説明

キノン骨格を有する化合物の安定化方法及び安定化された組成物

本発明は、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤が共存した状態で、キノン骨格を有する化合物を安定化する方法、並びに、安定化されたキノン骨格を有する化合物含有組成物を提供することを目的とする。本発明は、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤を含有してなる組成物において、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非油溶性被覆媒体で被覆した状態で油性物質中に共存させるか、又は、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非水溶性被覆媒体で被覆した状態で水性物質中に共存させてなることを特徴とする、キノン骨格を有する化合物の安定化方法、及び、キノン骨格を有する化合物を含有してなる組成物である。本発明によれば、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤が共存しても、キノン骨格を有する化合物を安定に保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノン骨格を有する化合物を含有する組成物の安定化方法に関する。ユビデカレノンは、優れた食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
キノン骨格を有する化合物である、補酵素Q(ユビキノン)、ビタミンK、プラストキノン、ピロロキノリンキノン等は、生体反応において、重要な役割を果たすことが知られている。
例えば、広く生物界に分布するベンゾキノン誘導体である補酵素Q(ユビキノン)は、細菌から哺乳動物まで広く生体に分布する必須成分であり、生体内の細胞中におけるミトコンドリアの電子伝達系構成成分として知られている。補酵素Qは、ミトコンドリア内において酸化と還元を繰り返すことで、電子伝達系における伝達成分としての機能を担っていることが知られている。補酵素Qの生理的作用としては、ミトコンドリア賦活作用によるエネルギー生産の活性化、心機能の活性化、細胞膜の安定化効果、抗酸化作用による細胞の保護効果等が挙げられている。ヒトでは、10のイソプレン単位を持つ補酵素Q10が主成分であり、生体内においては、通常、40〜90%程度が還元型として存在している。
【0003】
なかでも、補酵素Q10は、ユビデカレノンとも呼ばれ、欧米では健康食品として用いられており、近年では、日本でも栄養補助食品としても用いられてきている。また、そのビタミン様の機能からビタミンQとも呼ばれており、弱った細胞活性を健康な状態に戻す栄養源として身体を若返らせる成分である。補酵素Q10は、ミトコンドリア、リソゾーム、ゴルジ体、ミクロソーム、ペルオキシソーム、或いは細胞膜等に局在し、電子伝達系の構成成分としてATP産生賦活、生体内での抗酸化作用、膜安定化に関与している事が知られている生体の機能維持に必要不可欠な物質である。
【0004】
また、血液凝固活性をもつ2−メチル−1,4−ナフトキノンの誘導体の一般名であるビタミンKも生体内の必須成分として知られている。例えば、ビタミンK1(フィロキノン)は、3位にフィチル側鎖をもっており、植物にみられる唯一のビタミンK同族化合物として知られており、ビタミンK2は、3位に4から13のイソプレン単位を含むイソプレニル側鎖を持ち、一般にメナキノンと呼ばれている。ヒトにおいては、イソプレニル側鎖の繰り返し構造を4個持つメナキノン−4(メナテトレノン)が腸管内の細菌によって合成され、ビタミンKの必要量の一部を供給している。これらは、血液凝固反応を起こす酵素(トロンビン)の前駆体であるプロトロンビンが肝臓で合成される際に必要な物質であり、血液凝固を促進する止血剤として極めて重要な化合物である。さらに、骨からのカルシウムの溶出を防ぐ作用も有しているため、骨粗鬆症治療薬としての用途も注目されている。
【0005】
これらキノン骨格を有する化合物は、他の活性成分、例えば、後述するビタミン類やアミノ酸類等と共に摂取するのが、簡便性の観点から好ましい。そのため、特に、健康食品分野においては、これらキノン骨格を有する化合物とともに他の活性成分を含んだ合剤が主流となっている。ところが、本発明者らがこれら合剤に関して予備的に検討した結果、ビタミンC類等の抗酸化効果を有する物質(抗酸化剤)とユビデカレノンとが共存する組成物においては、環境・成分等により程度の差は見られるものの、組成物中のユビデカレノンの含有量が低下することがわかった。
【0006】
さらに、上述した条件においては、抗酸化剤自体が分解することにも注目すべきである。例えば、ビタミンC類(アスコルビン酸類)を使用した場合に分解して生成するデヒドロアスコルビン酸類や、更に分解して生成するシュウ酸は、アスコルビン酸類とは異なり、有害性が高い。例えば、肝臓や腎臓中の過酸化脂質量の増加と抗酸化物質の減少や、腎臓中のシュウ酸量の増加が報告されており、酸化ストレスに対する抵抗力の低下や尿管結石を発症し易い(非特許文献1)等の副作用が懸念され、製品品質上の問題も生じる。
【非特許文献1】ニュートリション リサーチ(Nutriton Research)13巻、667−676頁、1993年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑み、キノン骨格を有する化合物を含有する食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等、或いはそれらの素材や組成物の調製に際して、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤が共存した組成物においても、キノン骨格を有する化合物を安定に保持できる、キノン骨格を有する化合物の安定化方法ならびに安定化された組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意研究した結果、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非油溶性被覆媒体で被覆した状態で油性物質中に共存させるか、あるいは、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非水溶性被覆媒体で被覆した状態で水性物質中に共存させることにより、キノン骨格を有する化合物を安定に保持することを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤とを含有してなる組成物において、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非油溶性被覆媒体で被覆した状態で油性物質中に共存させるか、又は、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非水溶性被覆媒体で被覆した状態で水性物質中に共存させることを特徴とする、キノン骨格を有する化合物の安定化方法である。
