説明

キーシリンダ装置

【課題】ACC位置で確実にインターロックを行うことができるキーシリンダ装置を提供する。
【解決手段】キーシリンダ装置2は、ロータケース21の貫通孔211に回転操作可能に挿入され、所定の回転操作位置において回転軸方向にプッシュ操作可能であり、プッシュ操作方向に突出する凸部222を有するロータ22と、凸部222が挿入される開口231、及び側面部に開口231と接続するストッパ収納孔233を有し、ロータ22と共に回転するカムギア23と、ストッパ収納孔233に挿入されるストッパ24と、ストッパ24の駆動に基づいてプッシュ操作によるストッパ収納孔233に対する凸部222の侵入を規制する駆動部25と、を備え、駆動部25によるストッパ24の駆動により、ロータ22をプッシュ操作方向に変位させても、ストッパ24の突出部241と凸部222が接触するのでプッシュ操作を規制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、キーシリンダ内に設けられたロータの側面部に形成された爪状突起と、キーシリンダに設けられた開口から突出自在に設けられた係合部を有するロックリンクと、ロックリンクをスライダ及びヨークを介して駆動するソレノイドと、を備えたキーインターロック装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このキーインターロック装置は、車両のシフトレバーがPポジション以外にあるとき、ソレノイドはスライダを吸着状態にするので、ロックリンクの係合部が開口からキーシリンダ内部に突出し、爪状突起と接触する。
【0004】
キーインターロック装置は、係合部と爪状突起との接触によってACC(Accessory)位置からロック位置へのロータの回転を阻止して、インターロックを行うので、例えば車両走行中のACC位置からロック位置へのロータの回転を阻止することができる。
【特許文献1】特開2005−178702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のキーインターロック装置は、係合部と爪状突起との接触によってロータの回転を阻止するので、キーインターロック装置が備えるACC位置の節度の位置と、係合部と爪状突起とが接触する位置とが一致するように調整することが困難であるという問題があった。
【0006】
従って本発明の目的は、ACC位置で確実にインターロックを行うことができるキーシリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は上記目的を達成するため、ロータケースの開口に回転操作可能に挿入され、所定の回転操作位置において回転軸方向にプッシュ操作可能であり、前記プッシュ操作方向に突出する凸部を有するロータと、前記凸部が挿入される第1の開口、及び側面部に前記第1の開口と接続する第2の開口を有し、前記ロータと共に回転する接続部と、前記第2の開口に挿入されるプッシュ操作規制部と、前記プッシュ操作規制部の駆動に基づいて前記プッシュ操作による前記第2の開口に対する前記凸部の侵入を規制する駆動部と、を備えたことを特徴とするキーシリンダ装置を提供する。
【0008】
(2)本発明は上記目的を達成するため、前記プッシュ操作規制部は、前記駆動の方向とは反対方向に弾性力を付加する弾性体を有することを特徴とする前記(1)に記載のキーシリンダ装置を提供する。
【0009】
(3)本発明は上記目的を達成するため、前記プッシュ操作規制部は、前記駆動に基づいて前記ロータの前記凸部と接触して前記プッシュ操作を規制する突出部を有することを特徴とする前記(1)に記載のキーシリンダ装置を提供する。
【0010】
(4)本発明は上記目的を達成するため、前記駆動部は、電力の供給に基づいてプランジャが前記駆動の方向に突出するソレノイドアクチュエータであり、前記プランジャを前記駆動の方向に突出させることで前記プッシュ操作規制部を前記駆動の方向に変位させ、前記プッシュ操作を規制することを特徴とする前記(1)に記載のキーシリンダ装置を提供する。
【0011】
(5)本発明は上記目的を達成するため、前記駆動部は、前記ロータが前記所定の回転操作位置にあり、かつ車両に搭載されたシフト装置のシフトレバーがPポジション以外に操作されているとき、電力の供給が行われて前記プッシュ操作を規制することを特徴とする前記(1)に記載のキーシリンダ装置を提供する。
【0012】
