説明

キナーゼ阻害剤としての2−ビフェニルアミノ−4−アミノピリミジン誘導体

本発明は、式(1)


の新規ピリミジン誘導体およびその医薬組成物、ならびにかかる化合物を用いる方法を提供する。例えば本発明のピリミジン誘導体は、インスリン様増殖因子(IGF−1R)または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害に応答する状態を処置、改善または予防するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年8月28日に出願した米国仮出願第60/966,449号および2008年6月25日に出願した米国仮出願第61/075,556号についての優先権の利益を主張する。この出願の全開示は、その全体において、あらゆる目的のために、参照により本明細書に包含される。
【0002】
技術分野
本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤、特に新規ピリミジン誘導体およびその医薬組成物、ならびにそれらの医薬としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
インスリン様増殖因子(IGF−1)シグナル伝達は、主たる因子としてのIGF−1受容体(IGF−1R)と共に、がんに深く関与している。IGR−1Rは腫瘍形質転換および悪性細胞の生存に重要であるが、正常細胞の増殖には部分的にしか関与していない。IGF−1Rを標的とすることは、がん治療の有効な選択肢であることが示唆されている(Larsson et al., Br. J. Cancer 92:2097-2101 (2005))。
【0004】
受容体チロシンキナーゼのインスリン受容体スーパーファミリーのメンバーである未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)は、造血系および非造血系腫瘍の発がんに関与している。神経芽腫およびグリア芽腫における全長ALK受容体タンパク質の異常な発現が報告されており;ALK融合タンパク質が未分化大細胞リンパ腫において生じる。ALK融合タンパク質の研究はまた、ALK陽性悪性腫瘍を有する患者の新規治療処置の可能性をもたらす(Pulford et al., Cell. Mol. Life Sci. 61:2939-2953 (2004))。
【0005】
IGF−1RおよびALKの新たな疾患に関連した役割のため、IGF−1RおよびALKの阻害に応答する疾患の処置および予防に有用であり得る化合物が継続して必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
発明の開示
本発明は新規ピリミジン誘導体およびその医薬組成物、ならびに医薬としてのその使用に関する。
【0007】
一つの局面において、本発明は、式(1)
【化1】

〔式中、
1aはH、ハロ、OR、NR(R)、SR;それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;C(O)R、NC(O)R、C(O)NRR、S(O)NRR、NS(O)、S(O)0−2;または所望により置換されていてもよいC3−12炭素環式環、C6−10アリール;またはN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールまたはヘテロ環式環であり;
1bはHまたはNHであり;
は所望により置換されたC6−10炭素環式、またはそれぞれN、OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールもしくは5〜7員ヘテロ環式環であり;
およびRは独立して、H、C(O)R、C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルキルであり;
、RおよびRは独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR、RおよびRは独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−(CR−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CRORであり;ここでLは(CR1−4または結合であり;
あるいは、2個の隣接したR基はそれらが結合している炭素原子と一体となって、所望により置換された9〜14員環を形成してもよく;
、RおよびRは独立して(CRYまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシルで置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルもしくはC2−6アルキニルであるか;またはRおよびRは独立してHであり;
RはそれぞれHまたはC1−6アルキルであり;
YはC3−12炭素環式環、C6−10アリールまたはそれぞれN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環であり;ここでYは所望により1〜3個のR基で置換されていてもよく;
mおよびpは独立して1〜4であり;
nおよびqは独立して0〜4である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0008】
具体的な例において、上記式(1)のR1bはHである。ある例において、mは2〜4であり;より具体的にはmは2である。
【0009】
一つの態様において、本発明は式(2A)または(2B):
【化2】

〔式中、
5a、R5bおよびR5cの1個はHであり、他のものとRは独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR5a、R、R5cおよびRは独立してハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−L−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CROR;ここでLは(CR1−4または結合であり;
R、R1a、R、R、R、R、R、Y、pおよびqは式(1)で定義のとおりである〕
の化合物を提供する。
【0010】
ある態様において、上記式(2A)または(2B)のR5bはHであり;R5aおよびR5cは独立してハロ、ヒドロキシル、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルコキシである。具体的な例において、R5bはHであり;R5aはハロ、ヒドロキシル、C1−6アルコキシまたはC1−6アルキルであり;R5cはハロ、C1−4アルキルまたはハロ置換C1−6アルキルである。別の例において、R5cはHであり;R5aおよびR5bは独立してハロ、ヒドロキシル、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルコキシである。
【0011】
他の態様において、本発明は式(3A)または(3B):
【化3】

〔式中、
環Bは所望により置換されたC5−7炭素環式環、C6−10アリール;または5〜10員ヘテロアリールもしくは5〜7員ヘテロ環式環であり;
1a、R、R、RおよびRは式(1)で定義のとおりである〕
の化合物を提供する。
【0012】
上記式(1)、(2A)、(2B)、(3A)および(3B)において、Rはピラゾリル、ピロリル、チオフェニル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、ピリジル、アゼパン−2−オニル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、インダゾリル、キノリニル、シクロヘキシルまたはビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニルであってよく、これらはそれぞれ所望により、1〜2個のR基で置換されていてもよい。ある例において、RはC1−6アルキル、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−Rまたは−L−C(O)−NRRで置換されていてもよく、ここでLは(CR1−4または結合であり、R、R、Yおよびqは上記定義のとおりである。
【0013】
上記式(1)、(2A)、(2B)、(3A)および(3B)において、RはC1−6アルキル、−L−NR−L−C(O)R、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−S(O)または−L−S(O)NRRであってよく、ここでR、RおよびRは上記定義のとおりである。
【0014】
別の局面において、本発明は式(4):
【化4】

〔式中、
はH、ハロ、OR、NR(R)、SR;それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;C(O)R、NC(O)R、C(O)NRR、S(O)NRR、NS(O)、S(O)0−2;または所望により置換されていてもよいC3−12炭素環式環、C6−10アリール;またはN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールまたはヘテロ環式環であり;
およびRは独立して、H、C(O)R、C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルキルであり;
、R12およびR13は独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR、R12およびR13は独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−L−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CRORであり;ここでLは(CR1−4または結合であり;
、R、R、RおよびR11は独立して、(CRYまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノもしくはヒドロキシルで置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルもしくはC2−6アルキニルであるか;あるいはR、RおよびR11は独立してHであり;
10はNR(R)、NR(CRNR(R)、NR(CROR、NR(CRC(O)RまたはRであり;
RはそれぞれHまたはC1−6アルキルであり;
YはC3−12炭素環式環、C6−10アリールまたはそれぞれN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環であり;ここでYは所望により、1〜3個のR基で置換されていてもよく;
ZはCOまたはS(O)1−2であり;
mおよびpは独立して1〜4であり;
qは0〜4である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0015】
ある例において、上記式(4)のmは2〜4である。具体的な例において、mは2である。
【0016】
ある態様において、本発明は、式(4A):
【化5】

〔式中、
5a、R5bおよびR5cの1個はHであり、他のものは独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR5a、R5bおよびR5cは独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−L−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CRORであり;ここでLは(CR1−4または結合であり;
R、R、R、R、R、R、R10、R11、Y、Z、pおよびqは式(4)で定義のとおりである〕
の化合物を提供する。
【0017】
ある例において、上記式(4A)のR5bはHであり;R5aおよびR5cは独立してハロ、ヒドロキシル、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシまたは−L−C(O)O0−1−(CR−Rであり;
ここでLが結合であり;
は(CRYであり;
qはそれぞれ0であり;
Yは5〜7員ヘテロ環式環である。
【0018】
上記式(1)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)、(4)および(4A)において、R1aはハロ、C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルキルであってもよい。別の例において、RはHまたはCO(R)であり、ここでRはC1−6アルキルであり;RはHである。具体的な例において、RおよびRはHである。
【0019】
さらに別の局面において、本発明は、式(1)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)、(4)または(4A)を有する化合物と薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0020】
さらにまた、本発明は、IGF1RもしくはALKを阻害するためまたはIGF1RもしくはALKによって介在される状態を処置するための方法であって、細胞もしくは組織系または哺乳類対象に治療上有効量の式(1)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)、(4)または(4A)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは互変異性体を、所望により第2の治療薬剤と組み合わせて投与して;該キナーゼを阻害するかまたはIGF1RもしくはALKによって介在される状態を処置する方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、IGF−1RまたはALKの阻害に応答する状態を処置し、改善しまたは予防する方法であって、かかる処置を必要とする系または対象に治療上有効量の式(1)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)、(4)または(4A)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を、所望により第2の治療薬剤と組み合わせて投与して、当該状態を処置することを含む方法を提供する。あるいは本発明は、IGF−1RまたはALKによって介在される状態の処置用医薬の製造における、式(1)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)、(4)または(4A)を有する化合物の使用を提供する。具体的な態様において、本発明の化合物は、IGF−1RまたはALKによって介在される状態の処置のために単独でまたは第2の治療薬剤と組み合わせて使用することができ、ここで当該状態は自己免疫疾患、移植疾患、感染症または細胞増殖性障害である。
【0022】
さらにまた本発明は、細胞増殖性障害を処置する方法であって、かかる処置を必要とする系または対象に治療上有効量の式(1)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)、(4)または(4A)を有する化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは医薬組成物を、所望により第2の治療薬剤と組み合わせて投与して、当該状態を処置する方法を提供する。あるいは本発明は、細胞増殖性障害の処置用医薬の製造における式(1)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)、(4)または(4A)を有する化合物の使用を提供する。具体的な例において、本発明の化合物は、多発性骨髄腫、神経芽腫、滑膜肉腫、肝細胞肉腫、ユーイング肉腫ならびに骨肉腫、黒色腫および乳房、腎臓、前立腺、結直腸、甲状腺、卵巣、膵臓、肺、子宮または消化器の腫瘍から選択される固形腫瘍を含むがこれらに限定されない細胞増殖性疾患の処置のために、単独でまたは第2の治療薬剤と組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明の化合物を使用する上記方法において、式(1)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)、(4)または(4A)を有する化合物は、細胞もしくは組織を含む系または哺乳類対象、例えばヒトまたは動物対象に投与することができる。
【0024】
定義
「アルキル」は、基またはハロ置換アルキルおよびアルコキシのような他の基の構造要素を意味し、直鎖または分枝鎖であってよい。所望により置換されたアルキル、アルケニルまたはアルキニルは、本明細書において使用するとき、所望によりハロゲン化されていてよく(例えばCF)、あるいはNR、OまたはSのようなヘテロ原子で置換または置き換えられた1個以上の炭素原子を有していてもよい(例えば−OCHCHO−、アルキルチオール、チオアルコキシ、アルキルアミン等)。
【0025】
「アリール」は、炭素原子を含む単環式または縮合二環式芳香環集合体を意味する。「アリーレン」は、アリール基に由来する二価基を意味する。例えばアリール基はフェニル、インデニル、インダニル、ナフチルまたは1,2,3,4−テトラヒドロナフタレニルであってよく、これらは所望により、オルト、メタまたはパラ位で置換されていてもよい。
【0026】
「ヘテロアリール」は、本明細書において使用するとき、1個以上の環員がヘテロ原子であるが、上記アリールについて定義のとおりである。例えば本発明の化合物に使用するヘテロアリール置換基は、N、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む単環式または二環式5〜10員ヘテロアリールであってよい。ヘテロアリールの例は、ピリジル、ピラジニル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、イミダゾリル、ベンゾ−イミダゾリル、ピリミジニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、チエニル、ピロリル、イソキノリニル、プリニル、チアゾリル、テトラジニル、ベンゾチアゾリル、オキサジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル等を含むがこれらに限定されない。
【0027】
「炭素環式環」は、本明細書において使用するとき、炭素原子を含む飽和または部分不飽和、単環式、縮合二環式または架橋多環式環を意味し、これは所望により、例えば=Oで置換されていてもよい。炭素環式環の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピレン、シクロヘキサノン等を含むが、これらに限定されない。
【0028】
「ヘテロ環式環」は、本明細書において使用するとき、1個以上の環炭素がヘテロ原子であるが、上記炭素環式環について定義のとおりである。例えば、本発明の化合物に使用するヘテロ環式環はN、OおよびSまたはそれらの組合せ、例えば−S(O)または−S(O)−から選択される1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロ環式環であり得る。ヘテロ環式環の例は、アゼチジニル、モルホリノ、ピロリジニル、ピロリジニル−2−オン、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニロン、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デシ−8−イル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル等を含むが、これらに限定されない。ヘテロ環式環は、本明細書において使用するとき、二環式アミンおよび二環式ジアミンを含んでいてもよい。
【0029】
本明細書において使用するとき、何れかの置換基(例えばCH)のH原子は、あらゆる好適な同位体、例えばH、HおよびHを含む。
【0030】
「共投与」または「組合せ投与」などの用語は、本明細書において使用するとき、選択した治療薬物を1人の患者に投与することを意味しており、薬物を必ずしも同じ投与経路または同時に投与することのない処置レジメンを含むことを意図する。
【0031】
用語「医薬組合せ剤」は、本明細書において使用するとき、複数の有効成分の混合または組合せによって得られる製品を意味しており、複数の有効成分の固定された組合せ剤および固定されていない組合せ剤のいずれをも含む。用語「固定された組合せ剤」は、有効成分、例えば式(1)の化合物と共薬物が共に、同時に、1個の物または投与形で患者に投与されることを意味する。用語「固定されていない組合せ剤」は、有効成分、例えば式(1)の化合物と共薬物を、いずれも1人の患者に、別々の物として、同時に、同時一体的にまたは逐次的に、特に時間の限定なく、かかる投与によって患者の体内で2種の化合物の治療上有効濃度が得られるように投与することを意味する。後者はまた、カクテルセラピー、例えば3種以上の有効成分の投与に適用する。
【0032】
用語「治療上有効量」は、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって求められる、細胞、組織、臓器、系、動物またはヒトにおいて生物学的または医学的応答を誘発する対象化合物の量を意味する。
【0033】
用語対象化合物の「投与」または「投与すること」は、処置を必要としている対象に本発明の化合物またはそのプロドラッグを処置を与えることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明を実施する形態
本発明は、新規ピリミジン誘導体およびその医薬組成物、ならびにかかる化合物を用いる方法を提供する。
【0035】
一つの局面において、本発明は、式(1):
【化6】

