説明

キーロック装置

【課題】消費電力コストの低廉化及びソレノイド全体の小型化を図ることができるキーロック装置を提供する。
【解決手段】キーロック装置1は、操作キーの押圧操作によってその押圧操作方向に移動するカムシャフト3aと、カムシャフト3aの移動動作に連動して移動し、操作キーの回転操作による回転によってイグニッションスイッチを切り換えるスイッチ切換部材3bと、スイッチ切換部材3bの回転を規制し、またその回転の規制を解除するためのソレノイドアッシー4,5とを備え、ソレノイドアッシー4,5は、励磁力による移動方向にプランジャ41a,51aを移動させるソレノイド4a,5a、及びカムシャフト3aの移動によるカム力を受けて回転するリンク部材4b,5bを有し、リンク部材4b,5bがその回転による押圧によってプランジャ41a,51aを励磁力による移動方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーロック装置に関し、特に自動車等のイグニッションスイッチを切り換えるスイッチ切換部材の回転を阻止する機能を備えたキーロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用キーの電気的な信号(IDコード:Identificationコード)によりその照合を行う電子キーシステムが提案されている。
【0003】
このような電子キーシステムでは、車両用キーからの送信信号に含まれるIDコードと車両の送受信装置に予め登録されたIDコードとが一致する)と、操作ノブ(スイッチ切換部材)の操作が可能となる。このため、乗員がスイッチ切換部材を回転させることにより、自動車のエンジン等を始動することができる。
【0004】
従来、この種の電子キーシステムが採用された車両のキーロック装置として、車両用キーの非照合によりスイッチ切換部材の「LOCK(ロック)」位置から「ACC(アクセサリ)」位置への切り換え操作を阻止する第1ロック機構と、車両のシフトレバーがパーキングポジション(Pポジション)以外のポジション(ニュートラルポジション:Nポジション,ドライブポジション:Dポジション)に切り換えられている場合にスイッチ切換部材の「ACC」位置から「LOCK」位置に切り換え操作を阻止する第2ロック機構(インターロック機構)とを備えたものがある(特許文献1)。
【0005】
第1ロック機構は、第1ソレノイドの消磁によってスイッチ切換部材の「LOCK」位置から「ACC」位置への切り換え操作を阻止する状態とし、また第1ソレノイドの励磁によってスイッチ切換部材の「LOCK」位置から「ACC」位置への切り換え操作を可能な状態とする。
【0006】
第1ソレノイドは、その励磁によって吸引方向に移動する第1プランジャ、及び第1プランジャに吸引方向と反対の方向の弾撥力を付与する第1スプリングを有している。
【0007】
第2ロック機構は、第2ソレノイドの消磁によってスイッチ切換部材の「ACC」位置から「LOCK」位置への切り換え操作を可能な状態とし、また第2ソレノイドの励磁によってスイッチ切換部材の「ACC」位置から「LOCK」位置への切り換え操作を阻止する状態とする。
【0008】
第2ソレノイドは、その励磁によって吸引方向に移動する第2プランジャ、及び第2プランジャに吸引方向と反対の方向の弾撥力を付与する第2スプリングを有している。
【0009】
これにより、第1ソレノイドが励磁され、第1ロック機構が作動すると、スイッチ切換部材が「LOCK」位置から「ACC」位置への切り換え操作が可能となる。また、第1ソレノイドが消磁され、第1ロック機構が作動すると、スイッチ切換部材が「LOCK」位置から「ACC」位置への切り換え操作が阻止される。
【0010】
一方、第2ソレノイドが励磁され、第2ロック機構が作動すると、スイッチ切換部材が「ACC」位置から「LOCK」位置への切り換え操作が阻止される。また、第2ソレノイドが消磁され、第2ロック機構が作動すると、スイッチ切換部材が「ACC」位置から「LOCK」位置への切り換え操作が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−295089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来のキーロック装置によると、各ソレノイドの励磁開始時に各スプリングによって各プランジャがその始端位置(プランジャがソレノイドの固定鉄心から最も離間する位置)に配置されているため、ソレノイドの励磁によってプランジャが始端位置から終端位置(プランジャがソレノイドの固定鉄心に最も接近する位置)に移動することになる。この結果、ソレノイドの励磁時にはプランジャの移動ストロークが始端位置と終端位置との間の全ストロークとなり、消費電力コストが嵩むばかりか、ソレノイド全体が大型化するという問題があった。
【0013】
従って、本発明の目的は、消費電力コストの低廉化及びソレノイド全体の小型化を図ることができるキーロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、(1)〜(3)のキーロック装置を提供する。
【0015】
(1)操作キーの押圧操作によってその押圧操作方向に移動するカムシャフトと、前記カムシャフトの移動動作に連動して移動し、前記操作キーの回転操作による回転によってスイッチを切り換えるスイッチ切換部材と、前記スイッチ切換部材の回転を規制し、またその回転の規制を解除するためのソレノイドアッシーとを備え、前記ソレノイドアッシーは、励磁力による移動方向にプランジャを移動させるソレノイド、及び前記カムシャフトの移動によるカム力を受けて回転するリンク部材を有し、前記リンク部材がその回転による押圧によって前記プランジャを前記励磁力による移動方向に移動させる。
【0016】
(2)上記(1)に記載のキーロック装置において、前記ソレノイドアッシーは、前記スイッチ切換部材の回転を一方向に規制するための第1ソレノイドアッシー、及び前記スイッチ切換部材の回転を他方向に規制するための第2ソレノイドアッシーからなる。
【0017】
