説明

キャリアアグリゲーションを用いた無線端末の基地局選択方法、無線端末、アクセスポイント及びプログラム

【課題】無線端末が、広域無線ネットワークを介した基地局と、狭域無線ネットワークを介したアクセスポイントとを用いてキャリアアグリゲーション方式を実行する場合、スループットが最大となり且つ伝搬障害に強くする通信経路を構成する方法等を提供する。
【解決手段】無線端末は、広域無線ネットワークを介して送受信するデータと、狭域無線ネットワークを介して送受信するデータとを、1つのセッションとして集束して送受信するキャリアアグリゲーション部を有する。無線端末が、アクセスポイントが広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、当該アクセスポイント又は他の装置から取得する第1のステップと、無線端末が、第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対して、広域無線ネットワークを介して接続する第2のステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末と基地局との間におけるキャリアアグリゲーション(Carrier aggregation)の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信事業者側ネットワークとして、高速移動無線アクセスサービスを実現するために、セルラシステムの流れを持つLTE(Long Term Evolution)-Advancedや、固定無線アクセスシステムの流れを持つWiMAX2(Worldwide Interoperability for Microwave Access、IEEE802.16m)が注目されてきている。これら技術には、複数の周波数帯域を束ねて広い帯域幅を確保する「マルチキャリア」方式や「キャリアアグリゲーション」方式を適用することができる。
【0003】
「マルチキャリア」方式によれば、1つの無線端末と1つの基地局との間で、複数の異なる搬送波(周波数キャリア)を束ねて広い帯域幅を確保することができる。無線端末は、送信データを複数に分割し、分割された各送信データを異なる搬送波に変調して1つの基地局へ同時に送信する。この場合、基地局が、複数の搬送波に基づくデータを統合する。また、「キャリアアグリゲーション」方式によれば、1つの無線端末と複数の基地局との間で、複数の無線ルートを束ねて広い帯域幅を確保することができる。無線端末は、送信データを複数に分割し、分割された各送信データを異なる基地局へ同時に送信する。この場合、広域無線ネットワークの通信事業者ネットワーク内に、これら異なる基地局を経由した複数のデータを統合するパケットゲートウェイを要する。これら2つの方式は、1つの送信データが複数の異なる搬送波又は無線回線を介して送信されるために、特定の周波数に影響する伝搬障害に強いという利点がある。
【0004】
また、「キャリアアグリゲーション」方式として、キャリア毎に、ハンドオーバ元の第1の基地局が、無線端末へ、ハンドオーバ先の第2の基地局へ移行するべきハンドオーバ命令を送信し、無線端末が、キャリア毎に、第2の基地局へハンドオーバする技術もある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、無線端末1が接続すべきキャリア毎の基地局を、通信事業者ネットワークから制御することができる。
【0005】
更に、「キャリアアグリゲーション」方式として、例えば、広域無線ネットワークとしてのWiMAXと、狭域無線ネットワークとして無線LANとを束ねて通信することもできる。これによって、更に広い帯域幅を確保することができる。但し、自側無線端末と相手方装置との間に、これら異なる無線ネットワークを経由した複数のデータを統合するパケットゲートウェイを要する。
【0006】
また、ユーザ側ネットワークとして、複数の無線端末を、アクセスポイントとしての1つ「モバイルルータ」の配下に収容する利用形態が多くなってきている。一般的なモバイルルータは、一方で無線LANを介して無線端末と接続すると共に、他方でWiMAXや3Gの広域無線ネットワークを介して基地局と接続する。例えばタブレット端末のような無線端末の場合、無線LANを介してモバイルルータに接続することによって、存在場所に拘わらず、インターネットに接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−097443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、無線端末は、直接的に広域無線ネットワークの基地局と接続すると共に、狭域無線ネットワークのアクセスポイント(又はモバイルルータ)と接続することによって、キャリアアグリゲーション方式を適用した通信をすることも想定できる。このとき、モバイルルータは、他方で広域無線ネットワークの基地局に接続されているとする。