【0010】
さらに、本発明は、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤を含有してなり、かつ、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非油溶性被覆媒体で被覆した状態で油性物質中に共存させてなるか、又は、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非水溶性被覆媒体で被覆した状態で水性物質中に共存させてなることを特徴とする、キノン骨格を有する化合物を含有してなる組成物でもある。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤とを含有してなる組成物において、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非油溶性被覆媒体で被覆した状態で油性物質中に共存させるか、又は、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非水溶性被覆媒体で被覆した状態で水性物質中に共存させることにより、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の両者が共存した組成物においても、キノン骨格を有する化合物を、好ましくはキノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の両者を、安定に保持することができる。
特に、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非油溶性被覆媒体で被覆した状態で油性物質中に共存させることが好ましい。
【0012】
本発明におけるキノン骨格を有する化合物と抗酸化剤とを含有してなる組成物は、抗酸化剤と被覆されたキノン骨格を有する化合物の組み合わせでも良いし、キノン骨格を有する化合物と被覆された抗酸化剤の組み合わせでも良い。言うまでもなく、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の両者が被覆されているものが好ましい。
【0013】
ここで、「キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の両者が被覆されている」とは、キノン骨格を有する化合物及び抗酸化剤がそれぞれ個別にあるいは一緒に被覆されていることを指す。特に、キノン骨格を有する化合物及び抗酸化剤がそれぞれ個別に被覆されていることが好ましい。
【0014】
本発明における被覆とは、キノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤の結晶及び/又は融液(油状物を含む)の表面の一部が被覆媒体により覆われていればよい。キノン骨格を有する化合物又は抗酸化剤のどちらか一方が被覆されている場合は、被覆されている物質の表面積の50%以上被覆されているのが好ましく、60%以上被覆されているのがより好ましく、70%以上被覆されているのが特に好ましく、80%以上被覆されているのが中でも好ましく、90%以上被覆されているのがとりわけ好ましい。キノン骨格を有する化合物及び抗酸化剤の両者が被覆されている場合は、キノン骨格を有する化合物及び抗酸化剤の表面積全体の50%以上被覆されているのが好ましく、60%以上被覆されているのがより好ましく、70%以上被覆されているのが特に好ましく、80%以上被覆されているのが中でも好ましく、90%以上被覆されているのがとりわけ好ましい。言うまでもなく、キノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤の表面積のすべてが被覆されているものが最も好ましい。
【0015】
まず、被覆されたキノン骨格を有する化合物及び抗酸化剤の製法について述べる。
【0016】
本発明において使用しうるキノン骨格を有する化合物としては、食品・医薬品用途に用いられるベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、キノリンキノン等のキノン骨格を有する化合物であればよく、言うまでもなく、o−キノン、p−キノン問わず使用できる。好ましくは、ユビキノン、フィロキノン、メナキノン、メナジオン、ピロロキノリンキノン等であり、より好ましくは、ユビキノン、フィロキノン、メナキノン等であり、特に好ましくは、ユビデカレノン、フィロキノン、メナテトレノンである。これらキノン骨格を有する化合物は、2種以上を併用して使用することもできる。
【0017】
本発明において使用するキノン骨格を有する化合物は、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法により得ることができ、発酵、天然物からの抽出により得られたものが好ましい。
【0018】
抗酸化剤としては、食品・医薬品用途に許容できるものであれば特に制限されず、例えば、グルタチオン、L−システイン、N−アセチルシステイン、還元型α−リポ酸、トコトリエノール、ビタミンE(α−トコフェロール)及びそのエステル誘導体、ビタミンC(アスコルビン酸)並びにそのエステル誘導体及び塩、エリソルビン酸並びにそのエステル誘導体及び塩、ビタミンA及びそのエステル誘導体、カロテノイド、ルチン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、フラボノイド、L−カルニチン、アセチル−L−カルニチン、プロピオニル−L−カルニチン、マグネシウム、亜鉛、セレン、マンガン、リボフラビン、ナイアシンアミド、クルクミノイド、ぶどう種子や松の樹皮から抽出されるプロアントシアニジン、NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、NADPH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)、レスベラトロル、苔桃抽出物、オオアザミ抽出物、魚油等から濃縮して得られる高度不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましくは、グルタチオン、L−システイン、N−アセチルシステイン、トコトリエノール、ビタミンE(α−トコフェロール)及びそのエステル誘導体、ビタミンC(アスコルビン酸)並びにそのエステル誘導体及び塩、エリソルビン酸並びにそのエステル誘導体及び塩、ビタミンA及びそのエステル誘導体、カロテノイド、ルチン、アスタキサンチン、リコペン、フラボノイド、L−カルニチンを挙げることができる。より好ましくは、ビタミンE及びそのエステル誘導体、ビタミンC並びにそのエステル誘導体及び塩を挙げることができる。