〔式中、
1aはH、ハロ、OR、NR(R)、SR;それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;C(O)R、NC(O)R、C(O)NRR、S(O)NRR、NS(O)、S(O)0−2;または所望により置換されていてもよいC3−12炭素環式環、C6−10アリール;またはN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールまたはヘテロ環式環であり;
1bはHまたはNHであり;
は所望により置換されたC6−10炭素環式、またはそれぞれN、OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールもしくは5〜7員ヘテロ環式環であり;
およびRは独立して、H、C(O)R、C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルキルであり;
、RおよびRは独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR、RおよびRは独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−(CR−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CRORであり;ここでLは(CR1−4または結合であり;
あるいは、2個の隣接したR基はそれらが結合している炭素原子と一体となって、所望により置換された9〜14員環を形成してもよく;
、RおよびRは独立して(CRYまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシルで置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルもしくはC2−6アルキニルであるか;またはRおよびRは独立してHであり;
RはそれぞれHまたはC1−6アルキルであり;
YはC3−12炭素環式環、C6−10アリールまたはそれぞれN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環であり;ここでYは所望により1〜3個のR基で置換されていてもよく;
mおよびpは独立して1〜4であり;
nおよびqは独立して0〜4である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0036】
一つの態様において、本発明は式(2A)または(2B):
【化7】

〔式中、
5a、R5bおよびR5cの1個はHであり、他のものとRは独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR5a、R、R5cおよびRは独立してハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−L−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CROR;ここでLは(CR1−4または結合であり;
R、R1a、R、R、R、R、R、Y、pおよびqは式(1)で定義のとおりである〕
の化合物を提供する。
【0037】
他の態様において、本発明は、式(3A)または(3B):
【化8】

〔式中、
環Bはは所望により置換されたC5−7炭素環式環、C6−10アリール;または5〜10員ヘテロアリールもしくは5〜7員ヘテロ環式環であり;
1a、R、R、RおよびRは式(1)で定義のとおりである〕
の化合物を提供する。
【0038】
別の局面において、本発明は、式(4):
【化9】

〔式中、
はH、ハロ、OR、NR(R)、SR;それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;C(O)R、NC(O)R、C(O)NRR、S(O)NRR、NS(O)、S(O)0−2;または所望により置換されていてもよいC3−12炭素環式環、C6−10アリール;またはN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールまたはヘテロ環式環であり;
およびRは独立して、H、C(O)R、C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルキルであり;
、R12およびR13は独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR、R12およびR13は独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−L−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CRORであり;ここでLは(CR1−4または結合であり;
、R、RおよびR11は独立して、(CRYまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノもしくはヒドロキシルで置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルもしくはC2−6アルキニルであるか;あるいはR、RおよびR11は独立してHであり;
10はNR(R)、NR(CRNR(R)、NR(CROR、NR(CRC(O)RまたはRであり;
RはそれぞれHまたはC1−6アルキルであり;
YはC3−12炭素環式環、C6−10アリールまたはそれぞれN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環であり;ここでYは所望により、1〜3個のR基で置換されていてもよく;
ZはCOまたはS(O)1−2であり;
mおよびpは独立して1〜4であり;
qは0〜4である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0039】
一つの態様において、本発明は、式(4A):
【化10】

