕微鏡写真図を図8A及びB、図9A及びBに示す。図8A及びBはパルス幅を7psとした例であり、図8Aにおいては、スクライブ・ラインの延長方向と直交する方向の断面を示し、図8Bにおいては、フッ酸処理後のスクライブ・ラインの上面を示す。また、図9A及びBはパルス幅を60psとした例であり、図9Aにおいては、スクライブ・ラインの延長方向と直交する方向の断面を示し、図9Bにおいては、フッ酸処理後のスクライブ・ラインの上面を示す。
図8及び図9からわかるように、いずれのパルス幅においても20μm程度のスクライブ深さ(すなわち板厚の10%程度)が得られており、また、フッ酸処理後の観察においても、マイクロ・クラックのない、良好なスクライブが行われたことが確認される。
この場合はレーザ光の波長が800nmとガラス試料の吸収帯域から外れていること、また照射パワー密度が十分高いことから、上述の第1の実施形態例と同様に、多光子吸収過程が支配的であると考えられる。このため、パルス幅が60psと比較的長い場合においても、熱歪みの発生が抑制されているといえる。
同様の条件でパルス幅を伸長したところ、パルス幅100psとする場合においても上述の実施形態例と同様に熱歪みの発生が抑制されることが確認された。したがって、本発明においては、パルス幅を100ps以下とするものである。
【0022】
〔3〕メカニカル強度の比較検討
次に、メカニカル・スクライブによるガラス試料と、ピコ秒オーダーのパルス幅をもって短パルスレーザ光を照射したガラス試料に対し曲げ強度試験を試みた。ガラスの板厚は0.2mmである。図10にその結果示す。図10中nは試料のサンプル数を示す。ここで、短パルスレーザ光照射によるスクライブの照射条件は、
波長:800nm
パルス幅:57ps
対物レンズの開口数NA:0.1
繰り返し周波数:1kHz
掃引スピード:470μm/s
掃引幅:29mm
加工エネルギー:47μJ(フルエンス表記で47J/cm2)
照射パワー密度:約0.6TW/cm2
である。
図10からもわかるように、パルス幅がピコ秒オーダーのレーザによりスクライブを行う場合はメカニカル・スクライブとほぼ同等の曲げ強度と安定性を有していることがわかる。また、その強度ばらつきが小さいことから、スクライブ・ラインの形成プロセスが高い再現性を持って実現されているといえる。
【0023】
この場合、パルスレーザ照射によるスクライブでは、照射パルスのピーク・パワーが約0.6TW/cm2と比較的小さく、従って多光子吸収に寄与するエネルギーは比較的少ないが、寄与しなかったエネルギーは1光子では吸収がほとんどないため熱に変換されることなく試料を透過すると考えられる。つまり、熱歪みが発生しているとは考えにくい。
【0024】
また、ピコ秒オーダーのパルスレーザ照射によりガラス・スクライブを行った試料に対して曲げ試験を行い、破壊モードでの破損状態を調べた。この結果を図11A及びBに示す。図11Aはその観察写真図であり、図11Bはその破損状態を模式的に示す平面図である。図11からわかるように、この場合メカニカル・スクライブに近い破損状態を示しており、上述したように、ピコ秒オーダーのパルスレーザ照射による場合、スクライブ・ラインの形成に際し、熱歪みではなく、塑性変形に伴う残留応力が発生している可能性を示唆している。
ただし、実際に顕著な塑性変形があればマイクロ・クラックが発生するので、塑性変形を生じるレベルではなく、良好なメカニカル・スクライブを実現する手法による場合と同様の切断面が形成されていると考えられる。良好なメカニカル・スクライブを実現する手法とは、前述の非特許文献1より、ノコギリ刃状の刃先を利用したメカニカル・スクライブが挙げられる。
実際にピコ秒オーダーのパルスレーザを掃引したパルス列によるスクライブ後の試料の状態は非熱的な加工状態と認められ、ノコギリ刃状の刃先を試料上で走らせる機械的な加工によるスクライブ・ラインと極めて似ている。
このように考えると、100ps秒以下のピコ秒オーダーのパルスレーザによるスクライブを行ったガラスは、メカニカル・スクライブと同等程度の曲げ強度を有し、また、破壊モードにおける破損状態も似ていることは妥当なものと考えられる。曲げ強度の向上については、掃引スピードとパルスの繰り返し周波数の相対的な関係から、試料毎により最適な条件を見いだすことが可能である。
【0025】
〔4〕比較例