言うまでもなく、上記抗酸化剤は、2種以上の混合物として使用しても良い。
【0019】
本発明で用いる被覆媒体としては、特に制限されないが、例えば非油溶性被覆媒体としては、高、中又は低ゲル化能を有するゼラチン、糖、アラビアガム、高級脂肪酸の糖エステル、トラガント、ペクチン、プルラン、乾燥卵白、ミルク、シェラック、カードラン、セルロース誘導体、カゼイン、カゼイン化合物、デンプン等を挙げることができる。非水溶性被覆媒体としては、高級脂肪酸の糖エステル、デンプン、シェラック等を挙げることができる。
好ましくは、上記非油溶性被覆媒体であり、特に好ましくは、ゼラチン、糖、アラビアガム、プルラン、カードラン、セルロース誘導体、デンプンである。
言うまでもなく、これらは、2種以上の混合物としても使用できる。
【0020】
尚、本明細書で述べる非水溶性/非油溶性被覆媒体とは、室温で、後述の水性物質/油性物質に対する溶解度として、普通約50重量%以下、好ましくは約40重量%以下、特に好ましくは約30重量%以下、中でも好ましくは約20重量%以下、とりわけ好ましくは約10重量%以下である物質をさす。したがって、高級脂肪酸の糖エステル、デンプン、シェラックのように、非水溶性かつ非油溶性の被覆媒体も使用できる。
【0021】
上記被覆媒体のうち、糖としては、例えば、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、デンプン糖、マンニトール、ソルビトール、ガラクトース、スクロース、デキストリン、マルトデキストリン等を挙げることができる。好ましくは、グルコース、スクロース、デキストリン、マルトデキストリンである。
デンプンとしては、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、小麦デンプン等を挙げることができる。好ましくは、コーンスターチである。
セルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース等を挙げることができる。好ましくは、メチルセルロースである。
高級脂肪酸の糖エステルとしては、例えば、ショ糖パルミチン酸エステル等を挙げることができる。
カゼイン化合物としては、例えば、カゼインナトリウム等を挙げることができる。
【0022】
また、必要に応じて、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、グリセリン脂肪酸エステル、高級アルコール、硬化油、アルギン酸塩、レシチン等のリン脂質、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、α−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート等の乳化剤等を、被覆媒体と併せて使用することもできる。
【0023】
被覆されているキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤に対する、上記被覆媒体の割合は、特に制限されないが、普通、重量比で約0.1w/w%以上、好ましくは約1w/w%以上、より好ましくは約5w/w%以上、特に好ましくは約10w/w%以上である。上限は、普通約90w/w%、好ましくは約80w/w%、より好ましくは約70w/w%、特に好ましくは約60w/w%、とりわけ好ましくは約50w/w%である。通常、約0.1〜90w/w%で好適に実施できるが、コスト等との関連から最も適切な重量比を設定するのが好ましい。
【0024】
被覆されたキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤を調製するには、上記被覆媒体の溶液又は懸濁液にキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤を加えても良いし、キノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤の溶液又は懸濁液に上記被覆媒体の溶液又は懸濁液を加えても良い。言うまでもなく、キノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤の溶液又は懸濁液と、上記被覆媒体の溶液又は懸濁液を混合しても良い。
【0025】
前述した抗酸化剤を2種以上併用する場合には、それぞれ単独に被覆しても良いし、2種以上の混合物として被覆しても良い。また、前述したキノン骨格を有する化合物を2種以上併用する場合には、それぞれ単独に被覆しても良いし、2種以上の混合物として被覆しても良い。
【0026】
上記溶液又は懸濁液を調製するための溶媒は、被覆されるキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤の溶解性により異なり、一律に規定できないが、例えば、水、アルコール類、炭化水素類、エステル類、後述する油脂類等を挙げることができる。アルコール類としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等を挙げることができる。炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン等を挙げることができる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ギ酸エチル等を挙げることができる。
【0027】
キノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤と上記被覆媒体を混合するときの温度、撹拌、混合等の条件は特に制限されないが、適切な分散を得る為に、加温したり、撹拌強度や混合強度を高めたりしても良い。
【0028】
キノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤と上記被覆媒体の混合物の乾燥方法としては、特に制限されないが、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、フリーズドライヤー、流動乾燥機、流動層内蔵型スプレードライヤー、真空乾燥機等を用いる、一般的に知られた方法で乾燥を行うことができる。一般的には、溶媒含量が約15w/w%以下、好ましくは約10w/w%以下、より好ましくは約6w/w%以下になるまで、常圧もしくは減圧下に乾燥される。また、マイクロ波を用いて乾燥することもできる。