(6)本発明は上記目的を達成するため、ロータケースの開口に回転操作可能に挿入され、所定の回転操作位置において回転軸方向にプッシュ操作可能であり、前記プッシュ操作方向に突出する凸部を有するロータと、前記凸部が挿入される第1の開口、及び側面部に前記第1の開口と接続する第2の開口を有し、前記ロータと共に回転する接続部と、前記第2の開口に挿入され、所定の方向に弾性力を付加する弾性体を有するプッシュ操作規制部と、前記プッシュ操作規制部の駆動に基づいて前記プッシュ操作による前記第2の開口に対する前記凸部の侵入を規制するソレノイドアクチュエータと、を備えたことを特徴とするキーシリンダ装置を提供する。
【0013】
(7)本発明は上記目的を達成するため、前記プッシュ操作規制部は、前記駆動に基づいて前記ロータの前記凸部と接触して前記プッシュ操作を規制する突出部を有することを特徴とする前記(6)に記載のキーシリンダ装置を提供する。
【0014】
(8)本発明は上記目的を達成するため、前記ソレノイドアクチュエータは、前記ロータが前記所定の回転操作位置にあり、かつ車両に搭載されたシフト装置のシフトレバーがPポジション以外に操作されているとき、電力の供給が行われて前記プッシュ操作を規制することを特徴とする前記(6)に記載のキーシリンダ装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
このような構成によれば、ACC位置で確実にインターロックを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明のキーシリンダ装置の実施の形態を図面を参考にして詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
(車両1の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両内部の概略図である。車両1は、図1に示すように、エンジン及び各種電子機器等を搭載した車両本体10と、各種スイッチ類及び計器等が設けられたインストルメントパネル11と、各種スイッチ類等が設けられ、インストルメントパネル11から運転者座席方向に突出するステアリリングコラムを覆うステアリングコラムカバー12と、ステアリングコラムカバー12に設けられたキーシリンダ装置2と、シフトレバー30を有し、車両1の駆動装置の接続状態を切り替えることができるシフト装置3と、を備えて概略構成されている。
【0018】
(キーシリンダ装置2の構成)
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るキーシリンダ装置の分解斜視図である。キーシリンダ装置2は、図2に示すように、ケース20と、ロータケース21と、ロータ22と、カムギア(接続部)23と、ストッパ(プッシュ操作規制部)24と、駆動部25と、を備えて概略構成されている。
【0019】
(ケース20について)
ケース20は、略円筒形状を有し、ロータ22が収納されたロータケース21、及びカムギア23を収納する貫通孔201を有する本体200を備え、本体200の側面部には、駆動部25を配置するためのねじ穴202、203、及び駆動部25のプランジャ251が挿入される開口204が設けられている。
【0020】
(ロータケース21について)
ロータケース21は、略円筒形状を有し、ロータ22が収納される貫通孔(開口)211を有する本体210を備え、本体210の側面部には、開口212が設けられ、貫通孔211を挟んで対向する側面部にも同様の開口212が設けられている。
【0021】
またロータケース21は、貫通孔211内にプッシュ溝213が形成されている。このプッシュ溝213は、ロータ22の円周方向に平行な2本の溝がプッシュ操作方向の溝によって繋がった形状を有している。
【0022】
プッシュ溝213は、後述するロータ22の凸部221aの移動を案内するものであり、後述するACC位置(所定の回転操作位置)からLock位置へのロータ22の回転をプッシュ方向に形成された溝によって規制する。ロータ22をACC位置からLock位置に回転させるためには、このプッシュ操作方向の溝に沿ってプッシュ操作を行ったのち、ACC位置からLock位置への回転操作が可能になるよう構成されている。
【0023】
(ロータ22について)
ロータ22は、略円筒形状を有する本体220と、本体220の一方端に設けられたロータ頭部221、矩形状を有して本体220の他端に設けられた凸部222と、を備えて概略構成されている。
【0024】