【0009】
しかしながら、このとき、無線端末が直接的に広域無線ネットワークの基地局に接続すると共に、モバイルルータも同一の基地局に接続する場合、キャリアアグリゲーションにおける、スループット改善効果の最大化や、特定周波数に影響する伝搬障害に強いという利点が得られない。また、無線端末やモバイルルータは、検知した複数の基地局の中で最も無線品質が高い(例えば受信レベルが最も高い)基地局を選択するために、通常、同じ位置に居れば、同一の基地局を選択することとなる。
【0010】
そこで、本発明は、無線端末が、広域無線ネットワークを介した基地局と、狭域無線ネットワークを介したアクセスポイントとを用いてキャリアアグリゲーション方式を実行する場合、スループットが最大となるよう異なる搬送波又は無線回線による通信経路を構成し、且つ、伝搬障害に強くなるように通信経路を構成することができる無線端末の基地局選択方法、無線端末、アクセスポイント及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、
広域無線ネットワークに配置された複数の基地局と、
広域無線ネットワークと狭域無線ネットワークとの間でデータを中継するアクセスポイントと、
広域無線ネットワークを介して基地局と、狭域無線ネットワークを介してアクセスポイントとの両方と同時に通信可能な無線端末と
を有するシステムにおける無線端末の基地局選択方法であって、
無線端末は、広域無線ネットワークを介して送受信する第1のデータと、狭域無線ネットワークを介して送受信する第2のデータとを、1つのセッションとして集束して送受信するキャリアアグリゲーション部を有し、
無線端末が、アクセスポイントが広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、当該アクセスポイント又は他の装置から取得する第1のステップと、
無線端末が、第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対して、広域無線ネットワークを介して接続する第2のステップと
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の無線端末の基地局選択方法における他の実施形態によれば、
第1のステップの以前に、無線端末が、広域無線ネットワークを介して、第1の基地局識別子が付与された第1の基地局と既に接続している場合、
第2のステップについて、無線端末は、第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対してハンドオーバする
ことも好ましい。
【0013】
本発明の無線端末の基地局選択方法における他の実施形態によれば、
他の装置は、広域無線ネットワークを介して通信可能な基地局選択サーバであり、
第1のステップの以前に、無線端末が、広域無線ネットワークを介して、第1の基地局識別子が付与された第1の基地局と既に接続している場合、
アクセスポイントが、無線端末に対するアクセスポイント識別子と、第1の基地局識別子とを含む位置登録メッセージを、基地局選択サーバへ送信し、
第2のステップについて、無線端末が、基地局選択サーバから、アクセスポイントが接続している第1の基地局の第1の基地局識別子を受信する
ことも好ましい。
【0014】
本発明の無線端末の基地局選択方法における他の実施形態によれば、
広域無線ネットワークは、WiMAX、LTE又は3Gであり、
狭域無線ネットワークは、無線LAN又はBluetooth(登録商標)であり、
アクセスポイントは、モバイルルータ、又は、無線回線をバックホールとするホットスポット用アクセスポイントであることも好ましい。
【0015】
本発明の無線端末の基地局選択方法における他の実施形態によれば、
キャリアアグリゲーション部は、広域無線ネットワークを介して送受信する第1のデータと、狭域無線ネットワークを介して送受信する第2のデータとを、1つのセッションとして集束するために、SCTP(Stream Control Transmission Protocol)を用いることも好ましい。
【0016】
本発明の無線端末の基地局選択方法における他の実施形態によれば、
アクセスポイントは、モバイルルータであり、
モバイルルータは、広域無線ネットワークを介して第1の基地局及び第3の基地局の両方と同時に通信可能であり、
モバイルルータは、広域無線ネットワークを介して第1の基地局と送受信する第1のデータと、広域無線ネットワークを介して第3の基地局と送受信する第3のデータとを、1つのセッションとして集束して送受信するキャリアアグリゲーション部を有することも好ましい。
【0017】
