説明

キナゾリン誘導体を含む組成物、その調製方法及び使用

薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩及び場合によって、医薬的に適用される担体または賦形剤を含む医薬組成物が提供される。前記組成物は、活性成分を分散及び/または保護するように機能する安定剤も含む。この組成物を含む医薬調製物、この組成物及び調製物を調製する方法、ならびに哺乳動物における異常erbBファミリーPTK活性を特徴とする障害の治療におけるそれらの使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物のerbBファミリーのタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)の異常活性に対して阻害効果を有するキナゾリン誘導体N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩を含む医薬組成物及び製剤、及びその調製方法に関する。本発明はまた、哺乳動物におけるerbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患を治療するための薬剤の製造における前記組成物の使用、及び前記疾患を治療するための前記組成物の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
PTKは、残基が細胞の増殖及び分化の制御に関与する様々なタンパク質の特定のチロシン残基のリン酸化を触媒する(A.F. Wilks、Progress in Growth Factor Research、1990年、1、97〜111頁;S.A. Courtneidge、Dev. Supp. L、1993年、57〜64頁;J.A. Cooper、Semin. Cell Biol.、1994年、5(6)、377〜387頁;R.F Paulson、Semin. Immunol.、1995年、7(4)、267〜277頁;A.C. Chan、Curr, Opin. Immunol.、1996年、8(3)、394〜401頁)。PTKの多くの不適当または無制御活性化(すなわち、異常PTK活性、例えば、過剰発現または突然変異)は、無制御細胞増殖をもたらし、したがって、多くの疾患を引き起こす。知られている疾患には、乾癬、関節リウマチ、気管支炎、及び癌、ならびに血管新生、アテローム性動脈硬化症、加齢性黄斑変性、糖尿病網膜症などの他の疾患が含まれる。現在、c-erbB-2、EGFr及びerbB-4を含むerbBファミリーは、治療標的として有用な一群のPTKであり、特に過剰増殖性疾患の治療において、特にヒトの悪性病理変化、例えば、非小細胞肺癌、膀胱癌、及び頭頚部癌の治療において潜在的効果を示す。さらに、増強されたc-erbB-2活性は、乳癌、卵巣癌、胃癌及び膵臓癌に関係する。したがって、erbBファミリーのPTKの阻害は、erbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患のための治療法を与える。erbBファミリーのPTKの生物学的作用ならびに様々な障害とその関係は、例えば、米国特許第5773476号、国際公開第99/35146号、M.C. Hungら、Seminars in Oncology、26:4、Suppl. 12(8月)1999年、51〜59頁;Ullrichら、Cell、61:203〜212頁、1990年4月20日;Modjitahediら、Int. J. of Oncology、13:335〜342頁、1998年;及びJ.R. Woodburn、Pharmacol. Ther.、82:2〜3、241〜250頁、1999年で検討されている。
【0003】
一部の文献には、PTK阻害剤及び/またはキナゾリン誘導体の点から関連技術が記録されている。例えば、国際公開第9630347号(中国特許出願第CN96102992.7号)は、過剰増殖性障害を治療するためのある4-(置換フェニルアミノ)キナゾリン誘導体に関係する。国際公開第9738983号(中国特許出願第CN97194458.X号)には、チロシンキナーゼの不可逆的阻害剤としての化合物が与えられている。国際公開第0006555号(中国特許出願第CN99808949.4号)には、一部の置換キナゾリン誘導体が、PTK阻害活性を有することが開示されている。国際公開第9935146号(中国特許出願第CN99803887.3号)には、PTK阻害剤として二環式ヘテロ芳香族化合物が開示されている。国際公開第2006071017号には、一連のキナゾリン化合物が開示されている。中国特許出願第CN01817895.2号、同第CN93103566.X号、同第CN98807303.X号、同第CN96193526.X号、同第CN01812051.2号、同第CN99803887.3号、同第CN200410089867.5号、及び同第CN0381739.8号、ならびに米国特許、例えば、米国特許第5521184号、米国特許第6894051号、米国特許第6958335号、米国特許第5457105号、米国特許第5616582号、米国特許第5770599号、米国特許第5747498号、米国特許第6900221号、米国特許第6391874号、米国特許第6713485号、米国特許第6727256号、米国特許第6828320号及び米国特許第7157466号ではすべて、複数の種類のキナゾリン化合物がPTK阻害活性を有することが述べられている。市販の薬物としては、FDA認可のLaptinib、Gefitinib、Erlotinib、Imatinibなどが挙げられる。このような薬物は、異なる適応症及び単に数種類の特定の腫瘍の治療を対象にしている。医学的診断及び治療法の水準の絶え間ない発展とともに、増殖性疾患、特に腫瘍の治療法は、ますます特定及び標的化され、したがって、増殖性疾患及び腫瘍に対して明らかに有効であり、かつ高度に標的化された製品に対する緊急の臨床的要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5773476号
【特許文献2】国際公開第99/35146号
【特許文献3】国際公開第9630347号
【特許文献4】国際公開第9738983号
【特許文献5】国際公開第0006555号
【特許文献6】国際公開第2006071017号
【特許文献7】中国特許出願第CN01817895.2号
【特許文献8】中国特許出願第CN93103566.X号
【特許文献9】中国特許出願第CN98807303.X号
【特許文献10】中国特許出願第CN96193526.X号
【特許文献11】中国特許出願第CN01812051.2号
【特許文献12】中国特許出願第CN99803887.3号
【特許文献13】中国特許出願第CN200410089867.5号
【特許文献14】中国特許出願第CN0381739.8号
【特許文献15】米国特許第5521184号
【特許文献16】米国特許第6894051号
【特許文献17】米国特許第6958335号
【特許文献18】米国特許第5457105号
【特許文献19】米国特許第5616582号
【特許文献20】米国特許第5770599号
【特許文献21】米国特許第5747498号
【特許文献22】米国特許第6900221号
【特許文献23】米国特許第6391874号
【特許文献24】米国特許第6713485号
【特許文献25】米国特許第6727256号
【特許文献26】米国特許第6828320号
【特許文献27】米国特許第7157466号
【特許文献28】中国特許出願第CN200610023526.7号
【特許文献29】国際公開第2007/082434号
【特許文献30】PCT/CN2008/000318
【特許文献31】中国特許出願第CN200810043189.7号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A.F. Wilks、Progress in Growth Factor Research、1990年、1、97〜111頁
【非特許文献2】S.A. Courtneidge、Dev. Supp. L、1993年、57〜64頁
【非特許文献3】J.A. Cooper、Semin.Cell Biol.、1994年、5(6)、377〜387頁
【非特許文献4】R.F Paulson、Semin. Immunol.、1995年、7(4)、267〜277頁
【非特許文献5】A.C. Chan、Curr, Opin. Immunol.、1996年、8(3)、394〜401頁
【非特許文献6】M.C. Hungら、Seminars in Oncology、26:4、Suppl. 12(8月)1999年、51〜59頁
【非特許文献7】Ullrichら、Cell、61:203〜212頁、1990年4月20日
【非特許文献8】Modjitahediら、Int. J. of Oncology、13:335〜342頁、1998年
【非特許文献9】J.R. Woodburn、Pharmacol. Ther.、82:2〜3、241〜250頁、1999年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
哺乳動物のPTKに対する阻害効果を有し、良好な生物学的特性及び良好な製剤適応性を有し、ならびに製剤工程の間の要件を満たし、高い生物学的利用能に加えて貯蔵安定性を有する医薬組成物の調製に有用である新規な化合物は疑いなく、erbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患の治療上の進展を加速し、緊急の臨床的要求を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人によって2006年1月20日に提出され、2007年7月25日に公開された中国特許出願第CN200610023526.7号において、及び2006年10月20日に提出され、2007年7月26日に公開されたPCT出願国際公開第2007/082434号において、本出願人は、式I:
【0008】
【化1】

