説明

キャップドメソポーラス珪酸塩

本発明は、ひとつもしくは複数の孔、ならびに、このひとつもしくは複数の孔を塞ぐ、ひとつもしくは複数の放出可能なキャップを有する粒子のようなメソポーラス珪酸塩マトリックスを含む物体を提供する。この物体は、治療薬、ポリヌクレオチド、ポリペプチドもしくは類似物のような、複雑な薬剤またはカプセル化された試薬のための搬送媒介物 ( vehicle ) として有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[関連する出願]
本出願は、 35 U.S.C. §119(e) に基づき、米国特許仮出願60/489,043号(2003年07月22日出願)において優先権主張を行う米国特許出願10/830,479号(2004年04月22日出願、出願中)に係る継続出願であり、これらの出願はこの参照によりこの開示に含まれる。
【0002】
[政府補助金]
本発明は、 NSF Contract No. CHE-0239570 に基づく政府の援助により行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
[背景技術]
界面活性鋳型メソ構造 ( surfactant-templated mesostructures ) の開発は、材料化学における大きな進展を反映している。大きな表面積、調節可能な孔径および孔体積、ならびに明瞭な表面特性といった数々の魅力的な特徴によって、種々のサイズ、形状、および機能のホスト分子のための理想的なメソ構造物質を製造することができる。例えば、
Stein, A., et al., Adv. Mater. 2000, 12, 1403-1419; Sayari, A., et al., Chem. Mater. 2001, 13, 3151-3168 を参照のこと。六角形状に整列するメソポーラス珪酸塩構造は、 Mobil Corp.(M41S materials like MCM-41)、および Kuroda, et al.(FSM-16 materials)に発見された。例としては Kresge, C. T., et al., Nature 359,710 (1992)
、および Yanagisawa, T. et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 63,988 (1990) を参照のこと。現在、IUPACが定めるところのメソポーラスの直径の範囲である 2〜50nm で、単一の孔径の構造を形成することができる。 Sing, et al., Pure Appl. Chem. 57,603 (1985) を参照のこと。
【0004】
薬剤搬送の技術分野では、例えばタキソールのような猛毒性の抗腫瘍剤の搬送のような多くの部位選択性搬送においては、ターゲットとなる細胞もしくは組織に辿り着くまでは「放出量ゼロ」 ( "zero release" ) であることが必要とされる。不適切なことではあるが、多くの薬剤搬送系では、薬剤/担体組成物が水中に分散されると、即座に化合物が放出されてしまう。例えば、 Radin, S., et al., J. Biomed. Mater. Res. 2001, 57, 313-320; Aughenbaugh, W., et al., J. Biomed. Mater. Res. 2001, 57, 321-326; Kortesuo, P., et al., Int. J. Pharm. 2000, 200, 223-229 を参照のこと。生分解性ポリマーに基づく薬剤搬送系のような、他のシステムの放出メカニズムも、担体構造の水和に起因する浸蝕に依存している。 Uhrich, K. E., et al., Chem. Rev. 1999,99, 3181-3198;
Langer, R. Acc. Chem. Res. 1993, 26, 537-542 を参照のこと。加えて、多くのポリマーに基づく放出システムは、薬剤の担持のために有機溶媒を必要とするため、蛋白質の変性・凝縮といった、カプセル化された分子の構造もしくは機能に望まざる変更が加わることのトリガーとなりえる。 Li, Y., Kissel, T., J. Controlled Release 1993, 27, 247-257 を参照のこと。
【0005】
生体外もしくは生体内における薬剤、殺生物剤、遺伝子、または蛋白質を、制御放出 ( controlled-release ) する搬送のためのメソポーラスシリカに基づく担体システムの発展には強い関心が寄せられている。 Vallet-Regi, M., et al., Chem. Mater. 2001,
13, 308-311; Munoz, B., et al., Chem. Mater. 2003, 15, 500-503; Ramila, A., et
al., J. Sol.-Gel Sci. Technol. 2003, 26, 1199-1202; Diaz, J. F., et al., J. Mol. Catal. B : Enzym. 1996, 2, 115-126; Han, Y.-J., et al., J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 9897-9898; Kisler, J. M., et al., Microporous Mesoporous Mater. 2001, 44-45, 769-774; Yiu, H. H. P., et al., Microporous Mesoporous Mater. 2001, 44-45,
763-768; Takahashi, H., et al., Microporous Mesoporous Mater. 2001, 44-45, 755-762 を参照のこと。加えて、最近の文献での報告では、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーが、非ウイルス性遺伝子トランスフェクション薬( Dennig, J.; Duncan, E. Rev.
Mol. Biotechnol. 2002, 90, 339-347, およびその参照文献; Esfand, R.; Tomalia, D.
A. Drug Discovery Today 2001, 6, 427-436 )として役立つことが示されている。しかしながら、高世代(G > 5)のPAMAMs(PAMAM類)のみが遺伝子トランスフェクションにおいて有用であることが示されている。これらの high G PAMAMs の合成および精製に必要な手順は、通常は時間がかかり且つ低収率である。対照的に、 low G PAMAMs (G < 3)は、典型的には無毒であり、合成も容易である。これらの利点にもかかわらず、その小さい分子サイズと、限られた表面電荷とにより、 low G PAMAMs はエントロピーペナルティの問題から溶液中のプラスミドDNAとの効率的な複合化を起こしにくい。現在の関心とは裏腹に、生体外もしくは生体内において薬剤、殺生物剤、遺伝子、プラスミド、または蛋白質を、制御して放出する搬送を行うことができるような新規な担体システムが、依然として必要とされたままとなっている。
【発明の開示】
【0006】
ひとつもしくは複数の薬剤を制御放出することができる、メソポーラスシリカに基づく新規な搬送系が提供される。薬剤の放出は、メソポーラスマトリックスの孔から、もしくはメソポーラスマトリックスの外部に存在するデンドリマーの複合体 ( complexes ) から、もしくはそれらの組み合わせから行われる。本搬送系は、典型的には刺激応答性であって、また、マトリックスに内包される分子に対して化学的に不活性である。メソポーラスシリカマトリックスの孔は、例えば、従来技術の治療薬(「薬」 ( "drugs" ) )のような生活性物質、さらにはアミノ酸、オリゴヌクレオチド、ならびに/または、ホルモン、酵素、サイトカイン、もしくは類似物のようなポリペプチド類といった種々の分子を装填できる容器 ( reservoirs ) として機能する。装填されたメソ孔の開口部は、キャップ(例えば、無機ナノパーティクル、または、生分解性オリゴマーもしくは樹状ポリマー(デンドリマー)のような有機分子、または、蛋白質)を可逆的あるいは非可逆的に被せられ、これによってシリカマトリックスの孔内の分子がカプセル化される。さらに、メソポーラスマトリックスの表面もしくは孔に結合するデンドリマーは、複合体を形成するか、あるいは、プラスミドDNAを含む核酸のような生活性物質に結合して、安定な生活性物質-MSN複合体を形成する。装填されてキャップされ、および/もしくは複合体となった搬送系によって、メソポーラスマトリックスの孔および/もしくは表面から、装填された物質を、部位特異的に制御放出することができるものであって、また、ナノパーティクルとして形成することができる。したがって、本発明に係る物体は、アンチセンス治療、免疫治療、遺伝子治療、および類似の用途を含んだ活性種の、対象を定めた薬剤搬送に使用することができる。
【0007】
装填されてキャップされ、および/もしくは複合体となったパーティクルは、他の分野のホスト内にカプセル化された試薬を制御して放出することに関しても概して有用である。例えば、農業用途(例えば、殺虫剤もしくは肥料の制御放出のため)、個人のヘルスケア用途(例えば、化粧品もしくは栄養剤の制御放出のため)、印刷・製造工程の用途(例えば、インクもしくは染料の制御放出のため)、ならびに、環境的用途(例えば、液体もしくはガス流のような環境からの望ましくない物質の除去、または、環境内へ薬剤を制御して搬送もしくは徐放して搬送する)に用いることができる。
【0008】
したがって、種々の形状とサイズをとることができる多数の孔を有するメソポーラス珪酸塩体 ( mesoporous silicate body ) と、ひとつもしくは複数の孔を塞ぐひとつもしくは複数のキャップとを含む物体を、本発明は提供する。好ましくは、ひとつもしくは複数のキャップされた孔の内部には、ひとつもしくは複数の搬送可能な薬剤が内包される。別の手法として、ひとつもしくは複数の生活性物質が、物体の外表面と複合体を形成し、
好ましくは、孔を塞ぐかさもなければキャップするような分子と複合体を形成する。
【0009】
本発明は、薬学的に許容される希釈剤もしくは担体を配合した生活性物質を含んでいるような本発明に係る物体を含む薬学的組成物も提供し、且つ、生活性物質の部位特異的搬送もしくは制御搬送のための、この薬学的組成物の使用方法をも提供する。
【0010】
本発明は、農学的に許容される希釈剤もしくは担体を配合したひとつもしくは複数の農学的活性物質(例えば、殺虫剤もしくは肥料)を含んでいるような本発明に係る物体を含む薬学的組成物も提供し、且つ、農学的活性物質の部位特異的搬送もしくは制御搬送のための、この組成物の使用方法をも提供する。
【0011】
本発明は、薬学的療法もしくは診断に用いるための、生活性物質(例えば、治療薬もしくは診断薬)を含む本発明に係る物体も提供する。
本発明は、本明細書において開示している、本発明に係るメソポーラス珪酸塩および物体を調製するために有用であるような新規なプロセスおよび中間生成物も提供する。
【0012】
本発明に係るキャップドメソポーラスシリカパーティクルは、孔内に包含された(ひとつもしくは複数の)物質の搬送のための制御放出用担体として使用することができる。本発明に係るキャップドメソポーラスシリカパーティクルは、孔のキャップと複合体を形成する(ひとつもしくは複数の)物質の搬送のための制御放出用担体としても使用することができる。装填および放出のメカニズムが、メソ孔の開口部のキャップの着脱に基づくものであるということを考慮すると、装填される分子には孔と結合するための化学修飾は必要無く、また、キャップを除去するための条件を適用すること以外には、装填された分子の放出のための特定の反応も必要とはされない、ということである。加えて、本発明に係るメソポーラスシリカパーティクルの生体適合性および安定性により、この装填をしたパーティクルを、生体外における細胞間・細胞内の化学/神経化学的相互作用の研究において用いることができる。本発明に係るメソポーラスシリカパーティクルは、その外表面上にターゲッティング剤 ( targeting agent ) をさらに含むことができ、あるいは、インタラクティブセンサーを有するナノデバイスのような、部位選択性制御放出搬送デバイス内に組み込むこともできる。
【0013】
したがって本発明は、ひとつもしくは複数の孔と、ひとつもしくは複数の孔を塞ぐひとつもしくは複数の除去可能なキャップとを有する、顆粒体のようなメソポーラス珪酸塩体を提供する。珪酸塩体は、ミクロパーティクルもしくはナノパーティクルとすることができる。珪酸塩体の孔は、直径にして約1〜50nmであり、好ましくは直径約30-50nm未満であり、直径約1nm〜約3nmとすることもできる。メソポーラス珪酸塩体は、直径約40〜100nm、約100〜300nm、約300〜600nm、もしくは約500nm〜約4μmの粒子 ( spherule ) とすることができる。また、メソポーラス珪酸塩体は、長さが約500nm〜約1μm、約400nm〜約600nm、もしくは約50nm〜約250nmであるロッド ( rod ) とすることもできる。このロッドは種々の直径とすることができ、典型的には約50nm〜約500nmとすることができる。メソポーラス珪酸塩体は、無機分子および/もしくは有機分子を含むことができるような除去可能なキャップを有することができる。或る実施の形態においては、除去可能なキャップは、硫化物塩のパーティクルであって、好ましくは硫化カドミウムナノパーティクルである。硫化カドミウムナノパーティクルは、メソポーラス珪酸塩と共有結合することができ、さらに、任意にジスルフィドのような連結基を介して結合することもできる。この連結基は、任意の適切な開裂可能な基とすることができ、例えば、 2-(プロピルジスルファニル)エチルアミン、尿素含有基、もしくは、構造式 X-CH2CH2CH2SSCH2CH2NHC(=O)CH2-Y (ここで式中の X は、メソポーラス珪酸塩の珪素原子であり、 Y は硫化カドミウムナノパーティクルの硫黄原子である)である連結基、とすることができる。
【0014】
メソポーラス珪酸塩のキャップには、有機ポリマーを含めることができる。例えば、キャップは、ポリ(乳酸) 、ポリ(アミドアミン) 、ポリペプチド、蛋白質、オリゴヌクレオチド、もしくは多糖類とすることができる。キャップは、高分岐ポリマーとすることもできる。高分岐ポリマーのひとつの例としては、デンドリマーがある。デンドリマーキャップは、アニオン性デンドリマーとすることができ、また、好ましくはカチオン性デンドリマーとする。このキャップは、ポリ(アミドアミン) のような生分解性ポリマーとすることもできる。
【0015】
メソポーラス珪酸塩体は、ひとつもしくは複数の孔に薬剤を任意に内包することができる。内包された薬剤は、診断薬、生活性物質、もしくは治療薬とすることができる。内包された薬剤は、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、イメージング剤、造影剤、美容剤 ( cosmetic agents ) 、もしくは栄養剤とすることもできる。内包された薬剤は、さらに、キレート化された放射性核種、ホルモン類、ホルモン伝達物質、サイトカイン類、ビタミン類、遺伝子発現抑制剤、神経伝達物質、または、RNA分子もしくはDNA分子のような核酸、とすることもできる。
【0016】
メソポーラス珪酸塩体は、内包された薬剤の有効量を生体内の所定の部位へと搬送することができ、これは、所定の部位まで搬送してから少なくとも数個のキャップを孔から除去して、内包された薬剤の有効量を放出することによって行われる。キャップは、連結基を開裂することによって孔から除去することができる。例えば、ジスルフィド結合を有する連結基は、還元剤で開裂することができる。
【0017】
メソポーラス珪酸塩体は、その表面上に会合する、ひとつもしくは複数のカチオン性デンドリマーを任意に有することができる。カチオン性デンドリマーは、メソポーラス珪酸塩と共有結合することができる。典型的には、ひとつもしくは複数のカチオン性デンドリマーが、連結基を介してメソポーラス珪酸塩と共有結合することができる。連結基は、例えば 2-(プロピルジスルファニル)エチルアミンのようにジスルフィド結合を有することができ、あるいは、連結基は尿素基 ( urea group ) を含むことができる。
【0018】
内包された薬剤を有するメソポーラス珪酸塩体、もしくは内包された薬剤を持たないメソポーラス珪酸塩体は、メソポーラス珪酸塩の表面もしくは孔と結合するひとつもしくは複数のカチオン性デンドリマーと結合する、ひとつもしくは複数の核酸を、さらに有することができる。この核酸は、ひとつもしくは複数のデンドリマーと静電相互作用によって結合することができる。また、これらのメソポーラス珪酸塩体は、メソポーラス珪酸塩の表面もしくは孔キャップと結合する、細胞をターゲッティングする基 ( cell targeting
moieties ) も有することができる。さらに、薬学的に許容される担体を含んだ薬学的組成物内に、メソポーラス珪酸塩体を含めることができる。このような薬学的組成物は、経口投与、あるいは非経口的投与(例えば、局所投与、または注射もしくは輸液による投与)のための処方とすることができる。
【0019】
メソポーラス珪酸塩体は、珪酸塩体が細胞に吸収されるような条件の下で、珪酸塩体と細胞とを接触させることにより、細胞へと核酸を搬送することができる。ターゲットとする細胞は、例えば、ニューロン、幹細胞、もしくは星状細胞(アストロサイト)とすることができる。
【0020】
メソポーラス珪酸塩体は、ひとつもしくは複数の種類のテトラアルコキシシランと、ひとつもしくは複数の種類の有機置換トリアルコキシシランとを共縮合して調製することができるものであって、単分散の粒径および所定の粒形状を有するメソポーラス珪酸塩パーティクルの集合として得られる。なお、この置換トリアルコキシシランは助溶媒 ( co-solvent ) ではない。より具体的に述べると、メソポーラス珪酸塩パーティクルは、ひと
つもしくは複数の種類のテトラアルコキシシランと、ひとつもしくは複数の種類の (3-シアノプロピル)トリアルコキシシランとを共縮合して、ナノロッド ( nanorods ) として調製することができる。
【0021】
哺乳類細胞を、ひとつもしくは複数の核酸分子と会合しているメソポーラス珪酸塩と接触させることによって、メソポーラス珪酸塩体を、核酸で哺乳類細胞をトランスフェクションさせるか、もしくは形質転換させるために使用することができる。ひとつもしくは複数の種類の核酸分子は、高分岐ポリマーとの複合体とすることができる。このような高分岐ポリマーは、好ましくは、第一世代、第二世代もしくは第三世代で末端化され、好ましくは第二世代で末端化される。核酸には、DNA、RNA、もしくはそれらの組み合わせが含まれる。細胞をターゲッティングする基は、抗体、DNAアプタマー、RNAアプタマー、糖、蛋白質、もしくはポリペプチドとすることができる。DNAは、本発明に係る物体を内部に搬送された細胞に内在することができる。DNA分子は、プラスミド上のものであってもよい。さらに、DNAは、メソポーラス珪酸塩が内部に搬送される細胞に内在する蛋白質をコードする、少なくとも一部の領域を含むことができる。メソポーラス珪酸塩のパーティクル表面および/もしくは孔に連結した、ひとつもしくは複数のデンドリマーによって、DNAとメソポーラス珪酸塩とを複合化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
「アミノ酸」 ( "amino acid" ) という語は、D型天然アミノ酸もしくはL型天然アミノ酸の残基(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびVal)を含み、また、非天然アミノ酸(例えば、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタマート、馬尿酸、オクタヒドロインドール-2-カルボン酸、スタチン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、シトルリン、α-メチル-アラニン、パラ-ベンゾイルフェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン、および tert-ブチルグリシン)をも含む。この語は、従来技術に係るアミノ保護基(例えば、アセチル基、もしくはベンジルオキシカルボニル基)を有する天然・非天然のアミノ酸も含み、また、カルボキシ末端が保護されている(例えば、 (C1-C6)アルキル、フェニル、もしくはベンジルの、エステルまたはアミド)、天然・非天然アミノ酸も含む。他の適切なアミノ保護基・カルボキシ保護基も、当業者に公知である(例えば、 T. W. Greene, Protecting Groups In Organic Synthesis; Wiley: New York, 1981, およびその参照文献を参照のこと)。
【0023】
「糖」 ( "saccharide" ) という語は、単糖類、および多糖類(例えば、二糖類、三糖類など)を含む。この語は、グルコース、スクロース、フルクトース、およびリボースを含み、また、デオキシリボースのようなデオキシ糖類および類似物を含む。糖類誘導体は、便宜的には国際特許出願公開番号 WO 96/34005 および 97/03995 に記載された手法によって、簡便に調製することができる。
【0024】
「ポリペプチド」 ( "polypeptide" ) とは、2〜250個のアミノ酸(例えば上述の定義のもの)残基もしくはペプチジル残基の配列のことを云う。この配列は、直鎖もしくは環状とすることができる。例えば、環状ペプチドは、配列中の二つのシステイン残基間にジスルフィド架橋をすることによって調製することも、その架橋の結果として得ることもできる。ポリペプチドは、カルボキシ末端、アミノ末端、もしくは例えばシステインの硫黄原子のような他の任意の適切な連結部位を介して、構造式 I の化合物の残りの部分と連結することが可能である。本発明の或る実施形態においては、ポリペプチドは、約3個〜約100個のアミノ酸を含む。別の実施形態においては、ポリペプチドは、約5個〜約25個のアミノ酸を含む。ペプチドおよびポリペプチド誘導体は、米国特許4,612,302号、米国特許4,853,371号、および米国特許4,684,620号において開示方法、または以下の実施例に
記載されて方法によって調製することができる。特に、ここで説明するポリペプチド配列は、アミノ末端を左に、カルボキシ末端を右にして記載するものとする。
【0025】
ペプチドは、250個以上のアミノ酸残基を含む、ポリアミノ酸配列である。
「核酸」 ( "nucleic acid" ) 、「縮合核酸」 ( "polynucleic acid" ) 、もしくは「縮合核酸セグメント」 ( "polynucleic acid segment" ) という語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、ならびに、一本鎖もしくは二本鎖のいずれかの形状のそれらのポリマーであって、糖類、燐酸塩、プリン塩基もしくはピリミジン塩基を含むモノマー(ヌクレオチド)から成るようなポリマー、のことを称する。特に限定しなければ、これらの語は、天然ヌクレオチドの公知の類似物を含み、ここでこの類似物は元の核酸と同様の結合特性を有し、且つ天然に産するヌクレオチドと同様の方法で代謝される。特に別に定めない限り、特定の核酸配列は、それらの控えめに改変された変種(例えば、縮重コドン置換体)、ならびに、明示された配列の相補配列も、暗に含む。特に、縮重コドン置換体は、ひとつもしくは複数の選択されたコドン(または全てのコドン)の三番目に配位するものが、混合塩基 ( mixed-base ) および/もしくはデオキシイノシン残基で置換されているような配列を生成することによって得ることができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res., 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem., 260:2605 (1985); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes, 8:91 (1994))。「オリゴヌクレオチド」 ( "oligonucleotide" ) は、典型的には30個以下のヌクレオチドを含む。
【0026】
「複合化された」 ( "complexed" ) という語は、メソポーラス珪酸塩体もしくは孔キャップへの分子の結合のことを指し、典型的には、共有結合以外の意味を指す。このような結合は、例えば、イオン相互作用もしくは静電相互作用、または他の吸引力によって形成することができる。
【0027】
[メソポーラス珪酸塩]
メソポーラス珪酸塩は、典型的には、約50nmから約1μmのサイズのパーティクルを有する。或る実施形態においては、メソポーラス珪酸塩は少なくとも約100nm、好ましくは少なくとも約200nmのサイズのパーティクルを有する。別の実施形態においては、メソポーラス珪酸塩は約750nm未満のサイズのパーティクルを有する。或る実施形態においては、メソポーラス珪酸塩は、約250nmのサイズのパーティクルを有する。他の実施形態においては、メソポーラス珪酸塩体は、直径約50〜150nm、約60〜300nm、もしくは約250〜1000nmの球形(スフィア)とすることができる。従来技術で調製されるメソポーラス珪酸塩は球状であるが、これらはロッドのような他の形状を生成するような条件下で調製されていることもある。いくつかの実施形態においては、メソポーラス珪酸塩体は、約50〜150nm、約60〜300nm、もしくは約250〜1000nmの長さのロッドとすることができる。本発明に係る物体は、カプセル化された試薬を受けるために適切な孔構造を有するような、任意の形状およびサイズのメソポーラス珪酸塩を含むことができる。
【0028】
メソポーラス珪酸塩の孔は、典型的には、約1〜100nmの直径を有する。本発明の或る実施形態においては、孔は約2nm未満の直径を有する。別の実施形態においては、孔は約1nm〜約5nm、もしくは約1nm〜約3nmの直径を有する。特定の実施形態においては、孔は約2.7nmの直径を有する。他の実施形態においては、孔は約5nmよりも大きい、もしくは約10nmよりも大きい直径を有する。典型的には、孔は約75nm未満、もしくは約50nm未満の直径を有する。
【0029】
メソポーラス珪酸塩パーティクルは種々の方法で調製することができ、例えば、ひとつもしくは複数の種類のテトラアルコキシシランと、助溶媒ではないひとつもしくは複数の種類の有機置換トリアルコキシシランとを共縮合し、単分散なパーティクルサイズと、所定の形状を有するようなメソポーラス珪酸塩パーティクル群を生成するような方法で得る
ことができる。メソポーラス珪酸塩パーティクルは、ひとつもしくは複数の種類のテトラアルコキシシランと、ひとつもしくは複数の種類の (3-シアノプロピル)トリアルコキシシランとを共縮合することによって、ナノロッドとして調製することができる。任意の適切且つ効果的なテトラアルコキシシランおよびアルキル-トリアルコキシシランを用いることができる。そのようなシランの多くは、例えば、 Aldrich Handbook of Fine Chemicals, 2003-2004 (Milwaukee, WI) に記載されている。
【0030】
メソポーラス珪酸塩は、 C10-C16アルキル(トリアルキル)アンモニウム塩の界面活性剤ミセルの水溶液を、オルト珪酸テトラエチル(TEOS)のようなオルト珪酸アルキルと、ひとつもしくは複数の種類の官能化シラン(例えば、 (C2-C10)アルキル鎖が、 -S-S- 、アミド( -C(=O)NR- )、 -O-O- 、エステル( -C(=O)O- )および類似物によって任意に割り込まれているような、ひとつもしくは複数の種類のメルカプトアルキルシラン、クロロアルキルシラン、イソシアナートシラン、アミノアルキルシラン、カルボキシアルキルシラン、スルホニルアルキルシラン、アリールアルキルシラン、アルキニルシラン、もしくはアルケニルシラン)との溶液に導入することによって調製することができる。例えば、官能化シランは、 3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン(MPTMS)、もしくは 3-イソシアナトプリピル-トリエトキシシラン ( 3-isocyanatoprypyl-triethoxysilane; ICPTES ) とすることができる。この水溶混合液は、適温で珪酸塩が沈澱するまで攪拌された後、回収されて乾燥された。その後、界面活性「鋳型」は、例えば、珪酸塩を水-アルコール性 HCl 中で還流することによって、整列した珪酸塩マトリックスの孔から除去される。残存する溶媒は、高真空下に置くことにより珪酸塩の孔から除去することができる。孔の表面に取り込まれた官能基は定量することができ、また、キャップに結合する連結基として使用することもでき、あるいは、キャップの官能基と反応可能であるような終端官能化有機連結基 ( terminally-functionalized organic linker moieties ) でさらに修飾することもできる。アリール基、ペルフルオロアルキル基、アルキル基、アリールアルキル基および類似物のような無極性不活性基を含む官能化シランを含有する反応混合物に、他の官能化シランを添加することによって、孔内部の極性を制御することもできる。珪酸塩マトリックスの外部は、その上に官能基を含む有機基をグラフト(移植)することによって、官能化することができる。同様に、これらの基は、ターゲッティング基もしくは標識基 ( labeling moiety ) に、パーティクルを連結するために用いることもできる。ターゲッティング基は、抗体、DNAアプタマーもしくはRNAアプタマー、糖、蛋白質、またはポリペプチドとすることができる。他の適切且つ効果的なターゲッティング基を用いることもできる。
【0031】
[官能化キャップ]
本発明に係る物体においては、キャップは、メソポーラス珪酸塩の孔からカプセル化された試薬の徐放もしくは抑止のために機能する。したがって、ここで用いたように、「妨げる」 ( "obstructing" ) もしくは「塞ぐ」 ( "occluding" ) という語は、孔の開口部を部分的もしくは全体的にブロックすることで、カプセル化された試薬の放出を緩やかにするか、または抑止する。キャップはメソポーラス珪酸塩と共有結合することができ、また、イオン結合、水素結合、もしくは他の相互作用によって会合することもできる。キャップは、孔の開口部に位置することもでき、また、孔の内部に位置する(例えば、孔の内表面に結合もしくは連結される)こともできる。キャップは、有機塩もしくは無機塩、蛋白質、ポリマー、または重合したナノスフィアのパーティクルのような離散体とすることも、また、メソポーラス珪酸塩パーティクルを部分的に覆うようなポリマー、もしくはメソポーラス珪酸塩パーティクルを完全に被覆するポリマーの形状とすることもできる。キャップが無機パーティクルのような離散体である場合には、キャップは、メソポーラス珪酸塩もしくはそれらの孔と任意に共有結合することができ、また、イオン結合、水素結合、もしくは他の相互作用によってそれらと会合することもできる。
【0032】
キャップは、装填をしたパーティクルのために意図するところの用途、ならびにメソポーラス珪酸塩物質のサイズおよび反応性、に基づいて選択することができるような種々の物質を含有することができる。例えば、キャップは、無機パーティクルもしくは無機結晶、高分岐ポリマー、デンドリマー、もしくはポリペプチドといった有機ポリマー、あるいは、蛋白質、オリゴヌクレオチド、もしくはオリゴ糖といった生体高分子を含む。例えば金属酸化物もしくは金属硫化物のような無機ポリマーはキャップとして有用である。
【0033】
ここで、高分岐ポリマーとは、規則的、不規則的、もしくはランダムな分岐構造を有する分岐したポリマーを指す。典型的には、高分岐ポリマーは、分岐した楔状分子が結合した、多官能性コア分子から成る。デンドリマーは対称高分岐ポリマーの例である。ここで、デンドリマーとは、各官能部位に結合した樹状楔 ( dendritic wedge ) を有する多官能性コア分子から成る分子のことを云う。それぞれの樹状楔は規則的な高分岐モノマーを有しており、これによって、単分散、樹木状、もしくは世代的な構造を導く。単分散ポリマーを合成するには、一回あたりにひとつのモノマー層(もしくは「世代」)をデンドリマーに積み上げる反応を段階的に行う。コア分子のことを、「世代0」 ( "gereration
0" ) と呼ぶ。全ての分岐に沿って伸びる連続的な繰り返し単位のそれぞれが、次の世代、即ち「世代1」、「世代2」、から終端の世代までを形成することになる。高分岐ポリマー、デンドリマー、およびポリペプチドのような有機ポリマーは、例えば以下に記載されているように、キャップとして用いるこどができる。即ち、 WO 02/057745、WO 99/32076、WO 93/06868、米国特許5,527,524号、同5,574,142号、同5,714,166号、同6,020,457号、同6,190,650号、同6,225,352号、同6,395,266号、同6,426,067号、および同6,464,971号、ならびに、 Patri, A. K., et al., Polym. Mat. Sci. & Eng., 2002, 86, 130; Quintana, A., et al., Pharm. Res., 2002, 19(9), 1310; Baker, Jr., J. R. et al., Biomedical Microdevices, 2001, 3:1, 61 。