【0029】
乾燥温度は、特に制限されず、室温以下で乾燥することもできるが、通常、約30℃以上、好ましくは約40℃以上である。言うまでもなく、約100℃前後、あるいはそれ以上の高温で短時間に乾燥する方法も好ましく用いられる。
【0030】
このようにして得られる被覆されたキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤は、乾燥前、乾燥後、あるいは乾燥時に、必要に応じて大粒子や微粒子から分離することもできる。分離は、篩を通過させる方法や気流を用いて分級する等の公知の方法を使用することができる。言うまでもなく、別途粉砕操作を組み入れることもできる。当然のことながら、噴霧条件、乾燥条件、造粒条件や粉砕条件を調節して、好ましい粒径範囲のものを得られるようにするのが望ましい。当該粒径範囲としては、特に限定されないが、好ましくは約10μm〜1mmである。
【0031】
造粒は、流動造粒機等を用いた一般的に知られている方法で行うことができる。乾燥後に造粒する方法、造粒後に乾燥する方法、乾燥と造粒を同時に行う方法のいずれでもよい。したがって、キノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤に、上記被覆媒体溶液を噴霧・添加した後、乾燥・造粒する方法も採用できる。このように乾燥・造粒することにより、キノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤の一部又は全部を被覆することができる。
【0032】
このようにして得られた被覆されたキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤を用いることにより、所望のキノン骨格を有する化合物と抗酸化剤を含有する組成物にすることができる。
ここで使用するキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤は、抗酸化剤と被覆されたキノン骨格を有する化合物の組み合わせでも良いし、キノン骨格を有する化合物と被覆された抗酸化剤の組み合わせでも良い。言うまでもなく、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の両方が被覆されているものも好ましい。好ましくは、キノン骨格を有する化合物が被覆されているものである。
【0033】
上記のようにしてキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤を被覆することにより、両者が共存する組成物中においてもキノン骨格を有する化合物を安定化することができる。
【0034】
非油溶性被覆媒体で被覆したキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤は、油性物質中に共存させ、また、非水溶性被覆媒体で被覆したキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤は、水性物質中で共存させる。言うまでもなく、後述する他の素材等の影響も加味して、被覆媒体を選定するのが特に好ましい。
被覆されたキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤を、油性物質中又は水性物質中に共存させる態様としては、例えば、油性物質中又は水性物質中に、被覆されたキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤を、添加、混合する態様等が挙げられる。
【0035】
本明細書で述べる油性物質とは、通常水と2層を形成する溶媒、即ち、界面活性剤等の乳化作用を有する物質が存在しない場合に、水と2層を形成する溶媒であれば、特に制限されない。例えば、後述する油脂、ヘキサン、酢酸エチル等が挙げられる。
水性物質としては、水と1層を形成する溶媒であれば、特に制限されず、例えば水、エタノール等が挙げられる。言うまでもなく、水のみの態様も含まれるし、水にエタノール等の有機溶媒が混合し、1層となる態様も含まれる。
尚、被覆されたキノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤を調製するための溶液又は懸濁液に用いられる前述の溶媒も、その性質に応じて、油性物質又は水性物質として用いることもできる。
【0036】
組成物中に含まれるキノン骨格を有する化合物の割合は、キノン骨格を有する化合物に期待する効果・効能が発揮される量であればよく、キノン骨格を有する化合物の種類にもよるため、一律に規定できないが、全組成物中、例えば、約0.01wt%以上、好ましくは約0.1wt%以上、より好ましくは約1wt%以上、特に好ましくは約5wt%以上、中でも好ましくは約10wt%以上である。上限は、普通約99wt%、好ましくは約95wt%、より好ましくは約90wt%、特に好ましくは約85wt%、中でも好ましくは約80wt%、とりわけ好ましくは約70wt%である。
【0037】
キノン骨格を有する化合物に対する抗酸化剤の割合は、抗酸化剤に期待する効果・効能が発揮される量であればよく、特に制限されないが、例えば、重量比で普通約0.01w/w%以上、好ましくは約0.1w/w%以上、より好ましくは約1w/w%以上、特に好ましくは約5w/w%以上、とりわけ約10w/w%以上である。上限は、約1000w/w%以下、好ましくは約500w/w%以下、より好ましくは約300w/w%以下、特に好ましくは約200w/w%以下である。
【0038】
本発明の組成物に含むことのできる物質としては、特に制限されないが、キノン骨格を有する化合物及び抗酸化剤の他に、例えば、油脂、界面活性剤、グリセリン、ポリエチレングリコール、水、エタノール等を挙げることができる。
尚、当該物質は、その性質に応じて、油性物質又は水性物質として用いることもできる。
【0039】
油脂としては、動植物からの天然油脂であってもよく、合成油脂や加工油脂であってもよい。より好ましくは、食用又は医薬用に許容されるものである。例えば、植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、オリーブ油等を挙げることができ、動物油脂としては、例えば、豚脂、乳脂、魚油、牛脂等を挙げることができ、更に、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂(例えば、硬化油)も挙げることができる。言うまでもなく、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)も使用しうる。また、これらの混合物を使用しても良い。
