説明

キャブ支持構造

【課題】防振マウントを取り付けるべき対象部材の下方のクリアランスが防振マウントの全長より狭い場合に対応できるキャブ支持構造を提供する。
【解決手段】取付軸23及びリテーナ24を開口に挿通して、防振マウント30の上面をストッパプレート31の下面に当接させる。防振マウント30を直立し且つ第1、第2の突起34,35がフレーム上側部材2よりも下方に位置する状態で、防振マウント30とストッパプレート31を横向きに移動させて、取付軸23及びリテーナ24をフレーム上側部材2のスリット37に入れる。防振マウント30とストッパプレート31を持ち上げて、第1の突起34をスリット37に嵌め込むとともに、第2の突起35を孔38に嵌め込んで、フレーム上側部材2、ストッパプレート31及び防振マウント30を、ボルトとナットで締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャブ支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの建設機械の多くは、クローラを装備した自走可能な走行体の上部に旋回フレームを搭載し、該旋回フレームに作業用のアタッチメント及びオペレータが搭乗するキャブを取り付けている。
【0003】
図15は従来のキャブ支持構造の一例を示すもので、建設機械の旋回フレーム1は、フレーム上側部材2と、フレーム下側部材3と、両部材2,3間に介在するフレーム中間部材4とで一体的に構成されている。旋回フレーム1に取り付けるキャブ5の下縁には、横向きに突出する複数の連結部材6が設けてあり、フレーム上側部材2及び連結部材6に上下に同軸に貫通する孔7,8を穿設している。
【0004】
フレーム上側部材2とフレーム下側部材3とで挟まれる空間9に、環状の防振ゴム10及びワッシャ11を上方から下方に向けて順に配置し、フレーム上側部材2の孔7、防振ゴム10及びワッシャ11に上方から長ねじボルト12を挿通し、該長ねじボルト12の下端部にナット13,14を螺合して、防振ゴム10及びワッシャ11の脱落を防止している。
【0005】
長ねじボルト12にその上端からワッシャ15、環状の防振ゴム16及びワッシャ17を順に外嵌させた後、孔8に長ねじボルト12の上端部が嵌まるように連結部材6を前記ワッシャ17に載せ、キャブ5の荷重を旋回フレーム1に負担させている。
【0006】
長ねじボルト12にその上端からワッシャ18及びスプリングワッシャ19を順に外嵌させ、長ねじボルト12の上端部にナット20を螺合するとともに、該ナット20を締め付けて、キャブ5を防振マウントに締結している。
【0007】
フレーム上側部材2を防振ゴム10,16で挟み、該防振ゴム10,16に連結部材6を長ねじボルト12及びナット13,14,20によって締結した従来のキャブ支持構造では、アタッチメントの作動や走行体の移動に伴う振動が、旋回フレーム1からキャブ5に伝わることを充分に抑制することができなかった。
【0008】
そこで、オイルダンパと同様に粘性液体が断面積が小さい流路を通る際の抵抗で減衰力を得る液体封入式の防振マウントをキャブ支持構造に用いることも既に提案されている。
【0009】
図16は液体封入式の防振マウントの一例を示すもので、上端が開口し且つ水平断面が円形のケーシング21と、該ケーシング21内に昇降可能に配置した可動板22と、該可動板22から上方へ延びる取付軸23と、該取付軸23に外嵌した筒状のリテーナ24と、前記ケーシング21に内接し且つリテーナ24に外嵌する弾性体25と、外縁部分が前記ケーシング21の上端に固着され且つ内縁部分が上方から弾性体25に食い込む環状の封鎖部材26と、前記ケーシング21の内面及び弾性体25の下面により囲まれる空間に封入した粘性液体27とで構成され、前記取付軸23の先端部には、ナット28が螺合される。これら部材のうち、弾性体25はゴムを素材とし、それ以外の部材は金属を素材としている。
【0010】
可動板22は円板状で、その外径はケーシング21の内径よりも小さく、可動板22の外周面とケーシング21の内周面の間に、可動板22の昇降に伴って粘性液体27が流通する空隙29を形成している。従って、取付軸23が下方へ付勢されると、可動板22の下側の粘性液体27が空隙29を通って可動板22の上側へ移動する。取付軸23が上方へ付勢されると、可動板22の上側の粘性液体27が空隙29を通って可動板22の下側へ移動する。そして、空隙29が粘性液体27の流通の抵抗となって、取付軸23の上下方向への移動を減衰させることになる。