【0034】
特に有用なキャップのひとつとして、以下の実施例で後述する硫化カドミウム結晶パーティクルが挙げられる。他の無機結晶ポリマーもしくはパーティクルも、メソポーラス珪酸塩の孔のサイズ、金属含有パーティクルのサイズ、メソポーラス珪酸塩をパーティクルに結合するために用いる反応部位に基づいて選択することができ、また、キャップドパーティクル (キャップされたパーティクル; capped particle ) が搬送されることになる化学的・物理的環境に基づいて選択することもできる。細胞内への物体の搬送を促進するために特に有用であるような別のキャップとしては、生分解性ポリ(アミドアミン)デンドリマーといったデンドリマーもしくは高分岐ポリマーがある。
【0035】
キャップは、メソポーラス珪酸塩体の表面もしくはその表面の孔と直接に会合される(例えば、結合される、複合化される、もしくは引力を受けるということ)ができ、また、キャップは、メソポーラス珪酸塩体の表面もしくはその表面の孔に結合した連結基と会合することができる。連結基は、メソポーラス珪酸塩へと結合する能力もしくは取り込まれる能力、ならびに、所与のキャップと会合する能力に基づいて選択することができる。連結基の長さは重要では無く、会合したキャップがメソポーラス珪酸塩の孔を塞ぐことができれば良い。例えば、典型的には、連結基は約5オングストロームから約500オングストロームの長さとすることができる。いくつかの用途においては、連結基は、好ましくは約25オングストロームから約250オングストロームの長さとすることができる。本発明に係る或る実施形態においては、連結基は、 2-(プロピルジスルファニル)エチルアミンを含む。本発明の別の実施形態においては、連結基は、構造式 X-CH2CH2CH2SSCH2CH2NHC(=O)CH2-Y- (ここで、式中の X はメソポーラスの珪酸塩の珪素原子であり、 Y はキャップの原子(例えば硫黄原子)である)である。別の実施形態においては、連結基は、イソシアナートとアミンとの縮合により形成されるような尿素基を含む。
【0036】
本発明の或る実施形態においては、ターゲットとなる部位への搬送後に、キャップをメ
ソポーラス珪酸塩から脱離するための脱離剤 (放出剤; releasing agent ) と選択的に反応する反応性基を、連結基が含有している。この脱離剤は、ターゲットとなる部位に天然に存在している物質とすることができ、また、カプセル化された試薬の放出をしたいときに、ターゲットとなる部位に導入される薬剤とすることもできる。反応性基は、例えば、反応性ジスルフィド結合、pH感受性結合、熱活性結合 ( temperature labile bond )
、もしくは光化学活性基とすることができ、また、脱離剤は、ジスルフィド還元剤、酸/塩基(局所的なpH変化)、温度変化、もしくは所定の波長の光とすることができる。別の結合基としては、生分解性ポリ(アミドアミン)鎖が挙げられる。
【0037】
[カプセル化され複合化された試薬]
本発明に係る物体は、一般に、物質(即ち、カプセル化された試薬)の搬送を制御して行うために有用である。カプセル化された試薬の性質は重要では無く、孔内に有効量を導入することができて、且つ所定の条件下で孔から放出することができれば良い。したがって、カプセル化された試薬は、生理活性物質、インク、染料、美容剤、および類似物を含む。
【0038】
生理活性物質 ( bioactive agents ) という語は、医薬品、診断薬、遺伝子、栄養素(ビタミン等)、ならびに、殺生物剤および農薬(例えば、殺虫剤、除草剤、殺鼠剤)を含む。この語は、例えば、癌の処置に有用であるような従来技術に係る化学療法薬( PCT
US/00/16052 を参照)、キレート化された放射性核種、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤(米国特許4,950,758号を参照)、鎮痛剤(米国特許5,298,622号および同5,268,490号を参照)、ポリペプチド、ならびに、ホルモン、ホルモン伝達物質、およびサイトカイン(例えば、インスリン、インターロイキン、インターフェロン、ヒト成長ホルモン、PTK、TPMT、TGF-β、EPO、TNF、NK-β、およびプロスタグランジンおよび類似物)、イメージング剤、造影剤、酵素補充療法のための酵素(米国特許6,106,834号および同6,210,666号を参照)、抗体(米国特許5,034,222号および同6,106,834号を参照)、ならびに、任意の適切な長さのRNA分子もしくははDNA分子( PCT US/00/16052 、 PCT WO96/30031 、および米国特許5,591,625号、同6,387,369号、同5,190,931号、同5,208,149号、同5,272,065号を参照)を含む。
【0039】
本発明に係るキャップドパーティクルは、米国特許6,329,574号および同5,384,253号に開示されているように、「外来DNA」 ( "foreign DNA" ) を搬送して植物細胞の形質転換を行うために用いることができる。キャップドパーティクルは、哺乳類細胞(例えば神経細胞)の形質転換のためにも使用することができる。
【0040】
[生理活性分子の装填]
カプセル化された試薬は、珪酸塩体のメソ孔中で遊離させることができ、また、孔の内表面と会合させる(例えば、結合させる、もしくは引力を受ける)こともできる。物質が孔内で遊離する場合には、典型的には、物質の溶液中のキャップされていない「空の」メソポーラス珪酸塩と接触することによって、カプセル化することができる。カプセル化された試薬が孔の内表面と会合する場合には、典型的には、試薬を会合させるために適切な条件下において、孔の内表面上の基と試薬とが反応する、もしくは孔の内表面上の基への引力を試薬が受けるようにすることによって、試薬を装填することができる。本発明の或る実施形態においては、孔内に物質を装填するために充分な時間をかけて、メソポーラス珪酸塩をエタノール中で攪拌してもよい。孔への装填のためのこの特定の方法においては、任意の適切且つ効果的な溶媒を用いることができる。
【0041】
[ターゲットとなる部位への、装填をしたパーティクルの搬送]
本発明に係る装填された物体は、ターゲットとなる部位およびカプセル化された試薬の性質に基づいて選択されうるような任意の適切な手段によって、ターゲットとなる細胞の
部位へと搬送することができる。例えば、農業分野の用途のために、従来技術に係る農地用撒布器 ( field spreaders ) を使用するか、もしくは飛行機を使用することによって、装填をしたパーティクルをターゲットとなる農地に撒布することができる。生体外の細胞形質転換のために、培養植物細胞の細胞壁にパーティクルを貫通させるために微粒子銃 ( microprojectile bombardment ) を用いることができ、また、原形質体内へとパーティクルを導入するためにエレクトロポレーション法 ( 電気穿孔法; electroporation ) を用いることもできる。
【0042】
生体内での使用のために、従来技術に係る方法を用いて、物体を経口投与、局所投与、もしくは注射することができる。遺伝子治療用途、もしくは細胞内に物体を搬送することが望まれるような他の用途のために、直接注入もしくは他の配置技術によって搬送することができ、また、エンドサイトーシスを介してパーティクルを細胞内へ吸収させることもできる。本発明に係る或る実施形態においては、第二世代(G2)のポリ(アミドアミン) を、メソポーラスシリカナノパーティクルの表面に結合させることにより、エンドサイトーシス、もしくは細胞に吸収されるようにするための別の方法を促進することができる。物体は、ターゲッティング剤(例えば、ターゲットとなる細胞、組織、器官が有する受容体に対して特異的な抗体もしくは抗体フラグメント(「結合蛋白質」))を用いて、動物内の特定の位置(例えば、特定の細胞型、器官、もしくは腫瘍)へと物体をターゲッティングすることができる。したがって、本発明は、メソポーラス珪酸塩もしくはキャップと会合している細胞ターゲッティング剤(例えば、抗体、デンドリマー、またはDNRもしくはRNA配列のような生体高分子)をさらに含み、且つ、ターゲットとする環境内(例えば、動物、もしくは動物内の特定の細胞型)において、この細胞ターゲッティング剤が選択的に物体を搬送することを特徴とするような物体も提供する。
【0043】
キャップもしくはデンドリマーは、イオン結合、共有結合、もしくは他の結合(例えば、静電相互作用)を介して、メソポーラス珪酸塩と「会合する」ことができる。例えば、キャップもしくはデンドリマーは、メソポーラス珪酸塩と直接に共有結合するか、または、活性物質をデンドリマーに結合させるために用いられる連結基であるような連結基を介して共有結合することができる。抗体、デンドリマー、またはDNAもしくはRNAの表面の官能性に対する、トリアルコキシシリル基の導入のような、ターゲッティング剤の化学的修飾によって、メソポーラス珪酸塩との共有結合もしくは非共有結合のための部位を得ることができる。例えば、トリアルコキシシリル誘導体であるターゲッティング剤は、珪酸塩の表面にグラフトすることが可能である。
【0044】
DNA分子は、イオン結合、共有結合、もしくは他の結合(例えば、静電相互作用)によって、本発明に係るパーティクル(例えば、デンドリマーが会合した表面を有するパーティクル)と、「会合する」ことができる。プラスミドDNA、もしくは遺伝子は、そのポリアニオン性により、生理的条件(pH7.4)下において、ポリ(アミドアミン) (PAMAM)およびポリ(プロピレンイミン) (PPI)のような正荷電デンドリマーを静電的に引きつける。このように、PAMAMもしくはPPIに被覆されたメソポーラス珪酸塩へのDNAの導入によって、DNAと、デンドリマー-珪酸塩複合物質との間の、強力且つ多価である結合を促進されることになる。
【0045】
治療薬もしくは診断薬を含んだ、本発明に係るメソポーラス珪酸塩粒子は、薬学的組成物として処方することができ、また、選択した投与経路(即ち、経口投与、または、静脈内、筋肉内、局所的、もしくは皮下の経路による非経口的投与)に応じた種々の形態でヒトの患者などの哺乳類宿主(ホスト)へと投与することができる。
【0046】
したがって、本発明に係る化合物は、例えば、不活性希釈剤もしくは消化可能な食用担体といった、薬学的に許容される媒介物 ( vehicle ) と組み合わせて、例えば経口的
に投与するように体系的に投与することができる。これらは、ハードゼラチンカプセルもしくはソフトゼラチンカプセルに封入することができ、また、錠剤に圧縮することができ、患者の食餌に直接に入れ込むこともできる。経口治療における投与のために、活性化合物をひとつもしくは複数の種類の賦形剤と組み合わせて、経口摂取錠剤、口内錠 ( buccal tablets ) 、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハース、およびこれらの類似物、といった形態で使用することができる。このような組成物および調合剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含むべきである。組成物および調合剤の比率は、当然変更することができ、また、便宜的に所与の剤型単位の重量の約2%〜約60% とすることもできる。治療において有用な組成物中の活性化合物の量は、有効な投与量が得られるようなものとする。
【0047】
錠剤、トローチ、丸薬、カプセル、およびそれらの類似物は、以下を含むこともできる。すなわち、トラガカントゴム、アラビアゴム ( acasia ) 、コーンスターチ、もしくはゼラチンなどの糊剤、ならびに、ピロリン酸カルシウムなどの賦形剤、ならびに、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、アルギン酸およびそれらの類似物などの崩壊剤 ( disintegrating agent ) 、ならびに、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤 ( lubricant ) 。また、蔗糖、果糖、乳糖、もしくはアスパルテームなどの甘味料、または、ペパーミント、冬緑油、もしくはチェリーフレーバーなどの香料を添加することもできる。剤型単位がカプセルである場合には、上述した物質を添加した上で、植物油もしくはポリエチレングリコールなどの液体担体を含むことができる。その他さまざまな物質を、コーティングとして、あるいは固形剤型単位の物理的形状を変更するために使うことができる。一例として、錠剤、丸薬、もしくはカプセルは、ゼラチン、ワックス、シェラックワニス、もしくは糖類、ならびにそれらの類似物でコートすることができる。シロップもしくはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としての蔗糖もしくは果糖、保存料としてのメチルパラベンもしくはプロピルパラベン、着色料、ならびに、チェリーフレーバーもしくはオレンジフレーバーなどの香料、を含むことができる。任意の剤型単位を調製するにあたって使用する任意の物質は、当然ながら薬学的に許容されるものであって、使用する量において実質的に無毒であるものとするべきである。加えて、活性化合物は、持続放出型の調製もしくは装置に組み込むことができる。
【0048】
本発明のメソポーラスシリカパーティクルは、注入もしくは注射によって、静脈内または腹膜内に投与することができる。活性化合物もしくはその塩の溶液は、任意に無毒性界面活性剤を混合した水の中で調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、およびそれらの混合物の中で調製して分散させることも、また、油中で調製して分散させることもできる。通常の条件下での保存および使用においては、これらの製剤には微生物の生長を妨げるための保存料が含まれる。
【0049】
注射、輸液、もしくは吸入に適した薬学的調剤は、滅菌水溶液もしくは分散液を含むことができ、また、滅菌済注射として、または滅菌済輸液もしくは分散液として、即座に調製できるようにするために用いられ、また、任意にリポソーム内に包むこともできるような活性成分を含んだ、滅菌粉末を含むこともできる。全ての場合において、最終的な投薬形態は、滅菌され、滑沢性とされ、製造および貯蔵の条件下で安定であるようにするべきである。液体の担体もしくは媒介物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール類、およびそれらの類似物)、植物油、無毒性グリセリンエステル類、ならびにこれらの適切な混合物、を含んだ、溶媒もしくは分散液とすることができる。例えば、リポソームによる構成、分散液の場合に必要となる粒径を維持すること、もしくは界面活性剤の使用、などによって、適切な滑沢性を保つことができる。例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、およびそれらの類似物などの、種々の抗菌剤および抗真菌剤によって、微生物の活動を抑えることができる。多くの場合には、例えば糖類、緩衝液、も
しくは食塩であるような等張化剤を含むことが好ましい。例えば、モノステアリン酸アルミニウム、およびゼラチンであるような、吸収遅延剤を用いることによって、注射可能な組成物の吸収を引き伸ばすことができる。
【0050】
上で列挙した種々の他の成分を、必要であれば濾過滅菌してから加えた適切な溶液に、本発明に係るメソポーラスシリカパーティクルの必要量を併せることによって、滅菌済の注射液を調製することができる。滅菌粉末を用いて滅菌済の注射液の調製を行う場合には、活性成分の粉末に、予め濾過滅菌した溶液に含まれる所望の任意の添加成分を加えたものが得られるように、真空乾燥および凍結乾燥の技術を用いるような調製方法が好ましい。
【0051】
局部への投与にあたっては、本発明に係るメソポーラスシリカパーティクルは、一般に、固体もしくは液体であるような皮膚科学的に許容される担体と組み合わせた組成物または処方として投与することができる。
【0052】
有用である固体担体は、滑石、粘土、セルロース微細結晶、シリカ、アルミナ、およびそれらの類似物などの細粒状固体を含む。有用である液体担体は、水、アルコール類もしくはグリコール類、または水-アルコール/グリコール混合液、を含み、これに本発明に係る化合物の有効量を溶解もしくは分散することができ、また、任意に無毒性界面活性剤を添加することもできる。香料のような佐剤、および付加的な抗菌剤を、所定の使用方法の特質を最大限にするために添加することができる。得られる液体組成物は、包帯および他の手当用品に含浸させて、吸収性パッドから投与することができ、あるいは、ポンプタイプもしくはエアロゾルスプレーを用いて患部にスプレーして投与することができる。
【0053】
合成ポリマー類、脂肪酸類、脂肪酸塩類および脂肪酸エステル類、脂肪酸アルコール類、修飾セルロース類、または修飾無機物質などの濃縮剤 ( thickeners ) を液体担体と併せて用いて、使用者の皮膚に直接塗布するために、薄く塗り拡げることができるようなペースト、ジェル、軟膏、石鹸、およびそれらの類似物を形成することができる。
【0054】
本発明に係るメソポーラスシリカパーティクルを、皮膚に搬送するために有用な皮膚科学的組成物の例は当該技術分野において公知であり、例えば、 Jacquet et al. (米国特許4,608,392号)、 Geria (米国特許4,992,478号)、 Smith et al.(米国特許4,559,157号)、および Wortzman (米国特許4,820,508号)を参照のこと。
【0055】
本発明を、以下の(本発明を限定するものではない)実施例によってさらに説明してゆく。
[一般的な試薬および物質]
硝酸カドミウム四水和物(99.99%)、硫化ナトリウム、メルカプト酢酸、 3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、臭化N-セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、オルト珪酸テトラエチル(TEOS)、 2-アミノエタンチオール塩酸塩、 1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、ジチオスレイトール(DTT)、およびアルドリチオール-2 ( aldrithiol-2 ) は、 Aldrich から購入し、受領してすぐに用いた。バンコマイシン塩酸塩、およびアデノシン三リン酸二ナトリウム(ATP)は、 Sigma から購入し、さらなる精製は行わずに使用した。 Bamstead E-pure 純水製造システムで調製された Nanopure水 ( Nanopure water ) (18.1MHz)を、実施例を通して使用した。PBS緩衝液(10.00mM, pH7.4)を、全体のイオン強度を 0.06M とするように調製して、バンコマイシンおよびATPの全ての装填・放出実験の溶媒として用いた。
【実施例】
【0056】
[実施例1: CdSでキャップされた、薬剤を装填したメソポーラスシリカパーティクル]
〈a. 連結基-MSNのメソポーラス骨格内へのバンコマイシンおよびATPの装填、ならびに、メルカプト酢酸-官能化CdSナノパーティクルによるメソ孔のキャッピング〉
下記の(b)項で得た精製した連結基-MSN物質 (100.00mg) を、ATPもしくはバンコマイシン (どちらの場合も 3.00μmol) のPBS緩衝液 (0.6mL, pH7.4) 中で二十四時間温置した。下記の(c)項で得た、メルカプト酢酸-官能化CdSナノパーティクル (0.15mmol) を、バンコマイシンもしくはATP (どちらの場合も 0.01mmol) を含めたPBS緩衝液 2.00mL
中に溶解した。その後、 1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC) (57.50mg, 0.30mmol) を、このCdS/薬剤溶液に添加した。反応混合物を二十四時間攪拌した後、懸濁液を 12,000rpm で三分間、遠心分離した。得られた沈澱(ATPもしくはバンコマイシンを装填したCdSキャップドMSNs)を単離して、真空乾燥した。
【0057】
〈b. 2-(プロピルジスルファニル)エチルアミンの官能性を付加したMCM-41型メソポーラスシリカナノスフィア(連結基-MSN)の合成〉
以下に詳細を後述するように、メルカプトプロピル誘導のメソポーラスシリカナノスフィア物質(チオール-MSN)を、 Lin, V. S.-Y., et al., J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 11510-11511; Lin, V. S.-Y., et al., J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 9040-9041 の記載と類似の方法を用いて合成した。図2に示したように、界面活性剤を除去したチオール-MSN物質を、 2-(ピリジルジスルファニル)エチルアミンのメタノール溶液に加えて、激しく攪拌しながら室温で二十四時間処置し、 2-(プロピルジスルファニル)-エチルアミンで官能化されたMSN物質(連結基-MSN)を得た。
【0058】
臭化N-セチルトリメチルアンモニウム (CTAB, 1.00g, 2.74x10-3mol) を、Nanopure水 480mL 中に溶解した。NaOH(aq) (2.00M, 3.50mL) をCTAB溶液中に加えた後、溶液を353Kの温度に調整した。この界面活性剤溶液にTEOS (5.00mL, 2.57x10-2mol) を滴下して導入した後、続いてMPTMS (0.97mL, 5.13x10-3mol) を滴下して加えた。この混合液を二時間攪拌し、白色沈澱(合成直後のチオール-スフィア ( as-synthesized thiol-Sphere ) )を得た。固体生成物を濾過して、脱イオン水とメタノールとで洗い、空気中で乾燥させた。界面活性鋳型 ( surfactant template ) (CTAB)を除去するために、1.50gの合成直後のチオール-スフィアを、9.00mLのHCl(37.4%)および160.00mLのメタノールの溶液中で二十四時間還流した後、さらに脱イオン水およびメタノールで洗浄した。得られた界面活性剤除去済のチオール-MSN物質を高真空にかけて、メソ孔内の残留溶媒を除去した。Lin, V. S.-Y., et al., J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 11510-11511 に記載の方法を用いて、このチオール-MSN物質の表面を被覆した、化学的に利用可能であるようなチオール基を、 7.64x10-4mol/g と定量した。 Ebright, Y. W., et al., Bioconjugate Chem., 1996, 7, 380-384 に記載の方法で調製した 2-(ピリジルジスルファニル)-エチルアミン(PDEA) (9.12x10-4mol) のメタノール溶液 (60.00mL) で、精製したチオール-MSN物質 (1.00g) を激しく攪拌しながら室温で二十四時間処理し、所望のジスルフィド結合交換反応を行った。生成した 2-(プロピルジスルファニル)エチルアミンで官能化されたMSN物質を濾過してメタノールで洗い、空気中で乾燥させた。
【0059】
〈c. メルカプト酢酸誘導体である硫化カドミウム(CdS)ナノパーティクルの合成〉
合成手順は、 Colvin, V. L., et al., J. Am. Chem. Soc., 1992, 114, 5221-5230 で報告されたものを改変したものを用いた。メルカプト酢酸 (2.15x10-3mol, 150.00μL) を硝酸カドミウム四水和物 (3.00x10-4mol) の水溶液 (270.00mL) に加えて、濁った青色溶液とした。 0.11M NaOH でpHを11に調整した。硫化ナトリウム (1.50x10-4mol) を 10.0mL の H2O に溶解して、激しく攪拌しながら硝酸カドミウム水溶液へとすみやかに加えた。反応混合液を遮光して十分間攪拌した後、ロータリーエバポレータを用いて当初体積の1/10まで濃縮した。無水メタノールを加えて、メルカプト酢酸-キャップド水溶性硫化カドミウムナノパーティクル(CdS)を沈澱物として得た。
【0060】
〈d. 連結基-MSN物質およびCdS-キャップドMSN物質の構造特性評価のための、機器の使用法、条件、およびパラメータ〉
粉末XRD回折データは、 Cu Kα 照射を用いる Scintag XRD 2000 X-ray diffractometer を用いて収集した。窒素の吸/脱着等温線、表面積(SA)、および孔直径の中央値(MPD)を、 Micromeritics ASAP2000 sorptometer を用いて測定した。試料の調製には、130℃での一時間の脱ガス処理を含めた。これらの物質の窒素吸/脱着等温線を-196℃で得た。特定の表面積および孔サイズの分布を、 Brunauer-Emmett-Teller(BET)法と Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法とをそれぞれ用いて計算した。 JEOL 840A scanning electron
microscope を、加速電圧 10kV 、イメージングのためのビーム電流 0.005nA で用いた走査型電子顕微鏡法によって、これらの物質のパーティクル形態を測定した。透過電子顕微鏡による研究のために、小さいアリコートを切り取って、二枚の清浄なスライドガラスの間に挟んだ。スライドを指で圧搾し、前後に擦って大きな塊を粉砕した。得られた粉末をペトリ皿中でアセトン洗浄した。混合物を攪拌して、超音波でかき混ぜた。懸濁状態であるうちに、レース状カーボンで被覆したTEMグリッドをこの懸濁液中に通した。グリッドを空気中で乾燥した後、 Amray 1845 FE-SEM で検査し、続いて Philips model CM-30 TEM を300kVで操作して検査した。ビーム照射 ( beam bombardment ) 下において試料が安定して見えていたため、試料にはそれ以上の処理をしなかった。ミクロトーム試料の調製には、 EnBed 812 を用いて、EPONエポキシ樹脂の誘導体内へと包埋する処理を含めた。この混合物を遠心分離して、60℃で二十四時間硬化させた。包埋済のブロックをミクロトーム処理して、ダイヤモンドナイフ(Diatome)を備えた Reichert Ultracut S ultramicrotome を使用し、60〜80nm厚の薄切片を得た。浮遊する切片を400メッシュのPd被覆Cuグリッドにマウントした。 Philips model CM-30 TEM を 300kV 、電子光学倍率 69,000〜340,000 で操作し、これらのミクロトーム試料のTEM画像を記録した。
【0061】
〈e. 結果〉
図3a、3b、3c、3eに示したように、球状のパーティクルの形状、および、連結基-MSN物質の六方格子状配列のMCM-41型メソポーラス構造を、走査型電子顕微鏡および透過電子顕微鏡(それぞれ、SEMおよびTEMと称する)で確認した。この物質の N2 吸/脱着等温線は、さらに、 941.0m2/g の表面積と、BJH法による孔径分布の狭さ(平均孔径=2.3nm)とを有する、MCM-41構造(IV型)に特有のBET等温線を示した。バンコマイシン (3.0μmol) およびATP (15.5μmol) の水溶液を吸収するための化学的に不活性なホストとして、連結基-MSN (100.0mg) を使用した。
【0062】
図1に示したように、メルカプト酢酸基を有する水溶性CdSナノ結晶(ナノクリスタル) (平均粒径2.0nm) を、MSN/薬剤複合物質のメソ孔表面と結合した 2-(プロピルジスルファニル)エチルアミン連結基と、水溶液中で反応させることによって、共有結合的に捕捉してアミド結合を形成した。得られた反応懸濁液を遠心分離し、未反応のCdSナノパーティクルと一緒になっているCdS-キャップドMSN/薬剤複合物質を濾過した。濾液中の遊離バンコマイシンおよび遊離ATP分子の濃度を、HPLCで定量した。計算した濃度の、バンコマイシンおよびATP溶液中の減少分は、連結基-MSN物質 100.0mg あたり、メソ孔内にカプセル化されたバンコマイシン (2.5μmol) およびATP (4.7μmol) に相当する量であるとした。 ( The calculated concentration decreases of solution vancomycin and ATP were attributed to the amounts of mesopore-encapsulated vancomycin (2.5 pmol) and ATP (4.7 mol) per 100.0 mg of linker-MSN material. ) この値は、それぞれ、充填率約83.9mol%、30.3mol%に相当する。
【0063】
MSNマトリックスへのCdSナノパーティクルの成功した組み込みについて、種々の分光学的手法で確認した。図4aに示したように、連結基-MSN物質への、表面官能化されたCdSナノパーティクルの共有結合的な固定によって、粉末X線回折(XRD)のピークが減少した。MCM-41物質の孔と骨格との間における、散乱コントラストのこのような減少は、 Marle
r, B., et al., Microporous Mater. 1996, 6, 375-383; Winkler, H., et al., Adv. Mater. (Weinheim,Ger.) 1999, 11, 1444-1448; Zhang, W.-H., et al., Chem. Mater. 2000, 12, 1408-1413; Zhang, W.-H., et al., Chem. Mater. 2001, 13, 648-654 といった文献で報告されているような、孔充填効果 ( pore-filling effect ) に因るものである。連結基-MSN物質の d100値と比較すると、CdS-キャップドMSNの d100値は若干増加していた。 d100値の増加は、CdSナノパーティクルとメソポーラスシリカマトリックスとの間の孔充填効果に起因する共有結合に因るものであると考えられる。
【0064】
図4bには、連結基-MSN物質およびCdS-キャップドMSN物質の、2θの範囲を 10°〜70° とした、広角XRD回折パターンを示した。連結基-MSN物質(図4b)において、非晶質シリカの拡散した低い強度のピークが観察されるのとは対照的に、CdS-キャップドMSN物質ではさらなる二つのピークが見られた。図4bに見えるこれらの二つのピークは、メソポーラスシリカに結合しているCdSナノパーティクルの格子面 (111) および (220) での回折に因るものである。 Kumar, A., et al., Langmuir, 2000, 16, 9299-9302; Diaz, D., et al., J. Phys. Chem. B, 1999, 103, 9854-9858; Weller, H., et al., Chem. Phys. Lett., 1986, 124, 557-560; Yang, J., et al., Chem. Mater., 2000, 12, 3259-3263 を参照のこと。さらに、これらのCdSナノパーティクルの「キャップ」が、メソ孔表面に結合した連結基と実際に「共有」結合をしているかということを確認するために、CdS-キャップドMSNと、連結基-MSNとの双方についての 13C固体CP-MAS NMRスペクトルを慎重に比較して、CdS物質とMSN物質との間の共有結合的な連結の存在を、明瞭に観察することができた。
【0065】
また、CdS-キャップドMSNのTEMによる調査から、有機官能化MSN物質の表面上および内部の双方に、CdSが分布しているという直接の証拠も得られた。図3dでは、メソ孔(ポーラスチャネル)を黒および白の交互の縞で表し、また、CdSナノパーティクルを、外側の端と、内側の明るい領域(矢印で指し示している)に示しているMSNのメソ孔とで、明瞭に可視化した。CdS-キャップドMSNの場合に観察されたこれらの特徴とは逆に、CdS「キャッピング」をする前の連結基-MSNのTEM写真(図3c)では、メソポーラスチャネルとシリカマトリックスとの間に、円滑な端と良好なコントラストが見られる。さらに、孔の軸方向を向いた連結基-MSNのTEM写真(図3e)における、周期的に良好に六方格子状に配列されたメソ孔(明るい点で示す)と、CdS-キャップド-MSN物質の場合に観察された図3fの矢印で指し示したMSN物質の外側のCdSナノパーティクルの付随層およびメソ孔の崩れた六方格子状配列である広い領域とを、比較した。この写真においても、「崩れた」 ( "disordered" ) 領域とは対照的な、六方対称に詰められたメソ孔を有する狭い領域は見られた。これらの異なる領域は、ほとんどのメソ孔がCdSナノパーティクルでキャップされているが、全てのメソ孔がキャップされてはいない、ということに因る。
【0066】
[実施例2: DTT起因の薬剤/神経伝達物質放出の研究]