中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜12、好ましくは8〜12のトリグリセリド等を挙げることができる。
【0040】
上記油脂のうち、取り扱い易さ、臭気等の面から植物油脂、合成油脂や加工油脂が好ましい。これらは油脂の価格、キノン骨格を有する化合物の安定性や溶解性等を考慮して選定するのが好ましい。例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、MCT等が好ましく、米油、大豆油、菜種油、サフラワー油、MCT等が特に好ましい。
【0041】
界面活性剤としては、例えば、脂肪酸の部分グリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リン脂質、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0042】
脂肪酸の部分グリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12のモノグリセリドやジグリセリド等を挙げることができる。
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が、各々6〜18、好ましくは6〜12のモノグリセリドやジグリセリド等を挙げることができる。
【0043】
リン脂質としては、例えば、卵黄レシチン、精製大豆レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ジセチルリン酸、ステアリルアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールアミン、カルジオリピン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、及び、これらの混合物等を挙げることができる。
【0044】
上記界面活性剤のうち、脂肪酸の部分グリセリド、リン脂質、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が特に好ましい。
【0045】
また、本発明における組成物には、上記油脂、界面活性剤、グリセリン、ポリエチレングリコール、水、エタノール等の他に、他の素材が適宜添加されていてもよい。
このようなものとしては、特に制限されず、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤等を挙げることができる。言うまでもなく、キノン骨格を有する化合物及び抗酸化剤以外の他の活性成分を共存させることを妨げない。
上記添加剤が有する効果を勘案し、本発明の効果を妨げない場合、必要に応じて上記添加剤を個別に、あるいは、キノン骨格を有する化合物及び/又は抗酸化剤と一緒に被覆してもよい。
【0046】
上記賦形剤としては特に制限されないが、例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、前述したデンプン、マンニトール、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等を挙げることができる。
上記崩壊剤としては特に制限されないが、例えば、でんぷん、寒天、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、トラガント等を挙げることができる。
【0047】
上記滑沢剤としては特に制限されないが、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、シリカ等を挙げることができる。
上記結合剤としては特に制限されないが、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トラガント、シェラック、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ソルビトール等を挙げることができる。
【0048】
上記着色剤としては特に制限されないが、例えば、医薬品、食品に添加することが許可されているもの等を挙げることができる。
上記凝集防止剤としては特に制限されないが、例えば、ステアリン酸、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ酸等を挙げることができる。
【0049】
上記吸収促進剤としては特に制限されないが、例えば、高級アルコール類、高級脂肪酸類等を挙げることができる。
上記溶解補助剤としては特に制限されないが、例えば、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸等を挙げることができる。
【0050】
上記安定化剤としては特に制限されないが、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、蜜蝋等を挙げることができる。
上記キノン骨格を有する化合物及び抗酸化剤以外の活性成分としては、例えば、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、ポリフェノール、有機酸、糖類、ペプチド、タンパク質等を挙げることができる。
【0051】
組成物中に油脂を含む場合、含まれる油脂の組成物全体に対する割合は、特に制限されないが、組成物の粘度、流動性等の観点から、例えば、普通約10wt%以上、好ましくは約20wt%以上、より好ましくは約30wt%以上であり、上限は、普通約99wt%、好ましくは約95wt%、より好ましくは約90wt%、特に好ましくは約80wt%、とりわけ好ましくは約70wt%である。
【0052】
組成物中に界面活性剤、グリセリン、及び/又は、ポリエチレングリコールを含む場合、含まれる界面活性剤、グリセリン、及び/又は、ポリエチレングリコールの組成物全体に対する割合は、普通約1wt%以上、好ましくは約3wt%以上、より好ましく約5wt%以上、特に好ましくは約10wt%以上である。また、本発明者らの検討により、組成物中の界面活性剤の割合が多い場合には、キノン骨格を有する化合物の分解が促進されることがわかっているため、上限は、普通約80wt%以下、好ましくは約70wt%以下、より好ましくは約60wt%以下、特に好ましくは約50wt%以下である。
【0053】
また、組成物中に水性物質として水及び/又はエタノールを含む場合、含まれる水及び/又はエタノールの組成物全体に対する割合は、普通約1wt%以上、好ましくは約5wt%以上、より好ましくは約10wt%以上、特に好ましくは約20wt%以上、とりわけ好ましくは約30wt%以上であり、上限は、普通約99.9wt%、好ましくは約99wt%、より好ましくは約95wt%、特に好ましくは約90wt%、とりわけ好ましくは約80wt%である。