【0011】
旋回フレームからキャブへ伝達される振動を防振ゴムだけで抑制するようにしたキャブ支持構造を開示した先行技術文献としては、下記の特許文献1があり、旋回フレームからキャブへ伝達される振動を液体封入式の防振マウントを用いて抑制するようにしたキャブ支持構造を開示した先行技術文献としては、下記の特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平09−088124号公報
【特許文献2】特開2004−308688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図16に示す防振マウントを図15に示す旋回フレーム1に取り付けようとすると、フレーム上側部材2とフレーム下側部材3の間隔A(図15参照)に比べると、ケーシング21の底面から取付軸23の上端面までの長さB(図16参照)が長いので、取付軸23が直立した姿勢の防振マウントを、フレーム上側部材2とフレーム下側部材3の間に入れられず、従って、フレーム上側部材2の下方から上方へ向けて取付軸23及びリテーナ24を貫通させてケーシング21をフレーム上側部材2の下面に取り付けることができない。
【0014】
つまり、防振マウントを下面に取り付けようとするフレーム構成部材(フレーム上側部材2)とその下方に位置している構造物(フレーム下側部材3)の間隔が、防振マウントの全長である前記長さBよりも短く、フレーム構成部材下方のクリアランスが不充分だと、ケーシング21をフレーム構成部材の下側に装着することができない。
【0015】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、防振マウントを取り付けるべきフレーム構成部材下方のクリアランスが防振マウントの全長より狭い場合に対応できるキャブ支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のキャブ支持構造は、取付軸がケーシングから上方に向けて前進後退可能に突出する防振マウントと、該防振マウントの上方に位置し且つ前記取付軸が挿通される開口を有するストッパプレートと、該ストッパプレートの上面に形成され且つストッパプレート外縁から開口内縁へと直線的に延びる第1の突起とを備え、前記ストッパプレートの上方に位置するフレーム構成部材に、前記取付軸が径方向に移動して入り且つストッパプレートの第1の突起が嵌り込むスリットを形成し、前記フレーム構成部材、ストッパプレート、及び防振マウントのケーシングを相互に締結し、防振マウントの取付軸にキャブ構成部材を締結している。
【0017】
請求項2に記載のキャブ支持構造は、リテーナが外嵌した取付軸がケーシングから上方に向けて前進後退可能に突出する防振マウントと、該防振マウントの上方に位置し且つ前記リテーナが外嵌した取付軸が挿通される開口を有するストッパプレートと、該ストッパプレートの上面に形成され且つストッパプレート外縁から開口内縁へと直線的に延びる第1の突起とを備え、前記ストッパプレートの上方に位置するフレーム構成部材に、前記リテーナが外嵌した取付軸が径方向に移動して入り且つストッパプレートの第1の突起が嵌り込むスリットを形成し、前記フレーム構成部材、ストッパプレート、及び防振マウントのケーシングを相互に締結し、前記リテーナに防振ゴムを外嵌させ、防振マウントの取付軸にキャブ構成部材を締結して、該キャブ構成部材と前記フレーム構成部材で防振ゴムを挟持している。
【0018】
請求項3に記載のキャブ支持構造は、ストッパプレートの上面に第2の突起を形成し、フレーム構成部材に、ストッパプレートの第2の突起が嵌り込む孔を形成している。
【0019】
請求項4に記載のキャブ支持構造は、フレーム構成部材の上面に、キャブ構成部材に向けて突出する受部を設けている。
【0020】
請求項5に記載のキャブ支持構造は、フレーム構成部材の上面に、防振ゴムを周方向に取り囲み且つキャブ構成部材に向けて突出する受部を設けている。
【0021】