バンコマイシンもしくはATP (10.00mg) を有するCdS-キャップドMSNを、PBS緩衝液(pH7.4) 1.50mL 中で分散した後、洗浄/超音波処理/遠心分離のサイクルを五回繰り返して、物質の外表面に物理吸着した ( physisorbed ) 、キャップされていないバンコマイシン分子もしくはATP分子を除去した。精製したMSN/薬剤複合物を、PBS緩衝液(pH7.4) 3.50mL 中で再分散した。MSN/水懸濁液から試料を十二時間に亘って四時間毎に分取して、逆相C18カラム(Vydac, 0.4cmx25cm)を備えた分析用HPLCシステム(Hitachi LC/3DQMS)に注入し、バンコマイシン分子もしくはATP分子をカプセル化したメソポーラスチャネルの浸出をモニターした。十二時間後、ジチオスレイトール (DTT, 18.50mM) を懸濁液に加えて、CdSナノパーティクルとMSNとの間のジスルフィド結合を開裂した。DTT起因のバンコマイシンおよびATPの放出の動力学的プロファイルを、以下の二つの文献で報告されたHPLC分離条件にしたがってモニターした。280nmおよび258nmにおけるピーク/エリアを、バンコマイシンおよびATPの放出量の定量分析のために、それぞれ、連続的にモニ
ター/積分した。 Farin, D. et al., J. Pharm. Biomed. Anal., 1998, 18, 367-372; Veciana-Nogues, M. T. et al., Food Chem., 1997, 59, 467-472 を参照のこと。
【0067】
〈結果〉
図5bに示しているように、CdS-キャップドMSN薬剤/神経伝達物質搬送系の、 10mM PBS緩衝液(pH7.4)中における十二時間の薬剤放出量は、1.0%未満であった。この結果からは、バンコマイシン分子およびATP分子をカプセル化したCdSナノパーティクルは、望まざる滲出に対して良好なキャッピング能力があるということが示唆される。CdS-キャップドMSNsの水性懸濁液に、DTTおよびMEのようなジスルフィド還元分子を加えると、メソ孔内にトラップされた薬剤/神経伝達物質の速やかな放出が起きた。二十四時間以内の放出は、 18.5mL DTT導入後の三日間におけるバンコマイシンおよびATPの全放出量の85%に達した(図5a)。興味深いことに、バンコマイシンおよびATPの放出率は類似した拡散動力学的プロファイルを示し、これは、これらの放出された分子とメソポーラスシリカマトリックスとの間の相互作用の欠落を示唆している。しかしながら、DTTによってメソ孔からキャップを脱離させてからの三日間において、カプセル化されたバンコマイシンの放出量は53.8%(1.6μmol)であり、一方、トラップされたATP分子では28.2%(1.3μmol)のみが拡散した。このようなMSN物質から放出されるバンコマイシンとATPの割合の大きな相違からは、ATP分子がバンコマイシン分子よりも、有機官能化されたメソポーラスチャネルへと強く物理吸着しているということが示唆される。文献(Takacs-Novak, K. et al.,
Int. J. Pharm., 1993, 89, 261-263)におけるいくつかの報告に基づいて云うと、バンコマイシンの等電点(pI)は8.3であり、それゆえに今回の実験条件(pH7.4)においてはカチオンとして荷電されている。逆に、ATPはpH7.4の水溶液中ではアニオン性である。連結基-MSN物質の表面は、pH7.4でカチオン性(アンモニウムカチオン)である 2-(プロピルジスルファニル)エチルアミンで官能化修飾されていると仮定すると、ATP分子と連結基-官能化メソ孔との間の静電相互作用に係る引力によってATPのより強い物理吸着が起きていることになり、一方、バンコマイシン分子と連結基-誘導メソ孔との間の静電相互作用に係る反発力によって、バンコマイシンの表面吸着が阻害されることになる。これらの結果から、おそらく、孔表面と直接に接触していない分子(つまり、物理吸着していない分子)のみが、今回の実験条件の下では放出されたのであろうと考えられる。さらに、バンコマイシンとATPとの双方の場合において、DTTの添加から二十四時間後の薬剤の放出量は、同様のDTT濃度への依存を示し(図5b)、これは、放出率がCdSキャップの脱離率に従うということを示唆している。
【0068】
[実施例3: 生体外の神経膠細胞(アストロサイト)における、CdS-キャップド・ATP-カプセル化MSNの制御放出の研究]
〈a. 方法〉
(i) Wistar ラット( Iowa State University で飼育)をこれらの実験に用いた。アニマル・ケアおよび実験プロトコルについては、ガイドラインに従い、 the Iowa State University Committee on Animal Care の承認を得た。
【0069】
(ii) 細胞培養。 Jeremic, A. et al., J. Neurochem., 2001, 77, 664-675 に記載されている方法によって、新生仔(P0〜P3)ラット大脳皮質から、肥沃な初代アストロサイトを培養した。要約すると、三匹の動物を解剖して得た新鮮な皮質組織を、パパイン (1.54mg/mL; Sigma-Aldrich Co.) を含有した Earle緩衝塩類溶液 (EBSS; Gibco-Invitrogen
Co.) 2.00mL 中で37℃で五十分間培養した。培養後、組織をEBSS溶液ですすぎ、トリプシン阻害剤溶液 (1mg/mL; Gibco-Invitrogen Co.) 中で五分間培養した。BESS溶液で一度、培地(α-minimum essential medium (α-MEM ; Gibco-Invitrogen Co.) 100mL あたりに、 10% 熱失活ウシ胎児血清 (FBS; Gibco-Invitrogen Co.) と、 1.00mL のペニシリン-ストレプトマイシン溶液 (Sigma-Aldrich Co.) を加えたもの)で一度ずつ洗った後、組織をファイアーポリッシュガラスピペット ( fire-polished glass pipet ) を通して
粉砕し、培地中に機械的に分散させた。細胞懸濁液を滅菌済15mL遠心分離用チューブに移して、 1000g で十分間回転させた。細胞ペレットを培地( 100.00mL あたりに、10% 熱失活FBSと、 1.00mL のペニシリン-ストレプトマイシン溶液を加えたα-MEM)に再分散して、培養フラスコに播種した。細胞は37℃に保ち、 5% CO2/95% 空気で加湿した。培地は二、三日毎に交換した。混合した培地がコンフルエンス(集密状態)に達した際(九日〜十二日)、フラスコを九十分間振盪(260rpm)して、ミクログリア(小膠細胞)と分化型Iアストログリアを除去した。細胞を振盪した後、培地を交換し、フラスコで一時間培養して新鮮な培地中で CO2 を平衡状態にした。培養物を37℃、260rpmで一晩(十二〜十八時間)振盪した。付着した細胞をトリプシン (0.25%; Sigma-Aldrich Co.) で五分間処理して、I型アストログリアに富んだ培養物を得た。10% 熱失活FBS(血清は、プロテアーゼ阻害剤を含んでいる)を加えたα-MEMを添加して、トリプシンを失活させた。ポリ-L-リジンで被覆したカバーガラス (10.00μg/mL; MW 100,000; Sigma-Aldrich Co.) に細胞を密度 3.00x104cells/cm2で播種した。全ての実験は、再播種から二日〜四日後の培地中の細胞を用いて行った。
【0070】
(iii) 膠細胞(グリア細胞)の特性評価。後述の免疫細胞化学の項に記載している方法でアストロサイトを同定するために、グリア線維性酸性蛋白質(GFAP)の抗体を用いた。微小管蛋白質 MAP-2 の抗体を用いて、培養膠細胞がニューロンを有していないということを確認した。アストロサイトに富んだ培養物においては、 MAP-2 の免疫活性は存在せず、一方、ニューロンを含有する類似の培養物においては、ニューロンが免疫陽性を呈した。
【0071】
(iv) 免疫細胞化学法 ( Immunocytochemistry ) 。細胞を 4% パラホルムアルデヒド
(Fisher Chemical) を用いて室温で30分間固定した後に、ウシ血清アルブミン (BSA; Sigma-Aldrich Co.) 、および、非特異的結合を阻害するための 100.00mM L-リジン (Sigma-Aldrich Co.) 、および、膜の透過化処理のための 0.4% Triton X-100 、を含有する 50% ヤギ血清溶液中で、細胞を三十分間培養した。グリア線維性酸性蛋白質 (GFAP; 1:5000; Sigma-Aldrich Co.) の抗体、および、微小管関連蛋白質(MAP-2; 1:2000; Sigma-Aldrich Co.) の抗体を用いて、免疫細胞化学法を行った。陽性対照群は、皮質膠細胞およびニューロンを用いた抗体で作成した。陰性対照群は、特異的抗血清を除いて作成した。ビオチンで標識した二次抗体である Vectastain ABC kit (Vector) と、富ニッケル3-3'-ジアミノベンジジン法とを使用して、抗体を可視化した。 Jeftinija, S., et al., Regul. Pept. 1992, 39, 123-135 を参照のこと。細胞は試薬アルコールで脱水して、キシレンで洗い、アクリトールでスライドガラス中に封入した。
【0072】
(v) 細胞内カルシウムのイメージング。培養細胞の細胞内カルシウム濃度( [Ca2+]i )への、実験操作による影響を、レシオメトリックイメージング法 ( ratiometric imaging techniques ) によって評価した。 Jeftinija, S. D., et al., J. Neurochem., 1996, 66, 676-684 を参照のこと。 Fura 2-AM (5.00μM; Molecular Probes) を37℃で細胞に四十分〜六十分間与えた。AMエステル 4.00nM あたりに 1.00μL の 25%(w/w) Pluronic F-127 (Molecular Probes) を混合し、エステルの水溶性を増大させた。膠細胞を封入したカバーガラスを、通常のHepes塩溶液で洗浄し、さらに37℃で十分間培養して、 Fura 2-AM を脱エステル化した。通常のHepes塩溶液は以下を含む(単位:mM): NaCl 140.00, KCl 5.00, MgCl2 2.00, CaCl2 2.00, HEPES (Sigma-Aldrich Co.) 10 (pH 7.4)。全ての画像工程および分析は、 Zeiss microscope を備えた Attofluor system を用いて行った。背景を減じて縮小した画像(340/380nm)から、文献で報告された方法によって [Ca2+]i を算出した。 Grynkiewicz, G. et al., J. Biol. Chem., 1985, 260, 3440-3450 を参照のこと。 Attofluor 提供の手順にしたがって、 Fura-2 Penta K+salt (Molecular Probes) を基準として、キャリブレーションを in situ で行った。 Fura 2-AM が励起する波長である 340nm および 380nm の波長を用いて、 520nm の放射光を収集した。
【0073】
〈b. 結果〉
或る細胞型の選択的な刺激に関する、本発明に係るメソポーラスシリカパーティクルの生体適合性および有用性を示すために、ATPを装填したMSNsを、作成したアストロサイト培養物へと導入した。アストロサイトの細胞内カルシウムの増大に関与する受容体を誘起するということは公知であって( Jeremic, A.,et al., J. Neurochem., 2001, 77, 664-675; Neary, J. T., et al., Brain Res., 1991, 566, 89-94; Zhu, Y. and Kimelberg, H. K. J. Neurochem. 2001, 77, 530-541 )、それが多くの細胞間伝達および細胞の共同活動のための重要な調節メカニズムであること( Wang,Z., et al., Anal. Chem., 2000,
72, 2001-2007; Newman, E. A. and Zahs, K. R. Science (Washington, D.C.) 1997, 275, 844-847 )が知られている。公知のプロトコル(Jeftinija, S. D., et al., J. Neurochem., 1996, 66, 676-684 )によって新生仔ラットからI型アストロサイトの培養物を得て、実験の解釈を複雑にするニューロンが存在しないようにした。位相差顕微鏡法によって、培養物が確かにI型アストロサイトに富んでおり、且つニューロンが欠落していることが示された。これらの細胞に対する免疫細胞化学実験法によって、全ての培養物がグリア線維性酸性蛋白質(GFAP)について95.0%よりも高い免疫陽性を示し、且つ MAP-2 免疫活性を欠いていることが示された。観察結果から、さらに、これらの培養物が、確かにI型アストロサイトであって、ニューロンでは無いということが確認された。培養アストロサイトへのATPの作用効果を定量するために、レシオメトリックイメージング法( Jeftinija, S. D., et al., J. Neurochem., 1996, 66, 676-684; Grynkiewicz, G., et al.,
J. Biol. Chem. 1985, 260, 3440-3450 )を用いて、膠細胞のカルシウム量をモニターした。広汎に使用されている細胞内カルシウム濃度( [Ca2+]i )の高感度指示薬である膜透過性Ca2+キレート蛍光染料 (Fura-2 AM; Grynkiewicz, G., et al., J. Biol. Chem., 1985, 260, 3440-3450 を参照) を細胞に与えた。 Zeiss microscope を備えた Attofluor system を使用して、ATP起因の [Ca2+]iの増加(カルシウム濃度の一過性変動; Grynkiewicz, G., et al., J. Biol. Chem., 1985, 260, 3440-3450 を参照)が、細胞の擬似色画像における色の変化(蛍光の増大)として検出された。
【0074】
MSN系から放出されたATPの作用効果を測定するために、固定された表面を有して培養されたアストロサイトと、メソポーラスチャネル内にカプセル化されたATP分子を有するCdS-キャップドMSNsとに、まず Fura-2 AM を与えた後、体積 50.0μL 、流量 200.0μL/minute のフローセル中に置いた。このフロー方向は、図6の画像の上部から下部へと流れる方向である。図6aおよび図6cに示されているように、MEの灌流適用 ( 1mM で五分間)
によって、ATPを装填したMSNのパイル( MSN-1 および MSN-2 )のエリアにおいて、CdSキャップの蛍光強度が劇的に減少するという結果が得られた。これは、CdSキャップが放出されて、表面に結合したMSNsから離れて拡散していったということを示唆している。さらに、細胞内 [Ca2+]i の顕著な増加が、 Cell-1 および Cell-2 の擬似色画像の色変化として表れ(図6a)、また、これに対応して、これらの二つの細胞における時間変化プロットである赤色および青色の曲線の上方向へのシフトが観察された(図6c)。この観察結果からは、 MSN-1 パイルに存在したメソポーラスシリカナノパーティクルから放出されたATP分子が、フローの下流に位置するアストロサイト(例えば、 Cell-1 および Cell-2 )の細胞表面のATP受容体に届き、対応するATP受容体が関与するところの細胞内カルシウム濃度増大を起こした、ということが示唆される。
【0075】
MSN-1 パイルに対して下流エリアに位置した細胞(図6a)のみが、MEの灌流適用によって刺激されているということは注目に値する。図6aに示しているように、ME適用の全期間を通じて、 Cell-5 等の上流エリアに位置したアストロサイトの擬似色画像においては、明瞭な色変化は観察されなかった。この結果からは、 MSN-1 パイルに対して「上流」であるアストロサイトの細胞内カルシウム濃度は、MEの灌流的導入による影響を受けなかったということが示唆される。フロー方向が、これらの画像の上部から下部へと向かう
ものであるとすると、固定されたMSNsのパイルから放出されたATP分子が、フローに逆らって拡散して「上流」のアストロサイト( Cell-5 )まで届いて刺激することはできなかったために、このような現象が起こったということになる。
【0076】
[Ca2+]i の増加が、MSNsから放出されたMEもしくは CdS に起因するものではないということを確認するために、二つの対照実験を行った。第一に、MSNsが存在しないこと以外は同一であるプロトコルを介して、I型アストロサイトに富んだ培養物を得た。図7に示したように、これらの細胞へのMEの灌流適用 ( 1.0mM で五分間) では、 [Ca2+]i の増加は見られなかった。その後、高濃度のATP (100.0μM) を、これらのME処理済アストロサイトへ導入した。全ての細胞がATPの適用に応答し、 [Ca2+]i がはっきりと増加した。MEの適用が、これらのアストロサイトのカルシウムチャネルの活性を刺激せず、 [Ca2+]i のいかなる増加も起こさなかったことは明白である。また、このようなME処置はこれらの細胞に明確な損傷を与えることはなく、細胞はATP刺激に対して通常の応答をすることができた。
【0077】
実施例の条件下における、本発明に係るメソポーラスシリカパーティクルの、アストロサイトの [Ca2+]i への作用効果を測定するために、肥沃なI型アストロサイトを、ATPをカプセル化していないキャップドメソポーラスシリカパーティクルの存在下で培養した。ATP適用前(図8a)および適用後(図8b)の培養物の擬似色画像として示しているように、 100.0μM ATPの灌流適用によって、アストロサイトが位置するエリアだけが蛍光強度の増大( [Ca2+]i の増加)を示し、一方、キャップドメソポーラスシリカパーティクルのエリアの蛍光強度は一定のままであった。この結果からは、キャップドメソポーラスシリカパーティクルの存在下においても、アストロサイトがATP刺激に通常の応答をしたということが示される。その後、アストロサイトの培養物およびキャップドメソポーラスシリカパーティクルに、同一のME適用を行った。図8bおよび8cに示されているように、アストロサイトのエリアでは [Ca2+]i の変化は認められなかったが、キャップドメソポーラスシリカパーティクルのエリアでは蛍光強度が劇的に減少したことが容易に見てとれる。これは、ME適用によってCdSキャップが放出されたことを示している。
【0078】
[実施例4: 遺伝子トランスフェクション]
〈a. 細胞培養物〉
皮質ニューロンおよび海馬ニューロンの培養物を、 Jeremic, A., et al., J. Neurochem., 2001, 77, 664-675 の記載にしたがって調製した。
【0079】
〈b. カチオン性デンドリマー-キャップドメソポーラス珪酸塩〉
以下の手順で調製したポリ(アミドアミン)デンドリマー-キャップドメソポーラス珪酸塩(G2-PAMAM-MSN)のキャリアー系を用いて、遺伝子トランスフェクションを行った。メルカプトプロピル誘導メソポーラスシリカナノスフィア物質(チオール-MSN)を、 Lin, V. S.-Y., et al., J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 11510-11511; Lin, V. S.-Y., et al., J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 9040-9041 の記載と同様の方法を用いて合成した。チオール-MSN's (1.0g) に、 3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン(MPTMS) 0.189mL を導入して(MSNのグラム当たりに MPTMS 1mmol の割合)、チオール-MSNの外表面に
3-メルカプトプロピル基のさらなる層をグラフトしてから、トルエン中に分散した。得られた物質を、メタノールでさらに洗浄した。 HCl 7.5% v/v メタノール溶液中で酸性抽出して、界面活性鋳型をさらに除去した。この物質を、メタノール中で 2-チオピリジル-シスチン塩酸塩 (5x10-4mol) と反応させ、チオール-MSNのジスルフィド交換を介して、システイン基でさらに官能化した。表面被覆物は、MSN物質のグラム当たりにシステイン 3.6x10-4mol と定量された。このシステイン-MSN (0.1g) を、まず燐酸塩緩衝液 0.7mL 中に分散してから、 G2-PAMAMデンドリマーの 5% NaHCO3 溶液 (0.69mL) に、 15mg のEDC (7.2x10-5mol) を加えたものを添加して、所望の G2-PAMAM-MSN を得た。生成物は水と
メタノールとで洗い、高真空下で乾燥させた。
【0080】
〈c. 遺伝子トランスフェクションのためのプラスミドDNAベクター〉
哺乳類での発現のために増強した緑色蛍光蛋白質(EGFP)であるpEGFP-C1ベクターを、
BD Biosciences, inc. から購入した。このプラスミドDNAの濃度はUV分光器で測定した。
【0081】
〈d. 方法〉
PAMAM-MSN と pEGFP-C1 との典型的な複合化実験を、以下の手順で行った。まず、MSNパーティクルを neurobasal培地に分散 (培地 0.430mL に MSN 1.5mg ) して、超音波処理/ボルテックス攪拌処理を微細乳化懸濁液が得られるまで数回繰り返し、 G2-PAMAM-MSN の水性懸濁液を得た。この懸濁液 18μL の複数のアリコートに、それぞれ異なる量のpEGFP-C1ベクターを加えて培養し、複合化に最適な比率を研究した。培養後十二時間の上澄中のDNA量を、この上澄中のDNAでインターカレーションした EtBr の蛍光をモニターすることによって測定し、複合化の程度を分析した。
【0082】
EtBr の背景蛍光と比較して、蛍光の増大がまったく見られなかった組み合わせのみを、細胞トランスフェクションに使用した。これらの組み合わせを電気泳動させ、複合体が細胞膜に近接してさらに内部に入るために必要な過剰の陽荷電を保持していることを確認した。トランスフェクション実験に使用された最終的なDNA量は、 PAMAM-MSN 懸濁液 18μL で複合化された pEGFP-C1 1, 2, 3, 4μg であった。この組み合わせは、見積ったN/P比(陽/陰荷電比) 75.5, 37.75, 25.16, 18.87 にそれぞれ相当した。複合物の懸濁液を、 neurobasal培地で希釈して体積 100μL とし、細胞培養物上に沈着させた。緑色蛍光蛋白質の細胞内局在化を、生存細胞と、さらに死亡細胞について、 Leica 共焦点顕微鏡イメージングシステムにおいて行った。
【0083】
standard FITC filter sets を備えたアルゴンレーザーを使用して、GFPの検出を行った。 60 plan 油浸対物レンズを用いて、細胞をイメージングした。
〈e. 結果〉
図8に示したように、遺伝子トランスフェクションから四十八時間後の細胞培養物を光励起(励起波長=488nm)したところ、強い緑色蛍光を発したニューロンが観察された。この結果からは、ニューロンが、DNAと会合した PAMAM-MSN 遺伝子転写系にトランスフェクションされた、ということが示唆される。DNAとの複合化のために、MSNを構造鋳型として利用し、メソポーラス珪酸塩の表面上に多量の低細胞毒性 G2-PAMAM を組み上げることによって、均一溶液中の或るプラスミドDNAに結合する G2-PAMAM を充分に静電的に補給することがエントロピーペナルティのために困難であるという問題を回避することができる。加えてこの方法では、細胞毒性を有することがありターゲットとなる細胞を損傷する虞のあるような従来技術に係る高世代カチオン性デンドリマーの使用を避けることができる、というもうひとつの重要な手法も提供する。
【0084】
[実施例5および6]
実施例5および6では、本発明に係る物体を得るための、キャップすることができるような中間体であるメソポーラス珪酸塩の合成法を示す。或る実施形態においては、本発明は、ここに記載されている新規なメソポーラス珪酸塩中間体を提供する。別の実施形態においては、本発明は、ここに記載されているメソ型珪酸塩を調製するための新規な合成方法を提供する。特定の実施形態においては、本発明は、実施例5および6に記載されているメソポーラス珪酸塩パーティクルの形状とサイズを制御するための合成方法を提供する。
【0085】
[実施例5: 共縮合による合成法を経由する、メソポーラスシリカの有機官能化および形態制御]
界面活性ミセルを鋳型とする、 MCM-41/48 ( Beck, J. S. et al., J. Am. Chem. Soc., 114, 10834-10843 (1992); Kresge, C. T. et al., Nature, 359, 710-712 (1992) )、 SBA-15 ( Zhao, D. et al., Science, 279, 548-552 (1998) )、 MSU-n ( Bagshaw, S. A. et al., Science, 269, 1242-1244 (1995) )、 KIT-1 ( Ryoo, R. et al., J.
Phys. Chem., 100, 17718-17721 (1996) )、および FSM-16 ( Inagaki, S. et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 69, 1449-1457 (1996) )といったメソポーラスシリカ物質の合成の発見以来、 (i) 外表面および/内表面の「官能化」による有機/無機ハイブリッドの調製、および (ii) 「パーティクル形態」の制御、に関して多くの研究努力が費された。このような研究の成功によって、分離( Dai, S. et al., Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 38, 1235-1239 (1999); Lin, Y. et al., Environ. Sci. Technol., 35, 3962-3966
(2001); Yoshitake, H. et al., Chem. Mater., 15, 1713-1721 (2003); Yoshitake, H.
et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 76, 847-852 (2003); Hossain, K. Z. and Mercier, L., Adv. Mater., 14, 1053-1056 (2002) )、センサー設計( Lin, V. S. Y. et al., J. Am. Chem. Soc., 123, 11510-11511 (2001); Burleigh, M. C. et al., Chem. Mater.,
13, 2537-2546 (2001) )、触媒( Soler-Illia Galo, J. d. A. A. et al., Chem. Rev., 102, 4093-4138 (2002); Stein, A. Adv. Mater., 15, 763-775 (2003); Davis, M. E., Nature, 417, 813-821 (2002); Corma, A. Chem. Rev., 97, 2373-2419 (1997); Price, P. M. et al., Dalton, 101-110 (2000); Ying, J. Y. et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 38, 56-77 (1999); Sayari, A., Chem. Mater., 8, 1840-1852 (1996); Moller, K. and Bein, T., Chem. Mater., 10,2950-2963 (1998) )、ならびに薬剤搬送( Lai, C. -Y. et al., J. Am. Chem. Soc., 125, 4451-4459 (2003) )における、これらの物質の利用が促された。厖大な合成アプローチが追求され、種々の有機基によるMCMシリカの「官能化」については重篤な進展が為されてきたが、現在の当該技術分野の方法における「合成後グラフティング」 ( post synthesis grafting ) ( Liu, J. et al., J. Phvs. Chem. A, 104, 8328-8339 (2000) )、および「有機シロキサン/シロキサン共縮合」 ( organosiloxane/siloxane co-condensation ) ( Stein, A. et al. Adv. Mater., 12, 1403-1419 (2000) )については、組み込む官能基の量と位置を制御する上でいまだ改善の余地がある。例えば、合成後グラフティング法では、典型的には、導入された有機基がメソポーラスチャネルの入口近傍と外表面とに蝟集してしまうために、不均一な表面被覆となってしまう( Lim, M. H. and Stein, A., Chem. Mater., 11, 3285-3295 (1999) )。多くの有機官能化メソポーラス物質が、共縮合を介して調製されてきた( Lim, M. H. and Stein, A., Chem. Mater., 11, 3285-3295 (1999); Fowler, C. E. et al., Adv. Mater., 13, 649-652 (2001); MacLachlan, M. J. et al., Chem.-Eur. J., 6, 2507-2511 (2000); Fowler, C. E. et al., Chem. Commun., 1769-1770 (1997); Fowler, C. E. et al., Chem. Commun., 1825-1826 (1998); Hall, S. R. et al., Chem. Commun., 201-202 (1999); Zub, Y. L. et al., Mendeleev Commun., 208-210 (2001); Lim, M. H. et al., Chem. Mater., 10,467-470 (1998); Lim, M. H. et al., J. Am. Chem. Soc., 119, 4090-4091 (1997); Babonneau, F. et al., J. Mater. Chem., 9, 175-178 (1999); Moller, K. et al., Chem. Mater., 11, 665-673 (1999); Sayari, A. and Hamoudi, S.,
Chem. Mater., 13, 3151-3168 (2001); Inagaki, S. et al., Nature, 416, 304-307 (2002); Burleigh, M. C. et al., J. Phys. Chem. B, 105, 9935-9942 (2001); Burleigh,
M. C. et al., Chem. Mater., 13, 4760-4766 (2001) )が、その一方、メルカプトプロピル官能基、アリル官能基、もしくはアミノプロピル官能基の組み込みを介した、球状またはチューブ状のMCM-41型シリカの合成については、ごく最近にわずかに報告( Sadasivan, S. et al., J. Mater. Chem., 13, 1023-1029 (2003) )があるのみである。また、過去に報告された共縮合法では、通常は、25%を超える表面被覆によって、構造の完全性および広範囲の周期性が崩れてしまう。
【0086】
発見された新規な合成方法では、メソポーラスシリカの有効な有機官能化と、パーティクル形態の制御とを組み合わせる。有機アルコキシシラン前駆体の濃度、分子サイズ、お
よび親水性/疎水性によって、官能化の程度、およびパーティクル形態が決まる。低濃度の臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)界面活性剤の存在下における、テトラエトキシシラン(TEOS)と、種々の有機アルコキシシランとの、水酸化ナトリウムを触媒とする反応に基づく共縮合方法を用いて、メソポーラス珪酸塩を調製した。この有機アルコキシシランには、 3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、 N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AAPTMS)、 3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル-トリメトキシシラン(AEPTMS)、ウレイドプロピルトリメトキシシラン(UDPTMS)、 3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(ICPTES)、 3-シアノプロピルトリエトキシシラン(CPTES)、およびアリルトリメトキシシラン(ALTMS)、が含まれる。
【0087】

