説明

キャリアテープ

【課題】磁力を有する電子素子を小さなピッチで収納することができ、かつ、安価な紙製テープを用いてリールに巻き取って保管しておくことのできるキャリアテープを得る。
【解決手段】磁力を有する電子素子を所定のピッチで形成した収納凹部15に収納保持するキャリアテープ10。このキャリアテープ10は、凹部15を表裏面に貫通するように形成した紙製テープ11と、該紙製テープ11の裏面側に配置された、少なくとも一面に磁性体層を有する磁性テープ20とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアテープ、特に、アイソレータやサーキュレータを構成するフェライト・磁石素子などの電子素子を梱包して組立て工程に供するためのキャリアテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、組立て工程に供するため、複数の電子素子を紙製テープの凹部や樹脂製テープのエンボス加工された凹部に格納してリールに巻き取っておき、これらのテープを巻き戻しつつ自動マウント機で電子素子を1個ずつ取り出すようにしていた。ところで、電子素子にあって、アイソレータやサーキュレータなどを構成するフェライト・磁石素子のように、永久磁石などの磁力を有する部品を含むものがあり、キャリアテープへの収納時や取出し時に注意を要するものが存在している。
【0003】
即ち、磁力を有する電子素子をテーピングする場合は、収納凹部のピッチを小さくすると隣接する素子が磁力でくっ付いてしまうことを防止するために、凹部の配置ピッチを広げる必要があった。また、キャリアテープに収納された電子素子を取り出すとき、カバーテープは引き剥がされ、かつ、キャリアテープは自動マウント機によって振動が誘起されるため、取り出される電子素子の磁力で、隣接する電子素子が引き寄せられてくっ付いて取り出されたり、凹部内で回転したりするおそれがある。さらに、自動マウント機に搭載されている磁性部品に電子素子が吸着してしまう不具合も有していた。
【0004】
自動マウント機に対しては、磁性部品を排除する対応策が考えられるが、1機種ごとに対応することは実質的に困難である。特許文献1〜3には、エンボス加工された凹部に磁力を持たせた部材を設けることが提案されている。しかし、これらは樹脂製のキャリアテープに関する改良であり、紙製のキャリアテープに対応したものではない。また、凹部が磁力を有することになるため、磁性を有するだけの電子素子には対応可能であるが、磁力を有する電子素子に対しては吸着力が強くなりすぎるおそれがある。
【0005】
特許文献4には、凹部の底に鉄板を設けた梱包方法が記載されている。しかし、鉄板を用いると梱包材をリールに巻き取って保管しておくことができないという問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−32160号公報
【特許文献2】特開平3−293798号公報
【特許文献3】特開平4−201872号公報
【特許文献4】特開平10−167216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、磁力を有する電子素子を小さなピッチで収納することができ、かつ、安価な紙製テープを用いてリールに巻き取って保管しておくことのできるキャリアテープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態であるキャリアテープは、
磁力を有する電子素子を所定のピッチで形成した収納凹部に収納保持するキャリアテープであって、
前記収納凹部を表裏面に貫通するように形成した紙製テープと、
前記紙製テープの裏面に配置された、少なくとも一面に磁性体層を有する磁性テープと、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記キャリアテープにおいては、電子素子が凹部に収納されたときに電子素子から発生する磁束が凹部の底部に設けた磁性体層を貫通し、電子素子は凹部内に磁気的に吸着保持される。それゆえ、凹部の配置ピッチを小さくしても隣接する電子素子間の干渉が低減されることになる。また、磁性テープは紙製テープよりもフレキシブルであるので、電子素子を収納したキャリアテープをリールに巻き取って保管しておくことが可能である。さらに、電子素子の収納時や取出し時に電子素子がキャリアテープの振動などでも飛び出さないので、自動マウント機の構成部品を非磁性化する必要もなくなる。
【0010】