請求項6に記載のキャブ支持構造は、取付軸がケーシングから上方に向けて前進後退可能に突出する防振マウントと、該防振マウントの上方に位置し且つ前記取付軸が挿通される開口を有するストッパプレートと、該ストッパプレートの下面に形成され且つストッパプレート外縁から開口内縁へと直線的に延びる第1の突起とを備え、前記防振マウントとストッパプレートとの間に位置するフレーム構成部材に、防振マウントの取付軸が径方向に移動して入り且つストッパプレートの第1の突起が嵌り込むスリットを形成し、前記ストッパプレート、フレーム構成部材、及び防振マウントのケーシングを相互に締結し、防振マウントの取付軸にキャブ構成部材を締結している。
【0022】
請求項7に記載のキャブ支持構造は、リテーナを外嵌した取付軸がケーシングから上方に向けて前進後退可能に突出する防振マウントと、該防振マウントの上方に位置し且つ前記取付軸が挿通される開口を有するストッパプレートと、該ストッパプレートの下面に形成され且つストッパプレート外縁から開口内縁へと直線的に延びる第1の突起とを備え、前記防振マウントとストッパプレートとの間に位置するフレーム構成部材に、前記リテーナが外嵌した取付軸が径方向に移動して入り且つストッパプレートの第1の突起が嵌り込むスリットを形成し、前記ストッパプレート、フレーム構成部材、及び防振マウントのケーシングを相互に締結し、前記リテーナに防振ゴムを外嵌させ、防振マウントの取付軸にキャブ構成部材を締結して、該キャブ構成部材と前記ストッパプレートで防振ゴムを挟持している。
【0023】
請求項8に記載のキャブ支持構造は、ストッパプレートの下面に第2の突起を形成し、フレーム構成部材に、ストッパプレートの第2の突起が嵌り込む孔を形成している。
【0024】
請求項9に記載のキャブ支持構造は、ストッパプレートの上面に、キャブ構成部材に向けて突出する受部を設けている。
【0025】
請求項10に記載のキャブ支持構造は、ストッパプレートの上面に、防振ゴムを周方向に取り囲み且つキャブ構成部材に向けて突出する受部を設けている。
【発明の効果】
【0026】
本発明のキャブ支持構造によれば、下記のような優れた作用効果を奏し得る。
【0027】
(1)請求項1〜10に記載のキャブ支持構造のいずれにおいても、防振マウントに付帯するストッパプレートが取り付けられるフレーム構成部材に、取付軸、もしくはリテーナが外嵌した取付軸が径方向に移動して入るスリットを形成しているので、前記フレーム構成部材下方のクリアランスに比べて、防振マウントの全長が長くても、防振マウントをフレーム構成部材に装着することができる。
【0028】
(2)請求項3、8に記載のキャブ支持構造のいずれにおいても、防振マウント、ストッパプレート及びフレーム上側部材を締結する部材が損傷したとしても、防振マウントの取付軸がストッパプレートの開口に挿通されているとともに、該ストッパプレートの第2の突起がフレーム上側部材の孔に嵌り込んでいるため、防振マウントの取付軸が対象部材のスリットに沿って横向きに抜け出すことがない。よって、車両系建設機械が転倒した場合にオペレータを守るための規格であるROPS(Roll-Over Protective Structure)規格の試験時に、キャブに横向きの大きな力を与えても、旋回フレームからキャブが離脱することを防げる。
【0029】
(3)請求項4、5、9、10に記載のキャブ支持構造のいずれにおいても、横向きの大きな力を受けたキャブが傾いて受部にキャブ構成部材の下面が接触すると、キャブが大きく傾くことが抑制されるので、防振マウントのハウジング、ストッパプレート、及びフレーム構成部材を相互に締結している部材や防振マウントに過大な力が作用しない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のキャブ支持構造の第1の例を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II矢視図である。
【図3】フレーム上側部材を透視した図2のIII−III矢視図である。
【図4】図3に関連するストッパプレートの平面図である。
【図5】図4のV−V矢視図である。
【図6】図3に関連するフレーム上側部材の平面図である。
【図7】本発明のキャブ支持構造の第2の例を示す縦断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII矢視図である。
【図9】図7に関連するストッパプレートの底面図である。
【図10】図9のX−X矢視図である。
【図11】本発明のキャブ支持構造の第3の例を示す部分切断外形図である。
【図12】図11に関連する横倒れ規制部材の平面図である。
【図13】本発明のキャブ支持構造の第4の例を示す部分切断外形図である。