本体220は、複数のタンブラ収納孔223がキー挿入孔226を介して対向して設けられ、タンブラ224は、タンブラ224に対して本体220の円周方向に弾性力を付加するばね225と共にタンブラ収納孔223に収納されている。
【0025】
タンブラ224は、正規キー27が挿入されていないとき、ばね225の弾性力に基づいてロータケース21の開口212内に突出するので、ロータ22はロータケース21に対する回転が規制される。
【0026】
ロータ頭部221は、正規キー27が挿入されるキー挿入孔226と、プッシュ溝213に挿入される凸部221aと、を備え、キー挿入孔226には、ばね227によって正規キー27の挿入方向とは反対方向に弾性力を付加されるシャッタ228が設けられ、カバー229によって覆われ、カバー229は、つまみ部26によって覆われている。
【0027】
つまみ部26は、ロータ頭部221に接続され、操作者が正規キー27をつまみ部26の後述するキー挿入孔を介してロータ22のキー挿入孔226に挿入後、このつまみ部26を手で摘んで回転操作することによって、つまみ部26及びロータ22を介してカムギア23が回転し、カムギア23の接続突起232に接続された後述するイグニッションスイッチを操作することができるように構成されている。
【0028】
キーシリンダ装置2は、つまみ部26を介してロータ22の回転軸方向にプッシュ操作が行われたとき、一例としてプッシュ操作を検出するスイッチ機構(図示せず)を備えている。なおスイッチ機構は、一例としてプッシュ操作に基づいて機械的にスイッチのオン・オフが切り替わる公知のスイッチで良く、また非接触でスイッチのオン・オフを検出する公知の磁気センサ等のセンサであっても良く、これに限定されない。
【0029】
ロータ22は、ロータケース21に対して回転するものとし、ロータケース21は、ケース20に固定されているものとする。
【0030】
またばね22aは、ロータ22の端部とカムギア23の開口231の設けられた側面との間に設けられ、弾性力をプッシュ操作方向とは反対方向に付加するように構成されている。
【0031】
(カムギア23について)
カムギア23は、円柱形状を有する本体230を備え、本体230には、一方端にはロータ22の凸部222が挿入される開口(第1の開口)231と、対向する他端にはイグニッションスイッチと接続する接続突起232と、側面部にはストッパ24が収納され、開口231と接続するストッパ収納孔(第2の開口)233と、が設けられている。
【0032】
カムギア23は、開口231にロータ22の凸部222が挿入されるので、ロータ22と共に回転するものとし、ロータ22を介した回転軸方向のプッシュ操作によってプッシュ操作方向に変位しないように構成されているものとする。
【0033】
(ストッパ24について)
図3(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るストッパの正規キー挿入方向から見た正面図であり、図3(b)は、本発明の第1の実施の形態に係るストッパの側面図である。
【0034】
ストッパ24は、図3(a)及び(b)に示すように、略矩形状を有する本体240と、本体240の表面部からロータ22に向かって突出する突出部241と、本体240の一方端に設けられ、カムギア23の外周と同様の曲率を有する曲線部242と、本体240の他端である端部243と、本体240の側面部に設けられ、ばね(弾性体)245が配置される凹部244と、を備えて概略構成されている。
【0035】
ばね245は、駆動部25によるプランジャ251の駆動によってストッパ24を介して駆動方向に収縮し、駆動方向の反対方向に弾性力をストッパ24に付加する。
【0036】
突出部241は、図3(b)に示すように、先端部246と、なだらかな曲線を有する曲線部247と、を備えている。
【0037】
(駆動部25について)
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るキーシリンダ装置に関するブロック図であり、図5は、本発明の第1の実施の形態に係るつまみ部の正面図である。
【0038】
駆動部25は、一例としてソレノイドアクチュエータであり、コイル等を収納する本体250と、ケース20の開口204に挿入され、通電・非通電に基づいて回転軸方向に変位するプランジャ251と、本体250の側面部に設けられ、ケース20のねじ穴202に対応する貫通孔を有する取付部252と、本体250の側面部に設けられ、ケース20のねじ穴203に対応する貫通孔を有する取付部253と、取付部252の貫通孔を介してねじ穴202に挿入され、本体250とケース20を固定するねじ254と、取付部253の貫通孔を介してねじ穴203に挿入され、本体250とケース20を固定するねじ255と、電流及び信号が伝達するケーブル256と、を備えて概略構成されている。