【0009】
を有する一連のキナゾリン化合物を提示している。
【0010】
本出願人の集中的な研究及び探索により、その一連の化合物がPTK阻害活性を有することが明らかにされている。特に、式IIで示されるとおりのN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドは、erbB-2キナーゼに対して優れた阻害活性を有することが述べられている。実験により、これは、ヒト類表皮性扁平上皮癌細胞A431及びヒト乳癌細胞BT-474の増殖に対する顕著な阻害効果を有すること、ならびにヌードマウスに移植されたヒト類表皮性扁平上皮癌細胞A431に対して明らかな抗腫瘍効果を有することが実証されている。これら2つの出願は、参照により本明細書に全体的に組み込まれる。
【0011】
集中的で、広範な研究及び大量の試験後に、本出願人は、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩が、経口投与における本化合物の溶出率の問題を解決する非常に有益な特性を有することを発見した。2008年2月4日に提出したPCT/CN2008/000318において、本出願人は、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩形態を提示している。この出願は、参照により本明細書に全体的に組み込まれる。
【0012】
さらなる研究によって、本出願人は意外なことに、活性成分N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩に対して分散及び/または保護効果を有する安定剤を見出した。これらの安定剤は、本活性成分の製剤への適用性を増強し得るある高分子物質及び/または表面活性物質であり、その結果、本活性成分を含む医薬組成物は良好な製剤適応性を有し、その製剤の安定性を改善する。したがって、貯蔵の間に安定であり、高い生物学的利用能を有する医薬製剤が調製され、それにより、本発明は完成される。
【0013】
本発明は、活性成分として薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩、及び場合によって(必須ではなく)、薬学的に適用される担体または賦形剤(本明細書で補助物質とも称される)を含み、活性成分に対して分散及び/または保護効果を有する安定剤をさらに含み、安定剤対活性成分の重量比が、1:0.1〜1:10である医薬組成物を提供する。本発明はさらに、前記組成物及び薬学的に適用される担体または賦形剤を含む医薬製剤を提供する。前記組成物または製剤は、哺乳動物のerbBファミリーのタンパク質チロシンキナーゼのシグナル伝達に対する阻害、調節及び/または制御効果を有し、erbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患の治療に優れた治療上の効果及び安全性を示す。
【0014】
本出願人は、安定剤としての高分子物質及び/または表面活性物質が、製剤の安定性を改善し得ることを発見した。この安定剤は、担体または賦形剤中の活性成分の均一な分散を可能にする一方、その分散状態は、貯蔵の間に安定に維持することができ、これは医薬組成物/製剤の安定性に明らかに有利である。安定剤の存在により、分散の程度の変化により生じる活性成分の生物学的効力の変化が回避される。さらに、圧縮工程に関わる固体製剤の調製において、安定剤により、調製された製剤が良好な含量均一性を有するように単位製剤における活性成分の均一な分散が確保されるだけでなく、その当初の結晶形態を維持するように圧縮の間に活性成分が保護され、それによりパラメータの変化により生じる活性成分の生物学的効力の変化が回避される。さらに、安定剤の使用により、意外なことに、活性成分の溶出率が増加し、製剤の生物学的利用能が増強される。液体製剤の調製における安定剤の添加により、活性成分を溶媒で完全に湿らせ、したがって、溶媒中に十分に溶出及び分散させることを可能にし、それにより、活性成分の沈殿は回避されるだけでなく、液体製剤が均一及び安定な状態であるように、活性成分とさらなる医薬的許容される担体物質との適合性が増強される。このような状態は、かなり長期間継続することができ、組成物製品の貯蔵及び使用に益する。
【0015】
試験スクリーニングによって、本発明者らは、安定剤対薬理活性成分の重量比が1:0.1〜1:10であること、及び調製において安定剤を活性成分と最初に混合することが、優れた安定性をもたらし得ることを見出した。安定剤対薬理活性成分の好ましい重量比は、1:0.1〜1:5、特に好ましくは1:0.2〜1:2である。
【0016】
本発明はまた、前記医薬組成物及び製剤の調製方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、哺乳動物におけるerbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患を治療するための薬剤の製造における前記医薬組成物の使用を提供する。
【0018】
本発明はまた、erbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患、特に哺乳動物の腫瘍を治療する方法であって、薬理学的有効量の本発明の医薬組成物または製剤を個々の患者に、特に経口投与によって適用する段階を含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で用いられる場合、「医薬組成物」は、活性成分及び安定剤、ならびに場合による担体または賦形剤の共存の形態である。「医薬組成物」は、ある一定の物理的状態または形態に限定されないことが明記されるべきである。
【0020】
本明細書で用いられる場合、「erbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患」または「erbBファミリーの異常PTK活性により引き起こされる異常増殖を特徴とする疾患」には、当技術分野で認められた疾患、例えば、乾癬、関節リウマチ、気管支炎、及び癌が含まれる。疾患の種類はこれらの疾患に限定されないことが明記されるべきである。「チロシンキナーゼ介在」疾患及び障害、例えば、血管新生、アテローム性動脈硬化症、加齢性黄斑変性、糖尿病網膜症などはすべて、本発明による「erbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患」または「erbBファミリーの異常PTK活性により引き起こされる異常増殖を特徴とする疾患」によって対象とされる。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「腫瘍」及び「癌」は同じことを意味する。
【0022】
本明細書で用いられる場合、「治療有効量」と同じことを意味する「薬理学的有効量」という用語は、状態を改善するのに十分であり、投与中に重大な副作用を生じさせない活性化合物の量を指す。本発明において、その量は、本発明の医薬組成物または製剤が、PTK阻害剤による治療を必要としている大多数の患者に投与される場合、所望の薬理学的応答を生じさせる活性化合物の用量を指す。ある特定の状況下で、このような用量は経口用量を表すことがあり;別の特定の状況下で、このような用量は患者の血液中で測定される薬物レベルであることが理解されるべきである。治療される特定の個体または実験対象の場合、用量が当業者によって「治療有効量」と考える場合でさえ、その用量が、特定の個体において本明細書で述べられたそれらの疾患の治療に常に有効であり得ないことは説明される必要がある。これは、個体の特異性、ならびに種及び人種の差、さらに同じ人種の個体間の差を含む個体の差に関係する。
【0023】
本明細書で用いられる場合、「活性成分」、「活性化合物」及び「薬理活性成分」は同じことを意味し、本発明によるキナゾリン誘導体「薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩」を指し、これには、特に断りのない限り、その異なる結晶形態、異なる異性体及び水和物などが含まれる。
【0024】
前述の出願文献PCT/CN2008/000318に記載されたとおりの薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩には、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドと、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはイセチオン酸とで形成される塩が含まれるが、これらに限定されない。他の塩には、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのアミン塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム)塩、好ましくはN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのトルエンスルホン酸塩、塩酸塩、酒石酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、及びトリエチエルアミン塩、特に好ましくはN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドp-トルエンスルホン酸塩が含まれる。
【0025】
N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩は、その塩形成性化合物それ自体よりも優れた物理化学的特性を有する。例えば、水分吸収性の点で、この塩は、広範囲の湿度に曝露されても少量の水分を吸収するだけである。さらに、この化合物は、安定な結晶形態で存在することができ、したがって、薬剤としてより安定である。本出願人は、2008年3月25日に出願された中国特許出願第CN200810043189.7号においてN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態(結晶形態A、B及びC)の詳細な説明を与えている。この出願は、参照により本明細書に全体的に組み込まれる。
【0026】
N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩の3つの結晶形態は、本発明の医薬組成物の調製のために単独でまたは組み合わせて用いられ得る。
【0027】
本活性成分に対して分散及び/または保護効果を有する本発明の安定剤は主に、高分子物質及び界面活性剤物質、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポビドン、ドデシルスルホン酸ナトリウム、α化デンプン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、スルホコハク酸ジオクチル、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカント、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、レシチン、デキストラン、コレステロール、モノステアリン酸グリセロール、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルギン酸塩、キトサン及びポリリシン;好ましくは、圧縮性デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、ゼラチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、コロイド状二酸化ケイ素、ポロキサマー、キトサン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、及び微結晶セルロース;特に好ましくは、圧縮性デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、及びポロキサマーからなる群から選択される1種または複数の物質から選択される。
【0028】
安定剤対活性成分の重量比は、1:0.1〜1:10、好ましくは1:0.1〜1:5、特に好ましくは1:0.2〜1:2である。
【0029】
本発明の医薬組成物において、活性成分としての薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩は、組成物の全重量の0.1%〜90%を構成する。
【0030】
本発明の医薬組成物の調製において、通常、活性成分は、安定剤が分散及び/または保護の役割を果たすように、安定剤と完全に混合される。その後、得られた混合物は、場合による(すなわち、必須でない)薬学的に適用される担体または賦形剤と混合される。
【0031】
本発明の医薬組成物を用いて製剤化される特定の製剤において、安定剤の種類は、製剤における他の使用のための担体(補助物質)と同じものであってもよい。例えば、非限定的な例で、本発明の活性成分を含む錠剤は、圧縮性デンプンを含み、ここで、圧縮性デンプンの一部は、安定剤として、活性成分と混合され、圧縮性デンプンの残部は、その従来の使用のために、例えば、充填剤、崩壊剤、及び乾燥結合剤として作用する。
【0032】
本発明の医薬組成物は、製剤についての良好な能力、及び良好な安定性、ならびに高い生物学的利用能を有する。
【0033】
本発明の安定剤が用いられる場合、本発明の組成物は、従来の調製方法によって、薬学的に適用される担体または賦形剤を用いて、従来の医薬製剤、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、乳剤、懸濁剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、注射剤、坐剤、パッチ剤に製剤化され得る。
【0034】
本発明の組成物を用いて製剤化された医薬製剤において、安定剤対活性成分の重量比は、1:0.1〜1:10、好ましくは1:0.1〜1:5、特に好ましくは1:0.2〜1:2である。
【0035】
活性成分としての薬学的に許容される塩N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドは、本発明の組成物を用いて製剤化される医薬製剤の全重量の0.1〜90%、好ましくは0.1〜70%を構成する。
【0036】
本発明の医薬組成物は、液体製剤に製剤化することができ、ここで、薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩は、製剤の全重量に基づいて、0.1重量%〜50重量%の量で存在し、担体には以下の物質:溶剤、pH調整剤、等張性調整剤、香味剤、臭気隠蔽剤、着色剤、保存剤、及び酸化防止剤の1種または複数が含まれ、安定剤対活性成分の重量比は、1:0.1〜1:5、好ましくは1:0.1〜1:2、特に好ましくは1:0.2〜1:2である。この液体製剤は、経口製剤であってもよい。
【0037】
溶媒は、水、グリセロール、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、C1〜C6脂肪アルコール、及び脂肪油からなる群から選択される1種または複数であり得る。医薬組成物は、例えば、懸濁剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤などを含む、経口投与のための液体剤形に製剤化され得る。表面活性を有する、または液体中(溶媒としての)で均一もしくは不均一液体に分散し得る高分子物質は通常、安定剤、例えば、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、スルホコハク酸ジオクチル、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカント、レシチン、デキストラン、コレステロール、モノステアリン酸グリセロール、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、キトサン、ポリリシンなどとして選択される。選択される溶剤は、例えば、生理学的に許容される溶剤:蒸留水、生理食塩水、生理学的に許容される濃度のエタノール溶液などである。安定剤対活性成分の重量比は、好ましくは1:0.1〜1:10、特に好ましくは1:0.1〜1:5、とりわけ好ましくは1:0.2〜1:2である。
【0038】
本発明の経口液体製剤の実施形態において、製剤中の、薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩である薬理活性成分の重量パーセントは、好ましくは0.1%〜50%、さらに好ましくは0.5%〜30%、より好ましくは0.5%〜20%である。安定剤対活性成分の重量比は、好ましくは1:0.1〜1:5、より好ましくは1:0.2〜1:2である。
【0039】
本発明の医薬製剤の経口液体形態の別の実施形態において、製剤の重量に基づいて、薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩は、0.5重量%〜20%重量の量で存在し;安定剤は、2.5重量%〜30重量%の量で存在し;保存剤は、0.1重量%〜10重量%の量で存在し;酸化防止剤は、0.1重量%〜10重量%の量で存在し、溶媒は、30重量%〜90重量%の量で存在する。
【0040】
上記実施形態の1つにおいて、安定剤はポロキサマー188であり、他の担体には、酸化防止剤として亜硫酸ナトリウム、保存剤としてパラ-ヒドロキシ安息香酸エチル、ならびに溶媒としてグリセロール及び蒸留水が含まれる。
【0041】
液体製剤の調製において、最初に、安定剤は活性成分と混合される。その後、少量の溶剤が添加及び混合される。均一な混合物が得られた後に、製剤は従来の方法で調製される。
【0042】
医薬組成物は、例えば、経口投与され得る錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤及び乾燥懸濁剤を含む、経口投与のための経口固体製剤に製剤化することもでき、以下の物質が通常、安定剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポビドン、圧縮性デンプン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、スルホコハク酸ジオクチル、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカント、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、レシチン、デキストラン、コレステロール、モノステアリン酸グリセロール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルギン酸塩、キトサン及びポリリシンなどとして選択される。安定剤対活性成分の重量比は、好ましくは1:0.1〜1:10、特に1:0.5〜1:5、とりわけ好ましくは1:0.5〜1:2である。経口固体製剤の調製において、活性成分及び安定剤は最初に均一に混合され、その後、他の担体または賦形剤と混合される。
【0043】