〔式中、
5a、R5bおよびR5cの1個はHであり、他のものは独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR5a、R5bおよびR5cは独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−L−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CROR;ここでLは(CR1−4または結合であり;
R、R、R、R、R、R、R10、R11、Y、Z、pおよびqは式(4)で定義のとおりである〕
の化合物を提供する。
【0040】
上記式(1)、(2A)、(2B)、(3A)または(3B)において、5〜10員ヘテロアリールまたは5〜7員ヘテロ環式環R基の例は、ピラゾリル、ピロリル、チオフェニル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、ピリジル、アゼパン−2−オニル、2H−、3H−チオピラン(thipyran)、4H−チオピラン(thipyran)、テトラヒドロチオピラン、2H−ピラン、4H−ピラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、1,2−ジチイン、1,2−ジチアン、1,3−ジチイン、1,3−ジチアン、1,4−ジチイン、1,4−ジチアン、1,2−ジオキシン、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキシン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキシン、1,4−ジオキサン、ピペラジン、1,2−オキサチイン、1,2−オキサチアン、4H−1,3−オキサチイン、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチイン、1,4−オキサチアン、2H−1,2−チアジン、テトラヒドロ−1,2−チアジン、2H−1,3−チアジン、4H−1,3−チアジン、5,6−ジヒドロ−4H−チアジン、4H−1,4−チアジン、テトラヒドロ−1,4−チアジン、2H−1,2−オキサジン、4H−1,2−オキサジン、6H−1,2−オキサジン、2H−1,3−オキサジン、4H−1,3−オキサジン、4H−1,4−オキサジン、モルホリン、トリオキサン、4H−1,2,3−トリチイン、1,2,3−トリチアン、1,3,5−トリチアン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリジノン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、1,2−ジオキソール、1,2−ジオキソラン、1,3−ジオキソール、1,3−ジオキソラン、3H−1,2−ジチオール、1,2−ジチオラン、1,3−ジチオール、1,3−ジチオラン、イソキサゾリン、イソキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、チアゾリン、チオゾリジン、3H−1,2−オキサチオール、1,2−オキサチオラン、5H−1,2−オキサチオール、1,3−オキサチオール、1,3−オキサチオラン、1,2,3−トリチオール、1,2,3−トリチオラン、1,2,4−トリチオラン、1,2,3−トリオキソール、1,2,3−トリオキソラン、1,2,4−トリオキソラン、1,2,3−トリアゾリンおよび1,2,3−トリアゾリジンを含むが、これらに限定されない。
【0041】
上記式それぞれにおいて、何れかの不斉炭素原子は(R)−、(S)−または(R,S)−立体配置で存在していてもよい。したがって本化合物は、異性体の混合物または純粋な異性体、例えば純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在していてもよい。さらに本発明は、本発明の化合物の可能な互変異性体を含む。
【0042】
本発明はまた、本発明の化合物の全ての好適な同位体置換体またはその薬学的に許容される塩を含む。本発明の化合物の同位体置換体またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも1個の原子が同一の原子数であるが天然で通常見られる原子質量とは異なる原子質量を有する原子で置換されているものと定義される。本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩に導入され得る同位体の例は、水素、炭素、窒素および酸素の同位体、例えばH、H、11C、13C、14C、15N、17O、18O、35S、18F、36Clおよび123Iを含むがこれらに限定されない。ある本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩の同位体置換体、例えばHまたは14Cのような放射性同位体が導入されているものは、薬物および/または基質組織分布試験において有用である。
【0043】
具体的な例において、Hおよび14C同位体は製造および検出が容易であるために使用され得る。他の例において、Hのような同位体置換によって、より大きな代謝安定性からもたらされるある治療利益、例えば上昇したインビボ半減期または減少した必要用量を得ることができる。本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の同位体置換体は、一般に、好適な適切な同位体置換体の反応剤を用いた常套の方法によって製造することができる。本化合物の同位体置換体は、化合物の代謝速度を変化させ、そして/または疎水性等のような物理的特性をわずかに変化させる能力を有する。同位体置換体は効果および安全性を向上させ、生物学的利用能および半減期を上昇させ、タンパク質結合能を変化させ、生体内分布を変化させ、活性代謝産物の割合を増加させ、そして/または反応性もしくは毒性代謝産物の形成を減少させる能力を有する。
【0044】
上記式のそれぞれにおいて、それぞれ所望により置換されていてもよい基は、それぞれ所望によりハロゲン化されていてもよいか、あるいは所望によりN、S、Oで置換または置き換えられていてもよい炭素を有するC1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC3−6アルキニルまたはそれらの組合せ(例えばヒドロキシルC−Cアルキル、C−CアルコキシC−Cアルキル);ハロ、アミノ、アミジノ、C1−6アルコキシ;ヒドロキシル、メチレンジオキシ、カルボキシ;C1−8アルキルカルボニル、C1−8アルコキシカルボニル、カルバモイル、C1−8アルキルカルバモイル、スルファモイル、シアノ、オキソ、ニトロまたは所望により置換された炭素環式環、ヘテロ環式環、上記アリールまたはヘテロアリールで置換されていてもよい。
【0045】
薬理および有用性
本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩は、インビトロで無細胞キナーゼアッセイおよび細胞アッセイで試験すると、有用な薬理学的特性を示し得て、したがって医薬として有用である。
【0046】
一つの局面において、本発明の化合物は未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)およびNPM−ALKの融合タンパク質のチロシンキナーゼ活性を阻害することができる。このプロテインチロシンキナーゼはヌクレオホスミン(NPM)とALKの遺伝子融合によってもたらされ、これはプロテインチロシンキナーゼ活性をALKリガンド非依存性にする。NPM−ALKは多数の造血細胞および他のヒト細胞において重要な役割を果たしており、例えば未分化大細胞リンパ腫(ALCL)および非ホジキンリンパ腫(NHL)、特にALK+NHLまたはAlkomasにおいて、炎症性筋線維芽腫瘍(IMT)および神経芽腫のような血液学的疾患および腫瘍性疾患を導く(Duyster et al. 2001 Oncogene 20, 5623-5637)。NPM−ALKに加えて、ヒト血液学的疾患および腫瘍性疾患において他の遺伝子融合が同定されている;例えば、TPM3−ALK(非筋肉性トロポミオシンとALKの融合)。
【0047】
ALKチロシンキナーゼ活性の阻害は、既知の方法を用いて、例えばJ. Wood et al. Cancer Res. 60, 2178-2189 (2000)に記載されているVEGF−Rキナーゼアッセイに準じたALKの組換えキナーゼドメインを用いて示すことができる。一般に、GST−ALKプロテインチロシンキナーゼを用いたインビトロ酵素アッセイは、20mMのTris HCl、pH=7.5、3mMのMgCl、10mMのMnCl、1mMのDTT、0.1μCi/アッセイ(=30μl)の[γ−33P]−ATP、2μMのATP、3μg/mLのポリ(Glu、Tyr 4:1)Poly−EY(Sigma P-0275)、1%のDMSO、25ngのALK酵素中のフィルター結合アッセイとして96ウェルプレートで実施される。アッセイを周囲温度で10分間インキュベートする。125mMのEDTAを50μl加えて反応を停止させ、反応混合物を予めメタノールで湿らせたMAIP Multiscreen プレート(Millipore, Bedford, MA, USA)に移し、HOで5分間水分補給する。洗浄(0.5%のHPO)した後、プレートを液体シンチレーションカウンターで対比染色する。阻害率の直線回帰分析によってIC50値を計算する。
【0048】
本発明の化合物は、ヒトNPM−ALK過剰発現マウス(DSMZ Deutsche Sammiung von Mikroorganismen und Zelikulturen GmbH, Germany)の増殖を強力に阻害することができる。NPM−ALKの発現は、NPM−ALKをコードする発現ベクターpClneo(商標)(Promega Corp., Madison WI, USA)でBaF3細胞系をトランスフェクトし、次いでG418耐性細胞の選択によって得ることができる。非トランスフェクトBaF3細胞は細胞増殖に関してIL−3に依存する。逆に、NPM−ALK発現BaF3細胞(以後BaF3−NPM−ALKと称する)は、NPM−ALKキナーゼを介して増殖シグナルを得るため、IL−3の非存在下で増殖することができる。したがって、NPM−ALKキナーゼの推定阻害剤は増殖シグナルを無効にして、抗増殖活性をもたらし得る。しかしNPM−ALKキナーゼの推定阻害剤の抗増殖活性は、NPM−ALK非依存メカニズムを介して増殖シグナルを提供するIL−3の添加によって克服することができる。FLT3キナーゼを用いた同様の細胞系も記載されている(E Weisberg et al. Cancer Cell; 1, 433-443 (2002)参照)。
【0049】
本発明の化合物の阻害活性は次のとおりに測定することができる。一般に、BaF3−NPM−ALK細胞(15,000/マイクロタイタープレートウェル)を96ウェルマイクロタイタープレートに移す。DMSOの最終濃度が1%(v/v)未満であるような連続濃度(連続希釈)の試験化合物のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を加える。添加後、試験化合物を含まない対照培地が2回の細胞分裂サイクルを実施することができる間、該プレートを2日間インキュベートする。BaF3−NPM−ALK細胞の増殖は、YOPRO(商標)染色によって測定する[T Idziorek et al. J. Immunol. Methods; 185: 249-258 (1995)]:20mMのクエン酸ナトリウム、pH4.0、26.8mMの塩化ナトリウム、0.4%のNP40、20mMのEDTAおよび20mMを含む溶解バッファー25μlを各ウェルに加える。細胞溶解は室温で60分で完了し、DNAと結合したYOPRO(商標)の総量をCytofluor II 96ウェルリーダー(PerSeptive Biosystems)を次の設定:励起波長(nm)485/20および放出波長(nm)530/25を用いて測定して、決定する。
【0050】
別の局面において、本発明の化合物はインスリン様増殖因子受容体1(IGF−1R)を阻害することができる。IGF−1Rキナーゼ活性の阻害剤としての本発明の化合物の効果は、細胞捕捉ELISAを用いて示すことができる。このアッセイにおいて、IGF−1Rの(IGF−1)誘導性自己リン酸化に対する本発明の化合物の活性を測定する。
【0051】
本発明の化合物は、IGF−1Rおよび/またはALK介在性疾患の処置において有用であり得る。IGF−1Rおよび/またはALK介在性疾患の例は、腫瘍のような増殖性疾患、例えば乳房、腎臓、前立腺、結直腸、甲状腺、卵巣、膵臓、神経、肺、子宮および胃腸の腫瘍ならびに骨肉腫および黒色腫を含むが、これらに限定されない。
【0052】
本発明の化合物はまた、急性もしくは慢性炎症性疾患もしくは障害または自己免疫疾患、例えばリウマチ様関節炎、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、糖尿病(I型およびII型)およびそれに関連した障害、呼吸器疾患、例えば喘息または炎症性肝臓損傷、炎症性糸球体損傷、免疫介在性障害もしくは疾患の皮膚症状、炎症性および過増殖性皮膚疾患(例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、刺激性接触性皮膚炎およびさらなる湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎)、炎症性眼疾患、例えばショーグレン症候群、角結膜炎もしくはブドウ膜炎、炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎の処置および/または予防に有用であり得る。
【0053】
上記にしたがって、本発明は次の態様を提供する:
(1)医薬として使用するための本発明の化合物;
(2)例えば上記具体的な適用の何れかに使用するための、IGF−1R阻害剤として使用するための本発明の化合物;
(3)上記適用の何れかに使用するための医薬組成物であって、有効成分としての本発明の化合物と、1種以上の薬学的に許容される希釈剤または担体を含む医薬組成物;
(4)処置を必要とする対象における上記何れかの具体的な適応症の処置のための方法であって、有効量の本発明の化合物またはそれを含む医薬組成物を投与することを含む方法;
(5)IGF−1R活性が役割を果たすかあるいは関与する疾患または状態の処置または予防用医薬の製造のための、本発明の化合物の使用;
(6)治療上有効量の本発明の化合物と1種以上のさらなる薬物を例えば同時または逐次的に共投与することを含む上記(4)に定義の方法であって、当該さらなる薬物は、上記具体的な適用の何れかに有用である、方法;
(7)治療上有効量の本発明の化合物と1種以上のさらなる薬物を含む組合せ剤であって、当該さらなる薬物は、上記具体的な適用の何れかに有用である、組合せ剤;
(8)未分化リンパ腫キナーゼの阻害に応答する疾患の処置または予防用医薬の製造のための、本発明の化合物の使用;
(9)処置する疾患が未分化大細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、炎症性筋線維腫瘍、神経芽腫および腫瘍性疾患から選択される、上記(8)の使用;
(10)本化合物が実施例の何れか一つの化合物またはその薬学的に許容される塩である、上記(8)または(9)の使用;
(11)未分化リンパ腫キナーゼの阻害に応答する疾患、特に未分化大細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、炎症性筋線維腫瘍、神経芽腫および腫瘍性疾患から選択される疾患の処置のための方法であって、有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【0054】
投与および医薬組成物
一般に、本発明の化合物は治療上有効量で、当該技術分野において既知の何れかの通常の許容される形態で、単独でまたは1種以上の治療薬物と組み合わせて投与する。治療上有効量は疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康、使用する化合物の能力および他の要因に従って広範に変化し得る。例えば、腫瘍性疾患および免疫系障害の処置のために必要とされる用量はまた、投与形態、処置する具体的な状態および望まれる効果に従って変化する。
【0055】
一般に、全身的な1日用量約0.01〜約100mg/kg体重、特に約0.03〜2.5mg/kg体重で満足のいく結果が得られる。大型哺乳類、例えばヒトにおける指示1日用量は約0.5mg〜約2000mg、またはより具体的には約0.5mg〜約100mgの範囲であり、簡便には、例えば1日4回までの分割用量または徐放形態で投与する。経口投与に好適な単位投与形態は、約1〜50mgの有効成分を含む。
【0056】
本発明の化合物は何れかの常套の経路によって;例えば経腸的に、例えば経口的に、例えば錠剤またはカプセル剤の形態で;非経腸的に、例えば注射液または懸濁液の形態で;または局所的に、例えばローション、ゲル、軟膏またはクリームの形態で、あるいは経鼻または座薬形態で投与することができる。
【0057】
遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明の化合物と少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物は、常套の方法で、混合、造粒、コーティング、溶解または凍結乾燥プロセスによって製造することができる。例えば、本発明の化合物と少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物は、常套の方法で、薬学的に許容される担体または希釈剤と混合して製造することができる。経口投与用単位投与形態は、例えば有効成分約0.1mg〜約500mgを含む。
【0058】
一つの態様において、本医薬組成物は、有効成分の懸濁液または分散剤を含む溶液、例えば等張水溶液である。有効成分を単独でまたはマンニトールのような担体と共に含む凍結乾燥組成物の場合、分散剤または懸濁液を使用前に調製することができる。本医薬組成物は滅菌し、および/またはアジュバント、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調節のための塩および/またはバッファーを含んでいてもよい。好適な保存剤は、アスコルビン酸のような抗酸化剤またはソルビン酸もしくは安息香酸のような殺菌剤を含むが、これらに限定されない。溶液または懸濁液はさらに増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ゼラチンまたは可溶化剤、例えばTween 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)を含んでいてもよいが、これらに限定されない。
【0059】
油中懸濁液は油性成分として、注射用として慣用の植物油、合成油または半合成油を含んでいてもよい。例には、8〜22個の炭素原子、またはある態様においては12〜22個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸を酸成分として含む液体脂肪酸エステルが含まれる。好適な液体脂肪酸エステルは、例えばラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸または対応する不飽和酸、例えばオレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸またはリノレイン酸を含むがこれらに限定されず、所望により、抗酸化剤、例えばビタミンE、β−カロチンまたは3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを含んでいてもよい。これらの脂肪酸エステルのアルコール成分は6個の炭素原子を有していてよく、そして1価または多価、例えば1、2または3価アルコールであり得る。好適なアルコール成分は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはペンタノールまたはその異性体;グリコールおよびグリセロールを含むが、これらに限定されない。
【0060】
他の好適な脂肪酸エステルは、エチルオレエート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、LABRAFIL(登録商標)M 2375、(ポリオキシエチレングリセロール)、LABRAFIL(登録商標)M 1944 CS(不飽和ポリグリコール化グリセリド、杏仁油のアルコール分解によって製造し、グリセリドおよびポリエチレングリコールエステルを含む)、LABRASOL(商標)(飽和ポリグリコール化グリセリド、TCMのアルコール分解によって製造し、グリセリドおよびポリエチレングリコールエステルを含む;Gattefosse, Franceから全て入手可能)および/またはMIGLYOL(登録商標)812(C〜C12鎖長の補和脂肪酸のトリグリセリド、Huels AG, Germanyから)および植物油、例えば綿実油、アーモンド油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、大豆油、およびとりわけラッカセイ油を含むが、これらに限定されない。
【0061】
経口投与用医薬組成物は、例えば有効成分と1種以上の固体担体を混合し、所望により得られた混合物を造粒し、さらなる賦形剤を加えて混合物または顆粒を処理して、錠剤または錠剤コアを得ることができる。
【0062】
好適な担体は、特に増量剤、例えば糖、例えばラクトース、サッカロース、マンニトールまたはソルビトール、セルロース製剤および/またはリン酸カルシウム、例えばリン酸トリカルシウムまたはリン酸水素カルシウム、および結合剤、例えばデンプン、例えばトウモロコシ、コムギ、コメまたはポテトのスターチ、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン、および/または、所望により、崩壊剤、例えば上記デンプンおよび/またはカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。さらなる賦形剤は、とりわけ流動化剤および滑沢剤、例えばケイ酸、タルク、ステアリン酸またはその塩、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコールまたはその誘導体を含む。
【0063】
錠剤コアは、とりわけ、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/またはチタンジオキシド、または好適な有機溶媒もしくは溶媒混合物中のコーティング溶液、あるいは腸溶コーティングの製造のために、好適なセルロース製剤、例えば酢酸フタル酸セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの溶液を含み得る濃縮糖溶液を使用して、好適な、所望により腸溶の、コーティングを施す。着色剤または色素を錠剤または錠剤コーティングに、例えば区別するため、または有効成分の用量が異なることを示すために、加えることができる。
【0064】
経口投与用医薬組成物にはゼラチンからなる硬カプセル剤およびゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールのような可塑剤からなる軟カプセル剤が含まれる。硬カプセル剤は顆粒の形態で、例えば増量剤、例えばコーンスターチ、結合剤および/または流動促進剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、ならびに所望により安定化剤と混合して含んでいてもよい。軟カプセル剤では、有効成分は好適な液体賦形剤、例えば脂肪油、パラフィン油、または液体ポリエチレングリコールまたはエチレングリコールもしくはプロピレングリコールの脂肪酸エステル中に溶解または懸濁している。これに安定化剤および例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル型の界面活性剤も加えることができる。
【0065】
直腸投与用医薬組成物は例えば、例えば有効成分と座薬基材の組合せを含む座薬である。好適な座薬基材は例えば、天然または合成トリグリセリド、パラフィン炭化水素、ポリエチレングリコールまたは高級アルカノールである。
【0066】
非経腸投与用医薬組成物は、増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストラン、および所望により、安定化剤を含む水溶性形態、例えば水溶性の塩の有効成分の水溶液、または水性注射用懸濁液を含んでいてもよい。所望により賦形剤と共にある有効成分は、凍結乾燥製剤製剤の形態であっても良く、非経腸投与の前に適当な溶媒を加えて溶液を調製することができる。例えば非経腸投与に使用されるような溶液は輸液としても使用することができる。注射製剤の製造は、通常滅菌条件下で実施し、例えばそのままアンプルまたはバイアルに充填して、該容器を密封する。
【0067】
本発明の化合物は有効成分単独で、または腫瘍性疾患に有用な他の薬剤もしくは免疫調節レジメンに有用な他の薬剤との組合せで投与することができる。例えば、本発明の化合物は上記多様な疾患に有効な医薬組成物との組合せで、例えばシクロホスファミド、5−フルオロウラシル、フルダラビン、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、リツキサン、ドキソルビシン、ゲフィチニブまたはイマチニブ;あるいはシクロスポリン、ラパマイシン、アスコマイシンまたはそれらの免疫調節アナログ、例えばシクロスポリンA、シクロスポリンG、FK−506、シロリムスまたはエベロリムス、コルチコステロイド、例えばプレドニゾン、シクロホスファミド、アザチオプレン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、ブレキナー、レフルノマイド、ミゾリビン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、15−デオキシスペルグアリン、免疫抑制性モノクローナル抗体、例えば白血球レセプターのモノクローナル抗体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD28、CD40、CD45、CD58、CD80、CD86、CD152、CD137、CD154、ICOS、LFA−1、VLA−4またはそれらのリガンド、または他の免疫調節性化合物、例えばCTLA4Igとの組合せで、本発明に使用することができる。
【0068】
本発明はまた、a)本明細書に記載の、遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明の化合物である第1の薬物とb)少なくとも1種の共薬薬物を含む医薬組合せ剤、例えばキットを提供する。該キットは投与のための指示書を含んでいてもよい。
【0069】
本発明の化合物の製造方法
本発明の化合物を製造する一般的な方法は、後記実施例に記載されている。記載の反応において、反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基は、これらが最終生成物において反応への望ましくない参加を避けることが望まれるとき、保護する必要があり得る。標準的な技術に従って、常套の保護基を用いることができる。例えば、T.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991を参照されたい。
【0070】
本発明の化合物およびその塩はまた、水和物の形態で用いることができ、あるいはそれらの結晶は例えば結晶化に使用した溶媒を含んでいてもよい(溶媒和物として存在する)。塩は通常、例えば好適な塩基性反応剤、例えばアルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素炎またはアルカリ金属ヒドロキシド、例えば炭酸カリウムまたは水酸化ナトリウムで処理して、遊離形の化合物に変換することができる。塩基付加塩形の本発明の化合物は、好適な酸(例えば塩酸など)で処理して対応する遊離酸に変換することができる。遊離形の新規化合物と、例えば新規化合物の精製または単離において中間体として使用することができる塩を含むそれらの塩形の密接な関係の観点から、遊離化合物に関するあらゆる記載は、適切であるとき、対応する塩についても言及していると理解される。
【0071】
したがって塩形成基を有する本発明の化合物の塩は、自体公知の方法で製造することができる。式(1)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)、(4)および(4A)の化合物の酸付加塩は、酸または好適なアニオン交換剤で処理して得ることができる。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、例えば酸付加塩として、有機または無機酸によって、塩基性窒素原子を有する式(1)、(2A)、(2B)、(3A)、(3B)、(4)および(4A)の化合物から形成させることができる。
【0072】
好適な無機酸は、ハロゲン酸、例えば塩酸、硫酸またはリン酸を含むが、これらに限定されない。好適な有機酸は、カルボン酸、リン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼラン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アミノ酸、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、桂皮酸、メタン−もしくはエタン−スルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、2−、3−もしくは4−メチルベンゼンスルホン酸、メチル硫酸、エチル硫酸、ドデシル硫酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−もしくはN−プロピル−スルファミン酸、または他の有機プロトン酸、例えばアスコルビン酸を含むが、これらに限定されない。単離または精製のため、薬学的に許容されない塩、例えばピクリン酸塩または過塩素酸塩を用いることも可能である。治療的使用には、薬学的に許容される塩または遊離化合物のみが使用される(医薬製剤の形態で適用可能であるとき)。
【0073】
非酸化形の本発明の化合物は、還元剤(例えば硫黄、硫黄ジオキシド、トリフェニルホスフィン、ホウ化水素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭素化リン等)で、好適な不活性有機溶媒(例えばアセトニトリル、エタノール、水性ジオキサン等)中、0〜80℃で処理して、本発明の化合物のN−オキシドから製造することができる。
【0074】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に既知の方法によって製造することができる(さらに詳しくは、例えばSaulnier et al., (1994)、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985を参照されたい)。例えば、適切なプロドラッグは、本発明の化合物を好適なカルバミル化剤(例えば1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ−ニトロフェニルカルボネート等)と反応させて製造することができる。
【0075】
本発明の化合物の保護誘導体は、当業者に既知の方法によって製造することができる。保護基の形成とその除去に適用される技術の詳細な説明は、T. W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999に見ることができる。
【0076】
本化合物のラセミ混合物を光学活性分割剤と反応させ、ジアステレオ異性化合物のペアを形成し、ジアステレオマーを分離し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、その個々の立体異性体として本発明の化合物を製造できる。エナンチオマーの分割は、本発明の化合物の共有結合性ジアステレオマー誘導体を使用して行ってもよいが、解離可能な複合体が好ましい(例えば、結晶性ジアステレオマー塩)。ジアステレオマーは異なる物理的性質(例えば、融点、沸点、溶解性、反応性等)を有し、これらの差を利用して容易に分割できる。ジアステレオマーは、分画結晶化、クロマトグラフィーにより、または溶解度の差に基づく分離/分割技術により分離できる。次いで、ラセミ化をもたらさないであろう任意の実際的手段により、光学的に純粋なエナンチオマーを分割剤と共に回収する。化合物の立体異性体のそのラセミ混合物からの分割に適用可能な技術のより詳細な記載は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981に見ることができる。
【0077】
要約すると、本発明の化合物は、実施例に記載の方法によって:
(a)所望により本発明の化合物を薬学的に許容される塩に変換すること;
(b)所望により塩形の本発明の化合物を非塩形態に変換すること;
(c)所望により酸化されていない形態の本発明の化合物を薬学的に許容されるN−オキシドに変換すること;
(d)所望によりN−オキシド形態の本発明の化合物をその酸化されていない形態に変換すること;
(e)所望により本発明の化合物の個々の異性体を異性体混合物から分離すること;
(f)所望により誘導体化されていない本発明の化合物を薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体に変換すること;および
(g)所望により本発明の化合物のプロドラッグ誘導体を非誘導体化形態に変換すること
によって製造することができる。
【0078】
出発物質の製造が特に記載されていない場合、その化合物は既知であるか、または、当分野で既知の方法に準じて、または以下の実施例に開示のとおり、製造し得る。当業者は、上記の変換は本発明の化合物の製造の単なる代表例であって、他の既知の方法を同様に使用してよいことを認識しよう。本発明はさらに、本発明の化合物の製造を説明する次の実施例によって例示されるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0079】
中間体1
2,5−ジクロロ−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリミジン−4−アミン
【化11】