【0039】
駆動部25は、図4に示すECU(Electronic Control Unit)100に接続され、ケーブル256を介して電力が供給されているとき(通電時)、プランジャ251は初期位置からストッパ24方向に突出し、ケーブル256を介して電力が供給されていないとき(非通電時)、プランジャ251は初期位置に戻るものとする。
【0040】
(正規キー27について)
正規キー27は、一例として樹脂によって形成されたタング270と、タング270によって端部が覆われて一体とされ、IDを示す溝が刻まれたキープレート271と、を備えて概略構成されている。
【0041】
また正規キー27がまず挿入されるつまみ部26は、図5に示すように、操作者が手で摘んで操作可能になるように操作者側に立ち上がった凸部260と、凸部260によって形成された開口部261と、開口部261内に設けられ、正規キー27のキープレート271が挿入されるキー挿入孔262と、を備えて概略構成されている。
【0042】
(イグニッションスイッチ28について)
イグニッションスイッチ28は、カムギア23の接続突起232に接続され、正規キー27、つまみ部26及びロータ22を介したカムギア23の回転操作に基づいて、一例として図5に示すリング部263に表示された「Lock」、「ACC」、「ON」及び「START」といった操作位置を示す信号をECU100に送信するよう構成されている。
【0043】
ここで「START」とは、シフト装置3のシフトレバーがPポジションにあるとき、エンジンを始動させる操作位置であり、この位置につまみ部26が操作されることによってECU100は、図4に示すエンジンECU101にエンジン始動信号を送信し、エンジンECU101はエンジンの始動を行う。
【0044】
また「ON」とは、車両1に搭載されている電子機器の全てに対して電力が供給される操作位置であり、エンジンの始動操作後は、つまみ部26は自動でこの操作位置に戻るよう構成されている。
【0045】
「ACC」とは、エンジンが停止される操作位置であり、またアクセサリーソケット等の限定された電装品に対して電力が供給される操作位置である。
【0046】
「Lock」とは、正規キー27をキーシリンダ装置2から抜くとステアリングロックが行われる位置であり、プッシュ溝213に沿ってACC位置から正規キー27に対してプッシュ操作を行うことによってのみ操作できるものである。
【0047】
このACC位置からLock位置に至る操作にプッシュ操作が含まれる理由は、車両走行中に何らかの原因でLock位置につまみ部26が操作されることを防ぐためであり、このACC位置からLock位置のつまみ部26の回転を阻止する機構をインターロックと呼ぶものとする。
【0048】
なおキーシリンダ装置2は、つまみ部26を「Lock」、「ACC」、「ON」及び「START」といった操作位置に操作したとき、各操作位置に対して節度を与える公知の機構を有するものとする。
【0049】
(動作)
以下に、本実施の形態におけるキーシリンダ装置の動作を各図を参照して詳細に説明する。
【0050】
(シフト装置3がPポジションに操作されていない場合について)
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る図2のA−A線断面図であり、図7は、本発明の第1の実施の形態に係る図6のB−B線断面図である。まず、シフト装置3のシフトレバー30がPポジションに操作されておらず、キーシリンダ装置2がインターロックを行う場合について説明する。
【0051】
キーシリンダ装置2は、ACC位置につまみ部26が操作されたとき、イグニッションスイッチ28は、つまみ部2及びロータ22を介したカムギア23の回転操作に基づいてACC位置につまみ部26が操作されたことを示すACC操作信号をECU100に送信する。
【0052】
ECU100は、ACC操作信号を受信すると、シフト装置3のシフトレバー30の操作位置がPポジションであるか否かを確認する。
【0053】
ECU100は、シフト装置3のシフトレバー30がPポジションに操作されていないとき、インターロックを行うため、駆動部25に対して電力供給を行う。
【0054】