本発明によれば、
広域無線ネットワークに配置された複数の基地局と、
広域無線ネットワークと狭域無線ネットワークとの間でデータを中継するアクセスポイントと
の両方と同時に通信可能な無線端末であって、
広域無線ネットワークを介して送受信する第1のデータと、狭域無線ネットワークを介して送受信する第2のデータとを、1つのセッションとして集束して送受信するキャリアアグリゲーション手段と、
アクセスポイントが広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、当該アクセスポイント又は他の装置から取得する基地局識別子取得手段と、
第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対して、広域無線ネットワークを介して接続する接続基地局選択手段と
を有することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、前述した無線端末と、広域無線ネットワークに配置された複数の基地局との間で、広域無線ネットワークと狭域無線ネットワークとの間でデータを中継するアクセスポイントであって、
無線端末へ、当該アクセスポイントが広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を送信する基地局識別子送信手段を有することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、
広域無線ネットワークに配置された複数の基地局と、
広域無線ネットワークと狭域無線ネットワークとの間でデータを中継するアクセスポイントと
の両方と同時に通信可能な無線端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
広域無線ネットワークを介して送受信する第1のデータと、狭域無線ネットワークを介して送受信する第2のデータとを、1つのセッションとして集束して送受信するキャリアアグリゲーション手段と、
アクセスポイントが広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、当該アクセスポイント又は他の装置から取得する基地局識別子取得手段と、
第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対して、広域無線ネットワークを介して接続する接続基地局選択手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の無線端末の基地局選択方法、無線端末、アクセスポイント及びプログラムによれば、無線端末が、広域無線ネットワークを介した基地局と、狭域無線ネットワークを介したアクセスポイントとを用いてキャリアアグリゲーション方式を実行する場合、スループットが最大となるよう異なる搬送波又は無線回線による通信経路を構成し、且つ、伝搬障害に強くなるように通信経路を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明におけるシステム構成図である。
【図2】本発明における第1のシーケンス図である。
【図3】本発明における第2のシーケンス図である。
【図4】本発明における第3のシーケンス図である。
【図5】本発明における第4のシーケンス図である。
【図6】本発明における無線端末の機能構成図である。
【図7】本発明における他の実施形態のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0024】
図1によれば、ユーザ操作可能な無線端末1は、広域無線ネットワークを介して基地局3と通信可能であると共に、狭域無線ネットワークを介してモバイルルータ2と通信可能である。無線端末1としては、例えば携帯電話機やスマートフォン、タブレット端末のようなものである。広域無線ネットワークは、例えばWiMAX、LTE又は3G(3rd Generation)であって、複数の基地局3を配置している。狭域無線ネットワークは、例えば無線LAN(Local Area Network)又はBluetoothである。
【0025】
また、図1によれば、ユーザは、無線端末1と共に、モバイルルータ2も所持しているとする。勿論、モバイルルータ2は、通信事業者によって運用管理される固定設置のホットスポット用アクセスポイントであって、無線回線によるバックホールを有するものであってもよい。モバイルルータ2は、狭域無線ネットワークを介して無線端末1に接続されると共に、広域無線ネットワークを介して基地局3に接続される。即ち、モバイルルータ2は、広域無線ネットワークと狭域無線ネットワークとの間で、ユーザデータを中継する。
【0026】