また、前記キャリアテープにおいては、磁性テープの一面に設けた磁性体層の種類や厚みによって電子素子に対する吸着力を調整できる。さらに、磁性体層を紙製テープ側に配置するか、逆側に配置するかによって、電子素子に対する吸着力を調整できる。磁性体層を紙製テープ側とは反対面に配置する場合にはテープ自体の厚みによって電子素子に対する吸着力を調整することも可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁力を有する電子素子を小さなピッチで収納することができ、かつ、安価な紙製テープを用いてリールに巻き取って保管しておくことができ、吸着力の調整も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るキャリアテープに収納される電子素子の一例(フェライト・磁石素子)を示す斜視図である。
【図2】前記フェライト・磁石素子を備えたアイソレータを示す斜視図である。
【図3】前記フェライト・磁石素子を備えた複合電子部品の第1例を示す斜視図である。
【図4】前記フェライト・磁石素子を備えた複合電子部品の第2例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るキャリアテープを示し、(A)は平面図、(B)はA−A断面図、(C)は裏面図、(D)はB−B断面図である。
【図6】前記キャリアテープへ前記フェライト・磁石素子を収納した状態を示す断面図である。
【図7】磁性テープの種々の取付け状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るキャリアテープの実施例について添付図面を参照して説明する。
【0014】
(被収納電子素子の説明、図1〜図4参照)
まず、本発明に係るキャリアテープに収納される電子素子の一例として、フェライト・磁石素子30について図1を参照して説明する。このフェライト・磁石素子30は、直方体形状のフェライト32とその両主面に接着層42を介して接着した一対の永久磁石41とから構成されている。フェライト32の両主面には図示しない第1及び第2の中心電極が互いに電気的に絶縁状態で交差して巻回配置されている。一対の永久磁石41はフェライト32に直流磁界を印加し、第1及び第2の中心電極を磁気的に結合させる。
【0015】
図2は前記フェライト・磁石素子30を含む集中定数型の2ポート型アイソレータ1を示し、整合回路を構成するチップタイプのコンデンサC1,C2,CS1,CS2やチップタイプの終端抵抗Rを備え、これらの素子が多層構造の回路基板50上に形成した各種電極に半田付けにて実装されている。
【0016】
なお、この種のアイソレータ1やフェライト・磁石素子30の構成、作用については、例えば、国際公開WO2008/087788号公報に詳述されている。
【0017】
図3に前記フェライト・磁石素子30を備えた複合電子部品の第1例を示す。この複合電子部品3は、前記アイソレータ1とパワーアンプ81とをプリント配線回路基板82の表面に実装してモジュール化したものである。パワーアンプ81の周囲にもチップタイプの必要な回路素子83a〜83fが実装されている。
【0018】
図4に前記フェライト・磁石素子30を備えた複合電子部品の第2例を示す。この複合電子部品4は、アイソレータ1A,1Bをプリント配線回路基板91の表面に実装してモジュール化したものである。アイソレータ1A,1Bは前記アイソレータ1と同じ構成であるが、異なった周波数帯に使用される。
【0019】
(キャリアテープ、図5〜図7参照)
次に、本発明に係るキャリアテープについて説明する。このキャリアテープ10は前記フェライト・磁石素子30を収納するためのものであるが、素子30以外にも磁力を有する部品を含む電子素子であれば、種々の電子素子を収納可能である。
【0020】
図5に示すように、キャリアテープ10は、前記素子30を所定のピッチで形成した収納凹部15に収納するものであって、該収納凹部15を表裏面に貫通するように形成した紙製テープ11と、該紙製テープ11の裏面に配置された少なくとも一面に磁性体層を有する磁性テープ20とで構成されている。磁性テープ20は紙製テープ11の裏面側に接着テープ25にて貼り付けられている。但し、接着テープ25を用いることなく、磁性テープ20を紙製テープ11の裏面に直接的に貼着してもよい。また、紙製テープ11には収納凹部15と平行にキャリアテープ10を搬送するためのパイロット穴16が等ピッチで形成されている。
【0021】
磁性テープ20は、ポリエステルなどの樹脂フィルム上に、樹脂バインダに磁性体粉末を混ぜたペーストを塗布して磁性体層を設けたもので、磁性体粉末としては、酸化鉄、クロム酸化物などの直径0.5μm程度の金属材粒子が用いられている。
【0022】