【図14】図13に関連するストッパプレートの平面図である。
【図15】従来のキャブ支持構造の一例を示す縦断面図である。
【図16】液体封入式の防振マウントの一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0032】
図1〜図6は本発明のキャブ支持構造の第1の例を示すもので、防振マウント30、ストッパプレート31、及び防振ゴム32を備えており、防振マウント30は、図16に示すものと同様な構成となっている。また、図中、図15と共通の符号を付したところは、同一物を表している。このキャブ支持構造は、請求項1〜3に対応するものである。
【0033】
ストッパプレート31は、防振マウント30の取付軸23及びリテーナ24が挿通される開口33を有し且つ下面がケーシング21に付帯の弾性体25及び封鎖部材26に当接する。ストッパプレート31の上面には、その外縁から開口33内縁へと直線的に延びる第1の突起34と、該第1の突起34とは独立した第2の突起35が形成されている。また、第1、第2の突起34,35が形成されていない個所には、ストッパプレート31を上下に貫通する複数のボルト孔36が穿設されている。このストッパプレート31は金属を素材としている。
【0034】
取付軸23及びリテーナ24を開口33に挿通して、防振マウント30の弾性体25及び封鎖部材26をストッパプレート31の下面に当接させた状態におけるケーシング21の底面から第1、第2の突起34,35の上面までの長さCは、フレーム上側部材2とフレーム下側部材3の間隔Aに比べて短い。
【0035】
防振マウント30を取り付ける旋回フレーム1のフレーム上側部材2には、防振マウント30の取付軸23及びリテーナ24が径方向に移動して入り且つストッパプレート31の第1の突起34が嵌り込むスリット37と、ストッパプレート31の第2の突起35が嵌り込む孔38が穿設されている。図1では、孔38に嵌り込んだ第2の突起35の上面がフレーム上側部材2の上面に連なっているが、第2の突起35を低く形成してその上面が孔38内部に位置するようにしてもよい。
【0036】
防振マウント30のケーシング21及びフレーム上側部材2にも、前記ボルト孔36に対応するように複数のボルト孔39,40が穿設されており、前記ケーシング21、ストッパプレート31及びフレーム上側部材2は、ボルト孔39,36,40に挿通されたボルト41と、該ボルト41に螺合して締め付けられたナット42によって相互に締結されている。また、ケーシング21とフレーム上側部材2とをボルトによって締結したうえ、ストッパプレート31とフレーム上側部材2とを別のボルトによって締結するようにしてもよい。
【0037】
フレーム上側部材2に対して、防振マウント30及びストッパプレート31を締結する際には、取付軸23及びリテーナ24を開口33に挿通して、防振マウント30の弾性体25及び封鎖部材26をストッパプレート31の下面に当接させる。次いで、防振マウント30を直立した姿勢とし、第1、第2の突起34,35がフレーム上側部材2よりも下方に位置する状態で、防振マウント30とストッパプレート31を横向きに移動させて、取付軸23及びリテーナ24をフレーム上側部材2のスリット37に入れる。更に、防振マウント30とストッパプレート31を持ち上げて、第1の突起34をスリット37に嵌め込むとともに、第2の突起35を孔38に嵌め込んで、フレーム上側部材2、ストッパプレート31及び防振マウント30を、ボルト41とナット42で締結する。
【0038】
防振ゴム32は、防振マウント30のリテーナ24に外嵌して、フレーム上側部材2の上面とストッパプレート31の第1、第2の突起34,35の上面に当接する形状を有している。また、キャブ構成部材43には、防振マウント30の取付軸23が挿通可能な孔44が穿設されている。キャブ構成部材43は、先に述べた連結部材6(図15参照)であってもよく、キャブ床板であってもよい。
【0039】
防振マウント30の取付軸23の上端からリテーナ24に対して防振ゴム32を外嵌させるとともに、取付軸23にその上端からワッシャ45を外嵌させた後、孔44に取付軸23の上端部が嵌るようにキャブ構成部材43を前記ワッシャ45に載せ、キャブ全体の荷重を旋回フレーム1に負担させている。
【0040】