無線端末1は、広域無線ネットワークを介して基地局3と、狭域無線ネットワークを介してモバイルルータ2との両方と、同時に通信可能である。ここで、無線端末1は、広域無線ネットワークと、狭域無線ネットワークとを束ねたキャリアアグリゲーション機能を実行する。
【0027】
また、通信事業者によって運用管理される広域無線ネットワークのエッジ部分には、パケットゲートウェイ4が備えられている。パケットゲートウェイ4は、無線端末1のキャリアアグリゲーション機能に対向して、異なる基地局3を経由して受信された複数のデータを1つのデータに集束する。集束されたデータは、インターネットを介して相手先装置(サーバ)5へ転送される。逆に、相手先装置5から受信したデータは、宛先を無線端末1とする場合、そのデータを複数に分割し、各データを異なる基地局3を経由するべく送信する。
【0028】
更に、図1によれば、インターネットに、基地局選択サーバ6が接続されている。基地局選択サーバ6は、無線端末1及びモバイルルータ2からアクセスされ、狭域無線ネットワークにおけるアクセスポイント識別子に対応付けて、そのアクセスポイントに接続された基地局の基地局識別子を記憶する。
アクセスポイント識別子 <-> 基地局識別子
【0029】
ここで、基地局選択サーバ6は、具体的には更に、モバイルルータ(MR)1のMAC(Media Access Control)アドレスをアクセスポイント識別子に組み合わせて、基地局識別子を対応付けて記憶することも好ましい。
アクセスポイント識別子,MRのMACアドレス <-> 基地局識別子
【0030】
アクセスポイント識別子とは、無線LANの場合、具体的にはSSID(Service Set IDentifier)である。SSIDは、混信を避けるための最大32文字までの英数字であって、SSIDが一致する無線端末−アクセスポイント間でしか通信できないようにする。また、モバイルルータ2のMACアドレスは、具体的には48ビットの16進数である。更に、基地局識別子は、基地局に付与されたBSID(Base Station IDentifier)である。
【0031】
図2は、本発明における第1のシーケンス図である。
【0032】
(S21)モバイルルータ2は、第1の基地局3Aとの間で広域無線ネットワーク(例えばWiMAX)を介した通信を確立し、無線端末1は、モバイルルータ2との間で狭域無線ネットワーク(例えば無線LAN)を介した通信を確立している。これによって、無線端末1は、モバイルルータ2を介して広域無線ネットワークに接続し、インターネットを経由して相手先装置5と通信することができる。
尚、無線端末1は、通常、いずれの位置に存在しても、広域無線ネットワークの複数の基地局3からの電波を検出することができる。従って、無線端末1は、広域無線ネットワークを介して接続可能な複数の基地局3の基地局識別子を常に記憶することができる。
(S22)このとき、無線端末1で、キャリアアグリゲーションを開始すべきトリガが発生したとする。例えば、無線端末1と相手先装置5との間で、通信量が増大し、広い帯域幅の無線リソースが必要となった場合を想定する。
(S23)無線端末1は、モバイルルータ(アクセスポイント)2が広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、当該モバイルルータ2へ要求する。無線端末1は、基地局識別子要求メッセージを、モバイルルータ2へ送信する。
(S24)これに対し、モバイルルータ2は、当該モバイルルータ2が広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子(BSID1)を、無線端末1へ応答する。
(S25)ここで、無線端末1は、第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子を選択する。
(S26)無線端末1は、選択された第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対して、通信確立シーケンスを実行する。これによって、無線端末1は、無線LANを介してモバイルルータ2を経由して広域無線ネットワークの第1の基地局と通信すると共に、同時に、直接的に広域無線ネットワークの第2の基地局と通信することができる。
(S27)そして、無線端末1は、基地局3の広域無線ネットワークと、モバイルルータ2の狭域無線ネットワークとの両方を用いて、パケットゲートウェイ4との間で、キャリアアグリゲーション機能を実行する。
【0033】
図3は、本発明における第2のシーケンス図である。
【0034】
(S31)無線端末1は、最初に、第1の基地局3Aとの間で広域無線ネットワーク(例えばWiMAX)を介した通信を確立する。これによって、無線端末1は、広域無線ネットワークを介してインターネットを経由して、相手先装置5と通信することができる。