【0054】
上記組成物とすることにより、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤が共存しても、キノン骨格を有する化合物を安定に保持できる組成物を得ることができる。
【0055】
上述のようにして得られたキノン骨格を有する化合物と抗酸化剤を含有する組成物は、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬等として使用するのが好ましい。
また、上記キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤を含有する組成物は、そのまま使用することもできるが、特に、食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、医薬品、治療薬、予防薬等として使用する場合には、上記組成物をカプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセル等)、錠剤(チュアブル錠を含む)、シロップ、飲料等の経口投与形態に更に加工して好ましく使用しうるし、クリーム、坐薬、練り歯磨き等のための形態に更に加工しても使用しうる。特に好ましくは、カプセル剤であり、とりわけ、ソフトカプセルである。
【0056】
カプセル基材としては特に制限されず、牛骨、牛皮、豚皮、魚皮等を由来とするゼラチンをはじめとして、他の基材(例えば、食品添加物として使用しうる、カラギーナン、アルギン酸等の海藻由来品、ローカストビーンガム、グアーガム等の植物種子由来品等の増粘安定剤;セルロース類を含む製造用剤等)も使用しうる。
【0057】
また、本発明のキノン骨格を有する化合物及び抗酸化剤を含有する組成物や上記カプセル剤は、例えば、パン、パスタ、雑炊、米飯、ケーキ、菓子等の調理時に適宜添加して用いることもできる。言うまでもなく、他の食品形態として利用することも妨げない。
【0058】
上述したキノン骨格を有する化合物及び抗酸化剤を含有する組成物やその経口投与形態においては、所定期間の保存後、キノン骨格を有する化合物を、キノン骨格を有する化合物の含有率(所定期間の保存前の当該化合物の重量に対する、保存後の当該化合物の重量の割合)として、約92重量%以上、好ましくは約95重量%以上、より好ましくは約97重量%以上、特に好ましくは約98重量%以上、とりわけ約99重量%以上維持することが期待できる。上記保存期間は、例えば、1日以上、好ましくは1週間以上、より好ましくは1ヶ月以上、特に好ましくは半年以上、中でも好ましくは1年以上、とりわけ好ましくは2年以上である。
【0059】
本発明によれば、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の両者を含有する組成物においても、キノン骨格を有する化合物を安定に保持し、簡便に製造することができるため、食用等の組成物や経口投与形態としての利用にも適する等、広範に利用できる方法であるため、その利点は大きい。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤が共存しても、キノン骨格を有する化合物を安定に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下に実施例を揚げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中のユビデカレノン及びメナテトレノンの含有率は下記HPLC分析により求めたが、得られたユビデカレノンの含有率は本発明における純度の限界値を規定するものではない。
【0062】
(HPLC分析条件)
ユビデカレノン
カラム:SYMMETRY C18(Waters製)250mm(長さ)4.6mm(内径)、移動相;COH:CHOH=4:3(v:v)、検出波長;210nm、流速;1ml/min、ユビデカレノンの保持時間;13.3min。
メナテトレノン
カラム:SYMMETRY C18(Waters製)250mm(長さ)4.6mm(内径)、移動相;CHOH、検出波長;210nm、流速;1ml/min、メナテトレノンの保持時間;11.2min。
【0063】
(実施例1〜7)
ユビデカレノン結晶40gを気流流動造粒装置に入れ、表1に示す各種被覆媒体の溶液を噴霧し、被覆・造粒した。更に、真空で乾燥し、被覆されたユビデカレノン結晶を得た。粒径は、50μm〜600μmであった。その後、篩にかけ、粒径255μm〜500μmのものを取得した。尚、この造粒物に含まれる溶媒含量は、6〜8%程度であった。
【0064】
気流流動造粒装置
装置:フロイント産業製 フローコーター「MINI」
スプレーダイヤル:ON/OFF=0.5/0.5
パルスジェットダイヤル:ON/OFF=0.5/0.5
気流入り口温度:90℃
気流出口温度:なりゆき(約40〜50℃)
噴霧圧力:0.7〜1.0kg/cm
気流流量コントロールダイヤル:60〜80
スプレーON時の噴霧速度:約1mL/min.
【0065】
【表1】

【0066】
(実施例8〜10)
メナテトレノン結晶40gを気流流動造粒装置に入れ、表2に示す各種被覆媒体の溶液を噴霧し、被覆・造粒した。更に、真空で乾燥し、被覆されたメナテトレノン結晶を得た。粒径は、50μm〜600μmであった。尚、この造粒物に含まれる溶媒含量は、6〜8%程度であった。
【0067】
気流流動造粒装置
装置:フロイント産業製 フローコーター「MINI」
スプレーダイヤル:ON/OFF=0.5/0.5
パルスジェットダイヤル:ON/OFF=0.5/0.5
気流入り口温度:90℃
気流出口温度:なりゆき(約40〜50℃)
噴霧圧力:0.7〜1.0kg/cm
気流流量コントロールダイヤル:60〜80
スプレーON時の噴霧速度:約1mL/min.
【0068】
【表2】

【0069】
(実施例11〜15)
表3に示す抗酸化剤40gを気流流動造粒装置に入れ、グルコース水溶液(グルコース/水=4g/40mL)を噴霧し、被覆・造粒した。更に、真空で乾燥し、グルコースで被覆された抗酸化剤の結晶を得た。粒径は、50μm〜600μmであった。尚、この造粒物の水分は、6〜8%程度であった。
【0070】
気流流動造粒装置
装置:フロイント産業製 フローコーター「MINI」
スプレーダイヤル:ON/OFF=0.5/0.5
パルスジェットダイヤル:ON/OFF=0.5/0.5
気流入り口温度:90℃
気流出口温度:なりゆき(約40〜50℃)
噴霧圧力:0.7〜1.0kg/cm
気流流量コントロールダイヤル:60〜80
スプレーON時の噴霧速度:約1mL/min.