更に、防振マウント30の取付軸23にその上端からワッシャ46を外嵌させ、取付軸23の上端部にナット28を螺合するとともに、該ナット28を締め付けて、キャブを防振マウント30に締結している。そして、防振マウント30及び防振ゴム32は、アタッチメントの作動や走行体の移動に伴う振動が、旋回フレーム1からキャブに伝わることを抑制する。
【0041】
図1〜図6に示すキャブ支持構造では、フレーム上側部材2に防振マウント30の取付軸23及びリテーナ24が径方向に移動して入るスリット37を形成し、防振マウント30のケーシング21の底面からストッパプレート31の第1、第2の突起34,35の上面までの長さCが、フレーム上側部材2とフレーム下側部材3の間隔Aに比べて短いので、フレーム上側部材2とフレーム下側部材3の間隔A(防振マウント30を取り付けるべき対象部材の下方のクリアランス)に比べて、防振マウント30のケーシング21の底面から取付軸23の上端面までの長さB(防振マウント30の全長)が長くても、防振マウント30をフレーム上側部材2に取り付けることができる。
【0042】
また仮に、防振マウント30、ストッパプレート31及びフレーム上側部材2を締結しているボルト41が損傷したとしても、防振マウント30の取付軸23及びリテーナ24がストッパプレート31の開口33に挿通されているとともに、該ストッパプレート31の第2の突起35がフレーム上側部材2の孔38に嵌り込んでいるため、防振マウント30の取付軸23及びリテーナ24がフレーム上側部材2のスリット37に沿って横向きに抜け出すことがない。
【0043】
よって、車両系建設機械が転倒した場合にオペレータを守るための規格であるROPS(Roll-Over Protective Structure)規格の試験時に、キャブに横向きの大きな力を与えても、旋回フレーム1からキャブが離脱することを防げる。
【0044】
図7〜図10は本発明のキャブ支持構造の第2の例を示すもので、防振マウント30、ストッパプレート47、及び防振ゴム32を備えており、図中、図1〜図6と同一の符号を付した部分は同一物を表している。このキャブ支持構造は、請求項6〜8に対応するものである。
【0045】
ストッパプレート47は、先に述べたストッパプレート31(図1〜図5参照)を上下反転させた形状であって、防振マウント30の取付軸23及びリテーナ24が挿通される開口48を有し且つ下面がフレーム上側部材2の上面に当接する。ストッパプレート47の下面には、その外縁から開口48内縁へと直線的に延びてフレーム上側部材2のスリット37に嵌り込む第1の突起49と、該第1の突起49とは独立してフレーム上側部材2の孔38に嵌り込む第2の突起50が形成されている。また、第1、第2の突起49,50が形成されていない個所には、ストッパプレート47を上下に貫通する複数のボルト孔51が穿設されている。このストッパプレート47は金属を素材としている。
【0046】
ストッパプレート47のボルト孔51は、防振マウント30のケーシンパプレート31及びフレーム上側部材2のボルト孔39,40に対応しており、ケーシング21、フレーム上側部材2及びストッパプレート47、ボルト孔39,40,51に挿通されたボルト41と、該ボルト41に螺合して締め付けられたナット42によって相互に締結されている。
【0047】
フレーム上側部材2に対して、防振マウント30及びストッパプレート47を締結する際には、取付軸23及びリテーナ24を開口48に挿通する。次いで、防振マウント30を直立した姿勢とし、第1、第2の突起34,35がフレーム上側部材2よりも上方に位置し且つケーシング21がフレーム上側部材2よりも下方に位置する状態で、防振マウント30とストッパプレート47を横向きに移動させて、取付軸23及びリテーナ24をフレーム上側部材2のスリット37に入れる。更に、ストッパプレート47を下げて、第1の突起49をスリット37に嵌め込むとともに、第2の突起50を孔38に嵌め込んで、ストッパプレート47、フレーム上側部材2及び防振マウント30を、ボルト41とナット42で締結する。
【0048】
この後、防振マウント30の取付軸23の上端からリテーナ24に対して防振ゴム32を外嵌させることにより、当該防振ゴム32をストッパプレート47に載せ、図1〜図6に示すキャブ支持構造と同様な手順によってキャブを防振マウント30に締結する。そして、防振マウント30及び防振ゴム32は、アタッチメントの作動や走行体の移動に伴う振動が、旋回フレーム1からキャブに伝わることを抑制する。
【0049】