経口固体製剤の調製において、本発明の組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む。担体には、以下:充填剤、崩壊剤、湿潤剤、結合剤、滑沢剤、香味剤、臭気隠蔽剤、及び着色剤の1種または複数が含まれる。前記充填剤は、デンプン、デキストリン、ショ糖、乳糖、フルクトース、グルコース、キシリトール、マンニトール、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される1種または複数である。崩壊剤は、デンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびに沸騰性崩壊剤(炭酸水素ナトリウム及びクエン酸から形成される混合物など)からなる群から選択される1種または複数であり得る。湿潤剤は、蒸留水、エタノール、またはそれらの組合せから選択され得る。結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプンスラリー、デキストリン、グルコース及びその糖液、ショ糖及びその糖液、乳糖及びその糖液、フルクトース及びその糖液、ソルビトール、ゼラチン粘液、アラビアゴム粘液、トラガカント粘液、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される1種または複数であり得る。滑沢剤は、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、タルク、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ドデシル硫酸マグネシウム、PEG4000、PEG6000、及びステアリルフマル酸ナトリウムからなる群から選択される1種または複数であり得る。もちろん、担体はこれらの種類に限定されない。固体医薬組成物の調製に通常用いられるいずれの添加物も、活性成分の特性及び特定の製剤工程に適する限り、本発明の経口固体組成物に含めることができる。
【0044】
好ましくは、経口固体製剤において、活性成分は、固体製剤の全重量に基づいて、1重量%〜50重量%、さらに好ましくは5重量%〜50重量%、より好ましくは10重量%〜30重量%の量で存在する。安定剤対活性成分の重量比は、1:0.5〜1:10、好ましくは1:0.5〜1:5、より好ましくは1:0.5〜1:2である。錠剤の形態における本発明の医薬製剤の実施形態において、安定剤は、圧縮性デンプンであるように選択され、担体物質の残部には、充填剤としての圧縮性デンプン及び微結晶セルロース;崩壊剤として架橋ポリビニルピロリドン;ならびに滑沢剤としてのステアリン酸及び/またはタルクが含まれる。より具体的には、錠剤の形態の医薬製剤は、製剤の重量に基づいて、10重量%〜30重量%の量の薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩、5重量%〜60重量%の量の安定剤としての圧縮性デンプルを含み、製剤中の担体の残部は、製剤の重量に基づいて、10重量%〜50重量%の量の充填剤圧縮性デンプン、5重量%〜60重量%の量の微結晶セルロース、2重量%〜15重量%の量の架橋ポリビニルピロリドン、0重量%〜10重量%の量のステアリン酸、及び0重量%〜5重量%の量のタルクである。
【0045】
錠剤の形態における本発明の医薬製剤の別の実施形態において、安定剤は、ポロキサマー188であるように選択され、他の担体には、充填剤として微結晶セルロース;崩壊剤として架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム;及び滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムが含まれる。より具体的には、製剤は、製剤の重量に基づいて、5重量%〜15重量%の薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩、2.5重量%〜50重量%のポロキサマー188、2重量%〜60重量%の微結晶セルロース、5重量%〜25重量%の架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び3重量%〜10重量%のステアリン酸マグネシウムを含む。医薬組成物はまた、他の手法による投与のための製剤、例えば、経口投与用ではない液体製剤、例えば、注射用のもの(静脈内注射、筋内注射または腫瘍内注射など)に製剤化することができ、表面活性を有する安定剤、例えば、アラビアゴム、トラガカント、レシチン、デキストラン、コレステロール、モノステアリン酸グリセロール、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、アルギン酸塩等が選択される。適用される担体または賦形剤には、注射用水、生理食塩水、生理学的に許容される非毒性の不揮発性油が含まれる。活性成分は、製剤の重量に基づいて、0.1〜90重量%、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは0.5重量%〜30重量%の量で存在し得る。
【0046】
医薬製剤は、局所投与のための剤形、例えば、ローション剤、クリーム剤、及びゲル剤などとして製剤化され得る。直腸または他の腔に投与される坐剤は、活性成分を適切な非刺激性添加剤、例えば、ココアバターまたはポリエチレングリコールと混合することによって調製され得る。添加剤は、室温で固体であり、腸内で液体に融解し、それにより活性成分を直腸に放出する。
【0047】
調製及び投与の便宜のために、好ましい医薬組成物は、固体状態にある組成物、特に錠剤、及び固体で充填されたカプセルでの組成物である。投与の便宜のために、経口投与が好ましい。重度の患者による使用を容易にするために、生物学的利用能を改善するために、及び薬物吸収を加速するために、好ましい医薬組成物は、注射剤及び経口液体製剤を含む液体製剤である。さらに好ましい医薬組成物は、経口液体製剤である。本発明による薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩及び安定剤を含む経口液体製剤は、良好な安定性及び均一性の両方を有する。
【0048】
本発明の医薬組成物は、癌の治療のための薬剤中に他の抗癌薬理活性成分と組み合わせて製剤化され得る。他の抗癌薬理活性成分には、シスプラチン、5-FU、ビンクリスチン、タキソール、及び抗腫瘍抗生物質が含まれる。
【0049】
単位形態の本発明の医薬製剤は、重量で10mg〜1,000mgの活性成分を含む。さらに、本組成物または製剤は、重量で10mg、30mg、40mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mgまたは1,000mgの本薬理活性成分を含む。
【0050】
医薬的使用
本発明の医薬組成物は、erbBファミリーのチロシンキナーゼのシグナル伝達を阻害、調節及び/または制御するために有用である。
【0051】
具体的には、本発明の医薬組成物は、薬理学的有効量の薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩を含む医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるerbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患の治療において有用である。
【0052】
本明細書で用いられる場合、erbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患には、当技術分野でよく知られている疾患、例えば、乾癬、関節リウマチ、気管支炎、癌、血管新生、アテローム性動脈硬化症、加齢性黄斑変性、糖尿病網膜症など;乳癌、非小細胞性癌、卵巣癌、胃癌、結腸癌、膵臓癌及び類表皮性扁平上皮癌を含む哺乳動物の腫瘍、特にerbB-2の高い発現を有する肺癌、卵巣癌及び乳癌が含まれる。
【0053】
本発明の医薬組成物は、erbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする腫瘍の治療において、他の薬物と組み合わせて、特に、シスプラチン、5-FU、ビンクリスチン、タキソール、及び抗腫瘍抗生物質などと組み合わせて用いることができる。
【0054】
本発明によるPTK阻害活性を有する薬学的に許容されるキナゾリン誘導体N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩の有効投与量は、投与手法及び治療される疾患の重症度とともに変わり得る。研究によって、個体に投与される本活性化合物の0.5mg〜2,000mgの1日投与量、さらにより良くは、2〜4回のための分割1日投与量、または持続放出型により投与される1日投与量が、満足する結果をもたらすことがわかった。大多数の大きな哺乳動物について、総1日投与量は5mg〜2,000mgである。好適な経口1日投与量は、100mg〜2,000mgであり、非経口1日投与量について5mg〜2,000mgである。当然、この投与レジメンは、最適な治療応答を与えるために個々の状況に応じて調節を受ける。
【0055】
本発明の医薬組成物は、製剤のための良好な能力、ならびに物理的及び化学的安定性を有する。それは経口投与に好都合であり、生物学的利用能に優れ、臨床治療に非常に適する。薬理学的実験により、本組成物が、哺乳動物の腫瘍の治療などの、erbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患の治療に用いられる場合、顕著な腫瘍阻害効果、低い毒性及び副作用、ならびにより安全性を有することが示された。
【0056】
実施形態
本発明は、以下の実施例によりさらに説明される。これらの実施例は、本発明を例証することが意図されるが、その範囲を限定することは意図されないことが理解されるべきである。特定の条件が示されない以下の実施例における実験的方法に関しては、従来の条件またはその製造業者により示唆される条件に従う。
【0057】
(I)化合物の調製
【実施例1】
【0058】
N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの調製
段階A:4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-6-ニトロ-キナゾリンの調製
1.20g(5.7mmol)の4-クロロ-6-ニトロ-キナゾリン(国際公開第2007/082434号を参照して調製した)及び1.37g(5.6mmol)の4-(3-フルオロベンジルオキシ)-3-クロロ-アニリン(国際公開第2007/082434号を参照して調製した)を80mLのイソプロパノールに溶出させ、3時間還流させた。大量の黄色の固体をこの系から沈殿させ、ろ過した。ろ過ケーキをpH=8まで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、真空下で乾燥させ、1.62g(3.75mmol)の黄色の固体を得て、これを4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-6-ニトロ-キナゾリンと同定し、収率は67%であった。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ 11.30 (1H, br)、9.54〜9.48 (1H, m)、8.45〜8.41 (1H, m)、8.31〜8.25 (1H, m)、7.98〜7.89 (1H, m)、7.50〜7.47 (1H, m)、7.35〜7.26 (1H, m)、7.05〜6.96 (1H, m)、6.90〜6.80 (2H, m)、7.74〜7.60 (2H, m)、4.84 (2H, s)。
【0059】
段階B:4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-6-アミノ-キナゾリンの調製
還流コンデンサーを備えたフラスコに、1.60g(3.77mmol)の段階Aによって調製した化合物4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-6-ニトロ-キナゾリン、1.05g(18.85mmol、5当量)の還元Fe粉末、2mLの氷酢酸及び40mLのメタノールを添加し、温度85℃で油浴中2.5時間還流させた。Fe粉末をろ過により除去した。ろ液を酢酸エチルで希釈し、炭酸水素ナトリウム溶液及び水で連続的に洗浄した。有機相を乾燥濃縮し、900mg(2.28mmol)の黄色の固体を得て、この化合物を4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-6-アミノ-キナゾリンと同定し、収率は61%であった。
1H-NMR (400MHz, DMSO): δ 9.32 (1H, s)、8.31 (1H, s)、8.04 (1H, d, J=2.64Hz)、7.73 (1H, dd, J=2.64Hz, 8.80Hz)、7.54〜7.43 (2H, m)、7.36〜7.28 (3H, m)、7.26〜7.14 (3H, m)、5.57 (2H, br)、5.27 (2H, s)。
【0060】
段階C:N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの調製
氷浴で冷却したフラスコに、1.2g(3.04mmol)の段階Bによって調製した4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-6-アミノ-キナゾリン、0.6mL(4.58mmol、1.5当量)のトリエチルアミン、0.28mL(3.33mmol、1.1当量)の塩化アクリロイル及び40mLのTHFを添加した。この反応温度は室温にゆっくり上昇した。3時間後に、反応を停止させた。得られた混合物をろ過し、ろ過ケーキを中性まで水で洗浄し、乾燥させ、1.0g(2.23mmol)の黄色の固体を得て、この化合物をN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドと同定し、収率は67%であった。MS:449。融点:222〜225℃。
1H-NMR (400MHz, CDCl3+DMSO): δ 8.75 (1H, s)、8.60〜8.52 (2H, m)、7.81 (1H, d, J=2.44Hz)、7.69 (2H, s)、7.54 (1H, dd, J=2.56Hz, 8.92Hz)、7.30〜7.22 (2H, m)、7.18〜7.08 (2H, m)、6.96〜6.86 (2H, m)、6.37 (2H, d, J=5.86Hz)、5.67 (1H, t, J=5.86Hz)、5.06 (2H, s)。
【実施例2】
【0061】
N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態Aの調製
3g(6.68mmol)の実施例1の方法によって調製した化合物N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドを、テトラヒドロフラン及びメタノール(THF/CH3OH=1/1、50mL)の混合物中に溶出させ、テトラヒドロフラン及びメタノール(THF/CH3OH=1/1)の混合物中p-トルエンスルホン酸(6当量、7.62g)の溶液38mLをこの系にゆっくりと滴下し、次いで、この添加の間にこの系から大量の黄緑色の固体をゆっくりと沈殿させた。この固体をろ過し、ろ過ケーキを水で洗浄し、真空下で乾燥させて、黄緑色の結晶粉末として2.93gの表題化合物を得て、収率は70%であった。融点:245℃。
【0062】
X線粉末回折測定(RIGAKUD/MNX2550VB/PC X線回折計):高強度ピークを、値5.92±0.10、8.64±0.10、11.86±0.10、16.58±0.10、16.94±0.10、17.86±0.10、19.12±0.10、19.66±0.10、20.12±0.10、23.42±0.10、24.14±0.10、24.80±0.10、26.76±0.10の回折角2θ(°)で同定する。
【実施例3】
【0063】
N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態Bの調製
3g(4.84mmol)の実施例2の方法によって調製したN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態Aを、テトラヒドロフラン及び水(THF/H2O=4/1、70mL)の混合物に添加し、得られた混合物を65℃の温度にゆっくりと上昇させ、この温度を20分間連続的に保持し、次いで、室温にゆっくりと冷却し、次いで、2℃で16時間静置した。得られた混合物をろ過し、ろ過ケーキを水で洗浄し、真空下で乾燥させ、浅黄色の結晶粉末として1.68gの表題化合物を得て、収率は56%であった。融点:235.4℃。
【0064】
X線粉末回折測定(RIGAKUD/MNX2550VB/PC X線回折計):高強度ピークを、値4.72±0.10、17.04±0.10、19.32±0.10、24.12±0.10の回折角2θ(°)で同定する。
【実施例4】
【0065】
N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態Cの調製
3g(4.84mmol)の実施例2または3の方法によって調製したN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態Aを、テトラヒドロフラン及び水(THF/H2O=3/1、60mL)の混合物中に添加した。この系に、テトラヒドロフラン及びメタノール(THF/CH3OH=2/1)の混合物中p-トルエンスルホン酸(6当量、7.62g)の溶液38mLをゆっくりと滴下し、次いで、この添加の間にこの系から大量の黄色の固体をゆっくりと沈殿させた。この固体をろ過し、ろ過ケーキを水で洗浄し、真空下で乾燥させ、黄色の結晶粉末として2.85gの表題化合物を得て、収率は95%であった。融点:244℃。
【0066】
X線粉末回折測定(RIGAKUD/MNX2550VB/PC X線回折計):高強度ピークを、値3.40±0.10、6.82±0.10、7.58±0.10、11.30±0.10、14.84±0.10、15.24±0.10、17.28±0.10、17.86±0.10、18.34±0.10、20.32±0.10、22.96±0.10、23.50±0.10、24.12±0.10、24.62±0.10、25.86±0.10の回折角2θ(°)で同定する。
【0067】
(II)薬理学的効果の試験
本発明者らは、モデル薬物としてN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩を用いて、一連の化合物のインビボでの哺乳動物の吸収及び薬理学的効果を試験した。詳細について以下の実施例を参照されたい。
【実施例5】
【0068】
SDラット(スプラーグドーリー(Sprague Dawley)ラット)における薬物吸収試験
胃内投与(ig):16匹の健常SDラット(Shanghai Super-B&K Laboratory Animal Corp. Ltd.、グレードSPF)(雄、体重200〜250g、4群に無作為分配)を、それぞれ以下の薬物で胃内投与した:実施例1によって調製した化合物(21.68mg/kg)、前記化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態A、結晶形態B、または結晶形態C(30mg/kg)を用いて胃内投与した。その血液試料を、投与後0.5時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、3.0時間、5.0時間、7.0時間、9.0時間、12時間、及び24時間に収集し、次いで、これらを単離して血漿を調製した。この血漿中の薬物の濃度を液相クロマトグラフィー/タンデム質量分析計(Agilent 1200LC/6410B)によって決定し、濃度-時間曲線を得た。
【0069】
主な薬物動態学的パラメータをTable 1(表1)に示す:
【0070】
【表1】