また、モバイルルータ2は、第1の基地局3Aとの間で広域無線ネットワーク(例えばWiMAX)を介した通信を確立している。
(S32)このとき、無線端末1で、キャリアアグリゲーションを開始すべきトリガが発生したとする(図2のS22と同様)。ここで、無線端末1は、モバイルルータ2との間で狭域無線ネットワーク(例えば無線LAN)を介した通信を確立する。
(S33)そして、無線端末1は、モバイルルータ(アクセスポイント)2が広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、当該モバイルルータ2へ要求する(図2のS22と同様)。無線端末1は、例えば基地局識別子要求メッセージを、モバイルルータ2へ送信する。
(S34)これに対し、モバイルルータ2は、当該モバイルルータ2が広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子(BSID1)を、無線端末1へ応答する(図2のS24と同様)。
(S35)ここで、無線端末1は、第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子を選択する(図2のS25と同様)。
(S36)無線端末1は、広域無線ネットワークについて、既に通信を確立している第1の基地局識別子の第1の基地局3Aから、第2の基地局識別子の第2の基地局3Bに対して、ハンドオーバする。即ち、無線端末1は、第2の基地局3Bに対して、通信確立シーケンスを実行する。これによって、無線端末1は、無線LANを介してモバイルルータ2を経由して広域無線ネットワークの第1の基地局と通信すると共に、同時に、直接的に広域無線ネットワークの第2の基地局と通信することができる。
(S37)そして、無線端末1は、基地局3の広域無線ネットワークと、モバイルルータ2の狭域無線ネットワークとの両方を用いて、パケットゲートウェイ4との間で、キャリアアグリゲーション機能を実行する(図2のS27と同様)。
【0035】
図4は、本発明における第3のシーケンス図である。
【0036】
図4によれば、図2と比較して、基地局選択サーバ6が、インターネットに接続されている。
(S41)モバイルルータ2は、第1の基地局3Aとの間で広域無線ネットワーク(例えばWiMAX)を介した通信を確立し、無線端末1は、モバイルルータ2との間で狭域無線ネットワーク(例えば無線LAN)を介した通信を確立している。これによって、無線端末1は、モバイルルータ2を介して広域無線ネットワークに接続し、インターネットを経由して相手先装置5と通信することができる(図2のS21と同様)。
ここで、モバイルルータ2は、SSID及びMACアドレスに対応付けた第1の基地局識別子を、基地局選択サーバ6へ送信する。即ち、モバイルルータ2は、SSID、MACアドレス及び第1の基地局識別子を含む基地局識別子登録メッセージを、基地局選択サーバ6へ送信する。基地局選択サーバ6は、SSID及びMACアドレスに対応付けて第1の基地局識別子を記憶し、応答メッセージをモバイルルータ2へ返信する。
(S42)このとき、無線端末1で、キャリアアグリゲーションを開始すべきトリガが発生したとする(図2のS22と同様)
(S43)無線端末1は、モバイルルータ(アクセスポイント)2が広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、基地局選択サーバ6へ要求する。無線端末1は、SSID及びモバイルルータのMACアドレスを含む基地局識別子要求メッセージを、モバイルルータ2を介して基地局選択サーバ6へ送信する。この要求メッセージには、SSID及びモバイルルータのMACアドレスが含まれる。
(S44)これに対し、基地局選択サーバ6は、受信したSSID及びMACアドレスに基づいて基地局識別子を検索し、その基地局識別子を含む応答メッセージを、無線端末1へ返信する。ここでは、当該モバイルルータ2が広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子(BSID1)が、無線端末1へ応答される。
(S45)これに対し、無線端末1は、第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子を選択する(図2のS25と同様)。
(S46)無線端末1は、選択された第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対して、通信確立シーケンスを実行する(図2のS26と同様)。これによって、無線端末1は、無線LANを介してモバイルルータ2を経由して広域無線ネットワークの第1の基地局と通信すると共に、同時に、直接的に広域無線ネットワークの第2の基地局と通信することができる(図2のS26と同様)。