【0071】
【表3】

【0072】
(実施例16〜18)
ユビデカレノン20gを水100mLに懸濁した。この懸濁液に表4に示す量のグルコースを溶解させた。この懸濁液を室温下、3日間真空乾燥した。これを粉砕した後、篩にかけて、355〜600μmの、グルコースで被覆されたユビデカレノンの結晶を得た。この結晶を20〜40℃の範囲で1日間真空乾燥した。水分はいずれも7〜13%であった。
【0073】
【表4】

【実施例19】
【0074】
ゼラチン20gを水160mLに溶解させた。このゼラチン水溶液にユビデカレノン20gを添加し、ホモジナイザーを用いて乳化させた。この乳化液をスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥(入口温度:170℃)し、ゼラチンで被覆されたユビデカレノンの結晶を得た。水分は9%であった。
【0075】
(実施例20〜22)
ゼラチン20gを水160mLに溶解させた。このゼラチン水溶液に表5に示す抗酸化剤20gを添加した。(抗酸化剤にL−アスコルビン酸、L−アスコルビルパルミテートを使用した場合には、ナタネ油20gも併せて添加した。)次いで、この溶液をホモジナイザーを用いて乳化させた。この乳化液をスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥(入口温度:170℃)し、ゼラチンで被覆された抗酸化剤の結晶を得た。水分はいずれも6〜10%であった。
【0076】
【表5】

【0077】
(実施例23〜26、比較例1、2)
ゼラチンで被覆されたユビデカレノン1gとゼラチンで被覆された抗酸化剤1gとを、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート/ソルビタンモノオレエート/中鎖脂肪酸トリグリセリド/グリセリン=65/5/25/5(重量比)の混合溶液30gに混合した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃にて保存した。使用したユビデカレノンと抗酸化剤の由来、及び、1日保存後のユビデカレノンの含有率を表6に示す。尚、被覆していないユビデカレノンと抗酸化剤での結果もあわせて示す。
【0078】
【表6】

【0079】
(実施例27〜32、比較例3)
被覆されたユビデカレノン1gと被覆された抗酸化剤1gとを、ナタネ油/大豆レシチン95/5(重量比)の混合溶液30gに混合した。この溶液を窒素雰囲気下、40℃にて3ヶ月間保存した。使用したユビデカレノンと抗酸化剤の由来、及び、ユビデカレノンの含有率を表7に示す。尚、被覆していないユビデカレノンと抗酸化剤での結果もあわせて示す。
【0080】
【表7】

【実施例33】
【0081】
165gのナタネ油、10gの硬化油、5gのレシチン、5gの蜜蝋を70℃にて混合した。実施例1で得たグルコースで被覆されたユビデカレノン25g(ユビデカレノンとして22.7g)、実施例11で得たグルコースで被覆されたL−アスコルビン酸25g(L−アスコルビン酸として22.7g)を添加し、ユビデカレノンとL−アスコルビン酸を含有する組成物を得た。この組成物を1カプセル当たり310mg(ユビデカレノン30mg相当)となるようなゼラチンのソフトカプセル製剤とした。
【実施例34】
【0082】
145gのナタネ油、20gのテトラグリセリンモノオレエート、10gの硬化油、5gのレシチン、5gの蜜蝋を70℃にて混合した。実施例1で得たグルコースで被覆されたユビデカレノン25g(ユビデカレノンとして22.7g)、実施例13で得たグルコースで被覆されたα−トコフェロール25g(α−トコフェロールとして22.7g)を添加し、ユビデカレノンとα−トコフェロールを含有する組成物を得た。この組成物を1カプセル当たり310mg(ユビデカレノン30mg相当)となるようなゼラチンのソフトカプセル製剤とした。
【実施例35】
【0083】
ゼラチン10gを水80mLに溶解させた。このゼラチン水溶液にメナテトレノン10gを添加し、ホモジナイザーを用いて乳化させた。この乳化液をスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥(入口温度:170℃)し、ゼラチンで被覆されたメナテトレノンの結晶を得た。水分は10%であった。
【実施例36】
【0084】
145gのナタネ油、20gのテトラグリセリンモノオレエート、10gの硬化油、5gのレシチン、5gの蜜蝋を70℃にて混合した。実施例35で得たゼラチンで被覆されたメナテトレノン40mg(メナテトレノンとして20mg)、実施例11で得たグルコースで被覆されたL−アスコルビン酸25g(L−アスコルビン酸として22.7g)を添加し、メナテトレノンとL−アスコルビン酸を含有する組成物を得た。この組成物を1カプセル当たり305mg(メナテトレノン30μg相当)となるようなゼラチンのソフトカプセル製剤とした。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤が共存しても、キノン骨格を有する化合物を安定に保持することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤を含有してなる組成物において、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非油溶性被覆媒体で被覆した状態で油性物質中に共存させるか、又は、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非水溶性被覆媒体で被覆した状態で水性物質中に共存させることを特徴とする、キノン骨格を有する化合物の安定化方法。
【請求項2】
キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤を含有する組成物において、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非油溶性被覆媒体で被覆した状態で油性物質中に共存させることによる請求項1記載の安定化方法。
【請求項3】
キノン骨格を有する化合物が非油溶性被覆媒体又は非水溶性被覆媒体により被覆されたものである請求項1又は2記載の安定化方法。
【請求項4】
キノン骨格を有する化合物が、ユビキノン、フィロキノン、メナキノン、メナジオン及びピロロキノリンキノンから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項5】
キノン骨格を有する化合物が、ユビデカレノン、フィロキノン及びメナテトレノンから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項6】
抗酸化剤が、グルタチオン、L−システイン、N−アセチルシステイン、還元型α−リポ酸、トコトリエノール、ビタミンE(α−トコフェロール)及びそのエステル誘導体、ビタミンC(アスコルビン酸)並びにそのエステル誘導体及び塩、エリソルビン酸並びにそのエステル誘導体及び塩、ビタミンA及びそのエステル誘導体、カロテノイド、ルチン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、フラボノイド、L−カルニチン、アセチル−L−カルニチン、プロピオニル−L−カルニチン、マグネシウム、亜鉛、セレン、マンガン、リボフラビン、ナイアシンアミド、クルクミノイド、プロアントシアニジン、NADH、NADPH、レスベラトロル、苔桃抽出物、オオアザミ抽出物、及び、高度不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項7】