駆動部25は、図示しない電力源からケーブル256を介して電力供給を受けると、図6及び7に示すように、プランジャ251をロータ22の回転軸方向に突出させ、ストッパ24の曲線部242を介してストッパ24を回転軸方向に押し込む。
【0055】
ばね245を収縮させながら図6及び7の下方に変位したストッパ24は、突出部241の先端部246が、ロータ22の凸部222の先端部に接触するので、ロータ22は、プッシュ操作方向への変位を規制される。
【0056】
また凸部222がストッパ収納孔233に突出しているときであっても、ストッパ24は、回転軸方向の変位によって曲線部247が凸部222の先端部の上部にまず接触し、ロータ22を右方向に変位させながら回転軸方向に変位し、やがて先端部246が凸部222の先端部に接触し、プッシュ操作を規制することができる。
【0057】
なおストッパ24は、プランジャ251によって回転軸方向に力が付加されているので、カムギア23の回転操作を規制、つまりつまみ部26の回転操作を規制する。この規制は、次で述べるように、シフト装置3がPポジションに操作されるまで継続される。
【0058】
よってキーシリンダ装置2は、確実にACC位置においてプッシュ操作が規制される。
【0059】
(インターロックの解除について)
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る図2のA−A線断面図であり、図9は、本発明の第1の実施の形態に係る図8のB−B線断面図である。続いてインターロックにある状態からシフト装置3のシフトレバー30がPポジションに操作され、インターロックが解除される場合について説明する。
【0060】
操作者は、キーシリンダ装置2がインターロック状態にあり、つまみ部26のプッシュ操作ができないことから、シフト装置3のシフトレバー30をPポジションに操作する。
【0061】
ECU100は、シフト装置3のシフトレバー30がPポジションに操作されたことを示す操作信号をシフト装置3から受信すると、インターロックを解除するため、駆動部25に対する電力供給を停止する。
【0062】
電力供給を停止された駆動部25は、プランジャ251が本体250に収納される方向に変位する。
【0063】
このときストッパ24は、ストッパ24の凹部244の上部とカムギア23の凹部234の底部とに挟まれたばね244によって図8及び9の上方向への弾性力を受ける。
【0064】
ストッパ24は、ばね244の弾性力によって上方向に変位し、図8及び9に示すように、ロータ22の凸部222の先端部とストッパ24の突出部241の先端部246との接触が解除される。
【0065】
なおストッパ24の突出部241には、先端部246の下部に曲線部247が設けられているので、ストッパ24の上方向の変位は、上記の接触が解除される程度でも良い。これはロータ22がプッシュ操作されたとき、凸部222の先端部がストッパ24の曲線部247に接触し、凸部222のプッシュ操作方向の変位によって曲線部247を介してストッパ24が上方向に変位するからである。
【0066】
なおプランジャ251とストッパ24の接触は、カムギア23がロータ22と共に回転可能になるように解除され、プランジャ251はケース20の開口204内、又はカムギア23の回転を阻害しない位置まで、ストッパ24は、ストッパ収納孔233内、又はカムギア23の回転を阻害しない位置まで、それぞれ変位するものとする。
【0067】
操作者がつまみ部26に対してプッシュ操作を行うと、つまみ部26を介してロータ22の凸部221aがプッシュ溝213に沿いながら移動する。この移動に伴ってロータ22は、ばね22aを収縮させながら図8に示すプッシュ操作方向に変位する。
【0068】
ロータ22がプッシュ操作に基づいてプッシュ操作方向に変位するとき、まずロータ22の凸部222の先端部が、ストッパ24の曲線部247に接触する。
【0069】
ロータ22の凸部222の先端部は、曲線部247に接触しながらプッシュ方向に変位すると、プッシュ方向の変位が曲線部247によって変換され、ストッパ24は、上方向へと変位する。
【0070】
つまみ部26がさらに押し込まれたとき、ロータ22の凸部222の先端部は、曲線部247の下部の側面に接触し、ストッパ24の上部の曲線部242は、図9に示すように、カムギア23の外周より外側に突出しないので、カムギア23は、回転操作可能な状態となる。
【0071】
よって操作者は、つまみ部26を押し込んだのち、Lock位置に回転操作を行い、ECU100は、イグニッションスイッチ28からの操作信号を受信すると、ステアリングロック装置(図示せず)を制御して、ステアリングロックを行う。