(S47)そして、無線端末1は、基地局3の広域無線ネットワークと、モバイルルータ2の狭域無線ネットワークとの両方を用いて、パケットゲートウェイ4との間で、キャリアアグリゲーション機能を実行する(図2のS27と同様)。
【0037】
図5は、本発明における第4のシーケンス図である。
【0038】
(S51)無線端末1は、最初に、第1の基地局3Aとの間で広域無線ネットワーク(例えばWiMAX)を介した通信を確立する。これによって、無線端末1は、広域無線ネットワークを介してインターネットを経由して、相手先装置5と通信することができる(図4のS41と同様)。
また、モバイルルータ2は、第1の基地局3Aとの間で広域無線ネットワークを介した通信を確立する。ここで、モバイルルータ2は、SSID及びMACアドレスに対応付けた第1の基地局識別子を、基地局選択サーバ6へ送信する。モバイルルータ2は、基地局識別子登録メッセージを、基地局選択サーバ6へ送信する。基地局選択サーバ6は、SSID及びMACアドレスに対応付けて第1の基地局識別子を記憶し、応答メッセージをモバイルルータ2へ返信する。
(S52)このとき、無線端末1で、キャリアアグリゲーションを開始すべきトリガが発生したとする(図3のS32と同様)。ここで、無線端末1は、モバイルルータ2との間で狭域無線ネットワーク(例えば無線LAN)を介した通信を確立し始める。
(S53)無線端末1は、モバイルルータ2との間の狭域無線ネットワークを介した通信確立を待つことなく、モバイルルータ(アクセスポイント)2が広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、基地局選択サーバ6へ要求する。無線端末1は、SSID及びモバイルルータのMACアドレスを含む基地局識別子要求メッセージを、基地局選択サーバ6へ送信する(図4のS43と同様)。
(S54)これに対し、基地局選択サーバ6は、受信したSSID及びMACアドレスに基づいて基地局識別子を検索し、その基地局識別子を含む応答メッセージを、無線端末1へ返信する。ここでは、当該モバイルルータ2が広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子(BSID1)が、無線端末1へ応答される(図4のS44と同様)。それまでの間に、無線端末1は、モバイルルータ2との間で狭域無線ネットワークを介した通信を確立する。
(S55)これに対し、無線端末1は、第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子を選択する(図4のS45と同様)。
(S56)無線端末1は、既に通信を確立している第1の基地局識別子の第1の基地局3Aから、第2の基地局識別子の第2の基地局3Bに対して、ハンドオーバする。即ち、無線端末1は、第2の基地局3Bに対して、通信確立シーケンスを実行する。これによって、無線端末1は、無線LANを介してモバイルルータ2を経由して広域無線ネットワークの第1の基地局と通信すると共に、同時に、直接的に広域無線ネットワークの第2の基地局と通信することができる(図3のS36と同様)。
(S57)そして、無線端末1は、基地局3の広域無線ネットワークと、モバイルルータ2の狭域無線ネットワークとの両方を用いて、パケットゲートウェイ4との間で、キャリアアグリゲーション機能を実行する(図3のS37と同様)。
【0039】
図6は、本発明における無線端末の機能構成図である。
【0040】
図6によれば、無線端末1は、狭域無線ネットワーク通信部101と、広域無線ネットワーク通信部102と、キャリアアグリゲーション部11と、IP (Internet Protocol)レイヤ12と、TCP(Transmission Control Protocol)/UDP(User Datagram Protocol)レイヤ13と、アプリケーションレイヤ14と、基地局識別子取得部15と、接続基地局選択部16とを有する。無線ネットワーク通信部101及び102を除くこれら機能構成部は、無線端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0041】
狭域無線ネットワーク通信部101は、モバイルルータ2と通信し、広域無線ネットワーク通信部102は、基地局3と通信する。
【0042】
キャリアアグリゲーション部11は、広域無線ネットワーク通信部102の第1のデータと、狭域無線ネットワーク通信部101の第2のデータとを、1つのセッションとして集束するために、SCTP(Stream Control Transmission Protocol)を用いる。SCTPの1つの機能として、「マルチホーミング」が提供されている。「マルチホーミング」とは、複数のネットワーク・インターフェースに対して、各々にアドレス指定できるIPアドレスを複数持つホストとして機能する。そして、2つのパスを1つのアソシエーションとしてまとめることができる。