(3)上記(1)に記載のキーロック装置において、前記ソレノイドアッシーは、前記リンク部材が前記スイッチ切換部材の回転を一方向に規制する第1リンク部材、及び前記スイッチ切換部材の回転を他方向に規制する第2リンク部材からなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、消費電力コストの低廉化及びソレノイド全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るキーロック装置をキー非挿入状態を示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るキーロック装置のキー挿入状態を示す断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るキーロック装置の装置本体に対するロータアッシーの収容状態を説明するために示す分解斜視図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るキーロック装置の要部を説明するために示す分解斜視図。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態に係るキーロック装置におけるカムシャフトの動作に伴う各リンク部材の動作を説明するために簡略化して示す側面図。図5(a)はカムシャフトから各リンク部材にカム力が作用する前を、図5(b)はカムシャフトから各リンク部材にカム力が作用している状態を、また図5(c)はカムシャフトから各リンク部材にカム力が作用した後をそれぞれ示す。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態に係るキーロック装置における一方のリンク部材の動作を説明するために簡略化して示す断面図。図6(a)はスイッチ切換部材の「LOCK」位置から「ACC」位置への回転が阻止された状態を、図6(b)は一方のリンク部材にカム力が作用した状態を、図6(c)はスイッチ切換部材の「LOCK」位置から「ACC」位置への回転が可能な状態をそれぞれ示す。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態に係るキーロック装置における他方のリンク部材の動作を説明するために簡略化して示す断面図。図7(a)はスイッチ切換部材の「ACC」位置から「LOCK」位置への回転が可能な状態を、図7(b)は他方のリンク部材にカム力が作用した状態を、図7(c)はスイッチ切換部材の「ACC」位置から「LOCK」位置への回転が阻止された状態をそれぞれ示す。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るキーロック装置の要部を説明するために示す断面図。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るキーロック装置の要部を説明するために示す分解斜視図。
【図10】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施の形態に係るキーロック装置におけるカムシャフトの動作に伴うリンク部材の動作を説明するために簡略化して示す側面図。図10(a)はカムシャフトからリンク部材にカム力が作用する前を、図10(b)はカムシャフトからリンク部材にカム力が作用している状態を、また図10(c)はカムシャフトからリンク部材にカム力が作用した後をそれぞれ示す。
【図11】(a)〜(e)は、本発明の第2の実施の形態に係るキーロック装置における各リンク部材の動作を説明するために示す断面図。図11(a)はスイッチ切換部材の「LOCK」位置から「ACC」位置への回転が阻止された状態を、図11(b)はカムシャフトからリンク部材にカム力が作用した状態を、図11(c)はスイッチ切換部材の「LOCK」位置から「ACC」位置への回転が可能な状態を、図11(d)はスイッチ切換部材の「ACC」位置から「LOCK」位置への回転が阻止された状態を、図11(e)はスイッチ切換部材の「ACC」位置から「LOCK」位置への回転が可能な状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施の形態]
〔キーロック装置の全体構成〕
図1はキーロック装置に対する操作キーの非挿入状態を示す。図2はキーロック装置に対する操作キーの挿入状態を示す。符号1で示すキーロック装置は、図1及び図2に示すように、外装部材としての装置本体2と、自動車(図示せず)のイグニッションスイッチ(図示せず)を切り換えるためのロータアッシー3(図3に示す)と、ロータアッシー3のスイッチ切換部材3bの回転を規制するためのソレノイドアッシー4,5(図4に示す)とから大略構成されている。
【0021】
(装置本体2の構成)
図3は装置本体及びロータアッシーを示す。図2及び図3に示すように、装置本体2は、一方向に開口する筐体2a、及びこの筐体2aの開口部を閉塞する蓋体2bからなり、自動車における運転席前方のインストルメントパネル(図示せず)に配置されている。
【0022】
筐体2aは、ロータアッシー3,イグニッションスイッチ等を収容する収容空間20a、及びこの収容空間20aを操作キーKの挿抜方向に2分するロータ位置決め用の仕切壁(図示せず)を有し、全体が例えば合成樹脂によって形成されている。
【0023】
筐体2aには、キー挿入検出スイッチ6のスイッチON動作によって駆動する回路を有するイモビアンプ7が取り付けられている。
【0024】
キー挿入検出スイッチ6は、例えばリミットスイッチからなり、イモビアンプ7に接続されている。そして、キー挿入検出スイッチ6は、スイッチON動作によって発生するスイッチ信号をイモビアンプ7に出力するように構成されている。
【0025】
イモビアンプ7は、自動車に搭載されている送受信装置(図示せず)に接続されている。そして、イモビアンプ7は、キー挿入検出スイッチ6からスイッチ信号を入力して増幅し、送受信装置に出力するように構成されている。ている。
【0026】
筐体2aの内周面には、仕切壁の蓋体2b側端面を指向する環状の段部22a(図2に示す)が設けられている。
【0027】
蓋体2bは、装置本体2の内外に開口する丸孔からなる貫通孔20bを有し、全体が筐体2aの材料と同一の材料によって形成されている。
【0028】