【0072】
(効果)
(1)上記した第1の実施の形態におけるキーシリンダ装置2によれば、駆動部25によってストッパ24を回転軸方向に変位させ、ストッパ24によってプッシュ操作を規制するので、ACC位置で確実にインターロックを行うことができる。
【0073】
(2)上記した第1の実施の形態におけるキーシリンダ装置2によれば、ストッパ24は、ばね245を有しているので、プッシュ操作の規制が解除されたのち、弾性力によって元の位置に戻ることができる。
【0074】
(3)上記した第1の実施の形態におけるキーシリンダ装置2によれば、駆動部25によってストッパ24を回転軸方向に変位させ、ストッパ24の突出部241とロータ22の凸部222とを接触させることでプッシュ操作を規制するので、ACC位置で確実にインターロックを行うことができる。
【0075】
(4)上記した第1の実施の形態におけるキーシリンダ装置2によれば、駆動部25としてソレノイドアクチュエータを用いることで、制御が容易となり、またプッシュ操作を規制する機構の構成を簡単にすることができるので、コストを抑えることができ、組立ても容易となる。
【0076】
(5)上記した第1の実施の形態におけるキーシリンダ装置2によれば、シフト装置3がPポジションに指示されていないときに、ACC位置につまみ部26が操作された場合、インターロックを行うので、車両1走行中につまみ部26をLock位置に操作するという誤操作を防止することができる。
【0077】
[第2の実施の形態]
(構成)
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る断面図であり、図11は、本発明の第2の実施の形態に係る図10のC−C線断面図である。図10は、図2に示すA−A線における断面図と同等であるが、後述するストッパ24A及びストッパ収納孔233Aの形状が第1の実施の形態におけるストッパ24及びストッパ収納孔233とは異なっている。以下において第1の実施の形態と構成が異なる部分を中心に説明する。
【0078】
ストッパ24Aは、第1の実施の形態におけるストッパ24の突出部241を廃した構成を備えており、ストッパ24の本体240に対応する本体240Aと、後述する側面部241Aと、ストッパ24の曲面部242に対応する曲面部242Aと、ストッパ24の端部243に対応する端部243Aと、ストッパ24の凹部244に対応する凹部244Aと、を備えて概略構成されている。
【0079】
側面部241Aは、本体部240Aのロータ22側の側面であり、ロータ22の凸部222と接触することによってロータ22のプッシュ操作方向の変位を規制することができる。
【0080】
ストッパ収納孔233Aは、ストッパ24Aの形状に合わせて形状を変えており、ストッパ24の突出部241がない分、図10に示すようにプッシュ操作方向の厚みが薄くなっており、プッシュ操作方向の厚みは、プッシュ操作に必要な幅分確保されている。
【0081】
(動作)
以下に、本実施の形態におけるキーシリンダ装置の動作を各図を参照して詳細に説明する。
【0082】
(シフト装置3がPポジションに操作されていない場合について)
まず、シフト装置3のシフトレバー30がPポジションに操作されておらず、キーシリンダ装置2がインターロックを行う場合について説明する。
【0083】
キーシリンダ装置2は、ACC位置につまみ部26が操作されたとき、イグニッションスイッチ28は、つまみ部2及びロータ22を介したカムギア23の回転操作に基づいてACC位置につまみ部26が操作されたことを示すACC操作信号をECU100に送信する。
【0084】
ECU100は、ACC操作信号を受信すると、シフト装置3のシフトレバー30の操作位置がPポジションであるか否かを確認する。
【0085】
ECU100は、シフト装置3のシフトレバー30がPポジションに操作されていないとき、インターロックを行うため、駆動部25に対して電力供給を行う。
【0086】
駆動部25は、図示しない電力源からケーブル256を介して電力供給を受けると、図10及び11に示すように、プランジャ251をロータ22の回転軸方向に突出させ、ストッパ24Aの曲線部242Aを介してストッパ24Aを回転軸方向に押し込む。
【0087】
ばね245を収縮させながら下方に変位したストッパ24Aは、側面部241Aが、第1の実施の形態における突出部241と同様にロータ22の凸部222の先端部に接触するので、ロータ22は、プッシュ操作方向への変位を規制される。