【0071】
静脈内注射(iv):4匹の健常SDラット(雄、体重200〜250g)に、実施例1の化合物のp-トルエンスルホン酸塩で静脈内投与した(5mg/kg)。その血液試料を、投与後5分、15分、0.5時間、1.5時間、2.0時間、3.0時間、4.0時間、5.0時間及び7.0時間に収集し、次いで、これらを単離して、血漿を調製した。血漿中の薬物の濃度を液相クロマトグラフィー/タンデム質量分析計によって決定し、濃度-時間曲線を得た。主な薬物動態学的パラメータをTable 2(表2)に示す:
【0072】
【表2】

【0073】
投与量較正後のAUC0〜tの計算によって、igで投与した実施例1の化合物、結晶形態A、結晶形態B及び結晶形態Cのそれぞれの絶対生物学的利用能は、それぞれ、0.95%、8.75%、8.76%、及び5.17%である。
【実施例6】
【0074】
BALB/cAヌードマウスに移植されたヒト類表皮性扁平上皮癌細胞A431に対する腫瘍阻害効果
十分に発達した固形腫瘍A431を選択し、滅菌条件下で2〜3mmの大きさを有する数個の均一な断片に切開し、一断片を、トロカールを用いてBALB/cAヌードマウスのそれぞれの右腋窩に皮下移植した。移植7日後に、マウスを無作為に群分けし、連続13日間、口を通して胃内投与した。腫瘍の長軸(a)及び短軸(b)を4日毎にノギスで測定した。式V=ab2/2によって、腫瘍の容積(mm3)を計算することができた。試験動物を移植23日後に頚を切り離して屠殺し、解剖して、腫瘍を得た。この腫瘍を秤量し、腫瘍阻害率を計算した。
【0075】
結果を以下のTable 3(表3)に示し、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]-キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩が腫瘍に対して顕著な阻害効果を有することがわかった。
【0076】
【表3】