法( Stoeber, W. et al., J. Colloid Interface Sci., 26, 62-69 (1968) )、もしくは最近報告された制御クエンチング法( Sadasivan, S. et al., J. Mater. Chem., 13, 1023-1029 (2003) )とは対照的に、本実施形態に係る共縮合反応中には、有機助溶媒は必要とされず、また、アルカリ溶液を瞬間的に中和させることも必要ではない。有機アルコキシシランの型および量を系統的に変化させることによって、一連のナノパーティクルを、スフィア、ロッド、六角チューブの形状として得た。以下の記載において、これらの物質のことを X-MP と称し、ここで式中の X は有機アルコキシシラン前駆体を意味し、 MP はメソポーラスパーティクルを表す。この有機アルコキシシラン誘導体である形態変化における、種々の力学的作用効果を試験するために、これらのメソポーラス有機//無機ハイブリッド物質を、粉末X線回折(XRD)分光法、電界放射型走査型電子顕微鏡法(FE-SEM)、窒素吸/脱着表面分析法(BET比等温線、およびBJH孔サイズ分布)、ならびに熱重量分析法(TGA)にかけて試験した。有機官能基の組み込みについては、 13C および 29Si 固体NMR分光法によって定量的に研究した。形態構造の観察、および有機官能化の程度を基にして、メソポーラスシリカナノパーティクルの形成は、有機アルコキシシラン類とCTABミセル類との間の相互作用に依存していることが明らかとなった。
【0088】
〈実験〉
われわれの共縮合反応に用いた有機アルコキシシラン前駆体は、化1 に示したように、一般のトリメトキシシリル終端基もしくはトリエトキシシリル終端基、ならびに種々の有機官能基を含んでいる。APTMS、AAPTMS、AEPTMS、UDPTMS、ICPTES、CPTES、ALTMS、TEOS、およびCTABは、 Aldrich から購入し、受領後に即使用した。反応混合物は、モル比で、 1.0 CTAB : 8.16 TEOS : 1.05 (特に他に定めなければ)選択した有機トリアルコキシシラン : 2.55 NaOH : 4857 H2O とした。例えば、 AP-MP の場合には、 CTAB (2.0g, 5.49mmol) 、 2.0M NaOH(aq) (7.0mL, 14.0mmol) 、および H2O (480g, 26.67mol) の混合物を、80℃で三十分間加熱して pH 12.3 にした。この清澄な溶液に、 TEOS (9.34g, 44.8mmol) および APTMS (1.03g, 5.75mmol) を注入によって連続してすばやく加えた。注入後、約550rpmで攪拌しはじめてから三分後に、白色沈澱が見られた。反応温度を80℃に保って二時間おいた後、溶液を室温まで冷却してクエンチした。生成物を濾過して単離し、多量の水とメタノールとで洗い、減圧乾燥した。生成直後の生成物の反応収率は、選択した有機アルコキシシランの種類により変化し、その範囲はTEOSの出発量の 38%〜65% であった。濃塩酸 (1.0mL) および生成物質 (1.0g) のメタノール混合液 (100mL) を、60℃で六時間、酸性抽出した。得られた、界面活性剤が除去された固体生成物を、濾過して水とメタノールとで洗った後、減圧乾燥した。純粋なMCM-41試料を、同一実験条件下で調製した。界面活性剤を含んでいる合成直後の試料のことを s-MCM-41 と称し、一方、CTABを除去した試料のことを MCM-41 と表記する。
【0089】
【化1】