【0088】
なおストッパ24Aは、プランジャ251によって回転軸方向に力が付加されているので、カムギア23の回転操作を規制、つまりつまみ部26の回転操作を規制する。この規制は、次で述べるように、シフト装置3のシフトレバー30がPポジションに操作されるまで継続される。
【0089】
よってキーシリンダ装置2は、確実にACC位置においてプッシュ操作が規制される。
【0090】
(インターロックの解除について)
続いてインターロックにある状態からシフト装置3のシフトレバー30がPポジションに操作され、インターロックが解除される場合について説明する。
【0091】
操作者は、キーシリンダ装置2がインターロック状態にあり、つまみ部26のプッシュ操作ができないことから、シフト装置3のシフトレバー30をPポジションに操作する。
【0092】
ECU100は、シフト装置3のシフトレバー30がPポジションに操作されたことを示す操作信号をシフト装置3から受信すると、インターロックを解除するため、駆動部25に対する電力供給を停止する。
【0093】
電力供給を停止された駆動部25は、プランジャ251が本体250に収納される方向に変位する。
【0094】
このときストッパ24Aは、ストッパ24Aの凹部244Aの上部とカムギア23の凹部234の底部とに挟まれたばね244によって上方向への弾性力を受ける。
【0095】
ストッパ24Aは、ばね244の弾性力によって上方向に変位し、ロータ22の凸部222の先端部とストッパ24Aの側面部241Aとの接触が解除される。
【0096】
なおプランジャ251とストッパ24Aの接触は、カムギア23がロータ22と共に回転可能になるように解除され、プランジャ251はケース20の開口204内、又はカムギア23の回転を阻害しない位置まで、ストッパ24Aは、ストッパ収納孔233A内、又はカムギア23の回転を阻害しない位置まで、それぞれ変位するものとする。
【0097】
操作者がつまみ部26に対してプッシュ操作を行うと、つまみ部26を介してロータ22が、プッシュ溝213に沿ってプッシュ操作方向に変位する。
【0098】
よって操作者は、つまみ部26を押し込んだのち、Lock位置に回転操作を行い、ECU100は、イグニッションスイッチ28からの操作信号を受信すると、ステアリングロック装置(図示せず)を制御して、ステアリングロックを行う。
【0099】
(効果)
上記した第2の実施の形態におけるキーシリンダ装置2によれば、ストッパ24Aが突出部を持たない構成であってもプッシュ操作を規制することができるので、コストを抑えることができ、組立ても容易となる。
【0100】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両内部の概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るキーシリンダ装置の分解斜視図である。
【図3】(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るストッパの正規キー挿入方向から見た正面図であり、(b)は、本発明の第1の実施の形態に係るストッパの側面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るキーシリンダ装置に関するブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るつまみ部の正面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る図2のA−A線断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る図6のB−B線断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る図2のA−A線断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る図8のB−B線断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る図10のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1…車両、2…キーシリンダ装置、3…シフト装置、10…車両本体、11…インストルメントパネル、12…ステアリングコラムカバー、20…ケース、21…ロータケース、22…ロータ、22a…ばね、23…カムギア、24、24A…ストッパ、25…駆動部、26…つまみ部、27…正規キー、28…イグニッションスイッチ、30…シフトレバー、100…ECU、101…エンジンECU、200…本体、201…貫通孔、202…ねじ穴、203…ねじ穴、204…開口、210…本体、211…貫通孔、212…開口、213…プッシュ溝、220…本体、221…ロータ頭部、221a…凸部、222…凸部、223…タンブラ収納孔、224…タンブラ、225…ばね、226…キー挿入孔、227…ばね、228…シャッタ、229…カバー、230…本体、231…開口、232…接続突起、233、233A…ストッパ収納孔、234…凹部、240、240A…本体、241…突出部、241A…側面図、242、242A…曲線部、243、243A…端部、244、244A…凹部、245…ばね、246…先端部、247…曲線部、250…本体、251…プランジャ、252…取付部、253…取付部、254…ねじ、255…ねじ、256…ケーブル、260…凸部、261…開口部、262…キー挿入孔、263…リング部、270…タング、271…キープレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータケースの開口に回転操作可能に挿入され、所定の回転操作位置において回転軸方向にプッシュ操作可能であり、前記プッシュ操作方向に突出する凸部を有するロータと、
前記凸部が挿入される第1の開口、及び側面部に前記第1の開口と接続する第2の開口を有し、前記ロータと共に回転する接続部と、
前記第2の開口に挿入されるプッシュ操作規制部と、
前記プッシュ操作規制部の駆動に基づいて前記プッシュ操作による前記第2の開口に対する前記凸部の侵入を規制する駆動部と、
を備えたことを特徴とするキーシリンダ装置。
【請求項2】
前記プッシュ操作規制部は、前記駆動の方向とは反対方向に弾性力を付加する弾性体を有することを特徴とする請求項1に記載のキーシリンダ装置。
【請求項3】
前記プッシュ操作規制部は、前記駆動に基づいて前記ロータの前記凸部と接触して前記プッシュ操作を規制する突出部を有することを特徴とする請求項1に記載のキーシリンダ装置。
【請求項4】
前記駆動部は、電力の供給に基づいてプランジャが前記駆動の方向に突出するソレノイドアクチュエータであり、前記プランジャを前記駆動の方向に突出させることで前記プッシュ操作規制部を前記駆動の方向に変位させ、前記プッシュ操作を規制することを特徴とする請求項1に記載のキーシリンダ装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記ロータが前記所定の回転操作位置にあり、かつ車両に搭載されたシフト装置のシフトレバーがPポジション以外に操作されているとき、電力の供給が行われて前記プッシュ操作を規制することを特徴とする請求項1に記載のキーシリンダ装置。
【請求項6】
ロータケースの開口に回転操作可能に挿入され、所定の回転操作位置において回転軸方向にプッシュ操作可能であり、前記プッシュ操作方向に突出する凸部を有するロータと、
前記凸部が挿入される第1の開口、及び側面部に前記第1の開口と接続する第2の開口を有し、前記ロータと共に回転する接続部と、
前記第2の開口に挿入され、所定の方向に弾性力を付加する弾性体を有するプッシュ操作規制部と、
前記プッシュ操作規制部の駆動に基づいて前記プッシュ操作による前記第2の開口に対する前記凸部の侵入を規制するソレノイドアクチュエータと、
を備えたことを特徴とするキーシリンダ装置。
【請求項7】
前記プッシュ操作規制部は、前記駆動に基づいて前記ロータの前記凸部と接触して前記プッシュ操作を規制する突出部を有することを特徴とする請求項6に記載のキーシリンダ装置。
【請求項8】
前記ソレノイドアクチュエータは、前記ロータが前記所定の回転操作位置にあり、かつ車両に搭載されたシフト装置のシフトレバーがPポジション以外に操作されているとき、電力の供給が行われて前記プッシュ操作を規制することを特徴とする請求項6に記載のキーシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−298284(P2009−298284A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154717(P2008−154717)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】