蓋体2bには、貫通孔20bの外側開口周縁に突出する円環状の凸部21bが設けられている。また、蓋体2bには、装置本体2の内外に開口し、かつ導光部材Lを挿通させる挿通孔22bが設けられている。
【0029】
凸部21bには、その内周面に開口し、かつ貫通孔20bに連通する嵌合凹部23bが設けられている。また、凸部21bには、その外周面に開口し、かつ挿通孔22bに連通して導光部材Lの先端部に嵌合する嵌合凹部24bが設けられている。
【0030】
(ロータアッシー3の構成)
ロータアッシー3は、図2及び図3に示すように、操作キーKの押圧操作によってその押圧操作方向(矢印a方向)に移動するカムシャフト3aと、このカムシャフト3aの移動動作に連動して移動する回転用のスイッチ切換部材3bと、このスイッチ切換部材3bの回転によって回転するロータ3c(図4に示す)等とからなり、装置本体2内に収容されている。
【0031】
<カムシャフト3aの構成>
カムシャフト3aは、スプリング受部(図示せず)及びカム部31aを有し、スイッチ切換部材3bのキー挿通口30bを開放するキー挿通口開放位置とそのキー挿通口30bを閉塞するキー挿通口閉塞位置との間を進退可能に配置され、かつ復帰用スプリング(図示せず)によって復帰習性が付与され、全体が丸軸によって形成されている。そして、カムシャフト3aは、スイッチ切換部材3bをその待機位置から押圧操作位置に進行させると、ロック機構(図示せず)によってキー挿通口開放位置に配置される。また、カムシャフト3aは、スイッチ切換部材3bを押圧操作位置から待機位置に退避させると、ロック機構の解除によってキー挿通口閉塞位置に配置される。
【0032】
カムシャフト3aのロック機構は、移動体及び圧縮スプリングを有し、シャッタのロック機構として例えば特開2001−301571号公報に本出願人によって先に開示されている。
【0033】
スプリング受部は、カムシャフト3aのキー操作側端部と反対側の端部に配置され、全体が円環状部材によって形成されている。
【0034】
カム部31aは、第1面310a〜第3面312aを有し、スプリング受部30aのキー操作側に配置されている。
【0035】
第1面310aは、第2面311aと第3面312aとの間に介在し、全体がカムシャフト3aの軸線方向に沿って均一な外径をもつ円周面で形成されている。そして、第1面310aは、カムシャフト3aの移動によってカム力(押圧力)をリンク部材4b,5b(共に図4に示す)及びキー挿入検出スイッチ6(接触子)に付与し、リンク部材4b,5bを回転させるとともに、キー挿入検出スイッチ6にスイッチ動作を実行させるように構成されている。
【0036】
第2面311aは、第1面310aのキー操作側に配置され、全体が第1面310aから操作キーKの挿入方向(矢印a方向)と反対の方向(矢印a方向)に向かって漸次小さくなる外径をもつ円錐面で形成されている。
【0037】
第3面312aは、第1面310aのキー操作側と反対の側に配置され、全体が第1面310aから操作キーKの挿入方向に向かって漸次小さくなる外径をもつ円錐面で形成されている。
【0038】
<スイッチ切換部材3bの構成>
スイッチ切換部材3bは、操作キーKを挿通させるキー挿通口30b、筐体2aの段部22aに対向する段部31b、及び蓋体2bの嵌合凹部23bに係脱可能に嵌合する凸部34bを有し、進行位置(押圧操作位置)と退避位置(待機位置)との間に進退可能に配置され、かつ復帰用スプリング(図示せず)によって復帰習性が付与されている。
【0039】
また、スイッチ切換部材3bは、筐体2aの収容空間20aにカムシャフト3aの軸線回りに回転可能に収容されている。そして、スイッチ切換部材3bは、操作キーKの回転操作によって回転し、ロータ3cを介して「LOCK」位置又は「ACC」位置・「ON(オン)」位置・「ST(始動)」位置のスイッチポジションにイグニッションスイッチを切り換えるように構成されている。
【0040】
これにより、カムシャフト3aのカム力を受けてキー挿入検出スイッチ6がスイッチON状態となり、操作キーKから送信されるIDコード信号に対応するIDコードと自動車側の送受信装置に予め登録されたIDコードとが照合されると、この照合結果(両IDコード一致の照合結果)に基づいて「LOCK」位置から「ACC」位置(「ON」位置,「ST」位置)へのスイッチ切換部材3bによるイグニッションスイッチの切り換えが可能となる。
【0041】
一方、スイッチ切換部材3bによって「ACC」位置から「LOCK」位置のスイッチポジションにイグニッションスイッチを切り換えるには、自動車のシフトレバー(図示せず)がPポジションに切り換えられている必要がある。
【0042】
操作キーKには、トランスポンダ及びアンテナコイル・コンデンサ・IC(いずれも図示せず)等が内蔵されている。このうちICには、自動車側のIDコードと同じIDコードが記憶されている。このため、自動車の送受信装置から送信されるリクエスト信号を操作キーKが受信すると、操作キーK(発信器)からIDコードがIDコード信号として自動車の送受信装置に送信される。
【0043】
リクエスト信号は、キー挿入検出スイッチ6のスイッチ信号を自動車の送受信装置が受信すると、この送受信装置からキーロック装置1(操作キーK)に向けて送信される。
【0044】
スイッチ信号は、カムシャフト3aのカム部31aからカム力を受けてキー挿入検出スイッチ6がスイッチON状態となると、このキー挿入検出スイッチ6からイモビアンプ7を介して自動車の送受信装置に送信される。
【0045】
スイッチ切換部材3bには、キー押圧操作方向へのカムシャフト3aの移動によって操作キーKを係止可能なキー係止用のレバー部材8,9を収容するレバー収容孔35b,36b(図2に示す)が設けられている。
【0046】
レバー部材8,9は、操作キーKの係止凹部K1,K2を係止可能な係止凸部8a,9aを有し、スイッチ切換部材3bに支軸37b,38bを介して回動可能に保持され、かつ操作キーKを係止する方向の弾撥力をもつ係止用スプリング10,11によって復帰習性が付与されている。そして、レバー部材8,9は、スイッチ切換部材3b(キー挿通口30b)に対する操作キーKの挿入状態において、係止凸部8a,9aが操作キーKの係止凹部K1,K2を係止して操作キーKを挟圧保持するように構成されている。
【0047】
<ロータ3cの構成>