また仮に、防振マウント30、ストッパプレート47及びフレーム上側部材2を締結しているボルト41が損傷したとしても、防振マウント30の取付軸23及びリテーナ24がストッパプレート47の開口48に挿通されているとともに、該ストッパプレート47の第2の突起50がフレーム上側部材2の孔38に嵌り込んでいるため、防振マウント30の取付軸23及びリテーナ24がフレーム上側部材2のスリット37に沿って横向きに抜け出すことがない。
【0050】
よって、車両系建設機械が転倒した場合にオペレータを守るための規格であるROPS(Roll-Over Protective Structure)規格の試験時に、キャブに横向きの大きな力を与えても、旋回フレーム1からキャブが離脱することを防げる。
【0051】
図11、図12は本発明のキャブ支持構造の第3の例を示すもので、防振マウント30、ストッパプレート31、防振ゴム32、及び横倒れ規制部材52を備えており、図中、図1〜図6と同一の符号を付した部分は同一物を表している。このキャブ支持構造は、請求項4、5に対応するものである。
【0052】
横倒れ規制部材52は、中心部分に防振ゴム32が入る開口53を有し且つ下面がフレーム上側部材12の上面に当接する。横倒れ規制部材52の上面には、その外縁全周からキャブ構成部材43側へ突出する環状の受部54が形成されている。また、受部54が形成されていない個所には、横倒れ規制部材52を上下に貫通する複数のボルト孔55が穿設されている。この横倒れ規制部材52は金属を素材としている。
【0053】
横倒れ規制部材52のボルト孔55は、防振マウント30のケーシング21、ストッパプレート31及びフレーム上側部材2のボルト孔39,36,40に対応しており、ケーシング21、ストッパプレート31、フレーム上側部材2及び横倒れ規制部材52は、ボルト孔39,36,40,55に挿通されたボルト41と、該ボルト41に螺合して締め付けられたナット42によって相互に締結されている。
【0054】
フレーム上側部材2に対して、防振マウント30、ストッパプレート31、及び横倒れ規制部材52を締結する際には、取付軸23及びリテーナ24(図1、図3参照)を開口33に挿通して、防振マウント30の弾性体25及び封鎖部材26(図1参照)をストッパプレート31の下面に当接させる。次いで、防振マウント30を直立した姿勢とし、第1、第2の突起34,35(図2〜図5参照)がフレーム上側部材2よりも下方に位置する状態で、防振マウント30とストッパプレート31を横向きに移動させて、取付軸23及びリテーナ24をフレーム上側部材2のスリット37に入れる。更に、防振マウント30とストッパプレート31を持ち上げて、第1の突起34をスリット37に嵌め込むとともに、第2の突起35を孔38(図3、図6参照)に嵌め込んだうえ、横倒れ規制部材52をフレーム上側部材2の上面に載せ、横倒れ規制部材52、フレーム上側部材2、ストッパプレート31及び防振マウント30を、ボルト41とナット42で締結する。
【0055】
この後、防振マウント30の取付軸23の上端からリテーナ24(図1、図3参照)に対して防振ゴム32を外嵌させることにより、当該防振ゴム32をフレーム上側部材2に載せ、図1〜図6に示すキャブ支持構造と同様な手順によってキャブを防振マウント30に締結する。そして、防振マウント30及び防振ゴム32は、アタッチメントの作動や走行体の移動に伴う振動が、旋回フレーム1からキャブに伝わることを抑制する。
【0056】
キャブが横向きの大きな力を受け、旋回フレーム1に対して傾き始めると、横倒れ規制部材52の受部54にキャブ構成部材43の下面が部分的に接触し、キャブが大きく傾くことを抑制する。これにより、防振マウント30やボルト41に過大な力が作用しない。また、受部54は環状であるので、キャブの傾きが前後左右のいずれであっても対応できる。受部の形状は、図11、図12に示す環状に限定されるものではない。例えば、枠状の受部を用いて防振ゴム30を取り囲むようにしてもよく、あるいは、ブロック状の受部を防振ゴム30の周囲に複数配置してもよい。更には、特定方向へのキャブの傾きを抑制する場合は、キャブが傾く側だけに受部を設ければよい。
【0057】
図13、図14は本発明のキャブ支持構造の第4の例を示すもので、防振マウント30、横倒れ規制部材を兼ねたストッパプレート56、及び防振ゴム32を備えており、図中、図7〜図10と同一の符号を付した部分は同一物を表している。このキャブ支持構造は、請求項9、10に対応するものである。