抗酸化剤が、ビタミンE及びそのエステル誘導体、及び、ビタミンC並びにそのエステル誘導体及び塩から選ばれる少なくとも1種である請求項6記載の安定化方法。
【請求項8】
非油溶性被覆媒体が、高、中又は低ゲル化能を有するゼラチン、糖、アラビアガム、高級脂肪酸の糖エステル、トラガント、ペクチン、プルラン、乾燥卵白、ミルク、シェラック、カードラン、セルロース誘導体、カゼイン、カゼイン化合物及びデンプンから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項9】
非水溶性被覆媒体が、デンプン、高級脂肪酸の糖エステル及びシェラックから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は3〜7のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項10】
非油溶性被覆媒体が、ゼラチン、糖、アラビアガム、プルラン、カードラン、セルロース誘導体及びデンプンから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項11】
糖が、グルコース、スクロース、デキストリン及びマルトデキストリンから選ばれる少なくとも1種である請求項10記載の安定化方法。
【請求項12】
キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤を含有してなり、かつ、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非油溶性被覆媒体で被覆した状態で油性物質中に共存させてなるか、又は、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非水溶性被覆媒体で被覆した状態で水性物質中に共存させてなることを特徴とする、キノン骨格を有する化合物を含有してなる組成物。
【請求項13】
キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤を含有してなり、かつ、キノン骨格を有する化合物と抗酸化剤の少なくとも一方を非油溶性被覆媒体で被覆した状態で油性物質中に共存させてなることを特徴とする請求項12記載の組成物。
【請求項14】
キノン骨格を有する化合物が非油溶性被覆媒体又は非水溶性被覆媒体により被覆されたものである請求項12又は13記載の組成物。
【請求項15】
キノン骨格を有する化合物が、ユビキノン、フィロキノン、メナキノン、メナジオン及びピロロキノリンキノンから選ばれる少なくとも1種である請求項12〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
キノン骨格を有する化合物が、ユビデカレノン、フィロキノン及びメナテトレノンから選ばれる少なくとも1種である請求項12〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
抗酸化剤が、グルタチオン、L−システイン、N−アセチルシステイン、還元型α−リポ酸、トコトリエノール、ビタミンE(α−トコフェロール)及びそのエステル誘導体、ビタミンC(アスコルビン酸)並びにそのエステル誘導体及び塩、エリソルビン酸並びにそのエステル誘導体及び塩、ビタミンA及びそのエステル誘導体、カロテノイド、ルチン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、フラボノイド、L−カルニチン、アセチル−L−カルニチン、プロピオニル−L−カルニチン、マグネシウム、亜鉛、セレン、マンガン、リボフラビン、ナイアシンアミド、クルクミノイド、プロアントシアニジン、NADH、NADPH、レスベラトロル、苔桃抽出物、オオアザミ抽出物、及び、高度不飽和脂肪酸から選ばれる少なくとも1種である請求項12〜16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
抗酸化剤が、ビタミンE及びそのエステル誘導体、及び、ビタミンC並びにそのエステル誘導体及び塩から選ばれる少なくとも1種である請求項17記載の組成物。
【請求項19】
非油溶性被覆媒体が、高、中又は低ゲル化能を有するゼラチン、糖、アラビアガム、高級脂肪酸の糖エステル、トラガント、ペクチン、プルラン、乾燥卵白、ミルク、シェラック、カードラン、セルロース誘導体、カゼイン、カゼイン化合物及びデンプンから選ばれる少なくとも1種である請求項12〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
非水溶性被覆媒体が、デンプン、高級脂肪酸の糖エステル及びシェラックから選ばれる少なくとも1種である請求項12又は14〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
非油溶性被覆媒体が、ゼラチン、糖、アラビアガム、プルラン、カードラン、セルロース誘導体及びデンプンから選ばれる少なくとも1種である請求項12〜19のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
糖が、グルコース、スクロース、デキストリン及びマルトデキストリンから選ばれる少なくとも1種である請求項21記載の組成物。
【請求項23】
キノン骨格を有する化合物及び抗酸化剤以外に、他の活性成分をさらに含有することを特徴とする請求項12〜22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
請求項12〜23のいずれかに記載の組成物を加工することにより得られる食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、化粧品、医薬品、治療薬、予防薬。
【請求項25】
請求項12〜23のいずれかに記載の組成物を経口投与形態に加工することにより得られる食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、医薬品、治療薬、予防薬。
【請求項26】
経口投与形態が、カプセル剤である請求項25記載の食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、医薬品、治療薬、予防薬。
【請求項27】
カプセル剤が、ソフトカプセルである請求項26記載の食品、栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助剤、栄養剤、動物薬、飲料、飼料、医薬品、治療薬、予防薬。

【国際公開番号】WO2005/035477
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514591(P2005−514591)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014824
【国際出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】