ロータ3cは、筐体2aの仕切壁を挿通してイグニッションスイッチを作動するスイッチ作動部(図示せず)を有し、筐体2aの収容空間20aに収容されている。また、ロータ3cは、例えばスプライン嵌合によってスイッチ切換部材3bに対し相対回転不能に、かつ進退可能に連結されている。そして、ロータ3cは、操作キーKの回転操作によるスイッチ切換部材3bの回転動作に連動して回転し、この回転力をイグニッションスイッチに伝達するように構成されている。
【0048】
ロータ3cには、円周方向に所定の間隔をもって並列する第1回転規制力受面32c及び第2回転規制力受面33c(共に図4に示す)が設けられている。
【0049】
第1回転規制力受面32cは、ソレノイドアッシー4(図4に示す)のリンク部材(ストッパ)4bに対応し、スイッチ切換部材3bの「LOCK」位置から「ACC」位置への回転を規制する第1回転規制力を受けるように構成されている。
【0050】
第2回転規制力受面33cは、ソレノイドアッシー5(図4に示す)のリンク部材(ストッパ)5bに対応し、スイッチ切換部材3bの「ACC」位置から「LOCK」位置への回転を規制する第2回転規制力を受けるように構成されている。
【0051】
(ソレノイドアッシー4の構成)
図4はソレノイドアッシー及びロータアッシー(一部)を示す。一方のソレノイドアッシー(第1ソレノイドアッシー)4は、図4に示すように、キー照合用アクチュエータとして機能する吸引(引張)型のソレノイド4a、このソレノイド4aとロータアッシー3との間に介在するリンク部材4b、及びこのリンク部材4b,ソレノイド4aを保持するホルダ4c等からなり、装置本体2(図3に示す)内に収容されている。
【0052】
<ソレノイド4aの構成>
ソレノイド4aは、フレーム40a及びプランジャ41aを有し、ホルダ4c内に保持されている。そして、ソレノイド4aは、消磁によるスプリング14の弾撥力によってスイッチ切換部材3b(ロータ3c)の一方向回転(ロータ3cの「LOCK」位置から「ACC」位置への回転)を規制し、また励磁によってその回転の規制を解除するように構成されている。
【0053】
フレーム40aは、プランジャ41aを進退可能に挿通させる挿通孔400aを有し、固定鉄心及び励磁コイル(共に図示せず)等を内部に収容する外装部材として構成されている。
【0054】
プランジャ41aは、その一部をフレーム40a外に露出させてフレーム40a内に進退可能に保持され、全体が丸軸によって形成されている。そして、プランジャ41aは、ソレノイド4aの励磁による励磁力又はカムシャフト3aの移動によるカム力を受けて吸引方向(矢印b方向)に、またソレノイド4aの消磁によるスプリング14の弾撥力を受けて吸引方向と反対の方向(矢印b方向)にそれぞれ移動するように構成されている。この場合、プランジャ41aがソレノイド4aの励磁時にその励磁力を受けて吸引終了位置に配置される。また、ソレノイド4aの消磁時にはプランジャ41aがカムシャフト3aのカム力を受けて吸引終了位置近傍に、スプリング14の弾撥力を受けて吸引開始(初期)位置にそれぞれ配置される。
【0055】
プランジャ41aには、その外周面に突出し、かつフレーム40a外に露出するピン410aが設けられている。また、プランジャ41aの外周囲には、フレーム40a(挿通孔400aの開口周縁)とピン410aとの間に介在するスプリング14、及びピン410aとリンク部材4bとの間に介在するスプリング15が配置されている。
【0056】
スプリング14は、その弾撥力aがスプリング15の弾撥力bよりも大きい(a>b)弾撥力に設定されている。
【0057】
<リンク部材4bの構成>
リンク部材4bは、第1回転規制力受面32cに当接してロータ3c(スイッチ切換部材3b)の回転(「LOCK」位置から「ACC」位置への回転)を矢印c方向に規制する第1回転規制面40bを有し、ホルダ4cにシャフト16を介してロータ3cの回転面内で回転可能に保持されている。
【0058】
リンク部材4bには、シャフト16を挿通させるシャフト挿通孔41bが設けられている。リンク部材4bの一方側(第1回転規制力受面32cの側)端部には、カムシャフト3aのカム部31aに対応してカム力を受けるカム力受部42bが下方端縁で突出して設けられている。リンク部材4bの他方側端部には、互いにピン410aを介して対向する1対の力伝達部43b,44bが突出して設けられている。
【0059】
力伝達部43bは、プランジャ41aを挿通させる切り欠き430bを有し、プランジャ41aの固定鉄心側に配置されている。そして、力伝達部43bは、プランジャ41a及びピン410aを介してソレノイド4aの励磁力を矢印b方向に受け、ロータ3cの回転(「LOCK」位置から「ACC」位置への回転)の規制を解除する方向(矢印d方向)の回転力としてリンク部材4bに伝達するように構成されている。
【0060】
力伝達部44bは、プランジャ41aの外部露出端面に略対向する位置に配置されている。そして、力伝達部44bは、カムシャフト3aの移動によるカム力をリンク部材4bから受け、ロータ3cの回転(「LOCK」位置から「ACC」位置への回転)の規制を解除する方向(矢印方向d)の回転力としてプランジャ41aに伝達するように構成されている。また、力伝達部44bは、スプリング14の復帰力(弾撥力)をプランジャ41aから受け、ロータ3cの回転(「LOCK」位置から「ACC」位置への回転)を規制する方向(矢印d方向)の回転力としてリンク部材4bに伝達するように構成されている。
【0061】
<ホルダ4cの構成>
ホルダ4cは、シャフト16を挿通させるシャフト挿通孔40cを有し、装置本体2(図3に示す)内に収容されている。
【0062】
(ソレノイドアッシー5の構成)
他方のソレノイドアッシー(第2ソレノイドアッシー)5は、図4に示すように、インターロック用アクチュエータとして機能する吸引(引張)型のソレノイド5a、このソレノイド5aとロータアッシー3との間に介在するリンク部材5b、及びこのリンク部材5b,ソレノイド5aを保持するホルダ5c等からなり、装置本体2内に収容されている。
【0063】
<ソレノイド5aの構成>