【0058】
ストッパプレート56は、防振マウント30の取付軸23及びリテーナ24(図1、図3参照)が挿通される開口57を有し且つ下面がフレーム上側部材2の上面に当接する。ストッパプレート56の下面には、その外縁から開口57内縁へと直線的に延びてフレーム上側部材2のスリット37に嵌り込む第1の突起58と、該第1の突起58とは独立してフレーム上側部材2の孔38(図3、図6参照)に嵌り込む第2の突起59が形成されている。ストッパプレート56の上面には、その外縁全周からキャブ構成部材43側へ突出する環状の受部60が形成されている。また、第1、第2の突起58,59が形成されていない個所には、ストッパプレート56を上下に貫通する複数のボルト孔61が穿設されている。このストッパプレート56は金属を素材としている。
【0059】
ストッパプレート56のボルト孔61は、防振マウント30のケーシング21及びフレーム上側部材2のボルト孔39,40に対応しており、ケーシング21、フレーム上側部材2及びストッパプレート56は、ボルト孔39,36,40,61に挿通されたボルト41と、該ボルト41に螺合して締め付けられたナット42によって相互に締結されている。
【0060】
フレーム上側部材2に対して、防振マウント30及びストッパプレート56を締結する際には、取付軸23及びリテーナ24(図1、図3参照)を開口57に挿通する。次いで、防振マウント30を直立した姿勢とし、第1、第2の突起58,59がフレーム上側部材2よりも上方に位置し且つケーシング21がフレーム上側部材2よりも下方に位置する状態で、防振マウント30とストッパプレート56を横向きに移動させて、取付軸23及びリテーナ24(図1、図3参照)をフレーム上側部材2のスリット37に入れる。更に、ストッパプレート56を下げて、第1の突起58をスリット37に嵌め込むとともに、第2の突起59を孔38(図3、図6参照)に嵌め込んで、ストッパプレート56、フレーム上側部材2及び防振マウント30を、ボルト41とナット42で締結する。
【0061】
この後、防振マウント30の取付軸23の上端からリテーナ24(図1、図3参照)に対して防振ゴム32を外嵌させることによりフレーム上側部材2をストッパプレート56に載せ、図1〜図6に示すキャブ支持構造と同様な手順によってキャブを防振マウント30に締結する。そして、防振マウント30及び防振ゴム32は、アタッチメントの作動や走行体の移動に伴う振動が、旋回フレーム1からキャブに伝わることを抑制する。
【0062】
キャブが横向きの大きな力を受け、旋回フレーム1に対して傾き始めると、ストッパプレート56の受部60にキャブ構成部材43の下面が部分的に接触し、キャブが大きく傾くことを抑制する。これにより、防振マウント30やボルト41に過大な力が作用しない。また、受部60は環状であるので、キャブの傾きが前後左右のいずれであっても対応できる。受部の形状は、図13、図14に示す環状に限定されるものではない。例えば、枠状の受部を用いて防振ゴム30を取り囲むようにしてもよく、あるいは、ブロック状の受部を防振ゴム30の周囲に複数配置してもよい。更には、特定方向へのキャブの傾きを抑制する場合は、キャブが傾く側だけに受部を設ければよい。
【0063】
なお、本発明のキャブ支持構造は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
2 フレーム上側部材(フレーム構成部材)
21 ケーシング
23 取付軸
24 リテーナ
30 防振マウント
31,47,56 ストッパプレート
32 防振ゴム
33,48,57 開口
34,49,58 第1の突起
35,50,59 第2の突起
37 スリット
38 孔
43 キャブ構成部材
54,60 受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付軸がケーシングから上方に向けて前進後退可能に突出する防振マウントと、
該防振マウントの上方に位置し且つ前記取付軸が挿通される開口を有するストッパプレートと、
該ストッパプレートの上面に形成され且つストッパプレート外縁から開口内縁へと直線的に延びる第1の突起とを備え、
前記ストッパプレートの上方に位置するフレーム構成部材に、前記取付軸が径方向に移動して入り且つストッパプレートの第1の突起が嵌り込むスリットを形成し、