【0043】
無線端末1は、アプリケーションレイヤ14から下位層へ向かって、TCP/UDPレイヤ13、IPレイヤ12、キャリアアグリゲーション部11を構成する。
【0044】
基地局識別子取得部15は、モバイルルータ2が広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、当該アクセスポイント又は他の装置から取得する(図2におけるS23及びS24、図3におけるS33及びS34、図4におけるS43及びS44、図5におけるS53及びS54と同様の処理を実行)。
【0045】
接続基地局選択部16は、通信管理レイヤ17を用いて、第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対して、広域無線ネットワークを介して接続する(図2におけるS25、図3におけるS35、図4におけるS44、図5におけるS55と同様の処理を実行)。
【0046】
図7は、本発明における他の実施形態のシステム構成図である。
【0047】
図7によれば、図1と比較して、モバイルルータ2が、広域無線ネットワークを介して第1の基地局及び第3の基地局の両方と同時に通信可能となっている。そして、モバイルルータ2も、広域無線ネットワークを介して第1の基地局と送受信する第1のデータと、広域無線ネットワークを介して第3の基地局と送受信する第3のデータとを、1つのセッションとして集束して送受信するキャリアアグリゲーション部を有する。このような構成によれば、無線端末1は、更に広い帯域幅を確保することができると共に、特定の周波数に基づく伝搬障害にも強くなる。
【0048】
以上、詳細に説明したように、本発明の無線端末の基地局選択方法、無線端末、アクセスポイント及びプログラムによれば、無線端末が、広域無線ネットワークを介した基地局と、狭域無線ネットワークを介したアクセスポイントとを用いてキャリアアグリゲーション方式を実行する場合、スループットが最大となるよう異なる搬送波又は無線回線による通信経路を構成し、且つ、伝搬障害に強くなるように通信経路を構成することができる。
【0049】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0050】
1 無線端末
101 狭域無線ネットワーク通信部
102 広域無線ネットワーク通信部
11 キャリアアグリゲーション部
12 IPレイヤ
13 TCP/UDPレイヤ
14 アプリケーションレイヤ
15 基地局識別子取得部
16 接続基地局選択部
2 モバイルルータ、アクセスポイント
3 基地局
4 パケットゲートウェイ
5 相手先装置
6 基地局選択サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域無線ネットワークに配置された複数の基地局と、
前記広域無線ネットワークと狭域無線ネットワークとの間でデータを中継するアクセスポイントと、
前記広域無線ネットワークを介して前記基地局と、前記狭域無線ネットワークを介して前記アクセスポイントとの両方と同時に通信可能な無線端末と
を有するシステムにおける無線端末の基地局選択方法であって、
前記無線端末は、前記広域無線ネットワークを介して送受信する第1のデータと、前記狭域無線ネットワークを介して送受信する第2のデータとを、1つのセッションとして集束して送受信するキャリアアグリゲーション部を有し、
前記無線端末が、前記アクセスポイントが前記広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、当該アクセスポイント又は他の装置から取得する第1のステップと、
前記無線端末が、第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対して、前記広域無線ネットワークを介して接続する第2のステップと
を有することを特徴とする無線端末の基地局選択方法。
【請求項2】
第1のステップの以前に、前記無線端末が、前記広域無線ネットワークを介して、第1の基地局識別子が付与された第1の基地局と既に接続している場合、
第2のステップについて、前記無線端末は、第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対してハンドオーバする
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末の基地局選択方法。
【請求項3】
前記他の装置は、広域無線ネットワークを介して通信可能な基地局選択サーバであり、
第1のステップの以前に、前記無線端末が、前記広域無線ネットワークを介して、第1の基地局識別子が付与された第1の基地局と既に接続している場合、
前記アクセスポイントが、前記無線端末に対するアクセスポイント識別子と、第1の基地局識別子とを含む位置登録メッセージを、前記基地局選択サーバへ送信し、