ソレノイド5aは、フレーム50a及びプランジャ51aを有し、ホルダ5c内に保持されている。そして、ソレノイド5aは、励磁によってスイッチ切換部材3b(ロータ3c)の他方向回転(ロータ3cの「ACC」位置から「LOCK」位置への回転)を規制するように、また消磁によるスプリング17の弾撥力によってその回転の規制を解除するようにそれぞれ構成されている。
【0064】
フレーム50aは、プランジャ51aを進退可能に挿通させる挿通孔500aを有し、固定鉄心及び励磁コイル(共に図示せず)等を内部に収容する外装部材として構成されている。
【0065】
プランジャ51aは、その一部をフレーム50a外に露出させてフレーム50a内に進退可能に保持され、全体が丸軸によって形成されている。そして、プランジャ51aは、ソレノイド5aの励磁による励磁力又はカムシャフト3aの移動によるカム力を受けて吸引方向(矢印e方向)に、またソレノイド5aの消磁によるスプリング17の弾撥力を受けて吸引方向と反対の方向(矢印e方向)にそれぞれ移動するように構成されている。この場合、プランジャ51aがソレノイド5aの励磁時にその励磁力を受けて吸引終了位置に配置される。また、ソレノイド5aの消磁時にはプランジャ51aがカムシャフト3aのカム力を受けて吸引終了位置近傍に、スプリング17の弾撥力を受けて吸引開始(初期)位置にそれぞれ配置される。
【0066】
プランジャ51aには、その外周面に突出し、かつフレーム50a外に露出するピン510aが設けられている。また、プランジャ51aの外周囲には、フレーム50a(挿通孔500aの開口周縁)とピン510aとの間に介在するスプリング17、及びピン510aとリンク部材5bとの間に介在するスプリング18が配置されている。
【0067】
スプリング17は、その弾撥力cがスプリング18の弾撥力dよりも大きい(c>d)弾撥力に設定されている。
【0068】
<リンク部材5bの構成>
リンク部材5bは、第2回転規制力受面33cに当接してロータ3c(スイッチ切換部材3b)の回転(「ACC」位置から「LOCK」位置への回転)を矢印c方向に規制する第2回転規制面50bを有し、ホルダ4cにシャフト19を介してロータ3cの回転面内で回転可能に保持されている。
【0069】
リンク部材5bには、シャフト19を挿通させるシャフト挿通孔51bが設けられている。また、リンク部材5bには、互いにピン410aを介して対向する1対の力伝達部52b,53bが突出して設けられている。
【0070】
力伝達部52bは、プランジャ51aを挿通させる切り欠き520bを有し、プランジャ51aの固定鉄心側に配置されている。そして、力伝達部52bは、プランジャ51a及びピン510aを介してソレノイド5aの励磁力を矢印e方向に受け、ロータ3cの回転(「ACC」位置から「LOCK」位置への回転)を規制する方向(矢印f方向)の回転力としてリンク部材5bに伝達するように構成されている。
【0071】
力伝達部53bは、プランジャ51aの外部露出端面に略対向する位置に配置されている。そして、力伝達部53bは、カムシャフト3aの移動によるカム力をリンク部材5bから受け、ロータ3cの回転(「ACC」位置から「LOCK」位置への回転)を規制する方向(矢印f方向)の回転力としてプランジャ51aに伝達するように構成されている。また、力伝達部53bは、スプリング17の復帰力(弾撥力)をプランジャ51aから受け、ロータ3cの回転(「ACC」位置から「LOCK」位置への回転)の規制を解除する方向(矢印f方向)の回転力としてリンク部材5bに伝達するように構成されている。
【0072】
力伝達部53bには、ソレノイド5a側と反対の側に突出し、かつカムシャフト3aのカム部31aに対応してカム力を受けるカム力受部530bが下方端縁で突出して設けられている。
【0073】
<ホルダ5cの構成>
ホルダ5cは、シャフト19を挿通させるシャフト挿通孔50cを有し、装置本体2内に収容されている。
【0074】
〔キーロック装置1の動作〕
次に、第1の実施の形態に示すキーロック装置の動作につき、図1,図2及び図5〜図7を用いて説明する。図5(a)〜(c)はカムシャフトの移動位置と各カム力受部の移動位置を示す。図6は第1ソレノイドアッシーのリンク部材の回転位置を示す。図7は第2ソレノイドアッシーのリンク部材の回転位置を示す。
【0075】
なお、カムシャフト3aの押圧操作(操作キーKの操作)前においては、ソレノイド4aが消磁され、スイッチ切換部材3bが「LOCK」位置から「ACC」位置への回転が規制されている。また、ソレノイド5aが消磁され、スイッチ切換部材3bの回転の規制が解除されている。
【0076】
自動車の乗員等が操作キーKをスイッチ切換部材3bのキー挿通口30bに挿通させてカムシャフト3aを図5(a)に示すキー挿通口閉鎖位置から押圧操作すると、スイッチ切換部材3bが待機位置から矢印a方向にカムシャフト3aと共に移動を開始する。
【0077】
スイッチ切換部材3bの移動開始直後では、図1に示すようにスイッチ切換部材3bの凸部34bが蓋体2bの嵌合凹部23bに嵌合されているため、スイッチ切換部材3bは回転操作不能である。
【0078】
また、リンク部材4bのカム力受部42b及びリンク部材5bのカム力受部530bがそれぞれスプリング14,17によってカムシャフト3aのカム部31a以外の部位(カム部31aの外径よりも小さい外径をもつ部位)に接近する位置に配置されている。
【0079】
このため、図6(a)に示すように、リンク部材4bの第1回転規制面40bをロータ3cの第1回転規制力受面32cに当接させる位置にリンク部材4bが配置されている。また、図7(a)に示すように、ロータ3cの第2回転規制力受面33cに対する第2回転規制面50bの当接を回避する位置にリンク部材5bが配置されている。
【0080】
次に、操作キーKによってカムシャフト3aを図5(b)に示すように押圧操作すると、カムシャフト3aがスイッチ切換部材3bと共に図5(a)に示す位置から矢印a方向にさらに移動し、カムシャフト3aのカム部31aがキー挿入検出スイッチ6をスイッチON状態とする方向にその接触子を押圧する。この場合、キー挿入検出スイッチ6の接触子がカムシャフト3aのカム部31aによって押圧されると、キー挿入検出スイッチ6がスイッチON状態とされ、操作キーKから送信されるIDコード信号に対応するIDコードと自動車側の送受信装置に予め登録されたIDコードとが照合される。