5−メチル−1H−ピラゾール−3−アミン(3.00g、30.9mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(5.67g、30.9mmol、1当量)とNaCO(3.60g、34.0mmol、1.1当量)のEtOH(100mL)混合物を40℃で24時間加熱する。真空下で溶媒を除去する。得られた残渣をEtOAc(350mL)と水(100mL)で分配する。EtOAc層を水(3x)、飽和NaCl水溶液(1x)で洗浄し、NaSOで乾燥させる。得られたEtOAc溶液を真空下で濃縮して、生成物2,5−ジクロロ−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリミジン−4−アミンを得る;ESMS m/z 244.0 (M + H+)。
【0080】
中間体2
2−クロロ−5−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリミジン−4−アミン
【化12】

5−メチル−1H−ピラゾール−3−アミン(3.00g、30.9mmol)、2,4−ジクロロ−5−メチルピリミジン(5.03g、30.9mmol、1当量)およびNaCO(3.60g、34.0mmol、1.1当量)のEtOH(100mL)混合物を40℃で24時間加熱する。真空下で溶媒を除去する。得られた残渣をEtOAc(350mL)と水(100mL)で分配する。EtOAc層を水(3x)、飽和NaCl水溶液(1x)、で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮する。得られた粗生成物をEtO(200mL)中で超音波処理し、生じた沈殿を濾過して回収する。この粉末をさらにEtOで洗浄して、生成物2−クロロ−5−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリミジン−4−アミンを得る;ESMS m/z 224.1 (M + H+)。
【0081】
中間体3
2−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)ベンズアミド
【化13】

2−アミノベンズアミド(681mg、5.0mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(2.75g、15mmol、3当量)および濃HCl(aq)(1.72mL、20mmol、4当量)の2−プロパノール(100mL)混合物を60℃で12時間加熱する。真空下で2−プロパノール溶媒を除去する。1NのNaOH(aq)を加えて得られた残渣をpH=約7に中和し、次いでEtOAcと水で分配する。EtOAcと水で分配すると、顕著な量の沈殿が生じる。この沈殿を真空濾過によって回収し、少量のEtOAcおよび水で洗浄して、生成物2−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)ベンズアミドを得る;ESMS m/z 283.0 (M + H+)。
【0082】
中間体4
3−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)ピリジン−2(1H)−オン
【化14】

MeOH(6mL)およびHO(3mL)の混合物中の3−アミノピリジン−2(1H)−オン(99mg、0.90mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(165mg、0.90mmol、1当量)およびNaHCO(76mg、0.90mmol、1当量)の混合物を室温で24時間撹拌する。生じた沈殿を真空濾過によって回収し、少量のMeOHおよび水で洗浄して、生成物3−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)ピリジン−2(1H)−オンを得る;ESMS m/z 257.0 (M + H+)。
【0083】
中間体5
(±)−cis−2−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)シクロヘキサンカルボキサミド
【化15】

MeOH(1.0mL)およびHO(0.5mL)の混合物中の(±)−cis−2−アミノシクロヘキサンカルボキサミド(28mg、0.20mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(37mg、0.20mmol、1当量)およびNaHCO(17mg、0.20mmol、1当量)の混合物を室温で12時間撹拌する。反応物をEtOAcで希釈し、水(2x)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、生成物(±)−cis−2−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)シクロヘキサンカルボキサミドを得る;ESMS m/z 289.1 (M + H+)。
【0084】
中間体6
2,5−ジクロロ−N−(5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリミジン−4−アミン
【化16】

3−アミノ−5−フェニルピラゾール(103mg、0.65mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(74.5μL、0.65mmol)および炭酸ナトリウム(68.9mg、0.65)の3mLのEtOH混合物を、40℃で一夜加熱する。沈殿を濾過し、冷EtOHで洗浄し、真空下で乾燥させて、2,5−ジクロロ−N−(5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリミジン−4−アミンを得る;ESMS m/z 306.0 (M + H+)。
【0085】
中間体7
メチル4−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボキシレート
【化17】

4−アミノ−1−メチル−ピロール−2−カルボン酸メチルエステルヒドロクロライド(95mg、0.5mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(57μL、0.5mmol)および炭酸ナトリウム(106mg、1.0mmol)の3mLのEtOH混合物を40℃で一夜加熱する。沈殿を濾過し、冷EtOHで洗浄し、真空下で乾燥させて、メチル4−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)−1−メチル−1H−ピロール−2−カルボキシレートを得る;ESMS m/z 301.0 (M + H+)。
【0086】
中間体8
2−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)−4−メチルチオフェン−3−カルボキサミド
【化18】

2−アミノ−4−メチルチオフェン−3−カルボキサミド(78mg、0.5mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(57μL、0.5mmol)および炭酸ナトリウム(53mg、0.5mmol)の3mLのEtOH混合物を40℃で一夜加熱する。沈殿を濾過し、冷EtOHで洗浄し、真空下で乾燥させて、2−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)−4−メチルチオフェン−3−カルボキサミドを得る;ESMS m/z 303.0 (M + H+)。
【0087】
中間体9
N−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)ピリミジン−2−アミン
【化19】

ピリミジン−2−アミン(48mg、0.50mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(57μL、0.5mmol)および炭酸カリウム(69mg、0.5mmol)の3mLの1,4−ジオキサン混合物を110℃で一夜加熱する。沈殿を濾過し、冷EtOHで洗浄し、真空下で乾燥させて、N−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)ピリミジン−2−アミンを得る;ESMS m/z 242.0 (M + H+)。
【0088】
中間体10
2,5−ジクロロ−N−(1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリミジン−4−アミン
【化20】

1−メチル−1H−ピラゾール−3−アミン(48mg、0.50mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(57μL、0.5mmol)および炭酸ナトリウム(53mg、0.5mmol)の3mLのEtOH混合物を40℃で一夜加熱する。沈殿を濾過し、冷EtOHで洗浄し、真空下で乾燥させて、2,5−ジクロロ−N−(1−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリミジン−4−アミンを得る;ESMS m/z 244.0 (M + H+)。
【0089】
中間体11
エチル3−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート
【化21】

エチル3−アミノ−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート(80mg、0.50mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(57μL、0.5mmol)および炭酸ナトリウム(53mg、0.5mmol)の3mLのEtOH混合物を40℃で一夜加熱する。沈殿を濾過し、冷EtOHで洗浄し、真空下で乾燥させて、エチル3−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレートを得る;ESMS m/z 302.0 (M + H+)。
【0090】
中間体12
N−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)イソキサゾール−3−アミン
【化22】

イソキサゾール−3−アミン(36μL、0.50mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(57μL、0.5mmol)および炭酸ナトリウム(53mg、0.5mmol)の3mLのEtOH混合物を60℃で48時間加熱する。沈殿を濾過し、冷EtOHで洗浄し、真空下で乾燥させて、N−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)イソキサゾール−3−アミンを得る;ESMS m/z 231.0 (M + H+)。
【0091】
中間体13
2,5−ジクロロ−N−(4,6−ジメチルピリジン−2−イル)ピリミジン−4−アミン
【化23】

4,6−ジメチルピリジン−2−アミン(61mg、0.50mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(57μL、0.5mmol)およびヨウ化カリウム(166mg、1.0mmol)の3mLのDMA混合物を90℃で一夜加熱する。該混合物を真空下で濃縮し、得られた粗生成物をEtOAcと塩水で分配する。有機抽出物を回収し、乾燥させ(NaSO)、真空下で濃縮して、2,5−ジクロロ−N−(4,6−ジメチルピリジン−2−イル)ピリミジン−4−アミンを得る;ESMS m/z 269.0 (M + H+)。
【0092】
中間体14
N−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)−5−メチルイソキサゾール−3−アミン
【化24】

5−メチルイソキサゾール−3−アミン(98mg、1.0mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(344μL、3.0mmol)および炭酸ナトリウム(106mg、1.0mmol)の3mLのEtOH混合物を60℃で一夜加熱する。反応混合物を濃縮し、次いでEtOAcと塩水で分配する。有機抽出物を回収し、乾燥させ(NaSO)、真空下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(MeOH/DCM:1/9)で精製して、N−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イル)−5−メチルイソキサゾール−3−アミンを得る;ESMS m/z 245.0 (M + H+)。
【0093】
中間体15
2,5−ジクロロ−N−(5−シクロプロピル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリミジン−4−アミン
【化25】

5−シクロプロピル−1H−ピラゾール−3−アミン(246mg、2.00mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(367mg、2.00mmol、1当量)およびNaCO(233mg、2.20mmol、1.1当量)のEtOH(10mL)混合物を40℃で16時間加熱する。粗反応混合物をEtOAcで希釈し、水(3x)、飽和水溶液NaCl(1x)で連続して洗浄する。得られたEtOAc層をNaSOで乾燥させ、次いで真空下で濃縮して、2,5−ジクロロ−N−(5−シクロプロピル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリミジン−4−アミンを得る;ESMS m/z 270.0 (M + H+)。
【0094】
中間体16
3−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)アゼパン−2−オン
【化26】

MeOH(12mL)およびHO(6mL)の混合物中の(±)−α−アミノ−ε−カプロラクタム(256mg、2.0mmol)、2,4,5−トリクロロピリミジン(366mg、2.0mmol、1当量)およびNaHCO(168mg、2mmol、1当量)の混合物を室温で15時間撹拌する。生じた沈殿を真空濾過によって回収し、少量のMeOHおよび水で洗浄して、生成物3−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)アゼパン−2−オンを得る;ESMS m/z 275.0 (M + H+)。
【0095】
中間体17
4’−アミノ−5’−フルオロ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド
【化27】

4−ブロモ−2−フルオロ−5−メチルアニリン(203mg、1.0mmol)、4−(メチルカルバモイル)フェニルボロン酸(179mg、1.0mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(82mg、0.2mmol)、Pd(dba)(91mg、0.1mmol)およびKPO(424mg、2.0mmol)の5.0mLのn−ブタノール混合物を脱気し、130℃で1時間加熱する。反応混合物を真空下で濃縮する。粗生成物混合物をEtOAcと塩水で分配し、有機抽出物を回収し、乾燥させ(NaSO)、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン:1/4)で精製して、4’−アミノ−5’−フルオロ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミドを得る;ESMS m/z 259.1 (M + H+)。
【0096】
中間体18
4’−アミノ−2’−イソプロピル−N,5’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド
【化28】

工程1:2−イソプロピル−5−メチルフェニルトリフルオロメタンスルホネート
2−イソプロピル−5−メチルフェノール(1g、6.67mmol)とトリエチルアミン(2.8mL、20mmol)のDCM(50mL)溶液に、撹拌下でN−フェニルビス−トリフルオロメタンスルホンアミド(2.62g、7.3mmol)を加える。該混合物を12時間撹拌し、濃縮する。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中5%の酢酸エチル)で精製して、2−イソプロピル−5−メチルフェニルトリフルオロメタンスルホネートを無色油状物として得る。
【0097】
工程2:2−イソプロピル−5−メチル−4−ニトロフェニルトリフルオロメタンスルホネート
2−イソプロピル−5−メチルフェニルトリフルオロメタンスルホネート(工程1、1.3g、4.6mmol)の酢酸(10mL)溶液に、ゆっくりと濃硫酸および濃硝酸の混合溶液(2mL/0.5mL)を0℃で加える。室温で2時間撹拌した後、混合物を氷水に注ぐ。混合物を酢酸エチル(3x20mL)で抽出する。合併した有機相を炭酸ナトリウム水溶液および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムを乾燥させた。濃縮後、粗2−イソプロピル−5−メチル−4−ニトロフェニルトリフルオロメタンスルホネートを、精製することなく次の工程に直接使用する。
【0098】
工程3:2’−イソプロピル−N,5’−ジメチル−4’−ニトロビフェニル−4−カルボキサミド
マイクロウェーブチューブ中で粗2−イソプロピル−5−メチル−4−ニトロフェニルトリフルオロメタンスルホネート(工程2、200mg、0.61mmol)、4−(メチルカルバモイル)フェニルボロン酸(142mg、0.79mmol)およびフッ化セシウム(185mg、1.22mmol)のジオキサン(15mL)混合物に、パラジウムビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)(15mg、10%mmol)を加える。該チューブを密封する。混合物をNで3分間パージし、次いで120℃で10分間、マイクロウェーブ照射下で加熱する。混合物を冷却し、濾過し、濃縮する。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中60%酢酸エチル)で精製して、白色固体を2’−イソプロピル−N,5’−ジメチル−4’−ニトロビフェニル−4−カルボキサミドとして得る。ESMS m/z 313..2 (M + H+)。
【0099】
工程4:4’−アミノ−2’−イソプロピル−N,5’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド
2’−イソプロピル−N,5’−ジメチル−4’−ニトロビフェニル−4−カルボキサミドをメタノール(20mL)に溶解させる。この溶液にPd/C(10%)を加える。反応混合物を脱気し、Hで数回パージし、次いでH(1atm)下で一夜撹拌する。混合物を濾過し、濃縮して表題化合物4’−アミノ−2’−イソプロピル−N,5’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミドを白色固体として得る。1H NMR (400 MHz, MeOD-d4) δ 7.87 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.35 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.31 (s, 1H), 7.14 (s, 1H), 3.00 (m, 1H), 2.95 (d, 3H), 2.36 (s, 3H), 1.15 (d, 6H, J = 6.8 Hz); ESMS m/z 283.2 (M + H+)。
【0100】
中間体19
4’−アミノ−5’−エチル−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド
【化29】