【実施例7】
【0077】
BALB/cAヌードマウスに移植されたヒト卵巣癌SKOV-3に対する腫瘍阻害効果
盛んな増殖期間中のSKOV-3腫瘍組織を選択し、約1.5mm3の大きさの均一な断片に切開し、これを滅菌条件下でトロカールを用いてBALB/cAヌードマウス(Shanghai Institute of Materia Medica、Chinese Academy of Sciences、グレートSPF)の右腋窩に皮下移植した。ヌードマウス上の移植腫瘍の直径を、ノギスで測定した。腫瘍が80〜100mm3の大きさに増殖したときに、この動物を無作為に群分けした。この試験動物群に、連続3週間、1日1回上述したとおりに口を通して胃内投与した。陽性対照薬物MMC(Mitomycin)を5mg/kgの用量(0.9%滅菌塩化ナトリウム溶液)で第1日目に1回静脈内投与した。陰性対象群に、0.2mL/マウス1匹の用量で0.5%CMC-Na(カルボキシメチルセルロース-ナトリウム)を投与した。腫瘍の長軸(a)及び短軸(b)を週毎に2回測定し、同時にそのヌードマウスを秤量した。式V=ab2/2によって、腫瘍の容積(mm3)を計算することができた。相対腫瘍容積(RTV)は、測定結果から計算した[式:RTV=Vt/V0 (ここで、V0は、投与の群分け時の後に測定した腫瘍容積であり、Vtは、それぞれの時間に測定した腫瘍容積である)による]。相対腫瘍増殖率T/C(%)は、式:
T/C(%)=(TRTV/CRTV)×100
(TRTV:処理群のRTV;CRTV:陰性対照群のRTV)
で計算した、抗腫瘍活性の評価の指数として選択した。
【0078】
有効性を評価するための基準:60%を超えるT/C(%)は有効でないことを意味し、60%以下のT/C(%)は有効であることを意味する。
【0079】
結果を以下のTable 4(表4)に示し、本化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態Aが、腫瘍に対して顕著な阻害効果を有することがわかった。
【0080】
【表4】