第2のステップについて、前記無線端末が、前記基地局選択サーバから、前記アクセスポイントが接続している第1の基地局の第1の基地局識別子を受信する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線端末の基地局選択方法。
【請求項4】
前記広域無線ネットワークは、WiMAX、LTE又は3Gであり、
前記狭域無線ネットワークは、無線LAN又はBluetooth(登録商標)であり、
前記アクセスポイントは、モバイルルータ、又は、無線回線をバックホールとするホットスポット用アクセスポイントである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の無線端末の基地局選択方法。
【請求項5】
前記キャリアアグリゲーション部は、前記広域無線ネットワークを介して送受信する第1のデータと、前記狭域無線ネットワークを介して送受信する第2のデータとを、1つのセッションとして集束するために、SCTP(Stream Control Transmission Protocol)を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の無線端末の通信方法。
【請求項6】
前記アクセスポイントは、モバイルルータであり、
前記モバイルルータは、前記広域無線ネットワークを介して第1の基地局及び第3の基地局の両方と同時に通信可能であり、
前記モバイルルータは、前記広域無線ネットワークを介して第1の基地局と送受信する第1のデータと、前記広域無線ネットワークを介して第3の基地局と送受信する第3のデータとを、1つのセッションとして集束して送受信するキャリアアグリゲーション部を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の無線端末の基地局選択方法。
【請求項7】
広域無線ネットワークに配置された複数の基地局と、
前記広域無線ネットワークと狭域無線ネットワークとの間でデータを中継するアクセスポイントと
の両方と同時に通信可能な無線端末であって、
前記広域無線ネットワークを介して送受信する第1のデータと、前記狭域無線ネットワークを介して送受信する第2のデータとを、1つのセッションとして集束して送受信するキャリアアグリゲーション手段と、
前記アクセスポイントが前記広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、当該アクセスポイント又は他の装置から取得する基地局識別子取得手段と、
第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対して、前記広域無線ネットワークを介して接続する接続基地局選択手段と
を有することを特徴とする無線端末。
【請求項8】
請求項7に記載の前記無線端末と、広域無線ネットワークに配置された複数の基地局との間で、前記広域無線ネットワークと狭域無線ネットワークとの間でデータを中継するアクセスポイントであって、
前記無線端末へ、当該アクセスポイントが前記広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を送信する基地局識別子送信手段を有することを特徴とするアクセスポイント。
【請求項9】
広域無線ネットワークに配置された複数の基地局と、
前記広域無線ネットワークと狭域無線ネットワークとの間でデータを中継するアクセスポイントと
の両方と同時に通信可能な無線端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記広域無線ネットワークを介して送受信する第1のデータと、前記狭域無線ネットワークを介して送受信する第2のデータとを、1つのセッションとして集束して送受信するキャリアアグリゲーション手段と、
前記アクセスポイントが前記広域無線ネットワークを介して接続する第1の基地局の第1の基地局識別子を、当該アクセスポイント又は他の装置から取得する基地局識別子取得手段と、
第1の基地局識別子と異なる第2の基地局識別子が付与された第2の基地局に対して、前記広域無線ネットワークを介して接続する接続基地局選択手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする無線端末用のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115599(P2013−115599A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259706(P2011−259706)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】