工程1:1−ブロモ−5−クロロ−2−メチル−4−ニトロベンゼン
2−ブロモ−4−クロロ−1−メチルベンゼンを用いて上記方法に従って(中間体18、工程2)、1−ブロモ−5−クロロ−2−メチル−4−ニトロベンゼンを黄色固体として得る。この物質をさらに精製することなく次の工程に使用する。
【0101】
工程2:5’−クロロ−N,2’−ジメチル−4’−ニトロビフェニル−4−カルボキサミド
工程1の粗生成物(400mg、1.6mmol)、4−(メチルカルバモイル)フェニルボロン酸(286mg、1.6mmol)および炭酸ナトリウム(340mg、3.2mmol)のジメトキシルエタン/水(12/4mL)混合物に、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)(93mg、5%mmol)を加える。混合物をNで3分間パージし、次いで密封し、90℃で3時間加熱する。混合物を冷却し、濾過し、濃縮する。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM中30%の酢酸エチル)で精製して、5’−クロロ−N,2’−ジメチル−4’−ニトロビフェニル−4−カルボキサミドを黄色固体として得る。ESMS m/z 305.1 (M + H+)。
【0102】
工程3および4:4’−アミノ−5’−エチル−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド
5’−クロロ−N,2’−ジメチル−4’−ニトロビフェニル−4−カルボキサミド(工程2、100mg、0.33mmol)、ビニルボロン酸ジブチルエステル(90mg、0.5mmol)および炭酸ナトリウム(245mg、2.31mmol)のTHF/HO(8/2mL)混合物に、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(12mg、5%mmol)を加える。反応チューブを密封し、混合物をNで3分間パージし、次いで90℃でN下で一夜加熱する。反応物を室温に冷却し、飽和塩化アンモニア水溶液に注ぐ。粗反応混合物を酢酸エチル(3x15mL)で抽出する。有機抽出物を合併し、塩水で洗浄し、濃縮する。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM中30%の酢酸エチル)で精製して、N,2’−ジメチル−4’−ニトロ−5’−ビニルビフェニル−4−カルボキサミドを黄色固体として得る。得られた固体をメタノール(20mL)に溶解させる。この溶液にPd/C(10%)を加える。反応混合物を脱気し、Hで数回パージし、水素雰囲気下で一夜撹拌する。混合物を濾過し、濃縮して4’−アミノ−5’−エチル−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミドを黄色固体として得る。ESMS m/z 269.2 (M + H+)。
【0103】
中間体20
4−(4−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イル)−N−メチルベンズアミド
【化30】

4−ブロモ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−アミン
5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−アミン(1g、6.8mmol)、トリエチルアミン(1.9mL、13.6mmol)のDCM(50mL)溶液に、アセチルクロライド(587mg、7.5mmol)を滴下する。混合物を室温で2時間撹拌する。次いで、混合物を濃縮し、酢酸エチルと飽和塩化アンモニウム水溶液で分配する。有機層を分離し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。濃縮後、得られたN−(5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イル)アセトアミド(200mg)を酢酸(30mL)に溶解させる。この溶液に臭素(170mg、1.06mmol)を滴下する。混合物を50℃で一夜加熱する。亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応物をクエンチする。混合物を酢酸エチル(3x20mL)で抽出する。有機抽出物を合併し、重炭酸ナトリウム水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。濃縮した後、粗N−(4−ブロモ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イル)アセトアミドを褐色固体として得る。得られた固体をメタノール(5mL)および濃HCl(15mL)に溶解させる。混合物を95℃で一夜環流する。室温に冷却した後、混合物を氷水に注ぎ、濃NaOH水溶液でpH=12に塩基性化する。次いで、混合物を酢酸エチル(3x20mL)で抽出する。合併した有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮する。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中15%の酢酸エチル)で精製して、4−ブロモ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−アミンをベージュ色固体として得る。ESMS m/z 226 (M + H+)。
【0104】
工程3の生成物を用いて上記方法に従って(中間体17)、4−(4−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1−イル)−N−メチルベンズアミドを白色固体として得る、ESMS m/z 281.2 (M + H+)。
【0105】
中間体21
メチル4−アミノ−5−メトキシ−4’−(メチルカルバモイル)ビフェニル−2−カルボキシレート
【化31】

工程1:メチル5−メトキシ−4’−(メチルカルバモイル)−4−ニトロビフェニル−2−カルボキシレート
窒素下で、メチル2−クロロ−4−メトキシ−5−ニトロベンゾエート(292mg、1.19mmol)、4−(メチルカルバモイル)フェニルボロン酸(319mg、1.79mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(41mg、0.06mmol)および炭酸ナトリウム(378mg、3.57mmol)のTHF(8mL)および水(2mL)混合物を、40℃で一夜加熱する。反応混合物を室温に冷却し、EtOAcと塩水で分配する。有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン:1/3)で精製して、メチル5−メトキシ−4’−(メチルカルバモイル)−4−ニトロビフェニル−2−カルボキシレートを得る;ESMS m/z 345.1 (M + H+)。
【0106】
工程2:メチル4−アミノ−5−メトキシ−4’−(メチルカルバモイル)ビフェニル−2−カルボキシレート
メチル5−メトキシ−4’−(メチルカルバモイル)−4−ニトロビフェニル−2−カルボキシレート(工程1、275mg、0.75mmol)、Pd(活性炭素上10重量%、27mg)およびMeOH(20mL)の混合物を脱気して空気を除去し、次いで反応物を水素バルーン下で、出発物質が消費されるまで撹拌する。Pd/Cを濾取し、濾液を真空下で濃縮して、メチル4−アミノ−5−メトキシ−4’−(メチルカルバモイル)ビフェニル−2−カルボキシレートを得る;ESMS m/z 315.1 (M + H+)。
【0107】
中間体22
4’−アミノ−5’−メトキシ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド
【化32】

4−クロロ−2−メトキシ−5−メチルアニリン(2.0g、11.7mmol)、4−(メチルカルバモイル)フェニルボロン酸(2.08g、11.7mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(1.20g、2.9mmol)、Pd(dba)(1.1g、1.2mmol)およびKPO(7.4g、34.9mmol)の80mLのn−ブタノール混合物を脱気し、130℃で一夜加熱する。反応混合物をセライトパッドで濾過し、真空下で濃縮する。粗生成物混合物をEtOAcおよび塩水で分配し、回収した有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン:1/4)で精製して、4’−アミノ−5’−メトキシ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミドを得る;ESMS m/z 271.1 (M + H+)。
【0108】
実施例1
4’−(5−クロロ−4−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピリミジン−2−イルアミノ)−5’−フルオロ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド(1)
【化33】

2,5−ジクロロ−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)ピリミジン−4−アミン(中間体1、142mg、0.5mmol)と4’−アミノ−5’−フルオロ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド(中間体17、150mg、0.58mmol)の2−プロパノール混合物を、水性濃HCl(6滴)で処理する。混合物を密封し、マイクロウェーブ中、140℃で20分間加熱する。混合物を濃縮し、分取RP−HPLCで残渣を精製して、表題化合物4’−(5−クロロ−4−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピリミジン−2−イルアミノ)−5’−フルオロ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミドを白色固体として得る。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.31 (br, 1H), 9.23 (br, 2H), 8.50 (m, 1H), 8.16 (s, 1H), 7.90 (d, 2H), 7.77 (m, 1H), 7.46 (d, 2H), 7.14 (d, 1H), 6.19 (s, 1H), 2.82 (d, 3H), 2,19 (s, 3H), 2.15 (s, 3H); ESMS m/z 466.1 (M + H+)。
【0109】
実施例2
5’−メトキシ−N,2’−ジメチル−4’−(4−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)ビフェニル−4−カルボキサミド(2)
【化34】

工程1:4’−(4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)−5’−メトキシ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド
2,4−ジクロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン(100mg、0.46mmol)の0.5mLのDCEおよび0.5mLのt−BuOH混合物に塩化亜鉛(0.46mLのエーテル中1.0M、0.46mmol)を加え、30分間撹拌する。4’−アミノ−5’−メトキシ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド(111mg、0.414mmol)およびトリエチルアミン(46mg、0.46mmol)を連続的に加え、反応物を室温で一夜撹拌する。沈殿を濾過し、MeOHで洗浄し、真空下で乾燥させて、4’−(4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)−5’−メトキシ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミドを白色固体として得る;ESMS m/z 451.1 (M + H+)。
【0110】
工程2:5’−メトキシ−N,2’−ジメチル−4’−(4−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)ビフェニル−4−カルボキサミド
4’−(4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)−5’−メトキシ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド(工程1、20mg、0.044mmol)、5−メチル−1H−ピラゾール−3−アミン(4.3mg、0.044mmol)、キサントホス(5.0mg、0.009mmol)、パラジウムアセテート(II)(1.0mg、0.004mmol)および炭酸セシウム(28.6mg、0.088mmol)の2.0mLのTHF混合物をマイクロウェーブリアクター中、150℃で25分間加熱する。反応混合物を濾過し、濾液を真空下で濃縮し、分取RP−HPLCで精製して、5’−メトキシ−N,2’−ジメチル−4’−(4−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)ビフェニル−4−カルボキサミドを得る;ESMS m/z 512.2 (M + H+)。
【0111】
実施例3
(±)−4’−(5−クロロ−4−(2−オキソアゼパン−3−イルアミノ)ピリミジン−2−イルアミノ)−5’−フルオロ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド(42−44)
【化35】