【0081】
また、カムシャフト3aを図5(b)に示すように押圧操作すると、カムシャフト3aのカム部31aがソレノイド4aのプランジャ41aを矢印b方向に移動させる方向にリンク部材4bのカム力受部42bを押圧する。
【0082】
この場合、リンク部材4bがカム力受部42bを介してカムシャフト3aのカム部31aから押圧力(カム力)を受けると、図6(b)に示すようにリンク部材4bがスプリング14の弾撥力に抗して矢印d方向に回転し、ロータ3cの第1回転規制力受面32cに対する第1回転規制面40bの当接を回避する位置近傍にリンク部材4bが配置される。この状態においては、スイッチ切換部材3bの凸部34bと蓋体2bの嵌合凹部23bとの嵌合が維持されているため、スイッチ切換部材3bは回転操作不能である。
【0083】
本実施の形態においては、ソレノイド4aの非通電時にリンク部材4bの矢印d方向への回転動作に伴いソレノイド4aのプランジャ41aが矢印b方向に移動して吸引終了位置近傍に配置されるため、この吸引終了位置近傍からソレノイド4aに通電してプランジャ41aの吸引終了位置に配置する場合、ソレノイド4aに通電してプランジャ41aを吸引開始位置から吸引終了位置に移動させて配置する場合と比べて消費電力が低減される。
【0084】
そして、操作キーKによってカムシャフト3aを図5(c)に示すように押圧操作すると、カムシャフト3aがスイッチ切換部材3bと共に図5(b)に示す位置から矢印a方向にさらに移動し、図2に示すようにスイッチ切換部材3bの凸部34bと蓋体2bの嵌合凹部23bとの嵌合が解除される。この場合、カムシャフト3aはキー挿通開放位置に配置される。
【0085】
ここで、操作キーK側のIDコードと自動車側のIDコードとが一致する場合には、ソレノイド4aが通電される。この場合、リンク部材4bがスプリング14の弾撥力に抗して矢印d方向に回転し、ロータ3cの第1回転規制力受面32cに対する第1回転規制面40bの当接を回避する位置にリンク部材4bが図6(c)に示すように配置される(図5(c)に実線で示すように、カム力受部42bがカムシャフト3aのカム部31aからカム力を受ける場合と略同一の位置に配置される)ため、スイッチ切換部材3bの「LOCK」位置から「ACC」位置への回転操作は可能である。
【0086】
なお、操作キーK側のIDコードと自動車側のIDコードとが一致しない場合には、ソレノイド4aが通電されず、リンク部材4bがスプリング14の弾撥力によって矢印d方向に回転復帰し、ロータ3cの第1回転規制力受面32cに第1回転規制面40bを当接させる位置にリンク部材4bが図6(a)に示すように配置される(図5(c)に2点鎖線で示すように、リンク部材4bのカム力受部42bがスプリング14によってカムシャフト3aのカム部31a以外の部位に接近する位置に配置される。)。このため、スイッチ切換部材3bの「LOCK」位置から「ACC」への回転操作は不能である。
【0087】
一方、操作キーKによってカムシャフト3aを図5(b)に示すように押圧操作すると、カムシャフト3aのカム部31aがソレノイド5aのプランジャ51aを矢印e方向に移動させる方向にリンク部材5bのカム力受部530bを押圧する。
【0088】
この場合、リンク部材5bがカム力受部530bを介してカムシャフト3aのカム部31aから押圧力(カム力)を受けると、図7(b)に示すようにリンク部材5bがスプリング17の弾撥力に抗して矢印f方向に回転し、ロータ3cの第2回転規制力受面33cに第2回転規制面50bを当接させる位置近傍にリンク部材5bが配置される。
【0089】
本実施の形態においては、ソレノイド5aの非通電時にリンク部材5bの矢印f方向への回転動作に伴いソレノイド5aのプランジャ51aが矢印e方向に移動して吸引終了位置近傍に配置されるため、この吸引終了位置近傍からソレノイド5aを通電してプランジャ51aを吸引終了位置に配置する場合、ソレノイド5aを通電してプランジャ51aを吸引開始位置から吸引終了位置に移動させて配置する場合と比べて消費電力が低減される。
【0090】
そして、操作キーKによってカムシャフト3aを図5(c)に示すように押圧操作すると、ソレノイド5aの通電時(自動車のシフトレバーがNポジション又はDポジションに配置されている場合)には、図7(c)に示すようにリンク部材5bが矢印f方向に回転し、ロータ3cの第2回転規制力受面33cに第2回転規制面50bを当接させる位置にリンク部材5bが配置される(プランジャ51aが吸引終了位置に配置される)ため、スイッチ切換部材3bの「ACC」位置から「LOCK」位置への回転操作は不能である。
【0091】
ソレノイド5aの非通電時(自動車のシフトレバーがPポジションに配置されている場合)には、図7(a)に示すようにリンク部材5bがスプリング17の弾撥力によって矢印f方向に回転復帰し、ロータ3cの第2回転規制力受面33cに対する第2回転規制面50bの当接を回避する位置にリンク部材5bが配置される(プランジャ51aが吸引開始位置に配置される)ため、スイッチ切換部材3bの「ACC」位置から「LOCK」位置への回転操作は可能である。
【0092】
[第1の実施の形態の効果]
以上説明した第1の実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
【0093】
各ソレノイド4a,5aの励磁(通電)開始時には各プランジャ41a,51aがその吸引終了位置近傍に配置されているため、ソレノイド4a,5aの励磁によってプランジャ41a,51aが吸引終了位置近傍から吸引終了位置に移動することになる。これにより、ソレノイド4a,5aの励磁時にはプランジャ41a,51aの移動ストロークが従来のようには始端位置と終端位置との間の全ストロークとならず、消費電力コストの低廉化及びソレノイド全体の小型化を図ることができる。
【0094】
[第2の実施の形態]
図8はキーロック装置のソレノイドアッシーとロータを示す。図9はソレノイドアッシーを示す。同図以下において、図4と同一又は同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。第2の実施の形態に示すキーロック装置81は、図8及び図9に示すように、ソレノイドアッシー82のリンク部材がスイッチ切換部材3b(ロータ3c)の回転を一方向に規制するリンク部材(第1リンク部材)4b、及びロータ3cの回転を他方向に規制するリンク部材(第2リンク部材)83からなる点に特徴がある。