Hitachi S4700 FE-SEM system を加速電圧 10kV 、イメージングのためのビーム電流 0.005nA で用いた走査型電子顕微鏡法(SEM)によって、パーティクルの形態を測定した。透過型電子顕微鏡法(TEM)の研究のために、メタノール懸濁液から少量のアリコートを取って、レース状カーボンで被覆してこの懸濁液中に通してから空気中で乾燥させておいたTEMグリッド内に入れた。エポキシド中に包埋した試料の薄切片を、ウルトラミクロトミーで得た(60〜80nm)。得られた試料を、 Philips model CM-30 TEM を 300kV で操作して調査した。ビーム照射下において試料が安定して見えていたため、試料にはそれ以上の処理をしなかった。
【0090】
粉末XRD実験を、 Cu Kα 照射源の Scintag XRD 2000 diffractometer を用いて行った。物質の長間隔の配列を研究するために、 2θ の範囲が 1.0〜10°である狭角回折を使用した。表面積、および孔直径の中央値を、 Micromeritics ASAP 2000 BET 表面分析システムによる N2 吸/脱着測定をして測定した。これらのデータは、 Brunauer-Emmett-Teller(BET)法およびBarrett-Joyner-Halenda(BJH)法を用いて見積って、表面積、および孔容積/孔サイズ分布をそれぞれ算出した。試料は90℃で一時間、さらに130℃で四時間、脱ガス処理して調製した。 TA Instruments TGA 2950 熱重量分析計を、窒素を継続的に流し(100mL/min)ながら 5℃/min の温度勾配をつけて用い、TGA曲線を記録した。
【0091】
29Si 、 13C 、および 1H の各核種について、それぞれ、 79.5MHz 、 100.6MHz 、および 400.0MHz の振動数とした、 Varian/Chemagnetics Infinity spectrometer で、固体核磁気共鳴(NMR)実験を行った。核 13C および 29Si は、直接分極法(DP)、もしくは隣接する 1H 核からの交叉分極法 ( cross polarization; CP ) ( Pines, A. et al., J. Chem. Phys., 59, 569-590 (1973) )を用いて観察した。試料は 5mm のジルコニアローター内に置いて、 doubly tuned Chemagnetics probe 内で 10kHz で回転させた。
【0092】
AL-MP 試料および ICP-MP 試料について、飽和回復実験 ( saturation recovery experiment ) を行い、 30〜65s の範囲で 29Si の縦方向緩和時間を得た。遅い緩和ではあったが、全ての試料の定量スペクトルを得るために、 29Si DPMAS 測定を行った。これらの
実験は、 2.1μs の単独の 90°パルスで励起させた後、 65kHz でデカップリングする連続波(CW) 1H でデータを取得した。典型的には、パルスディレイ 300s で270回のスキャンを行った。
【0093】
観察する核の分極を強め、データ取得の反復率を高めるために、可変振幅CPMAS構成( Peersen, O. B. et al., J. Magn. Reson. A, 104, 334-339 (1993) )を使用した。それぞれの交叉分極期間において、 1H rf 場を、 16kHz から 40kHz にかけて増加量 2.4kHz
で勾配をつけ、一方、 29Si (もしくは 13C ) rf 場は36kHz近傍で一定に保った。最大の 1H → 29Si 分極移動は、接触時間を約 10ms にすることで達成され、これは、シリカを用いた過去の研究( Maciel, G. E. and Sindorf, D.W., J. Am. Chem. Soc., 102, 7606-7607 (1980) )と合致する。 13C 核に対しては、 0.4〜1.5ms の短い接触時間を用いた。初期励起およびデカップリングには、それぞれ、 90kHz 、 65kHz の 1H rf 磁場を用いた。この研究で実験した全てのメソポーラス試料が受けた 1H 縦方向緩和時間は 1s を超えることは無く、CPMAS実験で使用されるべき反復時間である 1.2s は満たされている。典型的には、 4K スキャンは 1H → 29Si CPMAS では蓄積されたが、一方、 1H →
13C 実験には、一スペクトルについて 1K〜10K のスキャンが必要となった。全ての化学シフトは、 SiMe4 を基準とした。
【0094】
〈結果と考察〉
「有機官能化」について。分析を単純化するために、一連のサンプルは、有機アルコキシシランの量をTEOSの量の 12.8mol% に固定して調製した。図10に示した、これらの試料の 1H → 13C CPMAS スペクトルからは、これらの試料が意図した通りに実際に官能化されているという明瞭な証拠が得られる。表1にリストした、観察された化学シフトは、対応する前駆体の均一溶液で観察された化学シフトと能く一致する。
【0095】
【表1】

例えば、 CDCl3 (図示せず)に溶解した APTMS のスペクトルの 6.5ppm および 45.3ppm での共鳴は、 AP-MP で見られる 9.1ppm (C1)および 42.3ppm (C3)に対応している。C2を表す 28ppm の共鳴では、液体( 20.6ppm )と較べて高磁場方向へとさらに大きなシフトを呈する。 s-MCM-41 試料の CPMAS スペクトル(図10h)は、CTABによるいくつかの共鳴から成っており、炭素C3〜C14に相当する 30ppm 周辺のピークが最も強い。
【0096】
CP-MPおよび AL-MP の二つの試料では、CTABからの検出可能な共鳴(スペクトルfおよびgでアスタリスクを付けたところ)は、 13C 全体の強度のわずか数パーセントであった。シリカの官能化について、さらにTGAおよび 29Si 固体NMR(図11および表2)で研究した。一般に、明瞭な重量損失TGAプロファイルが見られ、これは、メタノール、有機官能基、および、表面のヒドロキシル基の脱水に因る少量の重量損失、を含んでいる。TGAデータから、孔内の有機官能基の存在の証拠が得られた一方で、有機官能化の直接の定量的測定結果が、図11の左の欄に示した 29Si DPMAS スペクトルから得られた。 -59pp
m および -68ppm 周辺の共鳴は、それぞれ T2 、 T3 で記している
【0097】

および
【0098】

の位置の珪素原子を表す(M aciel, G. E. et al., Encyclopedia of Nuclear Magnetic Resonance, 7, 4370-4386 (1996); Engelhardt, G. and Michel, D., High Resolution Solid-State NMR of Silicates and Zeolites, John Wiley & Sons: Chichester (1987); Lindner, E. et al., Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 38, 2155-2174 (1999) )。水素原子に最も近いところから2〜3結合長以内に位置する核のみを見る 29Si CPMAS NMR 法(図11右の欄)を用いて、これらの珪素核種を良好に観察することができた。 T3 および
T2 の官能化の共存によって、有機基とシリカ表面との間の共有結合の存在を確認できたことは注目に値する。 Q4 (シロキサン、
【0099】

)、 Q3 (singleシラノール、
【0100】

)、および Q2 (geminalシラノール、
【0101】

の珪素原子を表す共鳴線も、これらの通常のスペクトル位置に観察された( Maciel, G. E. et al., Encyclopedia of Nuclear Magnetic Resonance, 7, 4370-4386 (1996); Engelhardt, G. and Michel, D., High Resolution Solid-State NMR of Silicates and Zeolites, John Wiley & Sons: Chichester (1987); Lindner, E. et al., Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 38, 2155-2174 (1999) )。全ての珪素原子の位置の相対濃度を、 DPMAS スペクトルの逆重畳積分により得た(表2参照)。全ての Q3 および Q2 の位置が、メソポーラスシリカの内壁を修飾しているものと仮定すると、有機基によるメソ孔の表面被覆(SC)は、 SC = (T2 + T3)(Q2 + Q3 + T2 + T3) として見積ることができる。表2に示したように、SC値は、 UDP-MP の 13% から、 AL-MP の 33% まで変化している。 CPTES および ALTMS のような疎水性官能基を含んだ有機アルコキシシランと合成された MP's から測定された装填効率は、 AAPTMS および AEPTMS のような親水性前駆体を含有したものよりも高かった。この結果からは、疎水性官能基を有する有機アルコキシシランは、水/ミセル界面の周辺に良好に配向し、且つ、共縮合反応の間に、CTABミセルの疎水性領域に、その疎水性官能基をインターカレーションしている、ということが示唆される。
【0102】
【表2】

「形態制御」。有機官能化されたMP物質の形態およびメソポーラス構造を、 FE-SEM と粉末X線回折を用いて研究した。 FE-SEM 写真からは、種々のパーティクルの形態およびサイズが実証された。例えば、 AP-MP物質では、図12aのように、彎曲した六角形状のチューブ形態を示した。興味深いことに、 APTMS を、 AAPTMS および AEPTMS (図12b、12c)のような他の類似構造の有機アルコキシシランと置換すると、形状はそれぞれ、捻れた柱状と、ミクロメートルサイズのスフィアに変化した。 AEP-MP の滑らかなパーティクル表面とは対照的に、 UDP-MP (図12d)では、ラズベリーのような瘤を有する粗い表面を有するミクロンサイズのスフィア状パーティクルとなった。 ICP-MP物質(図12e)は、直径100〜500nmの最も小さいスフィア状パーティクルから成った。 CP-MP物質(図12f)および AL-MP物質(図12g)の合成においては、種々の長さと直径とを有する六角形状ロッド状パーティクルが観察された。 CP-MP のパーティクルサイズの平均(長さ 1μm および直径 500nm )は、 AL-MP のそれ(それぞれ 500nm および 50nm
)よりも大きい。概して、 ICPTES 、 CPTES 、および ALTMS のような疎水性有機アルコキシシラン前駆体から調製された物質のパーティクルサイズは、純粋 MCM-41 (図12h)よりも充分に小さく、一方、 AAPTMS 、 AEPTMS 、および UDPTMS のような、さらに疎水性の有機アルコキシシランを用いて合成した物質では、さらに大きなパーティクルが得られた。この共縮合反応は、塩基性水溶液(pH = 12.3)中で行ったものであり、それゆえにこれらの有機アルコキシシランのトリアルコキシシリル基は加水分解されて、親水性であるトリヒドロキシシリル基に転換していることに留意されたい。分子の他方の末端は、含まれる有機官能基の水溶性に依り、親水性もしくは疎水性のいずれかでもありえる。
【0103】
MP物質の表面積、孔容積、および孔サイズの分布を、窒素吸/脱着技術によって分析した。図13に示したように、全てのシリカは、特徴的な Type IV BET比等温線を示し、これは円柱状メソスケール孔の存在と矛盾していない。しかしながら、表3に概要を示しているように、BJH平均孔直径は、組み込まれた有機官能基の型に依って変化した。また、疎水性前駆体を利用した場合では、より小さな孔が得られた。これらの物質の粉末XRDスペクトル(図14)では、 33.7〜43.7 オングストロームの範囲の格子面間隔に相当する、強い (100) 反射ピークが特徴となっている。 AP-MP 、 AAP-MP 、 CP-MP 、 ICP-MP 、および AL-MP において、 (210) ピークは観察されなかったが、 格子面間隔の比が
【0104】

となるような (100) 、 (110) 、および (200) のピークを含んでいる、六角形状MCM-41シリカ( Gulik, A. et al., J. de Physique II, 5, 445-464 (1995) )に特徴的である高分解能の回折パターンが得られた。一方、 AEP-MP および UDP-MP (図14c、d)では、それぞれ、重なり合った (110) および (200) パターンに対応する 4.52°および 4.10° にブロードピークが見られたことから、配列が崩れていることが明らかになった。図15aおよび図15dに示した試料のTEM写真は、この観察結果と一致している。対照的に、 CPTES のような疎水性有機アルコキシシランで調製した物質のTEM写真では、図15bおよび図15cのように、六方対称に良好に配列して詰められたメソ孔が見られる。
【0105】
【表3】

「形状の構成の基となるメカニズム」。類似した有機前駆体であっても、大きく異なるパーティクル形態を示すことがあり、例えば、 AAP-MP では、チューブ状パーティクル(図12b)となっているが、 AEP-MP ではもっぱらスフィア状のパーティクル(図12c)となっている。ミセル/水界面における、有機アルコキシシランと、界面活性分子との間の、静電引力/斥力、水素結合、および疎水性相互作用といった、数種の異なる相互作用は、明らかに、観察されたパーティクル形態の劇的な変化に協働して作用している。これらの因子のうちのいくつかを取り除く ( deconvolute ) ために、得られたパーティクルの形状およびサイズに関する、選択された有機アルコキシシラン(AEPTMS)の濃度の作用効果を研究した。
【0106】
共縮合反応に導入される他の全ての化学物質の濃度を前述の記載通りの量に固定して、
AEPTMS/TEOS のモル比を 1.28〜12.8mol% の範囲で系統的に変えた。 AEP の結合につい
ては、 DPMAS および CPMAS 29Si NMR (図16a、16b)で定量した。前述したように、 DPMAS スペクトルからは、 Qnおよび Tn の官能化の相対濃度が定量された。しかしながら、 Tn 種の濃度が低いために、この一連の試料ではSC値を直接測定することはできなかった。その代わりに、われわれは、 CPMAS スペクトルを使用して、 Tn 強度の相対変化量と AEPTMS の濃度との相関を見積った。 1.28mol% の AEPTMS を有する試料についての図16cにプロットした結果からは、 AEPTMS/TEOS モル比の初期値が 1.28mol% から 12.8mol% へと増大するにつれて、 AEP の濃度がほぼ線形に増加したことが示された。得られた物質のパーティクル形態およびメソポーラス構造を、 FE-SEM およびTEMで分析した。図17の FE-SEM 写真では、パーティクル形態が小さなインゲンマメ状のロッドからスフィアまで一致して変化しているのが示され、 AEPTMS の中間濃度では、細長いロッド状のパーティクルと楕円球状のパーティクルが観察された。さらに、より高濃度の AEPTMS では、これらの物質の平均パーティクルサイズが顕著に増大することが観察された。 TEM写真(図18aおよび18b)は、低度の官能化(それぞれ、 1.28mol% および 6.43mol% )をされた AEP-MP物質の写真であって、パーティクルサイズが異なるにもかかわらず、メソ孔が MP's の長軸に沿って均一に配列されていることが明らかになった。これは、高度の官能化を施されたスフィア状 AEP-MP's で観察される、ランダム配列のメソ孔とは対照的である。
【0107】
或る実施形態においては、本発明は、 APTMS 、 AAPTMS 、 AEPTMS 、 UDPTMS 、 ICPTES、 CPTES 、 ALTMS 、 TEOS 、もしくは CTAB 、またはそれらの組み合わせから誘導されるメソポーラス珪酸塩を提供する。
【0108】
[実施例6: 複数種の有機官能基を有するメソポーラスシリカの、パーティクル形態および孔特性のチューニング]
実施例6では、塩基性触媒共縮合反応において、種々のモル比の有機アルコキシシラン前駆体を導入したメソポーラス有機/無機ハイブリッド物質の、多官能化 ( 多機能化; multifunctionalization ) と、形態の双方を制御することができるような合成方法を説明する。
【0109】
有機官能化メソポーラスシリカ物質の合成における近年の進歩( Lim et al., J. Am. Chem. Soc., 119, 4090 (1997); Stein et al., Adv. Mater., 12, 1403 (2000); Fowler
et al., Chem. Commun., 1769 (1997); Hall et al., Chem. Commun., 201 (1999); Fowler et al., Chem. Commun., 1825 (1998); Yang et al., J. Am. Chem. Soc., 124, 9694 (2002); Inagaki et al., Nature, 416, 304 (2002); Fan et al., Nature, 405, 56 (2000) )によって、これらの物質の有望な利用可能性が、選択的触媒( Stein et al., Adv. Mater., 12, 1403 (2000); Lin et al., J. Am. Chem. Soc., 124, 9040 (2002); Ying et al., Angew. Chem. Int. Ed., 38, 56 (1999); Sayari, Chem. Mater., 8, 1840 (1996); Moller and Bein, Chem. Mater., 10, 2950 (1998); He and Antonelli, Angew. Chem., Int. Ed., 41, 214 (2002); Kageyama et al., Science, 285, 2113 (1999); Davis, Nature, 417, 813 (2002) )、吸着( Dai et al., Angew. Chem., Int. Ed., 38, 1235 (1999); Brown et al., Chem. Commun., 69 (1999); Feng et al., Science, 276, 923 (1997) )、ならびにセンサー( Lin et al., J. Am. Chem. Soc., 123, 11510 (2001); Wirnsberger et al., Chem. Commun., 119 (2001); Descalzo et al., Adv. Mater., 14, 966 (2002) )といった用途のための多機能ミクロデバイスを構築する構成ブロックに対して有ることが示されてきた。このような用途におけるさらなる進展は、複数種の有機基による官能化の範囲を調節する能力と、得られる「有機/無機」ハイブリッド物質の大量搬送特性を管理するためにパーティクル形態を制御する能力とにかかっている。「無機」メソポーラスシリカの形態制御については、十年前の MCMs 族に関する最初の報告以来、集中的に研究されてきた。所望のパーティクル形態は、pH制御( Lin and Mou, Acc.
Chem. Res., 35, 927 (2002); Huo et al., Adv. Mater., 9, 974 (1997); Ozin, Chem.
Commun., 419 (2000) )、塩基触媒の利用( Cai et al., Chem. Mater., 13, 258 (2001) )、ならびに助溶媒の使用( Anderson et al., Chm. Mater., 10, 1490 (1998); Zhao et al., Chem. Mater., 12, 275 (2000); Etienne et al., New J. Chem., 26, 384 (2002); Schumacher et al., Adv. Mater., 11, 1194 (1999) )を介して得られ、例えば、改良Stoeber法( Etienne et al., New J. Chem., 26, 384 (2002); Schumacher et al.,
Adv. Mater., 11,1194 (1999) )で行われた。
【0110】
実施例6では、種々の有機アルコキシシラン前駆体を、助溶媒としてではなく共縮合反応中に導入して、形態制御に用いるという、本発明に係る新規な合成プロセスを記載する。この方法の付加的な利点は、「多」官能基をメソ孔に同時に固定する(多官能化)ということである。これらの基の役割と量とは、ゲートキーピング ( gatekeeping ) のような種々の用途に対して、独立におよび/もしくは協調して仕上げることができる。
【0111】
有機アルコキシシラン前駆体として 3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピル(AEP)基および 3-シアノプロピル(CP)基を導入して官能化した二つのメソポーラスシリカの FE-SEM 画像を、それぞれ図19aおよび図19bに示す。AEP基もしくはCP基による単官能化では、パーティクル形状およびサイズが異なり、即ち、平均パーティクル直径=3μm のスフィアと、パーティクルの平均サイズが L x W = 1 x 0.2μm のロッドが生成した。これらの物質は、低濃度の臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)界面活性剤の存在下において、テトラエトキシシラン(TEOS)と、 AEP-トリメトキシシラン(AEPTMS)もしくは CP-トリエトキシシラン(CPTES)との、水酸化ナトリウムを触媒とする縮合反応によって調製された。
【0112】
二官能性物質の系統についても、 AEPTMS と CPTES とのモル比を、 100% AEPTMS から100% CPTES まで系統的に変化させて合成した。有機アルコキシシランの総量(AEPTMS+CPTES)を、全ての試料において TEOS に対して 12.8mol% の量に固定した。ここでは、単官能化ミクロパーティクルのことを AEP-MP ( CP-MP )などと称し、また、二官能化物質のことを、 AEP/CP-MP のように記述する。
【0113】
図19c、19d、および19eに示したように、 AEPTMS/CPTES の種々のモル比で合成された二官能化 AEP/CP-MP物質においては、スフィア状パーティクルだけが見られる。ミクロンサイズの AEP-MP とは対照的に、二官能化 AEP/CP-MP スフィアの平均粒径は、 AEPTMS/CPTES の相対比を 5/5 から 1/9 まで変化させるにつれて減少した。比率 1/9 の場合( AEPTMS 1.28mol% および CPTES 11.52mol% 、図19e)においても、ロッド状のパーティクルは見られず、これが CP-MP 試料( CPTES 12.8mol% 、図19b)の結果とは大きく異なるということは興味深い。共縮合反応において、 AEPTMS 前駆体の存在は、生成する二官能性物質の「パーティクル形状」を左右する決定力を有するということになる。
【0114】
「孔の特性および構造」について、有機アルコキシシランの影響を研究するために、二官能化試料の粉末XRD回折パターンを測定した。図20aに示したように、得られたパターンは強い d100 ピークと、 d110および d200 の回折の組み合わせに起因するブロードピークとを呈しており、これは、無秩序な配列の虫喰穴のような孔構造を示していると考えるのが最も適切であろう。観察されたこの回折パターンは、 AEP-MP物質のそれと極めて類似している。また、TEM写真からは、 AEP-MP と AEP/CP-MP の双方において、無秩序な配列の虫喰穴のような孔構造が明瞭に見てとれた。興味深いことに、 CP-MP ロッドの XRD (図20a)測定およびTEM測定からは、典型的な MCM-41型である、ロッド状パーティクルの長軸に沿って平行に並んでいる六方対称に詰められたメソ孔構造が示された。これらの観察結果からは、試料の形態は、共縮合する間に AEPTMS が存在するかどうかを鋭敏に反映しているものである、ということを裏付けるさらなる証拠が得られた。
【0115】
13C 固体NMRを、 (i) メソ孔内の有機官能基の存在の証拠を分光法で得るため、 (ii) これらの化学構造を確認するため、および (iii) 二官能化されている試料の「相対濃度」を測定するため、に使用した。スペクトルは、 Varian/Chemagnetics Infinity spectrometer で 9.4T に設定し、 1H - 13C 交叉分極およびマジック角スピン ( cross polarization with magic angle spinning; CPMAS ) を用いた( Pines et al., J. Chem. Phys., 59, 569 (1973) )。図20bに示したスペクトルでは、意図した通りにメソ孔が実際に官能化されていることが示された。
【0116】
交叉分極している間の、炭素の磁化の「蓄積」 ( "build-up" ) を測定して、双方の官能基の分子運動に関する詳細を明らかにし、また、全試料についてこれらの基の相対濃度の測定が可能となった。 AEP-MP では、全ての CH2 の炭素原子が、時定数 τCH で 60μs のオーダーで分極され、これは、「剛体」分子におけるこれらの官能基に対しての典型的な値である。同様の時定数は、 CP-MP のC1炭素で見られる。しかしながら、この試料における 19ppm での共鳴の発生には、約100μs および約700μs の二つの時定数が関与している。この結果からは、 CP-MP の C2-H2基および C3-H2基が、「可動性」 ( mobility ) の増大を受けて、 1H-13C 双極子結合を弱め、交叉分極プロセスを阻害する、ということが示される。炭素原子C4で見られた τCH 値である 5ms は、 CP-MP の最も可動性の高いニトリル末端と一致した。
【0117】
測定結果からは、 AEP/CP-MP 試料においては、 AEP-MP および CP-MP の炭素原子に対応するものに関しては、交叉分極動力学は実験誤差の範囲内で同様であることが示された。これによって、図21に示したように、 AEP-MP と CP-MP との既知のモル比の物理的混合物を、二官能化試料のスペクトルの「定量分析」のための強度基準として使用することが可能となる。 AEP の 48ppm 近傍(炭素C4〜C7)と CP の 120ppm (炭素C4)との二つの固有な共鳴は、双方の官能化の最良の指標となる。
【0118】
有機官能基の「化学的アクセシビリティ」 ( chemical accessibility ) を研究するために、典型的な試料の Cu2+ 吸着容量を試験した( Burleigh et al., Chem. Mater., 13, 4760 (2001) )。 AEP基のジエチレントリアミン基におけるキレート効果によって、多量の AEP を有する物質には、充分に大きい Cu2+ 吸着容量があると予期される。事実、われわれの得た結果からは、 AEP-MP物質および CP-MP物質に、それぞれ、 0.284μmol/m2 および 0.017μmol/m2 の吸着能が示された(図22)。これに対応する、二官能性の 5/5 および 1/9 の比の、 AEP/CP-MP シリカでは、 0.073μmol/m2 および 0.028μmol/m2であった。しかしながら、 1/9 から 5/5 までの比を変化させた AEP/CP-MP試料においては、 Cu2+ 吸着容量は 2.6 のみしか係数が増加しなかったが、その一方、固体NMR測定においては、これらの物質の AEP/CP 相対比の八倍もの増大となった。双方の有機基の総搭載量を 12.8mol% に固定したとすると、これらの結果からは、有機官能基の化学的アクセシビリティは、二官能性シリカの AEP基の量に対して線形に増加しないということが示される。本来は疎水性である CP の官能性は、 AEP基に因る吸着容量を減少させるように能動的に機能する可能性が考えられる。
【0119】
[実施例7: ポリアミドアミンデンドリマー-キャップドメソポーラス珪酸塩を介した遺伝子トランスフェクション]
図23に示したように、第二世代(G2)の PAMAMs が、 MCM-41型メソポーラスシリカナノスフィア(MSN)物質に共有結合しているような、新規な遺伝子トランスフェクション系を提供する。 G2-PAMAM-キャップドMSN物質(G2-MSN)を、増強された緑色蛍光蛋白質をコードするプラスミドDNA(pEGFP-C1)と複合化するために用いた。
【0120】
神経膠細胞(アストロサイト)、ヒト子宮頚癌細胞(HeLa細胞)、およびモンゴルキヌ
ゲネズミ卵巣細胞(CHO細胞)といった、種々の細胞型を有する G2-MSN系の遺伝子トランスフェクション効率、取り込みメカニズム、および生体適合性について研究した。
【0121】
文献における最近の報告では、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーが、非ウイルス性遺伝子トランスフェクション薬として役立つことが示されている( Dennig, J.; Duncan, E. Rev. Mol. Biotechnol. 2002, 90, 339-347 およびその参照文献; Tomalia, D. A. Drug Discovery Today 2001, 6, 427-436 )。しかしながら、遺伝子トランスフェクションに効果的であることを示したのは、高世代(G > 5)の PAMAMs のみである。これらの high G PAMAMs の合成および精製に要求される手順は通常は時間がかかるものであって、且つ低収率である。対照的に、 low G PAMAMs (G < 3)は、典型的には無毒性であり、また容易に合成することができる。これらの利点にもかかわらず、その小さい分子サイズと、限られた表面電荷とにより、 low G PAMAMs はエントロピーペナルティの問題から溶液中のプラスミドDNAとの効率的な複合化を起こしにくい。
【0122】
図1に示したような、 G2-PAMAM-キャップドMSN物質(G2-MSN)を、緑色蛍光蛋白質をコードするプラスミドDNA(pEGFP-C1)と複合化するために使用した( Subramanian, S.;
Srienc, F., J. Biotechnol. 1996, 49, 137-151 )。遺伝子トランスフェクション効率と同様に、神経膠細胞(アストロサイト)、ヒト子宮頚癌細胞(HeLa細胞)、およびモンゴルキヌゲネズミ卵巣細胞(CHO細胞)といった、種々の細胞型を有する G2-MSN系の、取り込みメカニズムおよび生体適合性について研究した。
【0123】
他の最近報告されたシリカナノパーティクルに基づく遺伝子転写系( Luo, D.; Saltzman, W. M. Nat. Biotechnol. 2000, 18, 893-895; Kneuer, C.; Sameti, M.; Bakowsky, U.; Schiestel, T.; Schirra, H.; Schmidt, H.; Lehr, C.-M., Bioconjugate Chem., 2000, ll, 926-932; He, X. -X.; Wang, K.; Tan, W.; Liu, B.; Lin, X.; He, C.; Li, D.; Huang, S.; Li, J., J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 7168-7169; Luo, D.; Han, E.; Belcheva, N.; Saltzman, W. M., J. Controlled Release, 2004, 95, 333-341 )とは対照的に、本発明に係るMSN物質のメソポーラス構造は、医薬、核酸、および蛍光染料といった膜不透過性分子を、MSNチャネル内部にカプセル化することができる( Lai, C.- Y.;
Trewyn, B. G.; Jeftinija, D. M.; Jeftinija, K.; Xu, S.; Jeftinija, S.; Lin, V. S.-Y., J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 4451-4459; Mal, N. K.; Fujiwara, M.; Tanaka, Y., Nature (London), 2003, 421, 350-353 )。この系は、細胞内薬剤搬送およびイメージングの用途のための、普遍的な膜透過性担体としての可能性を提供する。
【0124】
〈実験〉
〈1. G2 PAMAM MSN の調製〉
G2-MSN遺伝子転写系を構築するために、平均パーティクルサイズが 250nm (平均粒径=2.7nm)の MSN物質を合成した。 MCM-41型メソポーラスシリカナノスフィア(MSN)物質を、 Lai, et al. の方法( Lai, C.-Y.; Trewyn, B. G.; Jeftinija, D. M.; Jeftinija, K.; Xu, S.; Jeftinija, S.; Lin, V. S.-Y., J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 4451-4459 )で調製した。 3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン (0.25mL, 1mmol) を、トルエン 80mL で二十時間還流しながら、 MSN (1g) の孔表面上にグラフトして、イソシアナトプロピル基で官能化された MSN(ICP-MSN)物質を得た。
【0125】
〈1a. ICP-MSN の合成〉
臭化N-セチルトリメチルアンモニウム (CTAB, 1.00g, 2.74mmol) を nanopure水 480mL
に溶解した。水酸化ナトリウム水溶液 (2.00M, 3.50mL) を CTAB溶液に導入して、混合物の温度を 353K に調節した。この界面活性剤溶液を激しく攪拌しながら、テトラエトキシシラン (TEOS, 5.00mL, 22.4mmol) を滴下して加えた。混合物を二時間反応させて、白色沈澱を得た。この粗生成物を、濾過して脱イオン水とメタノールとで洗い、空気中で乾
燥させて、合成直後のMSNを得た。界面活性鋳型(CTAB)を除去するために、合成直後のMSN 1.50g を、 HCl (37.4%) 9.00mL とメタノール 160.00mL メタノール溶液で二十四時間還流した。得られた物質を濾過して、さらに水とメタノールとで洗浄した。界面活性剤を含まないMSN物質を、高真空下に置き、メソ孔の残存溶媒を除去した。 MSN (1.00g) を、 3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン 0.25mL (1.00mmol) を含んだ無水トルエン 80.00mL で二十時間還流して、 3-イソシアナトプロピル基で官能化されたMSN(ICP-MSN)物質を得た。
【0126】
〈1b. Texas Red を含まない G2-MSN の合成〉
精製ICP-MSN (0.15g) を、無水エタノール (3.00mL) へと加えた。その後、第二世代(G2)ポリアミドアミンデンドリマー (PAMAM, 2.00mL, 0.11mmol) を、ICP-MSNエタノール溶液に加えた。 G2-PAMAM のアミノ基を、 MSN の表面に存在する ICP官能基と室温で二十時間反応させて、 G2-PAMAM-キャップドMSN物質(G2-MSN)を得た。得られたG2-MSN物質を濾過して、エタノール、メタノール、およびアセトンで徹底的に洗い、高真空下で乾燥した。
【0127】
〈1c. Texas Red を装填した G2-MSN の合成〉
MSNs と細胞との相互作用を可視化するために、蛍光染料( Texas RedTM )を装填した
G2-MSN物質を調製した。 ICP-MSN (0.15g) を、 Texas RedTM (5mM) の無水エタノール溶液に加えて、二十時間攪拌した。アミン末端化G2-PAMAMs を、 ICP-MSN のポーラスチャネルの内側にカプセル化された Texas Red分子のキャップとして用いた。 G2-PAMAM のエタノール溶液 (0.11mmol) を、 MSN/Texas Red溶液に二十時間かけて加えて、 PAMAM のアミン構造と MSN の ICP基との間に尿素連結基を形成した(図23内に挿入)。 Texas Red をカプセル化した G2-PAMAM-キャップドMSNの構造を、XRD、SEM、TEM、N2収着等温線、および 13C CP-MAS NMR分光法で精査した(図29〜32参照)。
【0128】
Texas Red を装填した G2-MSN の典型的な合成法を以下に記載する。精製ICP-MSN (0.15g) を、 Texas RedTM (5.00mM, Molecular Probe) の無水エタノール溶液 (3.00mL) に加えた。混合液を室温で二十時間攪拌して、 ICP-MSN に Texas Red を装填した。その後、第二世代(G2)ポリアミドアミンデンドリマー (PAMAM, 2.00mL, 0.11mmol) を、ICP-MSN/Texas Red溶液に加えた。 G2-PAMAM のアミノ基を、 MSN の表面に存在する ICP官能基と室温で二十時間反応させて、 Texas Red を装填した G2-PAMAM-キャップドMSN物質(Texas Red-loaded G2-MSN)を得た。得られたG2-MSN物質を濾過して、エタノール、メタノール、およびアセトンで徹底的に洗い、高真空下で乾燥した。 G2-MSN の外表面に物理吸着した Texas Red分子を完全に除去するために、エタノール中で Soxhlet抽出を二十時間行った。得られた固体を濾過して空気中で乾燥させた。
【0129】
〈2. ICP-MSN および G2-MSN の特性評価〉
〈2.1. 粉末X線回折〉
精製ICP-MSN 、 G2-MSN 、および Texas Red-loaded G2-MSN の各物質の粉末X線回折パターンを図29に示した。 ICP-MSN物質と G2-MSN物質の双方は、六方対称なMCM-41型メソポーラスシリカの典型的な回折パターンを呈した。 Texas Red-loaded G2-MSN の回折パターンに見られる変化は、おそらく孔が充填された効果によって起きたものである。
【0130】
表4には、 ICP-MSN 、 G2-MSN 、および Texas Red-loaded G2-MSN の各試料のX線回折パターンのデータをまとめている。
【0131】
【表4】