【0081】
BALB/cAヌードマウスに移植されたヒト類表皮性扁平上皮癌細胞A431は、EGFR(erbB-1)の高い発現を有する動物モデルであり、BALB/cAヌードマウスに移植されたヒト卵巣癌SKOV-3は、erbB-2の高い発現を有する動物モデルである。実験結果により、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩が、これらの2つのモデルの腫瘍増殖に対して顕著な阻害効果を有することがわかった。
【0082】
(III)安定性の試験
本出願人は、本発明のN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩の安定性を試験した。
【実施例8】
【0083】
高温での安定性の試験
少量の本化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態Aを取り、60℃の高温環境で1カ月間貯蔵し、結晶形態Aの純度を、0日目、10日目及び30日目に検出し、それにより結晶形態Aの熱的安定性を推定した。結晶形態B及びCの熱的安定性を同様の手法で得た。実験結果をTable 5(表5)に示す。
【0084】
【表5】

【0085】
上記実験結果により、60℃の高温環境で貯蔵した場合、結晶形態A及びBの純度はほとんど同じに維持されたが、結晶形態Cの純度はわずかに低下したことがわかった。これにより、本発明の結晶形態A及びBは優れた熱的安定性を有し、結晶形態Cは良好な熱的安定性を有することが実証される。
【実施例9】
【0086】
光安定性の試験
少量の本化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態Aを取り、強度45001x±5001xでの照明環境下で1カ月間貯蔵した。結晶形態Aの純度を、0日目、10日目及び30日目に検出し、それにより、結晶形態Aの光安定性を推定した。結晶形態B及びCのそれぞれの光安定性を同じ手法で得る。実験結果をTable 6(表6)に示す。
【0087】
【表6】

【0088】
上記実験結果により、強度4500lx±500lxでの照明環境下で、結晶形態Bの純度はほとんど同じに維持されたが、結晶形態A及びCの純度はわずかに低下したことが示された。これにより、本発明の結晶形態Bは優れた光安定性を有し、結晶形態A及びCは良好な光安定性を有することが実証された。
【0089】
上記実験結果により、強度4500lx±500lxでの照明環境下で、結晶形態Bの純度はほとんど同じに維持されたが、結晶形態A及びCの純度はわずかに低下したことがわかる。これにより、本発明の結晶形態Bは優れた光安定性を有し、結晶形態A及びCは良好な光安定性を有することが実証される。
【実施例10】
【0090】
吸湿性の試験
少量の本化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態Aを取って、湿度92.5%の非常に湿度の高い環境に1カ月間貯蔵し、結晶形態Aの純度を、0日目、10日目及び30日目に検出し、それにより、結晶形態Aの吸湿性を推定した。結晶形態B及びCの吸湿性を同じ手法で得た。実験結果をTable 7(表7)に示す。
【0091】
【表7】

【0092】
上記実験結果により、湿度92.5%の非常に湿度の高い環境で、結晶形態A及びBの純度はほとんど同じに維持されたが、結晶形態Cの純度はわずかに低下したことがわかる。これにより、非常に湿度の高い環境で、本発明の結晶形態A及びBが非常に安定であり、結晶形態Cがかなり安定であることが実証される。
【0093】
上記実験結果により、本発明の結晶形態が、高温、光放射または高い湿度の環境でかなり安定であることがわかる。
【0094】
(IV)製剤適合性の試験
患者に適用される医薬組成物は、ある特定の製剤形態を有しなければならない。本出願人は、薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩の製剤適用性を試験した。
【0095】
活性成分としての薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩は、担体または賦形剤に均一に分散させることが難しく、到達可能分散限度で再凝集する傾向がある。さらに、本活性成分の結晶形態は、製剤調製の間の圧縮工程、例えば、圧迫造粒または錠剤化の工程の存在下で変化を受け得る。
【0096】
本発明において、本出願人は、薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩、本活性成分に対して分散及び/または保護効果を有する安定剤を含む医薬組成物を提供する。安定剤の添加により意外なことに、製剤中の薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩の溶出率の増加の利益が得られ、それによりその生物学的利用能が増強された。
【0097】
本発明による医薬組成物の製剤の処方及び調製は、以下にさらに例証される。以下の実施例の処方において、薬学的に許容されN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩は、APIで表し、処方中のそれぞれの成分はグラム単位である。
【実施例11】
【0098】
N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩を含む錠剤
錠剤の比較例
処方:
API、混合結晶形態 100
α化デンプン 400
微結晶セルロース 300
架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム 150
ステアリン酸 20
タルク 30
------------------------------------------------------------------------
全重量 1000
【0099】
調製:APIを処方中の補助物質と完全に混合し、錠剤に圧縮した(1,000錠)。
【0100】
錠剤の実施例
錠剤処方1
API、混合結晶形態 100
α化デンプン(A) 100

α化デンプン(B) 300
微結晶セルロース 300
架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム 150
ステアリン酸 20
タルク 30
------------------------------------------------------------------------
全重量 1000
【0101】
調製: APIが均一に分散するように、APIをα化デンプン(A)と完全に混合し、それにα化デンプン(B)及び微結晶セルロースを添加し、完全に混合した;この混合物を、80メッシュ篩を通過させ、補助物質の残部を添加し、均一に混合し、60〜70Nの範囲に制御された剛性の錠剤に直接圧縮した(1,000錠)。
【0102】
錠剤処方2
API、結晶形態A 500
キトサン 250

微結晶セルロース 200
架橋ポリビニルピロリドン 20
ステアリン酸 20
タルク 10
------------------------------------------------------------------------
全重量 1000
【0103】
調製: APIが均一に分散するように、APIをキトサンと完全に混合し、それに補助物質の残部を添加し、均一に混合し、60〜70Nの範囲に制御された剛性の錠剤に直接圧縮した(1,000錠)。
【0104】
錠剤処方3
API、結晶形態B 200
α化デンプン 200

微結晶セルロース 400
架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム 100
ステアリン酸 80
タルク 20
-----------------------------------------------------------------------
全重量 1000
【0105】
調製: APIが均一に分散するように、APIをα化デンプンと完全に混合し、それに補助物質の残部を添加し、均一に混合し、濃度70%のエタノールを添加し、湿式造粒を行った;得られたものを乾燥させ、造粒し、60〜70Nの範囲に制御された剛性の錠剤に圧縮した(1,000錠)。
【0106】
錠剤処方4
API、結晶形態C 50
コロイド状二酸化ケイ素 25

無水乳糖 600
架橋ポリビニルピロリドン 150
ステアリン酸 60
タルク 40
-----------------------------------------------------------------------
全重量 925
【0107】
調製:APIが均一に分散されるように、APIをコロイド状二酸化ケイ素と完全に混合し、それに補助物質の残部を添加し、均一に混合し、60〜70Nの範囲に制御された剛性の錠剤に直接圧縮した(1,000錠)。
【0108】
錠剤処方5
API、結晶形態B 250
ポロキサマー188 240

微結晶セルロース 400
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 10
ステアリン酸 100
-----------------------------------------------------------------------
全重量 1000
【0109】
調製:APIが均一に分散するように、APIをポロキサマー188と完全に混合し、それに補助物質の残部を添加し、均一に混合し、60〜70Nの範囲に制御された剛性の錠剤に直接圧縮した(1,000錠)。
【0110】
これらの得られた錠剤のすべてを、剛性、含量範囲、崩壊時間及び溶出率に関して測定した。溶出率は以下の試験条件で測定する:試験液:1.2mmol/LのNaOHを含む3%ドデシルスルホン酸ナトリウム溶液900ml;溶出条件;37℃、100rpm;紫外分光光度計(Shimadzu UV-2450)により246nmで試料を測定し;標準曲線を作成し、試料の含量及び溶出率を計算する。
【0111】
上述の処方から調製した錠剤の剛性、崩壊時間及び溶出率の測定結果を以下のTable 8(表8)に記載する(溶出率のすべては、45分におけるものである)。錠剤は、製剤について良好な能力を有することが理解できる。
【0112】
【表8】

【0113】
上述の処方で調製した錠剤の安定性を、中国薬局方に規定された方法で加速条件下及び室温下で試験した。3カ月間の加速条件下及び3カ月間の室温下での安定性試験の結果を、以下のTable 9(表9)に示す。調製した製剤が安定であることが理解できる。
【0114】
【表9】