最後に、ガラスに対して吸収帯域の波長である短パルスレーザ光を照射してスクライブを行った比較例について説明する。スクライブの照射条件は以下の通りである。
波長:355nm
パルス幅:15ps
掃引速度:400nm
照射パワー:5.6W
図12は上述の条件によりガラス表面をスクライブした後HF処理を行った状態の試料の顕微鏡写真図を示す。横方向(すなわちガラスの表面に沿う水平方向)にひげ状のマイクロ・クラックが発生していることが分かる。
すなわちこの場合は、ガラスに対し吸収が生じる波長帯域の短パルスレーザ光を用いており、パルス幅が10psを超えることから、光を吸収して熱振動が伝わってしまい、熱歪みが発生しているものと思われる。
したがって、本発明において、短パルスレーザの波長がガラスに対して吸収帯域である場合においては、パルス幅を10ps以下とするものである。
【0026】
以上の結果から、本発明によれば、パルス幅が100ピコ秒以下の短パルスレーザ光照射によりスクライブを行うことにより、非接触の簡易な光学系をもって、メカニカル・スクライブ方法による場合と同等の良好なブレーク品質を確保することができる。また、メカニカル・スクライブによる場合に問題とされる塑性変形に伴う残留応力の影響を抑制ないしは回避することができる。
更に、本発明によれば、熱歪みの影響が原理的に存在しないため、CO2レーザを用いた従来の冷却を必要とする一般的なレーザ・スクライブ方法と比較すると、より安定なスクライブ品質をもってガラスのスクライブを行うことが可能である。またガラスに対して光吸収を生じる波長帯域の短パルスレーザ光を用いる場合は、パルス幅を10ps以下とすることによって、同様に熱歪みの影響を抑制ないしは回避することができる。
【0027】
すなわち、本発明のガラスのスクライブ方法においては、以下の効果が得られる。
(ア)従来の刃物による機械的手法による場合に問題となる微小な塑性変形に伴う残留応力や、CO2レーザを用いた従来のレーザによるスクライブ方法における熱歪みの発生をそれぞれ原理的に抑制ないしは回避できる。残留応力や熱歪みに起因する切断時における水平方向の微小なクラックの発生を未然に抑制ないしは回避し、垂直方向の溝形成のみを良好に行うことができる。
(イ)水平方向のクラックが発生すると曲げ強度を著しく低下させるので、上記(ア)に示すように、このような水平方向のクラックの発生を抑制ないし回避できる本発明によれば、安定なガラスの切断を実現し、また、切断したガラス基板に対して、安定的かつ十分な曲げ強度を提供することが可能である。
(ウ)上記(ア)〜(イ)の結果、非常に簡便かつ安定的なスクライブ手法を、ガラス試料に対して非接触な装置で実施できる。更に、冷却手段が不要であることから装置構成や条件を大きく簡素化できるため、安価な装置の提供が可能となる。
【0028】
なお、本発明のガラスのスクライブ方法は、上述の各実施形態例に限定されるものではなく、本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。また本発明方法を実施するレーザ装置としては、上述の図1及び図2に示すレーザ装置及びパルス伸長方法を採用する場合に限定されるものではなく、その他種々の構成のレーザ装置により実施可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法を実施するレーザ装置の一例の概略構成図である。
【図2】パルス伸長方法の説明図である。
【図3】A及びBは本発明の実施形態例に係るパルスレーザのパルス波形の一例を示す図である。
【図4】ガラスのブレーク方法の説明図である。
【図5】本発明の実施形態例によるガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料の断面図である。
【図6】A及びBは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料の断面の観察写真図である。
【図7】A及びBは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料のフッ酸処理後の観察写真図である。
【図8】Aは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料の断面の観察写真図である。Bは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料のフッ酸処理後の観察写真図である。