〈2.2. 窒素吸/脱着等温線〉
MSN 、 ICP-MSN 、 G2-MSN 、および Texas Red-loaded G2-MSN の各物質について、BET窒素吸/脱着等温線(a)、およびBJH孔サイズ分布(b)を図30に示した。 ICP-MSN物質および G2-MSN物質のBET比等温線は、ヒステリシスをまったく示さず、これは、表面官能化された MSN の外表面に、キセロゲルが形成されていないということを示唆している。
【0132】
表5には、 MSN 、 ICP-MSN 、 G2-MSN 、および Texas Red-loaded G2-MSN の各試料における、BETおよびBJHのデータをまとめた。
【0133】
【表5】

〈2.3. 固体 13C CP-MAS NMR〉
図31には、 ICP-MSN物質(上)および G2-MSN物質(下)の、 13C 固体 CP-MAS NMRスペクトルを示している。 ICP-MSN の加水分解されたイソシアノプロピル基から生じたプロピルカルバミン酸不純物も、 ICP-MSN のスペクトルにおいて観察された。 Bruker 4mm rotor MAS probe を備えた Bruker MSL300 spectrometer を用いて、固体 13C CP-MAS
NMR スペクトルを 75.47MHz で得た。試料のマジック角スピンレート ( magic-angle sample spinning rate ) を 10kHz に保ち、 13C の芳香族炭素の大きな異方性化学シフ
トに因るスピンバンド ( spin band ) を最小化した。NMRスペクトルは、交叉分極 3ms
(13C) 、パルス反復時間 15s (13C) で、のパルス反復時間で、5,000回〜20,000回取得した。報告した全ての化学シフトは、内部標準の液体 Me4Si(TMS)を基準にしている。
【0134】
〈2.4. G2-MSN の走査型・透過型電子顕微鏡(SEM、TEM)写真〉
図32は、 G2-MSNの (a) SEM写真および (b) TEM写真(300kV)を示す。SEM画像(a)にはシリカパーティクルのスフィア状の形が示されている。写真(b)に見える平行な縞によって、 G2-MSN の MCM-41型メソポーラスチャネル構造が可視化されている。
【0135】
〈3. G2-MSN と pEGFP-C1 DNA との複合化〉
生理pHにおける種々の重量比の pEGFP-C1 DNA と G2-MSN との複合化を研究するために、 G2-MSNs の存在下で、 pEGFP-C1 のアガロースゲル電気泳動 (0.8%, 45mM TBEバッファ) を、 155V で3.5時間行った。図24(a)は、 G2-MSN が無い場合(レーン1)と、
G2-MSN を増加させていった場合(レーン2〜8)とにおける、 pEGFP-C1 の電気泳動移動量を示す。この結果からは、試料ウエル周辺に pEGFP-C1 が保持されている(レーン6〜8)ことを踏まえて、 G2-MSN がプラスミドDNAと結合して、重量比が 1:5 よりも大きい安定な DNA-MSN複合体を形成することができるということが示される。 pEGFP-C1 DNA の酵素開裂に対して、 G2-MSN が保護作用効果を有するかを試験するために、制限エンドヌクレアーゼ (BamHI, 20units) を、DNAに導入し、また同様に DNA 1μg を含む安定な DNA-MSN複合体にも導入した。この試料を37℃で十二時間温置した後、70℃で十五分間、酵素の失活を行った。図24(b)に示したように、遊離pEGFP-C1(レーン2)が BamH I に消化されて開裂された一方、 MSNs と複合化された DNAs は同条件下で酵素による開裂を受けなかった。興味深いことに、 PAMAMキャップを有さない MSN の存在下では、 pEGFP-C1 DNA は BamH I に消化された(図24(b)、レーン8)。この結果からは、酵素消化に対して DNA-MSN複合体を安定化させるには、 PAMAM-キャップドG2-MSN 上の豊富な陽電荷が不可欠である、ということが示唆される。
【0136】
〈4. DNAで被覆した G2-MSNs 遺伝子トランスフェクション実験〉
系のトランスフェクション効率を研究するために、以下の4.1項に記載されているように、 Texas Red を有しない G2-MSNs (10μg) を、 1μg の pEGFP-C1 DNA と混合した。
【0137】
MSN/DNA懸濁液 (60μL/well) を、さらに二十四ウエルプレート (増殖培地 0.6 mL 中に、6 x 104cells per well) に加えた後、37℃で四時間培養した。その後、細胞をPBS緩衝液で洗い、 DMEM + 10% 仔ウシ血清(CS)培地と抗生物質とを与えて二日間培養した。トランスフェクションされた細胞をトリプシン処理して PBS 0.5ml で再懸濁し、直接フローサイトメトリー分析で GFP の発現を算出した( Subramanian, S.; Srienc, F., J. Biotechnol., 1996, 49, 137-151 )。トランスフェクションしていない細胞の培養物と、 "mock"トランスフェクションされた細胞の培養物とを利用して対照実験を行い、 GFP の励起に 488nm レーザーを用いて EPICS-ALTRA flow cytometer で測定した。図25に示したように、 GFP の発現が明瞭に観察された。
【0138】
〈4.1. 物質および方法〉
ヒト子宮頚癌(HeLa)細胞株、およびモンゴルキヌゲネズミ卵巣(CHO)細胞株を、 American Tissue Culture Collection (ATCC)から入手した。HeLa細胞およびCHO細胞を DMEM( Dulbbecco's modified Eagle's medium )を用いてT75フラスコ内に置き、 10% CS血清、 2mM L-グルタミン、 100U/mL ペニシリン、 100μg/μL ストレプトマイシン、および 1μg/μL ゲンタマイシン ( gentamycin ) を与えた。全ての細胞は、二日〜三日毎に継代した。 pEGFP-C1 (Clontech, Palo Alto, CA) から発現した赤方偏移変異体を、レポーター蛋白として用いた。全てのプラスミドは、 E. coli strain DH5α 内で増幅し
て、製造者のプロトコル (Qiagen, USA) にしたがって精製した。単離したDNAを、 Tris-EDTA(pH8.0)中に再懸濁させて、濃度 1μg/μL とした。 HeLa細胞を、実験の二十四時間前に、二十四ウエルプレート (増殖培地 0.6 mL 中に、6 x 104 cells per well) と、六ウエルプレート(増殖培地 1.5 mL 中に、2 x 105 cells per well) とに播種した。前者のプレート(二十四ウエル)をトランスフェクション効率の測定に使用した。六ウエルプレートはイメージングの研究に使用した。
【0139】
典型的なトランスフェクション実験においては、 GFP をコードするプラスミドDNA 1μg を、 30μL の HEPES緩衝液 (10mM HEPES, pH7.4) 中にナノスフィア物質を分散して得られた G2-MSN懸濁液 10μg に加えた。混合物を4℃で二時間培養した。 100mM CaCl2(aq) 30μL を、4℃で二時間かけてこの混合物に加えた( Haberland, A.; Knaus, T.; Zaitsev, S. V.; Stahn, R.; Mistry, A. R.; Coutelle, C.; Haller, H.; Bottger, M., Biochim. Biophys. Acta, 1999, 1445, 21-30; Lam, A. M. I., Cullis, P. R., Biochim. Biophys. Acta, 2000, 1463, 279-290 )。 MSN/DNA懸濁液 (60μL/well) を二十四ウエルプレートの細胞にさらに加えて、37℃で四時間培養した後、トランスフェクション混合物(残留した MSN/DNA複合物)を除去した。その後、トランスフェクションされた細胞を PBS緩衝液で洗い、遺伝子発現分析もしくはイメージング研究のために、 DMEM + 10% 仔ウシ血清(CS)培地と抗生物質とを与えて、二日間培養した。
【0140】
われわれの G2-MSN系のトランスフェクション効率を、他の市販トランスフェクション薬と比較するために、 PolyFect(R) 、 SuperFect(R) (Qiagen, Valencia, California) 、および Metafectene(R) (Biontex, Germany) の異なる三種の試薬を用いて、同一実験条件下で、前述した細胞型をトランスフェクションした。まず、 8μL の PolyFect(R) (2mg/mL) と、 5μL の SuperFect(R) (3 mg/mL) の保存用溶液を、それぞれ、DNA 1μg を含有する血清不含の培地(DMEM) 30μL に加えた。この溶液を室温で十五分間培養して、DNA分子と、トランスフェクション薬との安定した複合体を形成させた。その後、予め加温した 350 μl の DMEM + 10% CS培地と抗生物質とを含んだ、細胞密度 6 x 104lcells/wellの二十四ウエルプレート中の HeLa細胞培養物へ、この複合体を加えた。四時間の培養の後、トランスフェクション培地を破棄して、新鮮な増殖培地( DMEM + 10% CS培地、および抗生物質)に取り替えた。トランスフェクションから四十八時間後に、フローサイトメトリーによって、この細胞の増強された緑色蛍光蛋白質(EGFP)の発現を計数した。
【0141】
Metafectene(R) についてのプロトコルには、 DNA 1μg を含有する血清不含培地 30μL に、 Metafectene(R) の保存溶液 5μL ( Biontex, Germany から 1mL の保存溶液を受領してすぐに使用した)を加えることを含めた。この溶液を室温で十五分間培養して、細胞に加える前に複合体を形成した。予め加温した 350 μl の血清不含DMEMを入れた前述の HeLa細胞ウエルに、この複合体を加えた。四時間の培養の後、トランスフェクション培地を破棄して、新鮮な増殖培地( DMEM + 10% CS培地、および抗生物質)に取り替えた。トランスフェクションから四十八時間後に、フローサイトメトリーによって、この細胞の増強された緑色蛍光蛋白質(EGFP)の発現を計数した。図25に示したように、明瞭な GFP の発現が見られた。
【0142】
〈4.2. トランスフェクションされた細胞のフローサイトメトリー分析〉
G2-MSN のトランスフェクション効率を、他の市販トランスフェクション薬と比較するために、同一実験条件下で PolyFect 、 SuperFect 、および Metafectene を用いて HeLa細胞で pEGFP-C1 トランスフェクション実験を行った。培養細胞の収集後、直ちにフローサイトメトリー測定を行った。全ての細胞をトリプシン処理して、 FACS分析の前に PBS 0.5mL に再懸濁した。トランスフェクションしていない細胞(HeLa細胞のみ)と、 "mock"トランスフェクションされた細胞( pEGFP-C1 プラスミドを有さない MSNs と培養し
た細胞)とを用いた陽性対照実験および陰性対照実験を行い、 GFP の励起のために 488nm レーザーを用いて EPICS-ALTRA flow cytometer (Beckman Coulter, Miami, FL) で測定した。 PMT2 に 525nm バンドパスフィルターを接続し、 GFP の蛍光を検出した。
【0143】
細胞群の前方散乱特性および側面散乱特性に基づいて、電子ゲートを細胞の周囲にセットし、一試料あたりに少なくとも 10,000 回のゲートを通過した事象 ( event ) を採取して、リストモードファイル ( list mode files ) に蓄積した。 FlowJo software (Tree Star, Ashland, OR) を用いてデータ分析を行った。散乱してゲートを通過した事象を、GFP 蛍光の対数の単パラメータヒストグラムとしてここに示した。全ての実験は四重に行った。非トランスフェクション細胞はバックグラウンドキャリブレーションに用いた。 HeLa細胞における、種々のトランスフェクション薬の系の平均トランスフェクション効率を、表6にまとめた。
【0144】
【表6】

図33は、 G2-MSN を有する HeLa細胞における、 pEGFT のトランスフェクションのフローサイトメトリー分析結果をさらに示すものである。フローサイトメトリーのヒストグラムは、緑色(FL1)チャネルにおける事象の分布を示している。 (a) トランスフェクションされていない対照実験: HeLa細胞(破線)、および、 pEGFP-C1 DNA で処置されたHeLa細胞(実線)。 (b) "Mock"トランスフェクション対照実験: HeLa細胞(破線)、および、DNAを有しない MSNs で処置されたHeLa細胞(実線)。 (c) G2-MSN トランスフェクションの結果: HeLa細胞(破線)、および、 pEGFP-C1 DNA で被覆された G2-MSNs で処置されたHeLa細胞。図34には、種々の市販のトランスフェクション薬によってトランスフェクションされた HeLa細胞のフローサイトメトリー分析結果(d)、(e)、および(f)を示している。
【0145】
トランスフェクションから二十四時間後の細胞のフローサイトメトリー分析では、 35±5%(G2-MSN)、 15±2%(PolyFect)、 10±2%(SuperFect)、および 16±2%(Metafectene)の効率を示した。図33および図34を参照のこと。この結果からは、 G2-MSN は種々の細胞型に対し、競合的なトランスフェクション効率を与えることができる、ということが示唆される。
【0146】
〈4.3. 哺乳類細胞膜透過性〉
哺乳類細胞膜透過性を試験するために、 Texas Red-loaded G2-MSNs を、 GFP でトランスフェクションしたラットアストロサイトへと導入した。
【0147】
〈4.3.1. トランスフェクションされた細胞の、共焦点顕微鏡によるイメージング〉
HeLa細胞を六ウエル培養プレートのカバーガラス上で生長させた。全ての試料を PBS緩衝液で三度洗浄し、 PBS (3.7%) に溶かしたホルムアルデヒドで固定した。この試料をアルゴンレーザー (λex = 488nm) で励起して、画像をロングパスフィルター (λ = 515nm
) にかけた。 Prairie Technologies (Middleton, WI) に接続された inverted Nikon Eclipse microscope で画像をキャプチャーした。 Scanning Laser Confocal Microscope (走査型レーザー共焦顕微鏡)は、 Prairie Technologies software で制御した。 Metamorph software (Universal Imaging, West Chester, PA) を用いて画像を分析した。
【0148】
図35は、 (a) HeLa細胞培地の位相コントラスト写真、および (b) 細胞層の断面図を伴った、同一のHeLa細胞培地の蛍光共焦点顕微鏡写真である。直交する画像は、単一の層が含む細胞を示しており、また、細胞の多重層は観察されなかった。
【0149】
〈4.3.2. G2-MSNトランスフェクション細胞の透過電子顕微鏡写真〉
G2-MSN のエンドサイトーシスを研究するために、カバーガラス上の細胞を、 2% グルタルアルデヒドおよび 2% パラホルムアルデヒドを PBS緩衝液 (pH7.2) に溶かしたものを用いて、4℃で四十八時間置き、選択した時点で固定した。その後、試料をPBSで洗い、続いて pH7.2 の 0.1M カコジル酸塩緩衝液 で洗った後、 0.1M カコジル酸塩緩衝液に溶かした 1% 四酸化オスミウムを用いて、室温で一時間置いて後固定した。この試料を重水ですばやく洗い、試薬級エタノールで脱水して、超純粋アセトンを用いて精製し、浸潤して、 EPONエポキシ樹脂 (EmBed 812, Electron Microscopy Sciences, Ft. Washington, PA) に包埋した。カバーガラスは天地を逆転(細胞の側が下)して、直立させた beem capsules の上に包埋した後、60℃で二十四時間、さらに70℃で二十四時間かけて重合した。液体窒素を用いて、樹脂からカバーガラスを取り除いた。 Reichert Ultracut S ultramicrotome (Leica, Deerfield, IL) を用いて薄切片を作成し、銅グリッド上に集めて、 4% 酢酸ウラニルの 50% メタノール溶液で染色した後、佐藤氏鉛液で染色した。 JEOL 1200 EXII scanning and transmission electron microscope (Japan Electron Optics Laboratory, Peabody, MA.) を 80kV で用い、Megaview III digital camera と、 SIS Pro software (Soft Imaging System, Corp., Lakewood, CO) を併用して画像を取得した。
【0150】
TEM写真には、モンゴルキヌゲネズミ卵巣(CHO)細胞(図26(a))、ヒト子宮頚癌(HeLa)細胞(図26b)、および神経膠細胞(アストロサイト)(図27)を示した。ミトコンドリアおよびゴルジ体などの細胞小器官が、 MSNs の近傍に観察された(図26(b)および図27)。チャネル間の測定距離(図28)(孔壁を含む)は、 N2収着等温線による 3〜4nm のBJH平均孔直径と一致している。
【0151】
図25(b)に示した共焦点蛍光顕微鏡写真には、 G2-MSNs (赤い蛍光の点)がエンドサイトーシスして細胞膜に貫入し、緑色蛍光を発する神経膠細胞の原形質内に入っていることが明瞭に示されている。トランスフェクション後の細胞の透過型電子顕微鏡写真でも、三種の細胞型の全てにおいて多数の G2-MSNs がエンドサイトーシスしていることの直接の証拠が得られた(図26〜28)。図26および図27に示されているように、ミトコンドリアおよびゴルジ体のような多数の細胞小器官が、 MSNs の近傍で見られることには注目すべきである。これらの小器官が、細胞死によって速やかに消失すると仮定するならば、この結果は MSNs が生体外で細胞毒性を呈さない、ということを強く示唆することになる。
【0152】
〈4.4. 細胞生長の研究〉
G2-MSN の生体適合性をさらに研究するために、 G2-MSNs (0.1mg/mL) を含む HeLa培養物と、 G2-MSNs を含まない 培養物との細胞生長プロファイルを比較した。 G2-MSN の生体外生体適合性、および生長研究を、 HeLa細胞および CHO細胞で行った。双方の細胞型に対して二つの系統の実験を設計し、即ち、一方の系統では天然細胞(MSNs を含まない)の生長を研究し、他方では MSNs の適用後をモニターする研究とした。全ての実験は三重に行った。細胞生長に充分な容積と培地とを確保するために、細胞は T-25フラスコ内に播種した。 MSNs 無しの実験においては、それぞれの細胞型について、同量の細胞を18
個のフラスコに入れた。細胞接着に二十四時間かけた後、六日間に亘って細胞を毎日分析した(一日あたり3個のフラスコ)。細胞をトリプシン処理し、 Guava ViaCount(R) assay (Guava Technologies, Inc, USA) を用いて計数した。 G2-MSNs が存在する場合の実験においては、二十四時間前に播種した細胞に、 DMEM + 10% CS(仔ウシ血清)および抗生物質に濃度 0.1mg/mL で入れた MSNs を与えて、四時間培養した。四時間の培養後、細胞をPBS緩衝液で二度洗浄し、さらに六日間培養した。その後、前述した細胞計数手順を行った。全ての実験を三重に行った(一日あたり3個のフラスコ)。六日間の生長期間中に、位相コントラスト顕微鏡で、細胞を定期的に検査した。細胞には一日おきに新鮮な培地を与え、またpHの揺らぎ(フェノールレッドをpH指示薬として用いた)があったときにも与えた。 MSNs を有さない/有する HeLa細胞の細胞密度が倍になる時間 (増倍時間; doubling time ) を、片対数プロットから算出し、それぞれ、二十時間、および二十四時間となった。 MSNs を有さない/有する CHO細胞の増倍時間は、それぞれ、二十三時間、および四十時間と算出された。(HeLa細胞の場合には R2 ≧ 97% であり、一方 CHO細胞では R2 ≧ 90% である)。
【0153】
表7には、 G2-MSN の存在する場合(灰色の棒グラフ)と、G2-MSN が存在しない場合(黒色の棒グラフ)とにおける、 (a) HeLa細胞、および (b) CHO細胞の細胞生長を示している。
【0154】
【表7】

表7に示したように、 G2-MSN を有する培養物と、 G2-MSN を有さない培養物とにおける細胞生長は、非常に近似しており、これは、細胞数の増加が G2-MSN の存在によって阻害されない、ということを示唆している。したがって、 G2-MSN物質は、多くの医療用途のための、新規な膜透過性搬送系として活躍することができる。
【0155】
[実施例8]
以下の記述は、治療もしくは予防のためにヒトに用いる、本発明に係る装填済メソポーラスシリカパーティクル(「パーティクル X」)を含む、薬学的な投与形態を示す。

(i) 錠剤 1 mg/錠
「パーティクル X」 100.0
乳糖 77.5
ポビドン 15.0
クロスカルメロースナトリウム 12.0
微細結晶セルロース 92.5
ステアリン酸マグネシウム 3.0
300.0

(ii) 錠剤 2 mg/錠
「パーティクル X」 20.0
微細結晶セルロース 410.0
デンプン 50.0
デンプングリコール酸ナトリウム 15.0
ステアリン酸マグネシウム 5.0
500.0

(iii) カプセル mg/カプセル
「パーティクル X」 10.0
コロイド二酸化珪素 1.5
乳糖 465.5
アルファ化デンプン 120.0
ステアリン酸マグネシウム 3.0
600.0

(iv) 注射液 1 (1mg/ml) mg/ml
「パーティクル X」(遊離酸) 1.0
リン酸水素二ナトリウム 12.0
リン酸二水素ナトリウム 0.7
塩化ナトリウム 4.5
1.0N 水酸化ナトリウム水溶液 適量
(pH 7.0〜7.5として調製)
注射用水 1mL程度

(v) 注射液 2 (10mg/ml) mg/ml
「パーティクル X」(遊離酸) 10.0
リン酸二水素ナトリウム 0.3
リン酸水素二ナトリウム 1.1
ポリエチレングリコール400 200.0
0.1N 水酸化ナトリウム水溶液 適量
(pH 7.0〜7.5として調製)
注射用水 1mL程度

(vi) エアロゾル mg/缶
「パーティクル X」 20.0
オレイン酸 10.0
トリクロロモノフルオロメタン 5,000.0
ジクロロジフルオロメタン 10,000.0
ジクロロテトラフルオロエタン 5,000.0