【実施例12】
【0115】
N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミド塩酸塩を含む錠剤
錠剤の比較例
処方:
API 100
α化デンプン 400
微結晶セルロース 300
架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム 150
ステアリン酸 20
タルク 30
-----------------------------------------------------------------------
全重量 1000
【0116】
調製:APIを処方中の補助物質と完全に混合し、錠剤に圧縮した(1,000錠)。
【0117】
錠剤の実施例
錠剤処方1
API 100
ヒドロキシプロピルセルロース 100

微結晶セルロース 300
スプレー乾燥乳糖 300
架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム 150
ステアリン酸 20
タルク 30
-----------------------------------------------------------------------
全重量 1000
【0118】
調製:APIが均一に分散するように、APIをヒドロキシプロピルセルロースと完全に混合した;この混合物を、80メッシュ篩を通過させ、補助物質の残部を添加し、均一に混合し、60〜70Nの範囲に制御された剛性の錠剤に直接圧縮した(1,000錠)。
【0119】
錠剤処方2
API 350
キトサン 400

微結晶セルロース 200
架橋ポリビニルピロリドン 20
ステアリン酸 20
タルク 10
-----------------------------------------------------------------------
全重量 1000
【0120】
調製:APIが均一に分散するように、APIをキトサンと完全に混合し、それに補助物質の残部を添加し、均一に混合し、60〜70Nの範囲に制御された剛性の錠剤に直接圧縮した(1,000錠)。
【0121】
上述の処方から調製した錠剤の安定性を、中国薬局方に規定された方法で加速条件下及び室温下で試験した。3カ月間の加速条件下及び3カ月間の室温下での安定性試験の結果を、以下のTable 10(表10)に示す。調製した製剤が安定であることが理解できる。
【0122】
【表10】

【実施例13】
【0123】
N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドp-トルエンスルホン酸塩を含むカプセル
カプセル処方1
API、混合結晶形態 30
α化デンプン(A) 50

α化デンプン(B) 350
微結晶セルロース 400
架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム 120
タルク 50
-----------------------------------------------------------------------
全重量 1000
【0124】
調製:APIが均一に分散するように、α化デンプン(A)と完全に混合し、それにα化デンプン(B)及び微結晶セルロースを添加し、完全に混合した;この混合物を、80メッシュ篩を通過させ、補助物質の残部を添加し、均一に混合し、濃度70%のエタノールを添加し、湿式造粒を行った;得られたものを乾燥させ、造粒し、カプセル中に充填した(1,000カプセル)。
【0125】
カプセル処方2
API、結晶形態A 500
キトサン 250

微結晶セルロース 200
架橋ポリビニルピロリドン 20
ステアリン酸 20
タルク 10
-----------------------------------------------------------------------
全重量 1000
【0126】
調製:APIが均一に分散するように、APIをキトサンと完全に混合し、それに補助物質の残部を添加し、均一に混合し、カプセル中に充填した(1,000カプセル)。
【0127】
カプセル処方3
API、結晶形態B 200
α化デンプン 200

微結晶セルロース 400
架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム 100
ステアリン酸 80
タルク 20
-----------------------------------------------------------------------
全重量 1000
【0128】
調製:APIが均一に分散するように、APIをα化デンプンと完全に混合し、それに補助物質の残部を添加し、均一に混合し、カプセル中に充填した(1,000カプセル)。
【0129】
調製カプセルの活性成分含量の均一性及び溶出率を測定した。結果は、含量の差は3%未満であり、45分における溶出率は、それぞれ、98.5%、97.8%及び98.6%であった。
【実施例14】
【0130】
N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドpトルエンスルホン酸塩を含む経口液体
【0131】
経口液体の比較例
API、結晶形態B 500

亜硫酸ナトリウム 10
サッカリンナトリウム 7
パラ-ヒドロキシ安息香酸エチル 16
ポリエチレングリコール200 1600
蒸留水 合計10Lの残り
【0132】
調製:APIを完全に細かく砕き、これにポリエチレングリコール200及び2Lの蒸留水を添加し、高速撹拌または超音波によって溶出させ、固体補助物質の残部を添加し、撹拌によって溶出させ、それに蒸留水を容量で10Lまで再度添加し、均一に混合し、個別に詰め(1瓶当たり10mL)、滅菌した。
【0133】
経口液体の実施例
経口液体処方1
API、結晶形態A 50
レシチン 500

Tween-80 65
サッカリンナトリウム 5
亜硫酸ナトリウム 10
パラ-ヒドロキシ安息香酸エチル 16
ポリエチレングリコール400 2000
蒸留水 合計10Lの残り
【0134】
調製:APIを完全に細かく砕き、アラビアゴムと均一に混合し、これにポリエチレングリコール400及び2Lの蒸留水を添加し、撹拌によって溶出させ、固体補助物質の残部を添加し、撹拌によって溶出させ、これに蒸留水を容量で10Lまで再度添加し、均一に撹拌し、個別に詰め(1瓶当たり10mL)、及び滅菌した。
【0135】
経口液体処方2
API、結晶形態B 500
トラガカント 1000
カルボキシメチルセルロースナトリウム 80

亜硫酸ナトリウム 10
サッカリンナトリウム 7
パラ-ヒドロキシ安息香酸ナトリウム 16
ポリエチレングリコール200 1600
蒸留水 合計10Lの残り
【0136】
調製:APIを完全に細かく砕き、トラガカント及びカルボキシメチルセルロースナトリウムと均一に混合し、これにポリエチレングリコール200及び2Lの蒸留水を添加し、撹拌によって溶出させ、固体補助物質の残部を添加し、撹拌によって溶出させ、これに蒸留水を容量で10Lまで再度添加し、均一に混合し、個別に詰め(1瓶当たり10mL)、滅菌した。
【0137】
経口液体処方3
API、混合結晶形態 700
ポロキサマー188 900

亜硫酸ナトリウム 10
パラ-ヒドロキシ安息香酸エチル 16
グリセロール 1000
ミント油 2
蒸留水 合計10Lの残り
【0138】
調製: APIを完全に細かく砕き、ポロキサマー188と均一に混合し、これにグリセロール及び2Lの蒸留水を添加し、撹拌によって溶出させ、固体補助物質の残部及びミント油を添加し、撹拌によって溶出させ、これに蒸留水を容量で10Lまで再度添加し、均一に混合し、個別に詰め(1瓶当たり10mL)、滅菌した。
【0139】
上述の処方から調製した経口液体を室温で30日間静置した。その特性を以下の表に示す。
【0140】
【表11】