【図9】Aは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料の断面の観察写真図である。Bは本発明の実施形態例に係るガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料のフッ酸処理後の観察写真図である。
【図10】本発明の実施形態例及び比較例に係るガラス・スクライブ後の曲げ強度を示す図である。
【図11】A及びBは本発明の実施形態例に係るガラス・スクライブ後の破壊モードにおけるガラスの観察写真図及びその模式図である。
【図12】比較例によるガラスのスクライブ方法によるスクライブ後のガラス試料の断面の観察写真図である。
【符号の説明】
【0030】
1.レーザ光源、2.ミラー、3.再生増幅器、4.ポンプレーザ、5.コリメータ、10.光源ユニット、11.シャッター、12.パルスストレッチャー、13.NDフィルター、14〜16.ミラー、17.レンズ、18.ピンホール、19.レンズ、20.アフォーカル光学系、31.ミラー、32,33.ハーフミラー、34.対物レンズ、35.試料、36.3次元ステージ、37.照明光学系、40.顕微鏡光学系、51.ハーフミラー、52,53.グレーティング、54.ミラー、61.ガラス試料、62,63.支点、64.スクライブ部位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅が100ピコ秒以下の短パルスレーザ光をガラス表面に掃引照射することにより、前記ガラス表面に切断用の溝を形成する
ことを特徴とするガラスのスクライブ方法。
【請求項2】
前記短パルスレーザ光の波長が、前記ガラスに対し吸収する波長帯域であり、前記短パルスレーザ光のパルス幅を10ピコ秒以下とすることを特徴とする請求項1記載のガラスのスクライブ方法。
【請求項3】
前記短パルスレーザ光の照射パワー密度を1GW/cm2を超える照射構成とすることを特徴とする請求項1記載のガラスのスクライブ方法。
【請求項4】
前記短パルスレーザ光の波長が、前記ガラスに対し吸収する波長帯域とは異なる波長帯域であることを特徴とする請求項3記載のガラスのスクライブ方法。
【請求項5】
前記短パルスレーザ光の掃引照射の開始時に、2回以上のパルス照射を行ってスクライブの起点を形成した後、1回ないし複数回のパルスレーザ光の掃引照射を行うことを特徴とする請求項1記載のガラスのスクライブ方法。
【請求項6】
所定の長さに対して1回ないし複数回のレーザ掃引照射を繰り返して行うことを特徴とする請求項1記載のガラスのスクライブ方法。
【請求項1】
パルス幅が100ピコ秒以下の短パルスレーザ光をガラス表面に掃引照射することにより、前記ガラス表面に切断用の溝を形成する
ことを特徴とするガラスのスクライブ方法。
【請求項2】
前記短パルスレーザ光の波長が、前記ガラスに対し吸収する波長帯域であり、前記短パルスレーザ光のパルス幅を10ピコ秒以下とすることを特徴とする請求項1記載のガラスのスクライブ方法。
【請求項3】
前記短パルスレーザ光の照射パワー密度を1GW/cm2を超える照射構成とすることを特徴とする請求項1記載のガラスのスクライブ方法。
【請求項4】
前記短パルスレーザ光の波長が、前記ガラスに対し吸収する波長帯域とは異なる波長帯域であることを特徴とする請求項3記載のガラスのスクライブ方法。
【請求項5】
前記短パルスレーザ光の掃引照射の開始時に、2回以上のパルス照射を行ってスクライブの起点を形成した後、1回ないし複数回のパルスレーザ光の掃引照射を行うことを特徴とする請求項1記載のガラスのスクライブ方法。
【請求項6】
所定の長さに対して1回ないし複数回のレーザ掃引照射を繰り返して行うことを特徴とする請求項1記載のガラスのスクライブ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−331983(P2007−331983A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166328(P2006−166328)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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