上記の処方は、薬学分野において公知である従来技術に係る手順によって調製することが
できる。
【0156】
全ての公報、特許、および特許文献は、ここでの参照により開示に含まれ、参照によって個々に開示に含まれる。本発明は、さまざまな特定の形態および技術、ならびに好ましい実施形態および技術を参照して記載されている。しかしながら、本発明の本質および範囲の内において、多数の変種および変形を実施することができるということを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、CdSナノパーティクルのキャップを有するMSNに基づいた、搬送系の模式図である。
【図2】図2は、 2-(プロピルジスルファニル)エチルアミンで官能性を持たせた、メソポーラスシリカナノスフィア(連結基-MSN)物質の合成を示す図である。
【図3A】図3は、連結基-MSNの、走査電子顕微鏡(SEM)写真(aおよびb)、ならびに透過電子顕微鏡(TEM)(300kV)写真(cおよびe)である。MCM-41型のメソポーラスチャネル構造を持つナノスフィアが、平行な縞(c)と、六方格子状の光点(e)を伴って写っている。CdSキャップをされたMSNのTEM写真(dおよびf)では、(d)の黒矢印で示している領域に、CdSナノパーティクルの集合が、MSN物質の外表面上の点として明瞭に写っている。また、(f)の、崩れたシンメトリの格子状に並んだ光点が写っている広い領域(青矢印で示した、MSNパーティクルの左側)と、メソ孔が六方格子状に並んでいる領域(緑矢印)とは、それぞれ、CdSナノパーティクルのキャップをされている領域と、キャップが外れている領域とを示している。TEM写真(d〜f)は、切片厚 60〜80nm のウルトラミクロトーム試料を処置して得たものである。
【図3B】図3は、連結基-MSNの、走査電子顕微鏡(SEM)写真(aおよびb)、ならびに透過電子顕微鏡(TEM)(300kV)写真(cおよびe)である。MCM-41型のメソポーラスチャネル構造を持つナノスフィアが、平行な縞(c)と、六方格子状の光点(e)を伴って写っている。CdSキャップをされたMSNのTEM写真(dおよびf)では、(d)の黒矢印で示している領域に、CdSナノパーティクルの集合が、MSN物質の外表面上の点として明瞭に写っている。また、(f)の、崩れたシンメトリの格子状に並んだ光点が写っている広い領域(青矢印で示した、MSNパーティクルの左側)と、メソ孔が六方格子状に並んでいる領域(緑矢印)とは、それぞれ、CdSナノパーティクルのキャップをされている領域と、キャップが外れている領域とを示している。TEM写真(d〜f)は、切片厚 60〜80nm のウルトラミクロトーム試料を処置して得たものである。
【図3C】図3は、連結基-MSNの、走査電子顕微鏡(SEM)写真(aおよびb)、ならびに透過電子顕微鏡(TEM)(300kV)写真(cおよびe)である。MCM-41型のメソポーラスチャネル構造を持つナノスフィアが、平行な縞(c)と、六方格子状の光点(e)を伴って写っている。CdSキャップをされたMSNのTEM写真(dおよびf)では、(d)の黒矢印で示している領域に、CdSナノパーティクルの集合が、MSN物質の外表面上の点として明瞭に写っている。また、(f)の、崩れたシンメトリの格子状に並んだ光点が写っている広い領域(青矢印で示した、MSNパーティクルの左側)と、メソ孔が六方格子状に並んでいる領域(緑矢印)とは、それぞれ、CdSナノパーティクルのキャップをされている領域と、キャップが外れている領域とを示している。TEM写真(d〜f)は、切片厚 60〜80nm のウルトラミクロトーム試料を処置して得たものである。
【図3D】図3は、連結基-MSNの、走査電子顕微鏡(SEM)写真(aおよびb)、ならびに透過電子顕微鏡(TEM)(300kV)写真(cおよびe)である。MCM-41型のメソポーラスチャネル構造を持つナノスフィアが、平行な縞(c)と、六方格子状の光点(e)を伴って写っている。CdSキャップをされたMSNのTEM写真(dおよびf)では、(d)の黒矢印で示している領域に、CdSナノパーティクルの集合が、MSN物質の外表面上の点として明瞭に写っている。また、(f)の、崩れたシンメトリの格子状に並んだ光点が写っている広い領域(青矢印で示した、MSNパーティクルの左側)と、メソ孔が六方格子状に並んでいる領域(緑矢印)とは、それぞれ、CdSナノパーティクルのキャップをされている領域と、キャップが外れている領域とを示している。TEM写真(d〜f)は、切片厚 60〜80nm のウルトラミクロトーム試料を処置して得たものである。
【図3E】図3は、連結基-MSNの、走査電子顕微鏡(SEM)写真(aおよびb)、ならびに透過電子顕微鏡(TEM)(300kV)写真(cおよびe)である。MCM-41型のメソポーラスチャネル構造を持つナノスフィアが、平行な縞(c)と、六方格子状の光点(e)を伴って写っている。CdSキャップをされたMSNのTEM写真(dおよびf)では、(d)の黒矢印で示している領域に、CdSナノパーティクルの集合が、MSN物質の外表面上の点として明瞭に写っている。また、(f)の、崩れたシンメトリの格子状に並んだ光点が写っている広い領域(青矢印で示した、MSNパーティクルの左側)と、メソ孔が六方格子状に並んでいる領域(緑矢印)とは、それぞれ、CdSナノパーティクルのキャップをされている領域と、キャップが外れている領域とを示している。TEM写真(d〜f)は、切片厚 60〜80nm のウルトラミクロトーム試料を処置して得たものである。
【図3F】図3は、連結基-MSNの、走査電子顕微鏡(SEM)写真(aおよびb)、ならびに透過電子顕微鏡(TEM)(300kV)写真(cおよびe)である。MCM-41型のメソポーラスチャネル構造を持つナノスフィアが、平行な縞(c)と、六方格子状の光点(e)を伴って写っている。CdSキャップをされたMSNのTEM写真(dおよびf)では、(d)の黒矢印で示している領域に、CdSナノパーティクルの集合が、MSN物質の外表面上の点として明瞭に写っている。また、(f)の、崩れたシンメトリの格子状に並んだ光点が写っている広い領域(青矢印で示した、MSNパーティクルの左側)と、メソ孔が六方格子状に並んでいる領域(緑矢印)とは、それぞれ、CdSナノパーティクルのキャップをされている領域と、キャップが外れている領域とを示している。TEM写真(d〜f)は、切片厚 60〜80nm のウルトラミクロトーム試料を処置して得たものである。
【図4A】図4は、CdSナノ結晶の固定前(実線)および固定後(破線)の、連結基-MSN物質の狭角(a)と広角(b)での粉末X線回折パターン(XRD)を示す( # は、非晶質シリカの拡散したピークである)。
【図4B】図4は、CdSナノ結晶の固定前(実線)および固定後(破線)の、連結基-MSN物質の狭角(a)と広角(b)での粉末X線回折パターン(XRD)を示す( # は、非晶質シリカの拡散したピークである)。
【図5A】図5は、CdSキャップドMSNシステムにおける、DTT起因の、バンコマイシン(-●-)とATP(--▲--)の放出プロファイルを示す。 (a) 時間に対する放出%である。 (b) DTT濃度に依る放出濃度である。放出分析濃度は、DTT添加後二十四時間を経過したpH7.4のPBS緩衝液中のCdS-MSNs (2.3mg) から測定した。
【図5B】図5は、CdSキャップドMSNシステムにおける、DTT起因の、バンコマイシン(-●-)とATP(--▲--)の放出プロファイルを示す。 (a) 時間に対する放出%である。 (b) DTT濃度に依る放出濃度である。放出分析濃度は、DTT添加後二十四時間を経過したpH7.4のPBS緩衝液中のCdS-MSNs (2.3mg) から測定した。
【図6A】図6は、アストロサイト上のCdSキャップドMSNsからのATP放出の作用を示す。 (a) 上のパネルには、休息レベル(左上のパネル)、およびME処置後(右上のパネル)の、Fura-2を取り込ませたアストロサイトの擬似色画像を示す。黄矢印は、HEPES緩衝液(pH7.4)の流れの方向を示す。 (b) 左下のパネルは、520nm(λex = 380nm)における、細胞およびCdSの蛍光を示す。 (c) 右下のグラフは、アストロサイトおよびCdSキャップドMSNの蛍光の、ME処置の前後の時間変化である(黒い棒は、MEを処置している時間を表す)。
【図6B】図6は、アストロサイト上のCdSキャップドMSNsからのATP放出の作用を示す。 (a) 上のパネルには、休息レベル(左上のパネル)、およびME処置後(右上のパネル)の、Fura-2を取り込ませたアストロサイトの擬似色画像を示す。黄矢印は、HEPES緩衝液(pH7.4)の流れの方向を示す。 (b) 左下のパネルは、520nm(λex = 380nm)における、細胞およびCdSの蛍光を示す。 (c) 右下のグラフは、アストロサイトおよびCdSキャップドMSNの蛍光の、ME処置の前後の時間変化である(黒い棒は、MEを処置している時間を表す)。
【図6C】図6は、アストロサイト上のCdSキャップドMSNsからのATP放出の作用を示す。 (a) 上のパネルには、休息レベル(左上のパネル)、およびME処置後(右上のパネル)の、Fura-2を取り込ませたアストロサイトの擬似色画像を示す。黄矢印は、HEPES緩衝液(pH7.4)の流れの方向を示す。 (b) 左下のパネルは、520nm(λex = 380nm)における、細胞およびCdSの蛍光を示す。 (c) 右下のグラフは、アストロサイトおよびCdSキャップドMSNの蛍光の、ME処置の前後の時間変化である(黒い棒は、MEを処置している時間を表す)。
【図7A】図7は、 (a) MSNが存在しないときの、細胞内 Ca2+ をキレートするフルオロフォア(Fura 2-AM)で染色されたアストロサイト培養物において、MEによる処置に応じた [Ca2+]i がまったく産生されなかったことを示す図解である。 (b) ME処置後に撮られたアストロサイトの擬似色画像は、細胞の [Ca2+]i が増加も減少もしなかったことを示している。 (c) 同じ細胞を 100.0μM のATPで灌流処置したところ、それに応じてアストロサイトの擬似色画像の蛍光強度が増加し、これは即ち [Ca2+]i が増加したということである。
【図7B】図7は、 (a) MSNが存在しないときの、細胞内 Ca2+ をキレートするフルオロフォア(Fura 2-AM)で染色されたアストロサイト培養物において、MEによる処置に応じた [Ca2+]i がまったく産生されなかったことを示す図解である。 (b) ME処置後に撮られたアストロサイトの擬似色画像は、細胞の [Ca2+]i が増加も減少もしなかったことを示している。 (c) 同じ細胞を 100.0μM のATPで灌流処置したところ、それに応じてアストロサイトの擬似色画像の蛍光強度が増加し、これは即ち [Ca2+]i が増加したということである。
【図7C】図7は、 (a) MSNが存在しないときの、細胞内 Ca2+ をキレートするフルオロフォア(Fura 2-AM)で染色されたアストロサイト培養物において、MEによる処置に応じた [Ca2+]i がまったく産生されなかったことを示す図解である。 (b) ME処置後に撮られたアストロサイトの擬似色画像は、細胞の [Ca2+]i が増加も減少もしなかったことを示している。 (c) 同じ細胞を 100.0μM のATPで灌流処置したところ、それに応じてアストロサイトの擬似色画像の蛍光強度が増加し、これは即ち [Ca2+]i が増加したということである。
【図8A】図8は、ATP (100.0μM) による処置の前 (a) と後 (b) における、空のメソポーラスチャネル(ATPを内包していない)を有するCdSキャップドMSNsのランダムなパイルが存在するようなアストロサイト培養物の擬似色画像を示している。ATPで灌流処置されたMSNsのパイル(上部の黄色四角枠)に接しているアストロサイト(下部の赤色四角枠)の [Ca2+]i の増加が観察された(d、下の曲線)。この結果は、アストロサイトがATP刺激に応答していることを示唆している。MEの灌流処置によって、CdSキャップが外れた(観察していたエリア外へと拡散した)ことにより、MSNsのパイル(上部の黄色四角枠)の蛍光強度の大きな減少(cおよびd、上の曲線)が、観察された。同時に、隣接していたアストロサイトは、ME処置の間に検出可能な応答を示さなかった。
【図8B】図8は、ATP (100.0μM) による処置の前 (a) と後 (b) における、空のメソポーラスチャネル(ATPを内包していない)を有するCdSキャップドMSNsのランダムなパイルが存在するようなアストロサイト培養物の擬似色画像を示している。ATPで灌流処置されたMSNsのパイル(上部の黄色四角枠)に接しているアストロサイト(下部の赤色四角枠)の [Ca2+]i の増加が観察された(d、下の曲線)。この結果は、アストロサイトがATP刺激に応答していることを示唆している。MEの灌流処置によって、CdSキャップが外れた(観察していたエリア外へと拡散した)ことにより、MSNsのパイル(上部の黄色四角枠)の蛍光強度の大きな減少(cおよびd、上の曲線)が、観察された。同時に、隣接していたアストロサイトは、ME処置の間に検出可能な応答を示さなかった。
【図8C】図8は、ATP (100.0μM) による処置の前 (a) と後 (b) における、空のメソポーラスチャネル(ATPを内包していない)を有するCdSキャップドMSNsのランダムなパイルが存在するようなアストロサイト培養物の擬似色画像を示している。ATPで灌流処置されたMSNsのパイル(上部の黄色四角枠)に接しているアストロサイト(下部の赤色四角枠)の [Ca2+]i の増加が観察された(d、下の曲線)。この結果は、アストロサイトがATP刺激に応答していることを示唆している。MEの灌流処置によって、CdSキャップが外れた(観察していたエリア外へと拡散した)ことにより、MSNsのパイル(上部の黄色四角枠)の蛍光強度の大きな減少(cおよびd、上の曲線)が、観察された。同時に、隣接していたアストロサイトは、ME処置の間に検出可能な応答を示さなかった。
【図8D】図8は、ATP (100.0μM) による処置の前 (a) と後 (b) における、空のメソポーラスチャネル(ATPを内包していない)を有するCdSキャップドMSNsのランダムなパイルが存在するようなアストロサイト培養物の擬似色画像を示している。ATPで灌流処置されたMSNsのパイル(上部の黄色四角枠)に接しているアストロサイト(下部の赤色四角枠)の [Ca2+]i の増加が観察された(d、下の曲線)。この結果は、アストロサイトがATP刺激に応答していることを示唆している。MEの灌流処置によって、CdSキャップが外れた(観察していたエリア外へと拡散した)ことにより、MSNsのパイル(上部の黄色四角枠)の蛍光強度の大きな減少(cおよびd、上の曲線)が、観察された。同時に、隣接していたアストロサイトは、ME処置の間に検出可能な応答を示さなかった。
【図9】図9は、実施例4(励起波長=488nm)に記載されている、PAMAM-MSN遺伝子導入システムによってトランスフェクションされた皮質ニューロンの蛍光共焦点顕微鏡写真を示している。
【図10A】図10は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、およびs-MCM-41(h)の、 1H→13C CPMAS法のスペクトルであって、CP接触時間は、0.4ms(スペクトルa〜cおよびh)、もしくは1.5 ms(スペクトルd〜g)とした。スペクトルfおよびgのアスタリスクは、残存界面活性剤の炭素原子の位置を示す。スペクトル(e)は、イソシアノプロピル基の塩基触媒を介した加水分解によるICP-MPの合成の間に形成された、プロピルカルバミン酸基を表していることに留意されたい。
【図10B】図10は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、およびs-MCM-41(h)の、 1H→13C CPMAS法のスペクトルであって、CP接触時間は、0.4ms(スペクトルa〜cおよびh)、もしくは1.5 ms(スペクトルd〜g)とした。スペクトルfおよびgのアスタリスクは、残存界面活性剤の炭素原子の位置を示す。スペクトル(e)は、イソシアノプロピル基の塩基触媒を介した加水分解によるICP-MPの合成の間に形成された、プロピルカルバミン酸基を表していることに留意されたい。
【図10C】図10は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、およびs-MCM-41(h)の、 1H→13C CPMAS法のスペクトルであって、CP接触時間は、0.4ms(スペクトルa〜cおよびh)、もしくは1.5 ms(スペクトルd〜g)とした。スペクトルfおよびgのアスタリスクは、残存界面活性剤の炭素原子の位置を示す。スペクトル(e)は、イソシアノプロピル基の塩基触媒を介した加水分解によるICP-MPの合成の間に形成された、プロピルカルバミン酸基を表していることに留意されたい。
【図10D】図10は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、およびs-MCM-41(h)の、 1H→13C CPMAS法のスペクトルであって、CP接触時間は、0.4ms(スペクトルa〜cおよびh)、もしくは1.5 ms(スペクトルd〜g)とした。スペクトルfおよびgのアスタリスクは、残存界面活性剤の炭素原子の位置を示す。スペクトル(e)は、イソシアノプロピル基の塩基触媒を介した加水分解によるICP-MPの合成の間に形成された、プロピルカルバミン酸基を表していることに留意されたい。
【図10E】図10は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、およびs-MCM-41(h)の、 1H→13C CPMAS法のスペクトルであって、CP接触時間は、0.4ms(スペクトルa〜cおよびh)、もしくは1.5 ms(スペクトルd〜g)とした。スペクトルfおよびgのアスタリスクは、残存界面活性剤の炭素原子の位置を示す。スペクトル(e)は、イソシアノプロピル基の塩基触媒を介した加水分解によるICP-MPの合成の間に形成された、プロピルカルバミン酸基を表していることに留意されたい。
【図10F】図10は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、およびs-MCM-41(h)の、 1H→13C CPMAS法のスペクトルであって、CP接触時間は、0.4ms(スペクトルa〜cおよびh)、もしくは1.5 ms(スペクトルd〜g)とした。スペクトルfおよびgのアスタリスクは、残存界面活性剤の炭素原子の位置を示す。スペクトル(e)は、イソシアノプロピル基の塩基触媒を介した加水分解によるICP-MPの合成の間に形成された、プロピルカルバミン酸基を表していることに留意されたい。
【図10G】図10は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、およびs-MCM-41(h)の、 1H→13C CPMAS法のスペクトルであって、CP接触時間は、0.4ms(スペクトルa〜cおよびh)、もしくは1.5 ms(スペクトルd〜g)とした。スペクトルfおよびgのアスタリスクは、残存界面活性剤の炭素原子の位置を示す。スペクトル(e)は、イソシアノプロピル基の塩基触媒を介した加水分解によるICP-MPの合成の間に形成された、プロピルカルバミン酸基を表していることに留意されたい。
【図10H】図10は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、およびs-MCM-41(h)の、 1H→13C CPMAS法のスペクトルであって、CP接触時間は、0.4ms(スペクトルa〜cおよびh)、もしくは1.5 ms(スペクトルd〜g)とした。スペクトルfおよびgのアスタリスクは、残存界面活性剤の炭素原子の位置を示す。スペクトル(e)は、イソシアノプロピル基の塩基触媒を介した加水分解によるICP-MPの合成の間に形成された、プロピルカルバミン酸基を表していることに留意されたい。
【図11】図11は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、s-MCM-41(h)、および界面活性剤抽出後のMCM-41(i)の、 29Si DPMAS(左)および 1H→29Si CPMAS(右)のスペクトルを示す。
【図12A】図12は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および、われわれが考案した、有機官能基を添加することの無い縮合反応条件を介して合成された純粋なMCM-41シリカ(h)の、FE-SEM画像を示している。全ての画像は、同一のスケールで表されており、スケールバーは3μmである。
【図12B】図12は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および、われわれが考案した、有機官能基を添加することの無い縮合反応条件を介して合成された純粋なMCM-41シリカ(h)の、FE-SEM画像を示している。全ての画像は、同一のスケールで表されており、スケールバーは3μmである。
【図12C】図12は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および、われわれが考案した、有機官能基を添加することの無い縮合反応条件を介して合成された純粋なMCM-41シリカ(h)の、FE-SEM画像を示している。全ての画像は、同一のスケールで表されており、スケールバーは3μmである。
【図12D】図12は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および、われわれが考案した、有機官能基を添加することの無い縮合反応条件を介して合成された純粋なMCM-41シリカ(h)の、FE-SEM画像を示している。全ての画像は、同一のスケールで表されており、スケールバーは3μmである。
【図12E】図12は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および、われわれが考案した、有機官能基を添加することの無い縮合反応条件を介して合成された純粋なMCM-41シリカ(h)の、FE-SEM画像を示している。全ての画像は、同一のスケールで表されており、スケールバーは3μmである。
【図12F】図12は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および、われわれが考案した、有機官能基を添加することの無い縮合反応条件を介して合成された純粋なMCM-41シリカ(h)の、FE-SEM画像を示している。全ての画像は、同一のスケールで表されており、スケールバーは3μmである。
【図12G】図12は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および、われわれが考案した、有機官能基を添加することの無い縮合反応条件を介して合成された純粋なMCM-41シリカ(h)の、FE-SEM画像を示している。全ての画像は、同一のスケールで表されており、スケールバーは3μmである。
【図12H】図12は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および、われわれが考案した、有機官能基を添加することの無い縮合反応条件を介して合成された純粋なMCM-41シリカ(h)の、FE-SEM画像を示している。全ての画像は、同一のスケールで表されており、スケールバーは3μmである。
【図13A】図13は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および純粋なMCM-41シリカ(h)である物質の、BET等温線、およびBJH孔サイズの分布(挿入図)を示している。
【図13B】図13は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および純粋なMCM-41シリカ(h)である物質の、BET等温線、およびBJH孔サイズの分布(挿入図)を示している。
【図13C】図13は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および純粋なMCM-41シリカ(h)である物質の、BET等温線、およびBJH孔サイズの分布(挿入図)を示している。
【図13D】図13は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および純粋なMCM-41シリカ(h)である物質の、BET等温線、およびBJH孔サイズの分布(挿入図)を示している。
【図13E】図13は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および純粋なMCM-41シリカ(h)である物質の、BET等温線、およびBJH孔サイズの分布(挿入図)を示している。
【図13F】図13は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および純粋なMCM-41シリカ(h)である物質の、BET等温線、およびBJH孔サイズの分布(挿入図)を示している。
【図13G】図13は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および純粋なMCM-41シリカ(h)である物質の、BET等温線、およびBJH孔サイズの分布(挿入図)を示している。
【図13H】図13は、AP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、ICP-MP(e)、CP-MP(f)、AL-MP(g)、および純粋なMCM-41シリカ(h)である物質の、BET等温線、およびBJH孔サイズの分布(挿入図)を示している。
【図14A】図14は、界面活性剤を除去したAP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、AL-MP(e)、CP-MP(f)、およびICP-MP(g)の、XRDスペクトルを示している。
【図14B】図14は、界面活性剤を除去したAP-MP(a)、AAP-MP(b)、AEP-MP(c)、UDP-MP(d)、AL-MP(e)、CP-MP(f)、およびICP-MP(g)の、XRDスペクトルを示している。
【図15A】図15は、AEP-MP(a)、CP-MP(b,c)、およびUDP-MP(d)である物質のTEM顕微鏡写真を示している。画像(a)および(b)は、ウルトラミクロトーム試料を示している(スケールバー=100nm)。
【図15B】図15は、AEP-MP(a)、CP-MP(b,c)、およびUDP-MP(d)である物質のTEM顕微鏡写真を示している。画像(a)および(b)は、ウルトラミクロトーム試料を示している(スケールバー=100nm)。
【図15C】図15は、AEP-MP(a)、CP-MP(b,c)、およびUDP-MP(d)である物質のTEM顕微鏡写真を示している。画像(a)および(b)は、ウルトラミクロトーム試料を示している(スケールバー=100nm)。
【図15D】図15は、AEP-MP(a)、CP-MP(b,c)、およびUDP-MP(d)である物質のTEM顕微鏡写真を示している。画像(a)および(b)は、ウルトラミクロトーム試料を示している(スケールバー=100nm)。
【図16A】図16は、AEPTMSの種々の量を有し官能化されたメソポーラス物質の、 29Si DPMASスペクトル(a)、および 1H→29Si CPMASスペクトル(b)を示している。交差分極は1msの接触時間で用いた。(c)AEPTMSの濃度に対する官能化の相対的増加は、CPMASから見積った。
【図16B】図16は、AEPTMSの種々の量を有し官能化されたメソポーラス物質の、 29Si DPMASスペクトル(a)、および 1H→29Si CPMASスペクトル(b)を示している。交差分極は1msの接触時間で用いた。(c)AEPTMSの濃度に対する官能化の相対的増加は、CPMASから見積った。
【図16C】図16は、AEPTMSの種々の量を有し官能化されたメソポーラス物質の、 29Si DPMASスペクトル(a)、および 1H→29Si CPMASスペクトル(b)を示している。交差分極は1msの接触時間で用いた。(c)AEPTMSの濃度に対する官能化の相対的増加は、CPMASから見積った。
【図17A】図17は、AEPTMSの種々の初期装填量を伴ったAEP-MPのFE-SEM画像を示しており、AEPTMSの初期装填量はそれぞれ、1.28mol%(a)、3.85mol%(b)、6.43mol%(c)、10.27mol%(d)、11.54mol%(e)、および12.80mol%(f)である。全ての画像は、同一のスケールで示されており、スケールバーの長さは3μmである。
【図17B】図17は、AEPTMSの種々の初期装填量を伴ったAEP-MPのFE-SEM画像を示しており、AEPTMSの初期装填量はそれぞれ、1.28mol%(a)、3.85mol%(b)、6.43mol%(c)、10.27mol%(d)、11.54mol%(e)、および12.80mol%(f)である。全ての画像は、同一のスケールで示されており、スケールバーの長さは3μmである。
【図17C】図17は、AEPTMSの種々の初期装填量を伴ったAEP-MPのFE-SEM画像を示しており、AEPTMSの初期装填量はそれぞれ、1.28mol%(a)、3.85mol%(b)、6.43mol%(c)、10.27mol%(d)、11.54mol%(e)、および12.80mol%(f)である。全ての画像は、同一のスケールで示されており、スケールバーの長さは3μmである。
【図17D】図17は、AEPTMSの種々の初期装填量を伴ったAEP-MPのFE-SEM画像を示しており、AEPTMSの初期装填量はそれぞれ、1.28mol%(a)、3.85mol%(b)、6.43mol%(c)、10.27mol%(d)、11.54mol%(e)、および12.80mol%(f)である。全ての画像は、同一のスケールで示されており、スケールバーの長さは3μmである。
【図17E】図17は、AEPTMSの種々の初期装填量を伴ったAEP-MPのFE-SEM画像を示しており、AEPTMSの初期装填量はそれぞれ、1.28mol%(a)、3.85mol%(b)、6.43mol%(c)、10.27mol%(d)、11.54mol%(e)、および12.80mol%(f)である。全ての画像は、同一のスケールで示されており、スケールバーの長さは3μmである。
【図17F】図17は、AEPTMSの種々の初期装填量を伴ったAEP-MPのFE-SEM画像を示しており、AEPTMSの初期装填量はそれぞれ、1.28mol%(a)、3.85mol%(b)、6.43mol%(c)、10.27mol%(d)、11.54mol%(e)、および12.80mol%(f)である。全ての画像は、同一のスケールで示されており、スケールバーの長さは3μmである。
【図18A】図18は、実施例5で調製された、 1.28mol% (a)および 6.43mol% (b)のAEPTMSを有するAEP-MPのウルトラミクロトーム試料のTEM画像である(スケールバー=100nm)。
【図18B】図18は、実施例5で調製された、 1.28mol% (a)および 6.43mol% (b)のAEPTMSを有するAEP-MPのウルトラミクロトーム試料のTEM画像である(スケールバー=100nm)。
【図19】図19は、実施例6で調製された、(a) AEP-MP、(b) CP-MP、(c)5/5 AEP/CP-MP、(d) 3/7 AEP/CP-MP、および(e) 1/9 AEP/CP-MPのFE-SEM画像である(全ての顕微鏡写真について、スケールバー=1μm)。
【図20A】図20は、(a) 実施例6における種々のモル比の AEPTMS/CPTES で合成された、二官能性AEP/CP-MP物質の粉末XRD回折パターンを示す。また、(b) AEP-MP(上)、およびCP-MP(下)物質の、 13C固体CPMAS NMR の測定結果を示す。
【図20B】図20は、(a) 実施例6における種々のモル比の AEPTMS/CPTES で合成された、二官能性AEP/CP-MP物質の粉末XRD回折パターンを示す。また、(b) AEP-MP(上)、およびCP-MP(下)物質の、 13C固体CPMAS NMR の測定結果を示す。
【図21】図21は、実施例6で調製された、単官能性AEP/CP-MP(一番上の線と一番下の線)、および二官能性AEP/CP-MP(中間の線)の、 13C CPMAS スペクトルである。矢印で強調した箇所は、それぞれの種についてユニークな共鳴であって、これを定量分析のために用いた。数字は、調製に用いた二成分のモル比(左欄)と、得られたNMRスペクトルの形状分析(右欄)を表している。
【図22】図22は、実施例6で調製された中から選択された試料の、 Cu(II) 吸着容量を示す図である。
【図23】図23は、実施例7で調製された、Texas RedTM(TR) を装填した G2-PAMAMデンドリマー-キャップドMSN物質と、緑色蛍光蛋白質(Aequorea victoria)増大プラスミドDNA(pEGFP-C1)とを複合化したものに基づいた、非ウイルス性遺伝子トランスフェクション系の概要図解である。
【図24A】図24は、実施例7で実施した、 pEGFP-C1 DNA (GFP)と、 G2-MSN との複合体を示す。 (a) G2-MSN が無い場合(レーン2)と、 G2-MSN を増加させていった場合(レーン3〜8)とにおける、GFPの電気泳動ゲルの移動量。 (b) pEGFP-C1 DNA およびキャップされていないMSN(MSN)と複合化されたGPFの電気泳動ゲルの移動量。レーン2は消化されていない遊離GFPであり、また、レーン3は BamH I エンドヌクレアーゼで消化されたGFPである。レーン4〜6は、種々の割合のG2-MSNと複合化され、 BamH I で処理されたGFPである。レーン7およびレーン8は、それぞれ、 BamH I で処理されていないキャップされていないMSNと複合化されたGFP、および、 BamH I で処理されたキャップされていないMSNで複合化されたGFPである。
【図24B】図24は、実施例7で実施した、 pEGFP-C1 DNA (GFP)と、 G2-MSN との複合体を示す。 (a) G2-MSN が無い場合(レーン2)と、 G2-MSN を増加させていった場合(レーン3〜8)とにおける、GFPの電気泳動ゲルの移動量。 (b) pEGFP-C1 DNA およびキャップされていないMSN(MSN)と複合化されたGPFの電気泳動ゲルの移動量。レーン2は消化されていない遊離GFPであり、また、レーン3は BamH I エンドヌクレアーゼで消化されたGFPである。レーン4〜6は、種々の割合のG2-MSNと複合化され、 BamH I で処理されたGFPである。レーン7およびレーン8は、それぞれ、 BamH I で処理されていないキャップされていないMSNと複合化されたGFP、および、 BamH I で処理されたキャップされていないMSNで複合化されたGFPである。
【図25A】図25は、実施例7で調製された、 pEGFP-C1 で被覆されたG2-MSN系によってトランスフェクションされた細胞の蛍光共焦点顕微鏡写真である。 (a) GFPがHeLa細胞をトランスフェクションしたところ。細胞層の断面も示している。直交する画像は、一つの層が含む細胞を示している。 (b) GFPでトランスフェクションされたラット神経膠細胞(アストロサイト)内の、 Texas Red を装填した G2-MSNs である。
【図25B】図25は、実施例7で調製された、 pEGFP-C1 で被覆されたG2-MSN系によってトランスフェクションされた細胞の蛍光共焦点顕微鏡写真である。 (a) GFPがHeLa細胞をトランスフェクションしたところ。細胞層の断面も示している。直交する画像は、単一の層が含む細胞を示している。 (b) GFPでトランスフェクションされたラット神経膠細胞(アストロサイト)内の、 Texas Red を装填した G2-MSNs である。
【図26A】図26は、 (a) CHO細胞、および (b) HeLa細胞にエンドサイトーシスした G2-MSNs (黒色の点)のTEM写真を示す。
【図26B】図26は、 (a) CHO細胞、および (b) HeLa細胞にエンドサイトーシスした G2-MSNs (黒色の点)のTEM写真を示す。
【図27】図27は、神経膠細胞(アストロサイト)にエンドサイトーシスした G2-MSNs のTEM写真を示す。亜細胞性の細胞小器官、例えばミトコンドリアおよびゴルギ(Golgi)がMSNsの近くで観察された。細胞下の小器官(例えばミトコンドリアおよびゴルジ体)が MSNs の近傍に観察された。
【図28】図28は、エンドサイトーシスされた G2-MSNs のTEM写真である。(孔壁を含む)チャネル間の距離の測定結果は、 N2 収着等温線から得られたBJH法による平均孔径である 3〜4nm という結果と矛盾していない。
【図29】図29は、実施例7で調製された精製ICP-MSN、G2-MSN、および Texas Red を装填したG2-MSN物質の、粉末X線回折パターンを示す。ICP-MSNおよびG2-MSNの双方の物質は、六方対称のMCM-41型メソポーラスシリカの典型的な回折パターンを呈している。 Tex Red を装填したG2-MSN物質の回折パターンに見られる変化は、孔が充填された影響に因るものと考えられる。
【図30A】図30は、実施例7で調製されたMSN、ICP-MSN、G2-MSN、および Texas Red を装填したG2-MSN物質の、BET比窒素吸/脱着等温線(a)、ならびに、BJH法による孔サイズの分布(b)を示している。ICP-MSNおよびG2-MSN物質のBET比等温線は、まったくヒステリシスを示さず、これは、表面機能化 (表面官能化; surface functionalization ) されたMSNの外表面に、キセロゲルが形成されていないことを示唆している。
【図30B】図30は、実施例7で調製されたMSN、ICP-MSN、G2-MSN、および Texas Red を装填したG2-MSN物質の、BET比窒素吸/脱着等温線(a)、ならびに、BJH法による孔サイズの分布(b)を示している。ICP-MSNおよびG2-MSN物質のBET比等温線は、まったくヒステリシスを示さず、これは、表面機能化 (表面官能化; surface functionalization ) されたMSNの外表面に、キセロゲルが形成されていないことを示唆している。
【図31A】図31は、 ICP-MSN物質(上)および G2-MSN物質(下)の、 13C固体 CP-MAS NMRスペクトルを示している。 ICP-MSN の加水分解されたイソシアノプロピル基から生じたプロピルカルバミン酸不純物も、 ICP-MSNの スペクトルにおいて観察された。
【図31B】図31は、 ICP-MSN物質(上)および G2-MSN物質(下)の、 13C固体 CP-MAS NMRスペクトルを示している。 ICP-MSN の加水分解されたイソシアノプロピル基から生じたプロピルカルバミン酸不純物も、 ICP-MSN のスペクトルにおいて観察された。
【図32A】図32は、 G2-MSNの (a) SEM写真および (b) TEM写真(300kV)を示す。SEM画像(a)にはシリカパーティクルのスフィア状の形が示されている。写真(b)に見える平行な縞によって、 G2-MSN の MCM-41型メソポーラスチャネル構造が可視化されている。
【図32B】図32は、 G2-MSNの (a) SEM写真および (b) TEM写真(300kV)を示す。SEM画像(a)にはシリカパーティクルのスフィア状の形が示されている。写真(b)に見える平行な縞によって、 G2-MSN の MCM-41型メソポーラスチャネル構造が可視化されている。
【図33A】図33は、実施例7で調製された G2-MSN を有する HeLa細胞における、 pEGFP のトランスフェクションのフローサイトメトリー分析を示す。フローサイトメトリーのヒストグラムは、緑色(FL1)チャネルにおける事象の分布を示している。 (a) トランスフェクションされていない対照実験: HeLa細胞(破線)、および、 pEGFP-C1 DNA で処置されたHeLa細胞(実線)。 (b) "Mock" トランスフェクション対照実験: HeLa細胞(破線)、および、DNAを有しないMSNsで処置されたHeLa細胞(実線)。 (c) G2-MSNトランスフェクションの結果: HeLa細胞(破線)、および、 pEGFP-C1 DNA で被覆されたG2-MSNsで処置されたHeLa細胞。
【図33B】図33は、実施例7で調製された G2-MSN を有する HeLa細胞における、 pEGFP のトランスフェクションのフローサイトメトリー分析を示す。フローサイトメトリーのヒストグラムは、緑色(FL1)チャネルにおける事象の分布を示している。 (a) トランスフェクションされていない対照実験: HeLa細胞(破線)、および、 pEGFP-C1 DNA で処置されたHeLa細胞(実線)。 (b) "Mock" トランスフェクション対照実験: HeLa細胞(破線)、および、DNAを有しないMSNsで処置されたHeLa細胞(実線)。 (c) G2-MSNトランスフェクションの結果: HeLa細胞(破線)、および、 pEGFP-C1 DNA で被覆されたG2-MSNsで処置されたHeLa細胞。
【図33C】図33は、実施例7で調製されたG2-MSNを有するHeLa細胞における、pEGFPのトランスフェクションのフローサイトメトリー分析を示す。フローサイトメトリーのヒストグラムは、緑色(FL1)チャネルにおける事象の分布を示している。 (a) トランスフェクションされていない対照実験: HeLa細胞(破線)、および、 pEGFP-C1 DNA で処置されたHeLa細胞(実線)。 (b) "Mock" トランスフェクション対照実験: HeLa細胞(破線)、および、DNAを有しないMSNsで処置されたHeLa細胞(実線)。 (c) G2-MSNトランスフェクションの結果: HeLa細胞(破線)、および、 pEGFP-C1 DNA で被覆されたG2-MSNsで処置されたHeLa細胞。
【図34A】図34は、実施例7の例との比較として、種々の市販のトランスフェクション薬によってトランスフェクションされたHeLa細胞のフローサイトメトリー分析(d)、(e)、および(f)を示している。
【図34B】図34は、実施例7の例との比較として、種々の市販のトランスフェクション薬によってトランスフェクションされたHeLa細胞のフローサイトメトリー分析(d)、(e)、および(f)を示している。
【図34C】図34は、実施例7の例との比較として、種々の市販のトランスフェクション薬によってトランスフェクションされたHeLa細胞のフローサイトメトリー分析(d)、(e)、および(f)を示している。
【図35A】図35は、 (a) HeLa細胞培地の位相コントラスト写真、および (b) 細胞層の断面図を伴った、同一のHeLa細胞培地の蛍光共焦点顕微鏡写真である。直交する画像は、単一の層が含む細胞を示しており、また、細胞の多重層は観察されなかった。
【図35B】図35は、 (a) HeLa細胞培地の位相コントラスト写真、および (b) 細胞層の断面図を伴った、同一のHeLa細胞培地の蛍光共焦点顕微鏡写真である。直交する画像は、単一の層が含む細胞を示しており、また、細胞の多重層は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひとつもしくは複数の孔を有するメソポーラス珪酸塩体と、
前記ひとつもしくは複数の孔を塞ぐ、ひとつもしくは複数の除去可能なキャップとを含むことを特徴とする物体。
【請求項2】
前記珪酸塩体が、ミクロパーティクルもしくはナノパーティクルであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項3】
前記孔の直径が、約1〜50nmであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項4】
前記孔の直径が、約30〜50nm未満であることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項5】
前記孔の直径が、約1nm〜約3nmであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項6】
前記メソポーラス珪酸塩体が、直径約40〜100nmのスフィアであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項7】
前記メソポーラス珪酸塩体が、直径約100〜300nmのスフィアであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項8】
前記メソポーラス珪酸塩体が、直径約300〜600nmのスフィアであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項9】
前記メソポーラス珪酸塩体が、直径約500nm〜約4μmのスフィアであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項10】
前記メソポーラス珪酸塩体が、長さ約500nm〜約1μmのロッドであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項11】
前記メソポーラス珪酸塩体が、長さ約400nm〜約600nmのロッドであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項12】
前記メソポーラス珪酸塩体が、長さ約50nm〜約250nmのロッドであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項13】
前記メソポーラス珪酸塩体が、直径約50nm〜約500nmのロッドであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項14】
前記キャップが無機パーティクルであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項15】
前記キャップが硫化物塩であることを特徴とする、請求項14記載の物体。
【請求項16】
前記ひとつもしくは複数のキャップが、硫化カドミウムナノパーティクルであることを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項17】
前記硫化カドミウムナノパーティクルが、前記メソポーラス珪酸塩と共有結合していることを特徴とする、請求項16記載の物体。
【請求項18】
前記硫化カドミウムナノパーティクルが、前記メソポーラス珪酸塩と、ジスルフィドを
含む連結基を介して共有結合していることを特徴とする、請求項17記載の物体。
【請求項19】
前記硫化カドミウムナノパーティクルが、前記メソポーラス珪酸塩と、 2-(プロピルジスルファニル)エチルアミンを含む連結基を介して共有結合していることを特徴とする、請求項18記載の物体。
【請求項20】
前記硫化カドミウムナノパーティクルが、前記メソポーラス珪酸塩と、構造式 X-CH2CH2CH2SSCH2CH2NHC(=O)CH2-Y の連結基を介して共有結合していることを特徴とする、請求項10記載の物体。(式中の X は前記メソポーラス珪酸塩の珪素原子であり、 Y は前記硫化カドミウムナノパーティクルの硫黄原子である)
【請求項21】
前記ひとつもしくは複数のキャップが、有機ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項22】
前記ひとつもしくは複数のキャップが、ポリ(乳酸) 、ポリ(アミドアミン) 、ポリペプチド、蛋白質、オリゴヌクレオチド、もしくは多糖類を含むことを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項23】
前記ひとつもしくは複数のキャップが、高分岐ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1記載の物体。
【請求項24】
前記高分岐ポリマーがデンドリマーであることを特徴とする、請求項23記載の物体。
【請求項25】
前記デンドリマーが、カチオン性デンドリマーであることを特徴とする、請求項24記載の物体。
【請求項26】
前記デンドリマーが、アニオン性デンドリマーであることを特徴とする、請求項24記載の物体。
【請求項27】
前記デンドリマーが、生分解性デンドリマーであることを特徴とする、請求項24記載の物体。
【請求項28】
前記デンドリマーが、ポリ(アミドアミン) を含むことを特徴とする、請求項24記載の物体。
【請求項29】
前記キャップが、前記メソポーラス珪酸塩と共有結合していることを特徴とする、請求項1、21、もしくは23に記載の物体。
【請求項30】
前記キャップが、ジスルフィドを含む連結基を介して、前記メソポーラス珪酸塩と共有結合していることを特徴とする、請求項29記載の物体。
【請求項31】
前記キャップが、2-(プロピルジスルファニル)-エチルアミンを含む連結基を介して、前記メソポーラス珪酸塩と共有結合していることを特徴とする、請求項29記載の物体。
【請求項32】
前記キャップが、尿素基を含んだ連結基を介して、前記メソポーラス珪酸塩と共有結合していることを特徴とする、請求項29記載の物体。
【請求項33】
前記キャップが、構造式 X-CH2CH2CH2SSCH2CH2NHC(=O)CH2-Y の基を介して、前記メソポーラス珪酸塩と共有結合していることを特徴とする、請求項29記載の物体。(式中の
X は前記メソポーラス珪酸塩の珪素原子であり、 Y は前記キャップの原子である)
【請求項34】
前記ひとつもしくは複数の孔の内部に、カプセル化された試薬をさらに含むことを特徴とする、請求項1、21、もしくは23に記載の物体。
【請求項35】
前記カプセル化された試薬が、診断薬であることを特徴とする、請求項34記載の物体。
【請求項36】
前記カプセル化された試薬が、生理活性物質であることを特徴とする、請求項34記載の物体。
【請求項37】
前記生理活性物質が、治療薬であることを特徴とする、請求項36記載の物体。
【請求項38】
前記カプセル化された試薬が、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、イメージング剤、造影剤、美容剤、もしくは栄養剤であることを特徴とする、請求項34記載の物体。
【請求項39】
前記カプセル化された試薬が、キレート化放射性核種、ホルモン、ホルモン伝達物質、サイトカイン、ビタミン、遺伝子発現抑制剤、神経伝達物質、RNA分子、もしくはDNA分子であることを特徴とする、請求項34記載の物体。
【請求項40】
カプセル化された試薬の有効量を、生体内の予め選択した部位へと搬送する方法であって、請求項34のパーティクルの或る量を搬送するステップと、前記孔から少なくともいくらかの前記キャップを除去し、前記試薬の有効量を放出するステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項41】
S-S 結合を含んだ連結基の還元剤による開裂によって、前記キャップが除去されることを特徴とする、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記メソポーラス珪酸塩の前記表面と会合した、ひとつもしくは複数のカチオン性デンドリマーをさらに含むことを特徴とする、請求項34記載の物体。
【請求項43】
前記ひとつもしくは複数のカチオン性デンドリマーが、前記メソポーラス珪酸塩と共有結合していることを特徴とする、請求項42記載の物体。
【請求項44】
前記ひとつもしくは複数のカチオン性デンドリマーが、連結基を介して、前記メソポーラス珪酸塩と共有結合していることを特徴とする、請求項42記載の物体。
【請求項45】
前記連結基が、ジスルフィド結合を含むことを特徴とする、請求項44記載の物体。
【請求項46】
前記連結基が、 2-(プロピルジスルファニル)エチルアミンを含むことを特徴とする、請求項44記載の物体。
【請求項47】
前記連結基が、尿素基を含むことを特徴とする、請求項44記載の物体。
【請求項48】
前記メソポーラス珪酸塩の前記表面もしくは孔と会合した前記ひとつもしくは複数のカチオン性デンドリマーと会合した、ひとつもしくは複数の核酸をさらに含むことを特徴とする、請求項42記載の物体。
【請求項49】
前記メソポーラス珪酸塩の前記表面もしくは孔と会合した前記ひとつもしくは複数のカチオン性デンドリマーと会合した、ひとつもしくは複数の核酸をさらに含むことを特徴と
する、請求項25記載の物体。
【請求項50】
前記ひとつもしくは複数の核酸が、静電相互作用を介して前記ひとつもしくは複数のカチオン性デンドリマーと会合していることを特徴とする、請求項48記載の物体。
【請求項51】
前記ひとつもしくは複数の核酸が、静電相互作用を介して前記ひとつもしくは複数のカチオン性デンドリマーと会合していることを特徴とする、請求項49記載の物体。
【請求項52】
前記メソポーラス珪酸塩の前記表面もしくは孔のキャップと会合している、細胞ターゲッティング基をさらに含むことを特徴とする、請求項34記載の物体。
【請求項53】
前記メソポーラス珪酸塩の前記表面もしくは孔のキャップと会合している、細胞ターゲッティング基をさらに含むことを特徴とする、請求項49記載の物体。
【請求項54】
請求項35に記載されたパーティクル物体と、薬学的に許容される担体とを、含むことを特徴とする薬学的組成物。
【請求項55】
請求項49に記載されたパーティクル物体と、薬学的に許容される担体とを、含むことを特徴とする薬学的組成物。
【請求項56】
経口投与用に処方されたことを特徴とする、請求項54記載の組成物。
【請求項57】
非経口投与用に処方されたことを特徴とする、請求項54記載の組成物。
【請求項58】
経口投与用に処方されたことを特徴とする、請求項55記載の組成物。
【請求項59】
非経口投与用に処方されたことを特徴とする、請求項55記載の組成物。
【請求項60】
細胞に核酸を搬送する方法であって、前記細胞と、請求項48記載の物体とを、前記物体が前記細胞に取り込まれる条件の下で接触させるステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項61】
細胞に核酸を搬送する方法であって、前記細胞と、請求項49記載の物体とを、前記物体が前記細胞に取り込まれる条件の下で接触させるステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項62】
前記細胞が、ニューロン、幹細胞、もしくはアストロサイトであることを特徴とする、請求項60記載の方法。
【請求項63】
メソポーラス珪酸塩パーティクルを合成する方法であって、ひとつもしくは複数の種類のテトラアルコキシシランと、ひとつもしくは複数の種類の有機基置換トリアルコキシシランとを共縮合して、単分散のパーティクルサイズおよび予め選択されたパーティクル形状を有するメソポーラス珪酸塩パーティクルの集合を得るステップを含み、前記置換トリアルコキシシランは助溶媒では無いことを特徴とする、方法。
【請求項64】
前記メソポーラス珪酸塩パーティクルが、ひとつもしくは複数の種類のテトラアルコキシシランと、ひとつもしくは複数の種類の (3-シアノプロピル)トリアルコキシ-シランとを共縮合して調製され、前記メソポーラス珪酸塩パーティクルをナノロッドとして得ることを特徴とする、請求項63記載の方法。
【請求項65】
ひとつもしくは複数の核酸分子を含んだメソポーラス珪酸塩と、哺乳類細胞とを接触させるステップを含むことを特徴とする、哺乳類細胞を核酸でトランスフェクションする方法。
【請求項66】
前記ひとつもしくは複数の核酸分子が、高分岐ポリマーと複合化されていることを特徴とする、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記高分岐ポリマーが、第二樹状世代を末端とすることを特徴とする、請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記ひとつもしくは複数の核酸が、DNAを含むことを特徴とする、請求項65記載の方法。
【請求項69】
前記ひとつもしくは複数の核酸が、RNAを含むことを特徴とする、請求項65記載の方法。
【請求項70】
前記メソポーラス珪酸塩の前記表面もしくは孔のキャップと会合している、細胞ターゲッティング基をさらに含むことを特徴とする、請求項65記載の方法。
【請求項71】
前記細胞ターゲッティング基が、抗体、DNAアプタマーもしくはRNAアプタマー、糖、蛋白質、またはポリペプチドであることを特徴とする、請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記DNAが、前記物体が搬送される前記細胞に対して内在性であることを特徴とする、請求項68記載の方法。
【請求項73】
前記DNA分子が、プラスミド上に在ることを特徴とする、請求項68記載の方法。
【請求項74】
前記DNAが、前記物体が搬送される前記細胞に対して内在性である蛋白質をコードしている少なくともひとつの領域を含むことを特徴とする、請求項68記載の方法。
【請求項75】
前記DNAが、前記パーティクル表面に連結しているひとつもしくは複数のデンドリマーによって、前記メソポーラス珪酸塩と複合化されていることを特徴とする、請求項68記載の方法。
【請求項76】
前記DNAが、前記メソポーラス珪酸塩の孔に連結しているひとつもしくは複数のデンドリマーによって、前記メソポーラス珪酸塩と複合化されていることを特徴とする、請求項74記載の方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図12H】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図13G】
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【図13H】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図17F】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33A】
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【図33B】
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【図33C】
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【図34A】
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【図34B】
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【図34C】
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【図35A】
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【図35B】
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【図1】
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【図23】
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【公表番号】特表2006−528194(P2006−528194A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521210(P2006−521210)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/023468
【国際公開番号】WO2005/009602
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506021204)アイオワ ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション,インク. (2)
【氏名又は名称原語表記】IOWA STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION,INC.
【Fターム(参考)】