3−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)アゼパン−2−オン(中間体16、28mg、0.10mmol)、4’−アミノ−5’−フルオロ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド(中間体17、31mg、0.12mmol、1.2当量)およびTFA(37μL、57mg、0.50mmol、5当量)の2−プロパノール(3mL)混合物を撹拌し、密封チューブ内、100℃で48時間撹拌する。得られた溶液を濃縮し、次いで分取RP−HPLCで精製して、(±)−4’−(5−クロロ−4−(2−オキソアゼパン−3−イルアミノ)ピリミジン−2−イルアミノ)−5’−フルオロ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミドを得る;ESMS m/z 497.2 (M + H+)。
【0112】
(±)−4’−(5−クロロ−4−(2−オキソアゼパン−3−イルアミノ)ピリミジン−2−イルアミノ)−5’−フルオロ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミドをキラルHPLCでその個々のエナンチオマーに精製する。キラルHPLC条件は:20x250mm ChiralPak ADカラム、80/10/10:ヘキサン/EtOH/MeOH、室温、流速20mL/分、モニター310nM、実行時間30分を用いる。短い保持時間のエナンチオマーに対する長いものの絶対立体配置の同定は、光学的に純粋なα−アミノ−ε−カプロラクタムを出発物質として用いて中間体16と実施例3の合成シーケンスを反復し、キラルHPLCにラセミ実施例3と光学的に純粋な最終生成物を共に注入して、実施する。(S)エナンチオマーはこれらの条件下で保持時間〜19.2分で、長い保持時間のエナンチオマーである。(R)エナンチオマーはこれらの条件下で保持時間〜12.71分で、短い保持時間のエナンチオマーである。長および短保持時間ピークの濃度は、それぞれ(S)および(R)エナンチオマーを提供する。
【0113】
適切な出発物質を用いて上記実施例に記載の方法を反復して、次の表1に示す化合物を得る。
表1
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【0114】
実施例4
4’−(5−クロロ−4−(2−(シクロプロピルカルバモイル)フェニルアミノ)ピリミジン−2−イルアミノ)−5’−メトキシ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド(72)
【化36】

工程1:メチル2−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)ベンゾエート
2−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)安息香酸(300mg、1.1mmol)のDCM/MeOH(10/5mL)溶液にトリメチルシリルジアゾメタンのエチルエーテル溶液(2.0M、2mL)を加える。混合物を30分間撹拌し、濃縮してメチル2−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)ベンゾエートを黄色固体として得る。
【0115】
工程2:4’−(5−クロロ−4−(2−(シクロプロピルカルバモイル)フェニルアミノ)ピリミジン−2−イルアミノ)−5’−メトキシ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド
メチル2−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)ベンゾエート(工程1、50mg、0.16mmol)と4’−アミノ−5’−メトキシ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミド(中間体31、46mg、0.16mmol)の2−プロパノール混合物を濃HCl水溶液(4滴)で処理する。混合物を密封し、マイクロウェーブ中、120℃で20分間処理する。混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチルと炭酸ナトリウム水溶液で分配する。有機層を濃縮して粗メチル2−(5−クロロ−2−(5−メトキシ−2−メチル−4’−(メチルカルバモイル)ビフェニル−4−イルアミノ)ピリミジン−4−イルアミノ)ベンゾエートを褐色固体として得る。得られた粗生成物をシクロプロピルアミン原液(0.5mL)で処理する。混合物を密封チューブ中、110℃で一夜加熱する。混合物を濃縮し、精製のために残渣をRP−HPLCにアプライして、4’−(5−クロロ−4−(2−(シクロプロピルカルバモイル)フェニルアミノ)ピリミジン−2−イルアミノ)−5’−メトキシ−N,2’−ジメチルビフェニル−4−カルボキサミドを白色固体として得る。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 8.75 (m, 1H), 8.49 (m, 1H), 8.15 (s, 1H), 7.91 (d, 2h0, 7.73-7.71 (m, 1H), 7.60 (m, 1H), 7.46 (d, 2H), 7.30-7.26 (m, 1H), 6.98 (s, 1H), 3.88 (s, 3H), 2.96 (s. 3H), 2.90-2.86 (m,1H), 2.15 (s, 3H), 0.86-0.83 (m, 2H), 0.67-0.65 (m, 2H); ESMS m/z 557.2 (M + H+).
【0116】
実施例5
4’−(3−(2−カルバモイルフェニルアミノ)−4−クロロフェニルアミノ)−5’−メトキシ−N−メチル−2’−(ピロリジン−1−カルボニル)ビフェニル−4−カルボキサミド(73)
【化37】

工程1:メチル4−(3−(2−カルバモイルフェニルアミノ)−4−クロロフェニルアミノ)−5−メトキシ−4’−(メチルカルバモイル)ビフェニル−2−カルボキシレート
メチル4−アミノ−5−メトキシ−4’−(メチルカルバモイル)ビフェニル−2−カルボキシレート(中間体27、117mg、0.37mmol)と2−(2,5−ジクロロピリミジン−4−イルアミノ)ベンズアミド(中間体3、316mg、1.12mmol)の3mLのi−PrOH溶液に、水性濃HClを5滴加える。反応混合物をマイクロウェーブリアクター中、150℃で30分間加熱し、次いで濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(MeOH/DCM:1/9)で精製して、メチル4−(3−(2−カルバモイルフェニルアミノ)−4−クロロフェニルアミノ)−5−メトキシ−4’−(メチルカルバモイル)ビフェニル−2−カルボキシレートを得る; ESMS m/z 559.2 (M + H+)。
工程2:4’−(3−(2−カルバモイルフェニルアミノ)−4−クロロフェニルアミノ)−5’−メトキシ−N−メチル−2’−(ピロリジン−1−カルボニル)ビフェニル−4−カルボキサミド
【0117】
メチル4−(3−(2−カルバモイルフェニルアミノ)−4−クロロフェニルアミノ)−5−メトキシ−4’−(メチルカルバモイル)ビフェニル−2−カルボキシレート(工程1、220mg、0.75mmol)と1mLのピロリジンの混合物を100℃で一夜加熱する。粗生成物を真空下で濃縮し、分取RP−HPLCにアプライして、4’−(3−(2−カルバモイルフェニルアミノ)−4−クロロフェニルアミノ)−5’−メトキシ−N−メチル−2’−(ピロリジン−1−カルボニル)ビフェニル−4−カルボキサミドを得る;ESMS m/z 598.2 (M + H+)。
【0118】
適切な出発物質を用いて上記実施例に記載の方法を反復して、次の表2に示す化合物を得る。
表2
【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【0119】
アッセイ
薬物のIC50を用量依存曲線を構成し、アゴニスト活性の反転に対する多様な濃度のアンタゴニストの効果を試験して、測定することができる。IC50値は、該アゴニストの最大生物学的応答の半分を阻害するために必要な濃度を決定して、所定のアンタゴニストについて計算することができる。IC50値を計算するため、一連の用量依存データ(例えば、薬物濃度x1、x2、・・・xnと増殖阻害y1、y2、・・・yn、yの値は0〜1の範囲である)を作成する。IC50値は次の式:
y=D+((A−D)/(1+10(x−log(IC50)B
(式中、Aは最低薬物濃度と対照の増殖阻害の比であり;Bはシグモイド曲線の傾きであり;Dは最高薬物濃度と対照の増殖阻害の比である)
を用いたコンピューター利用システムによって求めることができる。
【0120】
IC50値は阻害剤の非存在下での対照を用いて得られるものよりも50%低い増殖阻害が得られる試験化合物の濃度として与えられる。遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明の化合物は、例えば本明細書に記載のインビトロ試験によって示されるように、有用な薬理学的特性を示し得る。一般に、本発明の化合物は、1nM〜10μMのIC50値を有する。いくつかの例において、本発明の化合物は0.01μM〜5μMのIC50値を有する。他の例において、本発明の化合物は、0.01μM〜1μM、より具体的には1nM〜1μMのIC50値を有する。さらに別の例において、本発明の化合物は1nM未満または10μM以上のIC50値を有する。本発明の化合物は、10μMで、IGF−1Rに対して50%以上の阻害率を示し、また他の態様において約70%以上の阻害率を示し得る。
【0121】
Ba/F3細胞系群および反応剤
Ba/F3は、マウスIL−3依存性プロ−Bリンパ腫細胞系である。親Ba/F3細胞を用いて、TELのアミノ末端部分(アミノ酸1〜375)またはBCRとの融合によって活性化した個々のチロシンキナーゼで安定的に形質導入して、増殖および生存をIL−3非依存性にした亜系群を作製する。Tel−チロシンキナーゼ(TK)融合によって形質転換したBa/F3細胞系を作製するため、それぞれのTEL−融合キナーゼを有するレトロウイルスに親Ba/F3細胞を感染させて、プロマイシン選択およびIL−3離脱に付して、IL−3非依存性形質転換Ba/F3細胞を得る。
【0122】
形質転換されたBa/F3細胞をそれぞれ、10%のFBS(Hyclone Cat #SV30014.03, Logan, UT)、4.5g/Lのグルコース(Sigma #G5400, St.Louis, MO)、1.5g/Lの重炭酸ナトリウム(Biowhittaker #17-613E, Walkersville, MD)およびPen/Strep(Gibco #10378-016, Carlsbad, CA)を補ったRPMI−1640培地(Gibco Cat #11875093, Carlsbad, CA)で培養する。細胞を週2回分離する。
【0123】
Ba/F3細胞生存能阻害アッセイ
多様なTel−TK形質転換Ba/F3系に対する試験化合物の能力を次のとおりに測定する。指数関数的に増殖するBaF3 Tel−TK細胞を新鮮な培地で75,000細胞/mLに希釈し、μFill液体分注機(BioTek, Winooski, VT, USA)を用いて384ウェルプレート(3750細胞/ウェル)に50μL/ウェルで播種する。各細胞系について2連でプレートを作製する。試験化合物および対照化合物をDMSOで連続希釈し、ポリプロピレン384ウェルプレートにアレイする。ピン−トランスファーデバイスを用いてアッセイプレートに50nLの化合物を移し、プレートを37℃(5%のCO)で48時間インキュベートする。25μLのBritelite(Perkin Elmer)を加え、Analyst GT(Molecular Devices)を用いて蛍光を定量する。特注のカーブフィッティングソフトウェアを用いて、細胞生存能のロジスティックフィットを阻害剤濃度の対数の関数として作製する。DMSO対照の50%に細胞生存能を低下させるために必要な化合物の濃度としてIC50を内挿する。IL−3(最終濃度1ng/ml)の存在下で維持し、培養した親Ba/F3細胞を、IL−3(最終濃度1ng/ml)を含む新鮮な培地で上記と同じ方法で、75,000細胞/mLに希釈する。
【0124】
酵素HTRFアッセイ
IGF−1RおよびINSR(インスリン受容体)をUpstateから購入する。次の反応剤を社内で調製する;10×キナーゼバッファー(KB)(200mMのTris(pH7.0)、100mMのMgCl、30mMのMnCl、50nMのNaVO)、10mMのATP、100mg/mlのBSA、0.5MのEDTA、4MのKF。セットアップアッセイのためにPerkin-Elmer社のProxiplate384を用いる。基質(ビオチン−ポリ−GT(61GT0BLB)、Mab PT66−K、(61T66KLB)、ストレプトアビジン−XLent(611SAXLB))を含むHTRF反応剤は、全てCIS-US, Incから購入する。
【0125】
ATP(最終濃度3μM)とビオチニル化ポリ−GT(最終濃度10ng/μl)を1×KBに加えて基質/ATP混合物を調製し、μFill(Bio-TEK)を用いてProxiplate-384に5μl/ウェルで分注する。50nLピンヘッドを用いて連続希釈化合物(DMSO中)をプレートに移す。μFill(Bio-TEK)を用いて5μLの調製した酵素混合物(酵素(最終濃度5ng/μl)を1×KB中のBSAおよびDTTと混合する)を加えてキナーゼ反応を開始させる。アッセイプレートを室温で2時間インキュベートする。KF(最終濃度125mM)、EDTA(最終濃度50mM)およびBSA(最終濃度100μg/ml)を含む0.5×KB溶液にMab PT66−Kとストレプトアビジン−XLentの両方を加えて検出混合物を調製する。反応終了時に10μLの検出混合物を加え、30分間室温でインキュベートした後、測定する。Analyst−GT(molecular Devices)を用いてHTRFシグナルを検出する。
【0126】
がん細胞増殖阻害アッセイ
がん細胞系をルシフェラーゼ化するため、発現がLTRによって駆動されるルシフェラーゼ遺伝子とプロマイシン耐性遺伝子の両方を担持する両性レトロウイルスで各細胞系を形質導入する。簡潔には、Fugene6(Roche)を用いて、製造業者の指示に従って、レトロウイルスベクターpMSCV−Puro−LucをPhoenix細胞系にトランスフェクトする。トランスフェクションの2日後、ウイルスを含む上清を回収し、0.2μmのフィルターで濾過する。回収したウイルスはすぐに使用するか、あるいは−80℃で保存する。感染のため、培養したがん細胞を回収し、6ウェル組織培養プレートに播種する(1mlの培地中5×10細胞/ウェル)。各ウェルについて、3mlのウイルス上清を400μlのFBS、40μlの1M HEPES(pH8.0)および4μlのポリブレン(10μg/ml、Specialty培地)と共に加える。該プレートを2500rpmで90分間遠心分離してスピン感染させて、一夜感染させるためにインキュベーターに移す。翌日、新鮮な培地を含むT−75フラスコに感染した細胞系を移し、1日間インキュベートする。感染2日後、プロマイシンを最終濃度1μg/mlで加えて、選択を開始する。1〜2週間以内にプロマイシン耐性細胞系が確立され、次いで少なくとも2回株を分け、ルシフェラーゼ化株として保存する。
【0127】
各細胞系はトリプシン処理によって対数増殖期に回収し、それぞれの培地で適切な密度に希釈した後、播種する。μFill(BioTeK)を用いて細胞を50μl/ウェルで白色壁付透明底プレート(Greiner)に播種する。次いで細胞を37℃のインキュベーターに入れ、5%のCOを一夜供給する。50nL/ウェルPintool技術を用いてPlatemate(マトリックス)を介して化合物を移す。次いでアッセイプレートをインキュベーターに3日間戻す。化合物移動後3日で、アッセイプレートにBRITELITE(登録商標)(Perkin Elmer、製造業者の示唆に従って希釈)を加えて、Analyst GT(Molecular Devices)またはEnvision(Perkin Elmer)で読み取る。生データはRLUで作製される。
【0128】
本明細書に記載の実施例および態様は説明のみを目的としており、その範囲内の多様な修飾または変形が当業者に示唆されており、本明細書および特許請求の範囲の精神および範囲に含まれることが理解される。本明細書において言及した全ての公報、特許および特許出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