【0141】
実験結果により、本発明の医薬製剤が、良好な安定性及び高い生物学的利用能を有することが示された。
【0142】
本出願人は、本発明を完全及び詳細な仕方で説明してきた。本明細書で述べた文献及び刊行物のすべては、参照により本明細書に完全または部分的に組み込まれる。
【0143】
明らかに、本発明の内容を読むと、当業者は、本発明の精神及び範囲を逸脱しない様々な改変、修正及び変更を行うことができる。これらの均等な形態は、依然として本出願の特許請求の範囲で定義された範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩、及び、場合によって薬学的に適用される担体または賦形剤を含む医薬組成物であって、前記活性成分に対して分散及び/または保護効果を有する安定剤をさらに含み、前記安定剤対前記活性成分の重量比が1:0.1〜1:10である、医薬組成物。
【請求項2】
前記活性成分としての前記薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩が、医薬組成物の全重量に基づいて、0.1重量%〜90重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性成分が、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドと、塩酸、臭化水素酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはイセチオン酸からなる群から選択される酸とで形成される塩、ならびにN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのアミン塩、またはアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;好ましくは、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのトルエンスルホン酸塩、塩酸塩、酒石酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、及びトリエチルアミン塩;特に好ましくはN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性成分に対して分散及び/または保護効果を有する前記安定剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポビドン、ドデシルスルホン酸ナトリウム、α化デンプン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、スルホコハク酸ジオクチル、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカント、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、レシチン、デキストラン、コレステロール、モノステアリン酸グリセロール、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルギン酸塩、キトサン及びポリリシン;好ましくは、α化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アラビアゴム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、コロイド状二酸化ケイ素、キトサン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、及び微結晶セルロース;特に好ましくは、α化デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、及びポロキサマーからなる群から選択される1種または複数である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記活性成分がN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドp-トルエンスルホン酸塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記活性成分が、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態A、結晶形態B、もしくは結晶形態C、またはそれらの混合物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
抗癌活性成分をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗癌活性成分が、シスプラチン、5-FU、ビンクリスチン、タキソール、及び抗腫瘍抗生物質からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
哺乳動物におけるerbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患を治療するための薬剤の製造における請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
前記薬剤が、抗癌活性成分と組み合わせて投与される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記抗癌活性成分が、シスプラチン、5-FU、ビンクリスチン、タキソール、及び抗腫瘍抗生物質からなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記疾患が、乾癬、関節リウマチ、気管支炎、血管新生、アテローム性動脈硬化症、加齢性黄斑変性、または糖尿病網膜症である、請求項9に記載の使用。
【請求項13】
前記疾患が癌である、請求項9に記載の使用。
【請求項14】
活性成分としての薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩、及び薬学的に適用される担体または賦形剤を含む、erbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする哺乳動物における疾患を治療するための医薬製剤であって、前記活性成分に対して分散及び/または保護効果を有する安定剤をさらに含み、前記安定剤対前記活性成分の重量比が1:0.1〜1:10、好ましくは1:0.1〜1:5、特に好ましくは1:0.2〜1:2である、医薬製剤。
【請求項15】
前記活性成分としての前記薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩が、製剤の全重量に基づいて、0.1重量%〜90重量%の量で存在する、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記活性成分に対して分散及び/または保護効果を有する前記安定剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポビドン、ドデシルスルホン酸ナトリウム、α化デンプン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、スルホコハク酸ジオクチル、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカント、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、レシチン、デキストラン、コレステロール、モノステアリン酸グリセロール、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルギン酸塩、キトサン及びポリリシン;好ましくは、α化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アラビアゴム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、コロイド状二酸化ケイ素、キトサン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、及び微結晶セルロース;特に好ましくは、α化デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、及びポロキサマーからなる群から選択される1種または複数である、請求項14または15に記載の製剤。
【請求項17】
前記活性成分が、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドと、塩酸、臭化水素酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはイセチオン酸からなる群から選択される酸とで形成される塩、ならびにN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのアミン塩、またはアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;好ましくは、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのトルエンスルホン酸塩、塩酸塩、酒石酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、及びトリエチルアミン塩;特に好ましくはN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドのp-トルエンスルホン酸塩から選択される、請求項14〜16のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項18】
錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、乳剤、懸濁剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、注射剤、坐剤、またはパッチ剤である、請求項14〜17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
前記薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩が、製剤の全重量に基づいて、0.1重量%〜50重量%の量で存在し、前記担体が、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、結合剤、滑沢剤、香味剤、臭気隠蔽剤、及び着色剤からなる群から選択される1種または複数であり、前記安定剤対前記活性成分の重量比が、1:0.5〜1:10、好ましくは1:0.5〜1:5、より好ましくは1:0.5〜1:2である、経口投与される固体の形態である、請求項14〜17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
前記充填剤が、デンプン、デキストリン、ショ糖、乳糖、フルクトース、グルコース、キシリトール、マンニトール、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される1種または複数であり;前記崩壊剤が、デンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびに沸騰性崩壊剤からなる群から選択される1種または複数であり;前記湿潤剤が、蒸留水、エタノール、またはそれらの組合せから選択され;前記結合剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプンスラリー、デキストリン、グルコース及びその糖液、ショ糖及びその糖液、乳糖及びその糖液、フルクトース及びその糖液、ソルビトール、ゼラチン粘液、アラビアゴム粘液、トラガカント粘液、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される1種または複数であり;前記滑沢剤が、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、タルク、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ドデシル硫酸マグネシウム、PEG4000、PEG6000、及びステアリルフマル酸ナトリウムからなる群から選択される1種または複数である、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
前記安定剤がα化デンプンであり、前記担体物質の残部が前記充填剤としてα化デンプン及び微結晶セルロース;前記崩壊剤として架橋ポリビニルピロリドン;ならびに前記滑沢剤としてステアリン酸及び/またはタルクを含む、錠剤の形態である、請求項19に記載の製剤。
【請求項22】
製剤の重量に基づいて、10重量%〜30重量%の量の前記薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩、5重量%〜60重量%の量の前記安定剤としてのα化デンプンを含み、製剤中の前記担体の残部が、製剤の重量に基づいて、重量で、10%〜50%の量の前記充填剤α化デンプン、5%〜60%の量の微結晶セルロース、2%〜15%の量の架橋ポリビニルピロリドン、0%〜10%の量のステアリン酸、及び0%〜5%の量のタルクである、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
前記安定剤がポロキサマー188であり、前記他の担体が、前記充填剤として微結晶セルロース;前記崩壊剤として架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム;及び前記滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、錠剤の形態である、請求項19に記載の製剤。
【請求項24】
製剤の重量に基づいて、重量で、5%〜15%の前記薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩、2.5%〜50%のポロキサマー188、2%〜60%の微結晶セルロース、5%〜25%の架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び3%〜10%のステアリン酸マグネシウムを含む、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
前記薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩が、製剤の全重量に基づいて、0.1重量%〜50重量%の量で存在し、前記担体が、溶剤、pH調整剤、等張性調整剤、香味剤、臭気隠蔽剤、着色剤、保存剤及び酸化防止剤からなる群から選択される1種または複数の物質を含み、前記安定剤対前記活性成分の重量比が、1:0.1〜1:5、好ましくは1:0.1〜1:2、特に好ましくは1:0.2〜1:2である、液体の形態である、請求項14〜17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項26】
前記溶剤が、水、グリセロール、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、C1〜C6脂肪アルコール、及び脂肪油からなる群から選択される1種または複数であり得る、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
経口液体の形態である、請求項25または26に記載の製剤。
【請求項28】
前記活性成分としての前記薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩が好ましくは、製剤の重量に基づいて、0.1重量%〜50重量%、さらに好ましくは0.5重量%〜30重量%、より好ましくは0.5重量%〜20重量%の量で存在し;前記安定剤対前記活性成分の重量比が、好ましくは1:0.5〜1:5、より好ましくは1:0.2〜1:2である、経口液体の形態である、請求項25に記載の製剤。
【請求項29】
製剤の重量に基づいて、前記薬学的に許容されるN-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドの塩が、0.5重量%〜20重量%の量で存在し、前記安定剤が2.5重量%〜30重量%の量で存在し、前記保存剤が0.1重量%〜10重量%の量で存在し、前記酸化防止剤が0.1重量%〜10重量%の量で存在し、前記溶剤が30重量%〜90重量%の量で存在する、請求項28に記載の製剤。
【請求項30】
前記安定剤がポロキサマー188であり、前記他の担体が、前記酸化防止剤として亜硫酸ナトリウム、前記保存剤としてパラ-ヒドロキシ安息香酸エチル、ならびに前記溶剤としてグリセロール及び蒸留水を含む、請求項28または29に記載の製剤。
【請求項31】
前記活性成分が、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドp-トルエンスルホン酸塩である、請求項14〜30のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項32】
前記活性成分が、N-{4-[3-クロロ-4-(3-フルオロベンジルオキシ)フェニルアミノ]キナゾリン-6-イル}-アクリルアミドp-トルエンスルホン酸塩の結晶形態A、結晶形態B、もしくは結晶形態C、またはそれらの混合物である、請求項31に記載の製剤。
【請求項33】
前記安定剤及び前記活性成分が最初に均一に混合され、その後に前記薬学的に適用される担体または賦形剤と混合され、従来の方法で対応する剤形に製剤化されることを特徴とする、請求項14〜32のいずれか一項に記載の医薬製剤を調製する方法。
【請求項34】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物、または請求項14〜32のいずれか一項に記載の医薬製剤をこのような治療を必要としている個体に投与する段階を含む、哺乳動物におけるerbBファミリーの異常PTK活性を特徴とする疾患を治療する方法。

【公表番号】特表2011−520928(P2011−520928A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509842(P2011−509842)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000557
【国際公開番号】WO2009/140863
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(508252745)上海艾力斯医薬科技有限公司 (7)
【Fターム(参考)】