前記フェライト・磁石素子30は、図6に示すように、収納凹部15に長辺方向を一致させて、かつ、磁石41の磁極方向を一定として収納され、収納後は紙製テープ10の表面にカバーテープ26を貼着し、収納凹部15を封止する。収納状態において、フェライト・磁石素子30の永久磁石41から生じる磁束が凹部15の底部に設けた磁性テープ20の磁性体層を貫通する(図6の矢印Y参照)。これにて、フェライト・磁石素子30は凹部15内に磁気的に吸着保持される。ちなみに、フェライト・磁石素子30のサイズは、長辺方向に1.5mm、短辺方向に0.8mm、厚さ0.5mmである。これに対して、収納凹部15のサイズは、長辺方向に1.8mm、短辺方向に1.1mm、深さ0.6mmである。
【0023】
前記キャリアテープ10においては、収納凹部15の底部に磁性テープ20が配置されているために、凹部15の配置ピッチを小さくしても隣接するフェライト・磁石素子30間の干渉が低減される。また、フェライト・磁石素子30を凹部15から取り出す際には、カバーテープ26を引き剥がして自動マウント機の吸引ノズルを用いて取り出すことになる。このとき、吸引ノズルの接離によってキャリアテープ10が振動したとしても、フェライト・磁石素子30が凹部15から飛び出したりするおそれはない。収納時においても同様である。従って、自動マウント機の構成部品を非磁性化する必要もなくなる。
【0024】
また、磁性テープ20は紙製テープ11よりもフレキシブルであり、テープ25,26も紙製テープ11よりもフレキシブルであるので、フェライト・磁石素子30を収納したキャリアテープ10をリールに巻き取って保管しておくことが可能である。
【0025】
一方、キャリアテープ10においては、磁性テープ20の一面に設けた磁性体層の種類や厚みによってフェライト・磁石素子30に対する吸着力を調整できる。さらに、図7に示すように、磁性体層jを紙製テープ11側に配置したり(図7(A)参照)、逆側に配置すること(図7(B)参照)によって、フェライト・磁石素子30に対する吸着力を調整できる。磁性テープ20は磁性体層jを両面に設けたものであってもよい(図7(C)参照)。また、磁性体層jを紙製テープ11側とは反対面に配置する場合にはテープ20自体の厚みによってフェライト・磁石素子30に対する吸着力を調整することも可能である。
【0026】
(他の実施例)
なお、本発明に係るキャリアテープは前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【0027】
特に、本発明における被収納物は、中間製品であるフェライト・磁石素子に限定されることはなく、アイソレータなどの完成製品であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明は、電子素子を梱包するキャリアテープに有用であり、特に、磁力を有する電子素子を小さなピッチで収納でき、安価な紙製テープを用いてリールに巻き取って保管できる点で優れている。
【符号の説明】
【0029】
10…キャリアテープ
11…紙製テープ
15…収納凹部
20…磁性テープ
30…フェライト・磁石素子
32…フェライト
41…永久磁石
j…磁性体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力を有する電子素子を所定のピッチで形成した収納凹部に収納保持するキャリアテープであって、
前記収納凹部を表裏面に貫通するように形成した紙製テープと、
前記紙製テープの裏面に配置された、少なくとも一面に磁性体層を有する磁性テープと、
を備えたことを特徴とするキャリアテープ。
【請求項2】
前記磁性テープの前記紙製テープ側の面に磁性体層が形成されていること、を特徴とする請求項1に記載のキャリアテープ。
【請求項3】
前記磁性テープの前記紙製テープ側とは反対面に磁性体層が形成されていること、を特徴とする請求項1に記載のキャリアテープ。
【請求項4】
前記電子素子は、互いに電気的に絶縁状態で交差して配置された複数の中心電極を有するフェライトと、該フェライトに直流磁界を印加する一対の永久磁石とを備えたフェライト・磁石素子であること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のキャリアテープ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−79547(P2011−79547A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233219(P2009−233219)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】