【0095】
このため、リンク部材4bには、シャフト挿通孔41bの片側開口周縁に突出し、かつリンク部材83に相対回転可能に嵌合する円環状の凸部45bが設けられている。凸部45bには、その外周縁に切り欠き46bを形成することにより、リンク部材83の矢印g方向の回転を規制する第3回転規制面450b、及びリンク部材83の矢印g方向の回転を規制する第4回転規制面451bが設けられている。
【0096】
リンク部材83は、第2回転規制力受面33cに当接してロータ3c(スイッチ切換部材3b)の回転(「ACC」位置から「LOCK」位置への回転)を矢印c方向に規制する第5回転規制面83a、及びリンク部材4bの凸部45bに嵌合する切り欠き空間83b、及びシャフト16を挿通させるシャフト挿通孔83cを有し、リンク部材4bに軸線方向に並列して配置され、かつホルダ4cにシャフト16を介してロータ3cの回転面内で矢印g,g方向に回転可能(回転範囲h)に保持されている。そして、リンク部材83は、リンク部材4bのカム力受部42bに接近する方向(矢印g方向)の弾撥力がトーションスプリング84によって常時付与されている。
【0097】
リンク部材83には、切り欠き空間83bに突出して第3回転規制面450b,第4回転規制面451bに圧接可能な凸部83d、及びトーションスプリング84の一方端部を外部に取り出すための切り欠き83eが設けられている。
【0098】
トーションスプリング84は、シャフト16を挿通させて切り欠き空間83bに収容されている。また、トーションスプリング84は、一方端部がリンク部材83に、他方端部がホルダ4cにそれぞれ係止されている。
【0099】
また、ロータ3cは、第1回転規制力受面32c及び第2回転規制力受面33cが円周方向及び軸線方向に所定の間隔をもって配置されている。
【0100】
次に、このように構成されたキーロック装置81の動作につき、図1,図2,図10(a)〜(c)及び図11(a)〜(e)を用いて説明する。図10(a)〜(c)はカムシャフトの移動位置とカム力受部の移動位置を示す。図11(a)〜(e)はキーロック装置の動作状態を示す。
【0101】
なお、カムシャフト3aの押圧操作(操作キーKの操作)前においては、ソレノイド4aが消磁され、スイッチ切換部材3bが「LOCK」位置から「ACC」位置への回転が規制されている。
【0102】
自動車の乗員等が操作キーKをスイッチ切換部材3bのキー挿通口30bに挿通させてカムシャフト3aを図10(a)に示すキー挿通口閉鎖位置から押圧操作すると、スイッチ切換部材3bが待機位置から矢印a方向にカムシャフト3aと共に移動を開始する。
【0103】
スイッチ切換部材3bの移動開始直後では、図1に示すようにスイッチ切換部材3bの第2凸部34bが蓋体2bの嵌合凹部23bに嵌合されているため、スイッチ切換部材3bは回転操作不能である。
【0104】
また、リンク部材4bのカム力受部42bがスプリング14によってカムシャフト3aのカム部31a以外の部位(カム部31aの外径よりも小さい外径をもつ部位)に接近する位置に配置されている。
【0105】
このため、図11(a)に示すように、リンク部材4bの第1回転規制面40bをロータ3cの第1回転規制力受面32cに当接させる位置にリンク部材4bが配置されている。また、ロータ3cの第2回転規制力受面33cに対する回転規制面83aの当接を回避する位置にリンク部材83が配置されている。
【0106】
次に、操作キーKによってカムシャフト3aを図10(b)に示すように押圧操作すると、カムシャフト3aがスイッチ切換部材3bと共に図10(a)に示す位置から矢印a方向にさらに移動し、カムシャフト3aのカム部31aがキー挿入検出スイッチ6をスイッチON状態とする方向にその接触子を押圧する。この場合、キー挿入検出スイッチ6の接触子がカムシャフト3aのカム部31aによって押圧されると、キー挿入検出スイッチ6がスイッチON状態とされ、操作キーKから送信されるIDコード信号に対応するIDコードと自動車側の送受信装置に予め登録されたIDコードとが照合される。
【0107】
また、カムシャフト3aを図10(b)に示すように押圧操作すると、カムシャフト3aのカム部31aがソレノイド4aのプランジャ41aを矢印b方向に移動させる方向にリンク部材4bのカム力受部42bを押圧する。
【0108】
この場合、リンク部材4bがカム力受部42bを介してカムシャフト3aのカム部31aから押圧力(カム力)を受けると、図11(b)に示すようにリンク部材4bがスプリング14の弾撥力に抗して矢印d方向に回転し、ロータ3cの第1回転規制力受面32cに対する第1回転規制面40bの当接を回避する位置近傍にリンク部材4bが配置される。この状態においては、スイッチ切換部材3bの凸部34bと蓋体2bの嵌合凹部23bとの嵌合が維持されているため、スイッチ切換部材3bは回転操作不能である。
【0109】
本実施の形態においては、ソレノイド4aの非通電時にリンク部材4bの矢印d方向への回転動作に伴いソレノイド4aのプランジャ41aが矢印b方向に移動して吸引終了位置近傍に配置されるため、この吸引終了位置近傍からソレノイド4aに通電してプランジャ41aの吸引終了位置に配置する場合、ソレノイド4aに通電してプランジャ41aを吸引開始位置から吸引終了位置に移動させて配置する場合と比べて消費電力が低減される。
【0110】
そして、操作キーKによってカムシャフト3aを図10(c)に示すように押圧操作すると、カムシャフト3aがスイッチ切換部材3bと共に図10(b)に示す位置から矢印a方向にさらに移動し、図2に示すようにスイッチ切換部材3bの凸部34bと蓋体2bの嵌合凹部23bとの嵌合が解除される。この場合、カムシャフト3aはキー挿通開放位置に配置される。
【0111】
ここで、操作キーK側のIDコードと自動車側のIDコードとが一致する場合には、ソレノイド4aが通電される。この場合、リンク部材4bがスプリング14の弾撥力に抗して矢印d方向に回転し、ロータ3cの第1回転規制力受面32cに対する第1回転規制面40bの当接を回避する位置にリンク部材4bが図11(c)に示すように配置されるため、スイッチ切換部材3bの「LOCK」位置から「ACC」位置への回転操作は可能である。