前記フレーム構成部材、ストッパプレート、及び防振マウントのケーシングを相互に締結し、
防振マウントの取付軸にキャブ構成部材を締結したことを特徴とするキャブ支持構造。
【請求項2】
リテーナが外嵌した取付軸がケーシングから上方に向けて前進後退可能に突出する防振マウントと、
該防振マウントの上方に位置し且つ前記リテーナが外嵌した取付軸が挿通される開口を有するストッパプレートと、
該ストッパプレートの上面に形成され且つストッパプレート外縁から開口内縁へと直線的に延びる第1の突起とを備え、
前記ストッパプレートの上方に位置するフレーム構成部材に、前記リテーナが外嵌した取付軸が径方向に移動して入り且つストッパプレートの第1の突起が嵌り込むスリットを形成し、
前記フレーム構成部材、ストッパプレート、及び防振マウントのケーシングを相互に締結し、
前記リテーナに防振ゴムを外嵌させ、
防振マウントの取付軸にキャブ構成部材を締結して、該キャブ構成部材と前記フレーム構成部材で防振ゴムを挟持したことを特徴とするキャブ支持構造。
【請求項3】
ストッパプレートの上面に第2の突起を形成し、
フレーム構成部材に、ストッパプレートの第2の突起が嵌り込む孔を形成した請求項1あるいは請求項2のいずれかに記載のキャブ支持構造。
【請求項4】
フレーム構成部材の上面に、キャブ構成部材に向けて突出する受部を設けた請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のキャブ支持構造。
【請求項5】
フレーム構成部材の上面に、防振ゴムを周方向に取り囲み且つキャブ構成部材に向けて突出する受部を設けた請求項2あるいは請求項3のいずれかに記載のキャブ支持構造。
【請求項6】
取付軸がケーシングから上方に向けて前進後退可能に突出する防振マウントと、
該防振マウントの上方に位置し且つ前記取付軸が挿通される開口を有するストッパプレートと、
該ストッパプレートの下面に形成され且つストッパプレート外縁から開口内縁へと直線的に延びる第1の突起とを備え、
前記防振マウントとストッパプレートとの間に位置するフレーム構成部材に、防振マウントの取付軸が径方向に移動して入り且つストッパプレートの第1の突起が嵌り込むスリットを形成し、
前記ストッパプレート、フレーム構成部材、及び防振マウントのケーシングを相互に締結し、
防振マウントの取付軸にキャブ構成部材を締結したことを特徴とするキャブ支持構造。
【請求項7】
リテーナを外嵌した取付軸がケーシングから上方に向けて前進後退可能に突出する防振マウントと、
該防振マウントの上方に位置し且つ前記取付軸が挿通される開口を有するストッパプレートと、
該ストッパプレートの下面に形成され且つストッパプレート外縁から開口内縁へと直線的に延びる第1の突起とを備え、
前記防振マウントとストッパプレートとの間に位置するフレーム構成部材に、前記リテーナが外嵌した取付軸が径方向に移動して入り且つストッパプレートの第1の突起が嵌り込むスリットを形成し、
前記ストッパプレート、フレーム構成部材、及び防振マウントのケーシングを相互に締結し、
前記リテーナに防振ゴムを外嵌させ、
防振マウントの取付軸にキャブ構成部材を締結して、該キャブ構成部材と前記ストッパプレートで防振ゴムを挟持したことを特徴とするキャブ支持構造。
【請求項8】
ストッパプレートの下面に第2の突起を形成し、
フレーム構成部材に、ストッパプレートの第2の突起が嵌り込む孔を形成した請求項1あるいは請求項2のいずれかに記載のキャブ支持構造。
【請求項9】
ストッパプレートの上面に、キャブ構成部材に向けて突出する受部を設けた請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のキャブ支持構造。
【請求項10】
ストッパプレートの上面に、防振ゴムを周方向に取り囲み且つキャブ構成部材に向けて突出する受部を設けた請求項2あるいは請求項3のいずれかに記載のキャブ支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−202724(P2011−202724A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69701(P2010−69701)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000198293)IHI建機株式会社 (96)
【Fターム(参考)】