〔式中、
1aはH、ハロ、OR、NR(R)、SR;それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;C(O)R、NC(O)R、C(O)NRR、S(O)NRR、NS(O)、S(O)0−2;または所望により置換されていてもよいC3−12炭素環式環、C6−10アリール;N、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールまたはヘテロ環式環であり;
1bはHまたはNHであり;
は所望により置換されたC6−10炭素環式、またはそれぞれN、OおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールもしくは5〜7員ヘテロ環式環であり;
およびRは独立して、H、C(O)R、C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルキルであり;
、RおよびRは独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR、RおよびRは独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−(CR−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CRORであり;ここでLは(CR1−4または結合であり;
あるいは、2個の隣接したR基はそれらが結合している炭素原子と一体となって、所望により置換された9〜14員環を形成してもよく;
、RおよびRは独立して(CRYまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシルで置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルもしくはC2−6アルキニルであるか;またはRおよびRは独立してHであり;
RはそれぞれHまたはC1−6アルキルであり;
YはC3−12炭素環式環、C6−10アリールまたはそれぞれN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環であり;ここでYは所望により1〜3個のR基で置換されていてもよく;
mおよびpは独立して1〜4であり;
nおよびqは独立して0〜4である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
1bがHである、請求項1の化合物。
【請求項3】
式(2A)または(2B):
【化2】

〔式中、
5a、R5bおよびR5cの1個はHであり、他のものとRは独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR5a、R、R5cおよびRは独立してハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−L−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CRORであり;ここでLは(CR1−4または結合であり;
およびRは独立して、(CRYまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノもしくはヒドロキシルで置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルもしくははC2−6アルキニルであるか;あるいはRはHであり;
RはそれぞれHまたはC1−6アルキルであり;
YはC3−12炭素環式環、C6−10アリールまたはそれぞれN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環であり;ここでYは所望により1〜3個のR基で置換されていてもよく;
pは1〜4であり;
qは0〜4である〕
の化合物である、請求項1の化合物。
【請求項4】
5bがHであり;
5aおよびR5cが独立して、ハロ、ヒドロキシル、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルコキシであり;
がC1−6アルキル、−L−NR−L−C(O)R、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−S(O)または−L−S(O)NRRである、請求項3の化合物。
【請求項5】
5cがHであり;R5aおよびR5bが独立して、ハロ、ヒドロキシル、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルコキシである、請求項3の化合物。
【請求項6】
式(3A)または(3B):
【化3】

〔環Bは所望により置換されたC5−7炭素環式環、C6−10アリール;または5〜10員ヘテロアリールもしくは5〜7員ヘテロ環式環である〕
の化合物である、請求項1の化合物。
【請求項7】
Bが結合しているフェニル環と一体となって、所望により置換されていてもよいナフタレンまたはテトロヒドロナフタレンを形成する、請求項6の化合物。
【請求項8】
1aがハロ、C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルキルである、請求項1〜7の何れかの化合物。
【請求項9】
がピラゾリル、ピロリル、チオフェニル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、ピリジル、アゼパン−2−オニル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、インダゾリル、キノリニルまたはビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニルであり、これらはそれぞれ所望により1〜2個のR基で置換されていてもよい、請求項1〜8の何れかの化合物。
【請求項10】
がHまたはCO(R)であり、RがC1−6アルキルであり;RがHである、請求項1〜9の何れかの化合物。
【請求項11】
次の群:
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

から選択される、請求項1〜10の何れかの化合物。
【請求項12】
式(4):
【化4】

〔式中、
はH、ハロ、OR、NR(R)、SR;それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;C(O)R、NC(O)R、C(O)NRR、S(O)NRR、NS(O)、S(O)0−2;または所望により置換されていてもよいC3−12炭素環式環、C6−10アリール;またはN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールまたはヘテロ環式環であり;
およびRは独立して、H、C(O)R、C1−6アルキルまたはハロ置換C1−6アルキルであり;
、R12およびR13は独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR、R12およびR13は独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−L−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CRORであり;ここでLは(CR1−4または結合であり;
、R、RおよびR11は独立して、(CRYまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノもしくはヒドロキシルで置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルもしくはC2−6アルキニルであるか;あるいはR、RおよびR11は独立してHであり;
10はNR(R)、NR(CRNR(R)、NR(CROR、NR(CRC(O)RまたはRであり;
RはそれぞれHまたはC1−6アルキルであり;
YはC3−12炭素環式環、C6−10アリールまたはそれぞれN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環であり;ここでYは所望により、1〜3個のR基で置換されていてもよく;
ZはCOまたはS(O)1−2であり;
mおよびpは独立して1〜4であり;
qは0〜4である〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
式(4A):
【化5】

〔式中、
5a、R5bおよびR5cの1個はHであり、他のものは独立して、それぞれ所望によりハロ、アミノまたはヒドロキシル基で置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるか;あるいはR5a、R5bおよびR5cは独立して、ハロ、ニトロ、シアノ、OR、O(CR−OR、−L−NR(R)、−L−NR(CROR、−L−NR−L−C(O)R、−L−Y、−L−C(O)O0−1−(CR−R、−L−C(O)−NRR、−L−C(O)−NR−(CR−NRR、−L−C(O)NR(CROR、−L−C(O)−(CR−NR−C(O)−R、−L−C(O)NR(CRSR、−L−C(O)NR(CRS(O)1−2、−L−S(O)、−L−S(O)NRR、−L−S(O)NR(CRNR(R)、−L−S(O)NR(CRORであり;ここでLは(CR1−4または結合であり;
、R、RおよびR11は独立して、(CRYまたはそれぞれ所望によりハロ、アミノもしくはヒドロキシルで置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C2−6アルケニルもしくはC2−6アルキニルであるか;あるいはRおよびR11は独立してHであり;
RはそれぞれHまたはC1−6アルキルであり;
YはC3−12炭素環式環、C6−10アリールまたはそれぞれN、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリールもしくはヘテロ環式環であり;ここでYは所望により、1〜3個のR基で置換されていてもよく;
pは1〜4であり;
qは0〜4である〕
の化合物である、請求項12の化合物。
【請求項14】
5bがHであり;R5aおよびR5cが独立して、ハロ、ヒドロキシル、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ置換C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルコキシ、−L−C(O)−NRRまたは−L−C(O)O0−1−(CR−Rであり;
ここでLが結合であり;
が(CRYであり;
qがそれぞれ0であり;
Yが5〜7員ヘテロ環式環である、請求項12または13の化合物。
【請求項15】
次の群:
【表11】

【表12】

【表13】

から選択される、請求項12〜14の何れかの化合物。
【請求項16】
治療上有効量の請求項1〜15の何れかの化合物と薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項17】
IGF−1Rまたは未分化リンパ腫キナーゼを阻害する方法であって、細胞もしくは組織系または哺乳類対象に、治療上有効量の請求項1〜15の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩を、所望により第2の治療薬剤と組み合わせて投与して、該キナーゼを阻害することを含む方法。
【請求項18】
第2の治療薬剤が化学療法剤である、請求項17の方法。
【請求項19】
化合物を第2の治療薬剤の前、それと同時またはその後に投与する、請求項17または18の方法。
【請求項20】
IGF−1Rまたは未分化リンパ腫キナーゼによって介在される状態の処置用医薬の製造のための、所望により化学療法剤と組み合わせた、請求項1〜15の何れかの化合物またはその医薬組成物の使用であって、当該状態が自己免疫疾患、移植疾患、感染症または細胞増殖性障害である、使用。
【請求項21】
細胞増殖性障害が多発性骨髄腫、神経芽腫、リンパ腫、白血病、黒色腫、肉腫、骨肉腫、滑膜肉腫、ユーイング肉腫、肝がん、消化器間質腫瘍または乳房、腎臓、前立腺、結直腸、甲状腺、卵巣、膵臓、肺、子宮、呼吸管、脳、消化管、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺または副甲状腺の固形腫瘍である、請求項20の使用。

【公表番号】特表2010−538004(P2010−538004A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523103(P2010−523103)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/074392
【国際公開番号】WO2009/032668
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】