【0112】
なお、操作キーK側のIDコードと自動車側のIDコードとが一致しない場合には、ソレノイド4aが通電されず、リンク部材4bがスプリング14の弾撥力によって矢印d方向に回転復帰し、ロータ3cの第1回転規制力受面32cに第1回転規制面40bを当接させる位置にリンク部材4bが図11(a)に示すように配置されるため、スイッチ切換部材3bの「LOCK」位置から「ACC」への回転操作は不能である。
【0113】
一方、自動車のシフトレバーがNポジション又はDポジションに配置されている場合(ソレノイド4aの通電時)には、スイッチ切換部材3bが「LOCK」位置以外のポジション(例えば「ACC」位置)にされると、図11(d)に示すようにリンク部材83がトーションスプリング84の弾撥力によって矢印g方向に回転復帰し、ロータ3cの第2回転規制力受面33cに第5回転規制面83aを当接させる位置にリンク部材83が配置されるため、スイッチ切換部材3bの「ACC」位置から「LOCK」位置への回転操作は不能である。
【0114】
また、自動車のシフトレバーがPポジションに配置されている場合(ソレノイド4aの非通電時)には、図11(e)に示すようにリンク部材4bがスプリング14の弾撥力によって矢印d方向に回転復帰し、ロータ3cの第2回転規制力受面33cに対する回転規制面83aの当接を回避する位置にリンク部材84が配置される(プランジャ41aが吸引開始位置に配置される)ため、スイッチ切換部材3bの「ACC」位置から「LOCK」位置への回転操作は可能である。
【0115】
[第2の実施の形態の効果]
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加え、次に示す効果が得られる。
【0116】
単一のソレノイド4aでスイッチ切換部材3b(イグニッションスイッチ)の「ACC」位置から「LOCK」位置への回転の規制を行うことができる。
【0117】
以上、本発明のキーロック装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0118】
(1)各実施の形態では、ソレノイド4a(ソレノイド5a)が引張型ソレノイドである場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、押出型ソレノイドであってもよい。
【0119】
(2)各実施の形態では、自動車に適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の車両にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0120】
1…キーロック装置、2…装置本体、2a…筐体、20a…収容空間、22a…段部、2b…蓋体、20b…貫通孔、21b…凸部、22b…挿通孔、23b,24b…嵌合凹部、3…ロータアッシー、3a…カムシャフト、31a…カム部、310a…第1面、311a…第2面、312a…第3面、3b…スイッチ切換部材、30b…キー挿通口、31b…段部、34b…凸部、35b,36b…レバー収容孔、37b,38b…レバー収容孔、3c…ロータ、32c…第1回転規制力受面、33c…第2回転規制力受面、4…ロータアッシー、4a…ソレノイド、40a…フレーム、400a…挿通孔、41a…プランジャ、410a…ピン、4b…リンク部材、40b…第1回転規制面、41b…シャフト挿通孔、42b…カム力受部、43b…力伝達部、430b…切り欠き、44b…力伝達部、45b…凸部、46b…切り欠き、450b…第3回転規制面、451b…第4回転規制面、4c…ホルダ、5…ロータアッシー、5a…ソレノイド、50a…フレーム、500a…挿通孔、51a…プランジャ、510a…ピン、5b…リンク部材、50b…第2回転規制面、51b…シャフト挿通孔、52b…力伝達部、520b…切り欠き、53b…力伝達部、530b…カム力受部、5c…ホルダ、50c…シャフト挿通孔、6…キー挿入検出スイッチ、7…イモビアンプ、8,9…レバー部材、10,11…係止用スプリング、14,15…スプリング、16…シャフト、17,18…スプリング、19…シャフト、81…キーロック装置、82…ソレノイドアッシー、83…リンク部材、83a…第5回転規制面、83b…切り欠き空間、83c…シャフト挿通孔、83d…凸部、83e…切り欠き、84…トーションスプリング、K…操作キー、L…導光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作キーの押圧操作によってその押圧操作方向に移動するカムシャフトと、
前記カムシャフトの移動動作に連動して移動し、前記操作キーの回転操作による回転によってスイッチを切り換えるスイッチ切換部材と、
前記スイッチ切換部材の回転を規制し、またその回転の規制を解除するためのソレノイドアッシーとを備え、
前記ソレノイドアッシーは、励磁力による移動方向にプランジャを移動させるソレノイド、及び前記カムシャフトの移動によるカム力を受けて回転するリンク部材を有し、前記リンク部材がその回転による押圧によって前記プランジャを前記励磁力による移動方向に移動させる
キーロック装置。
【請求項2】
前記ソレノイドアッシーは、前記スイッチ切換部材の回転を一方向に規制するための第1ソレノイドアッシー、及び前記スイッチ切換部材の回転を他方向に規制するための第2ソレノイドアッシーからなる請求項1に記載のキーロック装置。
【請求項3】
前記ソレノイドアッシーは、前記リンク部材が前記スイッチ切換部材の回転を一方向に規制する第1リンク部材、及び前記スイッチ切換部材の回転を他方向に規制する第2リンク部材からなる請求項1に記載のキーロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−281110(P2010−281110A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135239(P2009−135239)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】